| 2023年11月26日(日) |
沖縄狂想曲、シャクラ、ファイアバード |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『沖縄狂想曲』 2018年4月29日付題名紹介『明日にかける橋』などの太田隆 文監督が、2020年『ドキュメンタリー沖縄戦』、2022年『乙 女たちの沖縄戦』に続けて沖縄が抱える諸々の問題を描いた ドキュメンタリー。 作品は、太平洋戦争において沖縄は捨て石だったという見解 に始まり、日本の米軍基地の7割が沖縄県に集中している事 実や、大田昌秀元沖縄県知事の沖縄を平和の礎にするという 構想、さらには辺野古新基地問題などが描かれる。 その間には米軍兵士による犯罪や、コザ暴動、国際大学への 米軍ヘリコプターの墜落など、正しく沖縄県民が味わってき た痛み苦しみがこれでもかという感じで描き尽くされている 作品だ。 それらを有識者や元新聞の論説委員、大学教諭、元市長、元 県庁職員らが徹底解説し、さらには鳩山由紀夫元総理大臣が 在任中に成し得なかった基地県外移設への悔恨インタヴュー など、様々な角度から論じて行く。 そしてその陰に見え隠れする日米合同委員会の存在への言及 などもなされているものだ。 スタッフは企画・構成・監督:太田隆文、製作総指揮:鯛中 淳、撮影・編集:三木本久城、企画:岩下秀雄、インタヴュ ー:永田よしのり、太田隆文、語り:斉藤とも子、久場寿幸 などとなっている。 映画では沖縄の苦難が実に様々な角度から提示され、沖縄が 置かれている状況などが判り易く紹介されている。それが本 土の人間が考える以上の苦難であることも如実に理解できる 作品だ。 ただその幅が広すぎて、僕自身は過去にこの種の作品も観て きた経験の中で理解はできたつもりでいるが、果たしてそれ が全てを理解したかというと疑問が残る。それくらいに奥深 いものがあるような気もしてきた。 そうしてみるともっと深く掘り下げて欲しかった気もしてし まうもので、幅広く捉えようとしたことでそれぞれの掘り下 げが充分に行われているのかという点に疑問が生じてしまう 部分はあった。 出来るなら辺野古、オスプレイ、さらには日米合同委員会に ついて、もっと掘り下げた作品をそれぞれ制作して欲しい。 そんな風にも感じてしまう作品だった。 公開は2024年2月3日より、東京地区は新宿K's cinema他に て全国順次ロードショウとなる。
『シャクラ』“天龍八部之喬峯傳” 2020年3月8日付題名紹介などの『イップ・マン』シリーズ や、2023年6月紹介『ジョン・ウィック:コンセクエンス』 などに出演のドニー・イェンが製作・監督・主演を務め、中 華映画のお家芸とも言える武侠映画に挑んだ作品。 中国北宋の元号で元佑年間(西暦1086−1094年)。当時の宗は 契丹、西夏などの外敵に囲まれ、国内も混乱の中にあった。 そんな中で、喬夫妻は家の前に置き去りにされた赤子に喬峯 と名付け我が子のように育て上げた。 その喬峯はやがて少林寺で修行を積み、武芸者として頭角を 現す。そして武術集団・丐幇の首領格にもなっていた。そん な喬峯が奸計によって集団を追われることになり、さらに養 父母殺しや師匠殺しの濡れ衣も着せられる。 しかしその窮地は1人の女性武術家の出現によって脱するの だが…。 共演は、1992年四川省生まれで古装ドラマ(時代劇)や武侠ド ラマにも多く出演のチェン・ユーチー。1989年湖南省生まれ で2006年11月9日付「東京国際映画祭」で紹介『十三の桐』 などのリウ・ヤースー。『イップ・マン』シリーズの最終話 に出演のウー・ユエ。 他に2006年9月紹介『エレクション』などのチョン・シウフ ァイ、2007年ミス香港コンテストで準優勝のグレース・ウォ ン、2010年9月紹介『ラスト・ソルジャー』などのドー・ユ ーミンらが脇を固めている。 そして本作のアクション監督は、奈良県出身で1993年に香港 に渡り、香港動作特技演員公會メムバーとなって2012年6月 紹介『るろうに剣心』などのアクション監督も務めた谷垣健 治が担当している。 