井口健二のOn the Production
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2018年09月30日(日) single mom、ボクはボク(ピアソラ、おかえり、アラン・デュカス、ハナレイ、ぼけますから、選挙に出たい、Journey、ヨーロッパ横断)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『single mom 優しい家族。 a sweet family』
2011年1月紹介『心中天使』などの内山理名主演で、北海道
ニセコ町を舞台に、シングルマザーとその子供の姿を実話に
基づくエピソードを中心に描いた、少しファンタスティック
な展開もある作品。
主人公は11歳の娘を女手一つで育てている。その経緯は明白
ではないが、夫は外国人でDVもあったようだ。そして親子
はニセコ町の一軒家に住んでいるが、食べるものにも事欠く
状況で、貯金も尽きかけている。しかしプライドが許さない
のか、生活保護の申請は拒絶してしまう。
そんな母親が、自らもシングルマザーだという自治体職員の
アドヴァイスを受け始める。それは親身なものであったが、
その言葉は中々彼女の心に届かない。それでも一歩ずつ進み
始める母親ではあったが…。
一方、娘は偶然立ち入った家に住む、普段は寡黙なミニカー
職人の男性と交流を始める。そして娘はその家の屋根裏部屋
であるモノを発見していた。ところがその後に男性の何気な
い言葉から気を回した娘は万引きを働き、それに気付いた母
親から激しい叱責を受けてしまう。
だがそれは、母親自身がやはりシングルマザーだった自分の
母親から受けた仕打ちの繰り返しだった。

共演は、撮影当時11歳だった長谷川葉音。秋葉原を中心に活
動する鉄道アイドルグループ=ステーション♪のメムバーで
もあるニューフェイスが映画初出演を飾っている。他に石野
真子、木村祐一らが脇を固める。
脚本と監督は、「マツモトキヨシ」の創業者の孫で元衆議院
議員の松本和巳(小泉チルドレン)。48歳で政治活動を休止
し、2013年からは劇団を主宰して若手アイドルタレントの育
成を目指しているという監督の長編デビュー作だ。
実は、上映をベテランの映画評論家の方たちと一緒に観させ
て貰い、上映後の監督とのQ&Aも聞かせて貰った。その際
の監督の発言によると、ミニカー職人の件以外は全て実際に
取材したシングルマザーの体験に基づいているとのこと。
また劇中に描かれるFood loss の運動に関しては、取材して
認識が変ったとのことで、監督自身が現在もその運動に協力
しているそうだ、
ただ僕個人としては、ミニカー職人の件に関連して娘が発見
するモノの来歴が不明確で悩ましかったが。この点に関して
は、出席していた評論家の人から「大林宣彦みたい」という
発言があり、一般的にそういう認識なのだと理解した。その
点がファンタスティックと言える作品ではある。
なお劇中の長谷川の役名がエミリーで、木村扮するミニカー
職人がその名前を呼ぶシーンがあり、僕はそこでもニヤリと
したが、その点は誰も訊いてはくれなかった。

羊蹄山の雄姿など北海道の大自然を写したドローン撮影も素
晴らしく、その中で感動的なドラマが展開される。
公開は10月6日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町他で全国順次ロードショウとなる。

『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる』
2009年10月20日付「東京国際映画祭」で紹介『ザ・コーヴ』
などでも取り上げられた和歌山県太地町を背景にした青春群
像ドラマ。
舞台になるのは「太地町立くじらの博物館」。日本唯一、世
界でも珍しいとされるクジラに特化した博物館には、太地町
伝統の捕鯨文化やクジラの生態を解説する展示と共に、館外
には、クジラのダイナミックな演技が披露されるショウの会
場が設けられている。
しかし観客動員は年々減少し、クジラの飼育員も次々に辞め
て行く状況の中、経営の立て直しのため招かれた新館長は、
ベテランの飼育員リーダーに代えて「クジラバカ」と自他共
に認める純粋な若者を新リーダーに抜擢。それと共に東京か
ら新たなトレーナーがやって来るが…。
交代させられた前リーダーやその取り巻きたちとの確執や、
さらには新婚家庭に問題を抱える飼育員など、様々な人間模
様が交錯する中で、博物館再興のプランが新リーダー、新ト
レーナーらの間で練られて行く。果たしてそのプランは実現
し、博物館に客足を取り戻すことはできるのか?

出演は、ホリプロ50周年事業「身毒丸」のオーディションで
グランプリを獲得し、2018年5月13日題名紹介『空飛ぶタイ
ヤ』などにも出演の矢野聖人と、2018年5月紹介『世界でい
ちばん長い写真』などの武田梨奈、それに和歌山県出身で、
2017年2月紹介『サクラダリセット』などの岡本玲。
他に、近藤芳正、鶴見辰吾らが脇を固めている。
脚本は本作のプロデューサーも務める菊池誠が担当、監督は
2015年に『U・F・O Ushimado's Fantastic Occurrence
うしまどの、ふしぎなできごと』という作品を発表している
藤原知之が手掛けた。
ところで武田梨奈は、2018年9月16日題名紹介『殺る女』と
きにも「そろそろ何かを期待したい」と書いたが、本作では
けり一発と、本人ではないけど「ぷしゅー」の台詞もあって
ファン的にはそれなりに満足かな。
それに加えて本作では、当初はスタントマンの吹き替えも考
えられたクライマックスのクジラとのパフォーマンスを見事
に自身で決めており、さすがの空手で鍛えた身体能力とそれ
をやり遂げる根性にも感動させて貰えた。
それにしても武田は、2013年11月紹介『祖谷物語』の徳島県
以降、2016年5月22日題名紹介『海すずめ』の愛媛県、今年
は『世界でいちばん…』の愛知県に続き本作の和歌山県と、
地方発信ドラマに着実に出ているのも頼もしい。
因に武田は、動物愛護アンバサダーとしての活動もしている
そうだ。
さらに本作は、物語の後半に反捕鯨団体の話なども登場し、
抑えるところはしっかりと押さえた作品になっている。

公開は、10月12日から和歌山県で先行上映の後、11月3日よ
り、東京はシネリーブル池袋他で全国ロードショウとなる。

この週は他に
『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』
             “Astor Piazzolla inédito”
(1921年アルゼンチンに生まれ、タンゴを単なる踊りの伴奏
から演奏と認められるまでに進化させ、タンゴに革命を起こ
したとされるバンドネオン奏者で作曲家アストル・ピアソラ
の生涯を、家族所蔵の映像を基に描いたドキュメンタリー。
本国の生まれだが、幼い頃に一家はニューヨークへ移住し、
15歳までの暮らしでジャズなどに親しむ。そこでタンゴへの
興味は薄かったがバンドネオンの演奏で認められ、帰国後に
父親が開いたレストランで演奏活動を開始。タンゴに目覚め
て行く。しかし活動に行き詰まりパリへ留学。彼の地で再認
識に至るが、帰国後に行った先鋭的な演奏では「タンゴの破
壊者」とも罵られ、命を狙われるようにもなってしまう。そ
んな20世紀を代表するともされる音楽家の激動の生涯が描か
れる。作中には華麗な演奏シーンも多数登場し、音楽好きに
は堪らない作品と言える。公開は12月1日より、東京は渋谷
Bunkamuraル・シネマ他で全国順次ロードショウ。)

『おかえり、ブルゴーニュへ』“Ce qui nous lie”
(2006年4月紹介『ロシアン・ドールズ』などのセドリック
・クラピッシュ監督が、ワイン生産者の一家を描いた新作。
10年前に父親への反発から海外に飛び出していた長男が、父
危篤の報に帰ってくる。その生家は妹が守っており、末弟は
大規模ワイナリーの婿養子となっていたが、それぞれ悩みも
抱えていた。そして父親が死去し、その相続の問題が発生す
る。そんな中でブドウの収穫期が訪れ、新酒の仕込みが始ま
るが…。2018年7月22日題名紹介『ウスケボーイズ』に続い
てのワインの話で、日本とフランスの文化の違いはあるもの
の、どちらもワイン生産の面白さやいろいろな問題は判り易
く紹介されていた。特に本作では、それぞれの家族の機微が
巧みに描かれ、さすがベテラン監督の手腕とも思わされた。
また四季の変化を定点カメラで写した映像も見事だった。公
開は11月17日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA他にて全国
順次ロードショウ。)

