| 2018年06月24日(日) |
500ページの夢の束(インクレディブル・F、爆弾処理班、寝ても、ゲンボとタシ、わがチーム、きみの鳥は、モアナ、ヴァンサン、クレFM) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『500ページの夢の束』“Please Stand By” 2013年10月紹介『セッションズ』のベン・リューベン監督が ダコタ・ファニングを主演に迎えて、自閉症の女性が、ある ドラマを切っ掛けに周囲との関係を再構築して行く姿を描い たヒューマンドラマ。 あるドラマと書いたのは『宇宙大作戦/スター・トレック』 で、原題は、カーク船長が状況不明の時によく口にする台詞 (吹替は「そのまま待機」)なのだそうだ。そして物語は、 その『スター・トレック』が放送開始50周年を迎えて、記念 番組の脚本を一般公募しているという状況から始まる。 その話を聞いた主人公は、長年観てきた最愛の番組のため、 自分の知識を総動員して脚本を書き始める。そのストーリー はエンタープライズ号が破壊され、カークとスポックが2人 だけで砂漠の星に取り残されるというもの。そしてそのプリ ントアウトは500ページに近いものになる。 ところが脚本が出来上がったのは2月13日の土曜日、応募の 締め切りは16日の午後5時で郵送必着。しかし翌日は日曜日 で郵便の集配はなく、15日も祝日で郵便は送れない。そこで 彼女はサンフランシスコの住まいからロサンゼルスのパラマ ウント本社まで、自力で届けることを決意するが…。 自閉症の施設で暮らし、日々のスケジュールは細かく決めら れ、外出はアルバイトのCinnabonの店に行くことだけの主人 公には、それは一大決心の冒険に他ならなかった。そしてそ の旅には愛犬も同行する。 共演は2018年3月11日題名紹介『アンロック』などのトニ・ コレット、2013年6月紹介『スター・トレック イントゥ・ ダークネス』でキャロル・マーカスを演じたアリス・イヴ。 他に2014年『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』などの リヴァ・アレクザンダーらが脇を固めている。 脚本はマイクル・ゴラムコ。フィリピン・マニラ生まれで、 テレビシリーズの“Grimm”なども手掛ける劇作家が、自身 の舞台劇を基に執筆したものだ。 天才子役と称されたダコタ・ファニングも1994年生まれだか らすでに24歳。最近では妹のエルの活躍も目覚ましいが、妹 が先に大人の役に挑戦しているのに対して、本作での21歳の 役はダコタの女優としての第2章の幕開けともされる。 そこに選ばれた役柄が自閉症というのは、彼女の出世作『ア イ・アム・サム』に通じるものも感じるが、彼女自身は実際 の患者に取材しても敢えてそれを真似ることは避け、自分の 中のそれに近い要素を引き出して役に挑んだそうだ。 そして本作の中の『スター・トレック』に関しては、感情を 表に出すことをしないスポックに対して主人公自身の想いが 重なるという設定で、後半のエピソードと共にファンにはも はや涙腺の決壊が避けられない展開になっている。 当然SF映画ではないけれど、トレッキーは必見の作品だ。 公開は9月7日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード ショウとなる。 なお本作に関しては、後から試写を見た家内から、ダコタの 映画前半での仕草が、彼女の出世作と言える『宇宙戦争』に 基づいていると指摘された。 それは彼女が両手で輪を作って「この中は大丈夫」と自分に 言い聞かせるシーンで、これは『宇宙戦争』では兄が妹を落 ち着かせるときに行った仕草なのだ。つまり彼女は『スタ・ トレ』以外のSF映画へのオマージュも行っていたもので、 その点にも感心した。
この週は他に 『インクレディブル・ファミリー』“Incredibles 2” (2004年11月紹介『Mr.インクレディブル』の14年振りの 続編。法律によりスーパーヒーローの活動が禁じられた世界 を背景に、それでも出てくるスーパーヴァリアンと闘う一家 の活躍が描かれる。今回も開幕は宿敵アンダーマイナーとの 闘い。両親と盟友フロゾンの協力で攻撃を退けるが、街は大 破壊で敵も捕らえられなかった。この事態に法律違反の父親 は逮捕されるが、いつものように保護プログラムで釈放。し かし闘いの直前に級友に告られた長女は、闘いの中で姿を見 られ、プログラムに従って告った記憶まで消された級友にシ ョックを受ける。そんな中で法律を見直す動きが出て、スー パーヒーローの活躍が喧伝されるようになるが、そこに駆り 出されたのは母親。このため主夫となった父親の家での奮闘 が始まるが…。脚本と監督は前作と同じブラッド・バード。 前作同様巧みな物語が展開される。公開は8月1日より、東 京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
『SHOCK WAVE 爆弾処理班』“拆弾専家” (2018年2月4日題名紹介『グレート・アドベンチャー』な どのアンディ・ラウ製作・主演で、テロリストと対決する香 港警察爆弾処理班の姿を描いた作品。テロリストと称されて いるが、実態は犯行に爆弾を使う強盗団。その犯行を暴くた め主人公は潜入捜査を敢行。一味の大半は捕えるが、主犯を 取り逃がす。それから7年、仕事一途だった主人公にも恋人 ができ、新生活が始まろうとしていたが…。香港島と本土を 結ぶ海底トンネルが占拠され、閉じ込められた数100人の人 質とトンネル爆破を盾に巨額の身代金が要求される。しかも その主犯は主人公への復讐に燃える7年前のテロリストだっ た。交通機関と爆弾、大勢の人質と身代金というと1975年の 『新幹線大爆破』が思い出されるが、本作の犯行計画も中々 巧みに考えられていた。脚本と監督は、2012年2月紹介『イ ップ・マン』などのハーマン・ヤウ。公開は8月18日より、 東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『寝ても覚めても』 (2015年に上映時間5時間17分の『ハッピーアワー』が公開 された濱口竜介脚本・監督で、2018年カンヌ国際映画祭コン ペティションに選出された作品。芥川賞作家・柴崎友香によ る同名恋愛小説の映画化で、運命的な出会いをした男性が突 然姿を消し、その男性と容姿がそっくりの男性と巡り合う。 そんな少しミステリアスな男女のドラマが描かれる。出演は 東出昌大と新人の唐田えりか。他に瀬戸康史、山下リオ、伊 藤沙莉らが脇を固めている。今年のカンヌは『万引き家族』 のグランプリが絶対的だったと思うが、2017年のカンヌには フランソワ・オゾン監督の『2重螺旋の恋人』(2018年6月 10日題名紹介)が選出されていて、その翌年にこの作品とい うのも不思議な感じがするところだ。ただ本作は物語の基本 とされる起承転結の展開が実に律義に守られた作品であり、 その点は評価したい。公開は9月1日より、東京はテアトル 新宿他で全国順次ロードショウ。)
