井口健二のOn the Production
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2024年02月25日(日) 帰ってきたあぶない刑事

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『帰ってきたあぶない刑事』
1986年にテレビシリーズが放送開始。さらに第2シリーズと
テレビスペシャル、7作の映画版も製作された人気ドラマの
最新作が登場する。
正直に言ってテレビシリーズは観ていなかったし、実は映画
版の前作(2016年公開)は試写で観させて貰ったが、ここでの
紹介は割愛した。それはシリーズを観ていなかったことでの
後ろめたさもあったためだ。
そんな訳で今回はその前作を踏まえて紹介させてもらう。と
言うのも前作では最後に主人公らが警察を退職し、心機一転
ニュージーランドで探偵業を始めたはずなのだ。それがなぜ
この題名なのかというところも気になったものだ。
それはさておき、物語は主人公の2人が横浜港の岸壁で海を
観ているところから始まる。その背後にやってきた乗用車で
トラブルが発生し、そこに現れた女性と主人公の1人に因縁
がありそうだったが…。
その翌日、野球場の見えるビルで探偵事務所を開業した2人
の許にハーレイ・ダヴィッドソンに乗った若い女性が現れ、
生き別れの母親を探してくれと依頼する。その女性の母親の
名前を聞いた2人は即答でその依頼を受諾。
しかしその陰には、新興ヤクザと中華街の顔役が絡むIRを
巡る利権争いの危険な罠が潜んでいた。そしてその争いには
警察も立ち入らない状況があった。その間隙に主人公らが挑
んで行く。

出演は舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオルと浅野温子。そこに
土屋太鳳、西野七瀬。さらにベンガル、長谷部香苗、鈴木康
介、小越勇輝、杉本哲太。そして岸谷五朗、吉瀬美智子、乙
女太一、深水元基らが脇を固めている。
監督はテレ東ドラマ『日本ボロ宿紀行』や『絶メシロード』
などの原廣利。本格的な長編映画は初めてのようだが、実は
父親が本作のテレビシリーズを手掛けており、その血筋を引
くようだ。
そして脚本を、テレビの第1シリーズから参加しているベテ
ランの大川俊道と岡芳郎が担当している。
タイトルにある「帰ってきた」に関しては巻頭岩壁のシーン
で台詞での説明があるのだが、ここは出来たら現地ロケでの
アクションが欲しかったかな。前作ではそれがあっただけに
少し残念には感じてしまった。
そして肝心の「刑事」という表記に関しては、かなり無理矢
理という感じではあるが何とか伏線回収できていたのには、
ちょっとニヤリとする感覚ではあった。まあ次回再度は使え
ないと思うが、そこは何とか考えるかな。
ただアクションに関しては、定番のシーンは何とかなってい
るものの、単純に疾走するシーンなどで年齢を感じさせる表
現が強調されているのはどうなのかな。もっとかっこよく見
せても良いのではないかという気はした。
それに銃撃シーンなども折角C4まで言及したのなら、それ
に合わせた展開でもっと派手な演出もあってよかったのでは
ないか。主人公2人と同年配の観客としては、そんな無理の
ない頑張りにも期待したいものだ。

公開は5月24日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映株式会社の招待で試写を観
て投稿するものです。



2024年02月18日(日) プリシラ、ナチ刑法175条

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『プリシラ』“Priscilla”
1977年に他界したエルヴィス・プレスリーと1973年まで結婚
していたプリシラの姿を、1985年にプリシラが発表した回想
録に基づき、2006年12月紹介『マリー・アントワネット』な
どのソフィア・コッポラ脚本・監督で描いた作品。
出会いは1959年。実父を戦争で亡くし継父の任地西ドイツで
暮らしていた14歳のプリシラは、兵役で当地に赴任していた
エルヴィスの宿舎のパーティーに誘われる。そして出会った
2人には最初から互いに惹かれるものがあったようだ。
しかもその兵役の前に実母を亡くしていたエルヴィスは彼女
にその悲しみの心の内を打ち明ける。こうして共に親族を亡
くした経験を持つ2人は急速に距離を縮めるが、エルヴィス
は兵役を終えて帰国してしまう。
それから2年後、エルヴィスから突然掛かってきた電話は、
プリシラに出来るだけ早く自分の許に来て欲しいというもの
だった。そしてエルヴィスは彼女の両親に必ず学校は卒業さ
せると誓い。メンフィスでのプリシラの生活が始まる。
こうして始まったエルヴィスとプリシラの10数年に及ぶ生活
が描かれる。しかしそれは全てが順調と言い切れるるもので
はなかった。

