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ブーツィラの音楽雑記



 最後の琵琶法師・山鹿良之師のDVD付き新書発売

4/21(火)に岩波新書から『琵琶法師―<異界>を語る人びと』が発売された(学習院大学文学部教授・兵藤裕己著, 1,029円)。
1週間近く前に新聞広告で知る。「演唱の実像を伝える稀少な映像DVD付き」とのことで、誰の映像が収録されているのか気になっていたのだが、「最後の琵琶法師」と言われる熊本県出身の肥後琵琶奏者、山鹿良之(やましかよしゆき, 1901-1996)師であると、おととい偶然知り、昨日(4/27)急遽買いに走った。

新書『琵琶法師』の売りは、山鹿良之師による琵琶弾き語りの貴重な映像が約21分収録されている付録のDVD(8cm, 字幕及びフシの注記付き)だろう。新書にDVDを付けるのは初の試みだそうで、段物(語り物)の「俊徳丸」全七段ヴァージョン(約6時間半)から、三段目の一部がDVDに収められている(俊徳丸の継母おすわが、実子に長者の家を継がせるため、俊徳丸のわら人形に呪い釘を打ち込んでいく場面の辺り)。映像は、1989年3月14日に熊本県南関町小原にある山鹿良之師の自宅の居間において、著者の兵藤裕己氏が撮影した(定点・ワンカメ、ズームアップ等なし、映像から山鹿師の生活の貧しさ・困窮ぶりが想像される)。

中世の琵琶法師の姿とその放浪芸を生々しく伝えるリアルな映像に衝撃を受ける。山鹿良之師の琵琶弾き語り音源は、本書の著者の兵藤裕己氏が制作に関与している3枚組CD『肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界〜語りと神事〜』(2007年発売)などですでに聴いているものの、“動く山鹿良之師”のインパクトはCDの比ではない。1989年という山鹿良之師の最晩年の資料映像ながら、そういった映像にありがちなこじんまりとしたお行儀の良い演唱とは無縁どころか、むしろ対極にある。粗い映像のなかから「最後の琵琶法師」山鹿良之師が放つ得体の知れないパワーにしばし呆然とさせられた(おかげで、その日聴くつもりだった某現役アーティストの新作CDを聴く気になれず、山鹿良之師の3枚組CDを引っぱり出して聴いた)。

新書『琵琶法師』は、明日以降じっくり読むつもり。山鹿良之師のドキュメンタリー映画『琵琶法師 山鹿良之』(青池憲司監督, 1992年)のDVD化や、山鹿良之師の演唱映像の数々をまとめたDVDの発売にも期待したい。

最後の琵琶法師弾き語り、岩波新書の付録DVDに(『asahi.com』2009年4月22日)

【2009.5.16追記】
ドキュメンタリー映画『琵琶法師 山鹿良之』(1992年, 青池憲司監督)が、8/6(木)&8(土)19:30?()から東京・中野の野方区民ホールで上映される予定らしい。詳細はブログ『琵琶法師 山鹿良之』参照(→のちにブログ名を『青池憲司監督 琵琶法師 山鹿良之』と変更)。
開演時刻の書き込みが「19:30」と「19:40」とで二転三転しているため、「?」を記しておく(2009.5.22)。

2009年04月28日(火)
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