| 2018年05月27日(日) |
第二警備隊(英国総督最後の家、ヒトラーを欺いた、高崎グラフィティ、国家主義の、輝ける人生、祝福、ブエナ・ビスタ) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『第二警備隊』 2018年2月紹介『バケツと僕!』で製作総指揮を務めた柿崎 ゆうじが、自らの監督で、自らが経営する民間警備会社での 実体験に基づく物語を映画化した作品。 柿崎監督は、以前には短編作品で各国の国際映画祭での受賞 歴もあるようだが、長編映画での力量は不明。従って本作に 関しても正直あまり期待は持っていなかった。しかも冒頭に は追悼の献辞が掲げられていて、これはやばいかなと思って しまったものだ。 しかし本編に入ると物語は予想以上に巧みに作られていた。 まず物語は墓参のシーンから始まる。ここで登場人物の1人 の死が宣言されてしまう訳だが、ここからその人物の死に至 る物語が展開される。それが見事な緊張感の中でしっかりと 綴られていた。 物語の主題は、ある名刹に対する政治団体による嫌がらせ。 その対策を寺の住職が大学の後輩だった主人公に相談すると ころから始まる。そこで警備会社を経営する主人公は、住職 家族への身辺警護を開始すると共に、団体からの要求はすべ て拒否することを確認するのだが…。 街宣車などを使った嫌がらせはどんどんエスカレートして行 くことになる。その嫌がらせに如何に対処して行くのか? 当然警察へも相談を持ち掛けるが、警察は民事不介入を盾に 協力を拒んでくる。そして嫌がらせは近隣住民や寺の総代、 さらには家族の故郷の親族へと広がり始める。 警察の動きの悪さなどには苛々させられ、さらに嫌がらせの 巧みとも言える手口にも呆然とさせられる。そんな我々でも 陥れられるかもしれない恐怖が克明に描き出された作品だ。 しかもこれは実体験に基づいているのだというのだから…、 全く恐ろしいホラーにも似た感覚だった。 出演は、筧利夫、出合正幸、竹島由夏、野村宏伸。他に伊藤 つかさ、伊吹剛、麿赤兒、赤座美代子らが脇を固めている。 試写状に書かれていた作品のコンセプトを読んだ時にはいろ いろなエピソードの羅列かな?程度に考えていた。しかし作 品は1つの主題で真っ向から押し通す。それだけ作者にとっ ても思い入れのある内容なのだろう。そんな一途な気持ちも 伝わってくる作品だった。 その一方で、最近の学校でのいじめを描いた映画が、いじめ を撲滅すると言いながらその手口を紹介しているような作品 が多いのに対して。本作では集団による嫌がらせへの対処法 を克明に綴っている。この点にも好感が持てた。ただそれが 完璧ではないところも、作者の気持ちなのだろう。 そんな作者の想いが様々に伝わってくる作品だ。 公開は、東京は6月16日より新宿武蔵野館、大阪は6月30日 よりシネリーブル梅田で、それぞれ2週間限定ロードショウ となる。
この週は他に 『英国総督最後の家』“Viceroy's House” (1947年のインド・パキスタン分離独立に際して最後の英国 総督としてその任を務めたルイス・マウントバッテン伯爵を 描いた作品。第2次世界大戦後のインドでは、ガンジーらの 運動もあって独立の機運が高まる。そこで宗主国イギリスは その道筋を付けるべく、ヴィクトリア女王の曾孫である伯爵 を送り込む。しかし現地ではヒンディー、シーク、イスラム の宗教対立が根強く、特にイスラムの指導者が分離独立を唱 え始める。その中でヒンディーのネールらは単一での独立を 望んでいたが、その混乱が国民に波及して行く。映画は豪華 な総督邸の描写に始まり、当時のニュース映像なども織り込 んでその状況を描いて行く。出演は2017年12月10日題名紹介 『パディントン』などのヒュー・ボネヴィルと、『X-ファイ ル』のジリアン・アンダースン。脚本と監督は2002年『ベッ カムに恋して』などのグリンダ・チャーダ。公開は8月11日 より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『ヒトラーを欺いた黄色い星』“Die Unsichtbaren” (第2次世界大戦下のベルリンでは、ナチスによるジェノサ イドが行われる中、多数のユダヤ人が密かに暮らしていた。 その数は当初は7000人とも言われ、その内の1500人が戦後ま で生き延びたとのことだ。そんな4人の生存者の証言に基づ くドラマ作品。彼らの多くは善良なドイツ市民の庇護で救わ れるが、中には手先の器用さで身分証明書を偽造し、それを 売ってかなり優雅な生活をしていた猛者もいたようだ。そん な歴史の裏側のドラマがインタヴュー映像や当時の記録映像 と共に描かれる。インタヴューの画質が甘いのは初期のHD での撮影と思われるが、挿入される当時の映像の中にカラー があったことには驚いた。アメリカが沖縄戦線などの記録で カラーフィルムを使用したのは知っていたが、戦時下のドイ ツでそれが行われていたのは、映画史的にも貴重な映像だ。 そんな見所もある作品になっている。公開は7月28日より、 東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『高崎グラフィティ』 (2016年にスタートした「未完成映画予告編大賞」で第1回 グランプリに選ばれた作品を、川島直人監督が3000万円の助 成金を得て本編映画化した長編デビュー作。