出演は、2018年に全米タレントサーチで優勝し、同年『パシ
フィック・リム:アップライジング』などに出演。本作では
2023年ヴェネツィア国際映画祭最優秀女優賞「ヴォルピ杯」
に輝いたケイリー・スピーニー。
相手役に多くのテレビドラマや配信ドラマに出演のジェイコ
ブ・エロルディ。他に多くのドラマに出演のダグマーラ・ド
ミンスク。さらにアリ・コーエン、ティム・ポストらが脇を
固めている。
自分の年代の洋楽好きにとってエルヴィス・プレスリーは正
しく音楽を通しての英雄だったから、彼が私生活でどんな暮
らしをしていたかなどは全く気にもしていなかったが、本作
を観て改めてその厳しさなども知ったものだ。
とは言えプリシラとの関係では、互いに甘えなどもあったの
かもしれないが、何とも言えない想いのすれ違いなどが心に
突き刺さる。僕自身の妻が8歳年下なもので、エルヴィスが
感じていたであろう想いには正に共感もしてしまった。
ただし映画はプリシラの視点だから、それは明白には描かれ
ないものだが…。
それにしてもスクリーンに描かれるプリシラの可愛いこと。
元々監督は『マリー・アントワネット』でもキルスティン・
ダンストを見事に可愛く撮っていたが、本作で50年、60年代
ファッションに身を包んだプリシラの姿にはエルヴィスなら
ずとも骨抜きになる想いがした。

公開は4月12日より、東京地区はTOHOシネマズ・シャンテ他
にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ギャガ株式会社の招待で試写を
観て投稿するものです。

『ナチ刑法175条』“Paragraph 175”
1985年にゲイの活動家を描いた長編ドキュメンタリー『ハー
ヴェイ・ミルク』でオスカー受賞のロブ・エプスタインが、
同作でコンサルティングを担当のジェフリー・フリードマン
との共同監督で1999年に発表したドキュメンタリー作品。
邦題には「ナチ刑法」とあるが、同性愛を禁じるこの法律は
元々は1871年から存在していた。しかしナチス以前のワイマ
ール共和国時代のドイツは、むしろ「同性愛者の天国」とさ
れ「黄金の20年代」とも呼ばれる時代だった。
この作品では、そんな時代を謳歌して後のナチスによる粛清
でどん底に落とされた人々の生の証言が綴られている。それ
は今の時代には想像もつかない、正に悲劇と言える過酷な証
言の数々だ。
とは言うものの、このナチスによって厳格化された法律は、
第2次大戦後の東西分裂で自由主義国家になった西ドイツで
も1994年まで存続し戦後にも多く逮捕者がいる。むしろ東ド
イツの方が先んじて1989年に廃止されているものだ。
そしてこの作品は1996年に制作開始されたということだが、
遅きに失したというか、ナチス政権下で同法によって逮捕さ
れ収容所に送られた 1.5万人ともされる人々で、制作時に生
存が確認されたのは12人しかいなかったというものだ。
この手の証言系のドキュメンタリー制作は多くが時間との競
争になるが、本作の場合はさらに法律を含めた社会情勢がそ
の妨げになっている。因に現時点では証言者の多分全員が亡
くなっており、最早得ることのできない貴重なものだ。
そんな貴重な証言が詰まった作品だが、同時にそれは現代社
会への警鐘になっているとも感じる。いつまた同じ社会情勢
になるかもしれない。そんな恐ろしさも感じさせる作品だっ
た。
正しくマイノリティである彼らの生き様や発言を記録して後
世に残す。それも映画の重要な役割なのだ。

