| 2025年10月26日(日) |
潜行一千里 ILHA FORMOSA、無明の橋、少女はアンデスの星を見た、もしも脳梗塞になったなら、安楽死特区、もういちどみつめる |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『潜行一千里 ILHA FORMOSA』 2019年7月14日付題名紹介『典座 TENZO』などの空族=富田 克也監督が、現在の台湾文化を記録したドキュメンタリー。 元々は『典座 TENZO』をカンヌやマルセイユの映画祭に出品 した際に知り合った台湾人プロデューサーから「次は台湾で 撮らないか」と誘われ、そのリサーチを兼ねて台湾の原住民 部族を取材したという作品。 題名の『潜行一千里』は何とも大袈裟だが、空族では以前の 作品でも同様のドキュメンタリーをこの題名で製作している ものだそうだ。そして副題の『ILHA FORMOSA』はポルトガル 語で「美しき島」、台湾の別名とされる。 そんな作品は、現在も16あるとされる台湾の原住民を訪ね、 その祭りなどが取材されている。因に台湾では先住民は既に 消滅した部族を指し、現存するものを原住民と称している。 中ではアボリジニという言葉も使われていた。 そして祭りは収穫豊穣を祝うもので、多くは日本の盆踊りの ような輪になって踊るものが撮影されているが、そこに登場 する民族衣装の華やかなこと。恐らくは伝統のものなのだろ うが、そこは日本とは違う感覚でもあった。 その一方で祭りで歌われる曲の中には沖縄民謡に近いものも あったりして、その辺は文化的なつながりも感じられたもの だ。そこからさらに原住民出身の歌手やラッパーなども登場 して若者文化とのつながりも探られて行く。 その発言の中では失われつつあった原住民の言語の問題も提 示され、日本を含む外国の支配の下で消滅しかかった言語が 現在では国語教育の一環として復活し、最大種族のアミ族は 20万人を超える人口になっているとも紹介されていた。 さらには2013年2月及び2014年7月で紹介した映画に描かれ た『セデック・バレ』にも言及され、実に様々な側面で台湾 文化が紹介されている。とは言え作品はあくまでも映画の準 備活動の一環で、あまり深くは追及しない。 そこは残念とも言えるかも知れないが、それは2026年に撮影 される予定の空族の次回作で明らかにされるのだろう。そん な期待も抱かせる作品に仕上げられていた。壮大な予告編と しても良くできている。 それにしてもこういう文化が中国に統一されると失われるの かな。そんなことも考えてしまった。 公開は11月22日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。また新宿K's cinemaでは空族特集 も同時開催の予定だそうだ。 なおこの紹介文は、配給会社空族の招待で試写を観て投稿す るものです。
『無明の橋』 2019年12月29日付題名紹介『もみの家』などの坂本欣弘監督 が、地元富山県立山連峰の麓にある芦峅寺集落で3年に一度 行われる布橋灌頂会をモティーフに描くドラマ作品。 主人公は都会の美術館に勤める女性。その美術館では山岳信 仰絡みの展示が行われており、そこに掛けられた立山の曼陀 羅絵に彼女は心を惹かれる。そしてその中に描かれた布橋灌 頂会に導かれる。 それは女人禁制だった立山の麓で女性のために開かれる祭礼 で、そこでは三途の川に見立てられた川を渡って現世と彼岸 の間を行き来するものとされる。そして心にある思いを秘め た主人公は祭礼に参加する。 その祭礼で女性たちは白装束に身を包み、目隠しをして行列 する。その行列では地元の女子高生が介添えをしてくれた。 やがて祭礼を終えた主人公は、帰り道でその女子高生と再会 し…。女性の秘めた思いの沁みる物語が展開する。 出演は、『もみの家』にも出ていた渡辺真起子と、2005年生 まれで本作のオーディションで選ばれ、長編映画は初出演の 陣野小和。他に2018年5月13日付題名紹介『菊とギロチン』 などの木竜麻生。 さらに室井滋、吉岡睦雄、岩瀬亮、山口詩史、岩谷健司らが 脇を固めている。 ザ・女性映画と言う感じの作品だが、その主人公を渡辺真起 子が手堅く演じている。渡辺は日本のインディペンデンス映 画界では正に至宝という感じで、この人が出ていれば外れは ないという安心感も湧く女優だ。 そんな本作は布橋灌頂会という聞き馴れない祭礼が背景とな るが、この祭りは江戸時代に始まったものの明治期には一時 廃れていたそうだ。しかし平成8年から現代的な祭礼として 甦ったそうで、正に女性の祭りが繰り広げられる。 しかもそれが現世と彼岸の間で行われるというのは、現代人 には魅力的とも言えそうだ。そんな背景が見事に生かされた 作品とも言える。なお脚本は坂本監督と同じく富山県で撮影 された2024年『祝日』などの伊吹一の共同によるものだ。 ザ・女性映画と書いたが、男性の胸にも響く作品になってい る。 公開は11月28日から富山県で先行上映の後、東京は12月19日 より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロード ショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ラビットハウスの招待で試写を 観て投稿するものです。
