日記

2005年02月21日(月) 『幸多き森の迷い子』



あ゛ー。昨夜は『予定は未定』を地でいってしまいました駄目管理人。
いえアップする気はまんまんだったのですが寝やがったのですよこやつ。


こんばんわ、寒さに雪に六時起きに負けました。もえぎです。
うー、せっかく殆ど書けていた話ですのに。日記に載せるの遅れました。
昨日はあれですよ。寒くて寒くて午前六時起きで大阪行ったのです。
治験のために。採血のために。十時間以上絶食状態のまま京都から大阪へ。
で、検査済んだらそのまま十二時間以上絶食状態のまま大阪から京都へとんぼがえり。
朝ごはん兼昼ごはんを口にしたのは結局コンビニの隅っこでした。
時間が中途半端でことごとく行きたいカフェが閉まっていたのですよ……。
ややさめざめと泣けそうでした。そしてそこから更に六時間くらいちょっとなんやかんや。
帰る頃には白い月が美しく時折ちらほら雪さえも。そして戻った部屋は室温十度で。
電気代かかるの嫌で暖房つけずにこたつと晩ごはんで暖を取り。
―…こんな状態でしたから。おなかいっぱい、あったかくなったら。
寝ちゃったわけです。つくづくアホです。
目が覚めて十二時過ぎてて一番驚いたのは自分でした。
ともあれ遅くなってごめんよ紺堂嬢。今夜の話はきみのためにー例の同盟のー(笑)

しかし内容がやや尻切れトンボな感じで納得出来ていません。また直していこう……。
紺堂嬢から言われていた、サーガエピ2、カラフルチルドレン669と498のお話です。
彼女が自分のサイトを評していわく、
『U.R.T.V.サイト数あれど赤白黒をメインに扱ってないんはうちくらいやろな』
は名言だと思います。
わたしはそんな彼女が大好きです(笑)男らしい!男らしいー!ステキ紺堂嬢。
いつもお世話になりまくっているナイト属性(キャラミル研究所)な彼女からのリク。
やる気はまんまんでしたが、キャラがキャラだけになかなか話が思い浮かばず。
考え付いて書き始めたのは良いのですが、書きたかったのは序盤の場面で。
そこを書いたら燃え尽きたがごとく結局尻切れトンボな次第です。最悪だ。
すまんね紺堂嬢、今度きっちし直すから。それから正式にきみに捧げますから。
とりあへず今はこんな感じだと考えてやってください。
序盤は気合い入ってますから序盤は。ええそりゃあもう。
でもシナリオブック持ってないのでニグレドくんの口調が自信ありません。
うろおぼえな記憶を必死に呼び覚ましながら書いてました。
ルベドくんなら特に悩みもせず書けるのですけれどねえ。
おとなのみりきな代表理事でも難しいですし、ちっさくても難しいです669の彼。
ですから口調が多少嘘っぽくてもどうか寛容な心で目を瞑ってやってください。
それと、このお話は、一応次に続くカラフルチルドレンシリーズの布石です。
会議→演奏会→試食会ときて、次に開かれる会は?という。
なんかもうバレバレな気もしますがそれはそれ、これはこれです(謎)





『幸多き森の迷い子』(サーガエピ2。カラフルチルドレン669と498)