『ゲンボとタシの夢見るブータン』“The Next Guardian” (インド―中国の国境に挟まれた小国の現在を語るドキュメ ンタリー。登場するのは古い寺院の主宰の息子とその妹。屈 託なくサッカーのボール回しに興じる2人だが、父親は寺院 と伝統の踊りを護るため、息子には仏教学校への進学を希望 している。だが母親の意見は違うようだ。一方の妹は、女子 サッカーの国代表を選ぶ選考会を目指していたが…。ヒマラ ヤの高原を舞台に、日本とはちょっと違うかな? でも通じ る所も多い彼らの日常が描かれる。マニ車があったり不思議 な仮面の踊りなど、映画を観ながら僕は、以前に家族で何度 も訪れた香川県のレオマワールドを思い出していた。そこに 飾られていた巨大な曼荼羅も素晴らしかったものだ。そんな 小国は今、近代化の波に翻弄されかかっている。近代化ばか りが国の未来じゃないよ! そんなことも言いたくなった。 公開は8月18日より、東京はポレポレ東中野他にて全国順次 ロードショウ。)
『わがチーム、墜落事故からの復活』“Nossa Chape” (2016年11月、南米クラブ選手権コパ・スダメリカーナで決 勝戦1stレグに出場のためコロンビアに向っていたブラジル 1部リーグのチーム・シャペコエンセを襲った悲劇と、その 後を追ったドキュメンタリー。この事故では、僕には2012年 6月紹介『ユナイテッド』を思い出させ、同じことが繰り返 されたという思いが鮮烈だった。しかも被害に遭った選手や 監督の中にはJリーグに関係した人も多く、日本のサッカー ファンにも大きな衝撃だったと思う。そういう出来事だが、 その背景やその後のことはあまり知らなかった。しかもそれ がホームタウンが地方の小都市であったり、チームに特徴的 なコンセプトがあるなど、チームカラーも含めて自分の応援 しているチームと重なる部分が多く、僕には自分のことのよ うにも感じられてしまった。特に事故から再建までの道のり には、全く共感できるところの多い作品だった。公開は7月 6日より、東京は新宿ピカデリー他で緊急ロードショウ。)
『きみの鳥はうたえる』 (2010年9月紹介『海炭市叙景』、2014年2月紹介『そこの みにて光輝く』、2016年7月17日題名紹介『オーバー・フェ ンス』に続く佐藤泰志原作による映画化の第4弾。原作の舞 台は東京だそうだが、映画化では原作者ゆかりの北海道函館 を背景に、刹那的に生きる若者たちを描く。出演は、2017年 12月17日題名紹介『素敵なダイナマイトスキャンダル』など の柄本佑と、2018年6月紹介『パンク侍』などの染谷将太。 それに2017年3月19日題名紹介『夜空はいつでも最高密度の 青色だ』などの石橋静河がヒロインを務める。他に渡辺真起 子、萩原聖人らが共演。脚本と監督は2012年『Playback』な どの三宅唱。佐藤原作の映画化では、上記の3作があまりに 壮絶だったのに比べると主人公らの年齢層が若い分少し甘い かな。でも前3作が多少ノスタルジックだったのよりは、現 代に通じるところは多いとは感じた。公開は9月1日より、 東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『モアナ 南海の歓喜』“Moana with Sound” (ドキュメンタリー映画の父とされるアメリカ人のロバート ・フラハティと妻のフランシスが1926年に発表した無声作品 を基に、1980年に娘のモニカ・フラハティが現地の人々の会 話や民謡を録音して付け加えた作品。夫妻の作品では1922年 の『極北の怪異(極北のナヌーク)』は以前に特集上映で観 ていたが、本作は多分初見だと思う。ただカットにデジャヴ もあって…、でもまあサウンド版は間違いなく初見だ。その 作品は、正にポリネシアの当時の様子を見事に撮影したもの で、その各シーンには当時のポリネシアの人たちがここまで 心を開いて撮影に協力していることに驚きと感動さえ覚える ものだった。正しくドキュメンタリーの開祖と呼べる作品。 因にドキュメンタリーという単語は、本作を紹介するアメリ カの新聞「ニューヨーク・サン」の記事に使われたのが最初 なのだそうだ。公開は9月15日より、東京は岩波ホール他で 全国順次ロードショウ。)
『ヴァンサンへの手紙』 “J'avancerai vers toi avec les yeux d'un sourd” (2014年“Edmond, un portrait de Baudoin”という作品で 映画祭受賞も果たしている女性ドキュメンタリー監督レティ シア・カートンの第2作。聾者であった友人の自死を切っ掛 けにフランスの聾コミュニティの現在を描いた作品。2016年 3月紹介『LISTENリッスン』の牧原依里監督が配給を手掛け る。1880年にイタリアミラノで開かれた国際ろう教育者会議 において手話が禁止され、以来130年間、2010年にその決議 が全面的に否定されるまで、日本を含めた世界中で、公式に は手話教育は行われていなかったのだそうだ。その事実を僕 は初めてこの映画で知った。実際に手話が各国独立であり、 世界共通の手話がなかった理由もそこなのだと判った。そん な迫害された手話だが、本作の中ではその原語としての素晴 らしさが如何なく表現される。この素晴らしさを健常者も体 感して欲しい。そう思わせる作品だ。公開は10月13日より、 東京は渋谷アップリンク他で全国順次ロードショウ。)
『クレイジー・フォー・マウンテン』“Mountain” (エヴェレストやモンブランなど世界の難峰に挑む登山家。 その一方でロープを付けずに垂直の岩壁を登頂したり、グラ ンドキャニオンでマウンテンバイクに乗りながらのスカイダ イビング、時速360�劼肪�するといわれるウィングスーツで の山頂からの滑空やパラグライダーなど、世界の山に魅せら れた人々を綴ったドキュメンタリー。自分は高所恐怖症では ないけれど、こんなところで事故に遭ったら大変だろうなあ という思いが先に立つ。でも後半のエクストリームスポーツ の映像に関しては爽快感はあるし、鑑賞する分には見所のあ る作品だ。エヴェレストに関してはネパール側の描写も多く あって、その辺は好ましくも感じられた。監督はオーストラ リア人のジェニファー・ピードン。2015年“Sherpa”2008年 “Miracle on Everest”という作品もある。ナレーションを ウィレム・デフォーが担当している。公開は7月21日より、 東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年06月17日(日) |
