井口健二のOn the Production
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2019年02月24日(日) ハンターキラー(Bの戦場、嵐電、僕はイエス様、空母いぶき、作兵衛さん、賭ケグルイ、さよならくちびる、ビル・エヴァンス、ベン・イズB)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ハンターキラー 潜航せよ』“Hunter Killer”
『ワイルド・スピード』シリーズのニール・H・モリッツと
『エクスペンダブルズ』シリーズのジョン・トムプスンとい
うアクション映画の名物プロデューサーが手を組んだ原子力
潜水艦が主な舞台の架空戦記ドラマ。
舞台は北極海、ロシア領コラ半島の沖合でロシア潜水艦を秘
かに追尾していた米海軍の原子力潜水艦が行方不明になる。
その捜索に、国防総省は下士官上がりという異例な経歴の艦
長が率いる攻撃型潜水艦アーカンソーを派遣するが…。
コラ半島のロシア基地にはロシアの大統領が訪問中で、基地
にいたロシア国防相の陰謀が発覚する。その事態に米国防総
省はNavy SEALsを潜入させて陸海からの作戦を展開。しかし
それは米露全面戦争の危険を孕んだものになる。

出演は2013年4月紹介『エンド・オブ・ホワイトハウス』な
どのジェラルド・バトラー。2012年2月紹介『裏切りのサー
カス』などのゲイリー・オールドマン。本作が遺作になった
2009年10月紹介『ミレニアム』などのミカエル・ニクヴィス
ト。
他にグラミー賞歌手で2013年10月紹介『グランド・イリュー
ジョン』などのコモン。2018年12月紹介『グリーンブック』
などのリンダ・カーデリーニ。2002年『007ダイ・アナザ
ー・デイ』などのトビー・スティーヴンスらが脇を固めてい
る。
監督は南ア出身で、過去には短編映画やCM、ミュージック
ヴィデオなどで多くの賞に輝くドノヴァン・マーシュ。本作
は2014年のデビュー作に続く長編監督第2作とのことだ。
原作は元ジャーナリストのドン・キースと、元海軍で原子力
潜水艦の艦長だったというジョージ・ウォーレスの共著によ
る“Firing Point”。
実は今週はもう1本、日本製の架空戦記物も観ているが、何
というか実戦を体験している連中の作るリアリティは半端な
いものに感じる。特にそこに流れる敵味方を超えた人間ドラ
マはシミュレーションゲームとは異なるものだ。
その一方で物語前半の下降シーンでは、本当に床面の傾いた
セットで撮影が行われており、俳優たちの一様に傾いた姿勢
が正にこの通りなのだと思わせてくれる。これで一気に臨場
感の増す思いがした。
さらに海中での救出作戦など、こういうことが現実に行われ
るのだというリアルさが、何とも心を踊らされる作品になっ
ている。まあ物語の展開自体はかなり荒唐無稽ではあるのだ
が。映画的には巧みに描かれた作品だ。

公開は4月12日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『Bの戦場』
(フジテレビ所属で多くの人気ドラマを手掛けた並木道子監
督の劇場映画デビュー作。ゆきた志旗原作シリーズ小説を、
お笑いコンビ「ガンバレルーヤ」よしこの主演、吉本興業の
製作で映画化。主人公は自他共に認める絶世のブス。そんな
彼女は「結婚式のお姫様にはなれないけれど、お姫様を作る
魔女にはなれる」という気持ちでウェディング・プランナー
をしていたが…。その職場にイケメンの上司が登場、しかも
彼女に交際を申し込む。その上司は「ブス専」を自称、彼に
とって理想の女性だというのだ。その一方で出入りの生花業
者も彼女に交際を申し込み、想定外の三角関係が発生する。
共演は速水もこみちと、2017年3月12日題名紹介『猫忍』な
どの大野拓朗。他に有村藍里、おのののか、山田真歩らが脇
を固めている。脚本はお笑いユニット「ザ・プラン9」の久
馬歩。物語の緩急も良い作品だ。公開は3月15日より、東京
はユナイテッド・シネマ豊洲他で全国ロードショウ。)

『嵐電』
(京都四条大宮と嵐山を結ぶ京福電気鉄道・嵐山本線を背景
に、旅行作家とその妻、太秦の俳優とケータリングの店員、
それに修学旅行の高校生らで展開される、少しファンタシー
の要素もある作品。描かれるのは帷子ノ辻。本線と北野線の
分岐駅が主な舞台となる。とは言うものの、背景などが関東
の人間には少し判り難いかな。逆に江ノ電との絡みは結末の
音響などで理解できたが…。でもまあそれはそれで観る方が
納得すれば良い話ではある。出演は2018年11月18日題名紹介
『赤い雪』などの井浦新。2018年6月10日題名紹介『きらき
ら眼鏡』に出ていた大西礼芳と金井浩人。脚本と監督は『き
らきら眼鏡』の出演俳優でもある鈴木卓爾が担当した。鈴木
が教鞭も執る京都造形芸術大学映画学科・北白川派の作品。
同派からは以前に『黄金花』『カミハテ商店』などを紹介し
ているが、本作はその第6弾だそうだ。公開は初夏に東京は
テアトル新宿他でロードショウ。)

『僕はイエス様が嫌い』
(主人公が転校した雪深い田舎町の小学校はミッション系で
毎朝の礼拝が決まりだった。そんなルールに最初は戸惑う主
人公だったが、やがてサッカーのうまい友達もできて慣れ始
めたころ、礼拝で目を開けた彼の前に小さなイエス様が現れ
る。その後もイエス様はいろいろなところに現れて、ちょっ
とした奇跡も起こしてくれるが…。脚本、監督、撮影、編集
は短編映画で注目された新鋭奥山大史。彼の長編デビュー作
の本作は、世界各地の映画祭の受賞も果たしている。出演は
子役の佐藤結良、大熊理樹。それに2015年4月紹介『新選組
オブ・ザ・デッド』などのチャド・マレーン。小さなイエス
様などのVFXは良くできていて、話も面白いのだが、全体
として何が言いたいのかよく判らない。特に後半の展開は、
これでない方が監督の考えを明確にできたと思うのだが。映
画を見た目で語りたいタイプの人なのかな? 公開は初夏に
東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国順次ロードショウ。)

『空母いぶき』
(かわぐちかいじ原作コミックスの映画化で、今回表題の作
品と同様の架空戦記ドラマ。自衛隊初の航空母艦いぶき率い
る護衛艦群が、日本最南端の島を占拠した国籍不明の軍隊と
対峙する。原作は尖閣列島、中国という設定のようだが、映
画化ではいろいろ配慮されている。そこに好戦的な防衛相が
いる辺りは表題作も同じだが、さらに外交交渉を絡める点は
本作の方が現実的かな。ただ端々の局面の描写では表題作の
方にリアルさを感じる。その辺が微妙なところだ。因に本作
は、かわぐちかいじ原作では初の実写映画化だそうだ。出演
は西島秀俊、佐々木蔵之介。他に本田翼、小倉久寛、高嶋政
宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人。さらに藤竜也、村上淳、
佐藤浩市、中井貴一、斉藤由貴らが脇を固めている。監督は
2009年『沈まぬ太陽』などの若松節朗。なお脚本には『亡国
のイージス』などの作家の福井晴敏が企画で参加している。
公開は5月24日より、全国ロードショウ。)

