井口健二のOn the Production
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2022年10月30日(日) カンフースタントマン龍虎武師

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『カンフースタントマン龍虎武師』“龍虎武師”
1971年、ゴールデン・ハーベスト製作『ドラゴン危機一発』
で彗星のごとく登場したブルース・リーに始まる香港アクシ
ョン映画の歴史と現状を、映画の制作を支えるスタントマン
の側面から描いたドキュメンタリー。
1930年代、日本軍の侵攻を逃れて多くの京劇役者が香港に移
住。彼らは貧しい家庭の子供たちに京劇を教え始める。そし
て1960年代には4つの京劇学校が存在し、そこでは演技と共
に武術に基づくアクションが教育されていた。
ところが彼らが卒業するころには京劇の人気が下火になり、
彼らは映画に活路を見出さざるを得なくなる。そこに登場し
たのがブルース・リー。様式美に捉われた京劇アクションに
飽き足らなかった香港映画に新風が送り込まれる。
しかし1973年にリーが死去。カンフー映画は一気に下火にな
り、数多くにスタントマンが職を失うことになる。その状況
を打破したのが、監督兼俳優のラウ・カーリョンとサモ・ハ
ンだった。彼らは武術に基づくカンフー映画を開拓する。
こうして香港カンフー映画は隆盛を極めるが…。様々な映画
のクリップやメイキングシーンなども織り交ぜながら、その
後の本土の映画界との確執など、香港映画の現状も克明に描
かれて行く。
出演はサモ・ハンを筆頭に、ドニー・イェン、ブルース・リ
ャンらのアクションスター。またユエン・ウーピン、スタン
リー・トン、チン・シウトン、トン・ワイ、チン・カーロッ
らの監督や俳優たち。
さらにジャッキー・チェンのアクションチーム成家班の元メ
ンバーのマース、スタントマンのユエ・タウワン、ユン・ワ
ー。そしてツイ・ハーク、アンドリュー・ラウ、エリック・
ツァン、ウー・スーユエンらの大物映画人も登場する。
監督は著名な映画評論家で、2019年『ザ・ルーキーズ』など
の映画プロデューサーでもあるウェイ・ジュンツー。香港ス
タントマン協会の全面協力の許、3年の歳月を掛けて作られ
た作品だ。
往時の香港カンフー映画を観て来た者にとっては、挿入され
るクリップや語られる裏話なども実に懐かしく、面白く観ら
れる作品だ。ただし少し気になるところもなくはない作品と
も言える。
それはジャッキー・チェンの存在がかなり希薄に感じられる
ところで、それはチェンの名前や出演シーンや古い写真など
も出て来はするが、肝心の本人の発言が全く登場しない。そ
れに代ってドニー・イェンの存在は際立っていた。
これに関しては近年の報道に登場するチェンの行動を観てい
ると、何となく裏切り者のレッテルが貼られているのかな。
そんな邪推もしたくなる作品だった。それもまた面白いとこ
ろではあるのだが。
公開は2023年1月6日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順
次ロードショウとなる。
        *         *
 なお今週はもう1作品鑑賞してるが、その映画に関しては
次回の紹介とさせてもらう。



2022年10月23日(日) ファイブ・デビルズ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ファイブ・デビルズ』“Les cinq diables”
2013年の第66回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた
『アデル、ブルーは熱い色』などのアデル・エグザルコプロ
ス主演で、香りに導かれて運命に翻弄される少女の姿を描い
たオカルト的な色彩の濃い第75回カンヌ選出作品。
物語の中心は10歳の少女。水泳のインストラクターを務める
アデル扮する母親と、消防士でアフリカ系の父親と共にアル
プス山麓の村で暮らしているが、父親と同じ肌の色と縮れた
髪を持つ彼女は同級生のいじめの標的でもあった。
そんな少女は常人を超える嗅覚の持ち主で、その楽しみは周
囲にあるいろいろなものの匂いを集めること。特に大好きな
母親が寒中水泳をする際に体に塗る油脂の香りは少女に至福
の時を与えるものだった。
ところがそんな少女の幸せがある人物の登場で一変する。そ
れは少女の叔母である父親の妹の突然の来訪で、その出現は
村の人たちにもただならぬ動揺を与えているようだった。そ
こで少女は叔母の持ち物を漁り始めるが…。
とある香りが少女を叔母と母親の出会いの時にタイムリープ
させる。それは体操競技に熱中する叔母と母親との青春の一
ページだったが、それがやがて過去の忌まわしい出来事の謎
を解き明かしてしまう。

