午前中、部屋の中にいると、外から笛の音が聞こえてくる。だんだん近づいてくる。何だと思って窓の外をのぞくと、男の子がひとり、リコーダーを吹きながらアパート前の路地を歩いている。小学校の制服に白い帽子、背中にはランドセル。彼には少し大きいであろうアルトリコーダーを手に、真剣な表情をして同じ旋律を繰り返す。笛吹き少年。ネズミならぬ、大家さんの猫モモちゃんに見送られながら、角を曲がって消えていった。夕方からは水曜ゼミ最終日。外からは夕風といっしょにカエルの声。ずいぶん遠くから聞こえてくる。カエルの声はよく響くのだ。扇風機。テレビのナイター中継。蚊。誰かがどこかで上げたロケット花火。連鎖反応のように、夏の夜のいろんな音を思い出す。ぼんやりと夏の宵へ思いを馳せつつ、ふと発表がどんどん進んでいるのに気づいて、あわてて「こちら側」に戻ってくる。まだ授業中。夏休みは先だ。