お茶の間 de 映画
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2005年01月12日(水) 「列車に乗った男」究極のダンディズムに酔う。憧れは叶わぬから切なくも美しい・・・。1カットごとがすべて絵。

『列車に乗った男』【L' HOMME DU TRAIN(列車の男)】2002年・フランス=ドイツ=イギリス=スイス
★2003年LA批評家協会賞 外国映画賞
監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ 
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
音楽:パスカル・エスティーヴ 
 
俳優: ジャン・ロシュフォール(フランス語教師、マネスキエ老人)
ジョニー・アリディ(流れ者、ミラン)
ジャン=フランソワ・ステヴナン(強盗仲間、ルイジ)
チャーリー・ネルソン(強盗仲間、マックス)
パスカル・パルマンティエ(強盗仲間、サドゥコ)
イザベル・プティ=ジャック(マネスキエの旧友、ヴィヴィアンヌ)

ストーリー用ライン


フランスの片田舎、秋も深まる頃・・・。
列車に揺られて何処からかこの町にやってきたワイルドな風貌の中年男、ミランは駅に降り立つとまず、薬局を探した。

ひどい頭痛でアスピリンを処方してもらうのだが、慌てて買ったため、発泡剤だったことに気づかなかった。

コップと水がなきゃ飲めない。

(外国人は、なぜか錠剤を水なしで丸飲みしますね。いつも映画をみて謎な光景です。よく喉に詰まりませんね、ってか苦くないですね。日本の薬局は普通、すぐ飲みたいと頼めばコップに水を入れてくれますよー)

さきほど、薬局内で狭心症の薬を探していた品のよい老人が、
自宅にミランを誘った。

老人の名はマネスキエ。引退してもう長い、フランス語の教師だ。
今は週に一度、自宅で中学生に仏詩を教えているだけ。

緑に包まれた広大な屋敷。時が止まったようなたたずまいの屋敷の中は、寒々しい外観とは違い、柔らかな光に満ち暖かかった。
マネスキエはここでうまれ、ここで人生のすべてを過ごしてきたのだ。生活への愛が、香る家だった。

ミランは頭痛薬を飲ませてもらうと、言葉少なに挨拶をし
出て行ってしまうが、田舎町である、シーズン・オフの今は
ホテルは開いていなかった。

もう日も落ち、車もなく、野宿するような季節ではない。
ミランは再びマネスキエの元へ・・・。

2人の、まったく違う人生を歩んできた男は、それぞれ、三日後の土曜日に、人生最後の命がけの挑戦をせねばならないのだった。
そうすることでしか、生き残れないのは2人とも同じだった。

このヤマを超えたら、互いのような人生を歩んでみたい。
マネスキエは、列車に乗ってこの町をうまれてはじめて出てみたいのだ。スリルに満ちたワイルドな日々を求め。
ミランは、詩を愛し、スリッパを履いてピアノを弾きワインをたしなむ静かな夜がほしい・・・・。

出逢ったばかりの男2人の、静かだが初めてづくしの新鮮な3日間がもうじき終わりを告げようとしていた・・・・。



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コメント用ライン



ルコント監督の美意識は、どの作品にしても、トリハダもの。
究極の男女の愛を最高の美意識で描かせたらルコント監督の右に出る監督はいないんじゃないだろうか。

今回は、エロティシズムを排し、男と男の魂の交差点を描いている。渋い、とにかく渋い。究極のダンディズムである。
それでいて、他の作品にも共通するものだが、スノッブさが
まったくない。

ルコント監督の描く人間への温かい眼差しを、増幅させているのが、ルコント作品の常連であり、彼を紳士と言わねば他に誰を紳士と言おう、という存在のロシュフォールの持ち味である、
お茶目さだ。

西部劇のまねっこ。パン屋のおかみへの可愛い苦情。
まるで少年のような顔をして床屋の椅子に座るマネスキエ。

ジョニー・アリディ演じるミランの、ぬぐうことはできないであろう影。黒い革ジャンのように漆黒の過去と未来。

無骨な手が詩集に触れる。靴を脱いで眠ったことのない男の素足が
スリッパに不器用に収まる。なんて美しいんだ。

人生は列車の線路の上を終着駅めざし歩くようなものかもしれないが、その人生で、誰かの人生の線路と交錯することができたらいい。
その人のレールには乗り換えられなくても・・・・。

2人は、平行線のような人生だったけれど、3日間、並んで歩いた。終着駅の手前まで・・・。

深夜の路上。ミランの運命を決める車と、マネスキエの運命を決める車が誰も知るよしもなく、すれ違う。印象的なシーンだ。


全編のテイストを決定づける、アラゴンの詩と、乾いてはいるが
優しいブルージーなギターの響きがなんとも忘れがたい。


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ルー [MAIL] [HOMEPAGE]

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