共演は、2010年生まれで本作で抜擢されたサリー・ドラメ、
歌手で舞台女優でもあるスワラ・エマティ、セネガル出身の
ムスタファ・ムベング。さらにダフネ・パタキア、ベテラン
のパトリック・ブシテーらが脇を固めている。
監督と脚本は、2021年のカンヌで正式上映されたジャック・
オディアール監督『パリ13区』で共同脚本を手掛けたレア・
ミシウス。なお本作が長編2作目の女流監督は、2017年のデ
ビュー作『アヴァ』もカンヌで正式上映されている。
香りでタイムリープと言うと1983年『時をかける少女』など
の筒井康隆原作ジュヴナイルSF小説が思い浮かぶが、本作
はタイムリープと言うより残留思念に基づくサイコメトリー
の方に近い感じがする。
しかしそれだけでは割り切れない部分もあって、それがタイ
ムパラドックスにもなっているところはSFファンには悩ま
しい展開と言えそうだ。いずれにしてもタームリープ=SF
と単純に割り切れる作品ではない。
そんな訳で最初に書いたような分類とさせてもらうが、多分
監督らには元々そのような意図はなく、カンヌでの選出テー
マに沿うものが主眼だったのだろう。それは今日的と言える
作品だ。

公開は11月18日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺他にて全国ロードシ
ョウとなる。



2022年10月16日(日) ippo、終末の探偵

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
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※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ippo』
2019年6月紹介『火口のふたり』などの俳優柄本佑が2017年
から2022年に監督した3本の短編映画を纏めた作品。元は劇
作家・加藤一裕のオムニバス舞台劇から全4話中の3篇を映
画化したものとなっている。
その1話目は2017年製作の『ムーンライト下落合』。小さな
アパートの一室が舞台で、その部屋の住人とそこに前夜から
泊まっている友達との会話劇が繰り広げられる。ペットボト
ルの水をコップに注いで飲むような、その微妙な距離感や会
話の食い違いがドラマとなっている作品だ。
まあ全体的には成る程と思わせる作品だが、最後に窓から見
る満月は午前2時という設定ではあの角度はおかしい。別段
科学的にどうこうという話ではないが…。

出演者は加瀬亮と宇野祥平。
第2話は2020年製作の『約束』。古びた団地の中にある公園
を舞台に、年齢の違う2人の男性がある事情で親戚を訪ねる
前の打ち合わせをしている。その会話は彼らの幼少期の思い
出にも繋がって行くが…。ちょっとファンタシーなところや
不条理な演出もある作品だ。

出演者は渋川清彦と柄本時生。
そして第3話は2019年製作の『フランスにいる』。グルノー
ブルの小さなアトリエを舞台に、一人旅をしている日本人男
性と、彼を街で見掛けて肖像画を描きたいと申し出た日本人
画家との会話劇が展開される。ところが画家の発言がだんだ
んおかしくなり…。

出演者は高良健吾と加藤一裕。
因にこの第3話の劇中で室内に置かれている映画のポスター
“Aniki Bóbó”は、2010年7月紹介『ブロンド少女は過激に
美しく』を 100歳で制作したポルトガル人の監督マノエル・
デ・オリヴェイラが1942年に発表した長編(68分)デビュー作
のもの。104歳まで現役を貫き、106歳で他界した名匠は柄本
監督の目標なのかな。
3本をまとめて観ると、不条理劇の一歩手前という感じなの
かな。ただ解説によると原作戯曲の中で映画化されなかった
1篇は完全に不条理だったようで、僕としてはそこも含めた
全体を観たかったという感覚が残る作品だった。
正直に言って柄本佑監督だから観たという感じの試写だった
が、この線を追求してくれるのなら、もっと他の作品も観た
くなる。そんな感じの作品でもあった。監督と劇作家で進め
ていたという長編もいつか実現して欲しいものだ。

公開は2023年1月7日より、東京は渋谷ユーロスペース他に
て全国順次ロードショウとなる。

『終末の探偵』
2019年4月28日題名紹介『新聞記者』などの北村有起哉の主
演で、昭和を髣髴とさせる私立探偵の生き様を描いた作品。
主人公は喫茶店の片隅を事務所代わりにしている一匹狼の探
偵。元々はよそ者だったがその町に流れ着き、裏社会とも繋
がりを持ちながら何とか暮らしている。しかしギャンブル狂
いの上に酒癖も悪く、賭場でのトラブルも茶飯事だ。
そんな主人公が賭場の借金の肩代わりを条件にヤクザの依頼
を受けることになる。それはヤクザの事務所への放火事件の
調査で、中華系マフィアの指金との情報もあるが、暴対法と
の兼ね合いでヤクザは組織では動けない。そこで主人公に探
りを入れてくれという依頼だったのだが…。
一方、喫茶店の事務所に戻った主人公を1人の女性が待って
いた。彼女は失踪したクルド人女性を探してくれと依頼する
が、主人公の手には余る仕事に見えた。しかし依頼人の名前
からある事実を思い出した主人公は捜査を開始。しかしそれ
はとんでもない社会の闇を照らすことになる。

