| 2018年10月28日(日) |
かぞくわり、デイアンドナイト(ムトゥ、マダムのおかしな晩餐会、ヴィヴィアン・W、猫カフェ、ボヘミアン・ラプソディ、共犯者たち) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『かぞくわり』 2018年4月紹介『審判』で製作を務めた奈良県在住塩崎祥平 監督が、折口信夫の小説「死者の書」にインスパイアされた 自らの脚本で、日本の家族のあり方を描いた作品。 主人公は38歳にして定職にも就かず、両親と共に実家暮らし を続けてきた女性。彼女の幼い頃の夢は画家になることで、 それなりの才能も発揮していたが。その夢は叶わず、そんな ことが彼女の人生も狂わしてしまったようだ。 その実家に、著名人に嫁いでいた実妹が思春期の娘を連れて 出戻ってくる。その妹は自分と娘の居場所を確保するため、 家中の家財などを始末し始めるが…。その引き取りに謎めい た男性が現れる。 そして主人公は、街でその男性と再会し、彼に導かれるまま 謎の地下社会に迷い込み、そこで絵画の情熱を再燃させる。 しかしそこでは何やら謀議が進められており、しかもそれに 妹の娘も巻き込まれてしまう。 舞台となっている土地には、「死者の書」に描かれた中将姫 が一夜にして織上げたとされる「当麻曼荼羅」を祀る寺院が 実在し、非業の死を遂げた大津皇子との関係を語る伝説も残 されている。 そんな背景の中で、一度はバラバラになってしまった家族の 再生が描かれる。 出演は「宝塚歌劇団」元宙組トップ娘役で本作が映画初主演 となる陽月華。他に舞台俳優の石井由多加、2017年2月26日 題名紹介『破裏拳ポリマー』などの佃井皆美、テレビシリー ズ『シグナル』などの木下彩音。さらに竹下景子、小日向文 世らが脇を固めている。 基となる「死者の書」は、2006年川本喜八郎監督による人形 アニメーション映画化でも知られており、実は塩崎監督はそ の作品の海外セールスに関っていたとのこと。本作はそんな 経緯もあっての作品のようだ。 しかし本作で塩崎監督が元来描きたかったのは家族の再生物 語であり、そこに「死者の書」が上手く織り込まれたかどう か。正直にはその辺があまりしっくりとはいっていないよう に感じた。 監督は社会性を持たせたかったのかもしれないが、いくつか 織り込まれるエピソードが中途半端な扱いでは、却って真に 語りたい物語への流れを阻害しているようにも感じられ、そ れらは無くても良いのではないかとさえ思える。 ただ僕個人の意見としては、クライマックスの壮大な景観も 含め、ファンタシーとしての描き方にはそれなりの見所も感 じたもので。それならもっと「死者の書」の方に重心を置い て描いても良かったのではないか。 特に途中で訪れる山里の風景などは、もっと深く描き込んで 欲しかったところで、それこそが大津皇子の想いとして捉え ても良かったのではないか、とも思ったものだ。そんな観点 での再挑戦も期待したくなった。 なおその際にはビスタではなく、シネマスコープでその映像 が見たい。 公開は2019年1月19日より、東京は有楽町スバル座他にて、 全国順次ロードショウとなる。
『デイアンドナイト』 2018年3月紹介『50回目のファーストキス』などの俳優・ 山田孝之が初めてプロデューサーに専念し、同じ事務所に所 属する俳優・阿部進之介の原案を映画化した作品。 主人公は父親の自殺で生家に帰ってくる。その父親は、大手 企業の不正を内部告発したが返討に遭い、それで自死に追い 込まれたようだ。そして母親と妹との家族関係は崩壊寸前の 状態だった。 そんな主人公に1人の男が声を掛けてくる。その男は私設の 児童養護施設のオーナーだったが、生前の父親がその施設を 手伝っていたと言い、主人公にもその後を継がないかと持ち 掛ける。 こうして昼は養護施設で調理などの手伝いをするようになる 主人公だったが、実はそのオーナーの夜には、別の顔が隠さ れていた。そして「子どもたちを生かすためなら犯罪も厭わ ない」という考えに傾注して行く主人公だったが…。 始りには2018年5月13日題名紹介『空飛ぶタイヤ』のような 雰囲気もあり、同作のご都合主義的な展開が気になっていた 僕にはそのリアル版かとの期待もしたが。本作の物語にはそ れどころではない、とんでもないリアルが隠されていた。 出演は、阿部進之介が主人公を演じ、他に安藤政信、清原果 耶、小西真奈美、佐津川愛美、渡辺裕之、室井滋、田中哲司 らが脇を固めている。 監督は2018年9月紹介『青の帰り道』などの藤井直人。脚本 は、藤井監督と彼の盟友である小寺和久、それにプロデュー サーの山田孝之によって作られている。 「清濁併せ呑む」という言葉は、大人には美徳のように語る 人もいるものだが、本当にそれで良いのかと問いかけるよう な作品。これがリアル(現実)と捉えるのも良いし、これが リアルではいけないと考えるのも良い作品だ。 なお山田はプロデューサーに専念することに関して、「俳優 が演技しやすい環境を整えることに腐心した」と語っている ようだが、撮影現場に山田がいること自体がプレッシャーに はならなかったのかな。俳優は皆良い演技をしている。 上記の3月紹介作でも感じたが、これが山田効果とも言えそ うな作品だ。俳優たちは山田の人脈のようにも感じるが、良 い顔触れが揃っている。これが今の日本映画の実力と言える 感じもする作品だ。 公開は、2019年1月19日からロケ地である秋田県先行上映の 後、26日より東京はシネマート新宿他で全国ロードショウと なる。
