井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2024年07月28日(日) ロール・ザ・ドラム!、犯罪都市 PUNISHMENT、カフネ/チョコレートコスモス

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ロール・ザ・ドラム!』“Tambour battant”
スイスで多くの映画やTVシリーズを手掛けてきたというフ
ランソワ=クリストフ・マルザール監督が、1970年の同国で
の出来事を実話に基づいて描いたとされるコメディ作品。
舞台はスイスワインの名産地とされるヴァレー州の片隅にあ
る山間の村。その村には伝統のブラスバンドがあり、村主催
のオーディションで選ばれるのが団員の目標だ。しかし伝統
を重んじ過ぎる指揮者には反発も生じていた。
そこで団員の一部が村出身の音楽家に声を掛け、彼が指揮者
になるべく戻ってくるが…。革新的な新指揮者は女性や移住
者も団員に引き込もうとして旧指揮者と確執が生じる。しか
も2人は過去に旧指揮者の現妻を巡る恋敵だった。
そんな経緯でバンドは分裂し、それぞれがオーディションを
突破すべく鎬を削ることになるが、その闘いには折しも婦人
参政権を巡るスイスの社会情勢も絡んで、とんでもない事態
へとエスカレートしてしまう。

出演はフランス・マルセイユ出身でスイスの舞台などで活動
し、短編映画でマリオン・コティアールとの共演もあるとい
うピエール・ミフスッドと、1997年『ドーベルマン』などの
パスカル・ドゥモロン。
それに2017年11月紹介ドキュメンタリー『ZEN FOR NOTHING
〜何でもない禅〜』で禅の修行に挑んだサビーネ・ティモテ
オ。前作は印象に残った作品でこのような再会は珍しいが、
女優は本作で演技賞の候補にもなっている。
他に1998年『レッド・バイオリン』などのジャン=リュック
・ビドー、ボクサーとしても活動しているというアメリ・ペ
テルリ、舞台俳優で本作が映画デビューのジュゼッペ・オリ
ッキオ、2012年1月紹介『ドラゴン・タトゥーの女』などの
ヴェルナー・ビールマイアーらが脇を固めている。
映画を観ていてスイスでは1971年まで婦人参政権がなかった
という事実には少し驚いたが、国民皆兵で保守的な国家では
こういうことも起こり得るのだろう。その歴史が塗り替えら
れるときの物語だ。
そして映画では、音楽での対立からその社会状況の変化が炙
り出されて行く感じの描き方だが、監督の目線はどちらかと
言うと社会状況の変化の方に向けられていて、音楽的には少
し物足りなかったかな。
特に2つのバンドの演奏曲が、一方はスイスの永世中立を象
徴する「マリニューヌ行進曲」で、他方は北部イタリアの女
性労働者による抵抗の唄「さらば恋人よ」という辺りは、も
う少しその来歴などが描かれても良い気がした。
それと結末の演奏は、ぶっつけ本番でこれはないとも思わせ
るが、逆にそれが出来てしまうのは男性の指揮者など不要と
いう意味合いも含まれているのかな? そんなことも考えて
しまうものだった。

公開は10月4日より、東京地区は新宿シネマカリテ、アップ
リンク吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試
写を観て投稿するものです。

『犯罪都市 PUNISHMENT』“범죄도시4”
2023年12月に第3作『犯罪都市 NO WAY OUT』 を紹介したば
かりのマ・ドンソク主演による刑事アクションシリーズ。そ
の第4弾。
前作の相手は日本のヤクザも絡む薬物犯罪組織だったが、今
回主人公らが挑むのはネットカジノ。これは一見IT絡みの
軟弱な敵役が想定されるが、そこは犯罪とアクションを切り
分けて、巧みにマ・ドンソクワールドが構築されている。
そしてそのアクションの眼目は短剣使いの元傭兵との対決。
そこまでに殺人鬼の傭兵による殺人シーンを羅列して残忍さ
を際立たせるが、それが肝心の対決では傭兵のナイフが封じ
られている設定から、見事な対決に展開される。
いやはやシリーズも4作目となるとこの辺の構成も見事と言
える展開だった。もちろんそれはマンネリにも繋がるものだ
が、そのマンネリこそがシリーズの風格。そんなことも思わ
せてくれる作品だった。

