入社してからかれこれ、1年と半年あまり。
一般的に考えても、1年もすれば仕事の流れをそれなりにつかみ、ある程度は要領も良くなり、指示されなくても自分のするべきことは分かってくる頃だと思うのだが、ユタカ君に限っては、全く進歩が見られない。
以前みぽりんが、散々売り場全員から、バカだの使えないだの気がきかないだのと言われ続けていたが、そうは言ってもみぽりんは接客にしても仕事の流れについても半年もすれば、それなりにそつなくこなせるようになっていた。
先日のこと、自分の担当のセール準備を終わらせ、お休みのK嬢の担当商品のセール準備も終わらせ、さて残るのは、と売り場を見回すと、あたふたと動き回るユタカくんの姿が。
まあ、いいや、と様子を見ることにした。
すると、
「すみません、店長に呼ばれて。なんかミーティングがあるらしいのでちょっと行って来ますね」
売り場に残されたダテさんとあたし。
ダテさんはのんきに商品を並べているが、本当はやるべきことは他にもある。それでも、彼女に指示を与えたのはユタカ君だから、黙ってお任せしておいた。
そうこうするうちにダテさんが上がる時間になった。
ユタカ君はまだ戻ってこないが、仕方ない。
「何か引き継ぐことあります?」
と一応きいてみると、
「さあ・・・特に何もないんじゃ・・・?」
言われたことしかやらない、できない彼女に聞いても仕方なかった。
「分かりました。じゃあ、おつかれ様」
売り場に一人残され、さて、どうしたもんだか、と思いつつも、セール準備に取り掛かる。指示はされてないけど、やるべきことは分かっているし、ユタカ君がいつ戻ってくるかわからないのだから、むしろ先にやっておくべきだ。
売り場に一人なので、時折レジを打ったり、接客をしたりしながら、おおむね作業が終わった頃にユタカ君が戻ってきた。
「すみません。店長の話長くって」
ユタカ君が戻ってきたので、あたしは休憩時間を取る。
1時間の間にどれだけ作業が進んでいるかな、と戻ってみたら、これまた1時間前とほとんど変わってない。
途中からきたバイトのS君に、
「1時間の間に何やってたのかな?」
と尋ねると、
「さあ?」
やれやれ、と思っていると、今度はユタカくんの休憩時間がやってくる。
「すみません、自分休憩に行ってきます」
「その間に何かやっておくことはありますか?」
「じゃあ、お願いできますか?ここにある商品を品出ししておいて欲しいんです」
ユタカ君に指示されて、作業をしていたら、店長がやってきた。
「夏物の処分のことなんだけど」
はあ・・・?
すぐに済むかと思ったその話は延々と続き、売り場全体のレイアウトやら、売り方について事細かにお小言を喰らう羽目になった。
社員のユタカ君がいるのに、なぜ?
戻ってきたユタカ君に店長から言われたことを伝えると、
「店長、途中で僕のこと呼ぼうとしたりしなかったの?」
「ええ。全く」
あたしがうんざりした顔で言うと、ユタカ君はボソッと、
「・・・そう・・・まあ、うららさんのほうが先輩だから仕方ないのかもしれないけど」
不満かよ?あたしのほうが不満じゃい!
だいたい、その日、あたしは売り場のセール準備の大半を一人でやったのに、あんたはいったい何をやっていたのだ?と喉まで出かかったが飲み込んだ。
いい加減一緒に仕事するのに疲れてきましたよ。
でも、こんなレベルでは他で引き取ってくれそうにない。
困ったことには、彼自身は自分ではかなり成長しているつもりらしいと言うこと。
頼むからもう少し成長して欲しいなあ。。。
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