| 2005年02月19日(土) |
『瑠璃色輝石にはちみつミルク』 |
少しずつ、なんやかし、書いていこうと思うのですよ。毎日。 でもだからっていきなりこの内容はどうなんでしょう自分。
こんばんわ、いきなり指輪話でしかも超ネタバレ(笑)もえぎです。 前々から書きたいなあと思っていた指輪戦争後イシリアン大公ご夫妻です。 でもこの話は、一番はじめに書いたものではないのです。 もう一つ、最初に書いた指輪話があるのですけれど、そっちを置いてこっちを先に仕上げ。 だってそっちの話は出だしだけでもう七千字越えちゃったもんですから(笑) この話のがうんと短く済むなあと思いましたので。 それでも予想外に長くなりましたが。おかしいなあ。 内容薄いので二千字くらいか思いましたが。 書きかけのも、そのうち仕上げたいのです。 夕星の王妃さまを書くのがたまんなく楽しいのです(笑)
で、内容ですが。 相当悪ノリしております。ちょっとやりすぎたかなあとやや反省。 ちょうど原作を読み返した後だったので、瀬田さん口調がうつってしまって。 ついついですます口調で書き出してしまいました。でもまあ、たまにはこんなのも。 しかしそれにしても程度ものでしょうか。やはりやりすぎ……? どうせだから、うんと時代がかった口調にしちゃえーとなりまして。 でもこれはこれで楽しかったです。そしてファラミアならあれくらいは言うと思います。 原作であんな発言してる人ですから!(笑) あそこだけ明らかに全体と雰囲気が違っていて、最初ひどく驚いたものです。 『あ、あれ?あれ?』となりましたが、読んでいてとても幸せになった箇所。 映画ではものの見事にカットされ涙に暮れましたがそこらは戴冠式でほんのりカバー。 まさか追加映像もあんだけだとは思いませんでしたけれどね……(泣)
ネタバレというかなんというか。名前だけですがロシリエル姫出すぎな気もします。 それもこれもわたしがひたすらドル・アムロスひいきだからです。 フィンドゥイラス姫の亡くなられた理由にたいそうひきつけられたのです。海の姫君。 あと、イムラヒルおじさま素敵ですし(笑)エルフの血の濃い一族ですし。 もし中つ国に住むならホビット庄も捨てがたいですがわたしはドル・アムロスが良いです。 エオメルにいやん(にいやん呼ばわりかローハン王)と姫ラブラブだと夢見ます。 しかし気になるのはロシリエル姫の髪の色だったりします。 イムラヒルおじさまは金髪ですし、けれど普通ゴンドール人は黒髪ですし。 エルフの血が濃くでたら金髪なのでしょうね。でも姫は黒髪がいいなあ。 そしたらエオメルにいやんの金髪と姫の黒髪で並ぶと映えてとても綺麗です。 因みにわたしはファラミアを黒髪で書いています。エオウィンと並ぶとやっぱり映えます。 別にわたしがただ単に黒髪好きだからとかじゃないですからね!