『作兵衛さんと日本を掘る』
(2011年にユネスコ記憶遺産に認定された「炭鉱記録画」の
作者・山本作兵衛を描いたドキュメンタリー。1892年福岡県
生まれの山本は1906年に炭鉱夫となり、以来筑豊地区の幾多
の炭鉱を転々とし、様々な苦楽を炭鉱の人々と共に過ごして
きた。そんな山本が63歳で炭鉱の警備員に転職したことから
往時の生活を伝えようと絵を描き始める。そして92歳で亡く
なるまでに2000枚近い記録画を描いたとされる。そんな絵描
きの経歴とそれに並行する筑豊炭田の歴史が、山本が残した
記録画と何冊もの日記、さらに多くの証言と共に語られる。
「炭鉱記録画」自体は、他の筑豊炭田の歴史を描いたドキュ
メンタリーでも取り上げられていたが、その作者自身を描い
た作品は初めてのようだ。そこには炭鉱に暮らした庶民の姿
も見えてくる。監督はテレビドキュメンタリーなどを多数手
掛ける熊谷博子。公開は5月25日より、東京はポレポレ東中
野他で全国順次ロードショウ。)

『賭ケグルイ』
(累計発行部数500万部を超えるという河本ほむら原作コミ
ックスの実写映画化。すでにMBS・TBS系列でのテレビ化もあ
る物語が、主なキャストも引き継いで劇場に登場する。校内
の序列がギャンブルで決定されるという学園を舞台に、転校
してきたギャンブル狂の少女が頭角を現し、生徒会と対決。
そこにはギャンブルに反対する勢力も存在するが…。この物
語に浜辺美波、高杉真宙、福原遥、伊藤万理華、池田エライ
ザ、中村ゆりか、森川葵らのキャストが揃う。監督は2018年
8月5日題名紹介『3D彼女』などの英勉。ギャンブル依存
症が問題になっている時代に何ともはやという感じではある
が、行われるギャンブルはいずれもオリジナルなようで、い
わゆる賭博ではないのが見識かな。さらに映画の展開ではギ
ャンブルだけでなく、アクションもそれなりに披露されて緩
急が付けられている。公開は5月3日より、東京はTOHOシネ
マズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『さよならくちびる』
(2018年12月23日題名紹介『サムライ・マラソン』などの小
松菜奈と、同日紹介『チワワちゃん』などの門脇麦のW主演
で、人気ミュージシャンの秦基博、あいみょんの楽曲が全編
を彩る音楽ロードムーヴィ。2人は職場で知り合い、デュオ
を組んで路上で歌い始める。そんな2人をサポートするのは
昔は人気バンドにいたという『チワワちゃん』などの成田凌
扮するローディ兼マネージャの男だったが…。3人の関係が
微妙になって行き、ついに最後のツアーが始まってしまう。
原案・脚本・監督は2004年12月紹介『カナリア』などの塩田
明彦。主演の2人は自らギターを弾いて歌っているようで、
特にあいみょんの楽曲が若い女性の心を掴みそうだ。そして
2人の気持ちを歌に込める秦基博プロデュースの主題歌が、
見事に映画を締めくくる。少し掟破りな感じもするが、その
無理を押し込める演出も見事だった。公開は5月31日より、
全国ロードショウ。)

『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』
            “Bill Evans/Time Remembered”
(1980年に51歳で他界したジャズピアニストの生涯を追った
ドキュメンタリー。アメリカ東部の身分を持つ家に生まれ、
幼い頃から兄と共に音楽を学び、10代でジャズを聴いてアマ
チュアバンドでの演奏も開始する。1950年に大学を卒業した
翌年から兵役で朝鮮戦争に従軍するが、陸軍バンドでの演奏
活動で前線には出なかった。しかし兵役中に生涯の悪癖とな
る麻薬に染まってしまう。そして1954年に退役、ジャズの中
心地ニューヨークで伝統、前衛を問わず優秀なピアニストと
して頭角を現して行く。頭を前に倒した独特な演奏スタイル
で多くのミュージシャンと共演、また自ら率いるバンドでは
多くの名曲、名演奏で一世風靡するエヴァンスだが、麻薬の
魔手からは逃れられなかった。直接の死因は薬物とされては
いないが、長年の摂取による影響は明らかなようだ。何度も
同じような作品を見ている気がする。公開は4月27日より、
東京はアップリンク吉祥寺他で全国順次ロードショウ。)

『ベン・イズ・バック』“Ben Is Back”
(ジュリア・ロバーツが、薬物依存症の息子を全力で守ろう
とする母親に扮したヒューマンドラマ。クリスマスの前日に
突然帰ってきた長男。依存症の治療は順調だと語る息子だっ
たが、家族が教会から帰って来ると家が荒らされ、愛犬が消
えていた。それは彼の帰宅を知った組織の仕業だった。脚本
と監督は2004年9月紹介『エイプリルの七面鳥』などのピー
ター・ヘッジス。長男役は監督の実子で2017年11月12日題名
紹介『スリー・ビルボード』などのルーカス・ヘッジズ。他
にキャスリン・ニュートン、コートニー・B・ヴァンスらが
脇を固めている。米国では薬物に係る死亡が死因のトップに
なったとのことで、こういう作品は本当に切実なのだろうと
思う。ただ本作にも毒を以て毒を制すみたいな描写があると
ころは、僕の認識の甘さなのか。胸中に割り切れない感覚は
残ってしまった。公開は5月24日より、東京はTOHOシネマズ
シャンテ他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
また今週は他に2本ほど情報解禁前の作品があり、それらは
後日の掲載とします。



2019年02月17日(日) おそ松さん、誰がために憲法は(ベトナムを懐う、桜の森の満開、アメリカン・A、バイス、シベリアからの、リアム16歳、JK☆ROCK、4月の君)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『えいがのおそ松さん』
赤塚不二夫&フジオ・プロの作で1962年〜69年に連載された
ギャグ漫画を原作として、1966年からと1988年からも放映さ
れたテレビアニメをベースに、2015年から放送された深夜枠
アニメシリーズの劇場版。
物語の設定は、松野家の六つ子が20歳を過ぎてもクズでニー
トで、全員彼女なしの童貞、未だに親のすねかじりというも
の。そんな六つ子が高校の同窓会にやってくる。そこには幼
馴染みのトト子ちゃんも来ているが…。
予想通りに皆に馬鹿にされて追い詰められた六つ子は揃って
やけ酒をあおり、ふて寝。ところが翌朝起きると6人は高校
の卒業式の日にタイムスリップしていた。そこで彼らはある
果たされなかった思い出に向き合うことになる。
こんな物語が、イヤミやチビ太らによる往年のギャグと共に
描かれる。

