井口健二のOn the Production
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2024年06月30日(日) モンキーマン、run for money 逃走中 THE MOVIE

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『モンキーマン』“Monkey Man”
2009年1月紹介『スラムドッグ$ミリオネア』で一躍人気者
になったインド系英国人俳優デヴ・パテルが、子供の頃から
考えていたというインドの伝説に基づく原案で、主演も兼て
監督デビューを飾った作品。
主人公は猿のマスクを被り、キッドと呼ばれる悪役格闘家。
勝負の前半はリードするが最後は負けるのがお決まりの演出
だ。そんな男にはある心に秘めた決意があった。それは幼く
して母を失ったことへの復讐だ。
その目的のため男は、政財界の大物や警察、宗教家も絡む闇
の社会へと潜り込んで行く。そこは麻薬に女、そして暴力が
渦巻く禁断の世界だった。そんな世界で男は、格闘技の技を
武器にのし上がって行くが…。

共演はシャールト・コプリー、ピトバッシュ、ヴィピン・シ
ャルマ、シカンダル・ケール、アディティ・カルクンテ、ソ
ビタ・ドゥリパラ、アシュウィニー・カルセカル、マカラン
ド・デシュパンデ。馴染みのない名前が並ぶが、個性的な俳
優たちだ。
他にも抑圧された階層の俳優など、かなり意識を持った配役
もなされているようだ。
脚本はパテルとコメディ映画監督のポール・アグナウェラ、
それにパテル主演の2019年7月紹介『ホテル・ムンバイ』で
は脚本・監督のジョン・コリー。
製作にはパテルと『ホテル・ムンバイ』などのジョーモン・
トーマス、さらに2017年8月紹介『ゲット・アウト』などの
ジョーダン・ピールらが当たっている。
物語の舞台はインドの架空の都市だが、その景観はCGIで
構築されており、その技術力はさすがIT大国インドの面目
躍如という感じになっている。そのリアルさはインドのどこ
にこんな大都市があるのかと思ったくらいのものだ。
その一方で実写撮影は主にインドネシアで行われたとのこと
で、そこには2012年8月紹介『ザ・レイド』に参加したスタ
ッフも多く参集したとのこと。映画の後半はさもありなんと
いう展開にもなる。
しかもそれが『ザ・レイド』を上回ると言えるような強烈な
武闘劇で、いやはやこれが『スラムドッグ…』の純真な少年
なのかと思わせるくらいのもの。でもその背景には、インド
の伝統や現代社会の歪みなども描かれた作品だ。

これは見事と言える作品になっていた。
公開は8月23日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パルコ ユニバーサルの招待で
試写を観て投稿するものです。

『run for money 逃走中 THE MOVIE』
フジテレビ系列で2004年から放送されているヴァラエティ番
組の映画版。ただし番組そのものをドキュメンタリーで映像
化したのではなく、その内容から想起されたドラマ作品だ。
登場するのは、高校時代にはインターハイを目指していた元
陸上部員6名。しかし卒業後の進路はバラバラになっていた
ようだ。そんな6人に「逃走中」参加決定のメールが届き、
脚力に自信がある6人は参加することになるが…。
そして競技の当日、都内3か所に定められたスタート地点に
は様々な人たちが集まってくる。そこで久しぶりに再会した
6人は旧交を温め合うが、高額賞金が得られる競技の参加に
は家庭の事情などいろいろな思惑があった。
それでも定刻に始まった「逃走中」では、6人は脚力を駆使
して次々にハンターをかわして行くが、突然そのハンターの
様子がおかしくなる。果たしてゲームの裏で何が起きている
のか、やがてそれは命を賭けた勝負になって行く。

出演は、吉本興業のアイドルグループJO1の川西拓実、木
全翔也、金城碧海と、FANTASTICS from EXILE TRIBE の中島
颯太、瀬口黎弥、佐藤大樹。他に田鍋梨々花、川原瑛都、岡
宏明、長井短。
さらに内田慈、笠原秀幸、本多力、松平健。そしてお笑い芸
人のダイアン津田篤宏、錦鯉長谷川雅紀、安田大サーカスク
ロちゃん、とろサーモン久保田かずのぶ、三四郎小宮浩信、
HIKAKINらが脇を固めている。
この他にも大久保嘉人、ハリー杉山、景井ひな、大島麻衣、
横山涼、ガチャピン、ぐんまちゃん、出世大名家康くんらの
ゲスト出演もあるものだ。
監督はTVドラマ『電車男』などを手掛け、2018年『劇場版
コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』で劇場用映画監督
デビューした西浦正記の劇場用第2作。
脚本は、2018年10月7日付題名紹介『家族のはなし』などの
青塚美穂。音楽をテレビ番組を多く手掛ける得田真裕が担当
している。
試写状を貰った時に一体どのような映画になるのか大変興味
が湧いた。それは例えば2600年代が時代背景とされる主催者
クロノス社の設定を描いても良いし、逆に番組の舞台裏をド
キュメンタリーで描くのもありそうだ。
しかし映画化されたのはゲームの参加者を主人公にしたドラ
マ。しかもその主人公が一般人というものだった。確かに最
近の番組では一般視聴者の参加もありなのかもしれないが、
そこはやはり芸人や所謂タレントの方が面白い。
そこにお涙もののドラマも挿入されるのだが、青春や友情な
んて後期高齢者の自分としてはやっぱり青臭さを感じてしま
うのだ。JO1とFANTASTICSの共演で若い人たちをどこまで
引っ張ってこれるのか? その辺が興味深い作品だった。

