売り場をえらく派手な人が通っていった。
人目を引くその姿が、印象に残った。
しばらくすると、私服警備の人が売り場にやってきた。
あたしたちからすると、いつも、その人たちのほうが怪しいと思うのだが、どうやら誰かを張っているらしい。
彼らの視線の先を見ると、先ほどの派手な人がいた。
え?まさか、あの人?と思っているとその人はスパッツを手にとり、鏡を見ながら自分に当てたりしている。
普通に買い物してるんじゃ?と思っていた矢先、手に取ったスパッツは肩からさげた黒い大きなトートバッグに放り込まれた。それはあたかも、買い物かごに商品を入れるのと同じように。
あまりにも自然なその動作に、何かの見間違いじゃないかと目を疑ったが、その人が去ると警備が追っていったから、やっぱりあれはまさに、万引きの現場だったのだ。
あらゆるものを盗って、買い物カートに荷物を載せ、あたかも買い物を済ませたかのように駐車場に向かう所をつかまえられたらしい。
総額にして5万円相当。中にはお米まであったらしい。
しばらくすると、取られた商品が売り場に戻ってきた。婦人用の入荷したばかりの財布と、子供用の財布。
子どもが使うと思って、と言っていたそうだが、盗んだ財布なんて、どうして子どもに与えられるのだろう。
よくテレビで見る犯行現場の映像をリアルに見てしまったあたしは、しばらく鳥肌が消えなかった。
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