『アラン・デュカス 宮廷のレストラン』
             “La quête d'Alain Ducasse”
(2018年8月に他界したジョエル・ロブションと並び、ミシ
ュランで最も多くの星を獲得したとされるフランスの料理人
に2年間の密着取材を敢行したドキュメンタリー。1990年、
33歳の時に史上最年少での3ツ星を獲得。世界に展開される
20以上のレストランで合計18もの星に輝いている料理人が、
新たにヴェルサイユ宮殿の中にレストランを開店する。その
準備の様子と、料理人が世界各地を飛び回って現地の食材を
試したり、新たな食材を求めて行く姿が描かれる。その中で
は中国でチョウザメを養殖して最高級のキャビアを作り出し
たり、モンゴルのゴビ砂漠でチンギスハンの都カラコルムを
訪ねたり…。その一方で料理人はフィリピンのマニラに調理
師学校を設立し、そこではストリートチルドレンに奨学金を
与えて料理人を育ててもいる。そんな世界を股に掛けた料理
人の活動がカメラに収められている。公開は10月13日より、
東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)

『ハナレイ・ベイ』
(2011年1月紹介のドキュメンタリー『ピュ〜ぴる』などの
松永大司脚本、監督で、2005年に発表された村上春樹の短編
集「東京奇譚集」に収録の同名小説を実写映画化した作品。
物語はハワイでのサーフィン中の事故で息子を亡くしたシン
グルマザーの女性が、遺体の確認後に事故の起きた浜辺に向
かう。そこでひと時を過ごした女性は、その後は毎年命日の
頃に浜辺を訪れ、数週間を過ごすようになる。その10年後、
女性は亡くなった時の息子と同じような年頃の日本人の若者
から、浜辺で片足の日本人サーファーを見掛けたと教えられ
る。その風体は息子に似ていたが…。出演は2018年7月29日
題名紹介『母さんがどんなに僕を嫌いでも』などの吉田羊、
同年4月15日題名紹介『虹色デイズ』などの佐野玲於、同年
8月12日題名紹介『銃』などの村上虹郎。他に佐藤魁、栗原
類らが脇を固めている。公開は10月19日より、東京は新宿ピ
カデリー他で全国ロードショウ。)

『ぼけますから、よろしくお願いします』
(自らの乳がん闘病記で海外映画祭での受賞を果たしたTV
ディレクターの信友直子が、認知症の母親と耳の遠い父親を
題材に描いたドキュメンタリー。僕の両親はすでに亡いが、
母親が認知症を患っていたこともあり、他人事では観られな
い作品だった。特に部屋の中に無造作に置かれた石油ストー
ブなどを見ると、ハラハラしてしまう場面も多くなってしま
った。だから一緒に観た他の人たちのように笑ってばかりで
はいられなかったが、作品にはユーモアも込められ、また愛
情もたっぷりに作られていた。内容的には2014年5月紹介や
2018年4月15日題名紹介の『毎日がアルツハイマー』もあっ
たから、特段記すようなものでもないが、どちらも介護する
側が元気でないとやっていけないなとは思わされた。それと
本作では、過去の映像が残っていることに現実の厳しさも感
じてしまった。公開は11月3日より、東京はポレポレ東中野
他で全国順次ロードショウ。)

『選挙に出たい』
(2015年に行われた統一地方選挙で東京都新宿区区議会議員
に立候補した元中国人の男性を、日本在住中国人の女性監督
が追ったドキュメンタリー。男性は来日から20年。来日直後
に訪れた新宿歌舞伎町で、外国人観光客相手に飲食店や風俗
店を紹介する案内業を始め、やがて「歌舞伎町案内人」と題
する著書も出版して知られた存在となる。そんな彼が母国籍
を捨て、日本に帰化して選挙に立候補する。しかしこれには
背景があって、実は彼の父親は政治家だったが文化大革命当
時に罪を着せられて失脚。そんな思いが彼を選挙に駆り立て
たようだ。ところが政党のアドヴァイスで国籍を取得し、立
候補はしたものの公認は得られず、さらに地盤割り当てで街
頭演説の場所も制限されてしまう。そんな理不尽に曝されな
がらも選挙戦は続けて行くが…。内容は日本の選挙の裏側が
垣間見えて、予想以上に面白かった。公開は12月1日より、
東京はポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)

『アジア三面鏡・Journey』
(2016年11月5日付「東京国際映画祭」で紹介した映画祭が
独自に製作する映画の第2弾。今回は中国のデグナー、日本
からは『ハナレイ・ベイ』の松永大司、それにインドネシア
のエドウィンが参加してそれぞれ30分程度の3作品が制作さ
れた。多分副題がテーマを示しているのだろうが、1本目で
は母と娘がある目的で車旅をする。2本目はヤンゴンを走る
環状線の高速化のためやって来た日本人技術者の話。3本目
ではある目的で日本を訪れた倦怠期の夫婦の話が描かれる。
それぞれ旅に関る話ではあるが一貫性はなく、独立した作品
だ。その中で僕は2本目の松永監督作品が一番好きかな。鉄
道が描かれているのも良かったし、地元の人との交流や物語
自体にもしっかりとした社会的なテーマが感じられた。公開
は11月9日より、東京は新宿ピカデリー他で全国順次ロード
ショウ。なお、それに先立って第1弾『リフレクションズ』
も10月12日より同劇場で公開される。)

『ヨーロッパ横断特急』“Trans-Europ-Express”
(1961年公開、アラン・レネ監督『去年マリエンバードで』
の脚本などで知られ、2008年に亡くなったフランスの小説家
で映画監督でもあったアラン・ロブ=グリエが、1966年に自
身の監督第2作として発表した作品。パリ―アントワープ間
の高速列車に乗り込んだ監督が映画の構想を練るという設定
の許、その構想に登場する麻薬の運び屋の物語が並行して展
開される。出演は、2013年1月紹介『愛、アムール』などの
ジャン=ルイ・トランティニャン。彼は同年『男と女』にも
主演している。物語は監督の構想によって左右され、しかも
それらが交錯するという、正にメタフィクションと呼べるも
のになっており、ヨーロピアン・アヴァンギャルドの最重要
作品とも呼ばれているそうだ。でも話は判り易くて面白い。
公開は11月下旬より、東京は渋谷シアター・イメージフォー
ラム他にて全国順次に開催される監督の回顧上映6作品の内
の1本として、日本では劇場初公開となる。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2018年09月23日(日) ルイスと不思議(生きてる、Merry Christmas、宇宙の法、モダンライフ、ポルトの、MAKI、アンナ、シシリアン、第三世代、暁に祈れ)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ルイスと不思議の時計』
        “The House with a Clock in Its Walls”
アメリカのゴシック作家ジョン・ベレアーズが1973年に発表
したジュヴナイル小説「ルイスと魔法使い協会」シリーズの
第1巻「壁のなかの時計」を、2018年7月29日題名紹介『デ
ス・ウィッシュ』などのイーライ・ロス監督が映画化。
時代背景は1955年。両親の突然の死で伯父の家に引き取られ
ることになったルイスは、長距離バスでミシガン州の田舎町
にやって来る。そこで伯父には快く迎えられたルイスだった
が、その伯父は二流の魔法使いで、住んでいる家は不思議な
現象の宝庫だった。
一方、伯父の家の隣りにはトラウマを抱えた一流の魔女が住
んでおり、伯父とは長い付き合いのようだが、ちょっと偉そ
うだ。そんな伯父の家で生活するようになったルイスだが、
伯父からは棚に置かれた降霊術の本だけには絶対に触っては
いけないと釘を刺される。
こうして地元の学校にも通うようになったルイスだが、なか
なか馴染めない少年は伯父に習ったちょっとした魔法で友達
の気を引こうとする。しかし上手く行かないルイスは、遂に
禁断の本に手を伸ばすが…。
その頃、伯父たちは先代家主の魔法使いが家の何処かに隠し
た時計を探していた。その時計は世界を破滅に導くもので、
先代の魔法使いはそれを動かす直前に亡くなっていたのだ。
果たして伯父たちは時計を発見して破壊し、世界の破滅を阻
止することができるのか?