『少女はアンデスの星を見た』“Yana-Wara” 2022年6月紹介『アンデス、ふたりぼっち』のオスカル・カ タコラ監督がその記事でも書いたように急逝した後を、前作 のプロデューサーで監督の叔父にあたるティト・カタコラが 引き継いで完成させた作品。 映画の開幕はアンデスの高地とされる貧しい村落の集合体に よる会議の席で1人の老人が裁かれる様子から。その老人は 孫娘殺害の罪に問われている。しかしなぜ老人は最愛だった 孫を殺すことになったのか? ここから物語は時間を遡り、孫娘の誕生から13歳で老人に殺 されるまでの短い生涯が描かれる。それは誕生の時から「男 の子だったら」という発言に象徴されるものだ。そして少女 は失語症となり、性的暴力にも曝される。 時代背景は1980年、90年代とされるが、物語は実話に基づい ているともされ、20世紀の末期でも南米のペルーはこんなだ ったのだろう。そんな厳しい現実が前作と同様の厳しい自然 の中で描かれて行く。 中には呪術的な描写もあるが、全体はリアルな展開で描かれ た作品だ。それが余計に恐ろしい。 出演はルス・ディアナ・ママミとセシリオ・キスペ。孫娘役 のママミは撮影の現地でスカウトされ、祖父役のキスペも監 督の友人からの紹介ということで、何れも演技経験はない。 その他の出演者も同様のようだ。 監督の前作も多分そんな感じだったと思うが、台詞の硬さな どが却って物語の素朴さを表しているようにも感じられ、こ の素材にこの演出方法は理解できるものだ。まあこの話で流 暢な演技をされても違和感だっただろう。 ただし映画の結末はかなり唐突にも感じてしまうものだった が、このような男尊女卑の風潮は20世紀後半のペルーでは当 然だったもので、その点はしっかりと感じ取らなくてはいけ ないようだ。犯罪者が追及されないのもその流れだ。 勿論モヤモヤ感は残るが、これが現実の世界ということだ。 そしてそれは多かれ少なかれ現代の世界中でも続いている流 れと言え、そんなことが訴えられている作品のようにも感じ られた。そんなことも含めて名作と呼べる作品だ。 公開は12月20日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ブエナワイカの招待で試写を観 て投稿するものです。
『もしも脳梗塞になったなら』 2018年4月22日付題名紹介『明日にかける橋』などの太田隆 文監督が、自らの体験に基づいて描いた不慮の病への対処法 マニュアル映画。 主人公は映画監督。低予算作品が主体らしく、監督は脚本、 製作、編集など7役をこなして寸暇も惜しむ状況だ。でもそ れで浮いた資金を制作につぎ込むなど、映画制作ファースト の考えを貫いていた。 しかしその仕事ぶりがたたって突然視野が狭窄し、記憶力が 低下するなどの症状が出始める。そして下された診断は脳梗 塞。それはATMで操作ができず現金が引き出せないなど生 活にも困難を引き起こす。 そして撮影された映画のポストプロダクションの作業にも障 害が出始めて…。 出演は2017年10月紹介『花筐/HANAGATAMI』などの窪塚俊介 と、2018年1月紹介『風の色』などの藤井武美。他に水津亜 子、久場寿幸、冨田佳輔、並樹史朗、酒井康行、嵯峨崇司、 仁科貴、安部智凛。 さらに藤田朋子、田中美里、佐野史郎らが脇を固めている。 脳梗塞になった人の体験談の映画は他にもあったが、自分も 気を付けなければとは思うもののその症状などは十人十色の ようで、予防法などもあまりないから参考になるものではな かった感じがする。 それに対して本作では発症後の状況に焦点が当てられ、中に は公的な支援の受け方なども丁寧に紹介されているから、そ の点は大いに参考になった。これは聞かないとわからないも のだし、その点は良いと思ったものだ。 マニュアル映画という表記は『マルサの女』や『スーパーの 女』などの伊丹十三作品に対して肯定的に使われていたもの だが、最近は恋愛マニュアルや殺人マニュアルみたいな映画 はあっても実際に役立つものは少なかった気がする。 そんな中で本作は正しく役に立つ映画で、特に脳梗塞は突然 いつ発症するかも判らないものだから、そうなったときの準 備としてこれは本当に優れた作品だ。監督の苦労も察せられ て、本当に応援したい作品だった。 公開は12月20日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