群馬県高崎市を 舞台に卒業式を終えた高校3年生の男女5人による青春群像 劇。地元に残る者、東京へ出て行く者。そんな未来への不安 が一杯の中で、いくつかの事件が交錯する。中心になる5人 には佐藤玲、萩原利久、岡野真也、中島広稀、三河悠冴とい う若手が選ばれ、その脇を川瀬陽太、渋川清彦らが固めてい る。題名からは1973年のジョージ・ルーカス監督作が思い浮 かぶが、同様に本作も5人の誰かに感情移入できるところが 眼目だろう。そして本作では女子を描いたことに時代を感じ させる。また渋川の役柄が、後半の展開では先が読めるもの の、主人公の焦燥感に重なる良いアクセントになっていた。 公開は、すでに4月に行われた高崎映画祭のクロージングで 上映されたようだが、一般公開は8月に予定されている。)
『国家主義の誘惑』“Japon, la tentation nationaliste” (パリ在住で、フランスやヨーロッパのテレビ向けに多くの ドキュメンタリー作品を手掛けている渡辺謙一監督が、原状 の日本と戦前の日本とを重ね合せて、日本国の進むべき道を 問うフランス製作の作品。内容的には安倍晋三のやることに 真っ向から反旗を翻しているもので、その論点は判り易い。 しかもそれを海外の歴史学者などへのインタヴューで明らか にして行く。それは「外国人の言うことなど…」という短絡 的な反論も出てくるだろうが、これが海外の特に知識人たち が日本を観ている目なのであって、それを看過することはで きないものだ。その中には日本人には今更の部分もあるが、 日本人では考えない洞察があることも見逃せない。また昭和 天皇及び現天皇の言葉に対する考察も興味深かった。今こそ 全日本人がしっかりと観て考え、議論して、日本の行く末を 見直す材料とするべき作品だ。公開は7月28日より、東京は ポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)
『輝ける人生』“Finding Your Feet” (共に『ハリー・ポッター』シリーズで悪役側を演じたイメ ルダ・スタウントンとティモシー・スポールの共演で、第2 の人生を歩み出そうとする中年の男女を描いたドラマ作品。 主人公は内助の功で夫が受勲してレディの称号を得た女性。 ところがその祝宴の最中に夫の不倫が発覚し、彼女は下町に 住む疎遠だった姉の家にやって来る。その姉は独身でエコ活 動などに忙しかった。こうして180度違った暮らしに放り込 まれた女性だったが、徐々に昔の暮らしを思い出し、幼い頃 に熱中したダンスを通じて親しい男性もできてくる。監督は 2006年2月紹介『ファイヤーウォール』などのリチャード・ ロンクレイン。「郷に入っては郷に従え」ではないけれど、 自分もこんな年齢になってくると、このようなことがあって も楽しいかな? しょぼくれてなんかいられない! そんな 気持ちにさせてくれる作品だ。公開は8月より、東京はシネ スイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『祝福〜オラとニコデムの家〜』“Komunia” (2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で最高賞を受賞 した作品。登場するのはポーランド・ワルシャワ郊外の下層 階級の街で、父親と自閉症の弟と共に暮らす少女。母親はお らず、父親に収入はあるようだが余り覇気は感じられない。 少女はそんな家族を1人で護っている。そして少女のささや かな夢は、弟が初めての聖体拝受に成功すれば、家族がまた 一つになれるというものだったが…。共産政権時代の名残り なのか、最低限の社会保障のようなものはあるようだが、生 活レヴェルは最低線という感じ。そんな中で少女は健気に生 きている。映画では何を聞きつけたのか突然母親が帰ってく るシーンがあったり、それなりの展開はあるが、結局は元と 変わらない生活が続いて行く。哀しいけどこれが現実。ただ 最後のシーンの弟のベルトは、出来るようになったのかな? 公開は6月23日より、東京は渋谷ユーロスペース他にて全国 順次ロードショウ。)
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス』 “Buena Vista Social Club: Adios” (ヴィム・ヴェンダース監督が1999年に発表しオスカー候補 にもなった音楽ドキュメンタリーから18年、高齢化の団員の 何人かは他界して最後の世界ツアーが行われる。その模様を 2013年5月紹介『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』 のルーシー・ウォーカー監督が描いた2017年の作品。ヴェン ダース監督作品の公開では世界的なキューバ音楽ブームが巻 き起こり、正にセンセーショナルだったが、本作ではさらに そのルーツなども掘り起こし、ウォーカー監督らしい見事な 作品になっている。また僕としては、2000年の前作公開時に は歌詞に字幕が付かず、歯痒い思いのした記憶があるが、今 回は歌の内容もリンクしてより感動の深まる作品になってい る。それは団員たちが体験したキューバの当時の状況なども 反映したものだ。そんな奥深い部分も描ている作品だ。公開 は7月20日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国順次 ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年05月20日(日) |