谷垣アクション監督は元々ドニー・イェンの映画にスタント マンとして共演していたものだが、本作を観ると拳法と同時 にチャンバラの要素も感じられ、特に『るろうに剣心』の面 影は強く感じられた。それも起用の狙いなのだろう。 チャンバラと拳法の融合。これは新たな武闘アクションの地 平を開くような感じもするものだった。 因に金庸の原作『天龍八部』は4人の英雄からなる物語だそ うで、本作はその内の1人について纏められたもの。しかも 本作に登場する喬峯は後に改名するとあるから、これは続編 も期待できるかな? 公開は2024年1月5日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷 他にて全国ロードショウとなる。
『ファイアバード』“Firebird” ペット・ショップ・ボーイズのMTVなどでも知られるエス トニア出身の映像作家ペーテル・レバネが共同脚本と監督を 担当し、2015年8月紹介『キングスマン:シークレットサー ビス』などに出演の俳優トム・プライヤーが共同脚本と主演 を務めた1970年代ソビエト連邦下が背景の人間ドラマ。 舞台はエストニアのソ連軍空軍基地。主人公はその基地に所 属する若い二等兵。その基地には核兵器などの配備もされて いるようだが、彼自身は基地司令官の秘書の女性や同期兵と それなりの青春を楽しんでいた。 そんな主人公の前にエースパイロットの将校が配属されてく る。その将校に会った瞬間、彼の心には閃光のようなきらめ きが押し寄せていた。そして2人は写真という共通の趣味を 持っていたことで徐々に接近して行ったが…。 当時のソビエトで同性愛は、法律によって厳格に禁止される 犯罪行為だった。そしてその基地の司令部には、将校の足元 を狙うソ連国家保安委員会(KGB)の影もあった。 共演はモスクワのゴーリキー・センターに所属するウクライ ナ人俳優のオレグ・ザゴロドニイと、シャネルのグローバル ・ブランド・アンバサダーも務めるロシア人女優のダイアナ ・ボザルスカヤ。 他に2018年6月17日付題名紹介『スターリンの葬送狂騒曲』 などのニコラス・ウッドソンらが脇を固めている。 原作は、旧ソ連やロシアで40本以上の映画やドラマに出演し ていたという俳優セルゲイ・フェティソフがセルゲイ・ニジ ニーというペンネームで発表した書籍とされているが、劇中 でも主人公は俳優を目指しており、この物語は俳優の実話に 基づいているようだ。 それはかなり数奇な物語のようにも見えるが、情勢からみれ ば当然のことなのかな。間に入った女性が振り回されている ようにも見えるが、同様の展開は他の作品でもあったような 気もする。真に振り回されたのは主人公の方なのだろう。 同性愛の性癖は日本の芸能界も揺るがせているところだが、 それを犯罪と決めつけるところは、日本もソ連と変わらない のだとも思ってしまう。因にソ連崩壊後は、この法律は一旦 無くなったが、今またロシアで復活しているそうだ。 公開は2024年2月9日より、東京地区は新宿ピカデリー他に て全国ロードショウとなる。
| 2023年11月19日(日) |
TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー、緑の夜 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』“Talk to Me” 2023年サンダンス映画祭での上映が評判となり、A24が配給 権を獲得。7月全米公開では同社のホラー作品としては最高 興行を記録したというオーストラリア発、ダニー&マイクル ・フィリッポウ双生児の監督による長編デビュー作。 主人公は母親を亡くした痛みを心に抱えたままの少女ミア。 父親との関係もギクシャクし、救いは親友のジェイドと彼女 の弟ライリー、それに姉弟の母親のスーと過ごす時間だけ。 そんなミアが学校で流行り始めた降霊会に興味を持つ。 それは降霊術師の手が封じ込められているとされる呪物の手 を握り、「Talk to Me」と唱えて霊を降すというもの。その 降霊会での体験はミアに大きな高揚感をもたらすが…。