共演は、2020年5月紹介『悪人伝』でもドンソクと対決した
キム・ムヨルと、2017年12月10日付題名紹介『コンフィデン
シャル/共助』などのイ・ドンフィ。それに第1作と第2作
にも登場したパク・ジファンが再登場している。
監督は、前作までのアクション監督を務めたホ・ミョヘンが
本編デビューを飾っている。
上ではマンネリと書いたがシリーズでは各回に登場する敵役
の武術が異なることが変化になっており、それに対峙する主
人公が全くぶれずに鉄拳のみと言うのも面白味なのだろう。
それは前作で剣戟に参加しなかった理由とも言える。
その辺の潔さがシリーズの魅力とも言える作品だ。なおシリ
ーズとしては第5〜8作の脚本開発が進められており、スピ
ンオフの製作も検討されているとのこと。正にマ・ドンソク
・シネマティックユニヴァース(MCU)が形成される。
但し、真にシネマティックユニヴァースを形成したいなら、
既存の作品の世界観の取り込みも期待したいところで、例え
ば2017年7月紹介『新感染 ファイナル・エクスプレス』を
ここに取り込めたら…最強になりそうだ。
いずれにしてもしばらくは楽しめるシリーズになってきた。

公開は9月27日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。

『カフネ』『チョコレートコスモス』
大阪芸術大学在学中の杵村春希監督が2023年1月に完成した
66分24秒の初長編作品と、2024年1月完成14分33秒の短編作
品が同時公開される。
上映は短編の『チョコレートコスモス』が先に行われ、それ
なりに付き合ってきた男女が大学卒業を控えて登山にやって
きた様子がスケッチ風に描かれる。それはそれなりに捻りの
ある作品だが、まあそれだけかな。正に短編作品だ。

出演は松本いさなと竹内啓。脚本は長編と同じく千葉美雨が
手掛けている。
そして長編の『カフネ』は三重県熊野市でオールロケーショ
ン撮影の行われた作品。高校生ながら妊娠してしまった主人
公とその周囲の人たちの反応が、海辺の町の豊かな自然と共
に描かれる。
こちらは長編なので一応内容についても評価すると、主人公
を含めた登場人物たちが全員実に頭が良くて、物静かに話が
進むのは監督の狙いなのかな。ただこれだけだと如何にもド
ラマがない。
もっと修羅場が欲しい訳ではないけど、もう少し捻りはあっ
て良かったかな。いかにも淡々と進む物語は感動も薄いもの
になってしまった。それは66分という上映時間もあるのだろ
うが、そこにドラマを盛り込むのが監督の務めだろう。
とは言え、若年者の妊娠というのは既にいろいろな作品があ
る訳で、そこに新規性というのはかなり難題かも知れない。
それでも敢えて挑戦した気概は買う。でもまあ初長編の習作
ということで評価するしかないかな。

主演は2022年コブクロのMVへの出演が話題になったという
山��翠佳。さらに太志、短編にも出演の松本いさな。他に木
下隼輔、澤真希、渡辺綾子、杵村宙郎、宝塚歌劇団出身の桜
一花、入江崇史らが脇を固めている。
公開は10月12日より、東京地区はポレポレ東中野他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハルキフィルムの招待で試写を
観て投稿するものです。



2024年07月21日(日) ぼくの家族と祖国の戦争、シビル・ウォーアメリカ最後の日

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ぼくの家族と祖国の戦争』“Når befrielsen kommer”
2018年7月紹介『バーバラと心の巨人』のアナス・バルター
(=アンダース・ウォルター)監督が、第2次世界大戦末期の
デンマーク事情を描いた実話に基づく作品。
物語の中心はデンマークの地方都市に立つ市民大学で父親が
学長を務める一家。半官半民の経営なのか父親は地元名士の
推薦でその職にあるようだ。そんな学長のいる大学に難問が
降りかかる。
それは敗色濃厚なドイツから戦火を逃れる難民がデンマーク
に押し寄せ、ナチス軍の手引きで市民大学に難民の収容所が
設けられることになったのだ。当時のデンマークはドイツの
占領下でその要請は断れない状況だった。
そこで当初は 200人程度と知らされた学長は体育館を収容所
に宛てることにするが…。現れたのは 500人を越える人々。
しかもナチス軍は難民を置いたまま姿を消し、食料も医療も
届かない難民だけが学長の許に残される。
そして押し込められた収容所では疫病が蔓延、まずは子供た
ちがその犠牲となり始める。この事態に学長は人道的な援助
を訴えるが、今までナチスの圧制に苦しんできたデンマーク
市民にその声は届かなかった。