沖縄スパイ戦史、万引き家族、V.I.P. 修羅の獣たち(アーリーマン、ほたるの川、ニンジャバットマン、インサイド、クリミナル・タウン) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『沖縄スパイ戦史』 アメリカ国立公文書記録管理局の保管所から発見される米軍 側の記録フィルムとは異なる側面から、沖縄の人々を襲った 本当の戦いを描いたドキュメンタリー。 題名を見た時に「スパイ」の意味が判らなかった。沖縄の戦 いは、アメリカ軍が圧倒的な兵力で蹂躙した印象で、局地的 には2017年4月2日題名紹介『ハクソー・リッジ』のような ものはあったのだろうけど、そこにスパイが入るようなもの ではなかったと思っていた。 しかし本作が描くのはアメリカ側ではなく、日本側のスパイ の話。しかもそれは沖縄の戦いのためではなく、本土決戦を 見据えて、如何に戦うべきかを考察するための情報収集の戦 いだった。そしてそこには冷酷な全体主義への驚きの真実が 隠されていた、 作品は主に3つのテーマで展開される。 その1番目は少年を使った情報収集。上陸した米兵に菓子を ねだるなどして近付き、兵員の人数や配置などを聞き出すと いうもの。これは間違いなくスパイ行為で、子供を戦争に使 うというのは問題だが、中東やアフリカのように兵士として 使ったり、自爆テロよりはましかなと思わされた。 テーマの2番目は八重山諸島でのマラリアが蔓延する島への 疎開命令。ここに関しては以前に他のドキュメンタリーでも 見ていたが、その実態が住民の避難のためではなく、米軍が 上陸した時に彼らが情報源になるのを恐れたという話には震 撼した。これも情報戦だったのだ。 そして3番目は、島中に密かに陸軍中野学校の出身者が配置 されて、軍事機密の漏えいが監視されていたという事実。そ こでは機密を知った者への殺害命令も出されていた。これは 米兵を殺すのではなく、自警団のような組織を使って同胞を 殺していたものだ。 ただし、中野学校の出身者に関しては多くが学校教員などの 名目で配置されており、彼らは住民にも慕われて、戦後には その前非を悔いて島に桜の樹を贈り続けた人物もいたとされ る。しかしソメイヨシノは沖縄気候には根付かなかったよう だが…。 作品ではさらに、これらの行為を行った帝国陸軍の「軍機保 護法」が現在の「特定秘密保護法」に通じている事実や、現 在の「自衛隊法」が帝国陸軍のあり方を踏襲し、現在沖縄に 配備されているミサイル基地が戦前の本土防衛思想と同じ、 住民を無視した施策であることなども指摘する。 これらの事実も踏まえて、今自分のなすべきことも考えさせ られる作品だ。 公開は7月28日より、東京はポレポレ東中野他にて全国順次 ロードショウとなる。
『万引き家族』 2017年7月9日題名紹介『三度目の殺人』などの是枝裕和監 督が、2018年・第71回カンヌ国際映画祭で日本映画では22年 ぶりとなる最高賞=パルムドールに輝いた作品。 登場するのは東京下町の高層マンションの谷間で廃屋のよう な平屋に暮らす一家。一家の構成は老婆と中年の夫婦、それ に若い女性と小学生の年齢だが就学していない少年。一家の 収入は老婆の年金と、恐らくは違法に取得している生活保護 費だが、食料などの足りない分は万引きで賄っている。その 主な担い手は少年だった。 そんな一家に新たな家族が加わる。それはアパートの1階の ベランダに締め出されていた幼女を保護してしまうのだが、 幼女の親からは届け出がないらしく、警察も動かないまま時 が流れる。こうして幼女は一家の一員となり、貧しいながら も理想郷のような生活が続くが…。ある切っ掛けから事態が 動き始める。 出演はリリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希 林。それにオーディションで選ばれた城桧吏と佐々木みゆ。 他に池松壮亮、緒形直人、柄本明、高良健吾、池脇千鶴らが 脇を固めている。 是枝監督は、2004年6月紹介『誰も知らない』にて当時14歳 だった柳楽優弥に日本人初・史上最年少での男優賞をもたら し、2013年『そして父になる』では審査員賞を受賞したが、 本作で遂に最高賞に輝いた。 ただし、僕は2004年の男優賞は最高賞を贈れなかったことへ の詫びと考えていたもので、従って同作と似た内容の本作に は、贈られて当然だと思っている。因に2004年の最高賞には 『華氏911』が選ばれたものだが、この時は審査委員長の アメリカ人監督が親友にプレゼントしたと考えた。 そんな訳で至極当然のパルムドールとも思うものだが、両作 を比べると2004年作が実話に基づくとされているのにファン タシーのような雰囲気を持ち、今回はフィクションであるの にリアルな感覚なのが面白くも感じられた。それは現実の厳 しさの反映なのかな? 是枝監督の作品は初期の頃からいろいろ観させて貰ってきた が、僕は1999年の第2作『ワンダフルライフ』が今でも一番 好きだ。このセミドキュメンタリーの作品では、あるシーン が全体のコンセプトとは合致しないのに敢えて使っている。 そんな優しさが本作にも通じる監督の良さだと思う。 2009年6月紹介『空気人形』などファンタスティックな作品 に素敵な感覚も持っている是枝監督だが、今回の作品をリア ルに振った分、次回は『ワンダフルライフ』のような素敵な ファンタシーも期待したい。 公開は6月8日より、東京はTOHOシネマズ日比谷、新宿バル ト9他で全国ロードショウとなる。