なお映画に登場するインタヴュアーは、2018年に「ホロコー
スト・ジェノサイド・人類犯罪委員会」の委員長を務めたク
ラウス・ミューラー。ナレーションはゲイをカミングアウト
している英国俳優ルパート・エヴェレットが務めている。
公開は3月23日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。



2024年02月11日(日) FEAST−狂宴−、エドガルド・モルターラある少年の数奇な運命、リトル・エッラ、(報告)記者会見:室町無頼

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『FEAST−狂宴−』“Apag/Feast”
2017年6月4日付題名紹介『ローサは密告された』などのブ
リランテ・メンドーサ監督によるフィリピンの社会情勢を背
景としたファミリードラマ?
登場するのは貧富に隔たりのある2組の家族。その金持ちの
一家の息子が車を運転して父親と帰宅中に、わき見で貧しい
一家の父親と娘を撥ねてしまう。そして動転した親子はその
場から逃走してしまう。
こうして家に帰りついた親子だったが、一家を仕切る女主人
は話を聞いて弁護士に相談することを提案、弁護士は自首を
勧める。そこで父親は運転していた息子を差し置いて自首を
決意。刑に服することになるが…。
一方、被害者一家では幸い娘は助かったものの、事故後昏睡
状態だった父親は帰らぬ人となり、収入も失って一家は困窮
状態になる。そこで加害者一家の女主人は被害者の妻を自ら
の邸宅の使用人にして一家を支えることに…。
こうして事故の加害者と被害者の両家が同じ家に住まうとい
う奇妙な暮らしが始まってしまう。

出演は「フィリピンインディーズシネマのプリンス」と呼ば
れるココ・マーティンと、『ローサは密告された』でカンヌ
国際映画祭主演女優賞受賞のジャクリン・ホセ。
そして本作の舞台であるフィリピン・パンパンガ州で知事を
務めたこともあるというリト・ラピッド。それに悪役女優と
して著名というグラディス・レイエス。かなり錚々たる顔ぶ
れのようだ。
映画の途中では女主人と加害者の息子、それに被害者の未亡
人という3人が一つ屋根の下で暮らすことになるが、これが
3人ともその時点で配偶者がその場にいないという尋常では
ない展開。
まあよくこんなシチュエーションを思い付いたものだという
感じだが、これが結構人情味もあってうまいドラマが作り出
されていた。展開からはもっと過激な復讐劇みたいなものも
考えてしまったが、こんな人情劇も良いものだ。
それにしても、劇中に登場する豚を1頭まるまる使ったパン
パンガ州の郷土料理みたいなものがめちゃくちゃ美味しそう
で、これはどこかのフィリピン料理店で再現してくらないか
な。あったら食べてみたいものだ。

公開は3月1日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社百道浜ピクチャーズの招待で試
写を観て投稿するものです。

『エドガルド・モルターラある少年の数奇な運命』
                      “Rapito”
2017年5月28日付題名紹介『甘き人生』などのマルコ・ベロ
ッキオ脚本・監督で、19世紀にイタリアボローニャで起きた
ユダヤ教徒一家の息子を巡る誘拐事件の実話に基づくとされ
る作品。
始まりは1858年6月23日、ボローニャのユダヤ人居住区に建
つモルターラ邸に教皇直属の兵士が押し入り、当時7歳の当
家の息子エドガルドを連れ去る。それはその子が生後間もな
く洗礼を受けたという情報に基づくものだった。
しかしその状況を把握しない両親は息子を取り戻すべく申し
立てを行うが、洗礼が行われたか否かの明白な証拠はなく、
教皇側は洗礼を受けた者にはキリスト教教育を受けさせなけ
ればならないとの決まりに基づき拉致を強行する。
こうしてローマに連れて来られたエドガルド少年は教皇に謁
見し、キリスト教教育が始まるが…。少年は毎夜の就寝前に
シェマの祈りを捧げることを忘れなかった。しかし事態は変
わらぬまま時だけが過ぎて行く。
一方、当時の教皇ピウス9世は、初めは救世主とも崇められ
たもののその権威は失墜、今やエドガルドの存在が権威を保
つ手段にもなっていた。そしてこの事態にフランスやアメリ
カ合衆国など世界が動き出す。