声優は、公開中の『コードギアス 復活のルルーシュ』など
の櫻井孝宏。他に中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、
入野自由と、2018年11月18日題名紹介『revisions』などの
遠藤綾。
監督はテレビシリーズも手掛けた2013年『劇場版銀魂』など
の藤田陽一。脚本も『銀魂』や2016年1月紹介『珍遊記』な
どの松原秀が担当した。
盛られているギャグはかなりブラックであったり、下ネタで
あったりもするが、基本となる物語はSFとしてそれなりに
しっかりと描かれている。それは正直に言って少し真面目過
ぎるとも思えるものだ。
その中で時間遡りの青春ドラマが描かれるのだが、その展開
も巧みだったし、さらに結末には少し衝撃的なものも置かれ
ていた。因に
物語はエンドロールの後にも続くので、そこま
でしっかりと観て貰いたい。
もちろん物語の主題は妄想だから、科学考証を云々するよう
なものではないが、全体の流れをSFファンとして納得でき
た。この人たちの作った『銀魂』は観ていないが、それも観
たくなった。
ただここまでやれるのなら、セルルックの2Dアニメーショ
ンではなく、CGIの3Dアニメーションでも観たくなる。
ただのギャグアニメなら2Dがお似合いだが、ここまでSF
的だと立体的な造形が栄えるし、それを観てみたい。
それはテレビシリーズとの繋がりでは難しい面はあるだろう
が、将来的には考えて欲しくなった。なお本作のアニメーシ
ョン制作は、1988年のシリーズから継続のstudioぴえろが、
同社の設立40周年記念として行ったものだ。

「どんな思い出も、ぜんぶ宝物。」という本作の宣伝コピー
も素敵だ。
公開は3月15日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

『誰がために憲法はある』
芸人・松元ヒロ原作による一人舞台『憲法くん』を、女優・
渡辺美佐子の出演で2018年に映画化した12分の作品をベース
として、渡辺が1980年から仲間の女優たちと続けてきた朗読
劇『夏の雲は忘れない』について描いたドキュメンタリー。
朗読劇には『一九四五・ヒロシマ ナガサキ』という副題が
付けられており、広島・長崎の原爆禍で被災した主に子供た
ちの手記や残された最後の言葉を、舞台に並んだ数人の女優
たちが交代で朗読してゆくというもの。
そこに当時の惨状を伝える写真や、被災した子供たちの生前
の写真などが添えられる。それは人類史上唯一の被爆国であ
る日本の国民が、永久に語り継いでゆくべき出来事の記録で
あると考える。
しかしそれが2019年に終演を迎えるという。そこには渡辺と
共に朗読劇を続けてきた女優らの事情もあるが、以前はどこ
でも歓迎されていた公演が、最近はなかなか迎えられない状
況もあるようだ。
そんな中での広島での公演の模様が記録されている。そこに
は地元の生徒たちも一緒に舞台に上がり、朗読の一部に参加
するという演出もなされていた。そして公演後の懇談会では
生徒たちの思いも伝えられる。
さらに本作では、渡辺が朗読劇を立ち上げるに至った背景も
語られており、そこには天の配材とも言える衝撃の物語も描
かれる。それは2016年5月29日題名紹介『いしぶみ』にも繋
がる特別なものだった。

朗読劇への参加者は高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本
多代、日色ともゑ、長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋
芳枝。本作は、2013年『戦争と一人の女』などの井上淳一監
督による。
実は僕は、偶然この作品の初号試写に立ち会うことができた
もので、その会場には出演の女優たちも多数来場していた。
その中で挨拶に立った渡辺は、別作品である『憲法くん』と
の合体の是非を心配していた。
それは確かに構成は二元的ではあるが、テーマは通底してい
るものであり、僕はこの構成でも理解はされると思ったもの
だ。ただしできることなら『憲法くん』も併映して貰えたら
とは考えた。

最近映画界でもいろいろあって、かなりきな臭い雰囲気が漂
う中で、このような作品がしっかりと上映されてゆくことが
重要だと思えるものだ。
公開は4月27日より、東京はポレポレ東中野他にて全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『ベトナムを懐う』“Dạ cổ hoài lang”
(1994年の初演からベトナム各地で再演されてきたという舞
台劇の映画化。1995年冬のニューヨークを背景に、異国に暮
らす三世代のベトナム人の姿を描く。主人公は先に母国を離
れた息子を追って渡米した老いた男性。すでに老人ホームに
入っているが、妻の命日を家族と共に過ごそうと息子の家に
やってくる。ところがそこにいたアメリカ生まれの孫娘は祖
母のことなど知る由もなかった。そしてその2人の対立が始
まるが…。三世代の中では息子の境遇が一番大変だったはず
だが、荒海を行く小舟の特撮シーンなどはあるものの肝心な
点には触れず、ただ望郷とそこに思い至れない孫娘の姿だけ
が強調される。それがベトナム人に受けたのは判るが、配慮
かなあとも考えてしまうところだった。監督は商業的な映画
を多く撮っているグエン・クァン・ズン。公開は2019年1月
27日題名紹介『漂うがごとく』と共に3月23日より、東京は
新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『シネマ歌舞伎・野田版 桜の森の満開の下』
(坂口安吾の短編小説「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳
男」をベースとする野田秀樹の戯曲「贋作 桜の森の満開の
下」を基に、野田と十八世中村勘三郎が歌舞伎の舞台として
企画。しかし2012年に急逝した中村の遺志を継いだ野田が、
2017年に自身の演出により上演した舞台からの作品。主人公
の耳男は仏師の師匠と共に飛騨の里に向かう途中、満開の桜
の森で師匠を殺害してしまう。しかし師匠と間違われて城に
迎えられた耳男は、夜長姫の求めに応じた仏像を彫ることに
なるが…。やがてそれが国家を揺るがす大事へと発展する。
物語はどちらかというと「夜長姫」に寄ったものだが、それ
にしてもその壮大なスケールには圧倒された。しかもそれが
歌舞伎の舞台に見事にマッチしていることにも感動した。た
だ音楽に関してはやはり邦楽で聴きたかったかな。洋楽は何
かしっくりこなかった。公開は4月5日より、東京は東劇、
新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『アメリカン・アニマルズ』“American Animals”
(ケンタッキー州レキシントンのトランシルヴェニア大学で
2004年に起きた強盗事件の顛末を描いた実話の映画化。主人
公は平凡な生活に飽きた学生。そんな彼が目にしたのは、大
学図書館の特別室に置かれた希少本。時価1200万ドルとされ
るその本を盗み出せば人生を変えられる。狙いの本はジョン
・ジェームズ・オーデュボン著「アメリカの鳥類」。確かに
高額で取引された本のベスト10中5冊を占めるというものだ
が、サイズは1m×72�僂發△辰峠鼎気眩蠹�。それを見るだ
けで普通は諦める。しかし主人公らはハリウッド映画から手
口を学び、いざ実行となるが…。出演は2016年4月紹介『ラ
ザロ・エフェクト』などのエヴァン・ピータースと、2017年
8月6日題名紹介『ダンケルク』などのバリー・コーガン。
これに4人の犯人と被害者女性本人へのインタヴューも挿入
されて、馬鹿げた犯罪の全貌が明かされる。公開は5月17日
より、東京は新宿武蔵野館他で全国ロードショウ。)