この週は他に 『ムトゥ 踊るマハラジャ』“முத்து” (1998年に日本公開されて、社会現象と言われるまでになっ たインド映画が、4K&5.1chのディジタルリマスターで再 公開される。物語は、大地主の屋敷で働く使用人のムトゥと 彼が仕える旦那様との関係を描いたもの。旦那様は婚約者を 押し付けられているものの女性に興味はなかった。ところが ある日、ムトゥと訪れた芝居小屋で主演女優が好きになる。 しかし彼女の方はムトゥが好きになってしまい…。後半は謎 の行者の登場など、正しく大騒ぎの物語が華やかな歌と踊り と共に綴られる。出演は2012年3月紹介『ロボット」などの ラジニカーント。音楽を2018年5月27日題名紹介『英国総督 最後の家』などのインド映画の巨匠A・R・ラフマーンが担 当している。今観ると見慣れた感も生じるが、CGIではな い群衆シーンなど、当時は間違いなく驚嘆した作品だ。公開 は11月23日より、東京は新宿ピカデリー他で全国順次ロード ショウ。)
『マダムのおかしな晩餐会』“Madame” (2018年10月紹介『ヘレディタリー』などのトニ・コレット と、2014年9月紹介『コングレス未来会議』などのハーヴェ イ・カイテル、それに2016年8月28日題名紹介『ジュリエッ タ』などのロッシ・デ・パルマ共演で、パリに暮らすアメリ カ人夫婦とその家のメイドを巡る物語。女主人が晩餐会を開 催するが、その人数が不吉な13人になってしまい。メイドに 客の振りが命じられる。ところが酒を飲んだメイドは愛嬌を 振り撒き、一家の命運を握る男性が彼女に恋をしてしまう。 果たしてその結末は…。スノッブな夫妻の姿と、艶笑コメデ ィとも言える展開の作品。原作と脚本、監督はパリ生まれだ が現在はロサンゼルスに居住するアマンダ・ステール。長編 監督は2作目のようだが、ベテランの俳優たちの共演で安心 して観ていられる作品になっている。特にデ・パルマの話す パーティジョークは見事だった。公開は11月30日より、東京 はTOHOシネマズシャンテ他で全国順次ロードショウ。)
『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』 “Westwood: Punk, Icon, Activist” (パンクバンド=セックス・ピストルズのプロデューサーと しても知られるイギリスのファッションデザイナーを追った ドキュメンタリー。と言ってもバンドとの関係に関しては本 人が多くは語らない。しかしバンドと共に前衛的なパンクの スタイルを流行させたのは彼女自身であり、特にそこからの 変遷が明確に語られないと、僕には本作の意図が判らなくな った。しかも作品では時系列がやたらと前後し、それはこの 分野に詳しい人にはこれで良いのかも知れないが、部外者の 目からは混乱してしまう部分も多かった。でもまあ、それで も彼女の凄さは伝わってくるのかな。ましてや環境保護との 関係などが語られると、これはもう認めるしかない作品にも なってくる。それにしてもこんなに行動力のあるデザイナー も少ないのではないかな。その方向性が全て正しいものかど うかは判らないが。公開は12月28日より、東京は角川シネマ 有楽町他で全国順次ロードショウ。)
『猫カフェ』 (秋葉原に実在する猫カフェを舞台に、そこに集う人たちの 様々なエピソードを描いた4篇の短編からなる作品。それぞ れのお話はグループの中で人気の延びないアイドルに、痴呆 の老母を介護する女性。娘に会えない離婚した父親と、生徒 に自殺された教師といった具合で、それなりに現代を反映し てはいる。ただ上映時間が短いせいかそれぞれの話はさほど 深く描かれたものではなく、物足りなさが募るかな。でもま あこんな風に総花的に描くのも意味がない訳ではないかもし れない。出演は人気声優の久保ユリカが実写映画初主演。他 にグラビアモデルの小倉優香、さらに宮下順子らが脇を固め ている。監督は2014年『怖すぎる話 劇場版』の沖田光。エ ンドクレジットによると、製作には東京MXテレビが加わっ ていたようで、連続シリーズでもっと多くのエピソードを描 いたら、それなりのものも出てくるかな。公開は12月1日よ り、東京はシネ・リーブル池袋他で全国ロードショウ。)
『ボヘミアン・ラプソディ』“Bohemian Rhapsody” (イギリスのロックバンド=クイーンでリードヴォーカルを 務めたフレディ・マーキュリーの姿を追ったドラマ作品。歌 手の生涯は著名であり、特にその結末は僕らでも知っている ものだが、2012年11月紹介『クイーン ハンガリアン・ラプ ソディ』に感動した者としては、それがどのようにドラマ化 されるかに興味があった。そしてそれは、コンサート自体は 違うものの正に力技で組み伏せられるような、圧倒的な迫力 で再現されていた。出演は2012年12月紹介『ザ・マスター』 などのラミ・マレックと、2007年6月紹介『ミス・ポター』 などのルーシー・ボイントン。他に、『POTC』のトム・ ホランダー、『シュレック』のマイク・マイヤーズらが脇を 固めている。監督は『X−メン』シリーズなどのブライアン ・シンガー。なお製作にはクイーンのブライアン・メイとロ ジャー・テイラーも関っており、劇中の歌唱は全てフレディ 本人のものだ。公開は11月9日より、全国ロードショウ。)