出演は、ベロッキオ監督作品で2011年3月紹介『愛の勝利を
ムッソリーニを愛した女』に出演のパオロ・ピエロボンと、
同じくファウスト・ルッソ・アレジ。そして『甘き人生』に
出演のバルバラ・ロンキ。
さらに映画初出演のエネア・サラ、2023年『蟻の王』で映画
デビューしたてのレオナルド・マルテーゼらが脇を固めてい
る。
同じ題材では出版された書籍もあるようで、そちらの映画化
権獲得にはスティーヴン・スピルバーグも動いたとのこと。
成程なとは思わせるが、まあつまりはユダヤ人迫害の歴史的
な1ページを描いた作品ということだ。
それにしてもローマカトリック教会の横暴さがこれでもかと
いう感じで描かれた作品だが、バチカンもその辺は理解して
いるということなのかな。ユダヤ人にとってはナチス以外で
新たな標的が見つかったようだ。

公開は4月26日より、東京地区はYEBISU GARDEN CINEMA、新
宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全
国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ファインフィルムズの招待で試
写を観て投稿するものです。

『リトル・エッラ』“Lill-Zlatan och morbror Raring”
スウェーデンの作家ピア・リンデンバウムが2008年に発表し
たサッカー好きの少女が主人公の絵本の映画化。
主人公は友達との付き合いがちょっと苦手なサッカー好きの
少女。近所の男の子が話し掛けてはくるが、何時も冷たい態
度を取ってしまう。そんな主人公が唯一話せるのはヘアデザ
イナーのおじさんで、両親が仕事で旅行中はおじさんの家で
暮らすのが楽しみだった。
ところがそんなおじさんがイヴェントの準備を始めた頃、お
じさんの家に1人の男性が現れておじさんと親密な態度を取
り始める。しかもおじさんの方が積極的で、その男性に愛の
告白まで準備してしまう。そんな様子に気が気でない主人公
は、男性を追い出す計画を練り始めるが…。
そんな少女の成長が描かれて行く。

脚本と監督は、ノルウェー出身でイギリスの芸術大学で映画
制作を学んだというクリスティアン・ロー。子供や家庭を描
く作品が得意という監督が、隣国スウェーデンを舞台に描い
た作品だ。
出演は2012年生まれで本作が長編映画デビューのアグネス・
コリアンデル。なお本作後はビリー・コリアンデルに改名し
ているそうだ。相手役は1979年ストックホルム生まれのシー
モン・J・ベリエルと1979年オランダ生まれのティボール・
ルーカス。
他に2012年生まれで本作が映画デビューのダニヤ・ゼイダニ
オグル、1996年生まれでYouTuber出身のウィリアム・スペッ
ツ。さらに1959年生まれで、1970年代に製作された『長くつ
下のピッピ』でピッピ役を演じていたインゲル・ニルセンら
が脇を固めている。
物語自体は少女の憧れや嫉妬を描いた他愛のないものだが、
そのシチュエーションにLGBTが関るのは時代ということ
なのだろう。逆に言えば西欧ではそれくらいに普遍的な状況
ということだ。日本はどうかな。
なお原題のZlatanはサッカーの元スウェーデン代表選手ズラ
タン・イブラヒモヴィッチのこと。イブラヒモヴィッチはオ
ランダのアヤックス・アムステルダムにも在籍していたから
彼氏が持ってくるボールにはその意味がある。
因にJリーグの大宮、浦和で活躍した登録名ズラタンの選手
はズラタン・リュビヤンキッチ。元スロベニア代表の選手な
ので誤解の無きよう。

