駅前のさびれたお菓子屋にぽつんと張り紙が張ってある。
『オミヤゲに○○さぶれ』
なぜに『さぶれ』とひらがなで書かれているのだ。 ちなみに○○は地名で、しかも漢字だ。 これを見て、人はどう反応すればいいのだろう。 『サブレ』というお菓子は存在する。それはしっとりとしたクッキーのようであり、動物の形をしているものが多く、食べるとボロボロとこぼれるお菓子だ。 しかし、これはちがう。『さぶれ』だ。カタカナの『サブレ』とは絶対に違うものだ。仮に『サブレ』が難しい当て字を使うもので、『茶舞礼』などと仰々しい字ならひらがなにするのも理解できる。でも、外国産の『サブレ』にそんな当て字はない。 もしかすると、ひらがなで書かれているのには意味があるのでないか?よく見てみる。『さぶれ』だ。『さぶりましょう』とか『さぶるとき』とか『さぶろう』などでなく命令しているのだ。もしかしたら『さぶる』という動詞で命令しているではないか。オミヤゲにここで『さぶ』って行けと強要しているのだ。こうなれば『さぶる』について調べなくては気が済まなくなった。 まずは辞書で調べてみる。
あいにくと『さぶる』という単語はなかった。 それなら、『さぶ』しろという意味かもしれない。『さぶ』で調べてみた。すると以外に多くの『さぶ』がある。カタカナの『サブ』は別。ひらがなで表現しているものでなくなってしまう。以下の『さぶ』があった。
・寒→寒いこと ・左武→武を尊ぶこと。武を重んずること。 ・左舞→さまい(意味が調べきれず) ・荒ぶ、寂ぶ→さびる。生気、活気が衰え、下の姿などが傷つき、いたみ、失われる意。 心に寂しく思う。わびしがる。 (色などが)あせる。みすぼらしくなる。衰える。 古びて趣がある。 ・錆ぶ→金属にさびが生じる。 ・さぶ→名詞について上二段活用の動詞をつくる。そのものらしい態度・状態だ。
あと、近いところで『さぶりこ(遊女・うかれめの意味)』という言葉があった。一応、『さぶる』=『遊ぶ』も候補にあげておくか。
踏まえて考えてみる。 先に書いたように〇〇は地名だ。 『寒』『錆ぶ』『さぶ』では意味が通じない。
『左武』だと、 「オミヤゲに〇〇で武を尊んでいけ」 ここは武術の里ではない。
『荒ぶ、寂ぶ』だと、 「オミヤゲに〇〇をわびしがれ」 わびしがれとは、謙虚なのか傲慢なのかよくわからない。
『遊ぶ』ではどうだ。 「オミヤゲに〇〇で遊んでいけ」 意味としてはキレイだ。 きっとこれに違いない。
間違っているとわかりつつ、こじつけで理解するのであった。
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