たまに××したり。
INDEXこれまで。それから。


2003年04月29日(火) 何も聞かないで。

海へ行くことになった。
夏を思わせる日差しに、行楽日和とでも言えるような天気は心浮き立つはずだが、どうにもいけない。
クルマに乗って、ぼんやりと外を眺め、はしゃぐ子ども達の声も耳に入らない。

何があったわけでもないのに、知らず知らずのうちに涙がこぼれ落ちる。声をあげることもなく、ただ、涙がこぼれ落ちるままにぼんやりと外を眺めていた。
バックミラー越しにあたしの涙に気が付いた夫が
「何?どうしたの?」
と尋ねるが、答える気力もない。それにどうしたのかなんて自分でも分かっていないのだから、答えようもないのだ。力なく首を横に振るのが精一杯だ。

そういえば、このところ泣いていなかった。
悩んだり、落ち込んだりすることはあっても、人前ではできるだけ笑顔でいるように心がけてきた。公私、ともに、だ。
仕事ではいつのまにか、声をかけられたら反射的に笑顔を向けられるようになっていたし、家に帰ってからも、できるだけ不機嫌な顔はしないようにしようと子ども達とテレビを見ながら、ここは笑う所だ、というポイントを抑えては特別おもしろくもなくても笑うようになっていた。

昨日出勤して、着替えを済ませ、売り場に向かおうとしたが、あまりにも気分が乗らない。鏡を見て、気合を入れようとしても、出るのはため息ばかりで、当然気分はどんよりとしたままセール準備におわれ、その上、口ばっかりのKさんと組むことでどうにもならないくらいのストレスを受け、泣きたくなる。
やっとの思いで休憩時間になり、たまたま某Kトー君に会い、
「気分が乗らないよ。励まして」
と訴えると、事情なんて何も聞かず、
「がんばって。でも、ムリしないように」
と励ましてくれた。

そのとき初めて、
「あ、あたし、ムリしてるんだ」
と思った。

だから今日クルマの中で、家族そろってのたまの休日、気分が乗らないのに、和やかな雰囲気を演出しようと躍起になって始終笑顔でいる、そんな不自然さに気が付いて、涙が止まらなくなったんだ。
笑いたくなければ笑わなければいい。仕事では笑顔でいることはある程度は仕方のないことだけれど、家に帰ってまで、義務的に笑顔でいる必要はあるのだろうか。
不機嫌な顔が一緒の空間にいることは、一緒にいるものにとっては居心地はよくないだろう。だけど、ムリをして取り繕った笑顔でますます不機嫌を増大させていくのではかえってよくないだろう。

ただただ涙を流し、うつろに外を眺めるあたしの手をそっと優しく息子が握ってくれた。何も言わず、聞かず、ただそっと握られた手に、暖かい涙がこぼれ落ちた。


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うらら |あばら家足跡恋文

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