公開は7月19日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す
るものです。



2024年06月23日(日) サユリ、至福のレストラン 三ツ星トロワグロ、ジョン・ガリアーノ世界一愚かな天才デザイナー

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『サユリ』
発行累計20万部を超えているとされる押切蓮介原作ホラー漫
画を、2013年11月紹介『バイロケーション』などの安里麻里
と2015年5月紹介『戦慄怪奇ファイル超コワすぎ!』などの
白石晃士の共同脚本、白石監督で映画化した作品。
物語の舞台は住宅地に建つ戸建ての家。土地の斜面を利用し
た家は2階が玄関になっているようで、玄関から見下ろして
リヴィングがあるなどちょっと不思議な構造だ。そしてその
家には夫婦と2人の娘が住んでいた。
ところが上の娘は引き籠りになっており、部屋の前まで食事
を持ってきた母親が掛ける言葉にも激しい態度で応答するな
ど、家庭内暴力も思わせる状況になっている。そしてその家
で惨劇が起きてしまう。
それから数年後、何事も無かったかのように見えるその家に
主人公らの一家が引っ越してくる。そこは父親が頑張って手
に入れたマイホームで、今までは別居だった父方の祖父母も
同居することになるが…。
少し霊感の在りそうな弟が最初に異変に気付き、さらに主人
公は学校で別のクラスの女子から急に声を掛けられ、何か悪
いことが起こりそうだと告げられる。そしてその悪いことが
現実になって行く。

出演は2020年3月29日付題名紹介『燕 Yan』に出ていたとい
う南出凌嘉と、2022年のTVドラマ『金田一少年の事件簿』
で1話に出演の近藤華。そして根岸季衣。他に梶原善、占部
房子、きたろう。
さらに2017年11月5日付「東京国際映画祭」で紹介『アイス
と雨音』が主演デビューという森田想、2022年のTVドラマ
『ミステリと言う勿れ』で1話に出演の猪股怜生らが脇を固
めている。
家に憑りついた霊が後から入ってきた家族に悪行を働くとい
うのは、Jホラーでは定番中の定番と言う感じもするが、さ
すが安里麻里と白石晃士の顔合わせでは一癖もふた癖もある
作品に仕上げてきた。
それがホラー好きにも楽しめる展開になっているのは、見事
と言える。特に前半のしっかりと恐怖を描いた展開からの後
半の転換は、いやはやホラーを知り尽くした監督たちの至芸
と言える作品だろう。
新しいJホラーの開幕とも言えるかもしれない。ただ大元の
切っ掛けの話は敢えて無くても良かったような気もするが。

公開は8月より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ショウゲートの招待で試写を観
て投稿するものです。

『至福のレストラン 三ツ星トロワグロ』
          “Menus-plaisirs - Les Troisgros”
2019年3月17日付題名紹介『ニューヨーク公共図書館』など
のフレデリック・ワイズマン監督が、フランスの三ツ星レス
トラン、トロワグロを撮った上映時間4時間途中休憩なしの
ドキュメンタリー。
ワイズマン監督のドキュメンタリーはいわゆる観察タイプで
ナレーションなども入らず、じっくり対象に対峙するもの。
でも4時間の長丁場を飽きさせず、画面を見続けられるのだ
から、それは被写体の選び方なのか編集の上手さなのか。
映像のメインはトロワグロ一家が2017年にオープンしたレス
トランの厨房及び食堂で撮影されているが、その間には酪農
家やブドウ園、チーズ製造所などを訪ねるシーンも挿入され
ており、全体でシェフが追及する「食」が描かれている。
それは以前に紹介した『ニューヨーク公共図書館』でも図書
館が行う様々な取り組みを紹介したのに通じているが、本作
では比較的3代目シェフとされるミッシェル・トロワグロが
中心に置かれており、その辺はちょっと趣向が違うかな。
でもまあそれらがすべて観察の範疇で繰り広げられるのは、
ワイズマン監督の真骨頂と言える作品だろう。「食」に関す
るいろいろな知見も得られるし、観ていてためになる作品と
言えるものだ。
それに日本人としては映画の始めの方で「活〆」という日本
語が出てきたり、中後半では「紫蘇」が連呼されるなど、観
ていてニヤリとするシーンも散見される作品だった。長丁場
をしっかりと準備して観たい作品だ。
それにしても客の好みからアレルギーまで事細かにチェック
してのメニューの組み立てやそれに関わる準備、接客など、
さすが三ツ星の名に恥じないサーヴィスの在り方もしっかり
と紹介され、これは教科書とも言える。
その一方で、調理法に困ったときには古典的な調理本や調理
の百科事典を参考にするなど、斬新さの中にも伝統を重んじ
る、そんな真摯な姿も描かれている。そんな調理への愛情も
感じさせるドキュメンタリーだ。
とは言え、作中ではヴィンテージワインの値付けに10000€と
いう発言が出てきたり、ちょっと庶民とはかけ離れた世界の
話かな。でもそれが世界なのだし、それを描くのがドキュメ
ンタリー、それを楽しむのも映画鑑賞だ。

公開は8月23日より、東京地区はBunkamura ルシネマ澁谷宮
下、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社セテラ・インターナショナルの
招待で試写を観て投稿するものです。

『ジョン・ガリアーノ世界一愚かな天才デザイナー』
            “High & Low - John Galliano”
美術学校での卒業制作の発表から、瞬く内にディオールにま
で上り詰めた天才デザイナーが舌禍によって凋落。その顛末
に2009年4月紹介『消されたヘッドライン』などのケヴィン
・マクドナルド監督が迫ったドキュメンタリー。
映画はデザイナーが問題発言を放った酒場での映像で始まる
が、そこから溯ってデザイナーの来歴が紹介される。それは
正に華々しいファッション界の寵児と言う感じの映像が展開
されるものだ。
しかしそれが暗転、舌禍は元々は別の男性への全く異なる内
容の発言だったが、その後に冒頭の映像が拡散されて、一気
にデザイナーを追い込んだ。そしてディオールからの解雇な
どの凋落となる。
そんな顛末が丁寧に描かれ、さらにそこからデザイナー本人
へのインタヴューが登場して釈明や謝罪の言葉などが綴られ
て行く。そして3年後の電撃復帰など、正に波乱万丈の展開
となるものだ。
それは観ていてファッションなどに一切関心のない僕にとっ
ても興味が湧いたし、面白い作品に構成されていたものだ。
この辺は数々のヒットドキュメンタリーを手掛けてきた監督
の手腕と言える作品だった。