続い てライリーが行った降霊が事件を引き起こす。 出演は、2019年にオーストラリア国立演劇学院を卒業したと いうソフィー・ワイルド。TVシリーズで活躍中のアレクサ ンドラ・ジェンセン。9歳から俳優をしているというジョー ・バード。 さらに、2014年6月紹介『アイ・フランケンシュタイン』や 『LOTR』のエオウィン役などで知られるミランダ・オッ トー。舞台俳優でバンド活動もしているというオーティス・ ダンジらが脇を固めている。 脚本も手掛けた双生児監督は、総再生回数15億回、登録者数 679万人を誇るYouTuberでもあるそうで、この手の来歴には 正直に言って偏見があり、しっかりとしたドラマが作れるか どうか不安だった。 しかし正に杞憂。双生児監督が作り出した作品は極めてオー ソドックスでありながら、その背景にはしっかりとした若者 文化への考察があり、そして何よりキーとなる呪物がその設 定や造形など何とも見事なものだったのだ。 特に手を握って「Talk to Me」と唱えるシーンはホラーの決 め台詞として出色のものにも思える。今後はこのような決め のシーンがホラーの定番になるのかな。そんなことも予感さ せる印象だった。 Jホラーのブーム以降は、どちらかというとコケ脅かし的な シーンが横行し、観客もそれを期待する感じも強かったが、 本作ではあえてそのようなシーンは封印してしっかりとした ドラマで見せる努力がなされている。 ホラー映画界に新たな才能が開花したようだ。 公開は12月22日より、東京地区は丸の内ピカデリー、新宿ピ カデリー他にて全国ロードショウとなる。
『緑の夜』“绿夜” 二重契約や脱税などの容疑で一時は行方不明との噂もあった 中華人民共和国山東省青島市生まれの女優ファン・ビンビン が、俳優復帰を果たしたとされる2023年製作の香港映画。 なお本作の撮影地は韓国内で、台詞の殆んども韓国語だが、 製作国は香港とされているものだ。 主人公は中国から韓国に渡って暮らしている女性。ソウルの 外港とされる仁川港で中国航路の出入国管理官の職に就き、 検査場で中国からの密輸品の監視の任にある。そんな主人公 が髪を緑色に染めた若い女性に着目する。 その女性は挙動に不審なものがあり、厚底の靴に金属探知機 が反応を示す。そこで靴を脱がせた主人公だったが、その時 に上司の男性から咎めるような声が掛かり、女性はその隙に 裸足のまま検査場を通り抜けてしまう。 そんな2人の女性が再会し、主人公は緑の髪の女性に導かれ るように危険な裏社会に入り込んで行く。それは主人公を韓 国に導いたらしい抑圧的な夫からの解放でもあったが、その 行動がエスカレートして行く。 共演は、1992年生まれで2020年『梨泰院クラス』でブレイク したイ・ジュヨン。他に2009年7月紹介『アバンチュールは パリで』などのキム・ヨンホ。モデル出身で多くのドラマに 出演のキム・ミングィなど、韓国俳優が脇を固めている。 脚本と監督は、山東省煙台市出身でデビュー作“漢南夏日” が2021年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で最優秀 賞を受賞したハン・シュンアイ。第2作の本作は同映画祭で ワールドプレミア上映された。 なお撮影はベルギー出身で2017年11月05日付第30回東京国際 映画祭<コンペティション以外>で題名紹介『老いた野獣』 などのマティアス・デルヴォーと、2020年2月2日付題名紹 介『在りし日の歌』などのキム・ヒョンソクが担当。 女性監督の作品で主人公の2人も女性。典型的な女性映画と いう感じだが、内容はかなり強烈で、男性はちょっと引いて しまう感じにもなる物語が展開される。女性解放の道程はこ んなにも大変なのか、そんなことも思わせる作品だ。 とは言うものの登場する男性陣はある意味おちょくられてい るという感じでもあって、それは小気味よい感じにも描かれ ている。そういう観点で見ればニヤリとする作品とも言えそ うだ。男性にはきつめだが。 公開は2024年1月19日より、東京地区は新宿武蔵野館、ヒュ ーマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント他にて全国 ロードショウとなる。