『共犯者たち』“공범자들” (李明博と朴槿恵政権による約9年間にわたる言論弾圧を描 いた韓国製ドキュメンタリー。2008年、狂牛病問題などで国 民の支持を失いかけた李政権はメディアへの介入を開始。公 共放送局のKBSとMBCでは政権に批判的な経営陣が排除 され、記者たちは非制作部門へと追いやられた。これに対し て労働組合はストライキで対抗するも、政権が送り込んだ経 営陣は解雇や懲戒処分を繰り返し、検察も容赦なくストを弾 圧する。そんな事態を招いた「主犯」と権力に迎合した業界 内の「共犯者たち」にカメラを向け、事件の構造が明らかに される。と言っても、事件は進行中の部分もあり、部外者に は少し判り難いかな。まあ韓国国民にはこれで充分なのだろ うけど…。公開は12月1日より、東京はポレポレ東中野他で 全国順次ロードショウ。なお2018年7月紹介『1987』にも描 かれたスパイ捏造事件を扱った『スパイネーション/自白』 という作品も同時上映される。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。 * * なお今週は、東京国際映画祭が行われていますが、そこで の作品については、映画祭の閉幕後に纏めて紹介することに します。
| 2018年10月21日(日) |
ヒューマンフロー(アリー、アメリカン、セルジオ&、MOST、キックス、マシュー・B、TAXi、愛と銃弾、まぼろしの、それだけが、この道) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ヒューマンフロー 大地漂流』“Human Flow” 2013年9月紹介『アイ・ウェイウェイは謝らない』では被写 体になっていた中華人民共和国の現代芸術家=艾未未が、自 らカメラを持って撮影、監督した世界の難民キャンプを巡る ドキュメンタリー。 最初の画面は大海原を飛翔する白い鳥。その国境を持たない 自由な姿と裏腹に、眼下にはすし詰めの人々を乗せた難民船 が登場する。その船はトルコから地中海に浮かぶギリシャ領 のレスボス島を目指しているのだ。 本作の紹介記事では、このプロローグを作品の象徴として賞 賛している文章も見掛けたが、僕はこのような映像を今まで 何度見ただろうか? その既視感が問題の根深さを暗示し、 監督の真意はそこにあるようにも感じた。 作品は監督が世界23カ国、40箇所もの難民キャンプを訪ね、 状況の異なる各キャンプの問題を洗い出して行く。それは政 治や宗教などの原因は敢えて深く追及せず、原状そのものに 焦点を当てているところも見識のように感じる。 その中では、設営からすでに40年以上が経過し、キャンプの 中だけで独自の文化が誕生しているなどの話もあるが、一方 で教育が行き届かず、それが貧困と復讐心を呼び、ISの台 頭へと繋がる図式も描かれる。 さらには米墨国境の状況や、ミャンマーからタイ、バングラ ディシュに流れるロヒンギャ、パキスタンのアフガン難民。 あるいは世界最大の難民キャンプとされるケニア・ダダーブ に暮らす50万の人々など…。 実に様々な難民を取り巻く状況が描かれる。そこにはさらに 根深い問題を抱えているものもあるのだろうが。それも深く は追及せず、敢えて現状の難民の置かれた環境などの問題が 描かれる。これもまた見識とよべる。 僕自身が過去に観た難民を描いた作品では、2010年11月紹介 『君を想って海をゆく』が印象に残るが、そこに描かれたフ ランス・カレーの難民キャンプはすでになく、1万とも言わ れる難民はホームレス化したそうだ。 このようなヨーロッパでの新たな難民事情も描かれる。それ は各国の状況も反映するが、難民の置かれた環境のさらなる 悪化も懸念される。この点が監督の最も言いたかったことの ようにも感じられた。 そして終盤に登場するある画像。それはそれまで避けてきた ように写さなかった映像が唐突に登場する。その衝撃もまた 監督の言いたかったことであろうし、それが観客の胸に突き 刺さる。 鮮烈で過酷な作品だ。それに目を背けることなく、真摯に描 き切る。これが艾未未の真骨頂なのだろう。 公開は2019年1月、東京は渋谷シアター・イメージフォーラ ム他にて全国順次ロードショウとなる。
この週は他に 『アリー スター誕生』“A Star Is Born” (1937年のオリジナルから、1954年、1976年にも映画化され た物語の3度目のリメイク。アルコール依存で落ちぶれ始め ているスター歌手が、ふと立ち寄った場末のクラブで才能豊 かな女性歌手と出会い、彼女をスターダムへと押し上げる。 そして2人は愛し合い結婚に至るが、酒に溺れるスター歌手 は彼女の負担になって行く。37年版はハリウッドが舞台で、 54年版は歌手の話だが映画界も関る。それが76年版と本作で はロック音楽が背景にされている。ただ才能はあるがスター 性に欠ける女性が、一気に駆け登る姿は夢の実現であり、何 時の時代にも共感を呼ぶものだろう。とは言え結末は…そろ そろ変えられないのかな? 出演は映画初主演のレディ・ガ ガと、初監督も兼ねるブラッドリー・クーパー。元はクリン ト・イーストウッド監督の企画だったが、盟友とも言えるク ーパーが実現した。公開は12月21日より全国ロードショウ。 東京国際映画祭のオープニングも飾る。)
『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』 “America's Musical Journey” (両親はパナマからの移住者という南カリフォルニア出身の シンガーソングライターが、新曲制作のためにアメリカ音楽 のルーツを訪ねるドキュメンタリー。内容は奴隷たちの歌に 始まり、ルイ・アームストロングやエルヴィス・プレスリー などアメリカ音楽史が綴られたもので、それがアメリカ各地 の風景と共に実に判り易く提示されている。正直には、後半 にIMAGINE という文字がチラリと映るが、イギリスを除いた アメリカ音楽が興味深く描かれた作品と言える。正に入門編 という感じの作品だ。因に鑑賞したのは通常の試写会場だっ たが、エンドクレジットには15/70IMAXという表記があり、 制作は70��15Perforations横送りの正規IMAXで行われたよう だ。そして画面でも魚眼風のレンズが多用されており、これ はIMAX、若しくはIMAXドームで観たくなるものだが、原状の 日本ではその上映は難しそうだ。公開は11月16日より、東京 は新宿武蔵野館と全国イオンシネマで限定ロードショウ。)