『V.I.P. 修羅の獣たち』“브이아이피” 2011年2月紹介『生き残るための3つの取引』の脚本を手掛 け、その後は監督にも進出したパク・フンジョン脚本監督に よる2017年の作品。 パク監督作品は2014年公開の『新しき世界』も観ているが、 どの作品も骨太で映画を堪能できた印象を持つ。しかも本作 は、前2作のPG12指定からは一歩踏み出したR-15指定となる 過激な映像も含まれる作品だ。 映画の開幕は現在の香港。欧米人の男から指示された韓国人 の男が標的が居るとされたアジトを襲い、容赦のない銃撃戦 を展開する。続いて物語は数年前の北朝鮮へと飛ぶ。そこで は高級車に乗った若者が若い女性を拉致し、いたぶる様子が 写し出される。 そして舞台は現在より少し前のソウル郊外。そこでは若い女 性を狙う連続猟奇殺人事件が発生し、警察はてんてこ舞いに なっている。しかもその捜査の中心だった刑事が突然自殺。 止む無く停職中だった刑事にその後任が命じられるが…。そ の刑事はかなり型破りな男だった。 とまあ、ここまでは通常の警察物のように見えるのだが、先 の北朝鮮の描写から、事件は韓国国家情報院や米国CIAも 絡んだ国際謀略戦へと転がり込んで行く。それは緊張の続く 南北朝鮮間の裏側で繰り広げられる欲望と金に塗れた人非人 たちの物語だ。 背景にあるのは、1980〜90年代に多くいたとされる企画亡命 者。これは韓国国家情報院と米国CIAが結託して、北朝鮮 エリート高官の子女を韓国の亡命させたというもの。近年は いないとされているが、当時はV.I.P.待遇で迎えられたとも 言われているものだ。 つまり元々が独裁国家で特別待遇だった高官の子女たちが、 韓国に来てどのような振る舞いをしたかは想像に難くない。 本作では韓国映画界が初めてそれを描いたと言われるものだ が、それほどにタブーな存在だったようだ。そんなV.I.P.た ちの常識を超えた所業が描かれる。 それは風土の異なる日本映画では描きようのない物語だが、 本作ではそれを映画として面白く、且つ興味深く観られる作 品に仕上げている。それはパク・フンジョン脚本監督ならで はと言えるものだ。 出演は、2012年1月紹介『マイウェイ』などのチャン・ドン ゴンと、2008年8月紹介『ファム・ファタール』などのキム ・ミョンミン。他に、2012年5月紹介『依頼人』などのパク ・ヒスン、2012年11月紹介『リターン・トゥ・ベース』など のイ・ジョンソク。そして2017年4月紹介『ラプチャー 破 裂』などのピーター・ストーメアらが脇を固めている。 主人公が捜査担当に任命される時点で、警察上層部が事件の 全容をどこまで把握していたのか? その点がちょっと疑問 に感じるところではあるが、全体のエンターテインメントと しては充分な見応えがあった。 公開は6月16日より、東京はシネマート新宿他で全国ロード ショウとなる。
この週は他に 『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』“Early Man” (2005年12月紹介『ウォレスとグルミット』などのニック・ パーク監督&アードマン・アニメーションズによる最新作。 本作では新石器から青銅器へと変化する先史時代を背景に、 鉱石の採掘のために緑の谷を追われた主人公たちの、故郷を 取り戻す闘いが描かれる。その闘いは、谷間の領有を賭けた サッカー試合として繰り広げられるが…。サッカーは素人同 然の主人公たちが錚々たるテクニシャンを揃えた王族チーム に挑む。サッカーファンには夢のような展開の物語で、ルー ル的にはいろいろ注文を付けたくなるシーンもあるが、まあ 普段から弱小チームを応援している身には、感涙ものの展開 になっていた。声優陣には、『ファンタスティック・ビース ト』のエディ・レッドメイン、『マイティ・ソー』のトム・ ヒドルストン、テレビ『ゲーム・オブ・スローンズ』などの メイジー・ウィリアムズ、それに監督のニック・パークらが 並んでいる。公開は7月6日より、全国ロードショウ。)
『ほたるの川のまもりびと』 (佐賀・長崎の県境を水源として大村湾へと注ぐ二級河川の 川棚川。その支流の石木川に1972年発表された「石木ダム」 計画を巡って、地元住民が繰り広げている反対運動を追った ドキュメンタリー。ダムの目的は利水と治水。しかし現状の 水事情は逼迫しておらず、治水も本流の流域面積の1割程度 では効果がないとされる。しかし1度決まった計画にはすで に利権が発生し、住民からの質問状には無回答のまま、県は 計画を推し進めようとする。住民はそれに抵抗することほぼ 半世紀。中には補償金を貰って移住した家族もいるが、残る 住民たちの結束は固い。ダム建設の反対運動では、大分県の 「蜂の巣城紛争」が記憶されるが、学者も不要論を唱える中 で、今もこれが続いている現実には驚かされた。映画の結末 では県の動きも活発化しており、今後も注目すべき作品だ。 公開は九州地区先行で、東京は7月7日より、渋谷ユーロス ペースにてロードショウ。)