出演はジョン・ガリアーノ本人に加えて、ケイト・モス、ナ
オミ・キャンベル、ペネロペ・クルスらのモデル、女優。さ
らにディオール社の最高経営責任者のシドニー・トレダノ、
VOGUE 誌編集長のアナ・ウィンターらも登場する。
一方、デザイナーを最初に告発した東洋人の男性も登場する
が、彼はデザイナーが会見で語った謝罪を受け入れて告発を
取り下げようとしていたというのだが…。そこに冒頭の映像
が登場して事態が混乱して行く。
その冒頭の映像でのデザイナーの発言は、それは社会人とし
て愚かしいものであり、全く許されるものではないのだが、
果たして酒飲みが酒の席で放った戯言がそんなにも個人を貶
めてしまうものなのか? その恐ろしさに震撼した。
実際、日本でも2021年の東京五輪開会式に関連してよく似た
ことが起きた訳だが、それに関ったのと同じ団体がこの件に
も関っていたようで、特に最初に告発した東洋人男性の発言
の変化が、事態の恐ろしさを物語っていたものだ。

公開は9月20日より、東京地区は新宿ピカデリー、ヒューマ
ントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。



2024年06月16日(日) ザ・ウォッチャーズ、ぼくが生きてるふたつの世界、心平、箱男

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ザ・ウォッチャーズ』“The Watchers”
アイルランド西部出身のホラー作家A・M・シャインの原作
小説を、製作を務めるM・ナイト・シャマラン監督の実娘の
イシャナ・ナイト・シャマランが、彼女の長編監督デビュー
として脚色・映画化した作品。
プロローグは暗い森の中を逃走する男性。彼はとある標識を
通り過ぎるが、日没までの期限で森を抜け出そうと走る彼が
辿り着いたのは先程と同じ標識の前だった。そして日が暮れ
てしまう。
物語の主人公はペットショップで働く女性。彼女は妹からの
電話に出ようとせず、過去に何か曰くがあるようだ。そんな
彼女は依頼された1羽のオウムを届けるために車で森を通り
抜けようとする。
ところが乗っていた車が森の中で故障。助けを求めて人影を
追った彼女は、森の中に建つ不思議なコンクリート造りの家
に辿り着く。そこには中年の女性と若くはない女性、それに
少年がいて彼女が入るなり扉が締められる。
そして入った部屋の一面はマジックミラーになっていて昼間
は外を見られるが、日が暮れると外部から何者かに監視され
ているものだった。そんな建物での奇妙な暮らしが始まる。
その外部にいるものとは…。

出演は、2018年6月紹介『500ページの夢の束』などのダ
コタ・ファニング。共演は2014年に英国アカデミー賞TV部
門で主演賞受賞のジョージナ・キャンベル。2012年2月紹介
『きっとここが帰る場所』などのオルウエン・フエレ。
それにアイルランド出身で主に舞台で活躍中のオリヴァー・
フィネガン、同じく舞台俳優で2012年12月紹介『レ・ミゼラ
ブル』に出ていたというアリスター・ブラマーらが脇を固め
ている。
物語はアイルランドの妖精伝説に基づいているそうだが、妖
精と人間との関係など中々興味深いものがある作品だった。
ネタバレになるので詳しくは書けないが、日本の人気アニメ
シリーズに通じるところもあってその辺も面白い。
因に原作者のサイトを調べたら2024年10月に原作小説の続編
が出版されるとのことで、映画の続編・シリーズ化も期待し
たくなるものだ。

公開は6月21日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ワーナー・ブラザース映画の招
待で試写を観て投稿するものです。

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
2014年2月紹介『そこのみにて光輝く』などの呉美保監督が
翌2015年発表の『きみはいい子』以来9年ぶりに監督した長
編映画作品。
主人公はコーダ(CODA:Children of Deaf Adults)と呼ばれる
ろうの両親の許に生まれた健常の子供。そこには障碍者に対
する様々な差別や、そんな環境に自分を生んだ両親への反発
など、通常にはない事態が横たわる。
しかも頑固者の祖父や宗教に傾倒する祖母など本作の主人公
だけに限らない社会的な問題も巻き起こる。そんな環境の中
で故郷を飛び出し、外部の世界に身を晒した中での主人公が
歩み続けた半生が描かれる。

出演は2017年10月紹介『斉木楠雄のΨ難』などの吉沢亮と、
忍足亜希子、今井彰人。他にユースケ・サンタマリア、烏丸
せつこ、でんでんらが脇を固めている。
原作は宮城県塩釜市出身のライター五十嵐大が2021年に発表
した自伝的エッセイ。映画的な脚色はあるが、実話に基づく
作品だ。脚本は、2017年9月17日付題名紹介『あゝ、荒野』
などの港岳彦が担当している。
この題材には、僕の世代だと1961年公開の松山善三監督作品
『名もなく貧しく美しく』が思い浮かんだが、同作で満員の
デッキを挟んだ2つの車両で窓越しに手話で会話するシーン
が、何となく再現されている感じなのは嬉しかった。
まあこのテーマでは誰しもが思い付くシーンなのかもしれな
いが、テーマを際立たせる意味では最高の演出と言えるもの
だろう。そんなシーンを挟みながら、作品ではある種の現代
の縮図を描き切ったとも言える。
それは差別の問題に関して、頭では理解していても何気なく
発してしまう言動など、自分は健常者の身として気付かず行
ってしまったことが取り返しがつかないものであったりもす
る訳で、そんな現実も突き付けられる作品だった。
その一方で手話における方言など、今まで日本語と英語の手
話が異なることは知っていたが、日本国内でもそんな事情が
あるとは考えていなかった。そんな知らなかったことを教え
て貰える作品でもあった。
そして映画全体では普遍的な家族の在り方が示される。そん
な感じもする作品だ。

公開は9月13日から宮城県で先行上映の後、東京地区は9月
20日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他にて全国順次
ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ギャガの招待で試写を観て投稿
するものです。

