井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2019年12月29日(日) 巡礼の約束、バニシング(もみの家、プレーム兄、リチャード・ジュエル、劇場版 おいしい給食、ジョン・F・ドノヴァン、ナイブズ・アウト)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『巡礼の約束』“阿拉姜色”
2016年7月紹介『河』(公開題名:草原の河)のソンタルジャ
監督による新作で、2018年上海国際映画祭にて審査員大賞と
最優秀脚本賞の2冠に輝いた作品。
舞台はチベット高原東部の町ギャロン。その町に住む主婦が
突然ラサへの巡礼に出ると言い出す。その様子に夫は只なら
ぬものを感じて反対するが…。妻は実家に行き、そこで暮す
前夫との間の息子には会えないまま旅が始まる。
その巡礼には町の娘2人が同行するが、五体投地で進む旅は
過酷なものだった。そこに夫がバイクで追いつき説得しよう
とするが聞き入られることはなく、やがて同行者の2人が離
脱しても旅は続いて行く。
こうして1人で進む旅に主人公の弟が彼女の息子を連れて現
れる。そして弟が帰ろうとした時、息子は母親と共にいるこ
とを決める。さらに夫も再び合流し、主人公と互いには血の
繋がらない夫と息子との3人の旅が続いてゆく。

出演は本作で中国国内の映画祭で女優賞を受賞したニマソン
ソンと、現地で1000人のオーディションから選ばれた撮影時
11歳のスィチョクジャ。ギャロン出身で舞踊家・歌手として
知られ、本作のプロデュースも担当のヨン・ジョンシャ。
他に詩人としても活躍するジンバらが脇を固めている。
脚本は監督と、チベット人作家で日本では2000年に公開され
た『チベットの女イシの生涯』などの原作者として知られる
タシダワが共同で執筆。因に本作は、2011年に長編デビュー
したソンタルジャ監督の3作目だそうだ。
2016年『ラサへの歩き方 祈りの2400km』でも描かれた五体
投地で聖地を目指す巡礼旅は過酷としか言いようのないもの
だが、先の作品は村を挙げての行事で団体での行動はそれな
りに理解はできるものだった。
それに対して本作は、一応同行者がいるとは言うものの実行
するのは1人だけで、それはもう理解を超えるものだ。しか
も映画では、額の傷が大きくなって行くなどの描写もあり、
それまでする願いは何なのだろうという思いもする。
一方、本作は夏から秋、冬、春と、チベット高原の季節の変
化も見事に描写された作品とも言える。そこに家族の絆や親
子愛、夫婦愛などが巧みに織り込まれている。そんな感じも
する作品だった。
ただ、最後に登場する「ラサまで3�辧廚箸いζ始�標識が、
確か2016年作にも登場していたように思うのだが、そこはま
だ最後の峠の手前の場所で、とても後3�劼忙廚┐覆ぁA虻�
でも疑問に感じたが、今回も謎のままだった。

公開は2020年2月8日より、東京は神保町岩波ホール他にて
全国順次ロードショウとなる。

『バニシング』“The Vanishing/Keepers”
スコットランド出身で、2019年10月13日題名紹介『エンド・
オブ・ステイツ』などのアクションスターの俳優ジェラルド
・バトラーが、出演と製作も手掛けた同地の実話に基づくと
されるサスペンス作品。
物語の基となっているのは1900年12月に起きた「アイリーン
・モア灯台事件」。スコットランド西部のアウター・ヘブリ
ディーズ諸島に属する小さな無人島で灯台を守っていた3人
の男が忽然と姿を消した。
それは12月15日に沖合を航行中の貨物船が、夜間に向きを変
えるため灯台を探したが見つからず、応答もなかったという
報告に始まり、10日後に定期の補給のための船が立ち寄ると
3人の灯台守の姿がなかったというもの。
そして作業日誌には暴風が襲来したとの記載があり、道具箱
もなかったことから、嵐の中を作業に向かった灯台守たちが
海に投げ出されたという推測になったが、3人の内の1人の
防水衣だけが残されているなど謎は残された。
因に事件の起きたアイリーン・モア島には侵入者を歓迎しな
い妖精がいるという伝説があり、また該当する日時に本土で
嵐は観測されていなかったということもあって、オカルト的
な興味を引く失踪事件とされているものだ。
しかしこの事件に関しては、現在では灯台守の1人が一時的
な精神錯乱(?)となって仲間2人を殺害し、その後に正気に
戻った殺人者が嵐の記載を日誌に残して自らも海に身を投げ
たという説が有力になっているそうだ。
これに対して本作では、さらに別の要因を加えた推測を描い
ているものだが、これが一層の現実味を帯びた人間ドラマを
展開するものになっている。とは言ってもかなり大胆な推測
ではあるのだが…。

共演は、2013年12月紹介『トップ・オブ・ザ・レイク』など
のピーター・ミュランと、2018年には英国のラップ・シーン
を描いた“VS.”という作品にも主演しているコナー・スウ
ィンデルズ。他にソーレン・マリン、オラフル・ダッリ・オ
ラフソン、ゲイリー・ルイスらが脇を固めている。
俳優でもあるジョー・ボーンと、本作の製作総指揮も務める
ケイリン・ジョーンズの脚本から、監督は人気テレビドラマ
『THE KILLING キリング』などを手掛けるクリストファー・
ニーホルムが長編デビューを飾っている。
正直に言ってオカルトでなかったのは少し残念だが、3人の
灯台守の心理劇などはさもありなんという感じで楽しめた。
それにスコットランド西側の諸島の荒涼とした風景も興味深
く観られる作品だった。

公開は2020年1月24日より、東京はシネマート新宿、ヒュー
マントラストシネマ渋谷他で全国ロードショウとなる。
なお原題は、鑑賞した映像ではスラッシュの右側だったが、
海外のデータベースでは左側でも紹介されているようだ。

この週は他に
『もみの家』
(2017年1月15日題名紹介『真白の恋』の北川亜矢子(脚本)
と、坂本欣弘監督が再び組んで富山県に実在する不登校児な
どの自立支援施設を描いた作品。主人公は都会の学校で周囲
に馴染めず不登校になった16歳の少女。父親はそのうち何と
かなると放任だったが、心配した母親が意を決して少女を施
設に連れてくる。その施設でも初めは馴染めない少女だった
が、大自然の中での暮しと同じような悩みを抱える仲間との
交流が徐々に彼女を変えてゆく。出演は2019年6月16日題名
紹介『無限ファンデーション』などの南沙良。他に中村蒼、
田中美里、緒形直人。さらに渡辺真起子、佐々木すみ江、二
階堂智、菅原大吉らが脇を固めている。坂本監督は地元富山
県に在住とのことで、映画では他県人の知らない風景も魅せ
てくれる。特に若い2人が山から観る景観は見事だった。公
開は2020年2月28日から富山県で先行上映の後、東京は3月
20日より新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショウ。)

『プレーム兄貴、王になる』“प्रेम रतन धन पायो”
(19世紀末に出版されたイギリスの小説「ゼンダ城の虜」に
想を得ているマサラムーヴィ。主人公はあまり売れていない
役者。そんな彼が慈善活動に来ていた王女に一目惚れする。
そして王女が婚約者である王子の王位継承式で近隣の町を訪
れると知った主人公は、一目見ようとその町に向かうが…。
そのころ王宮では尊大な王子に反発する弟王子一派の反乱で
王子は意識不明になっていた。しかも主人公が王子に瓜二つ
と判り、主人公は急遽王子の身代わりを演じることになる。
しかし反乱は強度を増し、その中で主人公はある策に打って
出る。出演は、2018年12月9日題名紹介『バジュランギおじ
さんと、小さな迷子』などのサマール・カーン。他にソーナ
ム・カプール、アヌパム・カーらが脇を固めている。脚本と
監督は1989年のデビュー作以来、多くの作品でカーンと組ん
でいるスーラジ・バルジャーティヤ。公開は2020年2月21日
より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『リチャード・ジュエル』“Richard Jewell”
(1996年、アトランタオリンピック開催中に起きた爆弾テロ
事件とその捜査活動の真相に迫るクリント・イーストウッド
監督作品。主人公は警官に憧れるが果たせない男性。そんな
彼がオリンピック関連イヴェント会場の警備の仕事に就く。
そしてその会場に仕掛けられた爆弾を発見。彼の機転で多く
の人命が救われ、一躍英雄になるが。捜査に当るFBIでは
第一発見者を疑うセオリーから彼に嫌疑の目を向け、しかも
その情報が特ダネを狙う女性記者に漏れてしまう。そして実
名報道がされ、彼は一転民衆の敵になってしまうが…。彼の
友人だった弁護士がその窮地に立ち向かう。出演は、2018年
12月2日題名紹介『ブラック・クランズマン』などのポール
・ウォルター・ハウザー。他にサム・ロックウェル、キャシ
ー・ベイツ。さらにジョン・ハム、オリビア・ワイルドらが
脇を固めている。権力の怖さを的確に描いた作品だ。公開は
2020年1月17日より、全国ロードショウ。)