『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』 “Sergio and Serguéi” (日本ではカップヌードルのCMにも登場した旧ソ連の宇宙 飛行士の実話に、大幅なフィクションを加えて映画化したキ ューバ作品。時は1991年、登場するのは旧ソ連の宇宙ステー ション・ミールに滞在するセルゲイ。実は滞在期限は過ぎて いたが、母国の政情不安から交代要員の派遣が決まらず滞在 が延長されていた。そして12月、ソ連邦の崩壊によって滞在 は無期限とされてしまう。一方のセルジオはキューバ国民。 モスクワ留学の経験もある彼は真の共産主義者だったが、ア マチュア無線の趣味からアメリカ人との交信もあり、要注意 人物でもあった。そんな彼が宇宙からの無線を傍受し、宇宙 飛行士の窮状を知ることになる。しかもステーションには危 機が迫っていた。物語の大半は作り物だが、当時の世界情勢 との絡みなどは辛辣で面白い。主演2人はキューバ俳優で、 ロン・パールマンがゲスト出演している。公開は12月1日よ り、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『MOST BEAUTIFUL ISLAND』“Most Beautiful Island” (スペイン出身の女優アナ・アセンシオが、自らの体験を基 に描いたとする初監督作品。2017年SXSW映画祭で最高賞 の審査員大賞を受賞した。ニューヨークに暮らす不法移民の 女性がドレスを着て出席するだけで高額のギャラが貰えると いうパーティに参加。しかしそこはサディスティックなセレ ブが集う危険なパーティだった。そこで彼女が体験した出来 事とは…。出演は監督自身が主人公も演じ、他に日テレのア メリカチャンネルにも出ているというロシア人のナターシャ ・ロマノヴァらが脇を固めている。テーマ的には2018年9月 23日題名紹介『MAKI』に共通するかな。ただし主人公の 体験する内容が、これが実体験と言われると言葉はないが、 セレブの遊びという割には低レヴェルで漫画チック。先の作 品の方が社会性もあって現実的のように感じられた。でもま あこれも現実なのだろう。公開は2019年1月12日より、東京 は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『キックス』“Kicks” (2012年“Nani”という短編作品で多くの受賞に輝いている ジャスティン・ティッピング監督による長編デビュー作。憧 れのエア・ジョーダンを漸く手に入れた少年が、隣町の不良 グループに襲われてスニーカーを奪われ、強敵の手からそれ を取り返そうと奮闘する姿を、ロサンゼルスのスラム街の様 子や若者たちが熱中するスニーカー・カルチャーなどと共に 描く。主演は新人のジャーキング・ギロリー。他にもクリス トファー・メイヤー、クリストファー・ジョーダン・ウォー レスらフレッシュな顔ぶれが並ぶ。また2017年2月5日題名 紹介『ムーンライト』でオスカー受賞のマハーシャラ・アリ らが脇を固めている。基本的にはアメリカの悪ガキたちの話 なのだけれど、銃なども平気でぶっ放す割には物語に共感で きるところもあって、やり方は違ってもこれが若者なのだと 思わせてくれた。公開は12月1日より、東京は渋谷シネクイ ント他で全国順次ロードショウ。)
『マシュー・ボーン IN CINEMA シンデレラ』 “Matthew Bourne's Cinderella” (バレエ界の鬼才と称されるイギリスの振付師が、1946年に 発表されたプロコフィエフの楽曲に基づき、誰もが知る童話 の名作に挑んだ舞台。その全編を撮影した作品。物語の背景 は1941年のロンドン。ナチスドイツによる激しい空襲に怯え る人々は、そんな厳しい環境の許でも恋をし、未来への希望 を失っていなかった。そして主人公は、意地悪な継母の許で 使用人のような生活に甘んじていたが、そこに英国軍将校主 催の舞踏会の案内状が届く…。物語は童話に準えているが、 第2次大戦中という設定にはさすがに驚かされた。そこが鬼 才の真骨頂なのかもしれないが、最近のイギリス映画でこの 時代を懐かしむような作品が増えていると感じるのは、何か 背景があるのかな? その辺が僕には不明だと、全体的に違 和感の残る作品だった。でもまあそれなりに妖精らしき存在 や、魔法のようなものはあるのだが。公開は11月3日より、 東京はYEBISU GARDEN CINEMA他で全国順次ロードショウ。)
『TAXiダイヤモンド・ミッション』“Taxi 5” (1997年に第1作発表のリュック・ベッソン脚本、製作によ る人気カーアクションシリーズが、主人公らのキャスティン グを替えて装いも新たに帰ってきた。登場するのは抜群の検 挙率と運転技術を誇るが、スピード狂が祟ってパリ警察を追 われた刑事。彼はマルセイユ市警に配属されるが、そこでは フェラーリなどの高級車を操る連続宝石強奪事件が横行して いた。一方その町には運転技術の抜群に低いウーバー運転手 がいたが、実は彼は伝説のタクシー運転手ダニエルの甥で、 整備士である彼の姉の許にはプジョー407が再出馬を待って いた。そして強盗団の次の狙いが判明する。出演は、脚本監 督も兼ねるフランク・ガスタンビドと、彼の盟友のマリク・ ベンタルハ。またシリーズ脇役のベルナール・ファルシー、 エドゥアルド・モントートらがそれぞれ前作より階級を上げ て再登場している。公開は2019年1月18日より、日本語吹替 版も同時上映で全国ロードショウ。)
