井口健二のOn the Production
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2024年04月28日(日) 幽霊はわがままな夢を見る

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『幽霊はわがままな夢を見る』
下関出身で2017年12月10日付題名紹介『巫女っちゃけん。』
などの在日韓国人グ・スーヨン監督が、同じく下関出身の俳
優深町友里恵と出会って作ったご当地ムーヴィ。
深町が演じる主人公は俳優を目指して上京したものの夢破れ
て故郷に舞い戻った31歳の女性。止むなく父親が運営する地
元FM局でレポーターの仕事を始めるが、一朝一夕で上手く
行くものではない。そんな彼女にとある幽霊が憑りつく。
一方、FM局の経営状況が芳しくない父親は大口スポンサー
の女性からラジオドラマの制作を命令される。その命令に逆
らえない父親は地元にゆかりの怪談「耳なし芳一」のラジオ
ドラマ化を企画するが…。

共演は、監督と深町との出会いをアレンジしたという2019年
6月30日付題名紹介『影に抱かれて眠れ』などの加藤雅也。
他に2008年5月紹介『グーグーだって猫である』などの大後
寿々花。舞台俳優でオーディションで抜擢された西尾聖玄。
さらに小泉八雲の朗読をライフワークにしているという佐野
史郎。南海キャンディーズの山崎静代らが脇を固めている。
挫折して都会から舞い戻った主人公や、経営が難しくなった
FM局。さらにスポンサーによるパワーハラスメントなど、
いろいろな行き詰まりを感じさせる現代を象徴するような要
素が盛り込まれた作品と言える。
そこに平家の没落を象徴するような「耳なし芳一」が織り込
まれるのは、地元のゆかりという以上の象徴的な意味合いが
込められているとも言えるだろう。そんな現代社会へのメッ
セージの籠った作品とも言えそうだ。
とは言うものの、「耳なし芳一」と現代社会とのテーマとし
ての繋がりが少し弱いかな。そこに主人公に憑りついた幽霊
の存在があるものだが、それが証拠物の発見というだけでは
少し物足りない感じがした。
ここにはもっと幽霊本人のそこに至った経緯みたいなものが
描かれていても良かったのではないかな。これは決してサブ
ストーリー的に描かれる程度のものではない。そんなことも
考えてしまったものだ。
またそれとは逆に、もっと下関の観光映画的な要素があって
も良かったのではないかな。劇場パンフレットに掲載された
ロケマップにはいろいろ紹介されていたが、映画では本当に
点描的でしかなかったのも物足りなかった。

公開は6月29日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて
全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、作品を配給する株式会社cinepos の招待
で試写を観て投稿するものです。



2024年04月21日(日) ある一生、ふたごのミーとユー―忘れられない夏―、メイ・ディセンバーゆれる真実

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ある一生』“Ein ganzes Leben”
オーストリア・ウィーン生まれの作家ローベルト・ゼーター
ラーが2014年に発表。世界の40言語に翻訳されてドイツ語圏
だけで 100万部以上を売り上げ、2016年の国際ブッカー賞の
最終候補にもなった小説の映画化。
物語の始りは20世紀の初頭。オーストリア・アルプスの山間
の村に1人の孤児の少年が連れて来られる。少年は遠い親戚
の家に預けられるが、その家の当主は少年を手ごろな働き手
としか見ていなかった。
そこで少年は厳しい体罰を受けながらきつい仕事に従事させ
られるが、少年は決して弱音を吐くことはなく。それがまた
当主を苛立たせ、折檻の挙句の骨折で片脚を引き摺るように
もなるが、それでもへこたれなかった。
そんな少年の支えは預けられた家の老婆だったが、その老婆
が不慮の事故で死去。その家にいる理由が無くなった少年は
出奔。そこから様々な仕事に就き、それぞれで実績を上げ、
遂には1人の女性を見初めることにもなる。
しかし幸せが長く続くことはなかった。そんな主人公の80年
に及ぶ人生が描かれる。