 やわらかな芝の上に腰かけて、珍しく一人でそこにいて。手元の本に目を落として。
 いまどき稀少な『紙』で作られたものを読み耽っていると。ふと。感じる視線。ひとつ。

 作られた子供たちの作られた庭園。作られた灯りが照らす作られた光の下で。ふいに何やら見られているような感覚をおぼえて、文字に向けていた眼差しを引き剥がし、顔を上げた黒髪の少年は、咄嗟にどうしたものかと考え込んでしまった。
 確かに視線は感じたけれど、これほどまでに至近距離だとは思わなかった。相手の顔は、それこそ彼の目と鼻の先にあって。澄み切った紺碧の瞳に映りこむ、自分のきょとんとした表情を確認することさえ出来るくらいだった。少しでも身を起こそうものなら、鼻と鼻が触れ合ってしまうくらい、すぐ側に相手はいた。
 草に足を投げ出して、片膝だけを立ててそれを台にして、彼は本を読んでいたのだけれども。予期せぬ来訪者は作られた緑のじゅうたんに両膝をつき、あまつさえ両の手までついて。よつんばいみたいな格好になってまで、彼の真正面にきて、寄り添っていた。
 力いっぱい前のめりな体勢で瞬きもせず一心に見つめてくる曇りのない眼に、漸く言葉をいくらか見つけたニグレドは、幾つかをそっと選び取った。
「……何してるんだい、498」
「…………」
 問うても、普段から口数の少ない―と言うか、言葉の使い方を心得ていない少女は、ただ無言のまま彼をじっと凝視するだけだった。しかしいくらなんでも、延々この体勢は疲れるしお互い話しづらいので、ニグレドが少しどいてくれるよう促すと、498はそろそろとそれに応じた。
 芝草に腰を下ろし。それぞれのよく似て違う顔を向かい合わせることが出来るようになると、彼はぺたりと座り込んだまま喋ろうとはしない彼女に、一言一言区切るような口調で訊ねる。

「どうしたの、498。今日はシトリンと一緒じゃないんだね」
「……ニグレドこそ、今日は、ルベドもアルベドも、いない」
「うん。僕だけ先に検査終わったんだ。それに、ちょっと用事もあったし」
 いつもの、憂いみたいなものを宿した伏し目がちの瞳を、少しのぞきこむようにして。ただでさえ言葉少ななのだから、怖がらせたりしないようにと心がけながら、やんわりと問いかける。
「君は、どうしたの?」
 すると498は、おそるおそる顔を上げると、上目遣いから真正面に射抜く眼差しを投げかけてきた。それは彼がちょっと驚くくらい、強い意志に裏付けられたもので。紺碧の瞳に、きらりと走る、凛とした糸を見たように思った。彼女は逡巡を振り払うことは出来ないままであっても、ゆっくり、唇を動かし始める。
「……ご本を、読んでいたの」
「本?」
 予想外の言葉に、ついおうむがえしにしてしまって。慌てて彼は口を押さえた。相手を威圧するようになりはしなかったかと思ったが、498は怯える様子もなく、ただニグレドの問いにこくりと首を縦に振る。これからは無理やり先を促すまいと彼が教訓を人知れず反芻していると、彼女は迷い子のようにたどたどしく、けれどゆっくり確実に、言葉を紡いだ。