ワンダーランド北朝鮮、私の人生なのに(7号室、悲しみに、ポップ・アイ、ラ・チャナ、バッド・G、オーケストラ・C、スターリンの葬送) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ワンダーランド北朝鮮』 “Meine Brüder und Schwestern im Norden” 韓国・釜山出身の女性監督チョ・ソンヒョンが、母国籍では 入国できない近くて遠い隣国・北朝鮮を知るため、ドイツの パスポートを取得し取材したドキュメンタリー。 作品を観たのが、正に米朝首脳会談の行われた日で、これか らはどうなるのかな(?)という気持ちでも観ていた。2018年 6月3日題名紹介『北朝鮮をロックした日』を観てから間な しでもあったし、いろいろな意味でコントロールされた作品 を観るのも興味深かったものだ。 宣伝チラシにも「プロパガンダか?」というコピーがあった が、この状況下での取材でそれ以外を期待するのはなかなか 難しい。特に農村部の様子などは、正にソビエト連邦時代の コルホーズ、ソホーズの紹介映像を思い出すもので、これが 共産主義だという感じもした。 ただし、堆肥の活用や太陽光発電の利用など、意外とエコロ ジーなのは面白かったところで、この辺は日本の農協などと は違う一面も見せてくれる。何故そうなったのかの経緯など が不明なのは残念だが、これが資本主義と社会主義の違いな のだろうか。 因にこの農村のシーンでは、糞尿などのメタンガスで炊飯す るという話も登場するが、あの程度の設備で本当にガスが集 められるのかには疑問を感じた。正直、韓国映画などで描か れる貧困の農村部とはかなり違うもので、どちらが真実なの かは判らないところだ。 一方、都市部の様子に関しては、このページでは過去にヤン ・ヨンヒ監督の『ディア・ピョンヤン』(2006年7月紹介ド キュメンタリー)、『愛しきソナ』(2011年2月紹介ドキュ メンタリー)、『かぞくのくに』(2012年7月紹介ドラマ) を観てきているが、それらの作品との差異は感じられた。 ただ純粋培養的な若者の姿は、『愛しきソナ』で描かれた姪 の姿にも重なるもので、そのうそ寒さみたいなものは本作で も充分に伝わった。ソナが大きくなってもこんななのだろう な、とは思わされたものだ。その中で語られるソウルに眠る 祖父への想いは本作の眼目かも知れない。 なお、後半の縫製工場のシーンで、「HIKARI」という 日本風の名前の付いたミシンが、ずらりと並んでいる様子が 登場するが。ネットで調べたら中国の会社の製品だそうで、 日本から不正輸出が行われたものではないようだ。まあ日本 では需要もなさそうだが。 米朝首脳会談の結果で、今後の北朝鮮がどのような方向に進 むのか、原状では全く不明だが。本作は正に北朝鮮が見せた い自国の姿を描いているもので、僕らがいろいろ考える上で のヒントにはなりそうな作品だ。 公開は6月30日より、東京は渋谷シアター・イメージフォー ラム他で全国順次ロードショウとなる。
『私の人生なのに』 新体操の日本代表を目指しながらも脊髄損傷で下半身麻痺と いう悲劇に見舞われた女性を、K-POP「KARA」の元メンバー 知英の主演で描いたドラマ作品。 主人公は体育大学の新体操部所属で、次期オリンピックの日 本代表にも選出されようとしていた女性。ところが1人で練 習中に突然の腹痛に見舞われ、失神して気が付いたのは病院 の病床。しかも彼女の下半身は完全に麻痺していた。 病名は脊髄梗塞。疾患による血流の障害で脊髄が虚血性壊死 し、発症部位から下の機能が麻痺して回復は不能というもの だった。それでも学業には復帰する主人公だったが、両親や 周囲の人の励ましも素直には受け入れられない。 そんなある日、彼女は通学の駅に向かう川縁の道で、幼馴染 だった若者に出逢う。2人は高校の学園祭で一緒に歌い盛り 上がった仲だったが、若者の突然の引っ越しで以後は音信不 通だった。その若者は彼女に一緒に歌おうと誘い掛ける。 その誘いにすぐには乗れない主人公だったが…。 共演は、2015年『仮面ライダードライブ』や2017年10月29日 題名紹介『HiGH&LOW』などの稲葉友。他に2018年1月21日題 名紹介『ROKUROKU』などの落合モトキ、2017年10月紹介『花 筐』などの根岸季衣らが脇を固めている。 脚本と監督は、2015年根岸季衣出演の『Drawing Days』や、 2016年知英主演の『全員、片想い』などの原桂之介。 日本代表を目指すアスリートが脊髄損傷の悲劇から立ち直る 話では、2009年1月に『パラレル』を紹介しているが、実話 に基づく同作に対して本作はフィクション。しかも原作は、 2017年12月紹介『レオン』(主演・知英)などの清智英原案 によるライトノヴェルだから、内容は知れる。 とは言え、2009年作はスポーツtoスポーツの転身で、どちら かと言うとスポ根ものに近い内容だったから、それに比べる と本作はいろいろドラマティックだったりはする。それは観 る方も気楽であったりもするし、それなりの面白さも生じる ものだ。 また、映画の後半には知英の歌声も聞けて、ファンには嬉し い作品と言えそうだ。 因に東京パラリンピック2020の実施種目に新体操は含まれて いないようで、映画の鑑賞中にそういう道はないのかと考え ていた僕にはちょっと意外だった。車椅子による競技ダンス は2024年のパリ五輪を目指すという話を聞いており、オリン ピックの華とも言われる体操競技が全く無視されているのは 意外だったものだ。 公開は7月14日より、東京は新宿バルト9他で全国ロードシ ョウとなる。
この週は他に 『7号室』“7호실” (店舗の売却を目論むレンタルDVD店の店主が、事故で死 んだ従業員の死体を隠そうとするブラックコメディ。自分が 子供の頃に観た舞台中継で、大衆食堂に来た客が料理を注文 した直後に急死し、その事実を隠そうとする料理人らが右往 左往するという内容のものがあり、観た当時にもひどい話だ なあと思った記憶があるが、本作もそれに通じる。ただし本 作ではそこに薬物の密売などが絡み複雑になってはいるが。 人間の本性は何時まで経っても変わらないということなのだ ろう。脚本と監督は、2013年“10 Minutes”(英語題名)と いう作品で釜山国際映画祭の観客賞などを受賞しているイ・ ヨンスンの第2作。出演は、2018年1月21日題名紹介『悪女 AKUJO』などのシン・ハギュンと、2017年3月5日題名紹介 『あの日、兄貴が灯した光』などのアイドルグループEXO のディオ。公開は8月4日より、東京はシネマート新宿他で 全国順次ロードショウ。)