『ニンジャバットマン』 (2017年10月紹介『DCスーパーヒーローズvs鷹の爪団』に 続くアメコミヒーローを主人公にしたアニメーション作品。 本作では、前作で活躍のなかったバットマンを中心に、悪漢 たちの陰謀で日本の戦国時代にタイムスリップしたバットマ ンが、バットモービルも使用不能となる中、知力を尽くして 時間流を引き戻す。最近の「ジャスティスリーグ」は試写状 も届かず観ていないので、2016年8月14日題名紹介『スーサ イド・スクワッド』に登場のハーレイ・クインはまだしも、 それ以降の悪漢にはキャラクターの設定に馴染みがない。そ れでもまあ物語的にはほぼ『戦国自衛隊』だから判り易く、 さすが脚本が2013年8月紹介『ゲキ×シネ:シレンとラギ』 などの中島かずきだけのことはあるという感じはした。とは 言うもののこの人は、SFを本質的には理解していないと思 う面もあり、ファン的には物足りなさも感じる作品だった。 公開は6月15日より、全国ロードショウ。)
『インサイド』“Inside” (2007年製作のフランス映画を、2008年3月紹介『REC』 などのジャウマ・バラゲロの脚本でリメイクした作品。妊婦 の乗った車が衝突事故に遭い、運転していた夫は死亡、しか し助手席の妊婦と胎児は奇跡的に助かる。ところが出産が間 近に迫った夜、彼女の家に謎の女性が侵入する。その女性は 殺意を持って妊婦を襲い、妊婦が逃れると、家を訪れた隣人 や警官を次々に殺害し始める。果たして女性の目的は…。何 とも強烈な展開だが、そこには妊婦側の落ち度もあり、それ なりに納得できる作品になっている。その辺のスマートさも 魅力だし、結末もちょっと意外な余韻を残してくれた。出演 は2008年3月紹介『P2』などのレイチェル・ニコルズと、 2008年5月紹介『コレラの時代の愛』などのローラ・ハリン グ。監督は2015年に『ハーモニー・オブ・ザ・デッド』とい う作品のあるミゲル・アンヘル・ビバスが担当した。公開は 7月13日より、全国ロードショウ。)
『クリミナル・タウン』“November Criminals” (2017年5月紹介『ダイバージェント』で主人公の兄を演じ たアンセル・エルゴートと、2016年3月紹介『フィフス・ウ ェイブ』などのクロエ・グレース・モレッツが、突然親友が 射殺された事件の謎を追うサム・マンソン原作ヤング・アダ ルト小説の映画化。主人公は母親の急病死がトラウマの男子 高校生。卒業を間近にして大学進学が希望だが、まだ不安な 状況だ。そんな時、親友が銃撃で殺され、母親と同じ突然の 死が心に突き刺さる。そして警察のギャング犯人説を信じな い彼は、恋人と共に真相を追うが…。ギャングという言葉が 日本人の感覚とずれる感じもしたが、2つの死の捉え方もア メリカ的な考え方なのかな。ただ後半の展開には事件の裏に は別の様相もある感じで、中々考えさせる作品だった。監督 は2009年9月紹介『アンヴィル!』などのサーシャ・ガヴァ シ。公開は8月25日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国 順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年05月13日(日) |
モダン・ラブ、世界でいちばん長い写真(空飛ぶタイヤ、ウタモノガタリ、エヴァ、ウインド・R、君が君で、菊とギロチン、チャーチル) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『モダン・ラブ』 2010年8月紹介『アワ・ブリーフ・エタニティ』などの福島 拓哉監督による同作以来8年ぶりのオリジナル長編作品。監 督はデビュー作から前作までも同程度の時間が掛かっている が、寡作と呼べるのかな? ただしその間には短編作品など を撮っていたようだ。 物語の背景は、NASAが「新惑星の発見」を発表したとい う現代。主人公は大学院で理論物理学を専攻しながら、旅行 代理店でアルバイトをしている女性。彼女は数年前に恋人を 失ったらしいが、彼女は恋人との会話を続けている。彼女は それをイマジナリーフレンドと称していた。 そんな彼女は街角で失ったはずの恋人の姿を見掛け、慌てて 後を追って話し掛けるが、彼には怪訝な顔をされ、冷たくあ しらわれる。その彼はパーティで彼女と再会するが、今度は 彼女の方が会った記憶はないと言う。それでも2人は付き合 い始めるが…。 一方、主人公の勤める広告代理店にデータベースにない地名 を告げる客が現れ、どの地域にあるかも判らないという客に 彼女はパックツアーを勧める。それでも客は納得し、やがて 帰国して土産を持って現れた客は「旅は満足した」と言って くれる。しかしその土産はとんでもないものだった。 そして帰宅した彼女は、自宅のベッドで寝ている彼女自身を 発見する。 出演は、福島監督が2016年に発表した短編『LEGACY TIME』 でも共演したという稲村梓と高橋卓郎。稲村は舞台を中心に 活躍する女優で、高橋は2018年2月25日題名紹介『私は絶対 許さない』にも出ていたようだ。 他に、2012年11月紹介『ユダ』などの芳野正朝、本作の音楽 も担当する2015年10月紹介『さようなら』などの今村怜央。 