| 2023年11月12日(日) |
バッド・デイ・ドライブ、きっとそれは愛じゃない、ポッド・ジェネレーション、Winterboy、ビヨンド・ユートピア 脱北 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『バッド・デイ・ドライブ』“Retribution” 2015年9月27日付《MDGP 2015》で題名紹介のスペイン 映画『暴走車 ランナウェイ・カー』をドイツ・ベルリンを 舞台にリメイクした作品。 因に同作からは、2018年ドイツで“Steig. Nicht. Aus!”(邦 題:タイムリミット 見知らぬ影)、2021年韓国で“발신제한” (邦題:ハード・ヒット 発信制限)というリメイクもあり、 本作はトータル4本目だそうだ。 ストーリーは、金融業者の主人公が子供の通学の送りを兼ね て通勤の車に乗り込むと、運転席に仕掛けられた爆発物が起 動して子供共々車を降りることができなくなる。しかも犯人 は常に監視して遠隔での爆破も示唆してくる。 この事態に主人公はベルリンの街中を犯人の指示に従って車 で疾走。その途中では同僚が爆殺されるのを目撃することに もなる。そしてその現場に誘導されていた主人公は警察から 犯人と見做されて…。 出演は家族を守る“最強の親父”という新たなヒーロージャ ンルを築き上げたリーアム・ニースン。子供役に2022年『ア バター』などのジャック・チャンピオンと、2020年『ワンダ ーウーマン』などのリリー・アスペル。 さらに妻役に『シンドラーのリスト』以来の30年ぶりの共演 というエンベス・デイヴィッツ。他に2019年6月紹介『風を つかまえた少年』などのノーマ・ドゥメズウェニと、2017年 11月26日付題名紹介『オレの獲物はビンラディン』などのマ シュー・モディーンらが脇を固めている。 本作の脚本はTVシリーズ“FBI: Most Wanted”などを手掛 けるクリストファー・サルマンプール。監督は2013年10月紹 介『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』などのニムロッド・ アーントルが担当した。 オリジナルは記事を読み直すとあまり高くは評価していなか ったものだが、要は主人公のキャラクターが描き切れていな かったということだ。その点で本作は、ニースンのブランド と共に夫婦間の問題などが織り込まれて面白く観られた。 実はドイツ版と韓国版は観ていないのだが、宣伝担当者の話 では夫婦間の問題に関しては本作で新たに入れられた設定だ そうで、ニースンの起用と共に本作ではそれらが功を奏した という感じになる。 それにしても本作では主人公が乗り込む際にベンツのエンブ レムが堂々と写されるもので、当然同社の協力の許の作品と いうことになるが、よくぞこれをメーカーが了解したという 気分にもなる。 劇中には「ドイツの鉄道は運行が正確」という台詞があり、 それなら日本でもとも思ったが、日本のメーカーは劇中で車 が事故に遭うことにもうるさいと聞くから、日本版のリメイ クは難しいかな。そんなことも考えてしまった。 公開は12月1日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国 ロードショウとなる。
『きっと、それは愛じゃない』 “What's Love Got to Do with It?” パキスタン出身で2009年12月紹介『ニューヨーク、アイラブ ユー』などのシェカール・カプール監督が、2014年6月紹介 『アバウト・タイム』などのプロデューサーと組んで、ロン ドンとラホールを舞台に描いたロマンティック・コメディ。 主人公はドキュメンタリー映画の女性監督。ロンドンで母親 と共に暮らしているが、隣家に住むのはパキスタン人の一家 で、ロンドン生まれ同世代のその息子とは幼馴染みだ。そし て両家は親しく交流していた。 