出演は、主人公を2011年ウクライナ・キーウ生まれで1歳の
時にオーストリアに移住したというイヴァン・グスタフィク
と、ウィーン生まれで本作でバイエルン映画賞受賞のシュテ
ファン・ゴルスキー、それに2005年11月紹介『サウンド・オ
ブ・サンダー』などのアウグスト・ツィルナーが演じる。
他に、オーストリア出身で1991年生まれのユリア・フランツ
・リヒター。2023年5月紹介『ナチスに仕掛けたチェスゲー
ム』などのアンドレアス・ルスト。1987年『バグダッド・カ
フェ』などのマリアンネ・ゼーゲンプレヒトらが脇を固めて
いる。
脚本は1955年ミュンヘン生まれで、2001年製作の『マーサの
幸せレシピ』が世界的な評価を得たウルリッヒ・リマー。監
督は、1966年スイス生まれで同国映画界の革新者と言われ、
2016年製作の『アンネの日記』で多数の受賞に輝いたハンス
・シュタインビッヒラーが担当した。
決して波乱万丈というほどの大げさなものではないが、正に
時代の流れに翻弄され続けた男性の一生が描かれる。それは
成功者でもなく富を掴んだ者でもないが、その人生自体が満
足できる、そんな生涯かもしれない。
最後に主人公が埋葬される瞬間が、彼自身を描き尽くしてい
るようで、何とも感動的な作品だった。

公開は7月12日より、東京地区は新宿武蔵野館他にて全国順
次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社アット・エンターテインメント
の招待で試写を観て投稿するものです。

『ふたごのミーとユー―忘れられない夏―』“เธอกับฉันกับฉัน”
2018年6月17日付題名紹介『バッド・ジーニアス 危険な天
才たち』などの映画会社GDH 559の製作で、1999年を背景
にした中学生の双子が主人公の青春映画。
ミーとユーは顔や体つきもそっくりの一卵性双生児。互いに
得意な科目が異なる2人は、不得手な科目の追試を身代わり
受験で乗り切るなど青春を謳歌していたが…。
その身代わり受験の教室でミーのふりをしたユーは、正解の
答案を見せた男子生徒が気になりだす。しかしその生徒は転
校で姿を消してしまった。
そんな夏休み、両親の都合で母方の祖母が住む田舎で過ごす
ことになった2人の前にその男子が現れる。彼もまた家庭の
都合でその田舎にやってきていたのだ。
こうして3人で遊ぶようになった姉妹たちだったが、正解を
教えてくれたのがミーだと思い込む男子生徒との関係に少し
ずつ齟齬が生じ始める。それは姉妹の間も同じだった。

脚本と監督は自身も一卵性双生児のワンウェーウ&ウェーウ
ワン・ホンウィワット姉妹。物語は2人の実体験に基づくも
のではないとしているが、いわゆる双子あるあるはいろいろ
盛り込まれていそうだ。
出演は、中華系のタイ人で本作で映画デビューを飾ったティ
ティヤー・ジラポーンシン。双子監督の許で1人で双子を演
じ分けている。相手役はベルギーとタイのハーフでテレビの
端役経験しかなかったというアンソニー・ブイサレート。
他に双子のスタンドイン役でナットワサー・シーヌデート。
顔は出ないが重要な役柄だ。さらにチェンマイ出身のスパク
ソーン・チャイモンコン。タイ映画に数多く出演のナティー
・ガームネオプロムらが脇を固めている。
双子は一緒に住んでいるところから始まるが、両親は離婚の
危機にあるという展開では、ドイツ人作家エーリッヒ・ケス
トナー原作『ふたりのロッテ』“Das doppelte Lottchen”
の正に裏返しという感じがした。
もちろん裏返しだから物語や展開などは全く異なるものにな
るが、夏休みで舞台が湖畔の町の設定など意識はしている感
じもする。監督へのonline取材はあるようだが、その辺を誰
か訊いてくれないかな。
この他、時代背景が1999年ということでY2K問題や、タイの
長距離バス事情など、いろいろ興味深いものが織り込まれた
作品だった。

公開は6月28日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社リアリーライクフィルムズの招
待で試写を観て投稿するものです。

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』“May December”
1997年に起きた実際の事件を基に2006年に行われた映画製作
を踏まえて、2018年1月紹介『ワンダーストラック』などの
トッド・ヘインズ監督が描いた作品。
登場するのはある実録ドラマへの出演を控えている女優。そ
の女優は役作りのために事件の当事者に会うことを希望し、
事件が起きた街にやってくる。そしてその家族に迎え入れら
れて取材を開始するが…。
その事件とは、当時36歳の女性が13歳の少年をレイプして逮
捕され、有罪になったというもの。しかし彼女はその時に身
籠った子供を刑務所内で出産し、刑期を終えた後に成人して
いた少年と結婚したというものだ。
その事件から20数年が経ち少年が当時の女性の年齢になった
頃から本編の物語は始まる。その時、事件で生まれた子供は
大学生で家を離れており、さらに生まれた双子が高校の卒業
式を迎えようとしていた。
そして女優はそんな一家と向き合い、さらに様々な隠された
真実に遭遇することになる。