『愛と銃弾』“Ammore e malavita” (2012年10月紹介『宇宙人王さんとの遭遇』などのアントニ オ&マルコ・マネッティ兄弟の脚本監督による2018年ダヴィ ッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀作品賞など5部門受賞の 作品。イタリアの港町ナポリを舞台に、そこの水産市場を仕 切る顔役の犯罪に巻き込まれた看護師と、顔役に雇われた殺 し屋との激しい恋の顛末が、1983年『フラッシュダンス』の 主題歌のイタリア語版など多数のカンツォーネと共に描かれ る。因に楽曲は上記以外は新たに作曲されたようだが、ナポ リ音楽が基調とされたもので多分イタリア人にはそれなりに 伝わるものがあるのだろう。出演は2018年2月25日題名紹介 『いつだってやめられる』などのジャンパオロ・モレッリ、 ミュージカル女優のセレーナ・ロッシ。コメディだが社会性 などのテーマは面白い。でもちょっと人死が多いかな。公開 は2019年1月より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA、新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『まぼろしの市街戦』“Le roi de coeur” (1966年、フィリップ・ド・ブロカ監督の名作が4Kリマス ターにより再公開される。物語の背景は第1次大戦末期のフ ランスの田舎町。敗走するドイツ軍はイギリス軍の侵攻を阻 止すべく町に大型の時限爆弾を仕掛け撤退する。その情報は パルチザンよってイギリス軍に伝えられるが、内容が不鮮明 で、フランス語の判る伝書鳩兵が確認に派遣される。ところ が住民も避難した街には精神病院から出てきた患者たちが思 い思いの生活を始めており、そこに来た主人公は「ハートの 王様」として敬われることになってしまう。そして時限爆弾 の期限は刻々と迫ってくるが…。出演はアラン・ベイツと、 ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。戦争の愚かしさを極限まで 描き切ったような作品だ。なお今回の再上映はフランスでの オリジナル版だそうで、以前の日本公開版とは少し異なるそ うだが、50年前の記憶は定かでなかった。公開は10月27日よ り、東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『それだけが、僕の世界』“그것만이 내 세상” (イ・ビョンホンと、2013年11月紹介『FLU』などのパク ・ジョンミン、それに2012年2月紹介『青い塩』などのユン ・ヨジョンの共演で、元ボクサーの兄とサヴァン症候群でピ アノに天分を持つ弟、その母親を描いたヒューマンドラマ。 主人公は元東洋チャンピオンにまで登り詰めたが、素行の問 題などでタイトルを剥奪され、40歳を過ぎて寝泊まりしてい たジムも追い出される。そんな彼が街で母親に再会し、生家 に帰ってくる。そこは母親と弟の2人暮らしだったが、弟の 世話に掛り切りの母親の姿は、17年前に彼が家を出る原因で もあった。それでも暮らし始めた主人公は徐々に弟の素晴ら しさに気付くが…。物語は有り勝ちかなとも思えるが、映画 はピアノ演奏をクライマックスに据えて実に巧みに作られて いる。しかもそこで演奏される曲が僕らでも判るようなクラ シックの名曲で、その盛り上がりも見事に描かれる。素晴ら しい作品だ。公開は12月28日より、全国ロードショウ。)
『この道』 (1918年『赤い鳥』創刊から100年を記念して製作された日 本童謡のルーツとされる北原白秋と山田耕筰との交流を描く 作品。物語は天才詩人とされるも姦通罪で逮捕されるなどの 北原と、ドイツで音楽を学び日本音楽に新風を呼び込もうと する山田の確執や友情。そこに戦争へと向かう当時の世相な どが描かれる。出演は大森南朋とEXILEのAKIRA。他に貫地谷 しほり、羽田美智子、松重豊、柳沢慎吾、松本若菜、小島藤 子、津田寛治、升毅、由紀さおり、安田祥子らが脇を固めて いる。監督は2017年4月16日題名紹介『八重子のハミング』 などの佐々部清。映画では大正14年のラジオ放送開始の様子 なども描かれ、ここでのラジオ塔の登場はマニア的には嬉し かったが、実際の設置は昭和5年からなのでちょっと勇み足 かな。後半の出征兵士のシーンでは正しいものだが。公開は 2019年1月11日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロ ードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
先週は風邪を引き、インフルエンザではなかったが、1週間 試写会に行けなかった。幸い月曜日が休日だったりしたので 見逃した本数は少なかったが、2本ほど最終試写に行けない 作品も出てしまった。 以前は風邪を引いても2、3日で復帰できたものだが、しか も今年は春先と2回目で、さすがにこれは寄る年波というと ころかな。 今後は出来るだけ気を付けますのでよろしくお願いします。