公開は4月5日より、東京地区は新宿シネマカリテ、UPLINK
吉祥寺他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試
写を観て投稿するものです。
        *         *
記者会見『室町無頼』
 2025年1月17日公開予定作品の製作発表会見に招待され、
2月11日に行われた会見を見学してきたので報告する。
 作品は直木賞作家・垣根涼介の原作を、前回紹介『あんの
こと』などの入江悠脚本/監督で映画化するもので、戦国時
代へと繋がる応仁の乱の前夜=室町時代の末期を背景に、大
飢饉と疫病で疲弊する社会を立て直すべく立ち上がった者た
ちの活躍が描かれる…、というもの。
 そして会見には、主演の大泉洋を始め、堤真一、「なにわ
男子」長尾謙杜、松本若菜、北村一輝、柄本明と入江監督が
登壇した。
 その会見は、大泉が絡むと大体は彼が喋りまくって終始す
るが、今回は堤や長尾にもそれなりの目配りをして、まずは
会見らしい感じのものになっていた。
 そして会見では撮影クリップなどの映像も紹介され、特に
長尾に関してはワイアーなども使ったアクションが撮影され
たようで、中々の迫力が感じられた。
 その他にも場内のパネルには大勢のエキストラを動員した
モブシーンなども紹介されており、実際に京都撮影所に関東
からもエキストラが招集されたとのこと。
 そのモブシーンに絡めては大規模な爆破シーンや吹きまく
る風にもこだわりがあったということで、入江監督の渾身の
作品が作られているようだ。
 なお会見中の発言によると撮影は既に完了しており、ここ
から入江監督が編集などの仕上げに掛かっている途上とのこ
と、来年1月が楽しみになる会見だった。
 なおこの紹介文は、製作会社東映株式会社の招待で会見を
観て投稿するものです。



2024年02月04日(日) ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ、パスト ライブス/再会、あんのこと、流転の地球2、青春18×2君へと続く道

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
              “Five Nights at Freddy's”
2023年4月紹介『ミーガン/M∃GAN』などのブラムハウ
ス社の製作で、2014年にリリースされた同名ホラーゲームの
クリエーターが直接関って映画化された作品。
主人公は少し年の離れた妹と2人暮らしの男性。実は妹との
間にはもう1人弟がいたが、まだ少年だった彼の目の前から
車で連れ去られるという出来事があり、以来行方不明。彼自
身はそのトラウマにも苛まれている。
そんな彼は求職中。ただし妹との関係で夜勤の仕事は断って
いたが、止む終えず閉鎖されたピザレストランでの夜間警備
の仕事を引き受ける。そこは以前は店内のアトラクションで
も賑わっていた店だったが…。
彼が訪れた店内には往時のままのキモ可愛いキャラクターの
マスコットの人形が立ち並び、それは主人公を待ち構えてい
る風でもあった。そしてそこに妹もやってきてしまった夜、
人形たちが命を吹き返す。