『バイス』“Vice”
(2000年の選挙戦でブッシュ陣営の副大統領として選出され
たディック・チェイニーの実像を描いた作品。元々は「副大
統領なんて飾りに過ぎない」と言っていた男が、無能な大統
領を支えるどころか事実上の施政者として君臨する。2018年
12月16日題名紹介『記者たち』でも描かれた米国政界最大の
スキャンダルを、その当事者の側から暴露する作品だ。出演
は見事な変貌を見せるクリスチャン・ベールと、2014年4月
紹介『her』などのエイミー・アダムス。他にスティーヴ・
カレル、サム・ロックウェルらが脇を固めている。製作・脚
本・監督はSNL出身のアダム・アッケイ。監督自身もリサ
ーチするまで真相を知らなかったという影の大統領の実態が
描かれる。それは「ザ・官僚」とも呼べる政界に精通した男
の所業だが、ブッシュ同様の2世政治家が政界を牛耳る国の
予兆とも言えそうだ。公開は4月5日より、東京はTOHOシネ
マズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『シベリアからの手紙』“Lettre de Sibérie”
(1995年にテリー・ギリアムが監督した『12モンキーズ』の
元となる1962年『ラ・ジュテ』などを遺し、2012年に他界し
たクリス・マルケル監督が、1958年に発表したソビエト連邦
の辺境部を写したドキュメンタリー。そこは東洋系の民族も
多く暮らす地域だが、その地の自然やそこに暮らす人々の姿
を、アニメーションも交えた多彩な手法で描いている。因に
監督は、本作の2年前に革命直後の中国で撮影した『北京の
日曜日』なども発表していて左翼系の人ではあるが、本作で
はアメリカへの揶揄などはあるものの特に共産主義賛美とい
う感じではなく、詩的な映像の中で全体はユーモラスに当時
の風物が描かれている。そこには温かさもあり、観ていて心
地よさも感じられる作品だった。それにしてもあのポスター
は? 公開は4月6日〜19日に、東京は渋谷ユーロスペース
にて、上記の『北京の日曜日』など全8作品が「クリス・マ
ルケル特集2019<永遠の記憶>」として上映される。)

『リアム16歳、はじめての学校』“Public Schooled”
(通学はせず、シングルマザーとの自宅学習で高校生の年代
になった少年が、大学受験に必要な高卒資格を得る試験のた
めに高校を訪れる。そこで1人の女子高生を見初めた彼は、
思わず答案用紙を白紙にして高校編入を希望するが…。まあ
かなりありそうもない話ではあるが、そんな架空の話の中で
アメリカの高校生を取り巻く環境などがコメディタッチで巧
みに描かれる。共同脚本と監督は、カナダの演技学校スタジ
オ58を卒業のカイル・ライドアウト。2015年のデビュー作で
各地の国際映画祭の観客賞などを受賞した新鋭の第2作だ。
出演は2013年10月紹介『キャリー』などのジュディ・グリア
と、スタジオ58出身でテレビや短編映画に多く出ているダニ
エル・ドエニー。他に2003〜09年のテレビシリーズ『ギャラ
クティカ』で人気を得たという韓国系のグレース・パークら
が脇を固めている。公開は4月27日より、東京は新宿シネマ
カリテ他で全国順次ロードショウ。)

『JK☆ROCK』
(徳間ミュージック所属のガールズ・バンド DROP DOLLが出
演する青春音楽映画。先に登場するのはJoKersという男性デ
ュオ。彼らは人気絶頂で突然解散し、その一方は渡米、他方
は弁護士を目指して学業に戻った。しかし渡米した彼が成功
して凱旋が発表された頃、彼らを育てたスタジオのオーナー
が学業に励む彼にJKバンドの指導を依頼する。それはほぼ
0からの挑戦だったが…。男性デュオ役は映画初主演の福山
翔大と『仮面ライダーゴースト』の山本涼介。観客層のター
ゲットは彼らのようだが、映画ではJKバンドの鍛錬ぶりが
スポ根的で面白かったし、演奏は本物だった。正直なところ
は男性の話はもう少し省いて、JKバンドの方を重点に観た
かったかな。脚本は2018年1月21日題名紹介『花は咲くか』
の監督を務めた谷本佳織。監督は2004年『恋人はスナイパー
劇場版』などの六車俊治が担当した。公開は4月6日より、
東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)

『4月の君、スピカ。』
(杉山美和子原作少女コミックスの実写映画化で、高校の天
文部を舞台に幼馴染みの男子2人と転入生の女子の三角関係
が描かれる。主人公は田舎暮らしに憧れた両親と共に星空の
綺麗な町に越してきた女子。ところが転校生の挨拶で田舎と
口走ったことからクラスの顰蹙を買ってしまう。そのため友
達もできず1人窓辺で空を見ていた彼女は、夕景に見えてき
た星の名前が乙女座のスピカだと教えられる。そして教えて
くれた男子の言うままに天文部に入るが…。出演は子役出身
で『プリキュア』の声優なども務めた福原遥と、2018年7月
29日題名紹介『DTC』などのEXILE TRIBE 佐藤大樹。他に
鈴木仁、井桁弘恵。さらに大谷亮平、酒井美紀らが脇を固め
ている。脚本は2012年2月紹介『桜蘭高校ホスト部』の池田
奈津子、監督は2005年『NANA』や2013年12月紹介『黒執
事』などの大谷健太郎が担当した。公開は4月5日より、東
京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2019年02月10日(日) ndjc:若手映画作家育成、シー・ラヴズ・ミー(波乗りオフィス、福島は語る、マックイーン、ドント・ウォーリー、新宿タイガー、COLD WAR)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018・合評上映会』
文化庁の事業として2006年から行われている若手監督の育成
プログラムで、2018年度に選ばれた5人の監督による作品の
上映会を初めて見学させてもらった。
選考の経緯は、昨年5〜6月に映画関連の連盟や映画祭、学
校等の各種団体からの推薦が受け付けられ、今回は80人の応
募者の中から15人が書類選考されて8月にワークショップを
実施。そこでは専門家の指導の許、同じテーマによる5分間
の短編を制作し、その結果5人が選ばれたとのことだ。
その5人に対して、8〜10月に脚本開発、10〜12月に撮影、
12〜1月に仕上げのスケジュールで、35�丱侫�ルムを使って
25分以上30分以内の作品が製作された。その作品が今回上映
されたものだ。さらに各作品の上映後には、それぞれ監督及
び出演者によるトークショウも行われた。
「サヨナラ家族」
脚本・監督の眞田康平は、1984年生まれ、東京藝術大学大学
院映像研究科監督領域修了。その修了作品「しんしん」は劇
場公開の実績もある。出演は石田法嗣、根岸季衣、村田唯、
土居志央梨、佐野和宏、斎藤洋介。
主人公は父親の一周忌で帰省した男性。父の死を受け入れ切
れていない彼の目には、いろいろ怪奇な現象が見えている。
巻頭、斎藤のホラーっぽい演技が良くて、これは…と思わせ
たが、その後は凡庸かな。上映後のトークでは、監督自身が
実父の死に際して思いついた話のようだ。それは僕も自分の
父の死に対してはいろいろ思ったところはあったが、自分が
還暦も過ぎて棺桶に片足突っ込んでいるような立場だと、そ
の想いを共有することがあまりできなかった。