『心平、』
1986年生まれ日本映画学校卒業。石井岳龍監督、廣木隆一監
督、青山真治監督らの助監督を務め、2022年に『ダラダラ』
という作品で商業映画デビューした山城達郎監督の第2作。
物語の背景は2014年の福島県。原発事故による避難と帰宅規
制が続く中で人々は生き続けている。そして主人公は軽度の
知的障害を持つ男性。元々は父親と農業をしていたが事故の
影響で続けられず、父親は農地を手放したようだ。
そんな主人公には様々な仕事を斡旋されるが、どれも長くは
続かない。それどころか紹介された仕事の面接に行かなかっ
たりもする。それでも父親は息子に小遣いを与えてそれ以上
の期待は持っていないようだ。
そして息子はその小遣いで、手作り傘を買い集めたりしてい
たが…。そんな主人公の行動がある問題を引き起こす。

出演は、2012年3月紹介『サイタマノラッパー(SR3)/
ロードサイドの逃亡者』が初主演だったという2024年1月紹
介『湖の女たち』などの奥野瑛太。他に監督の前作にも出演
の芦原優愛、2018年5月13日付題名紹介『菊とギロチン』な
どの下元史朗。
さらに河屋秀俊、小林リュージュ、川瀬陽太、影山祐子らが
脇を固めている。
脚本は、2022年8月紹介『さすらいのボンボンキャンディ』
などの竹浪春花。本作は2014年に執筆されて山城監督が気に
入り、長年温存されていた企画が日本芸術振興会の若手映画
監督支援に選出されて実現したものだそうだ。
前の作品に続いて身体と精神の違いはあれど障碍者と社会と
の繋がりを描いた作品だが、実は同じ日に続けて試写を観て
その違いを痛感してしまった。それは2つのテーマの繋がり
が本作では何となくしっくり来なかったのだ。
実際に前の作品は障害者と差別社会という誰が観ても理解の
できる2つのテーマだったが、本作の障碍者と福島の問題は
部外者には容易にその繋がりが理解できるものではない。こ
のため観ていて違和感が拭えなかった。
それは知的障害も重要なテーマだし、原発事故の被害も重要
なテーマだが、作中でその2つを纏める意義が見出せない。
そのため見る側の意識も揺らいでしまう。ただそこに主人公
の活動があって、そこから何か生まれそうな気もするが…。
残念ながら本作はそこまで描き切れていなかった。
若手監督の映画製作で本作にも関わる公的な支援は、公開期
限が定められるなど特に時間的な制約が多いと聞くが、もう
少し時間を掛けてテーマを練り込んで欲しかったとは思って
しまったものだ。

公開は8月17日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社インターフィルムの招待で試写
を観て投稿するものです。

『箱男』
2018年6月紹介『パンク侍、斬られて候』などの石井岳龍監
督が、1993年に他界した原作者の安部公房から唯一生前に映
画化を託されていたという作者代表作の映画化。因にこの映
画化は1997年に一度始動したがクランクイン寸前に頓挫して
おり、今回はそのリベンジとなったものだ。
主人公のカメラマンは頭から腰まで段ボール箱をすっぽりか
ぶって都市を徘徊する箱男を目撃。その存在に興味を持った
主人公は、箱男の心情を探るため自らも段ボール箱を被って
みるが…。
そこに箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者や、箱男を利
用して完全犯罪を実行しようとようとする元軍医などが登場
し、さらに主人公を誘惑する謎の女も絡んでくる。

出演は1997年時点で主演に決まっていたという永瀬正敏と、
2024年1月紹介『湖の女たち』などの浅野忠信。2人は『パ
ンク侍』にも出演していた。それに数百人のオーディション
で起用が決まったという白本彩奈。
さらに2023年1月紹介『せかいのおきく』などの佐藤浩市。
他に渋川清彦、中村優子、川瀬陽太らが脇を固めている。
脚本は、2017年12月3日付題名紹介『ニワトリ★スター』や
2023年3月紹介『忌怪島/きかいじま』などのいながききよ
たか。なおいながき脚本、石井監督では WOWOW放送の『ネオ
・ウルトラQ』シリーズなどもあるようだ。
安倍公房原作の映画化では、1964年『砂の女』、1966年『他
人の顔』、1968年『燃えつきた地図』などが記憶されるが、
いずれも観念的で判り難かった記憶を持つ。それらに比べる
と本作の展開は解り易いかな。
特に原作展開だと主人公が本物なのか偽物なのかもあやふや
なのだが、本作ではそれなりに明確化されており、その辺も
解り易く感じてしまうところかもしれない。映像にはそうい
う作用もあるものだ。
しかもそれを永瀬、浅野、佐藤といった面々が演技でぶつけ
合うのだから、これは映画として面白いとも言える作品だ。
中でも段ボール箱の覗き穴からの目だけの演技は見ものと言
いたいが、それが解り易いのは少し不満かな?
いずれにしても久しぶりに芸術映画を観たという感じもする
作品だった。

公開は8月23日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。,



2024年06月09日(日) YOLO 百元の恋、ボストン1947、DitOディト、ロイヤルホテル、お隣さんはヒトラー?

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『YOLO 百元の恋』“热辣滚烫”
2014年に公開されて安藤サクラが日本アカデミー賞主演女優
賞に輝いた『百円の恋』を、中国で人気上昇中のコメディエ
ンヌ=ジャー・リンの監督・主演でリメイクした作品。なお
このリメイクにはオリジナル脚本の足立紳、監督の武正晴、
製作の佐藤現も監修として参加しているものだ。
主人公は30歳を過ぎた独身の女性。体重 100�圓鯆兇┐覽雋�
で、定職にも就かず母親が切り盛りする実家で自堕落な暮ら
しを続けている。そんな女性がある切っ掛けで家を出ること
になるが…。
初めての一人暮らしで取り敢えず近所の飲食店で働き始めた
彼女だったが、仕事はなかなか上手く行かない。しかも彼女
が想いを寄せていた男性を親友と思っていた女性に寝取られ
てしまったりもする。
そんな中で、仕事帰りの彼女はふとボクシングジムで寡黙に
練習をする男性に目を留める。そして一念発起、そのジムの
入門キャンペーンに乗った彼女は憧れの男性の指導を受け、
さらには彼の試合の手伝いもすることになる。
しかし運命の女神は彼女には微笑まず。憧れの選手とも別離
した彼女に残されていたのは、ボクシングの道を突き進むこ
とだけだった。そこからボクシング大会への出場に向けた過
酷なトレーニングが始まる。
そんな物語が見事なコメディセンスで展開される。