| 2018年10月07日(日) |
ジョニー・E、ヘレディタリー(バグダッド、おとなの、家族のはなし、山中傳奇、快楽の、世界で一、ハード・C、走れ!T、不滅の、夜明け) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』 “Johnny English Strikes Again” 2003年8月に第1作を紹介したローワン・アトキンスン主演 スパイパロディシリーズの第3作。因に第2作の『気休めの 報酬』“Johnny English Reborn”は試写を観なかった。 物語は、既に現役を引退している主人公が小学校でスパイ活 動の基礎を教えているところから始まる。その内容は如何に も前時代的だが、生徒たちの受けは良いようだ。 一方、ロンドンにある主人公のかつての所属先MI7では機 密漏洩が発覚し、緊急時に現役諜報員を使えない事態が生じ ていた。このため女性首相の一声で引退した元諜報員に召集 が掛かり、主人公もその席に呼ばれる。ところが彼の失敗で 他の諜報員は出動不能になってしまう。 斯くして主人公は、かつての相棒と共に数々の装備を調達し て出動。機密漏洩の主謀者を追って南仏のホテルに向かう。 そしてそこに絶世の美女が関ってくる。 その頃、ロンドンではサイバーテロによって交通渋滞が多発 し、ネット上でITによる国家管理を謳っていたIT富豪に 救援が求められる。そして富豪はiPadを使ってマジックのよ うに事態を収拾してしまう。その手腕に英国首相は心酔し、 彼の起用を進めるが…。 ここから後は、物語としては大体想像の付く通りのものが展 開される。その点での意外性は少ないが、コメディとしては いろいろな仕掛けが満載で、それが楽しめるものだ。 共演は、2008年『007/慰めの報酬』でボンドガールを務めた 2018年6月17日題名紹介『スターリンの葬送狂騒曲』などの オルガ・キュリレンコと、2013年12月紹介『ウォルト・ディ ズニーの約束』などのエマ・トムプスン。 他に2017年8月27日題名紹介『人生はシネマティック!』な どのジェイク・レイシー。また第1作で優秀な相棒役を演じ たベン・ミラーも再登場している。 脚本は、第1作も担当したウィリアム・デイヴィス。監督は テレビシリーズを多数手掛けてきたデイヴィッド・カーの映 画デビュー作のようだ。 最近のアトキンスンは、テレビでジョルジュ・シムノン原作 「メグレ警視」を演じるなど、ストレートな演技でも評価さ れているようだが、そればかりだと肩が凝るのかな。本作で は正に生き生きとおとぼけスパイを演じている。特にキュリ レンコとのダンスシーンはキレキレだ。 2007年12月紹介『Mr.ビーン』など彼のコメディは、日本人 には好き嫌いがあるようだが。第1作の紹介でも書いたよう に本作ではベタな笑いは抑え気味で、比較的真面なコメディ に仕上げられている。そしてスパイパロディとしてもこれは 悪くない。第4作も期待したくなるものだ。 公開は11月9日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国 ロードショウとなる。(9月16日付未掲載分)
『ヘレディタリー 継承』“Hereditary” 同名の研究誌でも著名なアメリカの映画学校American Film Institute出身で、2011年から短編映画を発表していたアリ ・アスター脚本、監督による上映時間127分のデビュー作。 主人公は個展を控えたミニチュアハウス制作者の女性。郊外 に建つ家には彼女とその夫、2人の子供に彼女の母親が同居 していたが、実は過去の経緯により、彼女と母親との関係は あまり上手く行っていなかった。 その母親が死去し、その葬儀には家族の知らない人々が多数 集まってくる。それでも喪主として葬儀は何とか済ませた主 人公だったが、その直後から家族の間に異変が生じ始め、そ の異変は家族関係を崩壊させて行き…。 出演は2018年6月紹介『500ページの夢の束』などのトニ・ コレット(本作にてInternational Online Cinema Awardsの 女優賞を受賞)と、2018年8月26日題名紹介『ライ麦畑で出 会ったら』などのアレックス・ウルフ。 それに2002年生まれで、2013年にブロードウェイデビュー、 その舞台の演技で共演者と共にトニー賞の特別表彰を受けた というミリー・シャピロ。因に彼女が好きなファッションは 原宿、好きな映画のジャンルはホラーだそうだ。 さらに2016年10月紹介『母の残像』などのガブリエル・バー ン、2013年5月紹介『コンプライアンス』などのアン・ダウ トらが脇を固めている。 雪に閉ざされている訳ではないが、郊外のかなり孤立した感 じの一軒家が主な舞台で、そこでミニチュアハウスの制作に 熱中する主人公など、雰囲気的にはスタンリー・クーブリッ ク監督の『シャイニング』を思い出すかな。 特に家族同士が信頼できなくなり、その中で次々に巻き起こ る怪異現象の積み重ねには、その手法を研究した感じもして くる作品だ。 ただし本作の場合は、その結末というか話の落としどころが かなり異質で、それまでの展開と少し落差が大きすぎる感じ がした。それは思い返せば伏線もいろいろ敷かれてはいるの だが、その唐突さには呆気に取られるというか、少し退いて しまう感じもした。 勿論この結末自体が悪い訳ではないが、それならそれなりの 導入がもっといろいろあっても良いと思う訳で、特に本作の 場合は主人公が制作するミニチュアハウスとの関連が、全く 物語に活かされていないのは、勿体なくも感じてしまったと ころだった。 その辺が物語にしっかり絡んできたら、もっと凄い話になる と思ったのだが。 公開は11月30日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国 ロードショウとなる。
