原初

羅列 回帰



―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2008年07月28日(月)
ハリー・ポッターと死の秘宝を読み終えて。


それではハリー・ポッターと死の秘宝についてネタバレ全開でお送り致します。ごめんなさいやや嘘です。ややってなんだややって!
積極的に明かしていくつもりはありませんが触れたいネタについては気分次第で配慮してみたり容赦なく記したりしますので、先入観無しでいきたいんだという未読の方、或いは自分の中の思い出として昇華したい既読の方も自己判断にて撤退が正しいかと思われます。では以下スクロール。反転はしていないので御注意下さいませ。






































・ダンブルドア
丁度以前日記で触れた彼の詳細について、予想以上の手応えがありました。
流石奇人変人の宝庫ですから、ただの聖人君子に留まらず。過ちや愚かさを誠実に時に辛辣に綴られるからこそ、より人間としての深みを感じ入ります。
伏兵どころか割と活躍するアバーフォースや、まさかの鼻折れまで、小さな理由があるとぐっと現実的で、ある意味では死の秘宝にはハリー・ポッターの名を冠さずダンブルドアがぴたりとくる。尤もそれは後述のセブルスや、或いはヴォルデモートにも言える事なのですが。

また、下巻も終盤の方でダンブルドアは裏切っていた、とハリーが知る場面がありますが、そして驚きも無いと、それは若き日のダンブルドアの言葉を借りて説明もされていますが、実際、納得してしまうのがこの人物の懐の凄さだと思う。そんな事無いよって否定に走るより、それもあるかもと思えてしまう。
あれだけ人が良さそうな、まさに好々爺として振る舞い、且つハリーを愛していると云っていたのに。それでも、六巻分で接した人柄と、事の重大さを考えるに当たって、その無慈悲ささえ、必要なピースなんだって。
他へは生徒以上のハリーへの愛情を示した事はあまり無いのかも知れません。最後の大きな仕掛けを打ち明ける時の為、若しそれが垣間見えたら話す方が躊躇うかも知れないしハリーも狼狽えてしまう危険性から、必死に抑えたのか、それとも裏切りだったのかは読者のみぞ知る。

それと、青い目の煌き。既刊でも何度か触れられていて、実は開心術でも使ってるじゃないかと思っていたんですが、多分そんな事は無いですね。無闇やたらと利用しないって信じておく。アバーフォースとの唯一の繋がりとも取れるそれは、たったそれだけでもきっと大切な事なのです。

しかし分霊箱の存在を知っていたなら、もっと早く壊せないものだろうか? なんて邪推。
いや、プリンスで出した情報を集めるのに、それから場所や代物を特定するのにこれだけの年数が掛かったといわれたらそれまでなんですが。切羽詰ってるんだから、多分そこはそういう事情でしょう。
取り敢えず最後の壊し方についてはまだ理解が不完全なので何度か読み返したいところです。

ところでダンブルドアといえばワンセットの扱いも間違いじゃない不死鳥フォークスは、終ぞ現れる事がありませんでした。真の信頼を示す場面がなかったからだろうか? 僕らにとって衝撃の事実であれば、ハリーにとってはもっと衝撃な事ですから、文章を追うだけの表層的な情報以上の。
いや、しかしいつだって最終的にはそこに行き着くのだからして、是非やって来て欲しかった。加勢して欲しかった。それともダンブルドアが亡き者になった時、彼にも死に等しいものが訪れたのだろうか?
そして実は立てていた杖予測で、再びフォークスの尾羽根を使うんじゃないかとか考えていたのに非介入により没りました。畜生。


・セブルス
もう僕ずっとセブルスでいくからね! ダンブルドア以外に、過去そう呼んだ人が二人くらいしか思い当たらないので(御両親は呼んでいたのやも知れませんが)愛を込めて、そう呼びたいんです。
しかしあの人の存在を語るには、死の秘宝では足りません。勿論役どころとして重要なのです、ダンブルドア程大々的にして詳らかに記す事は出来なかったのでしょうが(此方も死後ですし)、凝縮して詰め込まれたのだとしても、それでも、足りない。あんなたったの数頁じゃ、全然足りないんだ。だからやっぱりセブルス・スネイプとなんちゃらを是非所望したいです。誰か創って下さい。