主演は2012年7月紹介『ハンガーゲーム』などのジョッシュ
・ハッチャースン。相手役に2019年『カウントダウン』とい
う作品に主演のエリザベス・レイル、テレビ出身の子役で映
画は初出演のパイパー・ルビオ。
さらに Netflix作品『サマーキャンプ』などのキャット・コ
ナー・スターリング、最近はテレビ出演が多い1991年『フラ
イド・グリーン・トマト』などのメアリー・スチュアート・
マスタースン、2012年1月紹介『ファミリー・ツリー』など
のマシュー・リラードらが脇を固めている。
脚本と監督はブラムハウス社製作のTVドキュメンタリーや
ホラーアンソロジーなどを手掛けてきたというエマ・タミ。
脚本はオリジナルゲームのクリエーターのスコット・カーソ
ンと連名で、カーソンは製作者にも名を連ねている。
そして物語の中心となるアニマトロニクスの制作と操演は、
2003年4月紹介『カントリー・ベアーズ』などのジム・ヘン
ソン・クリーチャーズショップという布陣の作品だ。
僕は原作となるホラーゲームのことは知らなかったが、主人
公が抱えるトラウマなどの設定は実に巧みで、それが映像で
のコケ脅かしなどはしなくてもじわじわと観客を締め付けて
くる。
そしてそこにキモ可愛いキャラクターがアニマトロニクスで
再現され、それが絶妙の効果を上げている。元々ジム・ヘン
ソンのクリーチャーはキモ可愛いの元祖だが、そこにさらに
絶妙な味付けが加わった感じだ。
アメリカでのヒットですでに続編の制作も進んでいるようだ
が、これは楽しみなシリーズになりそうだ。

公開は2月9日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷、新宿
ピカデリー、渋谷 HUMAXシネマ、グランドシネマサンシャイ
ン池袋他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投
稿するものです。
(この作品は2023年12月に東宝東和の試写会で観たものです)

『パスト ライブス/再会』“Past Lives”
韓国ソウル生まれで、12歳の時にカナダに移住したという女
性劇作家が、自らの体験を基に描いた監督デビュー作。その
本作は、今年の賞レースでは1月末時点で 223のノミネート
と76の受賞を勝ち取っているそうだ。
物語の開幕は現代のニューヨーク。そのバーのカウンターに
座ったアジア系の女性がアジア系と西洋系の2人の男性の間
で談笑している。果たしてその3人の関係は…?
そこから話は遡って24年前、韓国ソウルで男女の小学生がじ
ゃれ合うように会話しながら住宅地の坂道を下校している。
2人は学校ではテストの成績で1位、2位を争っているよう
だ。
ところがそんな小学生の少女が両親と共にカナダに移住する
ことになる。そして彼女は「韓国人はノーベル文学賞を取れ
ないから」と言い置いて旅立ってしまう。
それから12年、ニューヨークで劇作家を目指して修行してい
る女性は、映画関係者の父親のFacebookにその娘である自分
を探しているという書き込みを発見する。こうしてネットを
介して再会を果たす2人だったが…。

脚本と監督のセリーヌ・ソンは2020年発表 “Endings”など
の舞台作品で評価されている他、ドラマシリーズのスタッフ
ライターなども手掛けており、すでに映画化の第2作も進行
中だそうだ。
出演はカリフォルニア出身の韓国系移民2世で、Netflix 配
信『ロシアン・ドール』などにも出演のグレタ・リーと、ド
イツ・ケルン出身韓国系のユ・テオ。それに2019年4月紹介
『オーヴァーロード』などのジョン・マガロ。
人生は選択の連続というのはよく言われることだが、今が幸
せと感じられるならそれはただの想像と片付けられる。でも
もしこの主人公たちのような立場になったら、想像を超えた
いろいろな思いが湧き上がってしまうことになりそうだ。
そんな思いがいろいろと湧き上がってくる作品。それは正に
純愛を呼べるのかな。そんな究極の恋愛ドラマとも言えそう
な作品だ。まあ韓国ならではの特殊事情のようなものもある
けど、それを超えるドラマにもなっている。
因に原題は「前世」という意味だが、作品の中では韓国語の
イニョン=縁(えにし)という言葉もキーワードとして登場す
る。でもそこまで言うとちょっと大げさかな、僕としては人
生の選択という程度で物語を捉えたいと思った。