この週は他に 『バグダッド・スキャンダル』 “Backstabbing for Beginners” (21世紀初頭。経済封鎖で国民が困窮するイラクでは、国連 の指揮下で支援活動が行われていた。2002年、国連事務次長 の特別補佐官に任命されたマイクル・サリヴァンはバグダッ ドの現地事務所に派遣される。しかしそこにはフセイン政権 と繋がるフィクサーやクルド人の出自を隠す通訳など様々な 人物がおり、数々の不正も行われていた。その実態に驚くサ リヴァンだったが、上司からは国民を守るため不正には目を 瞑れと説得される。そんな彼の手に不正を暴く決定的な証拠 が届けられるが…。出演は、製作総指揮も務める2017年5月 紹介『ダイバージェント』などのテオ・ジェームズと、トル コ出身のベルシム・ビルギン。さらにベン・キングズレー、 ジャクリーン・ビセットらが脇を固めている。脚本と監督は 2014年『ストックホルムでワルツを』のペール・フライ。こ れは実話に基づく驚愕の作品だ。公開は11月3日より、東京 は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『おとなの恋は、まわり道』“Destination Wedding” (キアヌ・リーヴスとウィノナ・ライダーの共演で、僻地で 行われるリゾート結婚式に招かれた男女を巡る物語。男性は 新郎の弟で、兄弟仲は良好ではなく父親とも確執があった。 女性は新郎の元婚約者で、準備した結婚式を直前にキャンセ ルされた。しかし2人とも心の大きさを見せたくて招きに応 じたものだ。そんな2人が僻地に飛ぶ飛行機の出発空港では いがみ合うが、飛行機の席は隣り同士でそれなりに会話を始 めるようになる。さらに用意されたホテルの部屋も隣り同士 で、前夜祭のパーティでも浮いてしまう2人は、2人だけの 会話を弾ませるようになって行き…。脚本と監督は、2014年 公開『5時から7時の恋人カンケイ』などのビクター・レヴ ィン。こういう作品が好きな人も多いのかもしれないが、若 い内ならいざ知らず、自分の年齢になると正直あまり笑えな いというか、切実だったかな。公開は12月より、東京はTOHO シネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
『家族のはなし』 (2015年2月紹介『振り子』に続く、鉄拳原作パラパラ漫画 の実写映画化。前作の夫婦の機微から本作では親子関係が描 かれる。主人公は大学を中退してバンド活動中。すでにプロ としての足掛かりも掴んでいる。そこに父入院の報が届き、 急いで長野県の生家に帰ってくるが…。父親は検査入院で無 事。しかし生業のリンゴ農園に後継者はいない。しかも主人 公はレコード会社から契約解除を通告されてしまう。出演は 岡田将生、成海璃子、財前直見、時任三郎。他に金子大地、 佐藤寛太らが脇を固めている。鉄拳がアートディレクターも 務め、監督はBS-TBS「ケータイ刑事」など山本剛義の映画デ ビュー作。2006年12月紹介『神童』で注目された成海の「バ イエル2冊」発言には笑ったが、最後の父親の行動は、何か あると思っていても胸を突かれた。場面転換にパラパラ漫画 が使われるなど仕掛けも面白い。公開は11月23日より、全国 のイオンシネマにて上映。)
『山中傳奇』“山中傅奇” (1975年カンヌ国際映画祭に出品『侠女』で中華圏初の受賞 を果たすなど、武侠映画の牽引者だったキン・フー監督によ る本国公開1979年の作品。日本では今まで映画祭での短縮版 上映のみだった作品が、4Kリマスター、192分の全長版で 劇場初公開される。時は11世紀、宗の時代。貴重な経文の写 経のため静かな環境を探していた主人公は、男に案内されて 山奥の城跡を訪れる。そして写経を始めた主人公だったが、 世話役の女性から娘を紹介され、結婚に至る。しかしその娘 には写経に関る大きな秘密があった。出演は後に『さらば、 わが愛 覇王別姫』などの製作総指揮を務めるシュー・フォ ンと、2018年6月3日題名紹介『妻の愛、娘の時』などのシ ルヴィア・チャン。さらに『侠女』でもフォンと共演のシー ・チュン。逆回し中心の視覚効果は流石に古色だが、長尺の 物語はしっかりと楽しませてくれる。公開は11月24日より、 東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『快楽の漸進的横滑り』 “Glissements progressifs du plaisir” (前回題名紹介『ヨーロッパ横断特急』と共に回顧上映され るアラン・ロブ=グリエ監督の1974年作品。娼婦が殺され、 同じ家にいた女性に嫌疑が掛かる。このため女性は修道院の ような場所に勾留されるが、そこに殺された娼婦にそっくり な女弁護士が現れたり、女体を筆にして描かれる絵画など、 一筋縄では行かないストーリーが展開される。それを監督は 「革命への希望の体現」と称するが、先進的表現は各国で上 映禁止などの憂き目にも遭った作品だ。出演は1971年『フレ ンズ』で主人公のミシェルを演じたアニセー・アルビナ。他 にジャン=ルイ・トランティニャン、イザベル・ユペール、 2011年1月紹介『神々と男たち』などのマイクル・ロンズデ ールらが脇を固めている。ロブ=グリエ本人による原作も翻 訳されているものだが、その原作も物語性を拒否した難解な 作品のようだ。公開は11月下旬より、東京は渋谷シアター・ イメージフォーラム他にて全国順次上映。)
