日々雑感
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2003年03月05日(水) ひとめぐり

用事があって卒業した高校へ行く。ほとんど卒業以来はじめてといってよいくらいである。

校舎へとつづく坂道は雪に埋もれている。春休みで校舎には生徒の姿もまばらだ。用事を済ませるべく事務室へ行くと、ちょっと待つようにと職員さんが言う。どうしたのかと思ったら、廊下の向こうからパタパタとスリッパで走ってくる音。2年のとき担任だった先生だ。かつて自分も制服を着て歩いていたその場所で、あの頃と同じように名前を呼ばれる。

職員室にてコーヒーを入れてもらう。生徒も出入りしているが、眺めながら10代の若さってこんな感じだったなあとしみじみ思う(青くて冷たいガラスに似ている)。そして、先生はいつになっても「先生」だ。近況など聞きつつも、最後は必ずアドバイスになるのだ。何でもないときにも声をかけてくれるような、あったかい先生だったけれども、そのまんまである。

変わったものと、変わらないものが混在する空間。だからこそ、そのどちらもがはっきりと見えるような気がする。

帰りがけ、先生はサンダルのまま雪道に出て、正門のところまで見送りに来てくれた。そして、じゃあな、と言って、そのまま校舎の中へと戻っていった。ひとり歩きながら、今まで自分が関わってきた無数の人びとのことを思う。そうした交錯の中に自分がいて、皆がいる。

何かが一巡りしたような思いになる。もう一度校舎を後ろにして、今はまだ雪が残る道を歩く。


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