共演は、2011年にチャン・イーモウ監督作品で映画デビュー
したという松角洋平、2018年映画デビューでモデルとしても
活動する武イリヤ、2022年8月紹介『よだかの片想い』など
の青木柚。さらに�眄个△�り、水石亜飛夢、古山憲太郎、川
瀬陽太、高川裕也、麿赤兒らが脇を固めている。
監督は、一橋大学出身で2006年『東京失格』という作品で長
編監督デビューした井川広太郎。脚本は2011年11月紹介『は
さみ』などの木田紀生と、2017年3月紹介『いぬむこいり』
に参加していたという中野太が担当した。またアクション監
督を前回紹介『BAD CITY』監督の園村健介が手掛けている。
入管法の問題なども絡めて、いわゆる映画ファンが好みそう
な作品と言えるのかな。ただ社会問題的なテーマが大き過ぎ
て、話がすっきりと終らせられなかったのは残念なところと
言えるが、これは真面目さゆえの結果だろう。真剣に作られ
ているところは評価したいものだ。

公開は12月16日より、東京はシネマート新宿他でロードショ
ウとなる。



2022年10月09日(日) BAD CITY、I AM JAM、at Baywalk、SILENT NIGHT

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『BAD CITY』
「�好轡優泙猟覯Α廖峇虧牟Т錙廚箸眈里気譴覿�面俳優小沢
仁志が、自らの「還暦記念映画」として製作総指揮、脚本、
主演を務めたアクション作品。
物語の舞台は、ヤクザと韓国マフィアがしのぎを削る北九州
の地方都市。そんな街の元組織暴力団の会長が数多の犯罪で
逮捕・起訴されたものの、不可解な裁判で無罪となる。そし
て放免された会長はIRの誘致を目指して市長選への立候補
を表明する。
この事態に最高検察庁は秘かに特捜班を発足させ、会長を再
逮捕して確実に有罪とする捜査を開始させるが…。その特捜
班に選ばれたのは、韓国マフィアの頭目の息子を殺害した容
疑で収監中の元刑事(仮放免)と、刑事の元部下の男2人、そ
れに新人の女性刑事だった。
こうして検察庁の女性検事の指揮の許で、元刑事が掴んでい
た情報を基にヤクザと韓国マフィアの裏の関係を暴く捜査が
開始される。しかしそれは両方の組織を敵に回す過酷な捜査
となって行く。

小沢は特捜班の班長となる元刑事を演じ、班員役には2018年
8月5日題名紹介『ギャングース』などの勝矢、2017年7月
9日題名紹介『蠱毒ミートボールマシン』などの三元雅芸、
それに2015年『ウルトラマンX』などの坂ノ上茜。
さらに壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー、
山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴、小沢和義、中野
英雄らが脇を固めている。
監督・アクション監督は、2019年のデビュー作『HYDRA』が
海外の映画祭などで評価されているという園村健介。また主
題歌の「こわもて」をクレージーケンバンドが書き下ろしで
担当している。
物語は有り勝ちの展開だが、それなりのコミカルなシーンと
言うか、味わいは添えられている。因に結末の捻りは最近の
テレビドラマなどでは定番のようで、それには批判もあるが
トレンディではあるようだ。
それに加えて本作は上映時間 117分のかなりの部分が殴り合
いのアクションというかなり強烈な作品。しかもそのアクシ
ョンの多くを主演の小沢がスタント無しで演じているという
のだから、これは敬服してしまう。そしてそんな小沢のため
に集まったキャスティングも見ものだ。

公開は12月9日から福岡県で先行上映の後、2023年1月20日
より、東京は新宿ピカデリー他にて全国順次ロードショウと
なる。

『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』
間寛平が座長を務める劇団間座にも所属し、NHK 連続テレビ
小説にも出演する俳優の辻凪子が脚本・監督・主演を務め、
大阪で公演を行っている活動弁士の大森くみこと組んで制作
した新世代の無声映画。
物語は、コメディ映画が大好きな主人公が、人々を笑顔にす
るために宇宙を股に掛けた大冒険を繰り広げるというもの。
そこにジョルジュ・メリエスからバスター・キートンまで、
様々なサイレント映画へのオマージュをぶち込んで、上映時
間85分の作品に仕立てている。