出演は、2012年5月紹介『ビッグ・ボーイズ』などのジャッ
ク・ブラックと、2016年4月紹介『ニュースの真相』などの
ケイト・ブランシェット。そしてタイトルロールのルイス役
には、2015年“Daddy's Home”で新旧2人の父親に振り回さ
れる息子を演じたオーウェン・ヴァカーロが扮している。
さらに『ツイン・ピークス』のカイル・マクラクランが久々
スクリーンに登場する。
脚本は、2006年5月紹介『ブギーマン』で原案と初期の脚本
を手掛けたエリック・クリプキ。テレビの“Supernatural”
なども手掛ける人気クリエーターは、本作のプロデューサー
にも名を連ねている。
そしてロス監督は、元々は2001年『キャビン・フィーバー』
で人気を博したヴァイオレンス・ホラーの名手だが、本作で
は子供向けに無邪気に楽しめる作品を誕生させた。
『ハリー・ポッター』ほどのビッグスケールではないが、家
の中に散りばめられた魔法のギミックは存分に楽しめるし、
それらが主人公たちを襲うホラー感覚にはロス監督らしさも
見せてくれる。そんなほどほどの恐怖と楽しさに溢れた作品
と言える。
因に原作シリーズは、原作者が1991年に没するまでに3作を
発表しており、さらに大学教授でSF・ファンタシー作家の
ブラッド・ストリクランドに引き継がれて、原作者の原案に
基づく3作とその後も全12作が発表されているようだ。

公開は10月12日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。(9月9日付未掲載分)

この週は他に
『生きてるだけで、愛』
(2014年3月紹介のオムニバス『恋につきもの』で表題作に
出演の趣里と、2017年9月17日題名紹介『あゝ、荒野』など
の菅田将暉の共演で、芥川賞作家・本谷有希子の同名小説を
映画化。ゴシップ雑誌の記者と自称鬱病の女性のカップル。
女性は病気を理由にいつもグダグダとしてたが、そこに記者
の元カノが現れて事態が動き始める。共演は仲里依紗。他に
田中哲司、西田尚美、松重豊。さらに2018年6月24日題名紹
介『きみの鳥はうたえる』などの石橋静河、2016年4月紹介
『秘密』などの織田梨沙らが脇を固めている。自分も結婚生
活が長くなると、どんな状況でも相手を愛し続けるのが男性
だと思える。本作の女性はかなり面倒臭いが、それでも彼は
彼女を護り続けるだろう。正直前半はきついが、元カノの登
場からの展開は良い。脚本と監督は、数多くのCMやPVを
手掛ける関根光才の長編デビュー作。公開は11月9日より、
東京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』
          “The Man Who Invented Christmas”
(イギリスの作家チャールズ・ディケンズが、1843年『クリ
スマス・キャロル』を執筆するに至る経緯を、作家の半生と
言霊のような登場人物たちと共に描いたファンタスティック
なシーンもある作品。『オリヴァー・トゥイスト』の成功で
人気作家となったディケンズはアメリカ旅行を敢行。しかし
帰国後に発表した作品の評価は芳しくなかった。そこで次作
を自らの手で出版することに決めるが、アイデアは一向に浮
かばない。そんな時、ふと聞いたアイルランドの民話から、
自らの過去も照らした物語を書き始めるが…。当時イギリス
ではクリスマスの風習は廃れかけており、彼の書籍が人々の
心を取り戻したとも言われているそうだ。出演は2017年8月
紹介『シンクロナイズド・モンスター』などのダン・スティ
ーヴンス。他にクリストファー・プラマー、ジョナサン・プ
ライスらが脇を固めている。公開は11月30日より、東京は新
宿バルト9他で全国ロードショウ。)

『宇宙の法 黎明編』
(大川隆法原案、製作総指揮による「幸福の科学出版」製作
の長編アニメーション。2015年公開『UFO学園の秘密』の
続き。前作で宇宙生命体の侵攻から地球を守る闘いを繰り広
げた若者たちが、さらに時空を超えた戦いに巻き込まれる。
前作では、単なる宇宙生命体との闘いだったが、本作ではさ
らに地球文明の根源に纏わる神の意思のようなものが提示さ
れる。それが題名の由来でもあるようだ。とは言え、物語自
体は地球への侵略に対する防衛戦を描いているに過ぎない。
ただし、本作で神の言葉の中に言及される「金星での試み」
のその後や、基より本作の舞台となる3億3000万年前に築か
れた宇宙規模の地球文明と現代との繋がりがどうなっている
のか。それは今後の作品で明らかになるのだろうが、その展
開には興味が湧く。公開は10月12日より、東京は丸の内TOEI
他で全国ロードショウ。また本作はアメリカでも同時公開と
なるようだ。)

『モダンライフ・イズ・ラビッシュ
ロンドンの泣き虫ギタリスト』“Modern Life Is Rubbish”
(イギリスのロックバンドblurが1993年に発表したアルバム
と同じ題名の映画作品。iPadなどの配信に反発し、手造りの
音楽をこよなく愛するギタリストと、彼が心から愛した女性
を巡る物語。主人公はレコード店でblurのアルバムを手にし
た女性に声を掛け、レコードジャケットのデザイナーを夢見
る彼女と同棲を始める。しかしやがてレコード店は閉店し、
配信音楽にはジャケットの需要もない。そんな中でも理想の
音楽を目指してもがき続ける主人公だったが、広告代理店に
職を得た女性とすれ違いが生じてしまう。物語には、blurや
レディオヘッドなど英国ロックの楽曲が彩を添える。出演は
2016年“The Receptionist”などに主演のジョシュ・ホワイ
トハウスと、2016年公開『アナザー』などのフレイア・メー
バー。結末の切っ掛けはちょっと皮肉だが、そこからの展開
が素敵でもっと観たくなった。公開は11月9日より、東京は
新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『ポルトの恋人たち 時の記憶』
(2009年9月紹介『谷中暮色』や2012年8月紹介『フタバか
ら遠く離れて』などの舩橋淳監督による日本・ポルトガル合
作作品。1755年のリスボン震災、その5年後の復興に関った
日本人男性と、2021年の不況に喘ぐ浜松に暮らすポルトガル
人女性を繋ぐ宿命と呼べる物語。250年前の男性は鍛冶の腕
を持つが身分は奴隷で、女性を愛したことが主人の不興を買
う。そして現代の男性はポルトガル人妻と暮らす日系ブラジ
ル人の工員、ポルトガルギターの演奏家でもあったが、勤務
先はリストラを進めていた。そんな状況下で復讐劇が展開さ
れる。出演は柄本佑、2013年公開『熱波』などのアナ・モレ
イラ、2017年2月26日題名紹介『ママは日本へ嫁に行っちゃ
ダメと言うけれど』などの中野裕太。2つの時代の主人公が
共に技術を持つのに不遇というのには、監督の想いも感じら
れる。結末は時の流れの結果かな? 公開は11月10日より、
東京はシネマート新宿他で全国ロードショウ。)

『MAKI』
(ニューヨークの歓楽街に勤める日本人女性を描いた作品。
主人公は語学留学と称しているが、日本人向けクラブのホス
テスでは英語も学べていない。そして職場の決まりで従業員
同士の恋愛は禁止だが、彼女はバーテンダーと付き合ってい
る。こんな話は歌舞伎町でもありそうだが、そこにアメリカ
ならではの事件が関ってくる。ただ事件の背景などが不明確
で、全体としてはメリハリに欠けるかな。特に主人公の心理
面の葛藤などはもっと描き込まないと、観客には現象としか
受け止められない。出演は、モデルでユニクロのCMなどに
登場のサンドバーグ直美、東京出身でブロードウェイの舞台
にも立つというジュリアン・スィーヒ、それに原田美枝子。
脚本と監督は、イラン出身で2011年10月紹介『カット』など
のアミール・ナデリ監督に師事したというナグメ・シルハン
の長編第2作。公開は11月より、東京は渋谷ユーロスペース
他で全国順次ロードショウ。)

『アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語』
“Анна Каренина. История Вронского”
(トルストイの名作をモスフィルムが再度映画化した作品。
同社では1967年タチアナ・サモイロワ主演版も記憶に残る。
2013年1月紹介のジョー・ライト監督版も構成がトリッキー
だったが、本作ではヴロンスキーがアンナの息子に語る回想
という形式。しかも語る場所が満州という、これはかなりの
展開だ。しかしこれによりアンナの内面が浮き彫りにされ、
悲劇の結末に向かう状況もより理解できる感じがした。なお
満州のシーンは、日露戦争に従軍した軍医で文人のヴィケー
ンチイ・ヴェレサーエフの原作に基づくとされる。出演はマ
クシム・マトヴェーエフとエリザヴェータ・ボヤルスカヤ。
2人は実生活で夫婦だそうだ。監督はカレン・シャフナザー
ロフ。競馬や観劇、舞踏会のシーンなども豪華に再現され、
モスフィルムのロゴとロシア語の台詞が、これぞ本物という
感じを与える。公開は11月10日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』
               “Sicilian Ghost Story”
(1993年に起きた実話に基づくとされる作品。主人公は13歳
の少女。彼女は同級生の少年に恋をするが、彼女の母親はそ
れを許さない。それは少年の一家がマフィアであるからだ。
しかし少年の後を追う少女は、少年のバイクで向った馬場で
彼が馬術に興じる姿なども楽しむ。ところがその場所で少年
は姿を消し、以来登校もしなくなってしまう。だが大人たち
はその事実に見て見ぬ振りをするばかりだった。そして時が
流れて行くが、そんなある日、少女は幽霊に導かれるように
少年が閉じ込められている場所を目撃する。それは幻だった
のか…? 脚本と監督は、デビュー作の『狼は暗闇の天使』
がカンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いたファビ
オ・グラッサドニア&アントニオ・ピアッツァ。出演はいず
れも新人のユリア・イェドリコウスカとガエターノ・フェル
ナンデス。とは言え強烈な作品だ。公開は12月22日より、東
京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『第三世代』“Die dritte Generation”
(前回紹介『13回の新月のある年に』と共に日本初公開され
るライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督による1979年
の作品。映画が製作された1970年代末を背景に、過激派テロ
組織の活動が、実は企業家の手でコントロールされていたと
いう、当時としては先見的だったのかなと思える物語が展開
される。これを1970年代前半に起きた連合赤軍事件の余韻が
冷めやらぬ頃に観たら、いろいろ考えるところもあったかと
思える作品だ。とは言え、近年のアメリカやヨーロッパでの
イスラム系テロの状況を見ると、ファスビンダーもそこまで
は読み切れなかったかとも考えてしまうところで、監督には
もう少し長く生きて、この状況を見て欲しかったという感じ
もした。個人的には前回紹介作の方が、登場人物の痛みが理
解できる感じで好ましかったが、本作も時代を知る上では重
要と言えるものだ。公開は10月27日より、東京は渋谷ユーロ
スペース他で全国順次ロードショウ。)

『暁に祈れ』“A Prayer Before Dawn”
(2009年3月紹介『ジョニー・マッド・ドッグ』のジャン=
ステファーヌ・ソヴェール監督が、麻薬所持の罪で地獄と呼
ばれたタイの刑務所に3年間収監され、過酷な環境をムエタ
イの技を磨くことで生き抜いたイギリス人青年を描いた実話
に基づく作品。主人公はボクサーだったが、麻薬の常習で母
国を追われタイに流れ着く。そしてそこでも麻薬に溺れ、遂
に警察に捕われ刑務所送りとなる。そこは全身刺青の男たち
がすし詰めで雑魚寝する劣悪な場所。しかも言葉も判らず、
所内のルールも学べない彼には正に生き地獄だった。ところ
が元々ボクサーの彼は所内のムエタイのチームに加わり、頭
角を現して行く…。と書くと単純な成功物語に聞こえるが、
映画はその過程を、現地での撮影などリアル且つシビアに描
き込んだものだ。出演は2018年2月4日題名紹介『きみへの
距離、1万キロ』などのジョー・コール。公開は12月8日よ
り、東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2018年09月16日(日) A GHOST STORY(殺る女、13回の新月のある年に、遊星からの物体X、アンクル・ドリュー、シャルロット−すさび−)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『A GHOST STORY』“A Ghost Story”
2014年公開『セインツ 約束の果て』の監督デヴィッド・ロ
ウリーと、主演のケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
が再結集して描いた幽霊譚。
登場するのは郊外の一軒家に暮らす音楽家の夫とその妻。暮
らし向きは裕福ではないが、夫はその家に愛着しているよう
だ。一方の妻は何度も引越しの経験があり、引越すときには
戻って来た時のために小さなメモを残すのだと語る。そして
妻は今も引越しを望み、それが諍いとなる。
ところが夫が交通事故で急死し、病室で看取った妻がシーツ
を遺体の頭から掛けて部屋を出ると、突然そのシーツが持ち
上がり、幽霊の姿となって家へと戻ってくる。しかしその姿
は妻には見えず、妻は引越しの準備をして柱の割れ目にメモ
を押し込み、思い出の残る家を出て行ってしまう。
その様子をもどかしげに見ている幽霊だったが…。幽霊はそ
の後を追うことはできず、隣家の窓にも同様の幽霊がいて、
幽霊は家に居ついて帰りを待つのだと教えられる。そして家
には様々な家族が暮らし、年月が過ぎて行くが、妻は一向に
帰ってこなかった。
夫役のアフレックは、最初の内は普通の容姿で登場するが、
途中からは目の位置に2つの穴の開いたシーツを被ったまま
で、その姿で様々な感情も表現する。これはかなり挑戦的な
演技となっている。
幽霊の存在は作者の思考によっていろいろな解釈が可能にな
るが、本作の場合はある種の地縛霊なのかな。病院から戻っ
て以降は家から出ることもできず、隣家の幽霊ともコミュニ
ケーションはするが直接会いに行くことは叶わない。従って
かなり寂しい状況となるものだ。
それがある切っ掛けから時空を超えた存在となるのだが、そ
の解釈がまたいろいろと頭を悩まされる。その辺が、観客を
悩ませ楽しませる仕掛けにもなっている作品だ。正直僕もか
なりじっくりと考えて、一つの結論には達したが、果たして
それが正しいかどうかも判らない。
幽霊譚というと、2010年10月に日本版のリメイクを紹介した
1990年公開『ゴースト/ニューヨークの幻』が著名だが、本
作もそれに通じるところもある。違うところも多々あるが、
多分、西欧人の幽霊に対するイメージではこれらに共通する
部分が基本なのだろう。
そのイメージの東洋人との違いを考察するのも面白いと思う
が、現世に残した未練みたいなものは世界共通のようだ。そ
こからの解放が本作のテーマのようにも見え、そのある種の
希望が本作を心地良いものにもしている。そんな風な作品に
僕は捉えた。

映画を観ていろいろ考察することも楽しめる作品だ。
公開は11月17日より、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン
トラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント他にて全国ロード
ショウとなる。

この週は他に
『殺る女』
(2018年6月紹介『私の人生なのに』などの知英の主演で、
腕の刺青を唯一の手掛りに復讐を誓った殺し屋の女を描いた
作品。幼い頃に両親を殺された主人公はその犯人を追い求め
ていたが…。共演は2018年5月紹介『世界でいちばん長い写
真』などの武田梨奈と、2018年7月29日題名紹介『DTC』
などの駿河太郎。脚本と監督は2012年2月紹介『不良少年』
などの宮野ケイジ。主演の知英は上記作の前に『レオン』と
いう作品にも主演しているが、今回はそれなりのアクション
にも頑張っている。その一方で武田は今回も空手は封印の役
柄で、演技派として悪くはないが、そろそろ何かを期待した
いところだ。お話としてはかなり定番な感じで、希望として
は登場人物それぞれの背景をもう少し描き込んで欲しかった
かな。特に駿河の役柄は2つの時点のギャップが大きくて、
少し違和感にもなってしまった。公開は10月27日より、東京
はシネ・リーブル池袋他で全国ロードショウ。)

『13回の新月のある年に』
            “In einem Jahr mit 13 Monden”
(2016年2月紹介『あやつり糸の世界』などのライナー・ヴ
ェルナー・ファスビンダー監督による1978年の作品。ニュー
・ジャーマン・シネマが脚光を浴びた『マリア・ブラウンの
結婚』と同年に製作されながら、日本未公開だった作品がリ
マスターによって劇場初公開される。主人公は性転換手術で
女性になり、同時に記憶を失った。そんな主人公が初老の娼
婦の助けを得て自らの過去を探求する。そこには数奇な人生
が隠されていたが…。物語は回想シーンなどを一切使わず、
全てが関係者の証言で綴られる。それは新たな映画ムーヴメ
ントの到来を告げたとも言える括目すべき作品だ。出演は、
『マリア・ブラウン』に続いてのフォルカー・シュペングラ
ーと、監督のパートナーでもあったイングリット・カーフェ
ン。そして後に『007/ゴールデンアイ』に登場するゴットフ
リート・ヨーン。公開は10月27日より、東京は渋谷ユーロス
ペース他で全国順次ロードショウ。)