共演は2021年チャン・イーモウ監督『崖上のスパイ』に出演
のライ・チァイン。他にライと2023年“交換人生”という作
品で共演のジャン・シャオフェイ、2019年10月27日付で紹介
“烈火英雄”に出演のヤン・ズーらが脇を固めている。
本作オリジナルに関しては2014年12月に試写を観ているが、
この時期は毎週10本以上観ていた上に『ホビット』シリーズ
など自分のテリトリーの作品が目白押しで、紹介は割愛して
しまったものだ。
そんな訳でオリジナルとの比較はあまりできないが、取り敢
えず本作では主演ジャー・リンの変貌ぶりが見事と言える。
実際に女優は元々体重が80�圓曚匹△辰燭箸いΔ海箸世�、ま
ず撮影のために約30�圓鯀�量。
そこから撮影を続けながら減量を実行し、最終的には50�坩�
上の減量を行っている。それは後半のシーンでは別の女優が
吹き替えているのではないかと疑わせるほどの見事な変貌だ
った。
そのために女優は1年間以上もメディアから姿を消していた
というのだから、その本気も感じさせてくれるものだ。その
努力は最終興収約35億元(邦貨約 730億円)を生み出してい
るが、同時にボクシングの競技人口も激増したそうだ。

公開は7月5日より、東京地区は新宿バルト9他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映ビデオの招待で試写を観て
投稿するものです。(試写会は5月22日に行われました)

『ボストン1947』“1947보스톤”
1936年ベルリンオリンピック。そこでマラソンの金メダルと
銅メダルを獲得した孫基禎と南昇竜は朝鮮人だった。しかし
オリンピックの記録では今も日本人のメダル獲得と記されて
いる。そんな歴史的背景に基づく作品。
映画はプロローグで上記の歴史的事実が紹介され、そこから
1946年第2次世界大戦の終戦後が舞台となる。そこでは2年
後のロンドンオリンピックに向けた代表選手の選考が行われ
ており、南昇竜は新たな孫基禎の発見に努めていた。
ところが、国際大会での競技実績のない韓国人選手はオリン
ピックへの出場権が得られないという事態が判明する。そこ
にはベルリンでの優勝も主張するが、それは日本人の記録だ
と突っぱねられる。
そこで急遽国際大会であるボストンマラソンへの参加が検討
されるが、当時は米軍の統治下にあった朝鮮半島には様々な
制約が立ちはだかっていた。そんな中、孫基禎監督の許での
チームの派遣が進められるが…。
因にボストンマラソンは1897年に創始され、毎年開かれるス
ポーツ大会では最も古い歴史を持つとされているだそうだ。

出演は、2018年7月紹介『1987、ある闘いの真実』などのハ
・ジョンウ。2018年2月25日付題名紹介『名もなき野良犬の
輪舞』などのイム・シワン。2018年6月3日付題名紹介『ス
ウィンダラーズ』などのペ・ソンウ。
他に2018年3月25日付題名紹介『焼肉ドラゴン』などのキム
・サンホ。2023年3月紹介『THE WITCH/魔女-増殖-』などの
パク・ウンビンらが脇を固めている。
監督は、2002年6月紹介『銀杏のベッド』や2012年1月紹介
『マイウェイ』などのカン・ジェギュ。撮影監督には2019年
5月紹介『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれ
た男』などのチェ・チャンミンが起用され、CGIなども駆
使して1947年が再現されている。
映画の終盤に韓国国家が演奏されるシーンがあり、そこでは
白頭山を歌った歌詞は現行と同じものだが、曲は「蛍の光」
になっている。これは1948年に現在の曲になるまでの歴史的
事実のようだ。他にも星条旗の星が整列しているなど、考証
もしっかりとなされた作品だ。
日本人としては耳の痛い部分もあるが、日本人をことさら悪
く描いてはおらず、これが歴史的事実だということをしっか
りと認識して観たいものだ。

公開は8月30日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ショウゲートの招待で試写を観
て投稿するものです。

『DitOディト』
2016年11月20日付題名紹介『なりゆきな魂、』などに出演の
俳優・結城貴史が、自らの企画・製作・監督・主演で作り上
げた日本=フィリピン合作作品。
主人公は40歳の誕生日を間近にした日本人のプロボクサー。
日本国内では年齢規制で試合ができないため、異国の地フィ
リピンのボクシングジムで再起を図っている。そしてそこは
貧困層の若者が夢を追う場所でもあった。
そんな主人公の許に若い女性がやってくる。彼女は主人公の
実の娘で母親と共に日本に残してきたが、その母親が亡くな
り、彼女は高校もやめて父親の許にやってきたのだという。
その報告には慟哭する主人公だったが…。
こんな状況の中で、ジムのトレーナーでもあるオーナーの義
理の息子との確執や突然異国に飛び込んできた実娘の行動。
さらに主人公が目を掛けた若者の挫折など、環境を取り巻く
様々な状況が描かれて行く。

共演は2019年まで雑誌 「Seventeen」の専属モデルを務め、
2019年12月2日付題名紹介『転がるビー玉』などに出演して
いた田辺桃子と、2014年1月紹介『魔女の宅急便』などの尾
野真千子。
対するフィリピン側からは、2021年・第34回東京国際映画祭
コンペティション部門出品作品『アリサカ』などのモン・コ
ンフィアード。俳優、コメディアン、MC、歌手など多方面
に活躍し、フィリピンの英雄マニー・パッキャオの伝記映画
で少年時代を演じたというブボイ・ヴィラール。
さらに2016年11月5日付「東京国際映画祭」で紹介『アジア
三面鏡:リフレクションズ』のブリランテ・メンドーサ監督
作品で主演のルー・ヴェローソ。マニラを拠点に舞台や独立
系映画で活動のレスリー・リナ。
そしてボクシングの歴史上唯一の8冠の世界チャンピオンで
フィリピン政界では上院と下院の議員も務めたマニー・パッ
キャオが特別出演している。
フィリピンの映画は東京国際映画祭などでいろいろ観て来た
が、貧富の差であったり、スラムのような住宅地の様子など
はそれらの作品も思い出させてくれた。そんな現地の状況も
しっかりと捉えられた作品と言えるのだろう。
そんな中でのカラフルな街並みや、車で6時間かかるという
ひなびた漁村の様子など、異国情緒もたっぷりと楽しめる作
品になっていた。実に多様に楽しめる作品で、新人監督の今
後にも期待が持てる。