『劇場版 おいしい給食 Final Battle』
(2018年8月紹介『あいあい傘』などの市原隼人の主演で、
給食に絶対愛を捧げる教師と給食に変革を求める生徒との対
決を描いた2019年10月‐12月にローカルネットで全10話が放
送されたテレビシリーズの映画版。放送では各話ごとに出さ
れた給食を如何にベストにして食べるかが競われたが、映画
版ではそんな彼らの根底を揺るがす大事件が発生する。共演
は2015年12月紹介『鉄の子』で見事な演技を見せた子役の佐
藤大志。他に武田玲奈、豊嶋花、辻本達規、いとうまい子、
酒向芳らがテレビ版から登場、さらに水野勝、直江喜一、ド
ロンズ石本らが映画版の脇を固める。脚本と監督はテレビ版
でも7話を手掛けた綾部真弥。時代背景は1984年だそうで、
最近の若者にもノスタルジーを感じさせる給食が描かれてい
る。僕は一応テレビ版も観ていたので細かいところにも感激
したが、そうでない人にも面白いという感想だったようだ。
公開は2020年3月6日より、全国ロードショウ。)

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』
       “The Death and Life of John F. Donovan”
(2015年3月紹介『Mommy マミー』などのグザヴィエ・ドラ
ン監督が、カナダのケベック州で子役として活動していた頃
に、実際にレオナルド・ディカプリオと文通していたという
思い出に基づき、子役で活動している少年と文通相手の人気
スターとの葛藤を描いた作品。少年は母親にも内緒で文通を
しており、ある日それを学校で発表するが、それがとんでも
ない事件を引き起こしてしまう。大人の無理解などが子供に
及ぼす影響を丁寧に描いた作品になっている。出演は2018年
3月紹介『ワンダー君は太陽』などのジェイコブ・トレンブ
レイと、2013年4月紹介『サイレントヒル・リベレーション
3D』などのキット・ハリントン。他にナタリー・ポートマ
ン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツ、タンディ・
ニュートン、マイクル・ガンボンらが脇を固めている。映画
界の舞台裏などもいろいろ描かれるが、何か物足りない感じ
がした。公開は2020年3月13日より、全国ロードショウ。)

『ナイブズ・アウト名探偵と刃の館の秘密』“Knives Out”
(2012年10月紹介『LOOPER』などのライアン・ジョンスン脚
本・監督で、007のダニエル・クレイグとCaptain Americaの
クリス・エバンスを主演に迎えたアガサ・クリスティに捧げ
るとされたオリジナルの密室殺人劇。世界的ミステリー作家
の誕生日パーティが自宅で開かれ、作家の家族らが集まった
翌朝、作家が遺体で発見される。しかしそれは自殺と見做さ
れて葬儀の準備が進むが、そこに依頼を受けたという名探偵
が登場する。そして集まった全員を殺人の容疑者として再捜
査が始まるが…。共演は2017年10月紹介『ブレードランナー
2049』などのアナ・デ・アルマス。他にジェイミー・リー・
カーティス、マイクル・シャノン、ドン・ジョンスン、トニ
・コレット。さらにクリストファー・プラマー、フランク・
オズらが脇を固めている。正にクリスティが書きそうな「名
探偵、皆を集めてさてと言い」の謎解き劇が展開される。公
開は2020年1月31日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2019年12月22日(日) 一度死んでみた(シンカリオン、サヨナラまで、酔うと化け、名もなき、ハスラーズ、続・荒野の、東京不穏、現在地はいづく、彼らは生きて)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『一度死んでみた』
「白戸家」シリーズなどを生み出したテレビCMプランナー
の澤本嘉光が脚本を手掛ける少しSF的な要素もあるシチュ
エーションコメディ作品。
主人公は「デス」をテーマにしたパンクロックを歌っている
女性シンガー。実はある製薬会社の社長の娘なのだが、仕事
第1で学問最優先の父親の教育方針に抵抗して、特に母親が
死去した後は自宅内にラインを引いて生活を分けている。
一方、父親の経営する会社では、「ロミオ」と名付けられた
若返り新薬の開発が進められており、その研究成果を狙って
大手会社からの合併の画策が進んでいた。当然社長はそれに
反対だったが…。
そんな時、「ロミオ」開発の副産物として一時的に死亡した
状態になる薬が開発される。そこで社長は、その薬を使って
自分を死亡させ、その時の社内の状況を見て合併を画策する
連中のあぶり出しを謀る。
斯くして社長は、2日後に生き返るように処方された薬を飲
み「一度死んでみた」が。その状況を把握した連中は2日以
内に火葬を執り行おうとし、父親の遺した言葉から全てを察
知した娘との攻防戦が勃発する。

主演は広瀬すず。共演に吉沢亮、堤真一。他にリリー・フラ
ンキー、小澤征悦、嶋田久作、木村多江、松田翔太。
さらに加藤諒、でんでん、柄本時生、前野朋哉、西野七瀬、
城田優、原日出子、真壁刀義、野口聡一、佐藤健、池田エラ
イザ、志尊淳、古田新太、大友康平、竹中直人、妻夫木聡ら
が脇を固めている。
監督はCMを数多く手掛ける浜崎慎治の長編デビュー作のよ
うだ。
2019年12月8日題名紹介『テリー・ギリアムのドン・キホー
テ』では、CM業界から長編映画に進出した監督の姿が描か
れていたが、以前にも何本か観ているその手の作品では、得
てして監督の独り善がりが鼻につくことが多かった。
実際、本作と同様に澤本嘉光が脚本を手掛けた2014年『ジャ
ッジ!』は広告業界の裏側を描いているせいか、何とも煮え
切らない中途半端な作品で、試写は観たもののここでは取り
上げなかったものだ。
そんな危惧も感じながら観た作品だったが、本作では先ず巧
みなストーリーテリングに感心した。特に鏤められた伏線が
纏まって行く心地の良さは、これはある種のカタルシスにも
なっていた。
それにCMを基にしたギャグも適度にバランスが良く。さら
には新薬のネーミングから、死後の世界との絡みなども気持
ちよく楽しむことができた。SFとしての解釈も妥当で、新
たな才能を見つけたと言えそうだ。

公開は2020年3月20日より、東京は新宿ピカデリー他で全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『新幹線変形ロボ シンカリオン
              未来からきた神速のALFA-X』
(2015年から展開された玩具を基に、2018年1月から2019年
6月まで全76話が放送されたアニメシリーズの劇場版。JR
各社や鉄道博物館の協力により製作された作品で、実在する
新幹線の各車両が変形、巨大ロボット化して敵と戦う物語が
展開される。特に今回の映画版では、2019年5月に登場した
JR東日本の新幹線用高速運転試験電車「E956(ALFA-X)」
がフィーチャーされているものだ。物語は地球を狙う新たな
敵が宇宙から襲来、同時に主人公の父親が行方不明になる。
そこに謎の少年が登場し、少年は北海道新幹線の延伸工事現
場で発見された試験車両ALFA-Xの運転席に座り、主人公らが
座るE3つばさ、E5はやぶさ、E6こまち、E7かがやきなどと共
に敵に立ち向かう。さらに初音ミクやエヴァンゲリオンとの
コラヴォレーションなど、各種映像も挿入される。因にこれ
らの映像はそれぞれの製作会社で制作された本物とのこと。
公開は12月27日より、全国ロードショウ。)

『サヨナラまでの30分』
(2009年9月紹介『ブラック会社に務めているんだが、もう
俺は限界かもしれない』などを手掛ける井手陽子の企画/プ
ロデュースで、2008年12月紹介『カフーを待ちわびて』など
の大島里美脚本、2017年7月紹介『東京喰種』などの萩原健
太郎監督により描かれた青春ドラマ。人見知りの若者が拾っ
たカセットテープを再生すると、その時間だけデビュー寸前
に事故死したミュージシャンの魂が彼に宿る。そしてその魂
は、成し遂げられなかった夢の実現を彼に託すが…。出演は
2017年9月紹介『不能犯』などの新田真剣佑と、2017年8月
紹介『恋と嘘』などに出演してダンスユニットのヴォーカル
も務める北村匠海。他に久保田紗友、葉山奨之、上杉柊平、
清原翔。さらに牧瀬里穂、筒井道隆、松重豊らが脇を固めて
いる。記録媒体が上書きによって消えてゆくという発想は他
にもあったと思うが、良い感じのファンタシーに仕上げられ
ていた。公開は2020年1月24日より、全国ロードショウ。)

『酔うと化け物になる父がつらい』
(酔って奇行を繰り返す父親と新興宗教信者の母親。そんな
両親と暮らす娘を描いた菊池真理子原作、ノンフィクション
コミックスの映画化。勤務先で人事課の責任ポストにいる主
人公の父親はストレスからか酒に溺れることが多い。そんな
父親には取り巻きのような飲んべい仲間もいたが…。出演は
2019年11月24日題名紹介『his』などの松本穂香と、2019年
12月紹介『37セカンズ』などの渋川清彦。さらに2019年12月
2日題名紹介『転がるビー玉』などの今泉佑唯。そしてとも
さかりえ。他に安藤玉恵、宇野祥平、森下能幸、星田英利、
オダギリジョー、浜野謙太らが脇を固めている。脚本と監督
は2018年『ルームロンダリング』の片桐健滋。自分も酒は飲
むし、若い頃には失敗もした人間だが、年を取るとだんだん
自己規制も働くようになる。ただ体質によってそれもできな
い日本人が多いのは事実のようだ。酒飲みとしては辛い作品
だった。公開は2020年3月6日より、全国ロードショウ。)