出演は2017年4月紹介『ゴースト・イン・ザ・シェル』など
のピルー・アスベックと、本作で長編映画デビューのラッセ
・ピーター・ラーセン。さらにデンマークで多くの受賞歴を
持つカトリーヌ・グライス=ローゼンタール。
他にデンマーク出身のモルテン・ヒー・アンデルセン、ドイ
ツ出身のペーター・クルトらが脇を固めている。
戦争が市民にもたらした悲劇と言うのは多数あると思われる
が、これもその一つ。平時であれば何でもなかったことが問
題視される。それが人道や正義に基づくものであっても、戦
争がそれを押しつぶす。
正直に言って特殊な事情によるものであるかもしれないが、
こうした真実が歴史の闇に埋もれてしまう。実際に本作の実
話もデンマーク市民ですら知らなかった物語だそうだ。それ
は恥という面も含めてそういうことなのだろう。
その辺の微妙な心情を、学長の幼い息子が揺れ動く心の変化
と共に巧みに描いている。その表現も見事と言える作品だ。
単純に誰が悪いと言える問題ではない。しかし戦争をしてい
ることが悪いとは間違いなく言える。

公開は8月16日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順
次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社スターキャットの招待で試写を
観て投稿するものです。

『シビル・ウォーアメリカ最後の日』“Civil War”
2003年6月紹介『28日後…』や、2010年12月紹介『わたしを
離さないで』などの脚本家で、2016年『エクス・マキナ』で
監督デビューしたアレックス・ガーランドが、オリジナル脚
本で描いたアメリカが舞台の近未来物語。
物語の設定は、強権的な大統領が憲法を勝手に改正して3期
目の政権に就いているというもの。この事態に多くの州が連
邦からの離脱を宣言し、中でもテキサスとカリフォルニアは
連合軍を組織して政府軍との内戦が勃発している。
そして戦況は連合軍が有利に展開し、今やワシントンDCに
迫らんという状況だ。そんな中でニューヨーク在住ジャーナ
リストの主人公らは、14か月応じていないという大統領への
単独インタヴューを狙うが…。
そこに競合紙の従軍記者らも加わってホワイトハウスへの先
陣争いが始まる。そんなジャーナリストたちの行動と共に、
戦時下のアメリカ合衆国の状況が描かれて行く。それは上で
紹介の作品とは異なる狂気に満ちた世界だ。

出演は2011年12月紹介『メランコリア』などのキルステン・
ダンストと、2024年2月紹介『プリシラ』などのケイリー・
スピーニー。さらに2013年8月紹介『エリジウム』などのワ
グネル・モウラ。
他に2023年12月紹介『ボーはおそれている』などのスティー
ヴン・マッキンリー・ヘンダースン、ガーランド監督作品に
は常連の日系イギリス人俳優ソノヤ・ミズノ、2023年12月紹
介『ダム・マネー』などのニック・オファーマンらが脇を固
めている。
本作の日本版完成披露試写会はグランドサンシャイン池袋の
12番スクリーン(IMAXシアター)で行われたが、ここは日本で
2番目のIMAXレーザー/GTテクノロジーを設備した劇場で、
上映環境は申し分なかった。
因に本作のスクリーンサイズは全編を通して1.85:1でこれは
IMAXに親和性が高いとされるもの。つまりワイド画面の中に
IMAXシーンが混在する疑似作品ではなく、当初からIMAXでの
上映を目標に制作されたものだ。
従って上映では1.44:1のIMAXスクリーンの下部に黒味は生じ
たが、それは上映中に変動するものではなく、却って姿勢の
正しい前席客の頭に煩わされることも無く、安定して映像を
楽しめた。本作は正しくIMAXで楽しむ作品になっている。
そして内容では、分断の激しい合衆国の未来を暗示している
感は強く、正に大統領選挙戦の最中の公開には一石を投じる
意味合いも強く感じられたものだ。とは言え監督は英国人ら
しく皮肉に満ちたものであることも理解できる。
しかもそれがワシントンDCでの市街戦など、部外者から観
れば実に感心するような映像で描き尽くされていることにも
感嘆したものだ。いやはやとんでもない映画が公開されるも
のだ。