さらにギタリストで、福島監督が脚本を手掛ける短編“New Blood Future”の企画プロデューサーも務めるヤン・イメリ ック。2016年11月13日題名紹介『バンコクナイツ』などの川 瀬陽太らが脇を固めている。 福島監督の作品では、前作に続いて強いSF志向を感じる。 しかし本作が本質的に描いているのは主人公の再生であり、 それがSF風物語の中で巧みに活かされているものだ。その 展開はファンの目からも納得できるものになっている。 因に本作は、パラレルワールドの解釈として斬新とまでは言 わないものの新機軸を打ち出しており、その解釈と展開には かなり周到に構築されたものを感じる。物語にはいろいろな 要因が重ねられて複雑だが、基本の理論は面白いものだ。 ただそのSFテーマの部分が、僕は元々ファンだからOKだ が、一般的にはどうなのだろう。この辺がSF嫌いの人には 難しいところかもしれない。それでもこのテーマを追い続け てくれる監督には正しく敬意を表したいところだ。 公開は6月30日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次 ロードショウとなる。
『世界でいちばん長い写真』 全長145m×35.6�僂離僖離薀渕命拭�ギネス世界記録にも認定 されているその写真が写されるまでを描いた誉田哲也原作、 青春小説の映画化。 主人公は知多半島の高校に通う男子生徒。写真部に所属して いるが、何事にも意欲のない若者だ。ところがある日、従姉 の営むリサイクルショップで、360度の撮影を行うスリット カメラを手に入れたことからその写真に魅せられて行く。 そして従姉や写真館の店主の協力も得て風景写真に始まった 撮影は、やがて全校生徒を巻き込む一大イヴェントへと発展 して行く。その過程が主人公の精神的な成長と共に爽快に綴 られる。 実話はカメラ製作者である山本新一氏が、2000年12月18日に 愛知県知多郡美浜町にある日本福祉大学付属高等学校で撮影 した「クラブ活動の一年」という作品だが、それを本作では 撮影者を高校生にして躍動感のある物語にしている。 しかも映画には、山本氏が製作した360度撮影の初号機と、 世界記録を撮影した4号機の実機が登場して、実際に動いて 撮影も行うのだから、これらはメカマニアには垂涎のシーン と言えるものだ。 主演は、2017年12月3日題名紹介『プリンシパル 恋する私 はヒロインですか?』や、2018年4月15日題名紹介『虹色デ イズ』などの高杉真宙。 他に2015年8月紹介『木屋町DARUMA』などの武田梨奈、au のCMでも人気の2018年4月紹介『名前』などの松本穂香。 さらに2016年8月28日題名紹介『BOYS AND MEN』などの水野 勝、2017年7月紹介『仮面ライダーエグゼイド』などの黒崎 レイナ。また吉沢悠、小松政夫らが脇を固めている。 脚本と監督は、2007年大杉漣主演『Mogera Wogura』などの 草野翔吾。早稲田大学映画研究会出身、俊英の作品だ。 高校生の写真がテーマの映画は先にも観ているが、静止画像 の写真を動画像の映画にすることは案外難しい。そこを本作 では、クライマックスに巧みなアクションを付加することで それを成功させている。 以前にも書いたと思うが、若い人が全力で疾駆する姿はそれ だけで絵になるしドラマになるもので、本作の監督はその辺 もよく理解している。まあ前に観た高校生写真部の映画でも 走るシーンはあったが、本作にはその想いが直に伝わってく る巧みさがあった。 公開は6月23日より、東京はシネ・リーブル池袋の他、全国 のイオンシネマでロードショウされる。
この週は他に 『空飛ぶタイヤ』 (「半沢直樹」シリーズなどの池井戸潤原作による映画化。 因に池井戸作品の劇場映画化は初だそうだ。中規模運送会社 の社長を主人公に、死亡者の出た脱輪事故の原因を整備不良 の認定から企業犯罪の暴露に繋げる顛末が描かれる。それに しても企業の設定は、どう見ても三菱自工が特定されるし、 原作者は元三菱銀行の行員だそうで、この展開はかなり凄い ところだ。ただしお話自体は、内部告発など多少ご都合主義 な感じが散見され、これが受けてしまう日本の読者が不安に なった。まあ小説ではもっと状況が描き込まれているのだろ うが。出演は長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深 田恭子、岸部一徳ら、相当の顔触れが並んでいる。監督は、 2011年11月紹介『おかえり、はやぶさ』や、2016年5月29日 題名紹介「超高速!参勤交代」シリーズなどの本木克英。公 開は6月15日より、東京は丸の内ピカデリー他で全国ロード ショウ。)
『ウタモノガタリ CINEMA FIGHTERS project』 (EXILE HIROと、短編映画祭を主宰している俳優別所哲也、 それにEXILEの楽曲を手掛ける作詞家小竹正人のコラボレー ションによる全6話の短編集。因に本作は第2弾だそうだ。 小竹が新たに作詞した6曲を基に、2011年9月紹介『ハラが コレなんで』などの石井裕也、2010年1月紹介『カケラ』な どの安藤桃子、アニメーション監督平林勇、2016年8月7日 題名紹介『古都』などのYuki Saito、沖縄の岸本司、2011年 1月紹介『ピュ〜ぴる』などの松永大司の新鋭監督が結集。 池松壮亮、塚本晋也、夏帆、石井杏奈、佐津川愛美らの出演 でそれぞれの物語が描かれる。6作の中では安藤監督作品が 多少SF的な要素もあって興味を持ったかな。後は平林監督 の作品も少し異なる趣があった。しかし後の4本はコンセプ トがほぼ同じで…。その中では石井監督の作品は強烈だった が。松永監督作品は、もっと早く見せて欲しかった。公開は 6月22日より、全国ロードショウ。)