『遊星からの物体X』“The Thing”
(1982年に公開されロブ・ボッティンの独創的な造形で話題
になったジョン・カーペンター監督作品がリマスターにより
再公開される。公開時は1952年『遊星よりの物体X』のリメ
イクと紹介され、ド派手な本作には違和感があったりもした
ものだが。今回観直してこれはリメイクではなく52年版の続
きであることを確認した。そしてXが次々変身し、遂には人
間に紛れ込んでいるかもしれないという展開には、ジョン・
W・キャンベルJr.の原作に回帰した嬉しさも伝わった。但
し造形の派手さに目を奪われることには変わりなかったが。
出演は、2017年5月紹介『ガーディアンズ・オブ・ギャラク
シー リミックス』などのカート・ラッセル。他に、2010年
1月紹介『噂のモーガン夫妻』などのウィルフォード・ブリ
ムリー、2012年12月紹介『クラウド・アトラス』などのキー
ス・デイヴィッドらが登場する。公開は10月19日より、東京
は丸の内ピカデリー他で全国順次ロードショウ。)

『アンクル・ドリュー』“Uncle Drew”
(2012年に話題になったペプシのCMを基にしたコメディ作
品。リオ五輪金メダリストのNBAスター選手カイリー・ア
ーヴィングが老人メイクでタイトルロールに扮し、他にも人
気の選手たちが同様の扮装でストリート大会に挑む。共演は
MTVアワード・コメディ部門受賞者のリルレル・ハウリー
とティファニー・ハディッシュ。監督は2004年公開『ドラム
ライン』などのチャールズ・ストーン3世。最近日本のヴァ
ラエティ番組で著名なアスリートが老人メイクで子供の試合
に参加するというのを見たが、これが基だったのかな。それ
にしても、単に試合に参加するだけでなく、選手を集める展
開や各自の背景までしっかりと面白おかしく描くのは流石と
いう感じの作品だ。そして試合ではパフォーマンスは勿論、
その顛末も巧みに描かれている。見事なエンターテインメン
トだ。公開は11月9日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他
で全国ロードショウ。)

『シャルロット−すさび−』
(1945年生まれ、1988年に渡仏してノルマンディーを拠点に
パフォーマンスを展開する舞踊家の岩名雅記が、2004年に開
始した映画製作の第4作。なお過去の作品は世界各地の映画
祭で公式上映され、回顧上映なども行われているようだ。そ
の岩名が本作では、soundanceと称する打楽器演奏と舞踊を
融合したパフォーマンスを行う成田護を主演に迎え、成田が
以前に行ったコップに支えられたガラス板上でのパフォーマ
ンスを基に、現実と幻想が交錯する物語を展開する。そこに
は福島の帰宅禁止地区や、さらに時空を超えた旅が描かれて
行く。正直に言ってテーマはどんどん発散してしまい、観客
にはそれについて行く術もないが、物語は一応シャルロット
という存在を核にそれなりの結末は描かれている。とは言え
全体的には芸術家の妄想の世界であり、観客はそれに付き合
い切れれば充分というところだろう。公開は10月6日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお今回も情報解禁前の作品を観ており、その紹介は後日に
させてもらう。



2018年09月09日(日) BD−明智探偵事務所−、十年 Ten Years Japan、西北西(IT COMES、ステータス、ピッチ3、いろとりどり、旅猫、ナミヤ、ザ・アウト)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『BD−明智探偵事務所−』
江戸川乱歩原作「少年探偵団」からの映画化。僕らの世代だ
といろいろ懐かしさもある原作だが、1965年没の原作者から
は現状で死後50年の著作権は失効しており、これから映画化
は増えるのかな。
物語の舞台は特定されていないが、撮影が行われたのは香川
県丸亀市と坂出市、観音寺町。多少土地勘があるといろいろ
見えるものもある。そんな街に拠点を構える明智探偵事務所
では、所長の明智は怪人二十面相を追って出張中。秘書気取
りの女性と小林少年が留守番をしている。
その事務所に松葉杖を突いた中年女性が訪れ、行方不明の娘
を探してくれと依頼する。その依頼を最初は所長がいないか
らと断る小林少年だったが、困っている人を助けるのが仕事
という明智の教えを思い出し、依頼を引き受ける。しかしそ
れはとんでもない事件の幕開けだった。

出演は、2013年『仮面ライダー鎧武』でサブキャラを演じた
小澤廉、BOYS AND MENの弟分チーム祭nine.のリーダー寺坂
頼我。他に、2014年9月紹介『ヲ乃ガワ』などの前田希美。
さらに小木茂光らが脇を固めている。
脚本は、2016年6月月に記者会見だけ紹介した『コープスパ
ーティー』の赤松義正。監督は、2017年9月紹介『トモダチ
ゲーム』で助監督を務めた名倉良祐の長編デビュー作のよう
だ。因に監督は香川県出身とのこと。
僕自身の読書歴は早くからSFの方に行っていたので、江戸
川乱歩はあまり読んでいなかったが、数少ない読書歴の記憶
では、暗号と謎解きの印象が強い。そこで本作では行方不明
の娘が謎解きをしていたらしいのだが…。
その肝心の謎解きが映画の中で判然としない。特に最後の謎
がヒントを並べていきなり場所の特定では、ちょっと物足り
なさが募る展開だった。しかも小林少年が解けない謎を、女
子高校生は解いているのだ。
ここはやはり順序を踏んで、何故そこなのかを明確にする、
そんなバッチリとした謎解きが欲しいところだった。それと
変装は、やはりべりっとはがして欲しかったが、最近の特殊
メイクの技術は違っているようだ。
でもまあ若手2人の主演役者の顔見世ということではこれで
良いのかな。公式サイトはhttp://ranpo-project.comとなっ
ており、取り敢えず続編を期待ということにしよう。

公開は10月12日より、東京はユナイテッドシネマ豊洲、撮影
の行われた香川ではイオンシネマ宇多津他で全国順次ロード
ショウとなる。

『十年 Ten Years Japan』
2017年5月紹介『十年』の日本版。香港版が2016年イタリア
開催の極東映画祭にて上映されたのを切っ掛けに、若手映画
人の支援という目的で各国でスタートした企画を、日本では
是枝裕和監督の総合監修で実現した。日本版は全5作品。
『PLAN75』は、ぴあフィルムフェスティバルのグラン
プリ受賞者の早川千絵監督作品。
高齢者問題解決のため、国家施策として75歳以上に安楽死が
推奨されるようになった時代を背景にした物語。主人公は施
策を進める省庁の担当者だったが、家には認知症で高齢の母
親がいた。

出演は、2017年9月17日題名紹介『あゝ、荒野』などの川口
覚と、2017年7月紹介『ナミヤ雑貨店の奇跡』などの山田キ
ヌヲ、それに2017年9月17日題名紹介『ユリゴコロ』などの
牧口元美。
『いたずら同盟』は、ぴあフィルムフェスティバルで準グラ
ンプリと観客賞受賞者の木下雄介監督作品。
AIによって管理された特区に暮らす小学生を描いた物語。
その一画の厩舎で世話されていた老馬にAIから殺処分の判
断が下され、それを聞いた3人の子供が悪戯を思いつく。そ
れはAIの混乱に繋がるが…。

出演は、2017年1月15日題名紹介『哭声』などの國村隼と、
他はいずれも2006年、07年生まれの大川星哉、辻村羽来、中
野龍。
『DATA』は、日本大学芸術学部映画学科卒業の津野愛監
督作品。
母親の生前のデータの入った「デジタル遺産」を、父親に内
緒で手に入れた娘は、セキュリティの掛ったそのデータを友
人の協力で引き出しに成功するが、そこにはとんでもない秘
密が隠されていた。

出演は、2018年7月22日題名紹介『パーフェクトワールド』
などの杉咲花、2018年9月2日題名紹介『人魚の眠る家』な
どの田中哲司、2011年11月紹介『おかえり、はやぶさ』など
の前田旺志郎、2016年4月紹介『団地』などの三浦誠己。
『その空気は見えない』は、明治学院大学文学部芸術学科卒
業で、2018年1月紹介『見栄を張る』の藤村明世監督作品。
深刻な大気汚染で地表での暮らしを断念した人類は、地下壕
での困窮した生活を続けていた。そんな中の1人の少女が、
地表での生活を夢見る少女と出会う。そしてその少女が姿を
消し、その跡を辿った少女は…。