『名もなき生涯』“A Hidden Life”
(第2次大戦中、ナチスドイツに併合下のオーストリアで、
ヒトラーへの忠誠を拒んだ男の姿を描くテレンス・マリック
監督初の実在した人物に基づくとされる作品。主人公は山間
の寒村で農業を営んでいた。そんな男性に最初の召集令状が
届き兵役に就くが、訓練を受ける彼の心にナチスドイツへの
疑念が沸き上がる。その兵役はフランスの降伏で終わり、男
性は帰郷。しかし間もなく2度目の礼状が届き、男性はその
兵役を拒否する。そのため彼は収監され、残された家族に迫
害が始まる。出演は2010年7月紹介『ソルト』などのアウグ
スト・ディールと、2016年11月20日題名紹介『エゴン・シー
レ 死と乙女』などのヴァレリー・パフナー。他にマリア・
シモン、ブルーノ・ガンツ、マティアス・スーナールツらが
脇を固めている。全体主義の恐ろしさが明確に描かれ、今描
くことの意味も重要な作品だ。公開は2020年2月21日より、
東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)

『ハスラーズ』“Hustlers”
(2009年5月紹介『エル・カンタンテ』などのジェニファー
・ロペス製作・出演で、2008年リーマンショック後のニュー
ヨークを舞台にした実話に基づくとされる女性映画。主演は
2018年9月2日題名紹介『クレイジー・リッチ!』などのコ
ンスタンス・ウー。年老いた祖母を養うためにストリッパー
として働き始めた東洋系の女性が、憧れのラテン系の女性と
共に男性を手玉に取る仕事を始める。ところが金融危機で金
蔓が激減、しかし張本人たちの暮らし振りが変わっていない
と知った彼女らは、さらに大きな勝負に打って出る。脚本と
監督は、2012年12月紹介『エンド・オブ・ザ・ワールド』な
どのローリーン・スカファリア。前作は終末物のSFと言っ
てもいい作品だったが、今回の作品も観ると前作も併せて女
性の夢みたいなことなのかな? どこまで実話に沿っている
かは判らないが、女性的には小気味よい作品と言えそうだ。
公開は2020年2月7日より、全国ロードショウ。)

『続・荒野の用心棒』“Django”
(2013年1月紹介『ジャンゴ繋がれざる者』や、2007年8月
紹介『スキヤキウェスタン・ジャンゴ』のオリジナルとされ
る1966年製作、セルジオ・コルブッチ原案、脚本、監督によ
る作品が、ディジタル・リストアにより再公開される。物語
の舞台は、南北戦争の終結から間もないメキシコ国境に近い
西部の町。南軍の残党とメキシコの独立派の軍隊が対立する
その町に棺桶を引き摺った流れ者のガンマンが現れる。彼は
処刑されそうになっていた女を助けて町の酒場にやってくる
が、女は疫病神とされているようだ。そして両軍のそれぞれ
とガンマンとの壮絶な戦いが始まるが、ガンマンの行動には
別の目的が隠されていた。出演はこの1作で一躍名を轟かせ
たフランコ・ネロ。共演はロレダナ・ヌシアック、エドゥア
ルド・ファヤルド。突然登場するマシンガンなど、意表を突
く展開も心地よい作品だ。公開は2020年1月31日より、東京
はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)

『東京不穏詩』
(2011年にCGアニメーターとして来日し、2016年7月紹介
『GANTZ:O』などにも携わったというインド人のアンシェル
・チョウハン監督が日本人の俳優で日本の社会を描いた長編
デビュー作。ブリュッセル・インディペンデント映画祭でグ
ランプリ受賞の作品。主人公は女優を目指して上京したが、
夢半ばでクラブで働いている。そんな彼女が海外映画のオー
ディションに受かった日に強盗に遭い、金を奪われ顔に傷を
負う。そのため逃げるように故郷に帰った彼女だったが…。
主演は2015年の東京国際映画祭で上映された『ケンとカズ』
のヒロイン役で注目された飯島珠奈。本作では各地の映画祭
で3冠を受賞している。物語自体に目新しさは感じないが、
イギリスで演劇を学んだ女優とインド人の監督が、今までの
日本映画にない感覚の作品を作り出している。公開は2020年
1月18日より、東京は渋谷のシアター・イメージフォーラム
他で全国順次ロードショウ。)

『現在地はいづくなりや』
(2016年8月7日題名紹介『だれかの木琴』などの東陽一監
督に取材したドキュメンタリー。1963年の短編映画を出発点
に1971年の『やさしいにっぽん人』で長編デビュー以来、別
名義も含めると20本以上の作品を手掛けた監督が、緑魔子、
烏丸せつこ、常盤貴子らの主演に起用した女優と共に映画論
を繰り広げる。それは論というほど固く苦しいものではない
が、女優との出会いのエピソードなども含めて心地よく聞け
るものになっている。しかもかなり監督の本質にも迫ってい
る感じで、正直僕は今まであまり強い関心を持った監督では
なかったが、改めて各作品を観たくなってくる感じもした。
ただ途中に出てくる監督の後輩にあたる大学教授の発言は言
わずもがなで、それよりもっと監督の意見を聞きたい感じも
したものだ。それにしても女優に愛された監督だなあという
思いはする作品だった。公開は2020年2月22日より、東京は
ポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)

『彼らは生きていた』“They Shall Not Grow Old”
(『LOTR』や『ホビット』などのピーター・ジャクスン
監督が、大英帝国戦争博物館が所蔵する第1次世界大戦の当
時に撮影された数千時間に及ぶ記録映像の中から約100時間
を選出し、当時は毎秒13コマや16コマで撮影されていた映像
を24コマに補完修復、さらにカラー化と日本では2D公開だ
が本国では3D化して上映した作品。しかも音声にはBBC
の所蔵による実際に第1次大戦に従軍した兵士たちの肉声が
使用され、同時に吹替えのセリフやサウンドエフェクトなど
で正に臨場感溢れる「戦争映画」を作り上げた。また映像の
中には1917年から前線に配備された「菱形戦車」が走行して
来る実写のシーンなども登場し、その映像自体は過去に観た
ことはあったものの、本作の中で観るとH・G・ウェルズが
1903年に発表した小説“The Land Ironclads”にも思い至っ
た。公開は2020年1月25日より、東京は渋谷のシアター・イ
メージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2019年12月15日(日) Fukushima 50(燃えよスーリヤ、山中静夫氏、グリンゴ、マザーレス・B、私の知らない、エスケープ・R、グッドライアー、娘は戦場で、帰郷)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『Fukushima 50』
2011年3月11日に発生した東日本大震災。その時の福島第一
原子力発電所とその関連施設、及びその周囲での出来事を描
いた真実に基づく作品。
映画の巻頭では福島原発を襲った未曾有の大津波がCGIで
再現され、その迫力の映像に圧倒される。しかし本当の物語
は、そこから始まる人間の戦いを描いたものだ。
その時、福島原発には50人の地元出身の作業員たちが働いて
いた。そして外部と遮断された発電所内で制御不能となった
原子炉の暴走を食い止めるための作業が続けられた。それは
人類史上、未だ嘗てない決死の作戦だった。
当時を体験した自分自身の中で、東日本大震災の記憶という
と町を襲い家や自動車や、さらには飛行機なども押し流す津
波の映像がほとんどだろう。そこに原発の爆発の映像がイン
サートされるが、それは被災者の姿に覆い隠される。
実際に震災の後には数多くのドキュメンタリーも発表された
が、その大半は被災者の苦労を描いたものであり、福島に絡
んでも町ごと避難した人たちの生活や残された田畑や動物た
ち、また風評被害などを訴えるものばかりだった。
それはドキュメンタリストたちが意図したものではないが、
現実の最大の危機は描くことができなかった。その実態は本
作によると、福島第一原発を放棄した場合の被害範囲は東京
を含む半径250�辧�東日本の壊滅を意味するものだった。
これを食い止めるべく50人の作業員が奮闘する訳だが、そこ
に突然の総理大臣の視察で緊急作業が阻害されたり、それを
ただ命令するだけの東京にいる会社幹部など、正にマンガと
しか思えない事態が続発してゆく。
いやはや、当時の状況を記憶していてこれらが本当にあった
ことだと認識していても、これはないでしょと言いたくなる
ような常識外れの事態が描かれる。でも言葉を繰り返すが、
これが真実なのだ。

出演は佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美、緒形直人、
火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、富田靖子、佐野史
郎、斎藤工、堀部圭亮、小倉久寛、石井正則、和田正人、三
浦誠己、田口トモロヲ、皆川猿時、金山一彦、金田明夫。
さらに小市慢太郎、矢島健一、段田安則、篠井英介、中村ゆ
り、ダンカン、泉谷しげる、ダニエル・カールら、今の日本
映画を代表するようなオールスターが顔を揃えている。
門田隆将の原作に基づく脚本は、2020年NHK大河『麒麟が
くる』を担当する前川洋一。監督は2019年2月24日題名紹介
『空母いぶき』などの若松節朗が担当した。
僕は以前から献血を趣味としていたのだが、2011年4月の頃
には成分献血で「血小板」の要請が多かったのを記憶してい
る。火傷の治療などに使用される「血小板」は保存期間が短
く、本来なら火災の発生などで緊急に要請されるものだが、
当時は頻繁に要請された。
それで疑問に感じて検索したら「血小板」が放射能障害の治
療にも使用されるとあった。当時は理由などは明かされず、
本作でも言及はされないので真相は判らないままだが、漠然
とした不安は感じたものだ。
それにしても当時の民主党政権の人気取りに走るおたおた振
りも情けないが、東電首脳の政権べったり無能な対応には、
恐怖すら感じ、それが全く責任を取っていない実情にも震撼
した。
まあこれが日本の現状を表しているということでは辛辣な作
品とも言えるものだ。