セブルス愛のサイト様で考察を拝見した際、表現といいますか、あくまでもハリー視点からの決め付けが作中では多いから、実際の彼がどうであったのかはわからない、とありまして。確かに憎んでいるような、であるとか、のように見えた、であるとか、確証があまりなかったりするんですよね。
かと言ってそれら全部が被害妄想だなんていったら二人共哀れです。セブルスは立派にハリーを憎んでいました。初見から憎悪を叩き付けられたからこそハリーも又そっくり同じになれたのだと。でなければ、ハリーはそもそもが嫌悪をあまり表に出さないタイプじゃないかな。如何にも傲慢として画かれるダドリーや、ホグワーツ生にしてもザカリアス・スミスを否定してもアーニー・マクラミンはちょっと自慢屋なだけと捉えてみたり、ルーナもちょっと変わった子、など、スリザリンは寮対抗意識もあってあれですが。
プリンスの時点で、マルフォイにはある程度哀れみを懐いていましたし、ヴォルデモートも過去を知るにつれ、歩み寄れる程近しいと気がつく。ダンブルドアにまさか同情していないかと問われた際否定したけれど、明らかな相違点、異質を感じながらも酷似点を無視は出来なかったんだと思います。
あれいつの間にかハリーの話になっとう。

さてここからはちょっと危ないネタバレ部分。
組分けが必ずしも正しい訳ではないと言葉を聞いて驚愕するセブルスですが、シリウスを憎んでいた理由が、学生時代の確執のみならず、つまり秘密の守人であった筈だという事実に基くのであれば、永遠に思いを持ち続けられる程の強さであれば、それも一つなのではないかと。
あくまでも本人の意思を尊重しての結果ですから、セブルス自身がそう思わなければなりませんが、若し寮が離れる事無く、近しくあれたのなら、所詮ifに過ぎないけれど、その過程で変わる事が出来たのでは無いかと。
そうすれば、あんなにも儚く、ささやかで、ちっぽけな願いを、あんなにも苦しそうに、呟かなくたって、もっと満たされたのではないかと。
その辺を是非歴代校長と同じ手法で以て語ってくれる事を期待していた僕は本当に残念です。ダンブルドアの時も思いましたが、ひょっとして時間が掛かるのだろうか。であっても、年数が経っても、セブルスとハリーは真実を知った上でどのように語り合うのか大変に興味があります。機会の有無に拘らず、何せダンブルドアと肩を並べるとある意味では解釈した訳ですから、憎々しく傲慢な口調や犬猿の態度であっても、以前のように綺麗さっぱりな関係には、なれないんじゃないかな。

※(伏せようの無いネタバレなので次のめこ印まで反転)
それにしても悲惨と言うか、勿論人生もそうですが、兎に角何から何まで。苦しまずに死にたいというダンブルドアの言葉を深ーく理解したでしょうね。
何ゆえアバダケダブラでないのか、ヴォルデモートなりに敬意を表したのやも知れません。後述しますが、何れにせよ郷はなんだかやる事なす事裏目に出っ放しに思えます。
というよりも、大事にしている筈のナギニじゃなかったか? ちょっとばかり餓えていて可哀想だとか思ったのか? 唯一の愛情を持っている可能性、とまで言われましたからね。
苦しみもがく程の余力も残されず、最期の最後までダンブルドアの意向にそぐうよう努力し、その対価が似たような緑の目では、あんまり浮かばれません。
例えばあのキングズクロスを超えた時、例え憎々しい奴が隣にいても、永遠の人が迎えに来てくれたのならばと願ってやみません。




・ヴォルデモート
話のスポットが分霊箱探しであったりダンブルドアの信憑性であったり、またセブルスの強烈さにも押されてうっかり霞んでしまいそうな郷ですが、にしても終始実にあっけないと、言わざるを得ません。
しかしそこにこそ意味があるのかなと。悪を必要以上に美化する事は、影響のある作品ですから、そうした意識からもいけないんじゃないかと。
勿論そんな商業的道徳のみならず、ダンブルドアもセブルスも光と闇を真摯に画かれているよう、ヴォルデモートも散々、本人の特異性だけではなく周囲にも難ありとはされていますが、神々しく、仰々しく、し過ぎれば死喰い人同様神格化してしまった方々が奉らんとも限りませんから。