『悲しみに、こんにちは』“Estiu 1993” (本作でゴヤ賞新人監督賞などを受賞した女性監督カルラ・ シモンの自伝的デビュー作。巻頭で幼い少女が祖母から引き 離され、都会の家から田舎の親戚の家に引き取られる。その 家には彼女より幼い娘がいた。こうして馴れない田舎暮らし に放り込まれた少女は、周囲との軋轢の中で何とか居場所を 見つけようとするが…。最初は不明な少女の境遇が徐々に明 らかにされ、その中で少女が状況を受け入れるまでの葛藤が 描かれる。苛めなどがある訳ではないが、ちょっとしたこと が少女の立場を悪くする。しかもそこには少女の心に秘めた 思いもある訳で、そんな微妙な物語が丁寧な演出の中で描か れて行く。出演は共に新人のライア・アルティガスとパウラ ・ロブレス。スペイン・カタルーニャの田園を背景に、僕は 1952年の『禁じられた遊び』を少し思い出したかな。そんな 悲しみに満ちた物語が展開される。公開は7月下旬、東京は 渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『ポップ・アイ』“Pop Aye” (2017年東京国際映画祭「アジアの未来」部門で上映された が、僕は見逃していた作品。タイが舞台の中年男性と象によ るロードムーヴィ。建築家の主人公は業績もあるが、後進の ため席を譲らざるを得ない。そんな時、バンコクの町角で見 付けたのは、彼が幼い頃に一緒に育った象だった。そして思 わずその象を買ってしまうが、妻には理解されず、止む無く 彼は象と共に故郷を目指すことになる。ところがヒッチハイ クしたトラックは見知らぬ場所で彼らを置き去りにし、さら に象の勝手な移動を禁止する法律によって警察も動き出す。 それでも何とか故郷に向って進んで行くが…。脚本と監督は 本作が長編デビューのカーステン・タン。出演は、タイでは 音楽家として著名なタネート・ワラークンヌクロ。時間軸の 前後が多少判り難いが、本作は2017年のサンダンス映画祭で 脚本賞受賞など、喝采されたそうだ。公開は8月より、東京 は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『ラ・チャナ』“La Chana” (本名アントニア・サンティアゴ・アマドール。1946年生ま れ。バルセロナの貧困層出身で14歳から踊り始め、若くして 才能を開花。1960年代には世界ツアーなども行い、欧州映画 に出演してハリウッドにも招かれたが、そのキャリアの絶頂 期に表舞台から姿を消す。そんな伝説的フラメンコ・ダンサ ーの姿を追ったドキュメンタリー。彼女の行動の裏には封建 的なヒターノ(男性)社会の影があるようだが、本作ではそ の辺を深くは追及しない。それよりも現在の屈託なく踊る彼 女の姿が中心に描かれている。それは若い頃に編み出した激 しく足を踏み鳴らすもので、現在は膝を悪くして椅子に座っ たままでのパフォーマンスだが、その迫力には正しく圧倒さ れた。試写会場では、上映中に届いたという本人からのメッ セージも披露され、日本公演も行ったことのあるダンサーの 思いが伝わってきた。公開は7月21日より、東京はヒューマン トラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』“ฉลาดเกมส์โกง” (アメリカ留学を目指してアジア全域で行われる学力試験、 その合格を目論む大カンニング作戦を描いた、中国での実話 に基づくとされるタイ映画。主人公は学力優秀な女子高生。 しかし貧困層の彼女は金持ちの同級生にカンニングを許した ことから、同級生の友人も含めたカンニングビジネスに巻き 込まれる。一方、彼女はやはり貧困層の男子と学内のトップ 争いを続け、アメリカ留学に近づくが、学内から選ばれるの は1人だけだった。そんな中で金持ちの子女たちに留学の道 を開く作戦が始まり、それは予想外に大規模になって行く。 どこまでが実話か知らないが、かなり奇想天外な作戦の実行 がスリルとサスペンスで描かれる。脚本と監督は主に短編を 手掛けてきたナタウット・プーンピリヤ。主演のモデル出身 チュティモン・ジョンジャルーンスックジンのクールビュー ティ振りも注目の作品だ。公開は9月22日より、東京は新宿 武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『オーケストラ・クラス』“La mélodie” (プロの演奏家が、それまで音楽に触れる機会のなかった子 供たちに演奏を教えるというフランスに実在する教育プログ ラムからヒントを得たとされる作品。主人公は演奏活動に行 き詰まっているヴァイオリニスト。彼はアルジェリアからの 移住者の子供が多く通う小学校に赴任し、連合音楽会に出演 できるレヴェルまで彼らを指導することを求められるが…。 才能を見せる生徒や落ち着きのない生徒など、様々な子供た ちが事件を引き起こす。物語は俳優でもあるギィ・ローラン のアイデアに基づくとされるが、僕は観始めてすぐに2016年 6月26日題名紹介『ストリート・オーケストラ』を思い出し た。それも実話に基づく作品だったが、ファヴェーラが舞台 の過激なブラジル作品に比べると、本作の方が多少身近に感 じるかな。この程度なら日本でも共感を呼べそうだ。脚本と 監督はこちらも俳優出身のラシド・ハミ。公開は8月18日よ り、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『スターリンの葬送狂騒曲』“The Death of Stalin” (スティーヴ・ブシェミがフルシチョフに扮するソビエト連 邦・最高指導者の突然の死を巡るドタバタを描いたブラック コメディ。大粛清によって人々に恐怖を与え続けた指導者が 突然の死去。その死体を囲むマレンコフら政府要人たちは、 体制維持と自らの保身を賭けて様々な手を打って行くが…。 特にマレンコフとフルシチョフの主導権争いが熾烈になる。 マレンコフ役には2016年12月25日題名紹介『ザ・コンサルタ ント』などのジェフリー・タンバー。他に、2017年12月紹介 『ロープ』などのオルガ・キュリレンコらが脇を固める。原 作はフランスのコミックスの映画化。2017年トロント国際映 画祭でプレミア上映されたが、ロシアでは上映禁止処分にな っているそうだ。なお、スターリンの生地が全編英語の台詞 ではジョージアと発音されていたが、字幕は「グルジア」。 これは当時の状況からは正しく良い字幕だ。公開は8月3日 より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年06月10日(日) |