―…話がそれました。 そんなこんなで、薄い内容の割りに三日かかってしまいました。 明日も何かアップ出来そうではありますね。九割書けました。 『毎日一本仕上げる』のではなく『毎日少しでも良いので書き続けて仕上げる』のが目標。 重いノルマに押しつぶされて呼吸も出来なくなるのはやめたほうが良いと思うので。 明日も色々おでかけで大変ですが。がんばります。 あ、紺堂嬢。明日アップ予定のは、きみに捧げる例のブツですよー。
『瑠璃色輝石にはちみつミルク』(指輪物語。イシリアン大公ご夫妻)
ゆたかにかぐわしい、緑の香気に抱かれた。 世にも美しい森の館で、世にも美しいお妃さまは、世にも美しい殿御に仰いました。
「殿、わたくしはドル・アムロスに行きとうございますわ」 その日の政務を終え、やれやれと思いながら自室に戻り、優しい妻が上着を脱がせてくれながら微笑みと共に放った言葉に、イシリアンの大公殿は目をぱちくりとしてしまいました。しかし彼はすぐに、最愛のひとへいつもの柔和な笑みを浮かべると、さも楽しげな表情で向き直りました。 すると、真正面からみつめられている彼の妻さえも、くすくすとおもしろげに微笑んでいるではありませんか。彼女は知っていたからです。普段、まるで上古の賢者のように聡明で、理知深く、穏やかなこの方が、子供のように素直に感情を顔に出すのは、彼女の前だけであるということを。それが彼女には誇らかで、少しこそばゆくもしあわせなよろこびでありました。 「それは何故でしょうね、エオウィン?」 至極真面目な口調ですが、彼の口の端からは、今にも微笑が音を伴って零れ落ちてきそうでした。ファラミアが妻に向ける眼差しは果てなくやわらかく、慈しみといとおしさに満ち溢れていました。 「これは私の推測なのですが、あなたは我が従妹ロシリエルよりかの海の都の話をお聞きになったのではありませんか?そして彼女の伝える、頬を撫でる潮風とまだ見ぬ白い鴎の物語に興味を抱かれたのではないでしょうか」 「殿は我らが王と同じ、古い血を持つその眼で、全てを見通してしまわれるのですね!」 エオウィンの小作りなかんばせをのぞき込むようにして、僅かに首を傾げたまま問い掛けてくる夫に、彼女は快活な笑い声を立てました。それから薄い色をした瞳を、悪戯っぽく煌かせます。 「けれども殿。半分は確かに的を射ておりますが、残る半分ははずしておしまいになられました」 「やれやれ、私の弓も随分なまってしまったようだ。それとも、勇猛なる白き姫君の剣には、私の矢など、はじかれて当然のことなのやもしれませんが」 やや優位に立ったと思われたエオウィンを、あっという間にひらりとかわしてしまいます。真剣にからかうようなその口調に、若い妻は頬を染めてまあ殿ったらひどいことを仰るのね!と抗議してくるのですけれども。そんな彼女の素直な反応が、ファラミアには可愛らしく愛しく思えてならないのでした。ですから彼はすぐさま微苦笑しながらきちんと謝罪の言葉を述べますと、話の続きを求めます。すると彼女もそれに応じて、くるりと機嫌を元に戻すと、先程の答えの真意を話し始めます。 その間にふたりは大きなソファへ場所を移し、寄り添いあうように腰を下ろしました。
「ロシリエル様と、色んなことをお話しておりましたのよ。姫がこれより赴かれるマークの地の気候や、慣習など。他にも沢山のことをお教えさしあげておりました」 「ええ。ロシリエルも大層喜んでいました。あなたが馬の司の国の様々な事柄を丁寧に教授してくれるので、むやみに恐れおののくこともなく心安らかに、エオメル殿のもとへ行くことが出来ると」 そう言うと彼は、年の離れた従妹の姿をふいに思い浮かべました。ファラミアの叔父であるイムラヒル大公の姫君、白鳥の都のロシリエル。彼女は近く同盟国ローハンに嫁すことになっていました。お相手は勿論、エオウィンの兄たる若きマーク王エオメルです。しかし隣国とはいえ、ゴンドールと大きく習俗の異なるローハンへ花嫁としてゆくのですから、彼女の不安たるやいかなものでしょう。 そこでエレスサール王は、ドル・アムロス大公やイシリアン大公夫妻の心配を解消するため、ロシリエルを暫しファラミアの館に逗留させることにしたのです。