公開は2020年3月6日より、東京は丸の内ピカデリー、TOHO
シネマズ日比谷他で全国ロードショウとなる。

この週は他に
『燃えよスーリヤ!!』“मर्द को दर्द नहीं होता”
(インド映画初のカンフーアクションとされる作品。インド
映画でもアクション作品はいろいろあるが、カンフー(空手)
に特化したものは珍しいようだ。そして本作では、肉体の痛
みを感じないという特殊体質の主人公が、伝説の片脚の空手
マンが行う「百人組手」なるヴィデオに魅せられ、日々精進
してカンフーを会得するというもの。その技で主人公は町の
平安を守っていたが…。脚本と監督は2013年の世界的ヒット
作『めぐり逢わせのお弁当』の脚本を担当し、監督では本作
が2作目のヴァーサン・バーラー。出演は共に新人のアビマ
ニュ・ダサーニーとラーディカー・マダン。他に2009年1月
紹介『スラムドッグ$ミリオネア』などのマヘーシュ・マー
ンジュレーカル、監督の前作にも出ているグルシャン・デー
ヴァイヤーらが脇を固めている。空手の映像が華麗で今後の
展開にも期待が持てる作品だ。公開は12月27日より、東京は
TOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)

『山中静夫氏の尊厳死』
(2002年7月紹介『阿弥陀堂だより』などの原作者で、現役
の医師でもある南木佳士の同名小説からの映画化。主人公は
長野県の総合病院に勤務する医師。その医師の許に静岡県か
ら末期がんの患者が来訪する。その患者は信州から婿養子で
浜松に行ったが、最後は故郷の山を見ながら死にたいのだと
いう。しかしそれは家族にとっては負担の嵩むものだった。
患者と周囲の人との交流や、医師自身の問題なども絡めて物
語は展開される。出演は津田寛治、中村梅雀。他に石丸謙二
郎、田中美里、浅田美代子、高畑淳子らが脇を固めている。
脚本と監督はテレビドラマ『オレゴンから愛』などの脚本家
の村橋明郎が担当した。物語は特に大きな事件が起きるもの
でもなく、地方の医師にはあるあるの話かもしれない。でも
その中で自分に照らして、いろいろ考えるところも多い作品
だった。公開は長野県で先行上映された後、東京は2月上旬
より、シネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)

『グリンゴ 最強の悪運男』“Gringo”
(シャーリズ・セロンが製作と出演を務め、人の良さから人
生最大の窮地に陥った男が、一発逆転の大勝負に挑む顛末を
描いた痛快コメディ。主人公は親友だと思っていた会社経営
者に騙され、出張先のメキシコで麻薬犯罪に巻き込まれると
共に妻まで寝取られてしまう。この状況に主人公は営利誘拐
を偽装して上司から身代金500万ドルを奪おうとするが…。
主人公に生命保険が掛かっていることを知った上司は、逆に
殺し屋を雇って主人公の命を狙いだす。出演は2015年8月紹
介『アメリカン・ドリーマー』などのデヴィッド・オイェロ
ウォ。2018年9月9日題名紹介『IT COMES AT NIGHT』など
のジョエル・エドガートン。さらにセロン、タンディ・ニュ
ートン、アマンダ・セイフライドらが脇を固めている。脚本
は2004年1月紹介『ディボース・ショウ』などのマシュー・
ストーン。監督はジョエルの兄のナッシュ・エドガートン。
公開は2020年2月7日より、全国ロードショウ。)

『マザーレス・ブルックリン』“Motherless Brooklyn”
(2017年1月22日題名紹介『素晴らしきかな、人生』などの
エドワード・ノートンが、2000年の東京国際映画祭に出品さ
れた『僕たちのアナ・バナナ』以来の監督、主演に挑戦した
作品。ノートンは本作では製作と2000年英国推理作家協会賞
を受賞したジョナサン・レセム原作に基づく脚色も手掛けて
いる。主人公は驚異的な記憶力を持つが言語などに障害を持
つ私立探偵。そんな彼が育ての親でもあった探偵所長の死を
巡ってブルックリンの裏社会の黒幕に挑んでゆく。共演はブ
ルース・ウィリス、アレック・ボールドウィン、ウィレム・
デフォー。他に2017年3月19日題名紹介『美女と野獣』など
のググ・バサ=ロー。さらにレスリー・マン、フィッシャー
・スティーヴンスらが脇を固めている。原作では1990年代が
舞台だったようだが、映画は1957年を時代背景として見事な
ノワアール劇が展開される。公開は2020年1月10日より、全
国ロードショウ。)

『私の知らないわたしの素顔』“Celle que vous croyez”
(2018年11月4日付「東京国際映画祭」で紹介『ノン・フィ
クション』(劇場公開名:冬時間のパリ)などのジュリエット
・ビノシュがWEB上のヴァーチャル恋愛に嵌って行く大学
教授を演じるサスペンス作品。主人公は50代の女性教授。し
かし年下の恋人から振られた日にSNS上に24歳の架空の人
格をエントリーし、その人格で自分を振った恋人の友人を誘
い込む。今年の東京国際映画祭にも似たテーマの『動物だけ
が知っている』が出品されたが、この作品もフランス映画で
しかもどちらもかなり手の込んだ構成で驚かされた。特に本
作のトリッキーさでは掟破りの感じもするが、SNSの闇に
挑むとしたらこれくらいは許されるかな? 正しくニヤリと
する作品だった。1957年生まれのフランスの女流作家カミー
ユ・ロランスの原作から、1968年生まれのサフィー・ネブー
が脚色、監督した。公開は2020年1月17日より、東京は渋谷
Bunkamura ル・シネマ他で全国順次ロードショウ。)

『エスケープ・ルーム』“Escape Room”
(2019年2月紹介『ハンターキラー潜航せよ』などのニール
・H・モリッツの製作、2011年7月紹介『デビルクエスト』
の脚本を手掛けたブラギ・シャットの原案・脚本、『インシ
ディアス』シリーズ第4作の監督や『パラノーマル・アクテ
ィビティ5』の脚本などを手掛けたアダム・ロビテルの監督
で、リアルサイズの脱出ゲームに参加した男女を描く作品。
それはシカゴに建つビルの中で生き延びれば1万ドルの賞金
が得られるというものだったが…。出演はテイラー・ラッセ
ル、ローガン・ミラー、デボラ・アン・ウォール他、いずれ
も出演作2、3本の新人が集っている。この手の作品も雨後
の筍のように登場するが、それぞれのステージのアイデアが
勝負かな。本作ではそこに各自の過去の経緯などが絡むが、
その辺をもう少し描き込めばもっと深みが増すような感じも
したものだ。公開は2020年2月28日より、東京はヒューマン
トラストシネマ渋谷他で全国ロードショウ。)

『グッドライアー 偽りのゲーム』“The Good Liar”
(ヘレン・ミレンとイアン・マッケランの共演で、夫を亡く
した資産家の老婦人と、その資産を狙う冷酷な詐欺師が繰り
広げる虚々実々の攻防を描くミステリー作品。そんな2人は
出会い系サイトを通じて知り合うが…。タイトルなどからは
よくある詐欺師物かなあと思って観始めたが、後半は予想外
の展開で心底驚かされた。物語はニコラス・サールが2015年
に発表した小説に基づくが、日本人には多少なじみの薄い展
開ではあるものの、映画はその背景などを丁寧に紹介して判
り易く明快に物語を描き切っている。脚本は2006年3月紹介
『カサノバ』(ラッセ・ハルストレイム監督)などを手掛けた
ジェフリー・ハッチャー。監督は2003年2月紹介『シカゴ』
や、2017年3月19日題名紹介『美女と野獣』などのビル・コ
ンドンが担当した。時系列が多少微妙な感じはしたが、歴史
を背景にした堂々たる作品だ。公開は2020年2月7日より、
東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『娘は戦場で生まれた』“For Sama”
(2011年から続く内戦の下、政府軍による包囲が続くシリア
北部の都市アレッポで医療機関を守り最後まで現地に残った
医師とジャーナリストの妻、その夫妻の許、戦火の中で誕生
し希望を込めて「空(Sama)」と名付けられた赤ん坊を映した
ドキュメンタリー。2018年3月4日題名紹介『ラッカは静か
に虐殺されている』やその他の作品でも思ったが、人はなぜ
このような場所に暮らそうとするのか…、という疑問は常に
感じる。ただ本作の場合は夫が医師だという状況はあるもの
だが、中に登場する少年の発言がその答えを明確にしてくれ
た感じもした。それにしても赤ん坊まで、とは思ってしまう
ものだが…。いずれにしてもこんな状況は解消されるべきだ
というメッセージはしっかりと届く作品だ。製作、監督、撮
影は赤ん坊の母親でもあるワアド・アルカティーブ。公開は
2020年2月29日より、東京は渋谷シアター・イメージフォー
ラム他で全国順次ロードショウ。)