『世界で一番ゴッホを描いた男』“中國梵高” (中国広東省深圳市大芬。そこは世界市場に流れる複製画の 6割が制作されているという絵師の町だ。その町で20年間、 ゴッホの絵だけを作り続けてきた趙小勇。彼は油絵を学んだ こともなく、独学で多い時には月600〜700枚、10万点以上の ゴッホの複製画を描いてきた。そんな彼が本物のゴッホの絵 を見にオランダに行こうと思い立つ。それはゴッホの生き様 にも心酔する彼が、本物を見れば何かが変わると思ったから だ。そしてついにその夢が実現するが…。正直に言って高々 この程度の話で、自分がこんなに感動すると思わなかった。 それはオランダ訪問の後でパリに立ち寄り、そこでゴッホが 描いた「夜のカフェテラス」の現地を訪れた感激などが見事 に伝わってきたもので、自分もその想いを共有することがで きた。監督は著名な写真家でもある余海波と娘の余天��。こ んな見事な作品は久し振りだ。公開は10月20日より、東京は 新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『ハード・コア』 (別名義で発表された『オールドボーイ』が韓国で映画化さ れた狩撫麻礼(原作)、『デメキング』などが映画化された いましろたかし(画)で1991−93年に発表のコミックスを、 山下敦弘監督×山田孝之主演で映画化した作品。右翼団体の 構成員の兄と、商社マンの弟、それに知恵遅れと思われる男 性と謎のロボットが加わって、かなり過激な物語が展開され る。共演は佐藤健、荒川良々。他に石橋けい、康すおん、松 たか子らが脇を固めている。ロボットは出てくるがSF的に 特筆すべきものはない。正直なところはかなり優秀で多機能 なロボットなので、もっと活躍があっても良いと思ったが、 恐らく原作者も本作の監督もそこへの興味はなかったのだろ う。それより本作が描きたいのはダメ男たちの生態で、その 点は山下監督がしっかりと描いている。それが映画ファンの 観たかったものという作品だ。公開は11月23日より、東京は 新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『走れ!T校バスケット部』 (栃木県の高校を舞台にスポーツに賭ける若者たちを描いた 青春ドラマ。主人公は幼くしてバスケットボールを始め、中 学時代の活躍で名門校に入学。しかし部活で苛めに遭ってい た同級生を庇ったことから自分が標的にされ、自主退学に至 る。そして部活はしないと決めT校に転入するが、そこには 弱小のバスケットボール部があり、その女子マネージャーが 彼に気付いてしまう。こうしていくつかの出来事の結果、主 人公は再び面白さに気付いて行くが…。全国大会を目指す彼 の前に名門校が立ちはだかる。こう書くとただのスポーツも のに見えるが、内容には苛めを含む様々な出来事が織り込ま れ、正に青春ドラマと呼べる物語が展開されていた。出演は 志尊淳、佐野勇斗、早見あかり。他に千葉雄大、YOU、竹中 直人、椎名桔平らが脇を固めている。監督は2018年7月15日 題名紹介『青夏』などの古澤健。公開は11月3日より、東京 は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『不滅の女』“L'Immortelle” (『快楽の漸進的横滑り』と共に回顧上映されるアラン・ロ ブ=グリエ監督の1963年デビュー作品。舞台はトルコのイス タンブール。その不思議な街並みや城塞の廃墟などを背景に 1人の女の姿に惑わされる男の彷徨が描かれる。と言っても 物語に一貫性はなく、様々な仕掛けの中で、男の幻想とも取 れる物語が展開される。作品は1962年ルイ・デリュック賞を 受賞しているが、当時も賛否はかなり分れたようだ。作家性 の高い作品で、正直何が言いたいのかも判らないが、それは それで評価しても良いと思える作品ではある。出演はフラン ソワーズ・ブリオン、ジャック・ドニオル=バルクローズ、 カトリーヌ・ロブ=グリエ(監督夫人)。公開は11月下旬よ り、東京は渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順 次上映。なお回顧上映では他に、『嘘をつく男』(1968年)、 『エデン、その後』(1970年)、『囚われの美女』(1983年)が 上映される。)
『夜明け』 (是枝裕和、西川美和主宰の制作者集団「分福」に所属し、 両監督の作品で助手を務めてきた広瀬奈々子が、主演に柳楽 優弥を迎えた監督デビュー作。夜明けの橋に佇む若者。やが て朝になり、若者は通り掛かった木工所の経営者に拾われ、 その仕事を手伝うようになる。しかし若者は自身について語 ろうとしない。そして経営者にも語れない過去があった。家 族を捨ててきた若者と、家族を作ることに失敗した経営者。 そんな2人の人生がもつれ合う。共演は小林薫。他に共に元 ミュージシャンのYOUNG DAISと鈴木常吉。2017年10月8日題 名紹介『嘘八百』などの堀内敬子らが脇を固めている。物語 の人物配置はかなり巧みで、無理のない現実的な展開が作品 を完成されたものにしている。ただし結末には異論を挟む人 も出てきそうだが、僕はこの結末が余韻もあり好ましく感じ た。公開は2019年1月18日より、東京は新宿ピカデリー他で 全国ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
|