そんな主人公が作品の題材に行き詰り、ふと幼馴染に異国の 結婚事情を尋ねると。それは見合い結婚が至上で直接会った こともない女性と結婚するのだという。そして彼に見合い結 婚が決まり、その参列も兼ねた取材旅行が始るが…。 出演は2019年8月紹介『イエスタデイ』などのリリー・ジェ ームズと、イギリス生まれだがパキスタンにもルーツを持つ 2018年2月4日付題名紹介『トレイン・ミッション』などの シャザド・ルティフ。 他にエマ・トンプスン。インド生まれで 140本以上のインド 映画に出演し、近年はスピルバーグ製作のSFシリーズにも 登場しているというシャバナ・アズミ。パキスタンを代表す る女優とされるサジャル・アリーらが脇を固めている。 脚本はイギリス出身のドキュメンタリー制作者でエミー賞の 受賞歴もあるジェミマ・カーン。脚本家は20歳の時にパキス タン人と結婚。約10年間をラホールで暮らした経験を持つそ うだ。 異国情緒あふれる結婚式の模様には、2002年6月紹介『モン スーン・ウェディング』が懐かしく思い出されたが、本作も 結婚式をもう少し詳しく描いて欲しかったかな。前の作品は その辺も楽しめた記憶があるので、少し物足りなかった。 それにまあ主人公らの人物関係があまりに定番で、それはあ る意味安心の要素でもあるのだが、もう少し何か捻りがあっ ても良かったような感じはした。まあ異国の風習自体に異議 を唱えたい気持ちが優先なのかもしれないが。 1998年『エリザベス』などで名匠とも呼ばれるカプール監督 の割には全体が軽めなのも気になった。まあその軽さが故の ロマンティック・コメディなのだろうけど。 公開は12月15日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国ロードショウとな る。
『ポッド・ジェネレーション』“The Pod Generation” 2015年7月紹介『ターミネーター:新起動/ジェニシス』な どのエミリア・クラークが主演と製作総指揮も務め、フラン ス系アメリカ人で2014年『ボヴァリー夫人』などのソフィー ・バーセスが脚本・監督を手掛けた未来社会を描く作品。 主人公はニューヨークのハイテク企業で重役職の女性。配偶 者はいるが子供はまだいない。その彼女の許に《ポッド》と 呼ばれる人工子宮の案内が届き、彼女は興味半分で見学を申 し込む。 そんな彼女の配偶者は植物学者で、環境破壊が進む中で自然 界の多様性を守ろうと奮闘していた。従って彼の意見は当然 のように自然な妊娠だったのだが…。彼女の説得で《ポッド 妊娠》を選択した2人の十月十日が始まる。 共演は、2019年6月紹介『風をつかまえた少年』では監督も 務めたキウェテル・イジョフォー。 他に舞台出身女優のロザリー・クレイグ、2020年2月23日付 題名紹介『ポルトガル、夏の終わり』などのヴィネット・ロ ビンスン、2003年12月紹介『ドッグヴィル』などのジャン= マルク・バールらが脇を固めている。 妊娠による女性の負担を減らすために人工子宮で子供を育て るというアイデアは、SF小説ではそれなりにあったものと 思うが、まさか卵型の携帯仕様とは。これでは人間が卵生に なったようにも思えてくる。その辺も造形の狙いかな。 そんな面白さは感じたが、全体的には特にドラマティックな 展開がある訳でもなく。結末はそれなりにドラマティックで はあるが、もっとそれ以前の主人公らの決断に至る部分で何 かドラマが欲しかった気はした。 まあ単純に言えば脚本の練りが足りないかな。面白い題材だ けにもっといろいろな要素を取り入れて話を膨らませて欲し かったものだ。特に見学会のシーンには同性のカップルもい て、その辺はもっといろいろ描けた気もする。 それにしても精子が卵子にアタックする様子を目の当たりに できるとは…。その映像自体は過去に観たことはあったが、 当事者としてそれを観るのは…。自分が精子の側としてはい ろいろと考えてもしまうものだ。 そんな新奇な面白さは感じられる作品だった。 公開は12月1日より、東京地区は日比谷のTOHOシネマズシャ ンテ、渋谷のホワイトシネクイント他にて全国ロードショウ となる。