『安楽死特区』 2025年4月紹介『「桐島です」』や、2022年7月紹介『夜明 けまでバス停で』などの高橋伴明監督が、日本尊厳死協会元 副理事長で医師の長尾和宏による2019年刊行の原作小説を映 画化した近未来が舞台の作品。 背景は日本で「安楽死法案」が可決された時代。その法案に 基づいて東京都に国家戦略特区が設定され、そこに安楽死を 行う施設「ヒトリシズカ」が設けられている。しかしそこは 状況に鑑みて簡単に入居できる場所ではない。 そこに若年性パーキンソン病を患うラッパーの男性が入居申 請をパスする。彼は病の進行に苦しみながらも言葉を紡ぎ続 けていた。そしてその病が不治で、余命も幾ばくも無いこと から入居が許されたものだ。 ところが彼には以前の旅先のチベットで知り合ったという女 性のパートナーがおり、彼女は安楽死に疑問を感じて施設の 実態を探るべく潜入を試みていた。そしてその思惑通りの入 居に漕ぎ着けたのだが…。 施設内では様々な思惑が進行していた。 出演は『「桐島です」』などの毎熊克哉と、『夜明けまでバ ス停で』などの大西礼芳。他に加藤雅也、筒井真理子、板谷 由夏、下元史朗。さらに友近、シンガーソングライターgb、 田島令子、鈴木砂羽、平田満、余貴美子、奥田瑛二らが脇を 固めている。 また脚本を、1979年『処刑遊戯』などの丸山昇一が手掛けて いる。 高橋監督と長尾医師は2021年『痛くない死に方』でも組んで おり他にもいろいろコラボしているようだから、友人という か思想的に共鳴はしていると思うのだが、本作は安楽死礼賛 という風には描かれていない。 その辺は脚本の丸山昇一の考え方もあるのかもしれないが、 その脚本家を選ぶ辺りが高橋監督の見識とも言えるのかな。 いずれにしても問題提起という観点でしっかりとした作品に 仕上げられていた。 僕自身は安楽死には反対だが、その目で見ていても納得でき る作品で、いろいろ考えさせられた。但し肯定論の部分は有 り勝ちの論理かな。それも考えての作品かもしれないが。 公開は2026年1月23日より、東京地区は新宿ピカデリー他に て全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
『もういちどみつめる』 2019年2月10日付題名紹介『新宿タイガー』などの佐藤慶紀 監督が、2019年5月12日付題名紹介『よこがお』などの筒井 真理子を主演に招いて現代に生きることの難しさを描いた作 品。 筒井が演じるのは山間のキャンプ場を1人で営む女性。その 女性の許に1人の若者がやってくる。彼は主人公の甥で、母 親の連絡先を知りたいと訪ねてきたものだ。しかし彼女は口 籠り、何か事情がありそうだ。 そんな若者は財布を盗まれたので金を貸して欲しいと言い出 すが、その発言にも怪しさがある。そして彼女を手助けする 近所の男性が若者を諫めるような発言をし、険悪になりそう なところを彼女はアルバイトをして欲しいと提案する。 こうしてキャンプ場の仕事を始めた若者だったが、主人公の 大学生の息子が友達を連れて現れた辺りから不穏な展開が起 き始める。 共演は2006年生まれで2021年の映画に主役デビュー、2024年 李相日監督のAppleTV+ドラマには主要キャストとして出演し たという�眦痛�作。他ににしやま由きひろ、徳永智加来、中 澤実子、吉開湧気、リコ、内田周作、川添野愛らが脇を固め ている。 監督は2022年の少年法の改正で、18、19歳への厳罰化が進ん だことの危惧からこの物語に至ったとしているが、確かにそ の年代の精神的に不安定な状況が作品の骨子になっているの だろう。 それは大人になり切れない若者の苦難とも言えるが、同時に 大人であっても人付き合いの困難な女性の姿も描いて、精神 的なマイノリティの全般に亙って物語を描いているようにも 感じる。これも重大な問題提起の作品だ。 考えてみれば『新宿タイガー』もそんな感じの作品だったか な。実は監督のドラマ作品は初めての鑑賞だったが、これは 監督にとっての永遠のテーマなのかもしれない。そんなこと も考えてしまった。 公開は11月22日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
| 2025年10月19日(日) |
終点のあの子、みんな、おしゃべり!、ボディビルダー、ベ・ラ・ミ 気になるあなた |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『終点のあの子』 2024年10月紹介『私にふさわしいホテル』などの柚木麻子が 2010年に刊行したデビュー作の連作短編集を、2014年5月紹 介『女の穴』などの吉田浩太脚本・監督で映画化した作品。 主人公は小田急沿線で中高一貫の女子高に通う生徒。彼女は 中等部から通う内部生だが、彼女のクラスに高校から入学の 生徒が入ってくる。その外部生は父親が著名なカメラマンで 海外生活も長く経験しているようだ。 そんな外部生が主人公に声を掛けてくる。