『帰郷』
(史上初の8Kで撮影された藤沢周平原作の時代劇。信州・
木曽福島の宿場町を舞台に、若くして故郷を離れざるを得な
かったヤクザ者の男が30年余りを経て舞い戻っての物語。そ
の故郷は男が盃を交わした親分の縄張りが切られ、代わって
竹馬の友だった男が仕切ろうとしていたが…。主演は30年前
に原作を手にして以来思いを募らせていたという仲代達矢。
その脇を常盤貴子、北村一輝、緒形直人、佐藤二朗、田中美
里、谷田歩、前田亜季、三田佳子、橋爪功、中村敦夫らが固
めている。監督は先に仲代主演『果し合い』を手掛けた杉田
成道。僕は2K上映の試写を観たが、お話はともかく遠くの
山並みなどの風景は美しく撮られていた。公開は2020年1月
17日より東京は築地の東劇他で全国劇場上映の後、2月8日
夜9時から時代劇チャンネルにて放送される。なおマスコミ
試写では4K上映も行われたようだが、一般の劇場上映及び
放送は2Kになるということだ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2019年12月08日(日) ふたりのJTL、スピリットOTA、イントゥTS(ジュディ、新卒ポモ、グッドバイ、ロングDJ、嘘八百2、初恋、架空OL日記、テリーGのDQ、屋根裏)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』
             “Jeremiah Terminator LeRoy”
2017年3月19日題名紹介のドキュメンタリー『作家、本当の
J.T.リロイ』の実話に基づくドラマ作品。
上記のドキュメンタリーは実作者を中心に事実関係が検証さ
れていたが、本作では作者のアバターとなった少女の側から
前代未聞の出来事が描かれる。その少女は親元を離れ、サン
フランシスコで暮らす兄を頼って街にやって来た。
その兄はミュージシャンで、パートナーの女性の作詞による
バンド活動をしていた。そしてその女性は、実は女装の少年
男娼を主人公にした自伝と称する小説の作家だったが、彼女
は素顔を公表していなかった。
ところが小説の評価が上がるに連れて取材の要求が高まり、
作家に対しての直接インタヴューの申し入れが届き始める。
そこで彼女は、素顔を隠す手段としてパートナーの妹をアバ
ターにすることを思いつく。
それは最初は気軽なジョークのつもりだったのだが…。妹は
徐々にアバターにのめり込み、マネージャーを演じる女性と
の関係がおかしくなり始める。そしてヨーロッパ映画の女優
兼監督から小説の映画化の話が持ち上がる。

出演は2017年4月16日題名紹介『パーソナル・ショッパー』
などのクリスティン・スチュアートと、2019年3月24日題名
紹介『スノー・ロワイヤル』などのローラ・ダーン。そして
2019年6月紹介『マーウェン』などのダイアン・クルガー。
他に2018年1月紹介『ジオストーム』などのジム・スタージ
ェス。さらにケルヴィン・ハリスン・Jr. 、コートニー・ラ
ヴらが脇を固めている。
物語は、アバターだったサヴァンナ・ヌープが2007年に発表
した回想録“Girl Boy Girl: How I Became JT Leroy”に基
づき、サンダンス映画祭やベルリン国際映画祭で公式上映さ
れた“I Am Michael”などのジャスティン・ケリーが脚色、
監督。なお脚色には原作者のヌープも参加している。
先のドキュメンタリーは事実関係を詳細に並べたものだった
が、正直に言って状況をよく把握していなかった自分には、
著名なセレブの名前が次々登場する展開に理解が困難と言う
か、半信半疑な感じすらしたものだった。
その点が本作では、いろいろな事実関係がドラマで再現され
て、それは判り易く描かれていたものだ。そしてそのドラマ
の中で、若い女性が状況に翻弄されながらも自覚を持って事
態を乗り切った様子が巧みに描かれていた。
それにしても、ヨーロッパ映画の女優兼監督は実際にはアー
シア・アルジェントだったものだが、この展開で本当に判ら
なかったの? と言う気分にはなる。これはやはり気付きは
したが状況を判断したと言うことだろうか。

公開は2020年2月14日より、東京は新宿シネマカリテ、大阪
はテアトル梅田他で全国順次ロードショウとなる。

『スピリッツ・オブ・ジ・エア』
    “Spirits of the Air, Gremlins of the Clouds”
2016年6月26日題名紹介『キング・オブ・エジプト』などの
アレックス・プロイアス監督が1988年に発表し、1990年の第
1回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞
を受賞。日本では1991年に劇場初公開もされた長編デビュー
作のディジタルリマスター版による再公開。
物語の背景は終末世界を思わせる荒野。風が砂塵を巻き上げ
るだけの土地を男が歩いている。やがて男は一軒家に辿り着
くが、そこには脚の不自由な兄と偏執狂気味の妹の2人だけ
が暮らしていた。
その兄は風力若しくは人力で空を飛ぶ機械を研究し、いつか
荒野の北に聳える壁を飛び越えて、その向こう側の世界に行
き着こうと考えていた。そこには豊かな暮らしを送れる社会
が待っていると信じて。
しかし妹は、荒野の一隅にある亡き父親の墓を守り、父親の
教えの通りに荒野に暮らし続けることを望んでいた。そして
兄との確執が妹の精神を蝕んでいるようでもあった。そんな
2人の生活に男が入り込む。
その男を兄は航空機のパイロットして訓練を開始し、誰かに
追われていると称する男もそれに応えて行くが、飛行の準備
が進む内に妹の病状はますます昂進してゆく。そして荒野を
進む人影も近づいてきた。

出演は、1998年プロイアス監督の『ダークシティ』にも出演
して後には製作者となるマイクル・レイクと、本作以外の映
画出演作は見当たらないライズ・デイヴィス、ノーマン・ボ
イド。俳優はほぼ無名の人たちによる作品だ。
監督はエジプト出身とのことだが、本作はオーストラリア製
作で、背景の荒野は『マッドマックス』を想起させるものに
なっている。ただしその世界を疾走するのは大型のバイクで
はなく、航空機の滑走という作品だ。
その航空機では凧のように風による揚力を利用するものと、
足漕ぎのプロペラで推進力を得るものの2種が登場し、その
間には風洞実験などいろいろな要件もあって、何と言うかそ
れなりの拘りもあって描かれているようだ。
しかしその割には最初5日間と言っていた期限が曖昧になる
など、展開には多少いい加減な部分も散見された。でもまあ
全体的にはしっかりと終末世界的な雰囲気はあり、それは好
ましく感じられる作品ではあった。
プロイアス監督のSF作品では、何と言っても『ダークシテ
ィ』の印象が強烈だったものだが、『キング・オブ・エジプ
ト』以降の新作の情報は途切れているようで、また鮮烈な作
品で復活して欲しいものだ。

公開は2020年2月8日より、東京は新宿シネマカリテ他にて
全国順次ロードショウとなる。

『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』
                   “The Aeronauts”
2016年11月紹介『ファンタスティック・ビースト』などのエ
ディ・レッドメインと、2017年4月紹介『怪物はささやく』
などのフェリシティ・ジョーンズの共演で、ヴィクトリア王
朝時代の1862年に気球で人類未踏の高度に挑んだ気象学者と
パイロットの姿を描いた作品。
気象学者は高空の大気の状態を調査することで気象の予報が
できると考えていたが、その調査をする方法や資金を見つけ
られていなかった。一方の気球パイロットは夫婦で挑んだ高
度記録への挑戦で夫を失い失意に浸っていたが、そこからの
立ち直りのため高度記録への再挑戦を考える。
そんな2人の目論見が合致した気球の挑戦にはスポンサーも
集まり、一世一代の興行として人々の注目を集めることにな
るが…。映画では高度記録に挑戦する気球の行程がほぼ実時
間で描かれ、そこに両名の過去の経緯などがフラッシュバッ
クで挿入される形式になっている。

共演は2019年8月紹介『イエスタデイ』などのヒメーシュ・
パテル。他に2016年9月18日題名紹介『アイ・イン・ザ・ス
カイ 世界一安全な戦場』などのフィービー・フォックス、
2013年1月紹介『カルテット!人生のオペラハウス』などの
トム・コートネイらが脇を固めている。
原案と脚本と製作総指揮は、2018年3月紹介『ワンダー 君
は太陽』などのジャック・ソーン。共同原案と監督をイギリ
スのテレビドラマを数多く手掛け、2014年『ウーマン・イン
・ブラック2』などのトム・ハーパーが担当している。
映画の巻頭には「実話からインスパイアされた物語」という
テロップが掲げられるが、実は科学史に残る記録では、到達
高度11277mは本作に描かれたものが唯一無二で、その記録は
今も破られていないのだそうだ。
しかしその際のパイロットは男性で本作のような未亡人は存
在していない。ただし当時のパイロットに女性がいたことは
事実のようで、本作はその辺の事実関係を巧みに組み合わせ
たフィクションということになるものだ。
正直に言って高度10000mを目指しているのに防寒具がなかっ
たり、凍結したロープを素手で掴むなどは、当時の科学常識
でもあり得ない話と思ったが、その辺は監督と脚本家の創造
に拠るのだろう。
でもまあもう少しは科学的に作って欲しかったという感じは
するが、ハラハラドキドキのアドヴェンチャーというところ
では巧みに作られたエンターテインメント作品と呼べるもの
になっていた。
また映画に登場する気球は実物大に再現されたもので、実際
にガスを入れて飛行も可能とのこと。その壮大な映像も楽し
める作品だ。