アラーニェの虫籠(きらきら眼鏡、最後のランナー、2重螺旋の恋人、性別がない、ストリート・オブ・ファイヤー) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『アラーニェの虫籠』 NHK「みんなのうた」や、押井守監督作『イノセンス』の ディジタル・エフェクトなどを手掛けてきたアニメーション 作家の坂本サクが、原作・脚本・アニメーション・音楽の全 てを1人の手で作り上げた75分の作品。 物語の舞台は、郊外の工場跡地に建つ巨大集合住宅。そこに 引っ越してきた女子大生が主人公。ところがそこは、女子高 生の変死体が発見されたり、不可解な心霊現象が目撃される など、怪異な噂が絶えない場所だった。 そしてある夜、救急車で搬送される老婆の腕から大きな虫が 飛び出るのを目撃した主人公は、その虫のことを調べる内、 民俗学者と出会い、過去にもこの地域で、奇妙な虫の目撃例 が多発していたことを知る。 それは“心霊蟲”と呼ばれ、古来から人知れず存在していた という。しかもその“虫”を見た者の中には、不気味な予兆 と共に、変死を遂げた者も少なくないため、“虫の呪い”と も言われていた。 そんな呪いの恐怖に怯えながらも、彼女は様々な人たちとの 出会いを通して、自らも蟲や心霊現象の正体に迫って行くこ とになるが…。 声優は、主人公に2017年3月紹介『夜は短し歩けよ乙女』な どの花澤香菜。他に、2018年4月22日題名紹介『仮面ライダ ーアマゾンズ』などの白本彩奈、2004−05年『特捜戦隊デカ レンジャー』などの伊藤陽佑らが脇を固めている。 映画の前半は、その映像や雰囲気などが、1977年のダリオ・ アルジェント監督作『サスペリア』を思い出させるような見 事なホラーが展開される。これでこのまま最後まで描き切れ たらとんでもないものになるという予感もしたものだ。 しかし後半になると、ある種の日本アニメの定番のような展 開で、それは伏線もしっかりと敷かれて破綻のない展開では あるのだが、ホラー好きの自分としてはちょっと物足りない 感じではあった。 もちろんこれが日本アニメに求められているものだし、この 展開が内外のファンに喝采されることは理解しているもので はあるのだが、前半の雰囲気を最後まで全うしてくれたら、 それも凄い作品になったのではないかと思う。 でもそれをやっちゃったら、日本のアニメファンにはそっぽ を向かれてしまうのかな? 作品は、6月のアヌシー国際アニメーション映画祭で併催の 世界最大級のアニメ見本市MIFA(Marché international du film d'animation)への出展が決定しており、そこでの評価 も楽しみだ。 日本公開は8月中旬より、東京はシネリーブル池袋他で全国 順次ロードショウとなる。
この週は他に 『きらきら眼鏡』 (2014年9月紹介『ヲ乃ガワ』の製作者で、2016年『つむぐ もの』などの犬童一利監督が、2011年1月紹介『津軽百年食 堂』などの森沢明夫による同名の小説を映画化。主人公は恋 人を事故で失って以来、人との付き合いを避けて暮らしてき た若者。そんな彼がふとした切っ掛けで出会ったのは、心に 「きらきら眼鏡」を掛けていると称する女性だった。しかし 彼女にも秘めた苦悩があり、それが2人の出会いに影を落と す。出演は本作で映画デビューの金井浩人と、2014年2月紹 介『そこのみにて光輝く』などの池脇千鶴。他に安藤政信、 2017年7月紹介『東京喰種』などの古畑星夏らが脇を固めて いる。物語では「きらきら眼鏡」という発想が素晴らしい。 しかしそれが映像では表現されない。それは外連を避けたた めと推察されるが、映画人としてここには挑戦があっても良 かったのでは? 公開は9月15日より、東京は有楽町スバル 座他で全国順次ロードショウ。)
『最後のランナー』“On Wings of Eagles” (オスカー受賞作『炎のランナー』のモデルとなった1924年 パリオリンピックの金メダリスト、エリック・リデルのその 後を、実話を基に描いたとされる人間ドラマ。敬虔なクリス チャンだったリデルは宣教師となり、オリンピックの翌年に 元々の生地だった中国天津に赴任する。しかし1937年、日本 軍の占領によって欧米人の人権は迫害されるようになってゆ く。そんな中で、金メダリストがいると知った敵国人収容所 の指揮官がリデルに勝負を申し入れるが…。出演はジョセフ ・ファインズ。製作、脚本、監督は、1994年『項羽と劉邦』 などのスティーヴン・シン。実話に基づくとされているが、 本作の基になったと思われるリデルの天津での教え子スティ ーヴン・メティカフの自伝では、彼らが居た敵国人収容所の 環境は、戦争捕虜収容所ほど過酷ではなかったそうで、この 辺には多少の誇張があるようだ。公開は7月14日より、東京 は有楽町スバル座他で全国順次ロードショウ。)
『2重螺旋の恋人』“L'amant double” (2010年9月紹介『Ricky』などのフランソワ・オゾン 監督が、アメリカの女性作家ジョイス・キャロル・オーツの 短編小説を脚色、映画化した作品。原因不明の腹痛に苦しむ 女性が精神科医を訪ね、痛みから解放されると共に彼と恋に 落ちる。そして一緒に暮らし始めた彼女だったが、ある日、 街で彼にそっくりな男性を見掛け、その男性もまた精神科医 だった。その男性にも興味を持ち接近する彼女だったが…。 出演は、オゾン監督の2013年作『17歳』に主演したマリー ヌ・バクト。相手役に2017年1月29日題名紹介『午後8時の 訪問者』などのジェレミー・レニエ。他にジャクリーン・ビ セットらが脇を固めている。事前に周到なリサーチを重ねる オゾン監督らしく、本作でもまた不思議な医学的症例を物語 に被せてくる。また、主人公が務める美術館の様々な展示品 にも興味が湧いた。公開は8月4日より、東京はヒューマン トラストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)