「……わたしたちの、ね。サクラ・ミズラヒの現実面からのアプローチに用いるツールとして、ご本を読むことになって。その練習にって、シトリンとわたしで、ご本を読んでいたの」
 498の途切れ途切れで、ところどころ不鮮明な発言から、ニグレドはざっと状況を分析し始めた。U.R.T.V.の女性体は、男性体に比べて安定が難しい。このインスティテュート内で自由に動きまわれるほど安定しているのは、ナンバー668シトリンと、彼女ナンバー498くらいのもので。ニグレドたち変異体がサクラの病の治癒のため、精神面からアプローチをかけるのと平行して、彼女たちは現実世界から完治の糸口を探っていた。
 だから読書というのもその行為の一環なのだろうと理解すると、彼はふっと手元の本に目をやった。彼が先程、この本と共に与えられた『用事』を思い出して。
「それで。わたし、読んでいて……でも、どうしても分からなくて。シトリンに訊いたら、それはニグレドよって、言われて。だからニグレドを見に来たの。ニグレドを見たら、分かるかと思って」
 ためらいがちな言葉の羅列は、結局それでも分からなかったのだと、言外に語っているように彼には思われた。余りに断片的な内容に、流石のニグレドも推察が難しくなってきてしまい、それが知らず知らず表情にも出てしまっていたのか。498は面持ちを悲愴の色に染め、細い喉から声を絞り出すようにしてなおも続ける。
「……『森』は、分かったの。お墓のある、あそこだから。『夜』も、分かったの。天井が暗くなることだから。それなら、わたし、知ってるけれど。―…『夜の森』が、分からなくって」
 いやいやするようにかぶりを振ると、膝の上に置かれた小さなこぶしがきゅう、ときつく握り締められる。表情に乏しい顔は、今にも泣き出しそうに歪められていたけれど、ぬるい雫がころころと零れることはなかった。彼女はそのような行為も、その意味も、方法すらも知らなかったから。ただただ、顔を苦しげに歪めるだけだった。
「……森も、夜も、怖いものではないけれど。『夜の森』は怖いらしくって。白い石が光るのを頼りに歩く、『夜の森』だどんなものだか、どんな怖さなのか。いくら考えても、わたし、分からなかった」
 やっとおぼろげながら掴みかけてきた概要から、ニグレドにも緩やかな理解が伴ってきた。おそらく彼女が言っているのは、古い物語にある、貧しい両親が口減らしのため子供を森に捨ててくるという話だろう。そして子供が機転をきかせて、月明かりにぼんやりと照らされた白い石を目印に家まで帰る、というくだりで彼女は詰まったと思われる。子供が怯えながら、頼りない小石をよすがに歩く、夜の森のおそろしさが理解出来なくて。
 目の前で、分からないと繰り返し、正体不明なものにわけも分からず怯えている少女をあたためる言葉が、すぐには出てこなくって。そんな自分に少しの苛立ちと腹立ちを感じながらも、それでも彼は手の平からひらひらと擦り抜けてゆく気まぐれな蝶のような気持ちを捕らえて形にすることは出来なかった。ただ、498の次の声を待つしかなかった。そして彼女はおぼつかなげにまろびでてくるがごとく言う。
「それで、シトリンに、訊いてみたの。シトリンは、わたしよりもずっとずっと、難しいご本を読んでいたから。『夜の森』って、なあに、どんなの、って。そしたら」
 彼には、その時のシトリンの表情が目に浮かぶようだった。ちょっと強気で、きついところはあるけれど、決して意地悪なんかではないナンバー668。不器用な498を叱りながらも支えてやっている彼女が、つん、とその形の良い鼻を上向かせながら、細い眉をぴくつかせながら、498に言う光景を。
 言われた側である少女が、シトリンの台詞を再現した。
「『それはニグレドの色よ』って」

 彼が宿す色は、通常体の子らとは大きく異なる。変異体である証拠でもあるその彩りは、この作られた庭園においても、一際目をひく鮮やかさだった。
 深い深い、緑樹の瞳に。漆黒の髪。
 それを、『夜の森』だと形容したシトリンと、それをすとんと受け入れてしまって、どんなものだか確認にやってきた498の二人に、思わず夜の森たる彼は口角を上げてしまった。

「その本は、もしかすると君にはまだ、早いのかもしれないよ」
「そうなの……?」
 困り果てた顔をしていた少女に彼がかけた言葉は、さっきいくら考えても捕獲できなかった蝶の羽。なのに今はすんなり自然に流れ出てくる。そっと支えてやるような口調と笑みでそう伝えると、498はおそるおそるといった風情で彼を見つめてきた。
 だからニグレドは、もう迷うこともなく、すらすら言葉を発した。ちょうどさっき、彼が思い出した本と共にやってきた『用事』のことを絡めながら。さらりと次々、蝶々をあちこち、捕まえて。
「うん。まだ、その本の内容に、君の精神的発育がついていっていないんだと思う。僕らの成長は個体差があるし、君とシトリンならうんと違って当然だよ。だからこれから、ゆっくり自分に合う本を探していけば良いんだ。サクラ・ミズラヒの平癒経過に合わせるみたいにしたら、もっと良いと思う。任務もこなせるし、君も自分の本を探せるし。そうしていたらそのうち、『夜の森』も分かるようになるよ」
「……そうなの」
「うん。それにね」
 一息でたくさん説明した彼は、どうやらじわじわと納得はし始めているのだけれど、まだ完全な理解へは至っていない498へ向けて、そっと手のものを差し出した。百聞は一見だけれど、一見も百聞だから、実際に見せて伝えたほうが確かに伝わりやすいものもある。
 紺碧の瞳がきょん、と丸くなった前にあるのは。一冊の本。先程までニグレドが読み耽っていた。
「ご本……?」
 こんなところにもあるだなんて、と、ぽかんとした声と顔をする498に、669たる彼は更に補足説明を開始する。少年の口の端に浮かんだ笑みは、もう彼女の前から消えることはなかった。