公開は10月4日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。



2024年07月14日(日) ジョイランドわたしの願い

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ジョイランドわたしの願い』“جوائے لینڈ”
2014年に史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユ
スフザイと、2022年4月紹介『FLEEフリー』を手掛けたリズ
・アーメッドが製作総指揮を務め、2022年の第75回カンヌ国
際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞したパキスタン
映画。
登場するのはパキスタン第2の都市とされる古都ラホールに
暮らす家族8人の一家。その構成は家長として家族のすべて
を取り仕切る父親、長男夫妻とその娘3人、そして子供のい
ない次男夫妻というものだ。
そんな一家で長男の妻はインテリアデザイナーの資格を持つ
が現在は家に入り、資格を活かしていない。一方、次男の妻
はメイクアップアーティストとして実力をつけており、無職
の次男に替わってお金を稼いでいる。
しかし家長の父親から次男には「早く仕事を見つけて妻を家
に入れ、子どもを作れ!」との厳命が下されている。そして
次男は知人から仕事を紹介されるが、それは町の劇場に立つ
トランスジェンダー歌手のバックダンサーだった。
そんな劇場の仕事に家族は反対だったが、仕事を得たという
事実に変わりはなく、徐々に家族の生活に変化が訪れる。し
かしそれが悲劇を生むことになる。

脚本と監督はラホール出身でTVドキュメンタリーや短編映
画を手掛け、各地の映画祭での受賞歴もあるサーイム・サー
ディク。長編デビューとなる本作は監督が成長と共に長く育
んできたもので、自身の自伝的な要素もあるそうだ。
出演は、舞台演劇の出身で本作が映画デビューとなるアリ・
ジュネージョー。監督とは大学在学中からの知遇で本作が長
編映画デビューのラステュ・ファルーク。監督の短編作品の
主演をオーディションで勝ち取ったアリーナ・ハーン。
さらにパキスタンで「もっとも責任感のあるセレブリティ」
と称されるサルワット・ギラーニ。モデル出身で多くのTV
シリーズに出演のソハイル・ハミール。
またロジャー・ムーア主演のTVシリーズ『セイント 天国
野郎』などにも出演のパキスタン系英人俳優のサルーマン・
ピアザダ。多くの演劇、テレビ、映画で主演を務めるサニア
・サイードらが脇を固めている。
家父長制というのは近代社会では禁忌とも言えるものだが、
それが根強く残っていることも事実だろう。本作ではさらに
そこにトランスジェンダーを持ち込んで話を複雑にしている
が、これらはある意味問題の表裏とも言えるものだ。
ただし映画ではそこに解決策が提示される訳ではなく、ただ
現実の姿としてそれが描かれる。そして最後にただ一か所の
フラッシュバックで描かれるシーンがそれを際立たせる。そ
の構成も巧みな作品だった。
なお本作はパキスタンでは一旦は上映禁止となったが、製作
総指揮者2人の支援でその禁は解かれたとのこと。しかし監
督の出身地ラホールではいまだに禁止のままだそうだ。何も
解決できない悲しみ。それが現実なのだろう。

公開は10月18日より、東京地区は新宿武蔵野館、ヒューマン
トラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社セテラ・インターナショナルの
招待で試写を観て投稿するものです。



2024年07月07日(日) ニューノーマルNEW NORMAL、若き見知らぬ者たち

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『NEW NORMAL』“뉴 노멀”
2018年12月紹介『コンジアム』が韓国ホラー映画史上第2位
の興行を記録したというチョン・ボムシク監督が、映画出演
は2016年以来というチェ・ジウを迎えて描いたサスペンスド
ラマ。
舞台は2022年6月のソウル。そこでは観測史上初という季節
外れの雪が降っている。そんな中で連続殺人事件が起きてお
り、捜査は進んでいるようだが、若い女性には夜間外出しな
いようにとの注意喚起も行われている。
そして映画の物語は6つのチャプターで展開され、それぞれ
が2日目→3日目→1日目→3日目→2日目→1日目と時間
軸を錯綜させると共に、各チャプターには「M」「正しいこ
とをしろ」「殺しのドレス」「いま会いに行きます」「のぞ
き魔」「ろくでもない人生」と、映画ファンにはおや?と思
わせる副題が添えられている。
また映画の中では、チャップリンの指芸など映画ファン向け
の仕掛けもいろいろと設けられているものだ。そして映画は
チャプターごとにそれぞれ異なる状況の殺人を描いて行く。