「うちうちの面達(つらたち)は。」
脚本・監督の山元環は、1993年生まれ、大阪芸術大学映像学
科卒。その卒業制作「ゴロン、バタン、キュー」がPFF アワ
ード2015で審査員特別賞と神戸賞を受賞してる。出演は田中
奏生、田口浩正、濱田マリ、小川未祐、山元駿。
登場するのは父親と姉弟の3人家族。実は2週間前に夫婦喧
嘩で母親が家出、父親はその行き先の見当もついていない。
しかし13歳の弟は母の居場所を知っていた。2016年4月紹介
『団地』を少し思い出すところもあったが、本作の舞台は一
戸建てでさらに大掛かりなものだった。濱田の特技を生かし
た演技も見所だが、ここはもう1回逃げ切って欲しかったか
な。でもそれでは上映時間が超過だったのだろう。奇想天外
というか、現実にもありそうだが、かなり意表を突いた展開
は充分に楽しめた。

「くもり ときどき 晴れ」
脚本・監督の板橋基之は、1976年生まれ、法政大学文学部日
本文学科卒業。フリーのディレクターとしてCMやドキュメ
ンタリーなどを手掛け、2016年初監督の短編「おべんとう」
は世界各地の映画祭で上映・受賞している。出演はMEGUMI、
浅田美代子、水橋研二、有福正志。
母親と2人暮らしの主人公の許に、25年前に生き別れた父親
の生活保護扶養照会が届く。その通知に別に所帯を持つ兄と
母親は冷淡な対応だったが、主人公には父親に対する悪感情
はないようだ。そんな父親は元金属加工職人で、その口癖は
「設計図通りに生きろ」だった。そして主人公はその父親に
会いに行くが…。痴呆の進んだ父親は娘が名乗っても何の反
応も示さなかった。家族の機微は巧みに描かれた作品だ。た
だし結末の1カットシーンは少し違う感じがした。

「はずれ家族のサーヤ」
脚本・監督の岡本未樹子は、1984年生まれ、大阪芸術大学映
像学科卒業。在学中に制作した短編作品「おねえちゃんのす
きなひと」が2007年アジア国際青少年映画祭にて上映、受賞
している。卒業後はフリーの助監督として活動。出演は横溝
菜帆、黒川芽以、増子倭文江、田村泰二郎、森優理斗。
母親が新しい恋人との子供を宿し、祖母と2人暮らしの実家
に残された少女。母親の里帰りで連れてくる父親の違う弟と
は仲も良いが、満たされないものも感じている。そんな少女
が公園で不思議な物売りに出逢う。その商品の小箱には不思
議な力があるというが…。レイ・ブラッドベリの短編小説に
でもありそうなファンタスティックで、残酷な物語が展開さ
れる。物語も良いが姉弟を演じる子役が素晴らしい。そして
上映後のトークでそれを引き出した演出力に納得した。

「最後の審判」
脚本・監督の川上信也は、1976年生まれ、東京工芸大学デザ
イン科卒業後、映像制作会社にて数多くのCM、MVなどを
演出、国内外の賞を多数受賞している。出演は須藤蓮、永瀬
未留、黒沢あすか、荒谷清水。
主人公は日本最高峰の美大の受験に浪人5年目。今年で最後
と決めた試験の課題は2日間で描き上げる人物着彩。その試
験開始の直前に平然と現れる独特な風貌の女性。しかし試験
が始まると、彼女はとてつもない画力で他を圧倒し、主人公
もその絵を意識するあまり自分のペースを見失ってしまう。
そして帰り道、自分の不甲斐なさにも怒る主人公は彼女に声
を掛け、画力の秘密を聞き出そうとするが…。監督の実体験
に基づく部分もある話ようだ。
今回上映された作品では、最後の作品を除いていずれも「家
族」が描かれたが、それは特に意図されたものではないとの
ことで、時代がそういう作品を選んだようだ。その中で最後
の作品だけが異彩を放ったが、それで少し損してしまった感
じもしないではない。でも何れも優れた才能の片鱗を見せて
貰えた。

2006年に開始されたプロジェクトからは、すでに2018年1月
21日題名紹介『花は咲くか』の谷本佳織。2018年2月4日題
名紹介『ANIMAを撃て!』の堀江貴大。2018年8月5日
題名紹介『パパはわるものチャンピオン』の藤村亨平らの才
能を輩出しており、今後も期待されるものだ。
一般公開は3月2日〜8日に有楽町スバル座、8日〜14日に
名古屋ミッドランドスクエア、16日〜21日にシネ・リーブル
梅田にて期間限定ロードショウとなる。

『松竹ブロードウェイシネマ シー・ラヴズ・ミー』
                   “She Loves Me”
2017年8月紹介『ホリデイ・イン』に続くニューヨーク・ブ
ロードウェイの舞台を撮影した作品。
舞台は1963年に初演され、1999年に公開されたトム・ハンク
ス、メグ・ライアン共演の映画『ユー・ガット・メール』の
元にもなった名作ミュージカル。今回上映の2016年再演版は
トニー賞で2部門に輝いている。
主人公は街角に建つ香水店で働く男性店員。同世代の同僚と
年配の店員、それにレジ係の女性と共に働いているが、同僚
には少し問題があるようだ。そしてその同僚が馘になり、代
わって有能な女性店員が雇われる。
ところが主人公と女性店員とは最初の出会いから少し行き違
いが生じて、主人公は何かと辛く彼女に当ってしまう。そん
な2人は共に独身で、心の支えはまだ会ったことのない匿名
のペンフレンドとの文通だったが…。
1999年の映画では電子メールだったが、オリジナルは手紙。
私書箱でやり取りされて住所も本名も判らないというのは、
今なら電子メールの方が理解し易いが、1960年代にもこんな
ことは行われていたようだ。
そしてちょっとした行き違いが様々なドラマを生んで行く。

出演は、テレビの人気番組で主演を務めた他、2013年12月紹
介『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』にも出ていたザカ
リー・リーヴァイ、ブロードウェイで多数のミュージカルの
舞台の他、テレビの『スーパー・ガール』にも出ていたロー
ラ・ベナンティ。
また、ブロードウェイやロンドン・ウェストエンドなどの舞
台の他、2015年の映画『ピクセル』にも出ていたジェーン・
クラコウスキー。2009年11月紹介『ジュリー&ジュリア』な
どのバイロン・ジェニングス。そして自ら劇団も主宰する若
手のギャヴィン・クリールらが脇を固めている。
監督はデヴィッド・ホーン。そして舞台のセット・デザイン
をデヴィッド・ロックウェルが担当して、2017年のトニー賞
ではミュージカル部門リバイバル作品賞と装置デザイン賞を
受賞している。
電子メールの無い時代の話が、今の若い人たちにどう受け止
められるかは判らないが、その時代を生きてきた人間には、
正に胸キュンという感じの物語になっている。でも多分これ
は時代を超えて現代にも通用するものだろう。
それに加えて本作では、トニー賞も受賞した舞台のセット装
置が素晴らしくて、特に巻頭の路上から一気に店内に移る場
面転換には正に度肝を抜かれた。さらにそこから後ろの部屋
や別の情景にも転換する。これは本当に見事だった。
その妙技を見るだけでも価値のある作品だ。
なお、本作は巻頭にも「HD」と銘打たれていて恐らく毎秒
30フレームで撮影されていると思われるが、実は僕が観た試
写会では画面にちらつきがあった。これはフレーム数の誤差
と思われ、もしかするとプロジェクターの設定が映画用の毎
秒26フレームのままだった可能性がある。
ちらつき自体はさほど目立ちはしないが、僕には気になった
もので、できれば是正して欲しいところだ。