「ミズラヒ博士に渡されたんだ。『用事がある』って、さっき言ったのは、これに関係することなんだよ」
「……ニグレドも、ご本、読むの?」
「うん。どうやら僕らも、君たちの任務に関わることになりそうだね。ミズラヒ博士が言うには、ユーリエフ博士と相談した結果、インスティテュート内に図書室を設けたいそうなんだ」
「図書室……」
「ミズラヒ博士は娘のために、たっくさん『紙』で出来た本を持っているんだって。子供にはそれが一番良いんだそうだよ。それで、ユーリエフ博士もいっぱい本を持っているから、どうせならそれらを持ち寄って、僕らが皆、読みに行けるような場所を作ろうって考えた結果なんだって」
「ふうん……」
「環境が整ったぶん、君たちは任務が遂行しやすくなるし、それをサポートするのに、僕らも介入しやすくなる。僕らがいると、あの子の病状はとても快方に向かうそうだから、良い相互作用を生むんじゃないかって」
「……あなたたちのしてた楽器鳴らすのや、こないだのクッキーみたいなことね」
「うん。それで、ミズラヒ博士に頼まれたんだ。僕に図書室の管理をして欲しいって」
 いつの間にやら二人の間では、とんとん拍子に会話が進む。まあそれは、余り公平なキャッチボールとはいかなかったが、498の言語発達を考えた場合、仕方のないことと言えるだろう。それに彼女にしては、これでも相当に多弁に饒舌な状態なのだから。
 大部分をニグレドが補うようにしながら、二人のやり取りはずんずん進む。ゆっくりおっとり訊ねてくる498に、ゆったり構えてじっくり説明をする669。実に緩やかな速度で続けられる会話は、せっかちなルベドやシトリンあたりが側にいようものなら、今にもいらいらして文句を言い始めそうなものである。それでもこれが、この場では、最も相応しいと考えられた。

 まだまだ上手くつかいあぐねている言葉を、なんとか用いながら、慣れない相槌を打って。盛んにこくこくと頷く、そして真っ直ぐに見つめてくる紺碧の瞳に、緑樹の瞳は何処までもやんわりと着実に話を進めてゆく。
 変異体三人の中でもし図書委員を選ぶなら、ルベドは自分の読書欲にかかりきりになるだろうし、アルベドは読書に没頭して相手してくれない左の心臓に泣き出してしまうだろうから、とてもとても任せられないだろうこと。けれどニグレドならば、周囲の状況を判断して、的確に整理整頓を行えるだろうと判断された上で任命されたこと。リーダーシップという点では素晴らしい資質を発揮するルベドも、こういう管理行為は不得手だということ。図書委員とは言ってもそんな硬いものではなく、ただきちんと本をきれいにしたり、図書室で騒ぐ子に注意をしたり、その程度だということ。U.R.T.V.として教育を受けてきた彼には、委員だのなんだのというのは単なるおままごと遊びのように思えることなのだけれど、この提案をしてきたミズラヒ博士自身が、至極楽しそうな表情をしていたので、まあ良いかと考えたこと。あんなに優しく嬉しそうな表情はとても珍しいということ。それを見て、なんだか、つい自分まで軽くうきうきしてしまったこと。
 それこそ。たくさん。たくさん。彼は話したし、彼女は飽きもせずに聞いていた。そんな時間が流れるままに。彼女はニグレドの言葉に、ゆっくりと、紺碧を細めて唇をあまい弓にたわめた。

 短い拙い一瞬のやり取りに。ほんの一瞬ひらめいて光より僅かな時間現れた、微笑みとはまだ呼べない、微笑の欠片みたいな透明な笑顔に、彼はひととき息を呑んだ。今まで、そんな澄み切ったものを見たことがなかったから。驚きに目を見開いたけれど、彼はそれを言葉にはしなかった。伝えることはなかった。なんとなく勿体なくって、後でやってきた兄たちにさえ内緒にして、彼一人でなんとなくしあわせな感覚を楽しんでいたのはここだけの秘密。
 誰にも教えない。誰も知らない。森の闇が奥に抱いた、ふかいふかい蒼海のひみつ。


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