出演は、2018年6月10日題名紹介『きらきら眼鏡』などの池
脇千鶴と、2007年、2005年生まれの三田りりや、田畑志真。
『美しい国』は、2016年10月9日題名紹介『愚行録』の石川
慶監督作品。
徴兵制の施行された日本。その公示キャンペーンを担当する
広告代理店勤務の主人公は、ポスターのデザインを一新する
とした防衛省の意向をデザイナーに伝える役目を先輩から振
られてしまう。

出演は、2018年3月紹介『50回目のファーストキス』など
の太賀と、2018年7月8日題名紹介『愛しのアイリーン』な
どの木野花。
先に紹介の香港版では、国情の違いなどで判り難い面はある
ものの、体制の変化の中での民間人の想いが巧みに描かれて
いて、特に最後の言論統制の問題などは、その先見性にも舌
を巻いたものだ。
それに対して日本版は多少温いかな。それなりの危機感を感
じるものもないではないが、多くはただのSFで、そのSF
に関してもあまり目新しさは感じなかった。ただし『PLA
N75』に関しては長編化の計画もあるようで、それは期待
したい。

公開は11月3日より、東京はテアトル新宿他で全国順次ロー
ドショウとなる。
なお、すでにタイ版、台湾版の計画も進んでいるそうだ。

『西北西』
2018年5月13日題名紹介『菊とギロチン』などの韓英恵と、
2018年8月12日題名紹介『銃』などのサヘル・ローズ、それ
に2018年9月公演「乃木坂46版美少女戦士セーラームーン」
などに出演の山内優花の共演で、日本に暮らすマイノリティ
女性の姿を描いた作品。
韓は静岡県出身だが父親が韓国人、名前もその父方の姓を名
告っているということで本作では、在日の韓国人という設定
のようだ。サヘルは問題なくイラン人で、劇中ではメッカに
向かって定時の祈りを捧げるシーンも描かれる。そして山内
は日本人の役だ。
物語は留学生の女性がビザの問題でトラブルに遭い、その憤
懣が収まらない彼女の話を韓扮する女性が聞くところから始
まる。しかしそれを聞いている彼女の心の内にもいろいろと
鬱積したものがあるようだ。そんな2人が夜の町をバイクで
疾走し、彼女は愛する相手はいつも女性と告白する。
とは言え、イスラム教徒である女性はそれに応えることがで
きないが、その様子を垣間見た日本人の女性には納得ができ
なくなる。そんな微妙な関係の中で物語は進んで行く。
物語は国籍や宗教、また性愛の問題など様々なマイノリティ
の女性たちが現代社会の中で生きて行く姿を描いている。当
然そこには差別や迫害もあって、その様子は同じ社会に生き
る我々に対しての意味合いも深く考えさせるものだ。

脚本と監督は、長編デビュー作『TAITO』で第33回PFFぴあフ
ィルムフェスティバルの審査員特別賞を受賞した中村拓朗。
製作は、2016年公開『蜃気楼の舟』などの汐田海平が担当。
また、2011年8月紹介『沈黙の春を生きて』の編集を手掛け
たジャン・ユンカーマンが特別協力と出演もしている。
自分が子供の頃は、街で外国人を見掛けることなど殆んどな
かったが、いまや東京の銀座通りなどは外国人観光客の方が
多い感じだろう。そんな「国際化」している日本だが、果た
して我々の意識は国際化しているのか? そんなことも考え
させられる。
ただし作中では、国籍や宗教への差別をあからさまに描くこ
とはせず、差別に言及、描写しているのは主に性愛の問題に
限られる。しかしその節度のある描き方が、逆に現実の差別
や迫害を際立たせている感じもして、これは巧みな表現のよ
うにも思えた。
正直に言ってボーイズラヴの作品は数多く観ているが、本作
は女性、しかも大人が主人公で、こういう物語がようやく描
かれたことにも日本映画の成長を感じたところだ。

公開は9月15日より、東京は渋谷シアター・イメージフォー
ラム他で全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『IT COMES AT NIGHT』“It Comes at Night”
(2015年12月紹介『IT FOLLOWS』の製作陣が仕掛ける新たな
恐怖という売り込みの作品。前作はいろいろ捻ったオカルト
作品で興味深く、本作はその続編かと思ったら独立の作品だ
った。登場するのは人里離れた家で恐怖に怯えながら暮らす
3人の一家。その恐怖の対象は疫病らしいが、具体的なこと
は判らない。そこに迷い込んできた3人の家族が加わるが、
統率の乱れなどから恐怖が忍び寄ってくる。2018年8月12日
題名紹介『クワイエット・プレイス』もそうだったが、本作
もシチュエーションは判るし、その極限状態の描写は見事な
もの。しかし実際の恐怖の対象が判らないのがもどかしい。
それが狙いでもあるのだろうが…。脚本と監督はデビュー作
が高い評価を受けた新鋭のトレイ・エドワード・シュルツ。
主演のジョエル・エドガートンが製作総指揮も務めている。
公開は11月23日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウ。)(前回未掲載分)

『ステータス・アップデート』“Status Update”
(2007年9月紹介『ヘアスプレー』などのアダム・シャンク
マンが製作を担当、2018年5月紹介『ミッドナイト・サン』
などのスコット・スピアー監督で描いたファンタシーの要素
の強い青春映画。主人公は西海岸から東部の町に引っ越して
きた高校生。文化の違いに馴染めず苛めにも遭っていた彼が
1台のスマホを手に入れる。ところがそのスマホには特別な
アプリの入っており、それによって彼は望むもの全てを手に
入れられるようになるが…。出演は、共にテレビで人気のロ
ス・リンチとオリヴィア・ホルト。他にロブ・リグル、ファ
ムケ・ヤンセンらが脇を固めている。典型的な願望充足型の
作品だが、そこにスマホのアプリを持ち込んだのは新機軸か
な。その一方、最近のこの手の作品では段々ドツボに嵌って
行くことが多いが、そこにも多少の捻りはある。公開は11月
3日より、東京は渋谷シネクイント、新宿武蔵野館他で全国
順次ロードショウ。)

『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』
                  “Pitch Perfect 3”
(2015年に2作公開された作品の続編。学生時代に全米ナン
バー1にも輝いた女性アカペラグループの面々は、卒業して
それぞれの道を歩み始めている。しかし現実は歌うことほど
楽しくはない。そんな時、欧州駐留米軍の慰問部隊への誘い
が掛かるが…。それはとんでもない事件へと彼女らを引き摺
り込む。意外な展開は前作を知らなくても楽しめるものだ。
出演はアナ・ケンドリック、レベル・ウィルソン、ヘイリー
・スタインフェルド、ブリタニー・スノウら前作のメンバー
が顔を揃える他、エリザベス・バンクスも再び出演。さらに
2014年11月紹介『インターステラー』などのジョン・リスゴ
ー、2018年7月8日題名紹介『MEGザ・モンスター』など
のルビー・ローズらも登場する。南欧の風景も楽しめ、主人
公らのアカペラに加え、今回はロックバンドなども登場して
多彩な音楽も聞かせてくれる。公開は10月19日より、東京は
TOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『いろとりどりの親子』“Far from the Tree”
(作家アンドリュー・ソロモンが10年の歳月を掛けて纏め、
米国内外で50以上の賞を受賞、世界24カ国に翻訳されたノン
フィクションに基づくドキュメンタリー。ダウン症、低身長
症、自閉症、LGBTといった周囲と違う子供を持つ家族が直面
する困難、戸惑い、その経験から得られる喜び、そして親か
ら子への愛情が描かれる。原作者自身がLGBTということで、
その実体験を踏まえた内容には説得力がある。しかも敢えて
歴史的な面には触れず、現在と未来に向けた展望が語られる
のは、差別や迫害といったネガティヴな面を気にしがちな僕
にとっては、新たな目を開かされる思いもする作品だった。
監督は、数多くのTVドキュメンタリーで製作監督を務めて
きたレイチェル・ドレッツィン。製作も兼ねた本作は初の劇
場向け作品のようだ。アメリカでもテレビでは扱い難い作品
なのかな。公開は11月17日より、東京は新宿武蔵野館他にて
全国順次ロードショウ。)