出演はナタリー・ポートマンとジュリアン・モーア。それに
韓国系俳優のチャールズ・メルトン。ポートマンは製作者に
も名を連ねてゴールデングローブ賞の主演賞にノミネート、
モーアとメルトンも助演賞にノミネートされた。
原案と脚本は、キャスティングなどで長く映画界に携わって
きたサミー・バーチ。夫のアレックス・メヒャニクとの共同
原案で執筆した初の長編脚本は米ア賞脚本賞のノミネートも
勝ち取っている。
そしてその脚本にポートマンが目を留めて今まで組んだこと
のないヘインズ監督にオファー。監督とは4度目のコラボレ
ーションとなるモーアとの米ア賞受賞者2人による初共演が
実現したものだ。
チラシの惹句には「当事者の心で追うか、よそ者の目で追う
か」とあるが、男性の自分にはなかなか当事者の心にはなれ
なかった。むしろ少年の心には考える部分はあったが、後々
のことを知ると成る程とも思えたものだ。
それくらいに女性向けの映画ということは言えそうだ。ただ
家族構成などはもう少し明確にしておいて欲しかったかな。
現地の人にはこれで判るのかもしれないが。

公開は7月12日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。



2024年04月14日(日) マグダレーナ・ヴィラガ/クイーン・オブ・ダイヤモンド、ハピネス、フェラーリ、わたしの物語

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
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『マグダレーナ・ヴィラガ』“Magdalena Viraga”
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』“Queen of Diamonds”
前回紹介した『ブレインウォッシュ』のニナ・メンケス監督
がそれぞれ1986年と1991年に発表した初長編作品及び代表作
とされる作品の、米アカデミー・フィルム・アーカイヴ主導
によるレストア版(著作権2024年)。
1本目は、題名の「マグダレーナ=マグダラのマリア」から
想起される娼婦の物語。彼女は女友達とクラブにいるところ
を踏み込んできた警官に逮捕されるが…。彼女がいる拘置所
と数多の男と過ごすベッドルーム、それにプールサイドの映
像。それらが時系列を錯綜させて描かれる。
2本目は、タイトル代わりに描かれるトランプのカードが示
すカジノの女性ディーラーの物語。彼女の仕事ぶりと彼女が
昼間に寝たきりの老人を介護している姿とが描かれる。さら
に女友達と訪れる湖や劫火に焼かれる樹木の映像。こちらも
各々のシーンにはあまり脈絡のない作品だ。
それぞれは90分及び75分の作品で物語的にはかなり簡略化さ
れていると考えられるが、その割には結構な長回しや一つの
場面の執拗なまでの描写など、正直に言って商業作品という
より実験映画に近いものと考えた方がよさそうだ。論評には
タルコフスキーへの言及もあったが、そんな感じもする。
いずれにしても映画をエンターテインメントとして観たい観
客には少しハードルの高い作品と言えそうだ。まあそういう
作品だからこそアカデミーがレストアを主導したのだろう。
歴史的価値が認められる作品ということだ。

製作、脚本、監督、撮影はニナ・メンケス。主演はいずれも
監督の実妹のティンカ・メンケス。なお編集は2人の共同と
なっている。
前回紹介の作品では映画における女性の搾取について論じら
れていたが、この2作の主人公がそれぞれ娼婦と女性ディー
ラーというのは搾取される女性たちと言えるかもしれない。
その辺は意志が貫かれていると言えるだろう。
ただ1本目の作品にはヌードの女性も登場しており、その辺
の経緯は前回紹介作の中で論じて欲しかったかな。そういう
時代というだけでは説明できないものがそこにはあったはず
なのだから…。
なおこのヌードの女性が実在のものか否か、さらには主人公
を含む孤児の三姉妹という存在そのものにもいろいろ悩まし
いところを感じる作品でもあった。宗教に準えた作品は異教
徒にはなかなか難しいものだ。

公開は5月10日より、前回紹介の作品と共に「ニナ・メンケ
スの世界」という特集上映で東京地区はヒューマントラスト
シネマ渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コピアポア・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。