『Winterboy』“Le lycéen” 2020年3月29日付題名紹介『今宵、 212号室で』などのクリ ストフ・オノレ脚本、監督で、監督自らの性癖にも関る少年 の姿を描いた自伝的とされる作品。 物語は少年のモノローグのような映像で始まる。そこで主人 公はアルプスを臨む寄宿学校での生活を語っているが、それ は彼の父親の突然の死によって予想外の展開へと繋がって行 く。その死にはある予兆があったと彼は思いこむ。 そして葬儀の後、不安に苛まれて自暴自棄になった彼はパリ に住む兄に誘われて初めて彼の地を訪れるが。そこで主人公 はある出逢いを体験することになる。それは破滅への道か、 それとも再生か。 そんな物語が、美しいアルプスの景観と、多様な文化を育む パリの街並みと共に描かれて行く。 出演は2001年生まれ、本役はオーディションで獲得、そして 2022年サン・セバスティアン国際映画祭にて最優秀主演男優 賞に史上最年少で輝いたというポール・キルシュ。共演はベ テラン女優のジュリエット・ビノシュ。 さらに2018年11月3日付第31回東京国際映画祭<コンペティ ション部門>で紹介『アマンダ』(公開題名:アマンダと僕) などのヴァンサン・ラコスト。本作で長編デビューのエルヴ ァン・ケポア・ファレらが脇を固めている。 なお監督のオノレがキーとなる役柄で登場している。 また音楽には2023年10月紹介『彼方の閃光』の監督でもある 半野喜弘が参加しているが、本作にはシルヴィ・ヴァルタン の懐かしの名曲「あなたのとりこ」などもフィーチャーされ ているものだ。 監督はゲイをカミングアウトしているのでこの物語の基本は 理解するが、その中での主人公の悲しみや苦しみには性癖を 超えての感情が表現され、さらにそこからの展開には新たな 希望もしっかりと描かれていた。 その意味ではマイノリティだけでない、万人に向けてのメッ セージも感じ取れた。ただ描写にはリアルでかなり際どいも のもあって、その辺は本作公開がR15+指定となったのも納得 するものだった。 フランスアルプスの美しい景観なども描かれる一方、厳しい 内容の展開される物語だが、温かい心も感じ取れる作品だ。 公開は12月8日より、東京地区はシネスイッチ銀座、新宿武 蔵野館他にて全国順次ロードショウとなる。
『ビヨンド・ユートピア 脱北』“Beyond Utopia” 北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)から韓国(大韓民国)への脱出を 正しくリアルで描いたドキュメンタリー。 元々は20年以上前に脱北した女性(イ・ヒョンソ)が発表した 回想録の映画化権をプロデューサーが獲得し、当初は彼女を 中心にした映画化が考えられていたようだ。しかしその制作 を打診された監督はそれだけでは描けないと考える。 そこでプロデューサーの勧めもあって北朝鮮の実情を調べ始 めた監督は、西側の人間には計り知れない北朝鮮の現実を見 ることになる。そして監督はその見識も踏まえて本作の制作 を開始する。 映画ではイ・ヒョンソの講演の模様やインタヴュー。それに インターネットで見つかった北朝鮮の内情を伝える映像。さ らにはアーカイヴされている北朝鮮のパレードやマスゲーム などの映像が綴られる。 それに対して韓国のキム牧師が組織する脱北者の支援組織が 取材され、その中では2組の脱北の模様が詳細に取材されて 行く。その1組目は元北朝鮮で要職にいながら脱北した女性 リ・ソヨンの物語。 母親でもあるソヨンは北朝鮮に残した息子の脱北をキム牧師 に依頼するが、電話だけでやり取りされる北朝鮮内のブロー カーとの折衝は困難を極める。しかもそこには金正恩政権を 信じて疑わない北朝鮮人民の姿も明らかにされる。 そして2組目は、折しも中国国境で支援組織に保護されたロ 一家の物語。80歳代の老母も含む5人が国境付近で保護され たとの連絡からその親族を見つけ出し、1万2000�劼傍擇峇� 険な逃走劇が密着取材される。 