そして言葉を交わ すようになった2人は、互いに学校への不満なども話し合う ようになるが…。それが他の生徒との確執を生むようにもな ってくる。 そんな状況に主人公は悩みを持つが、外部生の彼女は気にも 掛けていないようだ。そして下北沢のホームで、通学のため には鈍行に乗るべきところを2人は急行に乗車する。その列 車は終点の片瀬江ノ島駅に向かって出発するが。 出演は2025年8月紹介『ストロベリームーン』も記憶に新し い當真あみと、2019年3月3日付題名紹介『WE ARE LITTLE ZOMBIES』などの中島セナ。他に平澤宏々路、南琴奈、新原 泰佑。さらに小西桜子、野村麻純、今森茉耶、陣野小和。そ して深川麻衣、石田ひかりらが脇を固めている。 眩いばかりの女子高生の学園生活というところかな。原作は 4編からなる連作のようだが、映画化は第1作を重点に行わ れており、それは2008年にオール讀物新人賞を受賞した作品 でもあるようだ。 そんな初心な物語は、高校生活なんて半世紀以上も前になっ てしまった男性の身には夢のまた夢のようなものだが、それ でも大人になったから判る心の琴線のようなものには見事に 触れて来てくれたものだ。 そんな面映ゆいような物語が展開されており、多分若い人に は直に響くのだろうが、年を経た身にも心地よくその風景が 感じられた。男女の違いもあるし時代も違うけれど、青春は 不変不滅のようだ。 ただ、原作が20年近くも前の作品ということで、背景となる 小田急線下北沢駅の風情は随分と違ってしまった。ダイヤな どは物語と一致しないところも多々あるけれど、そんなこと は無視して物語に浸りたい作品だ。 公開は2026年1月23日より、東京地区はテアトル新宿他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社グラスゴー15の招待で試写を観 て投稿するものです。
『みんな、おしゃべり!』 2020年2月紹介『なんのちゃんの第二次世界大戦』などの河 合健脚本・監督で、障碍者と外国人との共生について描いた コメディ作品。 登場するのは聾唖者だが電気店を営む男性とその一家。母親 は死別し息子は聾唖だが、娘は健常で一家の手話通訳もして いる。そして男性は家電の修理などではかなり腕の立つ技術 の持ち主のようだ。 そんな一家の電気店に近くで飲食店を開業する予定のクルド 人男性がやってきた日、ちょっとした誤解から諍いが始まっ てしまう。それは町興しの名目でマイノリティの支援を目指 す行政も巻き込んでトラブルになって行く。 出演は2024年8月紹介『BISHU 世界でいちばん優しい服』な どの長澤樹と、世界初ろうプロレス団体「闘聾門JAPAN」の 設立者で演技初挑戦の毛塚和義。他にろう役者の那須英彰、 今井彰人。 さらに2025年2月紹介『花まんま』などの板橋駿谷、2023年 5月紹介『Gメン』などの小野花梨。そしてトルコ出身で日 本で俳優として活動しているMurat Çiçek、ユードゥルム・ フラットらが脇を固めている。 監督自身がCODA(Childen of Deaf Adults)の環境で育ったそ うで、作品の内容にはかなり様々な思いが籠っていそうだ。 でもそれを見事にコメディのオブラートにくるんで、しっか りとしたエンターテインメントに仕上げている。 因に日本の手話は戦前には政治的に禁止令が出たこともある もので、いわば絶滅寸前だった言語。一方のクルド語も今や 絶滅寸前の言語とされ、そんな2つの言語が登場するのも、 本作のポイントと言えるだろう。 聞いた話では地球上では年間30以上の言語が消滅しているそ うで、本作はそんな時代に作られた作品とも言えるものだ。 そしてそこに新たな言語の創造も、一つのテーマとして見事 に提示されている。そこも素晴らしい。 他にもlost in translation の問題などいろいろな要素が現 代を象徴するように鏤められ、それらが巧みに縒り合された 作品とも言える。そして結末の壮大さも、本作を見事に締め 括っているものだ。 公開は11月29日より、東京地区は渋谷のユーロスペースと、 2022年7月24日付『こころの通訳者たち』にて紹介した東京 都北区のシネマ・チュプキ・タバタ他にて全国順次ロードシ ョウとなる。 なおこの紹介文は、企画・配給・製作プロダクションGUM 株式会社の招待で試写を観て投稿するものです。