『旅猫リポート』
(『図書館戦争』や2016年公開『植物図鑑』などの人気作家
有川浩が、自ら脚本(『家族はつらいよ』などの平松恵美子
と共同)も務めた猫を語り部とするロードムーヴィ。主人公
はナナという名前の猫を飼っている若者。その若者がナナを
飼ってくれる家を求めて旅を続ける。それは幼い頃に育った
街であったり、過去に家族の転勤で暮らした土地だ。そして
それぞれの場所には友がいて、彼らは親身になってナナの居
場所を考えてくれるが、なかなか思い通りには行かない。そ
んな旅の様子がナナの目線も含めて語られて行く。出演は、
福士蒼汰、高畑充希(声)、広瀬アリス、大野拓朗、山本涼
介、前野朋哉。さらに戸田菜穂、橋本じゅん、木村多江、田
中壮太郎、笛木優子、竹内結子らが脇を固めている。監督は
『植物図鑑』の三木康一郎が再度担当した。何も知らずに観
ていると見事に嵌められる作品だ。公開は10月26日より、東
京は丸の内ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『ナミヤ雑貨店の奇蹟−再生−』“解憂雑貨店 Namiya”
(2017年7月紹介作品と同じ東野圭吾の原作を、中国に舞台
を移して映画化した作品。元々が連作短編の原作を、日本版
は話を組み合わせて一連の物語としており、そのため展開が
少し判り難い面があった。それに対して中国版では短編ごと
の展開で話は判り易い。ただ話が途切れてしまう感じはある
が、これは観客の好みによりそうだ。でもどちらも感動的な
物語ではある。因に最初に描かれるのはミュージシャンを目
指す男性の話で、これは日本版でもメインになっており、そ
の話が判り易くなっているのは、両作を理解する上で良かっ
たとも言える。出演は、中国�癸吋▲ぅ疋�TFBOYSのリーダー
王俊凱、2017年中国美人ランキング第1位の迪丽热巴、若手
実力派とされる董子健。またジャッキー・チェンが店主役で
客演している。監督は2005年6月紹介『世界』でジャ・ジャ
ンク―の副監督を務めたハン・ジェ。公開は10月13日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)

『ザ・アウトロー』“Den of Thieves”
(ジェラルド・バトラー主演で、48分に1回銀行強盗が起き
るとされるロサンゼルスを舞台に、警察対犯罪者の攻防を描
いた作品。主人公はロサンゼルス郡のシェリフ。LAPDとは別
組織でLASDと名告り、自らの部隊を率いて警察より少し強引
な捜査も進めるようだ。そして当然FBIとは対立する。そ
んな彼が空の現金輸送車強奪事件から大きな事件を予感し、
出所した名うての強盗を追うが…。共演は、2018年8月12日
題名紹介『スカイスクレイパー』などのパブロ・シュライバ
ーと、2012年11月紹介『ファイヤー・ウィズ・ファイヤー』
などの50セント。脚本と監督は、2011年11月紹介『インモー
タルズ』などの脚本家クリスチャン・グーデガストの監督デ
ビュー作だ。邦題の定冠詞の発音は「ジ」だろうという突込
みは別にして、最期の対決では機関銃を拳銃に持ち替えて、
正に西部劇を髣髴とさせてニヤリとした。公開は10月20日よ
り、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお今回も試写を観た中に情報解禁前の作品があり、その紹
介は2週間ほど後にさせてもらう。



2018年09月02日(日) 青の帰り道、INGRESS(栞、飢えたライオン、あの頃、エリック・クラプトン、クレイジー・R、恐怖の報酬、人魚の眠る家、ブレイン・G)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『青の帰り道』
元お笑いタレント・おかもとまりの原案から、俳優で監督も
手掛けるアベラヒデノブが脚本を執筆、2017年12月紹介『悪
魔<TANIZAKI TRIBUTE>』などの藤井直人共同脚本・監督で
描いた群馬県前橋市と東京が舞台の青春群像劇。
2008年、高校3年の夏。男女7人の生徒が校舎から真直ぐに
続く田園の通を帰って行く。そこにいるのは卒業したら歌手
を目指して上京するという女子や、彼女に音楽を教えた張本
人で自分も音楽をやりたいが、家業のために医大を受験しな
ければならない男子。
さらに母親との確執で家を出たいとする女子。仲間内で恋愛
関係にあるカップルに、将来に何の展望もない男子。そして
東京の大学への進学を決めて、地元を出て行こうとしている
男子。そんな彼らは河川敷で仲間の誕生日を祝い、音楽で繋
がる2人の歌声を楽しむ。
そんな彼らのそこからの10年間が描かれる。それは物語の最
後を2018年とする、正に今を生きている若者たちの姿だ。

出演は、「ハロプロ」出身で2018年1月28日題名紹介『坂道
のアポロン』や2015年7月紹介『パトレイバー』などの真野
恵里菜。2017年8月20日題名紹介『南瓜とマヨネーズ』など
の清水くるみ。
東映「スーパー戦隊」出身で2018年4月15日題名紹介『虹色
デイズ』などの横浜流星。2017年7月23日題名紹介『あさひ
なぐ』などの森永悠希。
さらに2018年7月29日題名紹介『純平、考え直せ』などの戸
塚純貴。同日題名紹介『母さんがどんなに僕を嫌いでも』な
どの秋月三佳、2018年4月22日題名紹介『明日にかける橋』
などの冨田佳輔。
今が旬というか、正に人気も実績も充分な若手が勢揃いだ。
他に工藤夕貴、平田満らが脇を固めている。
作中では若手の7人が全員それぞれの10年間を演じ切ってお
り、今だからこそできる、という感じの作品になっている。
そして描かれるのは若者の夢を阻む様々な問題。そこには親
子の断絶など定番なものから、家庭内暴力、結婚詐欺。さら
には「振り込め詐欺」などの犯罪行為に陥る者まで、正しく
今の若者が直面している状況が描かれる。
群馬県を舞台にした青春群像劇では、2018年5月27日題名紹
介『高崎グラフィティ』が先にあったが、コメディとして完
成度の高かった先の作品に対して、本作ではリアルな問題提
起が数多くなされているように感じた。
最近このような青春群像劇は何本も観ているが、その中では
1枚上手の出来と言える作品だ。

公開は、11月30日から群馬県前橋市のユナイテッド・シネマ
前橋で先行上映の後、12月7日より、東京は新宿バルト9他
で全国ロードショウとなる。

『INGRESS THE ANIMATION』
2018年10月より、フジテレビの深夜に放送される新アニメ枠
「+Ultra」の第1弾作品。2012年に運用が開始されて「ポケ
モンGO」の基になったとされるスマートフォン向け位置情報
ゲームのドラマ化。そのエピソード1〜4を見せて貰った。
背景は、2013年に「エキゾチック・マター(XM)」と呼ば
れる物質が発見され、それは古来より人々の精神・能力に感
応し、人類の歴史にも大きな影響を与えてきたとされる。
その物質を巡って人々は、XMの力を受け入れて人類の進化
に利用しようとする「エンライテンド」と、XMを脅威と見
做してコントロールしようとする「レジスタンス」とに2分
され、互いに覇権を争うようになる。
そんな中、物語は2018年の東京で、1人の男が研究者らしき
男性に接触するところから始まる。その男性は別の研究者の
女性の保護を求めるが、その直後に2人は襲われ、研究者の
男性が拉致される。
一方、保護対象だった女性は、とある研究所でXMに纏わる
重大な秘密を知ってしまう。そして警備員らに追い詰められ
るが、そこで拉致された男性と引き合わされ、その直後に研
究所で爆発が巻き起こる。
その事件現場に、警視庁・嘱託特殊捜査官の主人公がやって
来る。彼は物体に触れるとそこに記憶された情報を感知する
「サイコメトラー」の能力を有していた。そして彼が昏睡状
態で発見された女性の指輪に触れた時…。
という状況が判明するのがエピソード2ぐらいだが、物語は
そこまでほぼアクションの連続で綴られて行き、それにぽつ
ぽつと謎が散りばめられている感じだ。それは中々巧みな展
開で、基のゲームを知らない僕でも引き込まれた。

監督は、2015年公開の岩井俊二監督作品『花とアリス殺人事
件』でCGディレクターを務めた櫻木優平。セルルックであ
りながら全て3DCGの「スマートCGアニメーション」と
称される、こだわりの映像が展開される。
正直に言って物語は途中までなので、全体的な評価はできな
いが。「ポータル」と呼ばれる現実の地点を巡る陣取り合戦
が、放送が始まるとゲームの状況ともリンクして進められる
とのことで、これは社会も巻き込んだ展開になりそうだ。
ただし、絶対的な権力を持って登場する第3陣営の実態や、
「ポータル」と主人公らの能力との関連性などがまだ明白で
はなく。さらにエピソード5以降では舞台が全世界にも広が
るようで、興味は尽きない作品だ。