公開は4月19日より、東京は築地東劇にて3週間限定ロード
ショウ。その後は5月24日より大阪なんばパークスシネマ、
名古屋ミッドランドスクエア シネマでも限定ロードショウ
となる。

この週は他に
『波乗りオフィスへようこそ』
(四国の右下と自称する徳島県、その中でも右下に位置する
美波町を舞台に、IT企業が地方に開発部門を設置し軌道に
乗るまでを描いた実話に基づく作品。主人公が社長を務める
小さなIT企業では大手に押されて人材不足が深刻だった。
そんな折に帰郷した社長は、ふと自然の中で働くことを思い
付く。それは思わぬ人材を集めることになるが…。登場する
会社名も実名なので、まあその通りなのだろうけど、お話は
少し綺麗事かな。多少のトラブルはあるけれど、それも定番
でドラマとしては物足りない感じが残った。実話だから仕方
ないのだろうが。出演は、映画初主演の関口知宏。その脇を
宇崎竜童、柏原収史、宮川一朗太、岩崎加根子らが固めてい
る。脚本と監督は美波町の出身で、2018年3月11日題名紹介
『終わった人』のプロデューサーを務めた明石知幸。公開は
4月5日からイオンシネマ徳島で先行上映の後、東京は19日
より有楽町スバル座他で全国順次ロードショウ。)

『福島は語る』
(2009年「パレスチナ」4部作や2015年「ガザ」5部作など
を発表してきた土井敏邦監督が、原発事故によって生活基盤
を奪われた人たちの姿を5年の歳月を掛けて描いた14の証言
からなる2時間50分のドキュメンタリー。今や事故から8年
が経ち、各地の原発再稼働も推進され、福島の教訓は何だっ
たのかと思ってしまう状況の中、未だに放射能が充満してる
実家には帰ることもできない人たち。その一方で残留放射能
自体が風評被害という言葉の許に封じられ、それでもその作
物は消費者に拒絶される。また避難した子供たちも避難先の
学校では差別が続く。そんな生々しい現実が描かれる。現実
は都心の放射能だって以前よりは増えたままなのに、五輪の
名の下にその事実さえ隠されている。証言だけのドキュメン
タリーの難しさは2018年12月23日の題名紹介で指摘したが、
本作にはそれを超えた重みがある。公開は3月2日から新宿
K's cinemaで先行上映の後、9日より全国ロードショウ。)

『マックイーン モードの反逆児』“McQueen”
(1992年に彗星のごとく登場し、一世風靡したファッション
デザイナーを描いたドキュメンタリー。ロンドン下町で6人
兄弟の末っ子が、サヴィル・ローのテーラーに雇われ、イタ
リアのアトリエを経て、再びロンドンの服飾学院に学ぶ。そ
してその卒業制作がファッション誌の編集者の目に留まり、
破格の金額でコレクションが買い取られたことでデビューに
繋がる。ところが彼の繰り広げるファッションショーは過激
なアイデアで賞賛と非難が半ばする。それでもブランドとの
契約を勝ち取るが…。このような出来事が多数のアーカイヴ
の映像と家族らの証言によって綴られる。それにしても映像
テクノロジーを駆使したそのファッションショーの奇抜さに
は、映像を見慣れている僕の眼にも驚きを感じさせた。監督
はイアン・ボノートとピーター・エテッドギー。劇映画の作
家たちのドキュメンタリー初挑戦だ。公開は4月5日より、
東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『ドント・ウォーリー』
       “Don't Worry, He Won't Get Far on Foot”
(2010年に他界したアメリカの風刺漫画家ジョン・キャラハ
ンの生涯を描いた作品。酒浸りだった男が交通事故で下半身
不随となり、さらに自暴自棄な暮らしとなるが。ある切っ掛
けから自分を憐れむことを止め、自虐も含めた世間に対する
風刺の目で、自己を再生させて行く。在りがちな話でもある
が、散りばめられた鋭い風刺が見事に人間を描き出す。脚本
と監督はガス・ヴァン・サント。2014年に他界した故ロビン
・ウィリアムスが残した企画を、生前相談を受けていた監督
が完成させた。出演はホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒ
ル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック。他にウド・キ
アも登場する。映画前半の字幕に「おっぱい石」とあって、
原語は‘material rock’だったと思うが、前後の台詞から
訳語が違うような気もして、いろいろ調べたが結論は出なか
った。判る人がいたら教えて貰いたい。公開は5月、東京は
新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『新宿タイガー』
(20世紀の時代から繁華街で時折見掛ける奇人の姿を追った
ドキュメンタリー。本人は1948年生まれ、1972年に祭りの屋
台でタイガーのお面を見付け、以降の生涯をこのお面を着け
て過ごそうと思い立つ。収入源は新聞配達。今も早朝と夕方
の繁華街一円に朝日新聞を配っている。余分のお金は要らな
いと言い、仕事以外の時間は、映画と女性と、ロマンと夢に
生きている。そんな彼の生き様と、彼が流れ着いた1970年代
の激動の新宿が、彼自身が語る人生観や周囲の人々の証言と
共に描かれる。実は試写会に本人が来場していて、上映後に
拍手が沸いた。それは彼へのリスペクトと共に描かれた彼の
生き様に感銘を受けたためでもある。素敵な作品だ。監督は
1975年愛知県出身。南カリフォルニア大学で映画制作学科を
卒業。すでに劇映画では映画祭受賞も果たしている俊英の初
ドキュメンタリーだ。公開は3月22日より、東京はテアトル
新宿他で全国順次ロードショウ。)

『COLD WAR あの歌、2つの心』“Zimna wojna”
(2013年『イーダ』でオスカー外国語映画賞を受賞したポー
ランドのパヴェウ・パヴリコフスキ監督が、自らの両親と同
じ名前の男女を主人公に、冷戦下の東欧の男女の姿を描いた
作品。民族舞踊の振興を目的に国家が設立した舞踊団。そこ
に応募してきた女性を音楽家の男性が見初める。しかしベル
リンでの公演中に西側への亡命を試みた男性に女性は付いて
行かなかった。そしてパリで成功した男性は、フランスのパ
スポートを持って再び女性の許を訪れるが…。国際情勢など
が2人の仲を引き裂いて行く。物語は両親の実話とは異るよ
うだが、冷戦に翻弄される男女の姿は見事に描き尽くされて
いる。なお字幕の中で「ワルシャワは東のパリ」という言葉
に引っ掛かったが、前後の状況をよく考えると納得できるも
のではあった。台詞のニュアンスが微妙だったものだ。公開
は6月28日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽町他
で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお、もう1本『コードギアス 復活のルルーシュ』を見て
いるが、公開済みであるので紹介は割愛する。



