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2020年08月26日(水) 少林寺拳法における「健康プログラム」の位置づけ

板橋菩提樹道院長:鈴木秀孝

1、はじめに
 日本は、2020年に人口の29,1%、2035年に人口の33,4%が高齢者(65歳以上)となります。2019年現在、少林寺拳法を指導する道院長の平均年齢は62歳であり、満65歳以上の道院長は全体の約47%を占めていす。
このため、若くして道院長となった高段者も年齢を重ねるごとに気力・体力の減退により、若い頃のような動きは出来なくなっています。しかし自らの努力によって気力・体力の衰えを遅らせることはできます。
「生涯現役」であるためには、入門した時から年齢を重ねても衰えを感じさせない身体をつくるための修練方法を行わなければなりません。もちろん中高年の拳士が身体的な衰えを感じ始めてから身体づくりを始めることも必要です。
 開祖時代、「育てる拳法、鍛える拳法、養う拳法」ということが言われ、「級拳士科目表」、「有段者科目表」、「年少部科目表」のほか、中高年向けに「特別科目表」が作られましたが、「特別科目表」は自然消滅してしまいました。
現在、若い頃に少林寺拳法を始めて年齢を重ねた現役拳士や中高年から少林寺拳法を始めた現役拳士など中高年拳士に対する修練方法などは提案されていません。 
 2019年度道院長研修会では、「道院長の高齢化への対応」、「中高年向けの修行法の確立」が提唱されていますが、具体的になっていません。しかし、2011年度から実施されているコース制を中高年の修練方法として応用できると考えました。
 そこで2016年に「少林寺拳法シニア講習会」を開催し、新たなる試みとしてコース制プログラムを少林寺拳法を修練すための「身体づくり」として実施しました。
「少林寺拳法シニア講習会」は、「少林寺拳法を修練している中高年が年齢に応じて怪我なく、健康維持・健康増進を図ることができる稽古方法を学びます」、「少林寺拳法を修練している中 高年が『少林寺拳法健康プログラム』を究めて現役寿命を延ばし、少林寺拳法を生涯楽しめる身体づくりを学びます」というテーマで行いました。

2、少林寺拳法における「身体づくり」について
現在、日本において行われている武道には「柔道」、「剣道」、「空手」、「合気道」、「弓道」、「なぎなた」、「相撲」、「銃剣道」、「中国武術」、「少林寺拳法」(宗門の行であるが、あえて武道として考える)などが挙げられます。
 これらの武道に共通している「身体づくり」とは何かと考えると、「丹田」、「中心軸」、「呼吸法」、「瞑想(座禅、鎮魂)」、「ゆるめる(力をぬく)」というキーワードが浮かんできます。
これらキーワードは、少林寺拳法の「身体づくり」でも重要なものですが、これまで少林寺拳法ではあまり強調されてきませんでした。また、「丹田」、「中心軸」、「呼吸法」、「瞑想(座禅、 鎮魂)」、「ゆるめる(力をぬく)」を修練する方法も明確に示されていませんでした。
開祖は、教範及び整体医法秘訣で「調息法(呼吸法)」の重要性を「息を整え身心を同時に鍛練し、気力と体力を最も効果的に活用する方法である」、「息は凡仏一如、神人合一の境に達することができる妙法なり」、「武道、芸道の基礎ともなり、治病保健の妙法としても重く用いられている」と説いています。
 しかし、我々は開祖の説かれた「調息法(呼吸法)」の重要性 を忘れてきており、鎮魂行における調息も形だけになっていないか、その目的も効果も実感できていないかと思います。
 今回、「調息法(呼吸法)」を中心にして武道、芸道の基礎となる「丹田」、「中心軸」、「ゆるめる」、「瞑想(座禅、鎮魂)」を健康プログラムによって改めて学んでほしいと考えています。(2020年8月24日) 以上


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あつみ [MAIL]