出演はチェ・ジウ以外に、2022年7月紹介『人質 韓国トッ
プスター誘拐事件』などのイ・ユミ。さらにチェ・ミンホ、
ピョ・ジフン、新星のハ・ダイン、2007年生まれで国民的歌
手とされるチョン・ドンウォンらが登場する。
チェ・ジウの出演を含めていろいろな意味での仕掛けの多い
作品で、映画ファン的にはそれらを楽しめればいいのかなと
は思ってしまう。その辺で世界各国の映画祭への正式出品も
頷けるものだ。
但し描かれた物語的にはいずれもありがちな展開で斬新さと
言うには物足りないし、特にこの手の時間軸を錯綜させた展
開では最後に一点に収斂してこその醍醐味だと思うのだが、
監督にその意志はなかったようだ。
そのため各チャプターのエピソードが尻切れトンボな感じが
して、中でもチャプター2の少年の運命は、最後にちょっと
台詞だけの説明があった気はしたが、末路がどうなったのか
気になったものだ。
でもまこんなのが最近の流行りなのかな。その辺も認められ
ての映画祭の正式出品なのだろう。

公開は8月16日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社AMGエンタテインメントの招
待で試写を観て投稿するものです。

『若き見知らぬ者たち』
2016年PFFアワードに出品した『ヴァニタス』で観客賞を
受賞、2020年に自主制作した『佐々木、イン、マイマイン』
では新藤兼人賞、ヨコハマ映画祭新人監督賞などを受賞した
内山拓也原案、脚本、監督による商業映画第1作。
登場するのはアラサーの兄と少し年の離れた弟の兄弟。同居
の家には認知症の症状に似た「前頭側頭葉変性症」という難
病を患う母親がいて、特に兄はその介護と仕事に追われっぱ
なしの生活だ。
その兄には恋人と言える女性もいて、看護師の彼女は職場で
の軋轢に悩みながらも兄弟の介護に手を貸し、いつも笑顔で
接している。そして弟は、亡き父親に手ほどきされた格闘技
でチャンピオンを目指せる位置にいた。
そんな兄弟のつつましやかな生活が根底から覆される事件が
起きる。

出演は、2022年5月紹介『ビリーバーズ』などの磯村勇斗と
2018年4月29日付題名紹介『ガチ星』などの福山翔大。また
2019年12月2日付題名紹介『前田建設ファンタジー営業部』
などの岸井ゆきのがヒロイン役。
そこに染谷将太、滝藤賢一、豊原功補、霧島れいからが脇を
固め。さらに伊島空、長井短、東龍之介、松田航輝、尾上寛
之、カトウシンスケ、ファビオ・ハラダ、大鷹明良らが出演
している。
物語の核となる事件に関しては、監督自身が友人から聞いた
実話に基づいているそうだ。その実話では最終的に加害者側
が非を認めて賠償に応じたとのことだが、それでもやるせな
い話が根底に置かれている。
そんなどん詰まりのような若者たちの姿が展開されているも
のだが、映画はそれをさらにトリッキーな手法で描き込んで
いる。しかしそのトリッキーな展開を一つに纏め上げた手腕
は見事と言えるものになっていた。
それは特に後半に「修斗」という総合格闘技を据えることで
目先の変化とリズムの転換も行っているものだが、それは前
半のドラマとは全く異なるテイストになっている。しかしそ
れがスムースに繋がっているのも見事なものだ。
因にこのタイトル戦のシーンでは通常はコレオグラファーに
任せるところを、監督自身が細かな試合展開を脚本に描き込
み、プロ格闘家であり本作が初映画出演のファビオ・ハラダ
と共に作り上げたとのこと。
一方、対戦相手の福山翔大も1年かけて総合格闘技を学び、
プロになれるというお墨付きの上でシーンに挑んでおり、正
しくリアルで物語に沿った試合が描かれている。その撮影も
見事なものになっていた。

インディーズのテイストを残しながらエンターテインメント
に昇華させた。正に見事な商業映画第1作と言える作品だ。
公開は10月11日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社クロックワークスの招待で試写
を観て投稿するものです。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二