『性別が、ない!』 (日本では半陰陽とも呼ばれる、インターセックス=医学的 に染色体などが非定型的、つまり男性でも女性でもないとさ れる人たちを追ったドキュメンタリー。登場するのはそれを カミングアウトしている漫画家の新井祥。30歳までは女性と して暮らし結婚もしたが、染色体検査でインターセックスと 判明し、ホルモン注射などで男性化。そのため離婚して東京 から名古屋に転居。現在は専門学校の非常勤講師をしながら 自らを題材にしたエッセイ漫画を発表している。そして漫画 家には美少年でゲイのアシスタントがいて、彼もカミングア ウトした漫画でデビューを果たす。そんな2人がタイに取材 に行ったり、他のインターセックスの人との交流などが描か れる。ゲイや女装家に関しては、僕自身は正直半信半疑な部 分もあるが、本作は正に医学的にもそうである訳で、その実 体験などは聞くに値するものだ。公開は7月28日より、東京 はUPLINK渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『ストリート・オブ・ファイヤー』“Streets of Fire” (2017年12月紹介『レディ・ガイ』などのウォルター・ヒル 監督が1984年に発表した青春アクション。物語は、地元出身 の女性歌手が故郷で開いたチャリティーコンサートの会場か らギャング団にさらわれ、その救出のため歌手の元恋人の主 人公が呼び戻される。そして歌手のマネージャーと流れ者の 女性兵士と共に、ギャング団の本拠に乗り込むというもの。 出演は、マイクル・パレとダイアン・レイン。それにリック ・モラニス、ウィレム・デフォーらが脇を固めている。製作 者として『エイリアン』を成功させたヒルの、監督としては 『48時間』の次の作品であり、当時42歳の監督の最も脂の乗 った作品とも言える。それでいながらロック音楽をど真ん中 に据えて、正に若さを感じさせる作品だ。因にレインの歌声 は吹替えだが、複数の歌手のユニゾンを合成したという歌唱 の迫力もディジタル・サウンドで復活する。公開は7月21日 より、東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年06月03日(日) |
パンク侍、スペースバグ(若い女、子ども、ブレス、人間機械、スウィンダ、グッバイG、大人のため、妻の愛、榎田、北朝鮮、ゲッベルス) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『パンク侍、斬られて候』 芥川賞作家の町田康が2004年に発表した小説を、2002年6月 紹介『ピンポン』などの宮藤官九郎の脚本、2016年2月紹介 『蜜のあわれ』などの石井岳龍監督で映画化した作品。 時代背景は平和ボケが進んでいる江戸時代。1人の素浪人が 物乞いの老人を切り捨てるところから物語は始まる。その素 浪人は居合わせた仕官侍に隣国で発生したカルト教団の脅威 を説き、物乞いはその手先で自分にはその対処法があるから 仕官への道を開いて欲しいと依頼する。 その言葉を真に受けた侍は、直ちに素浪人を上司の藩家老に 紹介するが、藩ではぼんくらな主君の許で2人の家老が権力 争いを繰り広げており、素浪人はその争いに巻き込まれるこ とになる。そして権力争いの切り札として、カルト教団の脅 威が検討されることになるが…。 実はカルト教団はすでに消滅しており、素浪人らはその脅威 を再現するべく画策を始めることになる。 出演は2017年4月2日題名紹介『武曲 MUKOKU』などの綾野 剛、2017年10月8日題名紹介『探偵はBARにいる3』などの 北川景子、2018年1月紹介『空海』などの染谷将太。 他に、渋川清彦、東出昌大、浅野忠信、永瀬正敏、國村隼、 豊川悦司らが脇を固めている。 題名に使われている「パンク」というのはロック音楽の流れ なのかな? ただし本作の内容では、いくつかのSF的な要 素が見られ、その点から言うと「サイバー・パンク」、若し くは「(時代劇ということで)スチーム・パンク」というつ もりなのかもしれない。 とは言うものの、本作でのSF要素は正しく賑やかしという 程度で、それをSFとして評価するのは苦しいものだ。その 点は脚本の宮藤も判って脚色している感じがした。もっとも 宮藤は、2010年8月紹介『大江戸りびんぐでっど』でSFは 得意ではないと思われ、この判断は正しいだろう。 しかし本作を一般的な時代劇とするのは、SF以上に無理と 言える。その点では真面目に本作を論じるのは止した方が良 いと言えるものだ。これを論じるにはSF的な柔軟さも要求 される。 という訳で、結局SFとして評価することになってしまうの だが、登場する「超能力」と「猿」という存在はSFファン としてはいろいろ考えてしまうものだ。しかもそれらが上で 書いたように賑やかし程度なのが、勿体なくも感じられたと ころだ。 公開は6月30日より、東京は丸の内TOEI他で全国ロード ショウとなる。
『スペースバグ』 2013年6月紹介『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』などの中尾浩之脚本・監督により、TOKYO MXで 7月8日から放送される宇宙物のCGアニメーション。その 第1話〜第6話の試写が行われた。 登場するのは太陽系外に設置された研究ステーションで実験 生物として飼育されていた昆虫。ところが宇宙開発の中止で 人間はステーションを去り、仲間のほどんどは死滅してコオ ロギのハカセと、クモのマルボだけが残されている。彼らは 地球を知らずに育ってきた世代だった。 そこに新たにネムリユスリカのミッジが登場する。ミッジは さなぎの状態ではどんな過酷な環境にも耐え、水を掛けると 復活するという特性からさなぎで採取され、ステーションに 連れてこられたもので、彼には地球の記憶があった。 そしてハカセは、彼らが閉じ込められている飼育室から脱出 するため、天井にある通気口まで飛ぶことのできるネムリユ スリカのさなぎに水を掛けミッジを復活させたのだった。こ うしてミッジの助けで飼育室を脱出した3匹だったが…。 飼育室の外には宇宙食に飽きて生き餌の捕食に飢えたカエル の一団や、虫を駆除するロボットなどが待ち構えていた。し かも人間に放棄された宇宙ステーションには、最早電力の供 給も尽きかけていた。 というのが試写の行われた6話までの前半の展開で、ここか ら彼らの命を賭けた大冒険が始まるという筋書きだ。 監督の中尾は、1998年にCGと実写合成の短編がコンテスト 応募でグランプリを受賞、2000年にはカンヌ広告祭で世界の 新人監督8人などにも選出されている。そして2009年スター トの『タイムスクープハンター』で注目したものだ。 