辻監督は、京都造形芸術大学の在学中に青山真治監督による
ゼミでの課題として撮った初監督作品が海外の映画祭で入選
するなど評価され、さらにその後の作品でもゆうばりや富川
のファンタスティック映画祭でグランプリや審査員特別賞を
受賞するなど評価を高めた。
その一方で、大学1年生の時に大阪の映画館で大森弁士の活
弁付き無声映画と出会って、その魅力に心酔。そんな思いが
高じての本作となったようだ。
とは言うものの、今回は活弁付きの上映で鑑賞したが、普段
の大森弁士のパフォーマンスがどんなものかは知らないが、
今回はちょっと悪ふざけが多すぎるというか、活弁が物語に
介入し過ぎで、気になるところが多かった。
特に本作では、物語の中では行方不明となったピザのピース
が主人公を冒険に誘うのだが、そのピザの小道具がぶ厚過ぎ
たり、サイズがおかしかったり、それを弁士が言い訳という
かギャグにしてしまうのは本末転倒だろう。この辺はしっか
りと映像の中だけで始末をつけるべきものだ。
この他にも映像の不始末を弁士が補っているような感じが、
正直に言って無声映画をバカにしているような感じにもなっ
て気になった。もっと映像だけで勝負の出来る無声映画にし
て欲しかったものだ。

出演は、辻監督が演じる主人公の他にきばほのか、長野こう
へい、黒住尚生、瓜生和成。さらに塚地武雅、間寛平らが脇
を固めている。
公開は11月25日より京都みなみ会館で先行上映の後、東京は
12月3日からポレポレ東中野他にて全国順次ロードショウと
なる。なお公開では、活弁付きのものと予め活弁を収録した
ものとの2ヴァージョンがあるようだ。

『at Baywalk ベイウォーク』
退職者ビザ制度に基づきフィリピンで暮らす4人の日本人を
追った『なれのはて』という作品で、2020年の東京ドキュメ
ンタリー映画祭のグランプリを受賞した粂田剛監督が、その
作品では割愛された2人の人物について描いた作品。
僕は残念ながら前作を拝見していないが、元暴力団組員、元
トラック運転手、元警察官、元証券マンという4人が、それ
ぞれの理由でフィリピンに暮らしている姿を追ったものだそ
うで、「困窮邦人」とも呼ばれる厳しい生活ぶりが描かれて
いたようだ。
その生活の根拠となる退職者ビザ制度というのは世界20カ国
以上で発行が行われ、本国での退職者が所定の条件を満たせ
ば移住が認められるというものだそうで、定年後に海外移住
をするには適切な手段とされる。そして制度を持つ国の中で
フィリピンは最も条件が緩やかなのだそうだ。
そんな訳でフィリピンには2016年の統計で4万5千人以上の外
国人が暮らし、その中で日本人は約2000人だとされる。しか
し全体の状況は判らないものの、日本人の中にはスラム街で
暮らす困窮者は多いようで、そんな暮らしぶりを描いたのが
前作とされる。
そして本作では、フィリピンの首都マニラで夕陽の名所とさ
れる「ベイウォーク」を舞台に、海岸でホームレスとして暮
らす元裏社会にいたと称する男性と、日本の年金を貰いなが
ら、より楽しい生活を求めて海岸近くの高層マンションに移
住してきた男性が描かれる。
ここでホームレスの男性は、同様にホームレスのフィリピン
の人たちと交流して暮らし、互いに助けられたり助けたりの
生活をしながら、それでも彼をこの場所に流れ着かせた元凶
のような日本人に対しても何かもう一旗揚げたいような…。
そんな暮らしぶりが描かれている。
その一方でマンション暮らしの男性は、フィリピン人は信用
できないと語りながら、それでもちょっとした事業に手を出
し、結局は上手く行かない状況を描いて行く。結局この2人
は日本にいても同様の失敗を繰り返していたのだろうと思わ
せるところが哀れとも言えるものだ。