『ハピネス』
2002年に話題になった映画『下妻物語』の原作者としても知
られる作家・嶽本野ばらが2004年に発表した小説の映画化。
因に作家は「乙女のカリスマ」としてロリータファッション
界を牽引する存在だそうだ。
登場するのは高校生の男女。2人は美術部で知り合い共通の
話題もあって仲を深めて行くが、付き合いを始めてから1年
半後、彼女がある告白をしたことから怒涛の展開が始まるこ
とになる。
それは彼女が心臓に持病を持ち、状況から手術は不可能で、
その心臓の変調から彼女の余命があと1週間と医師に宣告さ
れたというのだ。そして彼女はその1週間で完璧なロリータ
となり、最高のカレーを食べたいと希望する。
こうして彼女の両親の了解のもと、2人は大阪にあるロリー
タファッションブランドの本店を訪ねたり、東京銀座の資生
堂パーラーで最高級カレーを食べることに邁進するが…。彼
の心には迷いも生じていた。

出演は2022年12月紹介『少女は卒業しない』などの窪塚愛流
と、2020年3月1日付題名紹介『#ハンド全力』などの蒔田
彩珠。他に橋本愛、山崎まさよし、吉田羊らが脇を固めてい
る。
監督は、2017年2月5日付題名紹介『花戦さ』で日本アカデ
ミー賞優秀監督賞受賞の篠原哲雄。元々2008年1月紹介『ク
リアネス』など青春映画に巧みな監督が、本作でもその手腕
を発揮している。
脚本は、2005年9月紹介『欲望』や2011年8月紹介『夜明け
の街で』などの川��いづみ。こちらも捻ったラヴストーリー
は得意の脚本家が、今回はかなりストレートな物語を巧みに
描き切っている。
以前にも書いたかもしれないが親族にかなり似通った感じの
境遇だった者がいて、正直に言って冷静には観ていられない
部分も生じる作品だった。自分の立場は男性の側だったが、
改めて女性の両親の心情を想うと辛さもこみ上げた。
とは言うものの本作は、それを見事にハッピネスに盛り上げ
て描き切ったもので、さすがにベテランの監督&脚本家の成
せる業と感心もしてしまった。これなら自分の記憶も爽やか
に蘇らせることができる。ありがたい。

公開は5月17日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社バンダイナムコフィルムワーク
スの招待で試写を観て投稿するものです。

『フェラーリ』“Ferrari”
F1レースのチームとして名高いイタリアの自動車メーカー、
その創始者であるエンツォ・フェラーリが1957年に陥った彼
の人生で最大の危機を描いた実話ドラマ。
第2次大戦以前からレースドライヴァーとして活躍していた
エンツォは終戦後の1947年に妻のラウラと共にフェラーリ社
を興し、市販車の製造販売と共にレースに参戦するチームの
運営を開始する。
そしてチームはF1やル・マンなどに参戦して優れた戦績を残
していたが、背景となる1957年には会社経営の実情は資金難
で逼迫していた。このためフォードや元々の所属だったアル
ファロメオなどからの買収の申し入れも届き始める。
ところが会社の株式の半分は妻の所有になっており、その妻
とは前年の1956年に最愛の息子を難病で亡くして以来、冷え
切った関係になっていた。その一方でエンツォは妻に隠して
愛し合う女性との間に息子も儲けていたが…。
そこでエンツォはイタリア伝統の公道レースミッレミリアへ
の参戦を発表、王座を奪還して会社を立て直すと宣言する。
そしてそこにスペイン人のドライヴァー、アルフォンソ・デ
・ポルターゴ侯爵が参加してくる。

出演は2017年7月9日付題名紹介『パターソン』などのアダ
ム・ドライヴァ。なお俳優は製作総指揮も務めている。他に
ペネロペ・クルス、2023年12月紹介『ダム・マネー』などの
シャイリーン・ウッドリー。
またブラジル出身で、TVミニシリーズ“SENNA” では主人公
のアイルトン・セナを演じたというガブリエル・レオーネ。
さらに2013年5月紹介『モスダイアリー』などのサラ・ガド
ン、2012年6月紹介『ユナイテッド』などのジャック・オコ
ンネル、2008年1月紹介『魔法にかけられて』などのパトリ
ック・デムプシーらが脇を固めている。
脚本は2003年6月16日付でリメイク版を紹介した『ミニミニ
大作戦』でその1969年製作のオリジナル版を手掛けたトロイ
・ケネディ・マーティン。監督は2015年4月紹介『ブラック
ハット』などのマイクル・マンが担当した。
原作は1991年に発表されたもので、その直後からマンとマー
ティン、それにシドニー・ポラックの共働で企画は進められ
た。しかしミッレミリアの再現などに多額の製作費が予想さ
れ、大手の映画会社ではGOサインは出ず、やがてポラックと
マーティンは2008年と2009年に他界してしまう。
それでもめげなかったマンは、2006年7月紹介『マイアミ・
バイス』などで培ったフェラーリ社との人脈を駆使して今回
の映画化に漕ぎ着け、半ばインディペンデント映画の体制で
本作を完成させたそうだ。
因に劇中登場するレーシングカーには1台1億ドル以上の価
値があるとされ、そのまま撮影に使用することはできなかっ
たが、フェラーリ社が所有する実車から直接3Dスキャンし
た外装を現代の車台に載せたものが撮影されている。
この他に1957年当時のベンツやポルシェなどは、コレクター
が所有している実車が多数登場しているそうだ。カーマニア
には垂涎の作品とも言えそうだ。