その中尾が本作では、構想開始から5年を掛けて作り出した もので、中尾自身は子供の頃に観たテレビアニメの夢と冒険 を再現したいと語っている。 という作品だが、実は試写された6話までの中ではSF的に は突っ込みどころが満載で、特に重力発生装置の下りでは頭 を抱えてしまった。具体的にはスイッチのオンオフが逆だろ うという感覚なのだが…。 いろいろ考察すると、どうやらこのステーションでは特殊な 重力装置が稼働しているらしく、それは自然現象的な重力の ようだ。そこから考えるとオンオフの感覚も納得できるのだ が、これはちゃんと説明して貰わないと困るものだ。 この他にもいろいろあるが、深く考えると科学的には合って いるのかもしれず、これは全作を通してじっくりと考えたく なった。因に全体は52話の構成だそうで、1話は10分30秒な ので全話では9時間6分となる。 第7話以降もサンプルDVDでの提供を受けられるようなの で、全体の評価は改めて報告したい。
この週は他に 『若い女』“Jeune femme” (女性監督のレオノール・セライユがフランス国立映画学校 の卒業制作として書いた脚本を自らの手で映画化、2017年の カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)に輝いた作 品。田舎からパリにやってきた若い女性が、年上の恋人に振 られ、傷つき、もがき、再生して行く姿が描かれる。正に若 い女性の感性という感じの作品になっているが、還暦過ぎの おっさんには少し荷が重かったかな。特に結末で主人公が下 す決断には、正直納得が出来なかった。ただし主人公の取る 喫驚な行動の原因が、実はこの決断の基にあると考えると、 それは物語としては理解可能なものではある。でもそれは、 僕の倫理観には合わなかったもので、逆であって欲しいとも 思ってしまったものだ。出演は本作でリュミエール賞最有望 女優賞を受賞したレティシア・ドッシュ。公開は夏、東京は 渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『子どもが教えてくれたこと』 “Et les mistrals gagnants” (様々な病気を抱えて生きる5人の子供たちの日常を追った ドキュメンタリー。子供たちの病はいずれも難病だが、彼ら はそれに正面から向き合っている。その健気さが何とも言え ない作品だ。本国フランスで23万人の動員を記録したという のも頷けるもの。だからと言ってこの子供たちに僕らが何を してあげられるかというと…。全く暗澹とした気持ちにもな ってしまう。それにしても「死」という言葉がこれほど繰り 返して聞かれる作品も多くはないだろう。しかもそれが幼い 子供たちの口から聞かされるのだからそれも堪らない。しか しこれがこの子たちの現実なのであって、その現実を彼らは 懸命に生きている。1人でも多くの子供たちが生き長らえ、 できれば快癒することを願わずにはいられない。監督は自身 も病気で娘を亡くした経験を持つというアンヌ=ドフィーヌ ・ジュリアン。公開は7月14日より、東京はシネスイッチ銀 座他で全国順次ロードショウ。)
『ブレス しあわせの呼吸』“Breathe” (『ブリジット・ジョーンズの日記』などの映画製作者ジョ ナサン・カベンデュッシュが、自身の両親の実話に基づき自 らの製作で映画化した作品。1960年代、出張先のアフリカで ポリオに罹患した男性は首から下が完全麻痺となり、人工呼 吸器が止まれば即死という状態になる。そして息子が生まれ るも絶望的な状況の中、彼は病院を出たいと言い出すが…。 友人の発明した人工呼吸器付車椅子が彼の運命を変える。出 演は、2017年4月2日題名紹介『ハクソー・リッジ』などの アンドリュー・ガーフィールドと、2011年7月紹介『デビル クエスト』などのクレア・フォイ。他に2011年5月紹介『ハ ンナ』などのトム・ホランダー。それにオールドファンには 懐かしいダイアナ・リグがキーとなる役柄で登場している。 監督は『ホビット』の第2班監督を務めた俳優のアンディ・ サーキス。長編監督デビュー作だ。公開は9月7日より、東 京は角川シネマズ有楽町他で全国順次ロードショウ。)
『人間機械』“Machines” (インドにある繊維産業の工場で、半ば機械と化して過酷な 労働を続ける人々を追ったドキュメンタリー。この種の搾取 に関してはすでに何度も告発されて、一部では改善もされた のだろうが、現実には昔通りのことが行われているようだ。 その実態は、企業側から見るともっと合理化すれば収益も上 げられると思えるが、豊富な労働力の供給が旧態依然を維持 してしまう。そんな現実が特に誰かを批判するでもなく描か れている。それは問題意識の欠如を批判する向きもあるかも しれないが、本作ではそれよりさらに詩的な側面で現実を見 つめた作品になっている。しかも音響にはDolby Atmosが採 用され、試写会はそうではなかったが、最近流行りの爆音上 映でも行われれば、正に工場の中にいるような感覚にもなり そうだ。そんな過酷な労働の実態が体感できる作品になって いる。監督は新鋭のラーフル・ジャイン。公開は7月より、 東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『スウィンダラーズ』“꾼” (2017年12月10日題名紹介『コンフィデンシャル共助』など のヒョンビン、2013年7月紹介『人類資金』などのユ・ジテ らの共演で、韓国で実際に起きたマルチ商法詐欺事件をモデ ルにしたクライムドラマ。主人公は詐欺師を相手に詐欺を働 く天才詐欺師。そんな彼の今回のターゲットはマルチ商法で 得た大金を持って海外に逃亡した男。その男の持ち逃げした 大金が狙いだ。そして男の連絡役に目を付けた主人公は、連 絡役に大金を一気に洗浄する手口を見せて近づくが…。実は 主人公はマルチ商法事件を追った検事とも結託し、逃亡した 男の逮捕も目論んでいた。脚本と監督は、助監督出身の新鋭 チャン・チャンウォン。詐欺師テーマは韓国映画がお得意の 分野ではあるが、過去の作品では手口が複雑で、国情などの 違いから即座に納得できない作品も多い。しかし本作では経 緯も判り易く見事な物語を展開してくれた。公開は7月7日 より、東京はシネマート新宿他で全国ロードショウ。)