公開は12月24日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次
ロードショウとなる。

『SILENT NIGHT』“Silent Night”
2003年8月紹介『パイレーツ・オブ・カリビアン』などのキ
ーラ・ナイトレイと、2019年11月10日題名紹介『ジョジョ・
ラビット』などのローマン・グリフィン・デイヴィス、それ
に2017年7月30日題名紹介『プラネタリウム』などのリリー
=ローズ・デップらの共演で、ある状況に置かれた家族の絆
を描いた作品。
その状況は映画チラシにも載っているが、本編では当初は隠
されていて、映画の進行に従って徐々に明らかにされるよう
になっている。そこで映画は、クリスマスの聖なる夜に複数
の家族が一軒の家に集まってくるところから始まる。彼らに
は豪華な食事が用意され、その後にあることが待っているよ
うだ。
それは子供たちには隠されているが、敏い子らはすでにその
ことに気付いている。それでも大人たちは知らぬ風を装い、
午前0時にそれを実行に移そうとしている。しかし子供の中
にはその事実自体に疑問を持ち、その実行を阻止しようとす
る子もおり、家族の絆がそこで試されることになる。そして
午前0時が訪れる。
チラシに載っているからその状況を書いてしまうと、世界が
終末を迎えているというもの。それは生物を全て殺す毒ガス
の雲が襲い掛かり、人々はただ座してそれを待つしかない。
しかもその作用はかなり悲惨なようだ。そんな状況で政府は
全国民に即効性の自殺ピルを配布している。しかしそれは真
実なのか、子供たちの疑問は大きくなって行く。

脚本と監督は、カメラマン出身でイギリスとオランダで映画
を学び、過去に撮った複数の短編作品は各地の映画祭などに
招待されているというカミラ・グリフィン。2017年11月12日
題名紹介『スリー・ビルボード』などの撮影監督を夫に持つ
女性監督の初長編作品というものだ。製作は2010年10月紹介
『キック★アス』などのマシュー・ヴォーンが担当した。
監督の言わんとするところは非常に判り易いが、物語として
は正直に言ってかなり薄っぺらに感じる。特に展開の中では
子供の言い分が真っ当であって、それを大人たちがここまで
頑なに否定する論拠が全く明白でないのだ。それを家族の絆
で片付けられては全く迷惑としか言いようがない。
お陰で子役の存在が際立ってしまうが、それは監督の意図と
は異なるものだろう。つまり家族の絆を描くのにこの展開は
間違っていると言わざるを得ない。逆に言えばこの展開で家
族の絆を描くことはかなり難しいとも思えるものだ。SFフ
ァンとして興味は持つが納得はしがたい作品だった。
なお劇中で映画の『E.T.』を観ているシーンがあって、そ
れが何故かオリジナルヴァージョン。スピルバーグがわざわ
ざ改訂した作品の元版を出す意味も理解できなかった。

公開は11月18日より、東京はグランドシネマサンシャイン池
袋他にて全国ロードショウとなる。



2022年10月02日(日) 愛国の告白−沈黙を破る・Part 2−

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『愛国の告白−沈黙を破る・Part 2−』
2019年2月10日題名紹介『福島は語る』などの土井敏邦監督
が、監督のライフワークであるパレスチナ・イスラエル問題
を描いたドキュメンタリーの最新作。
2004年に元イスラエル国防軍の将兵グループが「沈黙を破る
−戦闘兵士がヘブロンを語る−」という写真展をテルアビブ
で開催。その活動を取材した2009年土井監督の映画『沈黙を
破る』は同年のキネマ旬報ベストテン文化映画部門の第1位
に輝いた。本作はそれから13年を経た現状を描くものだ。
とは言うものの、その現状は全く変わらないというより悪化
しているもので、そんな現状が13年の経た元将兵たちへのイ
ンタヴューや、その後も土井監督が続けてきた現地での取材
の映像と共に描き出される。そこには元将兵たちへの国家か
らの弾圧や、家族との確執なども語られる。
そしてそこには、占領軍によるパレスチナ人に対する悪辣な
行為や正に人権を無視する狂気の実態も語られるが、それら
が愛国という言葉の許に正当化され、それが正義として称え
られて行くという…。正に無知蒙昧という感覚の現実が描か
れて行く。
実は試写会の後に監督の挨拶があって、そこでは「これを日
本人に見せて何の意味があるのか、という意見もある」との
発言もあったが、同様の不正が愛国という言葉の許に正当化
され正義とされている現状は、福島原発問題を含めて日本で
も散見されると思うのが自分の感覚だ。
さらに敢えて言うなら、中国で応召しシベリアで抑留された
元日本兵であった自分の父親が、生前戦争のことはほとんど
話さなかった中で、南京大虐殺の話題に触れてそれに似たこ
とは目撃したと語ったことがあり、占領軍であった日本兵も
同様だったことは、日本人として理解すべきと感じた。
そんな中で、本作の後半のガザ地区の映像では一瞬野良猫の
写るシーンがあり、その野良猫の痩せこけた姿が、自分の中
では先週観た韓国映画の野良猫と対比されて、現状の過酷さ
がより如実に理解できる感じもした。こんなことがウクライ
ナを始め世界中で起きているのが現状だろう。

公開は11月19日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次
ロードショウとなる。


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井口健二