2019年02月03日(日) アンフレンデッド:DW、移動都市(僕たちは希望、ビューティフル・B、僕の彼女、アラフォー、ナイトC、笑顔の、イメージの本、ヨーゼフ・B)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『アンフレンデッド:ダークウェブ』
               “Unfriended: Dark Web”
全編がパソコンの画面だけで展開されるホラー作品。本作は
2016年公開作品の続編とされているが、内容的には独立して
おり、前作を未見の僕にも問題はなかった。
主人公は入手した中古のラップトップPCを使ってskypeに
アクセスし、仲間とのゲームに興じようとした若者。ところ
が表示された以前の持ち主と思われるアカウント名を自分の
アカウントに書き換えてアクセスを始めると…。
PC内に盗撮や監禁された女性の姿などおぞましい映像を集
めた隠しファイルが発見され、その直後「俺のPCを返せ、
さもないとお前たちは死ぬ」というメッセージが届く。実は
主人公のPCは街で窃取してきたものだったのだ。
そしてメッセージの主はネット仲間の居所を特定するなど、
徐々に主人公を追い詰め始める。図らずもネット犯罪組織に
関ってしまった、その恐怖に包まれた状況が限定された画面
上だけで描かれて行く。
前作はもっとオカルト寄りの話だったそうだが、本作では正
に現実に起こり得る恐怖を描き尽す。

出演は、スティーヴン・ソダーバーグ監督の新作にも出てい
るコリン・ウッデル、2017年4月紹介『パージ:大統領令』
などのベティ・ガブリエル。
他に後日紹介予定『ドント・ウォーリー』などのレベッカ・
リッテンハウス、今回次に紹介する『移動都市』などのアン
ドリュー・リースらが脇を固めている。
また主人公のガールフレンド役のステファニー・ノゲーラス
は、テレビシリーズ“Grimm”などにも出演する実際に重度
の聴覚障害者の女優だそうだ。

脚本と監督は、2004年『THE JUON/呪怨』、2006年『呪怨パ
ンデミック』などの脚本を務め、本作で監督デビューを飾っ
たスティーヴン・サルコ。本作ではシチュエーションを巧み
に使って恐怖を高める。正に王道のホラーだ。

製作は前作に続けて、2009年12月紹介『パラノーマル・アク
ティビティ』などのジェイスン・ブラムと、2012年8月紹介
『リンカーン/秘密の書』などのティムール・ベクマンベト
フが担当している。
PCの画面だけで展開されるホラー・サスペンスは前例がな
い訳ではないが、本作では正に誰しもがそこに巻き込まれる
可能性がないとは言えない…。そんなリアルな恐怖感に襲わ
れる作品だ。
また本作では、設定上登場人物の顔面のアップばかりが続く
画面になるが。2018年12月紹介『コンジアム』で指摘した周
囲が見えないことの弊害はなく、却ってそれが恐怖を煽る演
出は見事と言えるものになっている。
さらにそこに外景などが挿入される構成も巧みだった。

公開は3月1日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

『移動都市 モータル・エンジン』“Mortal Engines”
イギリスのSF作家フィリップ・リーヴが2001年に発表した
長編デビュー作で、翻訳本が2007年の日本SF大会でファン
選出による星雲賞を受賞した終末未来SFの映画化。
その映画化を『LOTR』のフラン・ウォルシュ、フィリッ
パ・ボウエン、ピーター・ジャクソンの製作、脚本。同作や
2005年『キング・コング』(オスカー受賞)のVFXを手掛け
たクリスチャン・リヴァースの監督デビューで実現した。
物語の背景は、究極兵器の使用により地球のほとんどが60分
間で破壊された未来世界。そこでは移動装置に載った都市国
家が地上を蹂躙し、特に大都市のロンドンは資源を求めて、
採掘を生業とする小都市を食い尽していた。
そんな小都市の1つを飲み込んだ時、その住人の中に1人の
少女が紛れ込む。彼女はロンドンで権力を握る考古学者の男
性の生命を狙っていたが…。その男には野望があり、それは
少女の生い立ちにも関るものだった。

主演は、アイスランド出身で同国のアカデミー賞を2度受賞
しているヘラ・ヒルマー。相手役に2018年1月紹介『ジオス
トーム』などのロバート・シーアン。さらに『LOTR』な
どのヒューゴ・ウィーヴィング。
他にロン・ハワード製作のテレビシリーズ“Mars”で主人公
の双子を演じている、ミュージシャンでもあるジヘ。2016年
11月紹介『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
などのローナン・ラフテリー。
また俳優ヴィンセント・ドノフリオの娘で本作に抜擢された
レイラ・ジョージ。1999年『007ワールド・イズ・ノット
・イナフ』などのパトリック・マラハイド。2016年11月紹介
『ドント・ブリーズ』などのスティーヴン・ラングらが脇を
固めている。
因に前述のアンドリュー・リースは、Herbert Melliphantと
いう役名で出ていたものだ。
映画は初っ端から、巨大なロンドンが採掘した物資を満載の
小都市を追い回すチェイスシーンで始まり。その都市の中で
振り回されたり、次々に変形する街路を右往左往する人々の
アクションが描かれる。
それは例えば『ハリー・ポッター』の映画の中で階段が動き
回るホグワーツの仕掛けが巨大化し、さらに複雑化したよう
なもので、正にCGI=VFXによる夢のような映像が展開
されている。
しかもそれが、次から次へと息つく暇もないほどに変形して
行く様子が豪華かつ詳細に描かれており、その映像の素晴ら
しさには全く目を見張らされた。これがオスカー候補にもな
らないのは全く解せないところだ。
因にこのロンドンは、前方左右にトラファルガーのライオン
を鎮座させ、上部にはセントポール大聖堂のドーム屋根が設
えられているという、正にニヤリとするデザインで、これを
見るだけで嬉しくなるものだった。
そしてそこから展開される人間ドラマにも納得できたし、さ
らに支配者の目的や、そこに絡まる人間関係などにも感動を
覚えるものがあった。なお原作小説は4部作となっており、
この後の展開も楽しみになる作品だ。

公開は3月1日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『僕たちは希望という名の列車に乗った』
           “Das schweigende Klassenzimmer”
(1956年のハンガリー動乱を背景に、ソ連軍に支配された東
ドイツを描いた青春群像劇。高校生の主人公は祖国のために
戦った祖父の墓参と称して列車に乗り、度々西ベルリンを訪
れていた。そんな折に西側の映画館に入った主人公は同胞国
で起きた事件を知る。そして帰国した主人公は同級生の伯父
の家で西側のラジオを聞き、動乱に巻き込まれた若者たちの
運命を思う。それは自分らの気持ちにも通じていた。そんな
彼らの上げた狼煙が大きなうねりになって行くが…。彼らに
厳しい現実が突き付けられる。1961年に始まる「ベルリンの
壁」建設以前の実話に基づく物語。階級を無くしたはずの体
制が新たな階級支配を生む、そんな矛盾した社会構造が強引
な情報操作の中で成立して行く。それは映画の中では共産党
批判に取れるが、現実の今の社会にも通じるものだ。公開は
5月17日より、東京は渋谷Bunkamura ル・シネマ、ヒューマ
ントラストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)