公開は2020年1月17日より、東京はヒューマントラストシネ
マ有楽町他で全国ロードショウとなる。

この週は他に
『ジュディ 虹の彼方に』“Judy”
(1969年に47歳で亡くなったハリウッド女優・歌手の生涯を
描いた舞台劇からの映画化。1939年『オズの魔法使い』の主
演で一躍人気者になった少女は、その容姿を維持するために
薬物の投与を含む過酷なダイエットを強いられ、それが精神
を蝕んでゆく。そんな初期の出来事が後年のロンドン公演で
のパフォーマンスにオーヴァーラップされて、時代に翻弄さ
れた女優の姿が描かれる。出演はレネー・ゼルウィガー。他
にルーファス・シーウェル、マイクル・ガンボンらが脇を固
めている。監督はロンドンの舞台でシェークスピア劇などを
手掛けるルパート・グールド。初期のミッキー・ルーニーと
の交流や、途中にちょこっとライザ・ミネリが登場するなど
ファンには嬉しい仕掛けもあるが、何と言っても見どころは
ゼルウィガーのパフォーマンス。ガーランドの歌唱を自身の
声で再現した舞台のシーンは見事だった。公開は2020年3月
6日より、全国ロードショウ。)

『新卒ポモドーロ』
(2019年9月紹介『その瞬間、僕は泣きたくなった』の一編
を担当した井上博貴脚本、監督で、「就活」をテーマにした
作品。井上監督は2019年『40万分の1』という作品で弱小大
学の学生が直面する「就活」の困難を描いたようだが、本作
では逆に地方の中小企業が新卒生を獲得する難しさを描く。
そこにはかなり現実的なノウハウも含む作品だ。主人公の務
め先は福岡で急成長のITヴェンチャー企業だが、幹部社員
が独立して同業会社を立ち上げ、顧客を奪われる。そこで新
卒を獲得して巻き返しを図ろうとするが、優秀な人材は躍進
中の会社に向いがちだ。そこで主人公らが行った秘策は…。
出演は2003‐04年のテレビドラマ『美少女戦士セーラームー
ン』でタキシード仮面役の渋江譲二と、2018年5月紹介『ク
ジラの島の忘れもの』などの大野いと。因に題名の片仮名は
イタリア語でトマトこと、物語にはトマト農家が関わるもの
だ。公開は2020年2月21日より、全国ロードショウ。)

『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』
(1948年に新聞連載されて絶筆となった太宰治の未完の小説
を2015年にケラリーノ・サンドロヴィッチ脚本演出で上演。
翌年の第23回読売演劇大賞で最優秀作品賞、最優秀女優賞、
優秀演出家賞を受賞した舞台から、2009年7月紹介『サマー
ウォーズ』などの奥寺佐渡子が脚色、2010年3月紹介『孤高
のメス』などの成島出監督で映画化した作品。舞台で受賞し
た小池栄子の主演で、大泉洋、水川あさみ、橋本愛、緒川た
まき、木村多江、戸田恵子、濱田岳、松重豊らが共演する。
表向きは雑誌編集者だが裏稼業で荒稼ぎ、妾が10人いるとい
う男が女たちと別れようとし、その方策として美人を連れて
各女性の許に別れ話に向かう顛末が面白おかしく描かれる。
2019年7月14日題名紹介『人間失格』などに比べるとかなり
あっけらかんとした作品で、入水が狂言のやり損いという説
も納得できる感じがした。公開は2020年2月14日より、東京
は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』
                  “地球最后的夜晩”
(2015年の長編デビュー作『凱里ブルース』が高く評価され
た中国第8世代と呼ばれる新鋭ビー・ガン監督の第2作。し
かも映画の後半60分が3Dでワンシークエンスショットとい
うトリッキーな作品。長く故郷を離れていた主人公が父親の
葬儀のために帰郷する。しかしそこにはマフィアに殺された
幼馴染の記憶や、本名も知らず憧れた女性の面影が残ってい
た。そんな中で記憶と夢、過去と現在が交錯する一夜の旅が
始まる。ワンショットのシーンでは空中浮遊などもあって、
一発勝負の撮影には周到な準備も必要だったと想像させる。
ただ出演者にはかなりの距離の短時間での移動もあったよう
で、その辺には微笑ましいものもあった。因に監督はタルコ
フスキーの『ストーカー』を観て「こんな映画もあるのだ」
と思い映画の道に進んだとのことで、それは納得できる作品
だった。公開は2020年2月28日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ渋谷他で全国ロードショウ。)

『嘘八百 京町ロワイヤル』
(2017年10月8日題名紹介『嘘八百』の続編。前作では茶の
湯の聖地とされる大阪・堺を舞台に、古物商と陶芸家が2人
を陥れた大御所鑑定士を相手に「幻の利休の茶器」を贋作し
て勝負を挑んだが、今回は京都の町を舞台に利休の茶の湯を
継承した武将茶人・古田織部の幻の茶器を巡り、政権も加担
する巨大な闇に挑戦する。出演は中井貴一、佐々木蔵之介、
友近、森川葵、木下ほうか、坂田利夫、前野朋哉ら前作から
のキャストに加えて、広末涼子、加藤雅也、竜雷太、山田裕
貴が新たに登場する。監督は前作と同じ武正晴、脚本も今井
雅子、足立紳が担当した。物語は力を持たない弱者が巨悪に
対抗するものでそれなりのカタルシスはあるが、結末は今回
もかなり大掛かりな作戦で、折角の中井、佐々木の共演なら
もう少し小洒落た展開もできるのではないかな。そんな気分
にはなった。公開は2020年1月31日より、東京はTOHOシネマ
ズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『初恋』
(2017年2月紹介『無限の住人』などの三池崇史監督が窪田
正孝を主演に迎えた自身初の恋愛映画と称する作品。天涯孤
独で天才的センスを持つ新進ボクサーが初めてのKOを食ら
い、医師から脳障害と余命を宣告される。そんな気分で街を
ふらつく主人公は男に追われていた少女を助けるが…。三池
監督は2019年9月紹介『その瞬間、僕は泣きたくなった』で
も素敵な恋愛ドラマを描いていたが、本作は初の長編という
ことだろう。とは言え全体は逃亡者型の恋愛映画でありなが
ら、後半にはしっかりとした三池監督らしさもあり、1本で
2度楽しめる作品になっている。しかもどちらも見事な演出
を楽しめる作品だ。共演は大森南朋と2019年11月17日題名紹
介『ファンシー』でも共演の小西桜子。他に染谷将太、ベッ
キー、三浦貴大、内野聖陽、村上淳、滝藤賢一、ベンガル、
塩見三省らが脇を固めている。公開は2020年2月28日より、
全国ロードショウ。)

『架空OL日記』
(バカリズムの原作脚本主演で2017年に放送され、同年度の
向田邦子(脚本)賞を受賞したテレビシリーズの映画版。西武
線練馬駅前にある銀行を舞台に、更衣室でのOLたちの他愛
ない会話やその周囲で起きる様々な出来事が綴られて行く。
そこには女性の立場に基く辛辣な意見もコメディにして巧み
に描かれている。元々は作者の妄想ブログだそうで、つまり
は男目線の想像のお話。しかしそれが意外とOLの共感を呼
んだのだそうだ。正直に言って僕も男性だから男同士の妄想
というところでは理解したが、女性にも支持されたというの
は凄いし、男女を問わず判るお話のようだ。共演は夏帆、臼
田あさ美、佐藤玲、山田真歩、三浦透子らのテレビのレギュ
ラー陣に加えて、シム・ウンギョン、坂井真紀、志田未来、
石橋菜津美らが登場する。監督はテレビ版も手掛けた住田崇
の映画デビュー作。公開は2020年2月28日より、東京はTOHO
シネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
          “The Man Who Killed Don Quixote”
(2003年2月紹介のドキュメンタリー『ロスト・イン・ラ・
マンチャ』でも描かれたテリー・ギリアム監督作品が、19年
の歳月を経て遂に完成された。出演者も変わり、コンセプト
も多少変更されたようだが、現代と過去を繋ぐ摩訶不思議な
物語が展開される。それは目の前に立ちはだかる障害に果敢
に挑戦する男の物語だ。しかも本作では、背景には映画製作
に関る出来事や学生時代の夢など様々な要素が絡まり、19年
前の出来事も髣髴させる。そんな中にドキュメンタリーでも
紹介された3巨人のシーンがそのまま再現されていたのは嬉
しかった。出演はアダム・ドライバー、ジョナサン・プライ
ス。他にステラン・スカルスガルド、オルガ・キュリレンコ
らが脇を固めている。物語には2019年10月27日題名紹介『ラ
ストムービー』を思い出させる部分もあって興味深かった。
公開は2020年1月24日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他
で全国ロードショウ。)

『屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ』
               “Der goldene Handschuh”
(ベルリン、カンヌ、ヴェネチアの3大映画祭での主要賞の
受賞を誇る2017年7月2日題名紹介『50年後のボクたちは』
などのファティ・アキン監督が、1970年代に実在した連続殺
人鬼を描き、2019年ベルリン国際映画祭のコンペティション
に出品された作品。実話には基づくものの映画はドイツ人コ
メディアンのヘインズ・ストランクが2016年に発表した小説
を原作としており、かなりの改変はあると思える。それにし
てもかなりえげつない話で、こんなことが本当に起きてしま
う周囲の状況などは、今も昔もあまり変わらないのかな? 
恐ろしい話だ。それにアキン監督が敢えて今の時代にこれを
映画化する意味を考えてしまうところで、もちろん事実とし
て記録することは意義のあるとは思うのだが、他にも何か思
うところがあるのかもしれない。他国民の我々には判らない
のかもしれないが。公開は2020年2月14日より、東京は新宿
武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2019年12月02日(月) ラスト・C、37セカ(母との、ロニートとE、ぼくらの、男と女、イーディ、ビッグ・LF、PMC、さよならTV、転がるB、ソン・L、ミッドS、前田)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ラスト・クリスマス』“Last Christmas”
本作の試写は10月に見せて貰ったが、12月2日まで情報公開
が制限されていたため、ようやく今回掲載させてもらう。
2018年10月紹介『ジョニー・イングリッシュ』などの女優エ
マ・トムプスンが原案、脚本、出演を務める。ワム!の名曲
をモティーフにしたラヴコメディ。
主人公はクリスマス飾りを年中売っている店の販売員。女店
主はサンタを名乗り、彼女はエルフの衣装で接客している。
そんな彼女の態度は適当で優秀な店員ではなかったが、店主
は彼女を大切に見守っているようだ。
ところがクリスマスの近づいたある日、彼女は店の外に立つ
平凡な身なりの若者に目を留める。彼の容姿は決して気に入
るものではなかったが、バイク便の配達員という彼は、彼女
を町のいろいろな場所に連れて行ってくれる。
そして彼女が抱えるいろいろな悩みにも適切な答えを与えて
くれたが、2人の距離は決してそれ以上に近づくことはなか
った。それは2人が互いに相手には言えない秘密を抱えてい
たから…。

トムプスンはジェーン・オースティン原作の『いつか晴れた
日に』で1996年のアカデミー賞脚色賞受賞の実績を持つが、
本作では自らの原案でファンタスティックな要素もある物語
を巧みに紡いでくれた。
主演は2015年7月紹介『ターミネーター:新起動/ジェニシ
ス』でサラ・コナーを演じたエミリア・クラークと、2018年
9月2日題名紹介『クレイジー・リッチ!』などのヘンリー
・ゴールディング。他にミシェル・ヨーと脚本のトムプスン
らが脇を固めている。
共同原案は『いつか晴れた日に』の共演者でもあるグレッグ
・ワイズ。共同脚本にはロンドンとケンブリッジシャーを拠
点とするライヴアーティストのブライオニー・キミングスが
参加している。
監督は2016年7月17日題名紹介『ゴーストバスターズ』や、
2012年4月紹介『ブライズメイズ』などのポール・フェイグ
が担当した。
ワム!の曲名が「最後のクリスマス」ではなく、「去年のク
リスマス」であることは知られるところだが、その歌詞にこ
んな意味があるとは、歌っていたワム!自身も知らなかった
のではないかな。
そんな歌詞に見事な捻りを利かせて、なお且つ情感に溢れた
素敵な物語が展開される。これにはワム!も文句のつけよう
がないというところだろう。観終えてほっと心が和む、そん
な感じの作品だ。
そして本作は、2016年12月25日に他界した元ワム!のジョー
ジ・マイクルの業績を讃える作品にもなっており、劇中には
ワム!及びマイクルの多数の楽曲が挿入され、中には未発表
だった作品も含まれている。

公開は12月6日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国
ロードショウとなる。
今回は本作のために更新日を変えました。

『37セカンズ』
脳性麻痺で普段の生活でも車椅子を使うほどに身体は不自由
だが、しっかりと前を向いて生きている女性の姿を、実際に
その状況にある女性が演じたドラマ作品。
主人公は少女漫画家のアシスタントを務める車椅子の女性。
実はその漫画家の作品のほとんどは彼女が描いていたが、ア
イドル並みの容姿を持つ漫画家の作品として発表され、サイ
ン会にも長蛇の列ができるほどの人気になっている。
そんな2人の関係は編集者も彼女の家族も知らないものだっ
たが…。彼女は自分の名前で作品を出したいと思い始め、編
集者に新作の原稿を手渡す。しかしその評価は「良いけど、
先生の作品に似過ぎている」だった。
そんな時、ふと手にしたアダルト雑誌の編集部に電話を掛け
た彼女は、編集長から「実体験の基づかない表現は、読者に
感動を与えられない」と言われてしまう。そこで夜の街にさ
迷い出た彼女の前に新たな世界が広がり始める。

企画、脚本、監督とプロデュースは、大阪出身でロサンゼル
スを拠点に活動し、短編では数多くの受賞歴を持つHIKARIの
長編デビュー作。企画はサンダンス映画祭とNHKが主宰の
脚本ワークショップに出品され、審査を経て実現された。
主演は、実際に車椅子生活を余儀なくされている100人以上
のオーディションから選ばれた佳山明。監督は当初は実績の
ある女優で撮影するつもりだったが、企画が動き出してから
考えを変え、全国の施設などに通知して選考を実施した。
共演は、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、車椅子の風俗店
評論家・熊篠慶彦。さらに萩原みのり、芋生悠、渋川清彦、
宇野祥平、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏ら
が脇を固めている。
健常者が脳性麻痺の人物を演じる作品では、池脇千鶴主演の
2003年10月紹介『ジョゼと虎と魚たち』や、ムン・ソリ主演
の2004年1月紹介『Oasis』などが思い浮かぶが、それ
らが描いた悲壮感に比べると、時代も変わったと感じる。
とは言いながら依然として差別があることも事実な訳で、本
作はそれらが巧みに描き出されたとも言えるものだ。それに
してもオーディションで選出とは言っても素人の出演者から
ここまでの演技を引き出した手腕にも敬服する。
その一方で本作のタイトルは主演の佳山明の現実に基づくも
のだそうで、映画後半の心情を吐露するシーンなどは、彼女
が選ばれたことで起きた見事な相乗効果と言えるものだ。そ
れを掴み出せたことも素晴らしい。

公開は2020年2月7日より、東京は新宿ピカデリー他にて全
国ロードショウとなる。

この週は他に
『母との約束、250通の手紙』“La promesse de l'aube”
(フランス外務省に勤務して各国の大使館参事官や領事など
を務め、その後に作家となって2度のゴンクール賞を受賞。
さらにジーン・セバーグと結婚して映画監督なども手掛けた
ロマン・ガリの生涯を描いた作品。現在のリトアニアに生ま
れ、14歳の時に母子でフランスのニースに移住。そんな母親
は息子が幼い頃から「お前は大使になり、作家になる」と言
い続ける。それは軍役などで家を離れても母親は手紙で息子
を励まし続けた。そして息子は母の言葉を天啓のように人生
を歩むが…。強烈な親子愛の物語。出演は2014年6月15日付
「フランス映画祭2014」で紹介『イヴ・サンローラン』など
のピエール・ニネと、2018年8月5日題名紹介『嘘はフィク
サーのはじまり』などのシャルロット・ゲンズブール。ガリ
の原作に基づく脚本と監督は2014年“Le dernier diamant”
などのエリック・バルビエ。公開は2020年1月31日より、東
京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』“Disobedience”
(2017年12月24日題名紹介『ナチュラルウーマン』でベルリ
ン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)を受賞、オスカー外国語映画賞
にも輝いたチリ出身セバスチャン・レリオ監督が、レイチェ
ル・ワイズ&マクアダムスをW主演に迎えて、イギリスの女
流作家ナオミ・オルダーマンの自伝的デビュー作を映画化。
厳格な正統派ユダヤ人社会に育った女性2人は互いに惹かれ
合うが社会に受け入れられず、1人は信仰とユダヤ教指導者
の父を捨てて故郷を離れる。そしてもう1人は閉鎖的社会の
中で結婚し生きてきたが…。指導者の死で娘が帰郷し、次期
指導者になる夫との間で関係が揺れ動く。部外者の目で、こ
こまでくるとユダヤ教もカルトだなという思いもする。まあ
他人の信仰に口を挿む気はないが、監督は前作でもトランス
ジェンダーを扱って、性的マイノリティへの思い入れは深い
ようだ。公開は2020年2月7日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)

『ぼくらの7日間戦争』
(1988年に当時15歳の宮沢りえ初主演で話題になった宗田理
原作・実写作品のアニメーションによるリメイク。オリジナ
ルと同様に親や学校の支配に反発する子供たちが廃工場に立
て籠もり、大人たちと対決する。原作には数10篇の続編があ
るようだが、映画化の続編は1作のみ。それは恐らくは前作
を凌駕するような物語の展開を生み出せなかったというとこ
ろかな? その点で本作は物語をリセットし、さらにSNS
などの当時はなかった要素を織り込むことで、戦車を出さな
くてもどちらかというとリアルなタッチで楽しめる作品に仕
上げている。特に廃坑となった石炭工場という舞台設定は、
いろいろな思いも込められている感じで良い展開だった。声
優は北村匠、芳根京子。それに宮沢りえがファンにはうれし
い役柄で登場する。監督はテレビで『ドラゴンボール超』の
絵コンテなどを担当した村野佑太の劇場デビュー作。公開は
12月13日より、全国ロードショウ。)