それは支援者らによるスマホ映像に始り、監督らが入国でき ない中国国内は救援に向かった親族らが撮影。そして国境を 超えてからは正規の撮影も始まるが、さらに山越えのジャン グル行など、正しく事実は小説より奇なりの映像が続く。 しかもそれらの脱北経路のほとんどは、必ずしも西側の友好 国とは言えない国々。一部にはキム牧師本人も支援に駆け付 けるが、国境の川を渡っても牧師自身はその先に上陸はでき ないとするような状況なのだ。 そんな中での決死の脱北劇が描かれる。 監督、編集は、コンゴ民主共和国での革命の模様を描いたド キュメンタリー『シティ・オブ・ジョイ〜世界を変える真実 の声〜』などのマドレーヌ・ギャヴィン。 脱北の話は韓国映画などでも何度か観ているし、それ以上に 何をと思いながら観始めたが、正に想像を超える作品で脱北 の困難さを目の当たりにすると同時に、今更ながらに北朝鮮 の恐ろしさを思い知らされる作品だった。 公開は2024年1月12日より、東京地区はTOHOシネマズシャン テ、池袋シネリーブル他にて全国ロードショウとなる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『映画の朝ごはん』 映画ロケ弁の代名詞ともされるポパイの「おにぎり弁当」を キーワードに、映画と食の関係を描いたドキュメンタリー。 東京都練馬区環七沿いに厨房を持つ弁当屋ポパイ。そこでは 午前0時頃から準備を始めて、毎日1000個ほどのおにぎりを 製造。それを2個ずつ、タクワンと唐揚げ等のおかずと共に パックに詰めて「おにぎり弁当」が完成する。 そして完成された「おにぎり弁当」は注文された個数ずつを 箱に入れて、それぞれ指定された場所の指定された時間に配 送される。その配送場所の多くは新宿郵便局前、時間は早朝 5時頃だ。 こうして早朝に出発するロケ隊に帯同する「おにぎり弁当」 は、ロケ弁の定番として映画業界に知らぬ者はいない存在と なっている。それは東映大泉撮影所に仕出し弁当を届け始め てから40年という老舗の味だ。 という弁当屋の由来を描く作品だが、そこから物語は発展し て、その弁当で腹を満たして来た監督やスタッフへのインタ ヴューによる昭和後期からの映画事情や、現状での制作部と 呼ばれる人たちの奮闘ぶりなどが紹介される。 証言者は大山晃一郎、沖田修一、黒沢清、瀬々敬久、樋口真 嗣、山下敦弘ら監督陣と美術の磯見俊裕、製作の下田淳行、 照明の藤井勇、俳優の内藤剛志。 さらに制作部の守田健二、福田智穂と若いスタッフ。その他 にも様々な部署の人たちが登場してロケ弁への想いを語る。 そしてナレーションは小泉今日子が担当している。 企画・監督・撮影・編集は、2017年1月29日付題名紹介『ま んが島』で助監督を務めていたという志子田勇。その作品の ロケ弁がおにぎりだったかどうかは判らないが、その他の現 場にも立ち会った監督の想いも籠った作品のようだ。 実はこの作品のマスコミ試写は行われなくて、オンライン試 写で観たものだが、事前の情報で上映時間が2時間11分と知 って集中が保てるか不安に駆られた。しかし観始めるとあっ という間の時間経過だった。 というのも、これは全く僕の個人的なことになるが、僕自身 がポパイの近所に住んでいて、平日地元の人に販売されるお 弁当も何度か食していた。しかも配送先の新宿郵便局は、サ ラリーマン時代の職場の直近だった。 そんな訳で、かなり個人的な興味でも引かれて時間も短く感 じたのかもしれないが、作中では瀬々監督が語るVシネ時代 の思い出など、映画ファンには耳寄りな情報も満載で、それ らは全ての映画ファンに観て貰いたいものだったのだ。 その他にも映画の制作部の奮闘ぶりなど、普通の映画製作の ドキュメンタリーでは扱われないような情報もあって、それ らがロケ弁という食文化の一つを通して語られる。これは全 く稀有な視点のドキュメンタリーだった。 全ての映画ファンへの贈り物となる作品。 公開は11月10日より、東京地区はキネカ大森他にて全国順次 ロードショウとなる。
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