『エヴァ』“Eva” (イギリスのミステリー作家ジェイムズ・ハドリー・チェイ スの原作を、舞台演出も手掛けるフランスの映画監督ブノワ ・ジャコが、イザベル・ユペール、ギャスパー・ウリエルを 主演に招いて映画化した作品。ふとしたことから劇作家の未 発表の遺稿を手に入れた若者が自分の名前でそれを発表し成 功を収める。しかし次作の書けない若者は、偶然知り合った 娼婦に溺れて行くが…。同じ原作からは1962年製作の映画化 もあるが、本作では現代を背景にして、より現実的な展開で 若者が落ちて行く姿が描かれている。ユペールは元々好きな 女優ではあるが、1953年生まれの女性にさすがにこの役はと 思いきや、娼婦と割り切った展開から見事にこの役に嵌って いた。本人も「物語であることを忘れる」と語っているのだ から、相当に入れ込んだ役のようだ。公開は7月7日より、 東京はヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他で 全国順次ロードショウ。)
『ウインド・リバー』“Wind River” (アメリカ原住民に過酷な生活を強いるインディアン保留地 を舞台に、実話に基づくが実態はほとんど把握されていない 女性失踪の謎に挑んだ、2016年1月紹介『ボーダーライン』 などの脚本家テイラー・シェリダンによる監督デビュー作。 因に本作は、合衆国の辺境を描く3部作の完結編だそうだ。 主人公は野生生物局のハンター。彼が人里離れた荒野で女性 の遺体を発見する。それは2年前に亡くなった彼の娘の親友 だった。その事件の捜査にFBIから若い女性が派遣される が、明らかな強姦の痕跡があっても死因は殺人ではなく、専 門官の派遣は不可となる。そのため経験の浅い女性捜査官は 主人公に協力を求め、2人の捜査は真実を暴いて行くが…。 出演は、2017年3月紹介『メッセージ』などのジェレミー・ レナーと、2012年11月紹介『マーサ、あるいはマーシー・メ イ』などのエリザベス・オルセン。公開は7月27日より、東 京は角川シネマ有楽町他で全国ロードショウ。)
『君が君で君だ』 (2017年12月24日題名紹介『チェリーボーイズ』などの松居 大悟原作、脚本、監督によるかなり毒気の強い青春ドラマ。 主人公は街角で暴漢に襲われ、その経緯で韓国人女性の優し さに触れる。そして友人2人と共に彼女の居所を突き止めた 主人公らはその向いのアパートに住み、以後は自らの名前も 捨てて、彼女を護ると称して監視を続けてきた。しかし10年 が経ち、彼女がダメ男と一緒に暮らし始めたことから事態が 動き出す。出演は池松壮亮、満島真之介、大倉孝二とキム・ コッピ。さらに高杉真宙、YOU、向井理らが脇を固める。 主人公らの行為は明らかにストーカーであり、犯罪の一歩手 前であって、観る人によってはかなり嫌悪感を催す人もいる かもしれない。それくらいに劇薬の作品だ。でもこれが青春 の真の姿の一つとも言えるのだろう。そんなところを巧みに 切り出した作品だ。公開は7月7日より、東京は新宿バルト 9他で全国ロードショウ。)
『菊とギロチン』 (大正から昭和に変わる時代を背景に、無政府主義者の団体 =ギロチン社の実話と、当時勃興した女相撲のエピソードを 組み合わせて巧みな青春群像劇に作り上げた瀬々敬久脚本・ 監督による上映時間3時間9分の作品。関東大震災や旱魃な どが襲う中、ギロチン社は社会改革を叫んで耳目を集める。 しかしその実態は口先ばかりで実力の伴わない若者の集団だ った。そして彼らが女相撲の一団と行動を共にする中で様々 な事件が起こる。出演は、映画初主演の木竜麻生と、2016年 9月紹介『デスノート Light up the NEW world』などの東 出昌大。他に韓英恵、佐藤浩市の息子の寛一郎、嘉門洋子、 渋川清彦らが脇を固めている。脚本には2016年11月13日題名 紹介『バンコクナイツ』などの相澤虎之助が協力して当時の 音楽も併せた巧みな作品に仕上げられている。長尺だが観て いる間は時間を感じさせない作品だ。公開は7月7日より、 東京はテアトル新宿他で全国順次ロードショウ。)
『チャーチル ノルマンディーの決断』“Churchill” (今年のオスカー受賞作の後追いのような感じだが、本国で は本作の方が先のものだ。そして受賞作はダンケルク撤退作 戦がテーマだったが、本作ではその後のノルマンディー上陸 作戦の裏側を描く。しかもそこでイギリス首相は作戦の遂行 に反対だった。劇中で繰り返し言及されるガリポリ上陸作戦 は、ピーター・ウィアー監督、メル・ギブスン主演の1981年 オーストラリア映画『誓い』でも描かれたもの。しかしこの 戦いはイギリスでは映画化されていないようで、正にイギリ スの暗黒史のようだ。本作ではそんなイギリス首相の異なる 側面が描かれている。出演は、2017年4月紹介『ジェーン・ ドウの解剖』などのブライアン・コックス、2018年3月4日 題名紹介『ボストン ストロング』などのミランダ・リチャ ードスン。監督は2014年公開『レイルウェイ運命の旅路』な どのジョナサン・テプリツキー。日本公開は晩夏に予定され ている。なお米国旗の誤りに触れるのは止す。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2018年05月06日(日) |
