とうとう我が家にUTとHomeシリーズが届きました。 さっそく興味をそそられたところから読み始めました。 それがまずUTの「ガラドリエルとケレボルン」の章 だったことは弁解しないでおきます。どうしても、 ふたりの微妙な関係が気になって仕方なかったんですよねー。 最初にトールキン自身も、ふたりの関係などの 設定が全体を通してみると矛盾箇所が多く不調和が 多いことを認めていますが、まずケレボルンは シルマリルではドリアスのシンゴル王の身内で、 ドリアスでガラ様と知り合って結婚したとなって いましたが、これは多くの変遷を経て、後には 書き換えられたもようです。 それについては、ガラドリエルの設定そのものが変更 されたことに付随してなされたようです。 シルマリルでは、フェアノールら他のエルダアルと共に アルダに戻ってくる彼女には、親族たちへの賛同と好奇心 こそあれ罪の意識があったことはほとんど描かれて いなかったと思うのですが(私よく忘れるので言い切れません)、 後に変更を加えられたガラドリエルは、ヴァリノールを 去る時にテレリ族との間で起きた「同族戦争(キンスレイヤー)」 を目前にし、激しい後悔に駆られててテレリ族 側に立ってフェアノールと戦ったとされています。 これにはいくつかの理由があったようです。 第一にフェアノールとガラドリエルは一連の禍が起きる 前から不仲でした。ガラドリエルの髪の毛は、エルダアル 中でも最も美しくヴァラアルの寵を受けたヴァンヤアル族 の血を引く父フィナルフィンと、黄金の髪を持つ母との 子であるため、美しいエルダアルの中でも 群を抜いて美しく神々しかったのです。そこであるとき、 フェアノールは彼女に髪の一房をくれるよう乞うのですが ガラドリエルはこれを拒否しました。これがもとで、 ふたりの間に不和が生じたということです。 そう思うと、ギムリがロリエンで髪の一房を乞い、それを彼女が 快く許したくだりには、思っていた以上の重みがあるようです。 もうひとつの理由は、ガラドリエルの母はテレリ族 だったということです。彼女は、ノルドールの親族が テレリ族のアルクァロンデ(でしたか)を襲撃する少し前に、 母のもとに滞在していました。彼女はそれゆえ、テレリ族 のためにそこで親族と戦ったということにされています。 そして修正された別の草稿では、ケレボルンとの出会いは この時であり、ケレボルンはドリアスのエルフではなく、 アルクァロンデのテレリ族ということになりました。 ふたりは出会い、力を合わせてノルドールからテレリ族 を守ったということです。 けれども、ガラドリエルは親族とともにアルダへ戻って きます。ここにもシルマリルでは描かれていなかった彼女 の内面が補足されています。彼女は強く、賢く、美しく、 地位もあり、それゆえ、探究心とある種の野心を持っており、 ヴァリノールでは自分の力を発揮できないことに閉塞感を 持っていたというのです。やはり奥方は怖い人だったのだ。 彼女は罪深い行為と知っていつつ、そうした野心が理由で、 結局はヴァリノオルを去るわけです。 つまり、彼女がテレリ族のために戦ったという変更箇所は、 指輪物語で大きな地位を占めるに至るガラドリエルを、 フェアノールの叛乱への加担から救い出す目的だったのです。 アルダに戻ってきたガラドリエルにはしかし長い年月を 要する試練が待っており、これが、フロドとのロリアンでの やりとりに味わい深い意味を持たせます。 彼女はその後のモルゴスやサウロンとの戦いを何千年も 見守り続け、あらゆる局面において重要な役割を果たし、 親族をことごとく失い、第三紀には最も高貴なノルドと として君臨するに至ります。それまでの長い苦労と悲嘆 は計り知れないものだったはずです。また、彼女は ケレブリンボールから三つの指輪のひとつ、ネンヤを預かり、 以後、海を越えたいという遥かな西方への望郷の念に 駆られ続けるのです。 そして、フロドがロリアンへやってきます。ひとつの指輪 は試練を与えますが、それまでに若き日の野心は潰え、 哀しみはガラドリエルを弱くも賢くもしていました。 そのため彼女は、誘惑に打ち勝つに至り、とうとう海を 渡る決心をするということです。 こうやってみると、ガラドリエルもまた戦い続けていた 深みのあるキャラクタだったのですね。また、アムロス はある草稿では彼女とケレボルンの息子とされています。 もうひとつ、エレスサール(エルフの石)のことが とっても素敵だったんですが、それはまた明日にでも。 それよか、もっと大事なことが! UTにもhomeにもほとんど ファラミアとベレゴンドのことは載っていないのですが、 ベレゴンドに関しては大きな驚き発見。 なんと、サウロンが滅んで105年後、エレスサール王は 崩御され、すでに弱き人間の心は怠慢に貪られはじめて いると、トールキンは「指輪物語」の続編の書き出し を残していたのです。けれどこれは、すぐに彼自身の 手によって葬られました。忘れられたといった方がいい ようです。彼は書き始めたものの、これは駄作であり、 芳しくないとしてそれを続ける意欲は見せなかったという のです。 そしてこのタイトルはずばり「the new shadow(新たな影)」。 なにより衝撃的なのは(私的に)、この物語の 冒頭は、ベレゴンドの息子の憂いのシーン から始まるのです。でもベアギルではありません。 これがまた興味深い描写です。彼はBorlas(ボーラス)という名 であり、ベレゴンドの末の息子とされています。そして、 年老いてエミン・アルネンの小さな灰色の家で暮らして おり、彼は指輪戦争下の暗い時代を目の当たりにし、その記憶を 戒めと捉える残り少なくなった生き証人なのです。これは、 指輪物語の戦時下に既に生まれていたことを意味しています。 当時ベアギルは10歳でしたが、このボーラスはさらに幼かった ために戦線から離れたところにいたのかもしれません……。 そして衝撃の内容。トールキンが葬ったものだと思えば それまでですが、あまりに驚きの内容のため、見過ごすこと ができません。 もし何かが間違って、または正しく作用して、トールキンが もう少し指輪物語のこの続編を書いてくれていたら、もしか すると主要なキャラクタはエルダリオン(この中にも名前が 一度出てくる)、そして、ベレゴンドの孫、ベレラッチだった かもしれません。 そのことについても、また明日にでも書こうと思います。 それでは。
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