日記

2006年07月23日(日) 『更新履歴』



前にこっそり言うておりました、用語解説をお話ページに置いてみました。
マイナーなもんばっか書いてますので、その解説なのです。


こんばんわ、やっぱりマイナーよなあと思い知りました。もえぎです。
どういうわけかいつの頃からか、拍手のお話で妙に出張りつつある面々。
ラインの乙女やカラフルチルドレン黄色っ子たちの解説なんかを書いてみました。
まあだらだらと説明しておりますので、お暇なときにでもどうぞです。

それで今日はついでに、ちょっとした小話も日記に載せてみたりです。
エピ3のEDも一応踏まえてなのですが、あんまりネタバレなわけでもありません。
ゆえに反転もなしだったりします。
つまりはこういうこと?こういう風に繋がる?といったわたしなりの解釈です。
頭悪いなりに考えてみたのですが、いかがなものでしょう。
エピ3に関しては、まだまだ考えることがあるので、きちんと感想は言えないのです。
今、前半を忘れちゃってたぞろあすたを読み返し中なので、それ以降になりそうです。
回数を重ねるにつれ、頭にすんなり内容が入っていきますね。
それでもまだ片手で足りる回数くらいしか読んでない辺り不勉強炸裂です。
ともあれ。現段階でのわたしの解釈はこんなのです。
ましろきおさなごの選んだもの。





『光輝と1.5人のふたご』

「やあ。『アベル』」
 何処とも知れない空間にぽんやりと座り込んでいたおさなごは、ゆらりとかけられた熱のこもらない声に、振り返りました。そこに『背後』という概念があるのならば、その子はきっとこうべをめぐらせ、振り返ったのでしょう。その空間では、何もかもがあやふやで、よくわからないものでしたので、断言することはできませんけれど。
 とにかく。ぽかんとしているおさなごと、声の主が向き合いました。片方はぺたんと腰を下ろしたまま。片方はその場に立ち尽くしたまま。ちっとも違う様子ですのに、二人は、おそろしくよく似ていました。いえ、厳密に言えば、ちっとも対称ではないのに、まるで鏡を合わせたようにそっくりな姿をしているのです。ひとつにくくっている黒曜石の髪に、深遠宇宙の瞳。こども独特の、ふっくらとした頬の稜線。取っている体勢以外に、二人を見分ける術などないほどに、こどもたちは全く同じ姿形をしていました。
 座っているこどもは、目をぱちくりさせたまま、こくりと小首を傾げました。
「君、だあれ?」
「僕は僕さ。そして君はアベル」
「僕と君、とってもよく似てない?」
「それはそうだよ。僕もアベルだから。そう。定義されてもいた」
「ふうん」
 まだよく理解できていないのか、片方のアベルはまだきょとんとした表情のまま、相手をまじまじと見つめています。見つめられている側のアベルはと言いますと、欠片たりとも感情の存在を表さない、小さな大人のような顔つきで、淡々と説明を進めていきます。
「いいかい、アベル。僕はね、決めたんだ。彼女とも話して決めたんだよ」
「何を決めたの?」
「アベルのこと。僕は、僕は…自らをこの下位領域に定義することを決めたんだ。僕はここにいたいと思う。だから僕は肉を得て、そうして、もう一度、体験するんだ。観測のためじゃない。僕が僕としてあるために、僕は肉を求めるんだ」
 片方のアベルの言葉が、徐々に熱を帯びてきます。何かに怯え続けていたような眼差しに光が宿ります。それはある種狂気とも取れる色合いだったのかもしれません。けれど次第に、凍り付いていたような無表情が、ぎこちなくとけてゆきます。まるで涙のようでした。
「僕は、観測端末である僕を、一度、リセットするよ。僕は消える。でもその後に生まれてくるのが、君なんだよアベル」
「僕…?」
「そう。君は、ごく普通のこどもとして肉に宿る。そしたら君の見るもの、触れるもの、全てが君自身の経験となってゆく。もう誰のための端末でもないんだから。君は君として、何処にでもいる当たり前のこどもとして生きることができるんだ」
「ひとり、で?」
「ううん。ひとりじゃない。そのための決断であり、リセットだもの。もうひとりじゃないんだ。孤独でも、さみしくもないんだ。だって、彼女といられるんだから」
「そっかあ」
「もしかしたら、リセットを敢行しても、何らかの異常が僅かながら残るかもしれない。波動存在の端末という役割は、あまりにも力を持つものだったから、ある特殊な能力として君に宿り続けてしまうかもしれない。でも、できるだけのことはするよ」
「う〜…ん」
 切々と片方のアベルは訴えるのですが、もう片方のアベルは、ぺたりと床にはりついたまま、さもむつかしげな唸り声をあげると、眉間に皺まで寄せて考え込んでしまっています。見るからに一生懸命、アベルの言葉を理解しようと努力しているアベルのさまに、アベルはつい笑みを浮かべてしまいました。彼が初めて灯した微笑でした。けれどそれは、泣き笑いのようでした。
「難しくてよく分からない?」
「うん……」
 すっかり弱りきった困り顔で、片方のアベルがしゅんみりと答えます。けれど片方のアベルは、そんな子供っぽい仕草に安心したようで、かすかなかすかな微笑の破片を、もう一欠けら煌かせました。
「それで良いんだよ。構わない。君は君なんだから」
「良いの?」
「うん。―…僕は、できるだけのことをするね。僕は消えるけれど。君が、アベルが、自分として生きられるように」
「ううん。それは違うと思うよ」
「え?」
 突然決意を否定され、咄嗟に反応できない、立っているアベルに、座っていたアベルは立ち上がると近付いてゆき、真正面にやってきました。そこには、同じ体勢と同じ顔立ちと異なった表情で向かい合う、おかしなふたごのようなこどもが二人いました。
 驚きに目を見開いているアベル。ゆったりと、ほのあたたかに微笑んでいるアベル。二人のアベルを見分ける術は、もう、殆ど残されていませんでした。
 アベルがアベルに手を伸ばします。
「君はアベルだよ。そして僕もアベルだ。君は僕で、僕は君。君は君が消えてしまうと言うけれど、君自身が消え去ることは決してないよ。だって僕というアベルを構成している因子の中に、君というアベルだって、息づいているんだから」
「僕は…君じゃあ、ないよ」
「でも、君は僕だよ。そして僕も君なんだ」
「僕も」
「うん。君も。だから、一緒に行こう」
「…………うん」
 にっこり微笑んで手を差し出すアベルに、泣き出しそうな顔をしたアベルがおそるおそる指を伸ばしました。そうして二人のアベルが手を繋ぐと、二人とも、鏡から抜け出したように、今度こそそっくりに笑いあいました。
 十字架の輝きに導かれて、光源から溢れ出す虹色の洪水にからだがとけてゆきそうになります。光の中に二人のこどもが消えていっても、こどもたちの笑い声は、銀のカリヨンが奏でる木霊のように、響き渡っていました。

 さあ。いこう。歌声が、僕らを待っている。


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