公開は4月5日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。

『あんのこと』
2016年1月紹介『太陽』や2020年1月紹介『AI崩壊』など
の入江悠脚本/監督による2020年のCOVID-19禍を背景とした
実話に基づく社会派ドラマ。
主人公は覚醒剤中毒で、売春を生業としている20歳の女性。
母親と祖母との3人で団地暮らしだが、部屋に男を連れ込む
母親からは「シャブ打つ金があったら家に入れろ、もっと身
体を売って稼いで来い」と暴力を振るわれている。
そんな女性が警察に検挙される。それはホテルで相手をして
いた男が覚醒剤で昏倒したためだったが、その取り調べの席
で彼女は1人の刑事と巡り合う。その刑事は何くれとなく世
話を焼いてくれ、自ら主催する更生会にも誘ってくれた。
こうして少しずつ更生への道を歩み始めた彼女だったが…。
COVID-19禍が社会との繋がりを遮断し、さらに様々な出来事
が更生への道を阻んで行く。そんな彼女が辿り着いた最後の
居場所とは。

出演は2022年12月紹介『少女は卒業しない』などの河合優美
と、共演者に佐藤二朗、稲垣吾郎。さらに河井青葉、広岡由
里子、早見あかり。他に盛隆二、護あさならが脇を固めてい
る。
入江監督の作品は、2010年5月紹介『SRサイタマノラッパ
ー2』からそこそこ観て来ているが、どの作品も登場人物と
の距離感が絶妙な気がしていた。ところが本作ではその距離
感がめちゃくちゃ近い感じがする。
そこには主人公に寄り添おうとする監督の意思が感じられる
し、この作品を描くことへの使命感みたいなものも感じるも
のだ。そのくらいにこの作品を描くことへの重要性も感じて
いたのだろう。
それはオリンピックイヤーの2020年=COVID-19禍という時代
に起きた事件ではあるけれど、EXPO2025を控えた今の時代に
も共通する閉塞感みたいなものが事件を引き起こした、そん
な感じにも捉えられる作品になっていた。
社会に対する言いようのない不満、そんなものも感じられる
作品だ。そして監督は、それを観客に感じさせることに成功
した、そんな風にも言える作品だろう。正に社会に一石を投
じたと言える作品だ。

公開は6月7日より、東京地区は新宿武蔵野館、池袋シネマ
・ロサ、丸の内TOEI他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

『流転の地球−太陽系脱出計画−』“流浪地球2”
2008年発表の長編小説『三体』で2015年アジア人初のヒュー
ゴー賞受賞者となった中華人民共和国のSF作家・劉慈欣が
2000年に発表した短編小説を基に、2019年映画化された作品
の第2弾。
作品は第2弾とは言っても続きではなくて、2019年映画化作
品で描かれた物語へと続く前日譚となっている。従って前作
を観ていなくてもさほど支障はないと言えそうだ。実際に僕
も前作は観ないまま本作を鑑賞した。
物語の発端は2040年代。太陽活動に変調が観測され、それは
やがて太陽が膨張して地球を飲み込むと結論される。そこで
人類脱出計画が発案され、最終的に地球ごと他の恒星系に移
転する計画が実施されることになるが…。
そこには大型宇宙船で脱出するなど複数の対立案が存在し、
その対立はテロを含む反対運動へと発展していった。そんな
中で主人公らは地球移動の邪魔になる月の放逐と、地球を動
かすための地球エンジンの準備を進めていた。
そして10年後、太陽放射線の影響が人の健康を犯し始めたこ
ろ、月が地球へ落下するという危機が迫る。その一方で人の
アイデンティティをディジタル化し、究極の存命を計る禁断
の研究も進められていた。
果たして人類はその英知を結集し、地球の太陽系からの移動
を実現することができるのか。

