松井彰彦『市場(スーク)の中の女の子−市場の経済学・文化の経済学』 を読みました。絵本という体裁を取っているので読み終えるのは簡単ですが、読み終わるとしみじみとします。経済学が何をしようとしてきたのか、を考えます。その点で、amazon.co.jpの「匿名のレビュアー」の書評は的を射ていると思いますし、「「経済問題について知りたい」という一般人の疑問には答えてくれない」というレビューは求めるものが間違ってます。後者のような書評こそ、松井先生が「あとがき」で述べている「経済学というより経済学を中途半端に学んだ人の誤解」に他ならないでしょう。経済学の最初のほうの授業で、「簡単化のためにこういうことはまずは考えないで」といったあとに構築されたモデルばかりを考えていては不十分だし、背後にどのような仮定前提を置いているのかを深く考えなくては「ねーんげん的」でなくなってしまいます。しかし、そうはいっても多少なりとも経済学でなにかをしようとおもえば、そんな仮定について思慮を巡らすこともなくなってきますし、「なんの学問だったのか」もお座なりにしがちになるのも事実です(とくに業績や就職が必要な場合)。ぼくとしては、「そうはいっても『市場の経済学』で考えることのできる問題がまだたくさんあるとおもうし、そこでは『文化の経済学』をそんなに明示的に考えなくてもいいのでは?」と思わないでもありませんが、こういうメタな話があることも忘れちゃいけないのでは、と思います(ちょっと前の『経済セミナー』の八田達夫・大竹文雄・松井彰彦座談会でいうと、八田先生に近いかも)。『Twelve Y.O.』じゃないですが、希望が持てそうな気がします。とすると、帯の裏側の引用はちょっとずれてるかもしれません。ずれてないかもしれませんが。
さきの書評では、松井先生がこんな本を書いたことはびっくりだ、とありましたが、業績もあり地位もあるからこそ書けたのではないかと思わないではありません。市場の経済学を深く知っているからこそ、というのと、業績も地位もない人間が書いても説得力ないよなあ、という2点で。
いろんな話が出てきて、教養がないとあかんなあ、と思いました。ま、夢とちぼーをもってがんばっていきまっしょい、ということで。