公開は7月26日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社マジックアワーの招待で試写を
観て投稿するものです。

『ロイヤルホテル』“The Royal Hotel”
ニューヨーク在住で2019年『アシスタント』というデビュー
作品が国際的に評価を受けたキティ・グリーン監督が、同作
に主演のジュリア・ガーナーを再び招き、母国オートラリア
を舞台に描いた女性映画。
主人公はバックパッカーで旅する2人のカナダ人女性。オー
ストラリアにやってきた2人はシドニー湾のクラブ船を楽し
むが、1人が使ったカードに無効が告げられる。そこで2人
はワーキングホリデーで稼ごうとするが…。
2人が紹介されたのは人里離れた鉱山町に佇むパブ。そこは
3代目という飲んだくれのオーナーと、キッチン担当の中年
女性で運営されていたが、客は鉱山で働く荒くれものばかり
だった。
そんな中でも郷に入っては郷に従えと何とかやりくりしよう
とする2人だったが、暴力や脅迫、様々なハラスメントが彼
女たちに襲い掛かる。そしてそれが次第にエスカレートして
行く。

共演は、2015年公開『スター・ウォーズ フォースの覚醒』
や2021年公開『マトリックス レザレクションズ』などに出
演のジェシカ・ヘンウィック。なお主演のガーナーは2012年
11月紹介『マーサ、あるいはマーシー・メイ』に出ていたそ
うだ。
他にナイジェリア出身のヒューゴ・ウィーヴィング、イギリ
ス出身のトビー・ウォレス、ノルウェー出身のハーバート・
ノードラム、共にオーストラリア出身のダニエル・ヘンシュ
オールとジェームズ・フレッシュヴィルら国際的な顔ぶれが
脇を固めている。
何ともはやという感じの作品だが、本作のエンドロールには
‘inspired by a documentary’というような文言があり、プレ
ス資料によると監督は自身が審査員を務めた映画祭に出品の
ドキュメンタリーを観て本作を創作したとのことだ。
つまり本作は実話に基づいているということ。オーストラリ
アのワーキングホリデーに関してはすでにいろいろな問題が
指摘されているようだが、本作は正にその問題を抉り出すよ
うな作品だったものだ。
とは言うもののこの映画では、クルーズ船に始まって荒野を
走る列車や乗り合いバス、さらに迎えの車まで様々な乗り物
の登場も面白い。ただし後半に登場するスポーツカーは燃費
の問題でこの場所には来れそうもないとのことだ。

公開は7月26日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺他にて全国ロードショ
ウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観
て投稿するものです。

『お隣さんはヒトラー?』“My Neighbor Adolf”
1945年4月30日にベルリンの地下壕で自殺したとされるナチ
スの総統。しかしその死は偽装されたものでヒトラーは生き
延びていた。という都市伝説を基に描かれた作品。
プロローグは第2次世界大戦前のポーランド。ユダヤ人一家
の庭には丹精込めた黒薔薇が咲き誇っていた。その薔薇の前
で記念写真を撮る一家だったが、やがて家族は収容所に送ら
れ、ほぼ全員が死を免れなかったようだ。
そして時代は流れて物語の背景は1960年の南米コロムビア。
折しも逃亡していたナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンが捕
縛されたという記事が新聞を賑わしていた頃。とある郊外の
2軒並ぶ家の片方に初老の男が引っ越してくる。
その他方の家の庭には黒薔薇が育てられ、そこには腕に番号
を入れ墨されたユダヤ人の男性が一人で暮らしていた。とこ
ろがある日、引っ越して来た家のジャーマンシェパードが塀
を潜って侵入し薔薇の枝を折ってしまう。
しかも糞をされ、一人暮らしの男性は抗議のために隣家を訪
れるが…。そこで彼が目撃したのは、戦前のチェス大会の会
場で擦れ違った際に見交わした、忘れもしないヒトラーの青
い目だった。そこから彼の証拠集めが始まる。

出演は、2009年5月紹介『縞模様のパジャマの少年』などの
デヴィッド・ヘイマンと、2019年4月紹介『アイアン・スカ
イ第三帝国の逆襲』などのウド・キア。他に2015年『黄金の
アデーレ名画の帰還』などのオリヴィア・シルハヴィらが脇
を固めている。
脚本は1978年ラトビア・リガ生まれ、イスラエル在住のドミ
トリー・マリンスキー。監督は1978年ソビエト連邦・レニン
グラード(現サンクトペテルブルグ)生まれ、イスラエル在住
のレオン・ブルドフスキー。
まあユダヤ人によるユダヤ人のための作品と言う感じの映画
だが、前半がそのための謎解きなど正にその通りの作品なの
に対して、映画の後半ではある種そこからの未来展望のよう
な、少し違った展開が感動に繋がって行く。
この展開は過去に囚われずに未来を見つめて行こうという考
え方で、過去ばかりを問題にするスピルバーグや中山泰秀の
ようなユダヤ至上主義者には描けないだろうなと思わせるも
のだが、これが正しい人間性とも感じさせるものだ。

公開は7月26日より、東京地区は新宿ピカデリー、シネスイ
ッチ銀座他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社STAR CHANNEL MOVIESの招待で
試写を観て投稿するものです。



2024年06月02日(日) 怨泊 ONPAKU、うんこと死体の復権、新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!、助産師たちの夜が明ける、クレオの夏休み