親しい従兄の治める土地で、かつてローハンの盾持つ乙女と呼ばれたイシリアン大公妃より、多くのことを学べるようにと。 予見の眼を持つ王の思い遣りは、予想以上の効果を生みました。二人の姫君は、お互い年の近いこともあり、すぐに意気投合したのです。ロシリエルはローハンのことを深く学びたいという意欲に溢れていましたし、エオウィンは兄を支えることになる未来の義姉に愛する故郷を知って欲しくてたまりませんでした。二人の貴婦人の華やかな笑い声に満ちた館は、花盛りの森もかくやという、豊穣のあまやかさに大気がかすむほどでした。 こちらに来るまでは顔を強張らせ、体中を緊張させていたロシリエルも、今ではすっかり朗らかに微笑むようになりました。その表情と心境の変化を思い出し、ファラミアは薄い笑みを浮かべました。 「あなたの言葉が、随分と心強かったようです。ロシリエルも自信を得た様子で、私も叔父上もすっかり安堵しました」 「お役に立てれば幸いですわ」 婉然と微笑むエオウィンが、その裏にちまりと水晶の秘密めいたものを含んでいるのを、ファラミアはさらりと見抜いてしまいました。曇りない透視力はかつて彼を苦しめもしましたが、今はそれすら楽しむゆとりが生まれていました。何せ相手は最愛のひと。 傍らに座るエオウィンが生き生きと語りだすのを、彼はやんわりと受け止めます。
「それでですね、殿。わたくしがかつて暮らした草原の国について話しましたら、御礼にと、姫はドル・アムロスのことを話してくださいましたのよ」 「それが私の射た半分ですね」 「ええ。わたくしの知らない、見たことのない、不思議な不思議なお話です」 「それに惹かれなすったのでは?」 「勿論それもございますわ。けれどわたくしがかの海の都へ惹かれるのには、もう一つ理由があるのです」 「もう一つ……?」 「はい」 意味深げな口調で続ける妻に、つい彼はまた目をぱちくりとしてしまいました。それに彼女はまたもくすくすと笑みを零します。だってこの不器用に優しい殿御がこんな顔をするだなんて。あの拭い切れない憂いのヴェールを常にかぶったようなけぶる灰色の瞳が、少年のように澄み、熱っぽくさえなるのなんて、妻の前だけなのですから。 彼女は衣擦れの音もあでやかに、ファラミアへ向き直ると、おおいなるものを全て抱きこもうとする微笑をもって、目を細めました。そのかいなが持つものは最早盾ではなく、悲しみも痛みも喜びもありとあらゆるものを内包していました。 エオウィンは、何処かに傷を帯びたような蒼い微笑を深めました。 「かの地は殿の母上様の都でもございます」
見開かれた灰降る瞳ににうつるのは。同じ金の髪。彼の生涯に、最初のかなしみを灯した人と同じ。けれどもファラミアが、その胸を錆びた針で衝かれるような痛みを思い出す前に、目の前にきらりと煌いたものは。 すらりとしなやかに強い、細身の鋼のように凛とした。優婉にして強靭な微笑。 それを感じて、かれは、ああ、と思いました。ぎこちなく浮かんだ笑みが泣き笑いのようだということにも、まるで小さな子供のように見えるということも、彼は知りませんでした。 知って、それでも受け止めるのは彼女だけ。
「わたくしは殿の母上様に御目文字かないませんでした。父上様も同じです。ですから今、わたくしに出来ることは、かつてのお二人のお話を伺うことくらいなのです」 不器用ではあったけれど、静かな愛情に満ちた夫婦でした。ただ少し生真面目が過ぎて、ただ少し心優しすぎて、ただ少し東の闇に近過ぎただけだったのです。 「殿の母上様は殿を愛されました。そしてそれとはまた異なる愛を持って、かの大海を愛されたと」 蒼海に臨むその都が翻すは鳥、空よりなお濃き紺碧に舞う白鳥の都の姫君。彼の母は、そのような人でした。ですから美しく荘厳ではあるけれど、冷たい石で出来た白き王城は、母にとって非常に寂寞とした気持ちを抱かせるものだったのでしょう。 「ゆえにわたくしは、海を見とうございます。かつてわたくしの殿を愛してくださった、また殿が愛された方が、それほどまでに愛された海というものを、わたくしも知りたいのでございます」 海を愛し、海を求め、海に焦がれて亡くなったひと―― 「そして殿を愛したその方のことを、少しでも知りたいと願うのです」 幼子を残し去らなければならなかった若い母親。けれども彼女の遺したそのおもいを確かに引き継ぎ、長く苦しみ続けた執政家の次男をありったけのおもいを込めて愛する存在が現れたということ。 知りたいのです。そして伝えたいのです。大洋よりなお遥けき彼方におわすであろう御方に。