公開は7月5日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

『わたしの物語』“Is There Anybody Out There?”
四肢に障碍のあるイギリスの女性が、自ら映画を学んで監督
した一人称ドキュメンタリー。
1992年生まれの女性の障碍は、生まれつき股関節がなく両脚
の大腿骨が著しく短いというもの。このため身長は子供並み
なのだが、腰から上はどちらかというと愛らしい容姿の成人
女性になっている。
そんな女性が中指を立てながら激しく踊るシーンから映画は
始まる。それは異形ではあるけれど、どこか受け入れられる
感じがする…。それが監督の描きたいものを全て語っている
ような、そんな導入だった。
そこから彼女=監督は、自分と同じ姿の大人を探す旅を始め
る。それはまずFacebookでの問いかけから始めるが、該当者
はなかなか現れない。それでもアメリカ人のメイクアップ・
アーチストを見つけるが、COVID-19禍で旅行は難しかった。
その一方でシングルマザーで彼女を育てた母親や、彼女が原
因かもしれない離婚をした父親との会話や、さらにアメリカ
で治療を行う医師との面談、そしてサリドマイド児の活動家
との会話など。様々な人物との交流が描かれる。
そんな中で彼女は1人の男性と知り合い、我が子を抱くまで
にもなり、遂に家族3人でのアメリカ訪問も実現する。そん
な姿が描かれて行く。

監督、出演はエラ・グレンディニング。すでにドラマを含む
短編作品を発表している彼女の初長編監督作品とのことだ。
なお彼女は他の監督のドラマ作品に俳優として出演してもい
るそうだ。
実は近所の総合病院に同様の症例と思われる女性看護師が以
前在職されていて、採血などをして貰っていた記憶がある。
従って本作で同症者が見つからないという説明にはおや?と
思ったが、細かいところでいろいろ拘りもあるのだろう。
そんなことも含めていろいろ考えさせられる作品だった。た
だそれを屈託なく提示しているところが本作の良さで、それ
を僕らも屈託なく受け入れる、それがこの作品に対する回答
だろう。
それにしてもアメリカ人医師の治療法などはかなり衝撃的だ
ったが、それに対する彼女の考え方も素晴らしくて、これな
ら今後もいろいろと彼女の活躍が見られそうだ。見事な作品
だった。

公開は6月22日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。



2024年04月07日(日) PS-1黄金の河、ブレインウォッシュ:セックス・カメラ・パワー

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『PS-1黄金の河』“பொன்னியின் செல்வன் 1”
インド・タミル語の作家カルキ・クリシュナムルティによる
原作で、1950年―1954年に週刊誌連載で発表され、1955年に
全5巻(総ページ数約2,210P)で出版されたという歴史小説の
映画化。因に原作はタミル語で書かれたもっとも偉大な小説
の1つとされているそうだ。
タミル語原題はアルファベット表記“Ponniyin Selvan”、
英語に訳すと“The Son of Ponni”の意だそうで、Ponni と
は南インドを流れる大河の名称というものだ。そしてその地
で紀元10世紀に栄えた実在のチョーラ王朝を背景に、愛憎や
陰謀に彩られた物語が展開される。
映画の始まりでチョーラ王朝皇帝の2人の息子は、それぞれ
南方と北方の隣国の征服を進めていた。ところが彼らのいな
い宮廷ではある陰謀が進んでいた。その動きを察知した長男
は信頼できる配下の属国の王子を調査に向かわせる。
その陰謀とは長男の即位を阻止して皇帝の弟を王位に即ける
というもの。そんな陰謀は財務大臣やその他の大臣たちによ
って画策されていた。そしてその陰謀を把握した王子は長男
の指示でその事実を長男の弟妹に知らせに行くが…。
映画の展開ではこの王子の活動が主に描かれ、そこに仏教の
修行僧やその義妹等が絡んで、波乱万丈の物語が展開されて
行く。そこにはかなり大掛かりな戦闘シーンなどもあって、
中々の迫力の作品だった。