『ボディビルダー』“Magazine Dreams” 2019年6月16日付題名紹介『HOT SUMMER NIGHTS』 のイライ ジャ・バイナム監督が、マーヴェル映画でヴィランを演じる ジョナサン・メジャースを主演に迎えたボディビルがテーマ のドラマ作品。 主人公はアメリカの片田舎の町で元ヴェトナム戦争の兵士と いう祖父の介護をしながら暮らす黒人青年。低収入で友人も 恋人もいない彼には確固たる夢があった。それはボディビル で名をあげ雑誌の表紙を飾るというものだ。 そんな彼は憧れボディビルのチャンピオンに手紙を送り続け ているが返事は来ない。それでも勤務先のスーパーマーケッ トでシフトの違う女性にようやく声を掛けた主人公はデート に漕ぎ着けるが…。 共演は、2007年2月紹介『ラブソングができるまで』が映画 デビュー作というヘイリー・ベネット。 他に2024年『ビバリーヒルズ・コップ』のリブート作に出演 のテイラー・ページ、プロ・ボディビルダーで「ミスター・ ユニバース」4回優勝というブラッド・ヴァンダーホーンら が脇を固めている。 プロテインをがぶ飲みしたり大量のゆで卵を黄身を抉り出し て白味だけ食べるなど、ボディビルダーにありがちなシーン が次々に登場する作品で、そんなストイックなボディビルの 世界を描いたところがアメリカでは評価されたようだ。 でもこれって日本人の目には案外常識の範囲かな。もっと強 烈な描写が見えるかとも思ったが、予想よりは大人しい作品 だった。ただその裏にある思想みたいなものが、日本人の考 えを超えている部分はありそうだ。 とは言えそれを突き詰めるとかなり右寄りになってしまうも ので、映画の中でも戦争の英雄なんて言葉が出てくると、ま あそんな感覚の作品なのだろうとは思ってしまう。こういう 思想が今のアメリカを支えている訳だ。 それは傍目から観るとかなり戯画っぽくも見えるもので、ど うせならもっとコメディにしてくれたらとも思ったが、これ がアメリカの現実というところなのだろう。そんなアメリカ がリアルに描かれた作品とも言えそうだ。 公開は12月19日より、東京地区はシネマート新宿、ヒューマ ントラストシネマ渋谷他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試 写を観て投稿するものです。
『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』“Bel Ami/漂亮朋友” 中国黒竜江省で20年に亙って映画を作り続けているというゲ ン・ジュン監督が、2020年のCOVID-19禍の中で執筆したとい う脚本を映画化した作品。 主人公はゲイの中年男性。若い美容師の男性と付き合ってい たが最近別れ話が告げられた。そんな美容師は他の男性と付 き合っていたが、さらにレズのカップルから偽装結婚を持ち 掛けられ、体外受精での子作りが提案される。 ところが付き合っていた男性はその面談の状況が不満で席を 立つ、そこに主人公が通り掛かり2人はサウナなどで愛を交 わすようになるが…。そんな男たちの姿がコメディタッチで 描かれる。 出演はゲン・ジュン監督作品の常連とされるシュー・ガン、 ジャン・ジーヨン、シュエ・バオホー。他にワン・ズーシン、 チェン・シュエンユ、ワン・チンらが脇を固めている。 中国では1997年に同性愛は違法でなくなったそうだが、現実 は今も規制の対象とされ、本作も本国では上映不可能な状態 だそうだ。そんな作品は台湾金馬奨に出品されて主演男優、 撮影、編集、観客の4冠に輝いている。 という作品だが、正直に言ってノンケの自分にはなかなか判 り難い作品だ。とは言うもののまあそんなものかなあという 感じには理解出来たもので、その意味では良くできた作品な のだろう。でもまあそっちに走ろうとは思わないが。 映画祭などでの出品国はフランス・ポルトガルとなっていて 中国映画とはされていない。一方、映画の中の台詞は中国語 と英語で、中々複雑な作品だ。でもこれが中国映画の現状な のだろう。 そんな作品の原題となる“Bel Ami” はフランスの文豪ギ・ ド・モーパッサンが1885年に発表した長編小説の題名だが、 元は美貌の青年が上流社会のマダムたちを渡り歩くという話 で、それがこうなるとは文豪も驚きだろう。 でも「麗しの友」という意味合いは本作でも当ってはいる。 そんな友の周りを主人公たちは彷徨っているものだ。それは COVID-19禍以降の希薄になりかかった人間関係への警鐘でも ある訳で、そんな監督の意図は明確に表現されていた。 公開は11月15日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて 全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投 稿するものです。
| 2025年10月12日(日) |