ファラミアは、妻から聞こえてくる裏表のない声と、自身の声がないまぜになるのを感じました。それは何故だか、彼になにやら泣きたくなるような気持ちを喚起させるものでした。権謀術数に冥い憎悪、そんなものなど欠片もない、ただ真っ直ぐ透明に貫いてくるエオウィンの声。それはまるで彼女が手ずからファラミアにそそぐ、雪解けにさざめく光のせせらぎのようでした。 彼は一瞬、ふ、と。額を妻の細い肩に押し付けるようにして、うつむきました。すると彼女は言葉を発することもなく、さらりと滑る長い袖の音だけを囁かせて、ファラミアの黒髪に指を添えました。まるで幼子を守ろうとする、母のような微笑がそこにはありました。 とくり、とくりという心音に心安らかにさせ。ゆっくりと上げられた彼の顔には、見紛いようのない微笑が刷かれていました。何かとてつもない壁を一つ、飲み込んだように深遠なものでした。痛みと悲しみだけでなく、喜びも共にいだいた彼は、最初のように穏やかに問いました。 「成る程。だからあなたは、ドル・アムロスへ赴きたいと?」 「はい、殿」 「海を見るために」 「殿のお時間が取れましたら」 「おかしいですね、エオウィン。あなたも私も、常に海を目にしているのに」 「え?」 今度はエオウィンが目をぱちくりとする番でした。思いがけない返答に、ざっと色んなことがらへ考えを巡らせます。このイシリアンの森の只中で、いかにして遠い海を目にすることが出来ようかと。館内の絵画にも、そのような構図や主題のものはありませんでしたし、海に所縁のある物に心当たりもありませんでした。 一体どういう意味なのかしらと、頭に疑問符を載せそうになったとき、彼女は気付きました。彼女の殿が、悪戯っ子のようなしたり顔で、くすくすと微笑を零していることに。 「我が奥方」 仰々しい言葉はすっかりみせかけ。微細な笑みの欠片は次から次へと零れてきます。彼は、妻の頬へ流れてくる見事な金髪をゆっくりかき上げてやりながら、そっと白皙の肌に触れました。そしてこの世のひみつを解き明かしたかのごとき口調で、彼女に、喜びの熱を帯びた溜め息のように囁きました。 「あなたのその瞳こそが、海そのものであるというのに!」
薄い色味。淡い彩。 しかし彼女の瞳が宿すのは、ほのかに輝く水縹。 紺青に水をそそいだかのようなそれは、海という言葉に付随する、彼の苦く痛い記憶を、色と共に薄めて甘くしみこませてゆくようでした。
「いつもあなたは私に、言葉の持つ新たな意味を教えてくれるのだね」 そう言い、妻をすっぽりと腕の中に包み込んでしまうと、彼を見上げてくる海の瞳がまた側に見えました。もう驚きに縁取られてはいない、親しげなおかしみに煌く、楽しい蒼がそこにはありました。 かなしみの記憶を振り払い、捨て去るのではなく。またそれに囚われるのでもなく。歩み続ける日々の中、新たな意味を誰かと見つけ出してゆけば良いのだと。 彼は余りにも多くのものを失い、余りにも悲哀と親しくなりすぎました。けれど今、彼の前には、ありとあらゆる冷たい記憶を見る間にぬくく染め上げて、温めてくれる妻がいました。彼女がそんなことを出来るのは、彼女もまた多くのものを失ったからですが、それでもエオウィンは揺るぎない親愛の温もりを失うことはなかったからです。だからこそ二人は寄り添いあうことが出来るのでした。 凍えるものにはあまいぬくもり。そっとあげるものでしょう?夜の帳の裾を引いて。
暫し後。果てなく続く砂と海、それらの織り成す目にも鮮やかな蒼白の景色。 そこでは歓声を上げて波と戯れ駆けてゆく、二人の幸福に満ちた男女の姿が見られたそうな。
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