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『怨泊 ONPAKU』“怨泊 Onpaku”
2017年発表の『狂覗』がキネ旬ベスト10に選出され、2019年
発表の『超擬態人間』はブリュッセル国際ファンタスティッ
ク映画祭のアジア部門グランプリに輝いたという藤井秀剛監
督が、2011年4月紹介『ドリーム・ホーム』などの香港 852
Filmsと組んで発表したホラー作品。
主人公は香港の不動産会社でCEOにまで上り詰めた女性。
そんな女性が休暇も兼ねた物件の視察で東京にやってくる。
ところが空港で彼女を出迎えたのは元カレの男性。その彼は
同姓同名だと思ったと言い訳するが…。
そんな彼が最初に案内した物件は下町の古家。その古家は再
開発には手ごろだったが、現状は民泊として違法に営業され
ており、元カレは宿泊者は追い出せると主張したが彼女の眼
鏡には叶わなかったようだ。
ところが元カレが手配したはずのホテルが手違いで予約され
ておらず、他のホテルも満室でやむなく彼女は最初に案内さ
れた民泊に泊まることになる。しかし不気味な事態が発生、
彼女の主張で床下を調べると白骨が転がっていた。
こうして警察も動き出すが、そこには過去からの因縁が渦巻
く事態となって行く。

出演は 852 Filmsの共同創設者で『ドリーム・ホーム』にも
主演していたジョシー・ホー。共演は『ドリーム・ホーム』
や2002年のパン兄弟監督作品『the Eye』 などのローレンス
・チョウ。
そして日本側から高橋和也、黒川智花、酒向芳、水上剣星、
菅原大吉、白川和子らが脇を固めている。
監督自身は「解りやすい映画は嫌いだ」と発言しているよう
だが、その割には本作は解りやすい。その辺はこちらが長く
映画を観ているせいかもしれないが、それでも過去の因縁話
などはもう少し丁寧に描いて欲しかった感じはする。
その辺をしっかり描いて、逆に現代のシーンを端折った方が
判り難くて、監督の意図に合った展開になったのではないか
な。特に警察の話などはただ事件を説明しているだけのよう
な気がして、これは事件そのもので説明して欲しかった。
それに宗教との関係が、もっとドロドロした欲望がらみの話
になって欲しかったかな。この事件が繰り返されているのな
らその背景にも迫って欲しかったものだ。それこそが現代の
闇のような作品なのだから。

公開は7月19日より、東京地区は新宿武蔵野館他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社フリーマン・オフィスの招待で
試写を観て投稿するものです。

『うんこと死体の復権』
1993年から10年の歳月を掛けて実行された「グレートジャー
ニー」などの冒険家・関野吉晴が、自ら監督となって描いた
人類文明の未来を問うドキュメンタリー。
映画は3章に分けて構成され、その第1章<うんこの行方>
では糞土師を自称する伊沢正名氏を通じて人の排泄物がどの
ようにして自然に還って行くかが論じられる。そこにはいわ
ゆる微生物だけでない様々な生物が介在しているものだ。
続く第2章<生きものの視点に立つ>では、その排泄物を食
べる昆虫などを保全生態学者・高槻成紀氏の活動を通じて紹
介。そして第3章<死体をめぐる攻防と協力>では、絵本作
家・舘野鴻氏が動物の死体を食う生物たちについて語る。
それはいたって科学的な見地から語られているものではある
が、題名の通り題材が題材だけにかなり刺激的な映像も多く
登場してくるものだ。そしてそれらを通じて過去から現代に
至る人類の営みが暴かれて行く。

プロデューサーは2016年3月紹介『ひそひそ星』の記事中で
触れたドキュメンタリー『園子温という生きもの』を手掛け
た大島新と前田亜紀。撮影は松井孝行と監督補も務める船木
光、それに前田亜季。編集は斉藤淳一が担当している。
上映前にプロデューサーの大島から「最初の30分は耐えられ
ない人も居るようだが、我慢して欲しい」というような説明
があった。それは確かに人間の排泄物が登場するのだから、
この手の映像は嫌悪感を抱く人も居るようだ。
実際に本作の公開で当初予定した配給会社からはそれが問題
とされて配給を拒否されたそうだ。とは言っても映像を観る
ことを生業としている者が何を甘ったれているのか、という
感じもしてくる。
大体、そんなことを言っていたら大腸がんの検査など受けら
れなくなってしまう訳で、僕なんかは2日分の検体を採取す
るために自分で毎年2回それと対峙しているものだ。それに
比べたら映像はどうということも無い。
そんな映像で始まる作品だが、内容的には人間の営みに関し
て様々な示唆に富んだ見事な作品と言える。これを観れば排
泄物と死体に対する見方は確実に変わってくるはずだ。まあ
観ること自体が拒否されては元も子もないが…。

取り敢えずこれを観る機会を与えてくれただけでも感謝した
いと思う作品だった。
公開は8月3日より、東京地区はポレポレ東中野他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給の合同会社きろくびとの招待で試写
を観て投稿するものです。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』
本作原案の宮川彰太郎が高校生の時に創案し、日本大学藝術
学部・映画科在学中の課題として書き上げた企画書に同科の
非常勤講師を務めていた直井卓俊が目を留め、直井の企画・
製作で映画化した青春ドラマ。
主人公は憧れの新進作家が在籍するという文科系の高校に入
学した女子生徒。そこで文学コンクール連覇中のエリート文
芸部への入部試験に挑んだものの、あるトラブルから試験の
途中棄権を余儀なくされ、入部は叶わなかった。
ところが文芸部の部長から衝撃の事実が告げられる。それは
彼女の憧れる作家が実は文芸部には在籍しておらず、その存
在も謎。そこでその鍵を握っている新聞部に潜入して謎を解
き明かしたら入部を認めるというのだ。
斯くして新聞部に入部した主人公だったが、そこは学校から
非公認で、学内に潜む闇をスクープすることに信念を燃やし
ている場所だった。こうして新米記者となった主人公は、文
芸部を取り巻く闇に直面して行くことになるが…。