出演は、2013年12月紹介『神さまがくれた娘』などでタミル
語映画の最高の人気スターと言われるヴィクラムと、2012年
3月紹介『ロボット』などのアイシュワリヤー・ラーイ。さ
らに2021年日本公開『囚人ディリ』などのカールティらが脇
を固めている。
脚本と監督は1956年生まれで1980年代から映画の監督を開始
し、タミル語映画に革命をもたらしたとも言われるマニ・ラ
トナム。そして音楽をインド映画音楽の最高峰作曲家A・R
・ラフマーンが担当している。
今回はonline試写で鑑賞したもので、手元にプレス資料など
が一切なかった。そこで英語版のウィキペディアなどの情報
からこの紹介文を書いたが、その人物関係が複雑で物語を把
握するだけでかなり手間取った。
恐らく現地では大ベストセラーで内容などは知れ渡っている
ものなのだろうが、知らない身にはかなり厳しかった。とは
言えアクションなどはそれぞれ見応えがあったし、物語も陰
謀などの画策は明確なので面白さは損なわれない。
ただ物語をもっとちゃんと把握してしっかりと楽しみたかっ
たという思いは生じたものだ。

公開は5月17日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社SPACEBOXの招待で試写を観て投
稿するものです。

『ブレインウォッシュ:セックス・カメラ・パワー』
           “Brainwashed: Sex-Camera-Power”
1955年生まれでUCLA在学中の1981年に最初の短編作品を手掛
けたという女性監督のニナ・メンケスが、映像作品における
「男性のまなざし=Male Gaze」 について検証したドキュメ
ンタリー。
本編ではUCLAで行われたと思しき講演の模様を中心に、学生
らとのディスカッションや様々な映画人らへのインタヴュー
なども挟みながら、古今東西の映画に登場する女性の姿態を
扇情的に写した映像を紹介して行く。
そこには1927年製作のドイツ映画『メトロポリス』に登場す
るロボットマリアのダンスシーンや、2017年版の『ブレード
ランナー2049』など、SF映画も散見される。他にも韓
国映画なども選ばれていたものだ。
それらは「男性のまなざし」の類例として取り上げられてい
るものだが、その一方でソフィア・コッポラ監督の『ロスト
・イン・トランスレーション』など、女性監督の作品でも同
様の「男性のまなざし」があることも紹介される。
ということで古今東西の映画が女性を性的対象物として搾取
してきたことが論じられて行くものだが…。実際その主張は
正しいものだし、それによって女性差別などの多くの事象が
生じてきたという意見も傾聴すべきものだ。
とは言うものの論証自体がかなり弱いことは否めない。特に
せっかくソフィア・コッポラの作品を取り上げながら本人に
その意味を語らせなかったのはなぜなのか? それを撮った
理由を本人の口から聞きたかった。
その一方で突然ロザンナ・アークェットが登場してハーヴェ
イ・ワインスタインへ告発を始めたのには唖然としてしまっ
た。これでは結局 me too 運動への尻馬に乗ったようにしか
見えてこず、底が浅くも見えてしまったものだ。
さらに「男性のまなざし」が女性の姿態ばかりを観ていたか
と言えば、SF映画では『ブレードランナー』のオリジナル
が公開された1982年の2年後には『ターミネーター』が公開
され、そこにはシュワルツェネッガーの裸体が登場する。
それ以前にも『ターザン』映画では半裸の男性が描き続けら
れていた。特にターザンはエドガー・ライス・バロウズの原
作では英国紳士としても登場するのに、映画がそれを描くの
には1983年の『グレイストーク』まで掛かった。
また『メトロポリス』の脚本は女性のテア・フォン・ハルボ
ウによるものだし、さらに1936年のベルリンオリンピックを
写した2部作の記録映画でレニ・リーフェンシュタール監督
は男性の姿態を美しく捉えてもいる。
そんな事象が多数ありながら恣意的に一部の作品を取り上げ
ていることは明らかで、論証というにはあまりに中途半端。
主張していること自体は正しいだけに却って物足りない感じ
にもなってしまった。

公開は5月10日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コピアポア・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。


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井口健二