放送はフジテレビの他、関西テレビ、東海テレビ、テレビ西
日本、北海道文化放送、BSフジの各局でも行われ、さらに
NETFLIXにて全世界配信も実施される。

この週は他に
『栞』
(大きな病院で患者のリハビリなどに携わる理学療法士の姿
を描いた作品。描かれる患者は3人で、難病の幼児と、脊椎
損傷のアスリート、それに主人公の父親。ただし実践的なリ
ハビリの様子が描かれるのはアスリートだけで、後の2人に
関しては人間関係の様子を描くに留まる。その辺が実は映画
の描き方として正しいかどうか疑問に感じたところで、特に
幼児に関しては後半の重要なポイントでもあるので、その病
名と共に主人公が行ったリハビリの内容も具体的に知りたか
った。ただ本作は元々が理学療法の関係者に見せる目的で制
作されたそうで、専門家の目で観ると別の評価になるものな
のかもしれない。出演は三浦貴大。他に鶴見辰吾らが脇を固
めている。原案と脚本、監督は理学療法士の資格を持つ榊原
有佑。これが現実ということなのだろうけど、もう少し何か
ドラマティックなものが欲しかったかな。公開は10月26日よ
り、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)

『飢えたライオン』
(昨年の東京国際映画祭でプレミア上映され、その後に海外
の映画祭などで評価されて、ティーチインを伴う学生向けの
特別上映なども行われているというSNSを題材にしたドラ
マ作品。性犯罪で教師が連行され、その教師の許から流出し
た映像に教え子である主人公が映っているとの噂が流れる。
その噂をデマだと主張する主人公だったが、事態は徐々に彼
女を追いこんで行く。脚本と監督は、2013年公開『子宮に沈
める』などの緒方貴臣。実は前作も試写で観ていたが、何と
言うか重大な社会問題を扱っている割には描写が表面的で、
しかも主人公に集中し過ぎて周囲が見えてこない。そんなも
どかしさを感じた。それは本作も同じで、宣伝コピーなどか
らは傍観者であることの罪を主張したいようだが、これでは
制作者自身も同罪であるように感じる。それが目的かも知れ
ないが。公開は9月15日より、東京はテアトル新宿他で全国
順次ロードショウ。)

『あの頃、君を追いかけた』
(2011年公開の台湾映画“那些年,我們一起追的女孩”(邦
題は同じ)を、2018年4月15日題名紹介『虹色デイズ』など
の山田裕貴と、「乃木坂46」の齋藤飛鳥の主演でリメイクし
た日本映画。1990年代の地方都市の高校を舞台に、優等生に
認められたことから、学業に目覚めて行く若者の姿を描く。
実はこの作品のオリジナルも公開当時に試写を観ていて、そ
の時には台湾の高校の様子が馴染めなかった。その違和感は
日本映画になって薄められたが、胸に学籍番号の入った制服
をそのまま採用したのは何の意味があったのかな。ただ背景
を30年近く過去に置いていることで、いろいろノスタルジー
は感じさせたいのだろうが、その分のリアルさが失われてい
るようにも感じた。監督は、2016年3月紹介『探偵ミタライ
の事件簿』などの脚本家の長谷川康夫。ただし今回の脚本は
ノータッチのようだ。公開は10月5日より、東京はTOHOシネ
マズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『エリック・クラプトン 12小節の人生』
           “Eric Clapton: Life in 12 Bars”
(ギターの神様とも称されるギタリストが、自らの人生を語
る音楽ドキュメンタリー。映画は2015年に他界したブルース
の巨人B・B・キングへの追悼の言葉から始まり、クランプ
トン自身のナレーションというかインタヴューの音声で綴ら
れる。それは幼少期の家庭環境など、まあこの手のものでは
定番ではあるが、それでも壮絶とも言える人生だ。しかも家
を持たなかった音楽家が始めて家を持つところから始まる、
隣家の音楽家の妻との経緯は赤裸々というか、よくもここま
でプライヴェートを語ったかという展開にもなる。監督はリ
リ・フィニー・ザナック。ドラマの監督経験はあるが、ドキ
ュメンタリーは初めてというオスカー受賞のプロデューサー
が、「君が監督するなら」というクランプトンの信頼を得て
作り上げている。それは後半には涙必至の展開も含めて見事
な作品だ。公開は11月23日より、東京はTOHOシネマズシャン
テ他で全国ロードショウ。)

『クレイジー・リッチ!』“Crazy Rich Asians”
(8月15日に全米公開され、封切り週末から2週連続の興行
第1位を記録しているシンガポールが舞台のラヴコメディ。
主人公は苦学の末にNY大学で史上最年少の教授になったと
いうアジア系の女性。そんな彼女が古い体育館でバスケット
ボールに興じていたアジア系の男性との恋に落ち、母国で開
かれる親戚の結婚式に招かれる。ところが空港で案内された
のは個室のファーストクラス。身分の違い過ぎる状況に直面
した彼女は…。監督は2016年7月紹介『グランド・イリュー
ジョン2』などのジョン・M・チュウ。出演はコンスタンス
・ウー、ヘンリー・ゴールディング。他にミシェル・ヨーら
アジア系の俳優が脇を固めている。原作はアメリカ在住の作
家ヴィン・クワンによるもので、内容は2011年5月紹介『ハ
ングオーバー』に通じるかな? そんな大人向けのコメディ
だ。因に原作は3部作が発表されているそうだ。公開は9月
26日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『恐怖の報酬』“Sorcerer”
(アンリ=ジョルジュ・クルーゾーが1953年に発表したフラ
ンス映画を、『フレンチ・コネクション』で1972年オスカー
受賞のウィリアム・フリードキン監督が、1977年にリメイク
した作品。南米の奥地で油井火災が発生し、それを爆風消火
するためのニトログリセリンを陸路運搬する。その危険な仕
事に人生の賭けをする男たちを描く。実は公開当時の興行に
失敗し、日本を含むアメリカ以外は監督に無断の短縮版で配
給された作品が、オリジナル版に復元されて再公開される。
僕はフランス版は観たが、リメイク版は上記の事情も知って
いたので当時は観なかった。そんな作品だが、映画は巻頭か
ら爆発シーンが連続して、CGIもない時代によくぞ撮った
と思えるものだった。フランス版の記憶は定かではないが、
ここまで強烈ではなかったと思う。間違いなしの恐怖は味わ
える作品だ。公開は11月24日より、東京はシネマート新宿他
で全国順次ロードショウ。)

『人魚の眠る家』
(1985年作家デビューの東野圭吾が、その30周年に発表した
小説の映画化。水泳プールで溺れて脳死と推測される少女の
生存を巡って、医療機器メーカーの創業一族である家族が、
最新技術を駆使してその甦りに傾注する。SF映画ファンの
視線で観ると、これは東野版「フランケンシュタイン」なの
かなと思ってしまう。そんなオマージュ的な部分も感じてし
まう作品だ。出演は篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎。他に
川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子らが脇
を固めている。脚本は2008年公開『映画 クロサギ』などの
篠崎絵里子、監督は、2016年11月20日題名紹介『RANMARU』
などの堤幸彦が担当した。脳波を直接読み取ってロボットの
手を操作するなど、正にSFとも言えるシーンも登場する作
品だが、後半には涙腺を決壊させる場面も設けられ、これぞ
エンターテインメントという作品だ。公開は11月16日より、
全国ロードショウ。)

『ブレイン・ゲーム』“Solace”
(アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルの共演で、予
知能力とも言える卓越した洞察力を持つ捜査官と犯罪者の対
決を描いた作品。被害者に苦痛を与えない特殊な殺し方の連
続殺人が発生し、全く痕跡を残さない殺人者の捜査に行き詰
ったFBIの捜査官が、予知能力があると噂される元同僚に
助けを求める。その元同僚は最初は非協力的だったが、ある
予感から捜査に参加する。しかし彼は犯人が自分以上の能力
を持つことに気付く。そして犯人の行動に特別な思いがある
ことも…。共演は2012年3月紹介『キリング・フィールズ』
などのジェフリー・ディーン・モーガンと、2018年1月紹介
『ジオストーム』などのアビー・コーニッシュ。監督はブラ
ジル出身で、2017年1月紹介『トゥー・ラビッツ』などのア
フォンソ・ポイヤート。予知のシーンの映像は以前にあった
気もするが、全体は緻密で優れた作品だ。公開は10月6日よ
り、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお今週は、もう1本内覧試写を観ているが、公開情報等が
未確定なので、それが確定してからの掲載とする。


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井口健二