出演は、櫻坂46のメムバーでセンターも務める藤吉夏鈴、
2022年12月紹介『Single8』などの�眄个△�り、雑誌「non-
no」の専属モデルで2018年7月15日付題名紹介『青夏 きみ
に恋した30日』などに出演の久間田琳加。
他に中井友望、綱啓永、外原寧々、ゆうたろう。さらに筧美
和子、石倉三郎、高嶋政宏らが脇を固めている。
映画用の脚本は2018年7月紹介『ウルフなシッシー』などの
大野大輔。監督は2012年11月紹介『ももいろそらを』などの
小林啓一。音楽と主題歌を福岡出身の4人組バンド・クレナ
ズムが担当している。
典型的な学園ものという感じの展開だが、物語は意外としっ
かりしていて、巨悪に対抗する姿などはそれなりに説得力も
あった。しかもそれを解りやすく描いているところも好感し
たものだ。
まあ正直に言ってそれ以上でも以下でもないけれど、それな
りの社会正義みたいなものも描かれているし、作戦を巡らし
て巨悪に対抗し、勝利する達成感みたいなものも描けている
のは良かった。
それは青臭いものでもあって、その辺が青春という感じなの
も良いと感じたものだ。加えてちんたらした恋愛劇みたいな
ものがないのも良かったところだ。

公開は8月9日より、東京地区はテアトル新宿、グランドシ
ネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、UP
LINK吉祥寺、立川シネマシティ他にて全国ロードショウとな
る。
なおこの紹介文は、配給会社東映ビデオ、スポテッドプロダ
クションズの招待で試写を観て投稿するものです。

『助産師たちの夜が明ける』“Sages-femmes”
2012年6月10日付「フランス映画祭2012」で紹介『愛につい
て、ある土曜日の面会室』などのレア・フェネール脚本/監
督で、2023年の第73回ベルリン国際映画祭にて審査員特別賞
を受賞した作品。
物語の中心は5年間の研修を終えて公立病院の産科病棟に勤
務することになったコーカシアンとアフリカンスの2人の若
い女性。その初出勤日から映画は始まる。そこではまず配属
先が決まるが、差別はないが見た目の判断はあるのかな?
そんな中で2人の奮闘が始まるが、そこでの医療は単に医学
的な見地だけでなく、肌の色や言語、宗教、人生観など様々
な状況に応じた対処が要求されるものだ。そして機材や人的
なトラブルも発生する。
さらに勤務体制への不満など、現代の助産師たちを取り巻く
状況が克明に綴られて行く。

出演は、1994年生まれフランス国立芸術演劇学校出身のエロ
イーズ・ジャンジョーと、1996年生まれ本作で注目されて以
後にカンヌ国際映画祭・監督週間オープニング作品にも出演
したカディジャ・クヤテ。
他に1978年ベルギー生まれのミリエム・アケディウらが脇を
固めている。
また本作には多くの現役の看護師や助産師も出演しており、
監督自身の体験からワークショップなどを開いて助産師の立
場を綿密に調査して作品に臨んだとのこと。複数の看護師は
編集にまで立ち会ったそうだ。
なお脚本は『愛について』にも協力したカトリーヌ・パイエ
との共同執筆のものだ。
僕自身が長女の出産に立ち会った経験があるので、分娩室の
シーンなどには記憶も甦ったが、日本とフランスでは状況も
かなり異なることも実感した。フランスでは分娩費用は全て
国費だそうで、そんな影響もあるのだろう。
とにかく貧富や人種や生活環境など様々な状況の異なる妊産
婦が集まっているのだから、その混乱ぶりは極限状態だ。そ
んな状況の中で奮闘する助産師の仕事ぶりが見事に描かれた
作品だ。そして出産の感動も共有される。
さらに日本でも言われる看護師、助産師の過酷な労働体制へ
のメッセージも見事に描かれている作品でもある。

公開は8月16日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。

『クレオの夏休み』“Àma Gloria”
2023年カンヌ国際映画祭・批評家週間オープニング作品に選
ばれたマリー・アマシュケリ監督の長編デビュー作。
主人公は幼い頃に母親を亡くした5歳の少女。父親は再婚は
せず、少女は経済移民としてフランスにやってきたナニーに
よって育てられた。ところがそのナニーが家庭の事情で帰国
してしまう。
そんな少女の許にナニーからアフリカの家に招待するという
手紙が届き、少女は1人でナニーが暮らす国を訪ねることに
なるが…。そこには生活習慣の違いなど様々なギャップが存
在していた。

出演は、キャスティングディレクターが公園で遊んでいると
ころを見掛けてスカウトしたという撮影時5歳半だったルイ
ーズ・モーロア=パンザニと、アフリカ西岸の島嶼国家カー
ボベルデ出身で、ナニーのリサーチ中に見出されたイルサ・
モレノ・ゼーゴ。
他にミュージシャンでもあるアルノー・ルボチーニ。さらに
は現地でスカウトされたアブナラ・ゴメス・バレーラ、フレ
ディ・ゴメス・タバレス、ドミンゴス・ボルゼス・アルメイ
ダらが脇を固めている。
試写の後、会場では主に女性の声で「女の子が可愛い」とい
う声が聞こえていたようだ。確かに異文化の中で奮闘する幼
気な少女の姿は感動を呼ぶものになっていた。とは言うもの
のそこに至る過程は良いのかな。
僕自身が娘を育てた父親として、このような状況に娘を送り
込むことができるかどうかには疑問が湧く。それはナニーを
信頼してということだろうが、異国のあまりにも違う環境の
中に5歳の娘を送り込むことは危機感がなさすぎる。
実際に彼女はいろいろな危機にも陥れられているものだし、
僕には到底容認できないと思ってしまった。まあ元々がファ
ンタシーという括りなら理解はできるが…。そうではないの
だし、ちょっと現実離れしすぎているかな。
そんなことを考えてしまう作品だった。監督は脚本も書いて
いるが、女性目線だとこれでOKなのかな。

公開は7月12日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、Bunkamura ルシネマ澁谷宮下他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試
写を観て投稿するものです。


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井口健二