ところで魔法についての疑問が幾つかあるんですが、使用者の魔法力や杖との相性によって差があるのは当然として、魔法自体に優劣があるんでしょうか。それは、終盤の決闘場面にてひしひしと感じました。
ルーピンか誰かが、ヴォルデモートが復活するような危機迫る場面でもそうだったけれど追われているのにエクスペリアームズを使用するなんて! と叱責か若しくは失笑に程近い驚きを示していますが、その言葉からはやっぱり優劣ありかなと感じるんですが、ハリーは秘密の部屋以降なんだかだ武装解除呪文に頼りそして救われていますから、それがハリー・ポッターとして伝える正義と言うか、人を傷つけずにやり込める方法として定義されていたのだとしても、最強ではないのだと、だからこそ価値があるのかなと。みんなにあるものだよ、誰かを傷つけるものじゃないよ、っていう普遍さが。
価値と言えば無言呪文にも疑問ありです。ある程度熟達してくれば、言わない方がいいに決まっています。敵対しているならば尚の事、何をされたか疑問を懐くだけでも時間稼ぎになりますから。にも拘らず汎用ではないようなのは、今度は強弱に関係があるのかなと。述べる事で宿る力があるのかなと。
その点は効用を叫ぶところでも感じます。さっき言った魔法なら、エクスペリアームズ武器よ去れ、と翻訳されていますが、必ずしも言わなくても、つまりエクスペリアームズだけでも通用する中、その魔法が使用される緊迫のシーンでも、言うか言わないかは半々ぐらいだと思うんです。余裕があるなら言った方がより確実になるって事なのだろうか。
あれ魔法の話になってね。ヴォルデモート何処に行ったんだ。きっとアルバニアだw

で、先に言いましたがこの巻の郷はなんだか失敗が目立つ気がします。というより、思うように出来ずに苛立つ事が?
ハリーという未知やダンブルドアの老獪さに惑わされているといえばそれまでですが、中々威厳を感じ取る事が出来ません。そうそう、原書を読んでいる方がなんか言っていたのですが、翻訳がワタクシじゃなくて俺様なのが気に入らないって。それ、ちょっとわかります。ワタクシで通して貰っていたら、もそっと見方が変わるのかも。
ダンブルドアは死んだ!  が思うような効果を発揮しなかった件も、ちょっと痛い子に見えてしまいます。所詮俄か仕込みの知ったかぶりでは、痛みを伴うものだという事実だけを知り何故痛いのかを知り得なければ、上手くは使いこなせないという事か。それじゃ一生無理な話。
しかし最大の過ちといえば、理解しなかったからの愚かさだとダンブルドアも説いていましたが、彼には理解出来ないものを利用出来ると深く考えずに取り入れた事による、結びつきの強固。
結局これが実に作用する訳ですが、傷跡の痛みも若しかしたら復活のみならずその点がより、ハリーの心をヴォルデモートに近づけ覗き込む仕様になったのやも知れませんし、しかし何度か読み込んでもキングズクロス行きか否かという最終判断に行き着きません。その作用の詳細と言いますか、つまり、ヴォルデモートにしても機会があるべきでは?

ところで、収容の仕方が幾つか触れられていたので気になったんですが、赤子の時の出逢い、ゴドリックの谷に郷の遺体はあったんでしょうか。魂の残滓として生き残ったのだから、彼の手元には肉体も無く、でもアバダケダブラは破壊や破裂ではなく、皆傷一つ無くマグルにすれば原因不明の死に方なんて呼ばれるぐらいですから、いやいやでもハリーとヴォルデモートについては不思議な事がいっぱいですからね。
死んだと思えない、そう言われるんですから、遺体は確たる証拠になってしまいますから、霧散しちゃったのかも。残っていたらば処理するのに相当の恨み或いは相当の喜び若しくは相当のおそれで、担当者は酷く喚いたでしょうね。それとも皆辞退の騒ぎか。


・リリー・エバンズ
ジェームズをあっさり襲ったのに対し、ずっとヴォルデモートは、リリーは逃げられると言っていた。それは勿論ハリーが予言の子であるからもそうだけれど、まだまだ隠し玉の理由があったのよん、という、相変わらず伏線の息の長さに吃驚です。いや、ある程度予測していましたが(笑)。

ただ、ハリーが疑問に思っていたように、何処でどう考えが変わってジェームズと結婚に至ったんでしょうかね彼女は。是非馴れ初めも親世代話に含めて欲しかった。だってジェームズの在りし日の姿といえば、我々傲慢な事しか知らないものですから。

語って欲しかったといえば、そもそもなんで鹿なのかなとか。ハリーはジェームズから譲り受けた形ですが、その始めになんで鹿なのか。鹿の象徴的な意味合いにいまいちぴんと来ないので。尤もそれをいったらトンクス以外は大抵意味不明なんですがね。カワウソってどうよ。それってつまりハーマイオニーが変化したらカワウソって事だろう?(笑)


ちょっと長くなってしまいながらこの後もまだまだ語りたいので分割していきます。続きは又明日に。


原初 羅列