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2006年03月19日(日)

海の見えるカフェに行った。天気がよくて、ついつい浮かれてドライブの足を伸ばしてしまう。こんなに気持ちのいい日に、家にこもっているなんて損している気分になるから。

そこは堤防のすぐ脇のビルの二階にあって、広く大きな窓からは穏やかな海が見える。窓際の席に陣取ると、沈みゆく太陽は時折雲に隠されながらもやわらかく私たちを照らした。
私はカスタードキャラメルと(の香りがする紅茶。もっと濃厚な味のものだと思っていたのに)洋梨のタルトを、恋人は炭火焼コーヒーと抹茶とマロンのケーキを頼む。

堤防の道は絶え間なく車が行きかう。

退屈そうにタバコを燻らせていた恋人が「行こうか」と言った。




2006年03月15日(水)

夜の街はいつもきらきらしている。都合の悪いものは闇に隠されて。まばゆく光っている。
夜の外出は不思議な気分になる。それがどんな理由であれ。
アクセルを踏み込む足に力が入る。車はどんどんスピードを上げて、どこか遠くに行ってしまいそうになる。




2006年03月13日(月)

恋人が本を買った。漫画ではなく文庫本。ノンフィクションの自伝のような本。
恋人は本が嫌いだ。というより私が好きなものがことごとく嫌いで、私の嫌いなものがことごとく好きなのだ。
たとえば、映画。たとえばハードロック。たとえば、ゲーム。
そんな恋人が本をずっと読んでいる。内容はやっぱり私の嫌いな、というより悲しい気分にさせられるのが怖くて避けているものだけれど。
そんな簡単なことがなんだか嬉しい気持ちになる。

眠る前にコーヒーを淹れてあげた。
恋人は本から顔も上げずに、ありがとうと言った。




2006年03月12日(日)

ドアを開けると、おいしそうな匂いがした。
今日は肉まんだと言う。
私は勢いよく上がりこむ。まるで自分の家のように。

たった一ヶ月ぶりだったけれど、愛する赤ちゃんはまた大きくなっていて、いつの間にかつかまり立ちできるようになっていた。
無邪気に笑いかけられて、私も恋人もめろめろになって、そんな様子を親友は笑いながら眺めていた。

用事があったので立ち寄っただけだったので、ほんの2、3時間しかいなかったから、帰るときはなんだか名残惜しく、恋人が急かしているのに何度も気がつかないふりをした。




2006年03月11日(土)

昨日盛り上がった気持ちのままに、私たちは母校へ出向いた。
と、言っても移転したため、そこはただの見慣れない真新しいビルだった。
鈍い銀色の窓の広いビル。目の前に広がる青空。真下で幾重に伸びる線路。

先生は何も変わっていなかった。優しく、几帳面で、心配性だった。
いきなり訪ねた私たちを、何かあったのではないかと不安げな顔だったけれど、何もないとあっけらかんと話すとお前ららしい、と苦笑した。

戻れればいいのに。
何度もそう思った。
今の生活に不満はないけれど。何もかもが楽しかったあのころ。

空調のおかしかった校舎も(夏は寒く、冬は暑かった)、厳しかった校則も(いまどき専門学校なのに茶髪は禁止だった)、大変だった勉強も。
何もかもが懐かしくて。

またおいで。
笑顔で別れた。次はないかもしれないと思っていたけれど。




2006年03月10日(金)

久しぶりの友達からメールが入る。
恋人と距離を置いた、という。
ちわげんかに首を突っ込んでも骨折り損だと知っているけれど、話を聞かずに入られなくなって、夜のカフェへ足を運ぶ。
こういうときにカフェは便利だ。飲み物一杯で何時間でも話せるから。

私はイチゴのフレッシュジュースと季節のタルトを、彼女はグレープフルーツジュースとガトーショコラを頼む。店の真ん中のふかふかのソファーに体を沈めて。
離れた方がお互いに楽になると知っていながら、恋しくてたまらないのだと。言わないけれどわかった。それが不幸への道だということも。

どれだけ話しても、話足りなくて。私たちは海へ向かった。幾人かと友達と合流して。
私たちはいつも迷い、突き当たると海へ向かう。
何をするわけでもない。冬であれば車の中で、夏であれば防波堤や海岸に腰掛けて、ただひたすら話した。繰り返す波の音を聞きながら。
海に行っても答えはいつも見つけられないけれど、なぜか心が落ち着いた。潮の匂いはいつも私たちを大人にした。
いつまでもこうやっていられたらいいのに。
そう思ったけれど、口に出すのは辞めておいた。
そう遠くないうちにこうやって会えなくなることを知っていたから。




2006年03月03日(金)

昼休み。会社の先輩と話をしていたら、どうしても髪の毛が切りたくなった。
私はその衝動を抑えきれずに、仕事をこっそり抜け出し、美容院に予約を入れた。

夜の美容院は静かだった。私以外に客はいなくて(閉店間際だった)ただ広くぽっかりとしていた。担当のお姉さんとアシスタントの人以外はみんな奥に控えているようだった。

長く伸ばしていた髪を5センチほど切り落とす。
鏡の中にいる自分はひどく疲れていて愕然とする。
美容師さんはこんな時間でもメイクも乱れず、髪の毛から足の先までかっこいいのに。
髪を切ればきれいになるわけじゃないと知っている。それでも何か変わるような気はしていた。そう信じたかった。
でも完成に近づいても、私はちっとも変わらず、髪を切った分ただ疲れた顔がはっきりしただけ。
それでもよかった。
青りんごの匂いが私もなだめた。




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