監督は前作に引き続いてのグオ・ファン。また本作には原作
者の劉慈欣が製作総指揮の肩書で参加している。
出演は、2017年12月17日付題名紹介『戦狼/ウルフ・オブ・
ウォー』などのウー・ジンが前作に引き続いて主演の他、中
華映画の代表とも言えるアンディ・ラウ。さらに重鎮のリー
・シュエチェン。
他にシャー・イー、ニン・リー、前作に続いて登場のワン・
ジー。またシュ・ヤンマンツー、2023年8月紹介『フラッシ
ュオーバー炎の消防隊』などのトン・リーヤー、子役のルオ
シ・ワン、モデルのクララらが脇を固めている。
原作は文庫本で60頁ほどの作品で、ある種の思考実験と言え
るような作品のようだ。そこから前作では上映時間 125分の
アクション満載の作品に仕上げられていたという。そして本
作ではさらに 173分の作品が作られた。
その本作では、中国科学界の最高権威とされる中国科学院の
複数の分野の専門家の監修のもと、原作小説の5倍以上の文
字数とされるコンセプトが作成されたということで、そのコ
ンセプトが存分に生かされた作品になっているようだ。
それにしても地球移動という技術的な問題からディジタル生
命まで、正に多岐に渉るテーマが満載の作品で、これは短編
小説『前哨』の作者アーサー・C・クラークが『2001年宇宙
の旅』に参加したときのような成立の作品とも言えそうだ。
SF映画にとっての新たな金字塔と言えるかもしれない。作
中には『2001年』へのオマージュも多数見受けられた。

公開は3月22日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ツインの招待で試写を観て投稿
するものです。

『青春18×2君へと続く道』
2014年にSNSで公表されたブログを基に、2023年3月紹介
『Village/ヴィレッジ』などの藤井直人監督が紡いだ青春ス
トーリー。
主人公は台北で起業した男性。そんな男性がある事情で東京
に出張することになり、その旅程の最後でふと日本の原風景
を巡る旅に出掛ける。それは彼の青春の思い出を辿る旅でも
あった。
それは18年前、18歳の高校生だった主人公は台南の田舎町で
元日本人が経営するカラオケ店にアルバイトで働いていた。
その店に突然バックパッカーの日本人女性が現れる。その女
性は行先を決めない旅の途中で、財布を無くしたからしばら
く働かせて欲しいということだった。
そんな女性を店主は快く受け入れ、アニメ好きで少し日本語
の判る主人公に教育係を申し付ける。こうして住み込みで働
き始めた女性と主人公との交流が始まるが…、6歳年上の彼
女は当初は主人公をあまり気に掛けないようだった。
それでも田舎町では珍しい異国人の彼女は地元の人気者にな
り、そんな彼女に主人公は徐々に距離を詰めて行く。しかし
ある日突然彼女は帰国してしまう。そして帰国した彼女から
は1枚の冬景色の絵葉書が届いただけだった。
そんな物語が、18年後に日本を旅する主人公の行動と共に描
かれて行く。

出演は、台湾で多くのドラマに出演して「新・国民的彼氏」
とも呼ばれている許光漢(シュー・グァンハン)、その相手役
に2017年9月17日付題名紹介『ユリゴコロ』などに出演の清
原果耶。
そして主人公が日本で出会う人たちに、台湾生まれで2014年
日本公開『GF*BF』などに主演のジョセフ・チャン、さらに
「なにわ男子」道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳らが登場
する。
なおカラオケ店の従業員役で登場する台湾側の出演者たちも
いい味を出していたが、今回は内覧試写で観たためにプレス
資料が揃っておらず、詳細は不明。後日判ったら追加するか
もしれない。
青春映画としてはかなりドラマティックな展開の作品だが、
実は基になったブログ「《青春.18 x 2》日本慢車流浪記」
は今も公開されていて、それを読んでみると映画がほとんど
原作通りであることに驚かされた。
もちろん掴みの部分や、日台の交流を描くシーンなどには多
少の脚色もあるが、大筋ではほぼ原作通りのドラマティック
な物語が展開されていたものだ。結末も含めて素晴らしい体
験だったと言える物語に拍手を贈りたい。
今週は先に24年間を挟んだ恋愛ドラマも紹介したが、本作は
18年、奇しくも長い時間を挟んだ恋愛ドラマに心を揺さぶら
れる1週間だった。どちらも実話を基にした心に沁みる名作
と呼べる作品だ。

公開は5月3日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。


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井口健二