殺し屋のプロット、ヒグマ!!、ネタニヤフ調書 汚職と戦争、楓 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『殺し屋のプロット』“Knox Goes Away” 2024年9月紹介『ビートルジュースビートルジュース』など のマイクル・キートンが、自ら製作、監督そして主演に挑ん だアメリカが舞台のノアール・アクションと呼べる作品。 主人公は表向き2つの博士号を持ち、大学で教鞭を執ったこ ともあるという男性。しかしその裏の顔は、元陸軍偵察部隊 の将校で、犯行現場に全く証拠を残さず、脚の付いたことが ないという敏腕の殺し屋だ。 そんな男が物忘れに気づき、自ら訪ねた精神科医から記憶を 失う病気が進行中で、残された時間は数週間と宣告される。 そして最後と決めた仕事で手違いから標的以外の人間を殺し てしまい、元締めに引退を告げるが…。 そんな主人公の許に10数年前に真実を知ったことで母親と共 に離れて行った息子が訪ねてくる。そしてある事情から人を 殺してしまったので助けて欲しいと頼まれる。こうして記憶 喪失と競いながらの闘いが始まる。 共演は2008年1月紹介『魔法にかけられて』などのジェーム ズ・マースデン。数多くのTVシリーズに出演のスージー・ ナカムラ。2019年2月10日付題名紹介『COLD WARあの歌、2 つの心』でヨーロッパ映画賞受賞のヨアンナ・クーリク。 他にレイ・マッキノン、ジョン・フーゲナッカー、リーラ・ ローレン。さらにマーシャ・ゲイ・ハーデン、アル・パチー ノの2人のアカデミー賞🄬受賞者らが脇を固めている。 そしてオリジナルの脚本を、2005年11月紹介『サウンド・オ ブ・サンダー』などのグレゴリー・ポイリアーが手掛けてい る。 主人公が罹患しているのはクロイツフェルト・ヤコブ病。多 少聞きかじったことのある病名だが。自分も高齢者になって 記憶喪失と闘う立場になっている中で、これはある意味その 恐怖も見事に描かれている作品と言えそうだ。 そして本作には様々なノアール映画へのオマージュも織り込 まれているが、特筆すべきは物語の緻密さだろう。犯罪者側 と警察側、その両者が死力を尽くして犯罪を構築し解決させ て行く。そこには外連もなく、正に人のなせる業なのだ。 しかもそこに観客も欺く仕掛けが施されているから、これは 見事としか言いようがない。正しく脱帽しましたと言える作 品だった。 公開は12月5日より、東京地区はkino cinéma 新宿他にて全 国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
『ヒグマ!!』 プロデューサーが2020年頃に思い付いたという闇バイトとヒ グマを組み合わせた企画を、2020年3月29日付題名紹介『許 された子どもたち』などの内藤瑛亮脚本・監督、鈴木福主演 で映画化した作品。 主人公は大学合格を手にした日に父親が特殊サギに掛かって 自死した若者。未来を閉ざされた彼が行きついたのは違法な 闇バイトだった。そこで彼が関ったのは1人の女性を拉致す るというものだったが…。 同じく闇バイトで強奪した大粒の宝石を持ち逃げしたという その女性を山奥に連れ込み、最初は脅して宝石を出させる算 段は、一瞬の隙に女が宝石を飲み込んでしまったことで頓挫 してしまう。 さらには女を殺して腹を裂いて宝石を取り戻せという指令に 躊躇する主人公らに1頭のエゾヒグマが襲い掛かる。それは 人間の血肉に味をしめた「19」と呼ばれる殺人クマだった。 斯くして闇バイトvs.ヒグマのサヴァイヴァルが始まる。 共演は、2025年『てっぺんの向こうにあなたがいる』などの 円井わん。元ジャニーズjrで2012年6月紹介『闇金ウシジマ くん』などの岩永丞威。さらに『許された子どもたち』に出 演の上村侑と住川龍珠。 そして占部房子、清水伸、宇梶剛士らが脇を固めている。な おもう1人芸人が出ているがシークレットキャスト(?)だそ うだ。 本作は夏ごろにその惹句からSNSなどで話題になっていた ものだが、作品はギャグはあるけどいたって真面目に社会問 題を扱っており、その辺はさすが『許された子どもたち』の 監督という感じがしたものだ。 その一方で内藤瑛亮監督は『ドロメ』や『ミスミソウ』など の作品も撮っているもので、そのエグ味が程よく加味された 作品とも言えそうだ。特にヒグマの造型と操演は試写会での トークショウでも語られたが、画期的なようだ。 そして鈴木福がいい味を出していたが、それに円井わんがア クションは初めてという割にはしっかりと決めており、それ も見ものになっている。しかもこの内容・映像で映倫G-rate を勝ち取ったというのも見事。見逃せない作品だ。 公開は11月21日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社NAKACHIKA PICTURESの招待で試 写を観て投稿するものです。