『ビューティフル・ボーイ』“Beautiful Boy”
(2018年1月28日題名紹介『君の名前で僕を呼んで』のティ
モシー・シャラメと2018年4月22日題名紹介『バトル・オブ
・ザ・セクシーズ』のスティーヴ・カレル共演で、ドラッグ
依存症の息子とその父親の葛藤を描いた実話に基づく作品。
父子が独立に発表した回想録を原作に、それぞれの視点から
問題が解き明かされて行く。共演は2008年6月紹介『俺たち
ダンクシューター』などのモーラ・ティアニー、2015年2月
紹介『バードマン』などのエイミー・ライアン、2018年12月
紹介『フロントランナー』などのケイトリン・デヴァーらが
脇を固めている。脚本は2017年2月26日題名紹介『ライオン
25年目のただいま』などのルーク・デイヴィス。監督はベル
ギー出身のフェリクス・ヴァン・ヒュルーニンゲンが担当し
た。薬物依存症の映画はいろいろあったが、ここまで現実的
に描き切ったのは見事な作品だ。公開は4月12日より、東京
はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)

『僕の彼女は魔法使い』
(2018年9月23日題名紹介『宇宙の法−黎明編−』に続く、
大川隆法原案、製作総指揮による「幸福の科学出版」製作の
実写作品。物語は魔法使いの女性が高校生の男子を見初める
ところから始まる。それは男子には夢の中の話だったが、そ
の後に彼女が転校生として現れる。しかし事件が起きて彼女
はまた転校してしまう。それから5年が経ち、社会人となっ
た男子は得意先の女性から以前に付き合っていたと告げられ
るが…。出演は、2018年8月19日題名紹介『ごっこ』などの
清水富美加こと千眼美子と、2017年4月2日題名紹介『君の
まなざし』などの梅崎快人、春宮みずき。他に佐伯日菜子、
高杉亘、不破万作らが脇を固めている。監督は、2016年発表
の短編が海外映画祭で受賞している清田英樹。題名からは魔
法を使って主人公の危機を救う的な話を想像したが、時空を
超えるなど物語には意外と捻りがあった。公開は2月22日よ
り、東京はシネマート新宿他で全国ロードショウ。)

『アラフォーの挑戦 アメリカへ』
(2012年11月紹介『二つの祖国で/日系陸軍情報部』などの
すずきじゅんいち監督が、配偶者の女優・榊原るみの連れ子
である松下恵をレポーターにしてアメリカ文化の一端を描い
たドキュメンタリー。実は本来のテーマは題名の通りのもの
であって、40代目前となった女優(独身)の松下が一念発起し
て語学研修のためアメリカに向かうというもの。それに関連
して、米国(西海岸)での家族の状況などが描かれる。その中
には幼い子供のいる若い夫婦やゲイのカップル、また共に配
偶者と死に別れた熟年の男女など、様々な「家族」の形態が
示される。その一方で結婚は遅い方が良いとか、アメリカ的
な考え方も紹介され、それがある意味、レポーターの松下と
同じ状況に置かれた女性へのエールとも捉えられる作品だ。
それは同時に同じ状況の子供を持つ親にも新たな見識をもた
らすであろうものでもあった。公開は4月より、東京は新宿
K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『ナイトクルージング』
(先天性全盲の男性が映画を作る。その過程を描いたドキュ
メンタリー。男性の名前は加藤秀幸。システムエンジニアで
ミュージシャンでもある彼は、幼い頃に母親と一緒に映画館
に行き、小声で話す母親の解説を聞きながら映画を楽しんで
いたそうだ。そして今でも映画館が好きで、最近はバリアフ
リーの上映も増えたのが嬉しいと語る。そんな彼が2013年に
本作と同じ佐々木誠監督のドキュメンタリーに出演し、映画
製作に興味を持つ。そして脚本を書き、その映画化に乗り出
すが…。視覚障碍者との間でイメージの共有を図る目的で、
絵コンテでは筆圧で変形する用紙を用いたり、色をイメージ
するために色相環模型が登場したり、さらには造形の判断の
ために3Dプリンターが活用されたり…。それは視覚障害者
の姿を描くドキュメンタリーであると同時に、僕らに新たな
視点を与えてくれる作品でもあった。公開は3月30日より、
東京はUPLINK渋谷他で全国順次ロードショウ。)

『笑顔の向こうに』
(2018年5月紹介『世界でいちばん長い写真』などの高杉真
宙主演で、義歯や入れ歯を造る歯科技工士の仕事振りを描い
た作品。主人公は、故郷の金沢で父親の仕事を継ぐつもりが
認められず、東京の技工所で働いている。そんな彼は端正な
顔立ちで、納入先の歯科医院の女性衛生士たちからは王子と
呼ばれていたが…。ある日、納入に行った歯科医院で幼馴染
みの女性と再会する。彼女は幼い頃に怖かった歯科医院で優
しかった衛生士に憧れ、その道に進んだのだった。そんな彼
女は新米でドジばかりだったが、ある切っ掛けから互いに助
け合うようになる。共演はホリプロタレントスカウトキャラ
バン2010でグランプリ受賞の安田聖愛。他に木村祐一、池田
鉄洋、佐藤藍子、阿部祐二らが脇を固めている。監督は東映
を退社後にニューヨークでアート制作などに携わってきたと
いう榎本二郎の長編デビュー作のようだ。公開は2月15日よ
り、東京は新宿シネマカリテ他で全国ロードショウ。)

『イメージの本』“Le livre d'image”
(2014年10月紹介『さらば、愛の言葉よ(3D)』などのジャ
ン=リュック・ゴダール監督が、88歳にして2018年のカンヌ
国際映画祭でスペシャル・パルムドールを受賞した最新作。
「静寂に過ぎない。革命の歌に過ぎない。5本指のごとく、
5章からなる物語−。」とされた作品。惹句の通り、第1章
・リメイクに始まる5章からなる作品だが、そこには新撮影
も含む150本に及ぶ古今東西の名作映画の断片(溝口健二監督
『雨月物語』、フリッツ・ラング監督『メトロポリス』など
も含まれる)や、絵画、文章、音楽などがゴダール自身によ
るナレーションと共にコラージュされる。と言ってもそこに
形成されるイメージは難解で、1度観ただけでは理解し切れ
なかったが、全体に感じたのは現代の特に国際情勢に対する
不満であり、ある種の革命に対する渇望のようにも取れた。
88歳にしてこの活力、思わず襟を正す作品だ。公開はGW、
東京はシネスイッチ銀座他で全国ロードショウ。)

『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』“Beuys”
(現代アートの起源ともされる第2次世界大戦後のドイツで
活動したアーティストの生涯を、未公開だった本人の映像や
音声で綴ったドキュメンタリー。1921年生。大戦中はドイツ
空軍で参戦するもソ連軍に撃墜され、軽傷だったが後の作風
に影響したという。そんな作品は蜂蜜や獣脂、フェルトなど
を使った彫刻やパフォーマンスで、今なら Youtubeで話題に
なりそうなものも含まれる。そんなボイスは自然保護の立場
から政治活動も開始、1976年の連邦議会選挙への出馬(落選)
から1979年のドイツ緑の党の結党にも関るが…。内部の対立
などもあり党の躍進の中でも議員にはなれなかった。しかし
その一環で1982年に始めた「7000本の樫の木」プロジェクト
は各地に足跡を残している。1986年没。本作を観る限りでは
毀誉褒貶の激しい人のように思えるが、信念の許に生き抜い
た人にも見えた。公開は3月2日より、東京はUPLINK渋谷他
で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二