『男と女 人生最良の日々』
         “Les Plus belles années d'une vie”
(2019年6月9日付「フランス映画祭2019」で紹介の作品が
劇場公開となり、再度試写を鑑賞した。前回の時は予備知識
を入れずに観ていたもので、それをいろいろな状況を知った
上で観直すと内容の理解も深まるものだ。特に後半挿入され
る『ランデヴー』(邦題)の映像は、パリ市内の名所を巡って
モンマルトルまでの道のりが手に取るように理解でき、本当
に素晴らしかった。そして主人公2人の生き様も、知識を入
れて観ると新たな感慨にも浸れる。正直に言って僕は1966年
の第1作を中学生の時にロードショウで観ているもので、そ
んな自分自身のことにも思いが及んだ。因に2019年10月6日
題名紹介『男はつらいよ お帰り 寅さん』のプレス資料で山
田監督は「50年間も同じ配役で作った監督はいないだろう」
とコメントしていたが、本作は53年目。1987年の『�供戮發�
るからシリーズの要件も満たしているものだ。本作の公開は
2020年1月31日より、全国ロードショウ。)

『イーディ、83歳 はじめての山登り』“Edie”
(痴呆症の夫の介護をようやく終えた高齢女性が、父親との
果たせなかった夢を追ってスコットランド高地にあるスイル
ヴェン山に挑戦する。実話に基づく作品だが、映画は主人公
の危機に謎の狩人が登場したり、かなり脚色されているよう
だ。出演は2009年5月紹介『縞模様のパジャマの少年』など
のシーラ・ハンコック。1933年生まれの女優が2017年製作の
本作の主人公に挑戦した。他に2016年11月紹介『ファンタス
ティック・ビースト』などのケヴィン・ガスリーらが脇を固
めている。監督は2009年12月紹介『ミュータント・クロニク
ルズ』などのサイモン・ハンター。旅の出発点がインヴァネ
スで、50年ほど前にネス湖観光のため同じ駅に降り立った自
分には変わっていない印象が嬉しかった。僕も周遊のバスに
乗り遅れて往生したが、地元の人に助けられて観光もできた
ものだ。公開は2020年1月、東京はシネスイッチ銀座他にて
全国順次ロードショウ。)

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』
              “The Biggest Little Farm”
(アニマルプラネットなどのテレビ番組の製作者、監督とし
て数多くの作品を手掛けてきたジョン・チェスターが、料理
研究家の妻と愛犬のためにロサンゼルスから北に車で1時間
ほどの場所に、東京ドーム17個分に相当する土地を購入。そ
こで理想のオーガニック農園を作り上げて行く8年間を記録
したドキュメンタリー。元はと言えば殺処分寸前の犬を保護
したことに始まり、その犬の吠え声のために都心のアパート
を追い出され、やむなく郊外に居を構えることになる。そこ
は元はリンゴ園ですでに廃園となっていたのだが、その場所
に自然との共存を目指す新たな思想に基く農園が作られて行
く。それは家畜を襲うコヨーテまでもが共存のサークルに取
り込まれた究極の農園。過去には遺伝子組み換えや大量の農
薬散布などのアメリカ農業の歪んだ実態を観てきた目には、
正に目から鱗の作品だった。公開は2020年3月、東京は新宿
ピカデリー他で全国順次ロードショウ。)

『PMCザ・バンカー』“PMC: 더 벙커”
(時代背景は2024年。アメリカ大統領が北朝鮮の非核化を目
論むも交渉に失敗。そのため支持率が低下する中で大統領選
挙が行われているという状況を背景にしたアクション作品。
主人公は民間軍事会社(private military company)の作戦隊
長。実はCIAの裏仕事に携わっているが、それは米国にい
る家族を守るためでもある。そんな主人公に軍事境界線の地
下要塞(バンカー)で北朝鮮の要人を確保する作戦が命じられ
る。それは比較的容易な作戦のはずだったが…。作戦の最中
に北朝鮮がミサイルを発射し、関係各国の思惑が交錯し始め
る。脚本と監督は2013年『テロ,ライブ』などのキム・ビョ
ンウ。出演は監督の前作にも主演した2019年4月紹介『神と
共に』などのハ・ジョンウ。かなり荒唐無稽な作品だが、近
未来物ということで、自走する遠隔カメラなどのギミックは
面白かった。公開は2020年2月28日より、東京はシネマート
新宿他で全国順次ロードショウ。)

『さよならテレビ』
(2019年1月13日題名紹介『眠る村』に続く東海テレビ制作
ドキュメンタリー。2011年5月紹介『青空どろぼう』以降、
様々なテーマを取り上げてきた作品群だが、今回はその視線
を自らに向け、実は前代未聞の放送事故とされるある番組に
関った人たちが描かれる。その顛末は本編を見ていただきた
いが、それが何年もたった今も尾を引き摺っている現実には
震撼とさせられる思いもした。その一方でマスコミの基幹で
あるはずの報道が契約社員などの云わば外部に頼らざるを得
ない状況や、「働き方改革」で時間外の取材も思うように行
かなくなっている現実など、安倍政権はこれを狙ってやった
のかとも思わせる実態が描かれる。そこには多少は身内に甘
いかなと思わせる描写もあるが、その辺は人間味として許容
もできるものだ。公開は2020年1月2日より、東京はポレポ
レ東中野他で全国順次ロードショウ。なお本作公開を記念し
て過去の長編11作品及び中編4作品が、年末12月14日‐28日
に同会場で連続上映される。)

『転がるビー玉』
(ファッション誌「NYLON JAPAN」の創刊15周年記念で製作
された東京・渋谷が舞台の青春ドラマ。試写会などでかなり
頻繁に出向く渋谷は変貌の最中。そんな街で再開発で取り壊
し予定のアパートにルームシェアで暮らす3人の若い女性が
主人公。とは言うものの描かれる彼女たちの姿は、今の若い
女性では左程目新しいものでもないが。それが現代を描写し
ていることにはなるのかな。僕自身は学生時代から50年以上
も渋谷に通い続けて最近の変貌ぶりには目を見張るが、この
映画がそれを東京在住者以外にも判るように表現できていた
かどうか。今の渋谷を記録しておくという意味でも、もう少
し深層まで描いて欲しい感じもした。出演は2018年4月15日
題名紹介『虹色デイズ』などの吉川愛、上で紹介『37セカン
ズ』などの萩原みのり、舞台女優の今泉佑唯。公開は2020年
1月31日から渋谷ホワイトシネクイントにて先行上映の後、
2月7日より全国順次ロードショウ。)

『ソン・ランの響き』“Song Lang”
(1980年代のサイゴンが舞台のヴェトナム映画。主人公は高
利貸の取り立てをやっているヤクザの男性。実はカイルオン
と呼ばれる大衆演劇で伴奏音楽の演奏者の息子だったが、父
親に反発してヤクザの道に走ったのだ。そんな主人公が町で
カイルオンの役者と出会い、酒やヴィデオゲームなどで交流
を重ねる内に昔の自分を蘇らせて行く。そして見事な演奏も
披露し、相手の役者も彼にカイルオンの世界に戻ることを勧
めるが…。出演は本作で2018年東京国際映画祭の新人俳優賞
を受賞したリエン・ビン・ファットと、元アイドルグループ
でリーダーを務めていたアイザック。脚本と監督は短編映画
で評価されて本作で長編デビューのレオン・レ。サイゴンの
解放は1975年だから時代背景は共産党の政権下の物語だが、
そのような政治色はあまり感じられない。どちらかと言うと
普遍的な青春ドラマだ。公開は2020年2月22日より、東京は
新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『ミッドサマー』“Midsommar”
(2018年10月紹介『ヘレディタリー/継承』に続くアリ・ア
スター脚本、監督による上映時間147分のデビュー第2作。
大学で人類学と民間伝承を研究する男子学生が、90年に1度
開かれるというスウェーデンの人里離れたコンミューンで行
われる夏至の祝祭に招かれ、その旅に同行した女友達と共に
恐怖に陥れられる。それは太陽の沈まない白夜の中で眠られ
ぬままの悪夢だった。出演は2019年9月15日題名紹介『ファ
イティング・ファミリー』などのフローレンス・ピューと、
同月紹介『KIN/キン』などのジャック・レイナー。他に
2013年12月紹介『なんちゃって家族』などのウィル・ポール
ター、2017年7月9日題名紹介『パターソン』などのウィリ
アム・ジャクスン・ハーパーらが脇を固めている。アスター
監督の前作も相当変だったが、本作もそれに上回って不思議
な描写が繰り広げられる。公開は2020年2月21日より、東京
はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『前田建設ファンタジー営業部』
(日本のダム建設をリードする実在の建設大手・前田建設工
業株式会社が、2003年からWEB上で展開しているテレビアニ
メなどの設定に基づく架空の建設計画を基に、本来なら何の
役にも立たない事業に奮闘するサラリーマンの姿を描いた作
品。物語は第1弾として検討された「マジンガーZ/光子力
研究所格納庫兼プール」の「プロジェクト」に基づき、最初
は乗り気でなかった若者が徐々に引き込まれて行く過程が描
かれる。出演は高杉真宙、上地雄輔、岸井ゆきの、本多力、
町田啓太。他に山田純大、鈴木拓、水上剣星、高橋努、濱田
マリ、鶴見辰吾、六角精児、小木博明らが脇を固めている。
脚本は、2005年『サマータイムマシン・ブルース』や2012年
2月紹介『FLY!〜平凡なキセキ〜』などを手掛けたヨー
ロッパ企画の上田誠。監督は2018年8月5日題名紹介『3D
彼女 リアルガール』などの英勉が担当した。公開は2020年
1月31日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二