『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』“The Bibi Files” 2025年10月現在イスラエル・ガザ地区で続いている戦争の背 景を描いたドキュメンタリー。本作はイスラエル・アメリカ 共同製作の作品だが、イスラエルでは上映禁止となり、アメ リカでも一部劇場での限定上映だったそうだ。 映画の冒頭はベンヤミン(ビビ)・ネタニヤフ現イスラエル首 相に対する取り調べの映像。そこでネタニヤフはハリウッド の映画プロデューサー、アーノン・ミルチャンからの贈答品 に対して賄賂との追及を受けている。 ミルチャンはイスラエルの出身で2018年10月28日付題名紹介 『ボヘミアン・ラプソディ』など数多くの作品で知られてい る。しかし2013年にはアメリカの核技術をイスラエルに提供 したと告白するなど、スパイとしての実績もあるようだ。 そんなミルチャンはネタニヤフとは昵懇で、阿吽の呼吸で高 級シャンパンや葉巻などを贈り続ける。これは贈答なのか賄 賂なのか。しかし政権にいるものに対しては、いかなる事情 であっても贈答は賄賂と見做されるのが常識だ。 そこでイスラエル司法は2019年にイスラエルの首相では初め ての在任中の起訴に踏み切るのだが、その裁判は現在も継続 中のままになっている。そしてそれが戦争を引き起こしたと 本作は訴える。 実際にイスラエルの首相では退任後に汚職などで起訴され実 刑判決を受けた人物も複数いるようで、ネタニヤフはそれを 避けるためには戦争を続けるしかない。それがガザや西岸地 区での戦争になっているようだ。 そしてさらに映画では戦争を引き起こすためのネタニヤフの 手立ても検証する。それは反イスラムの極右のテロリストと 手を組み、彼らが国民を煽って戦争を正当化し、戦争を継続 させていると告発もしている。 いや正に保守が極右と手を組んで戦争に走らせるというのは 早晩他の国でも起こりそうな話だが。日本の右翼は一部の跳 ね返りを除いては冷静だからこうはならないと思うものの、 その原因がシャンパン、葉巻というのは衝撃だった。 いずれにしてもイスラエル首相の悪辣ぶりが目の当たりにさ れる作品で、しかもそれが現在も継続されている。その状況 には呆然とせざるを得ない感覚にさせられた。これもまた見 事な作品だ。 公開は11月8日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試 写を観て投稿するものです。
『楓』 1998年にリリースされたスピッツの楽曲を基に、2020年3月 8日付題名紹介『窮鼠はチーズの夢を見る』などの行定勲監 督で映画化した作品。 開幕はニュージーランドのテカポ湖に向かう道。そこはナミ ビアのナミブ砂漠、アイルランドのアイベラ半島と並ぶ星空 保護区だ。そこに向かう道で星座について語り合うカップル の乗ったレンタカーが事故に遭う。 そして物語は、同じに見えるカップルの日本での生活に繋が る。2人は共に出勤するが、途中で男性は女性に隠れて着替 えをし、自分の職場へと向かう。そこで男性は星空とは関係 のない静物写真のカメラマンだった。 そんな2人の秘密が徐々に解き明かされて行く。 出演は、2024年1月紹介『湖の女たち』などの福士蒼汰と、 2019年2月24日付題名紹介『賭ケグルイ』などの福原遥。他 に宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗。そして大塚寧々、加藤雅 也らが脇を固めている。 また脚本は、2024年10月紹介『大きな玉ねぎの下で』などの 高橋泉が担当している。 実は映画を観る前に試写状の惹句を観てしまって、物語の最 初の謎を知ってしまっていた。従ってそれを知らないで観た 人の気持ちは判らないが、映画はそこが巧みに隠されている ようで、そこは少し悔しい思いもしたものだ。 しかしそこを知っていると何故その謎に気付かないのかとい う新たな謎も出てくるもので、その点を巧みに隠す物語の進 展には感心したものだ。特にキーとなる屋上の写真と絵葉書 の内容にはその経緯が巧みだった。 しかもそこに天文観測が絡んでくるのは天文ファンとしても 興味が惹かれるもので、その辺のやり取りには嬉しくなる場 面も満載だった。一方で福士が演じる2役の片方が左利きと いうのも見事な演出に繋がっていた。 そんな様々な謎解きが巧みに鏤められているのも面白く、さ らにそこから素晴らしいラヴストーリーが紡がれるのも素敵 な作品になっている。絵葉書についてはちょっと誤解してい たところが見事に解消されるのも良かった。 それにカップルが乗るレンタカーの繰り返しのサスペンスも 見事と言える。素晴らしい作品だ。 公開は12月19日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東映/アスミック・エースの招 待で試写を観て投稿するものです。
| 2025年10月05日(日) |