『グッバイ・ゴダール!』“Le Redoutable” (1967年、ジャン=リュック・ゴダール監督の『中国女』に 出演し、監督の妻にもなった女優アンヌ・ヴィアゼムスキー が2015年に発表した自伝的小説“Un an après”を、2012年 2月紹介『アーティスト』でオスカー受賞のミシェル・アザ ナヴィシウス監督が映画化。世界の映画を変えた男として絶 賛されたヌーヴェルヴァーグの監督が毛沢東思想に傾注し、 フランスでの革命運動に身を投じて行く。とは言っても監督 自身の行動や作品は様々な批判を浴びるようにもなる。そん な姿を監督の妻という間近から描いた物語だ。ただしこれは あくまで妻の立場から語った小説であり、この全てが真実か どうかは判らない。しかし当時の学生運動や映画事情などが 描かれるのは、一応当時すでに映画を観始めていた自分には 懐かしさも感じる作品だった。出演は2016年5月紹介『ハイ ・ライズ』などのステイシー・マーティン。公開は7月13日 より、東京は新宿ピカデリー他で全国順次ロードショウ。)
『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』 “La jeune fille sans mains” 〈2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭で、審査員賞 と最優秀フランス作品賞をW受賞した作品。19世紀初頭に書 かれたグリム童話で初版から収録されている民話「手なしむ すめ」を、それまで短編作品を手掛けてきた新鋭セバスチャ ン・ローデンバック監督が、脚本、編集はもとより、全ての 作画も1人で担当して制作した作品。その映像はかなり独特 の風合いのものだ。物語は貧しい生活故に悪魔と取引した父 親のため両手を奪われた少女が、その健気さ故に王子に見初 められるが、そこにも悪魔の魔手が伸びてくる…。グリム童 話は、オリジナルではかなり残酷な描写のあることで知られ るが、本作はアニメーションで緩和はされているものの、描 かれているものは正に大人のための童話と言える。それはあ る意味サディスティックでもある。それにしても教訓は「手 はしっかり洗いましょう」なのかな? 公開は8月より、東 京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『妻の愛、娘の時』“相爱相亲” (2010年11月1日「第23回東京国際映画祭」で紹介『ブッダ ・マウンテン』などのシルヴィア・チャン脚本、監督、主演 による3代の女性を巡る物語。チャンが演じるのは母親を亡 くしたばかりの中年女性。今際の際の言葉から父親と同じ墓 に入りたいと確信した主人公は、故郷に葬った父の遺骨を町 の墓地に移そうする。ところが故郷の墓は戸籍上の妻と主張 する女性によって頑なに守られていた。これにさらにテレビ 局に勤める主人公の娘も加わって、妻の立場、娘の立場の物 語が展開する。共演は「未体験ゾーンの映画たち2018」で上 映された『ミッション:アンダーカバー』などのラン・ユェ ティンと、2007年8月紹介『呉清源』(チャン出演)などの 監督のティエン・チュアンチュアン。自分の人生に直接関っ てくるような話ではないけれど、家族の意味を改めて考えた くなる作品だ。公開は9月上旬より、東京はYEBISU GARDEN CINNEMA他にて全国順次ロードショウ。)
『榎田貿易堂』 (『パンク侍』にも出演の渋川清彦主演で、俳優の出身地で ある群馬県渋川市を舞台に、同郷の飯塚健監督と共に描いた ヒューマンコメディ。主人公は自宅を使って「なんとなく勘 で」リサイクルショップを開いた男。ところがそれが思いの 外の好調で、従業員を2人雇うまでになっている。とは言う ものの根がいい加減な主人公は、いろいろトラブルを引き起 す。しかしそれらが話題を呼んで店は益々繁盛してしまう。 そんな適当な物語が渋川のひょうひょうとした演技で描かれ て行く。共演は、2017年9月3日題名紹介『地の塩』などの 森岡龍、2017年4月23日題名紹介『獣道』などの伊藤沙莉。 他に滝藤賢一、根岸季衣、諏訪太朗、余貴美子らが脇を固め ている。ロケ地は渋川市だけでなく、伊香保温泉など見事な ご当地映画にもなっている。公開は6月9日より東京は新宿 武蔵野館で上映の後、16日からはシネマテークたかさき他で 全国ロードショウ。)
『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』 “Liberation Day” (2012年5月紹介『アイアン・スカイ』の音楽を担当したこ とでも知られる旧ユーゴスラビア出身の実験音楽バンドが、 2015年8月15日の北朝鮮・祖国解放70周年記念日に、外国の バンドとしては初めて同国内での演奏に招聘され、公演を行 うまでの顛末を描いたドキュメンタリー。バンドはナチの軍 服に似せたコスチュームや政治的な歌詞などでいろいろ物議 を醸してきたようだが、上記の映画に参加したことでも判る ようにナチスを賛美している訳ではない。そんなバンドが何 故北朝鮮に招かれたかにも興味は湧くが、本作ではそんなと ころを突けるものでもなく、どちらかというと定番の体制の 違いによる意思疎通の難しさなどが面白く描かれている。た だしこの辺は、2006年7月紹介『ディア・ピョンヤン』など とも共通しており、それを別の視点から描いたものとも言え る。公開は7月14日より、東京は渋谷イメージフォーラム他 で全国順次ロードショウ。)
『ゲッベルスと私』“A German Life” (1942年から終戦までナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルス の秘書として、後の戦犯の姿を間近で見ていた女性が、戦後 69年の沈黙を破って語った戦争の悲劇。と言っても彼女自身 は、「あの時代にナチスに反旗を翻せた人はいない」とか、 「ホロコーストについては知らなかった」と語るものだが、 その自己弁護とも言える発言が、より深く戦争の闇を描いて いるとも言える。そしてそれは今の時代にも変らず存在して いる闇かも知れない。そんなことも思わせてくれる作品だっ た。なお作中には数多くの記録映像が挿入させるが、その提 供元のトップにはスティーヴン・スピルバーグの名前が掲げ られているもので、恐らくは『シンドラーのリスト』の制作 時に収集された資料が今回は利用されているようだ。その中 には今まで観たこともない米独両国のプロパガンダもあり、 改めて戦争の愚かしさが浮き彫りにされている。公開は6月 16日より、東京は岩波ホール他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
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