爆弾、プラハの春 不屈のラジオ報道 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『爆弾』 2023年の「このミステリーがすごい」(宝島社)及び「ミステ リが読みたい」(ハヤカワミステリマガジン)のランキングで 1位をダブル受賞した呉勝浩原作小説の映画化。 物語の発端は、酒に酔って自販機を破壊して逮捕された男の 取り調べ。男は従順に犯行を認めるが、突然事件の予感がす ると言い出す。そしてその予言通りに爆弾が爆発、連続爆弾 事件が開幕する。 しかし男はあくまでも予感だとして証言をはぐらかし、取調 官と男との心理戦が始まる。そんな最中にも都内各所に仕掛 けられた爆発物が次々に炸裂し、死者も出始める。警察側が 謎を解いて未然に防ぐ事例もあったが…。 果たして男の真の狙いは何か。心理戦が続いて行く。 出演は、2022年9月紹介『夜、鳥たちが啼く』などの山田裕 貴と、2023年4月紹介『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』 などの伊藤沙莉、それに2023年6月紹介『ほつれる』などの 染谷将太。 他に坂東龍汰、寛一郎、片岡千之助、中田青渚、加藤雅也、 正名僕蔵。さらに夏川結衣、渡部篤郎。そして2024年2月紹 介『あんのこと』などの佐藤二朗らが脇を固めている。 脚本は2018年『ラプラスの魔女』などの八津弘幸と、2017年 『亜人』などの山浦雅大。監督は2017年『帝一の國』などの 永井聡が担当した。 主な舞台が中野区野方警察署。沼袋界隈も話に出て、以前に 中野区江古田に住んでいた自分としては親しみが湧いた。と は言え物語は都内全域に広がる壮大なスケール。取り調べの 一室と都内各所との対比も魅力的なものになって行く。 それがストーリーの緩急にも繋がるから、この作劇はかなり 巧みなものだ。そしてその取調室では山田裕貴と佐藤二朗の 心理戦が繰り広げられ、他方で伊藤沙莉、染谷将太らのアク ションも展開される。これは一粒で二度美味しい作品だ。 そして何と言っても佐藤二朗の演技が見事。ねちねちとした 態度で取調官をはぐらかし、仕掛けてくる。それはただの浮 浪者なのか知能犯なのか。そのどちらにも取れる演技が絶妙 だ。正に演技を堪能できる。 ただまあ佐藤二朗の演技を認めない人にはきついかな。その 辺で観客が選別されてしまうかもしれないが、そこは山田裕 貴や伊藤沙莉、染谷将太らの人気でカヴァーする算段かな。 でも佐藤二朗の演技は見ものだった。 公開は10月31日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ワーナー・ブラザーズ映画の招 待で試写を観て投稿するものです。
『プラハの春 不屈のラジオ報道』“Vlny” 1968年3月、新大統領の選出で始まった社会主義下での自由 化への道「プラハの春」。しかしその流れは8月21日のソビ エト軍の侵攻で押し潰される。その最期の瞬間まで国民に向 け放送を続けたラジオ局の姿を事実に基づき描いた作品。 主人公は中央通信局に技術者として勤める男性。両親は亡く 学生の弟を彼一人で養っている。そんな弟は自由を求める学 生運動に参加しており、その弟がチェコスロバキア放送局の オーディションを受けると言い出す。 その放送局では国際報道部の部長が国家による検閲に疑義を 唱えており、上層部とは対立しながらも正しい報道を続けよ うとしていた。そして学生運動への警察の鎮圧を巡って決定 的な対立が生じてしまう。 一方、主人公は弟の行動を心配して参加したオーディション で図らずも合格してしまう。しかし現在の職場に固執する主 人公に中央通信局の上層部から、合格を利用して部長の行動 を監視する職務が与えられる。 こうして止む無く国際報道部のメムバーとなった主人公に、 運命の波が押し寄せてくる。 出演は本作でチェコ・アカデミー賞主演男優賞ノミネート及 びスロバキア・アカデミー賞主演男優賞受賞に輝いたヴォイ チェフ・ヴォドホツキーと、チェコ・アカデミー賞助演男優 賞受賞のスタニフラフ・マイエル。 さらに本作でチェコ・アカデミー賞助演女優賞受賞のタチア ナ・パウホーフォヴァー。そして雑誌モデル出身で本作に抜 擢されたオンドレイ・ストゥプカらが脇を固めている。 脚本と監督は、俳優としてチェコ・アカデミー賞助演男優賞 の受賞歴もあるというイジー・マードルが担当した。 「プラハの春」とその終焉は当時予備校生で70年安保闘争を 目の当たりにしていた自分には衝撃だったが、この弾圧が共 産圏で起き、イデオロギー由来でないことにも考えさせられ る出来事だった。 その中でさらにこんなドラマがあったことには驚きを禁じ得 なかったが、しかも主人公が当時の言葉でいわゆるノンポリ であったことには自分自身に照らしていろいろ考えさせられ た。因に自分も大学では通信を学んだ身であった。 そんなことで親近感も湧く作品だったが、現代に照らしても 何時このような弾圧が起きないとも限らない、そんな恐ろし さも感じる作品だった。 公開は12月12日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町、新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アットエンタテインメントの招 待で試写を観て投稿するものです。
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