クジラの島の忘れもの、ミッドナイト・サン、ウィンチェスターハウス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『クジラの島の忘れもの』 今年、日本とベトナムが国交樹立45周年を迎えたのを記念し て製作された両国間の民間レヴェルでの交流を描いた作品。 時代背景は2007年、舞台は沖縄。東京から病気がちの叔母の 許に引っ越してきた主人公は、普段は快活にふるまってはい るものの何処かに陰のある女性。そんな女性が旅行代理店に 就職し、先輩と共に営業で訪れた会社には東南アジアからの 研修生が働いていた。 そこで彼女はベトナム人の若者と出会う。そして彼からベト ナムでは誕生日には、その日を迎えた者が産れたことへの感 謝を込めて周囲にプレゼントを渡す風習があると聞かされ、 彼女は自分の誕生日が1月17日だと告げる。 一方、営業先から研修生の修了記念旅行の企画を依頼された 彼女は、座間味島へのホエールウォッチングを提案し、先輩 と共に添乗でその島に向かうことになるが…。そこは震災で 亡くなった母親と再訪を約束した場所だった。 出演は、2014年1月紹介『偉大なる、しゅららぼん』などの 大野いと。それにミャンマー出身で小学4年の時に来日し、 ダンスヴォーカルユニット「PrizmaX」のメインヴォーカル としても活躍中の森崎ウイン。 なお森崎は、2009年11月紹介『パレード』などに出演。さら に2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督『レディ・プレ イヤー1』にはオーディションから挑戦して、準主役級に大 抜擢された。 監督は沖縄出身で、大学卒業後に東京の制作会社で短編映画 や広告映像を手掛け、帰沖後は地元で制作会社を立ち上げて 沖縄県内外の映像制作を行っている牧野裕二。また、脚本は テレビシリーズを多く手掛ける嶋田うれ葉が担当した。 日越の国交樹立は1973年だが、その前にはヴェトナム戦争の 時代があった訳で、日本が直接参戦はしていないものの、特 に沖縄は北ヴェトナムへの爆撃機の発進基地となり、正に当 事者として機能していた。 しかし本作ではそんな歴史には全く触れずに、男女の恋愛事 情に終始している。それは今の日本政府のあり方などを考え ると正に触らぬ神に祟りなしなのだろうが、ベトナム側はど うなのだろう? でもまあ本作は日本映画なのだから、その辺は理解してあげ なければならないのだろう。なお本作は沖縄県の制作支援で 作られたものだ。 ただ映画の後半は、せっかく現地ロケをしているのだから、 もう少しベトナム各地の風物なども観たかったかな。座間味 島のホエールウォッチングだけでなく、ベトナム側でも観光 映画的な要素も入れて欲しかった。 1995年1月17日の阪神淡路大震災は、当初の何が起きている か全く判らないという状況から、正に街が震災に遭っている という感じで強い恐怖を覚えた。それは明らかな自然災害の 東日本大震災とは違う感覚だったと言える。 こんなことを思い出させてもくれる作品だった。 公開は5月12日より、東京は渋谷シネパレス他にて全国順次 ロードショウとなる。
『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』“Midnight Sun” 2006年5月紹介『タイヨウのうた』のハリウッド版リメイク 作品。 主人公は、色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum=XP) という紫外線に当たるだけで皮膚癌を発症する難病の少女。 しかし音楽の好きな少女は昼間は出歩けないため、夕方まで 家に籠って作曲をし、夜の街角でギターを抱えてストリート ライヴを行っている。 そんな少女は必ず日の出までには帰宅し、夜明けまでの間、 紫外線遮断のスクリーンを下ろした窓から早朝のバス停を眺 める。そのバス停に現れる少年を見るために。それはいくら 夢見ても、絶対に叶うことのないはずの恋だった。 ところがその夜、高校の卒業パーティを抜け出した少年は、 街角の歌声に引き寄せられる。そして卒業後の将来に不安を 感じていた少年はその歌声に魅せられ、一目見た彼女に恋を するが…。 出演は、ディズニーチャンネルのヒットドラマでブレイクし たベラ・ソーンと、アーノルド・シュワルテェネッガーの息 子のパトリック・シュワルツェネッガー。他に、‘Saturday Night Live’出身のロブ・リグル、2011年『処刑教室』など のクイン・シェパードらが脇を固めている。 監督は、2006年のチャニング・テイタム主演作を第1作とす る“Step Up”シリーズの第4作を担当したスコット・スピ アー。彼は3部作で発表された“Immortal City”シリーズ の小説家でもあるようだ。 因に本作の試写は3月8日に内覧で観たものだが、この時は 情報解禁前だったため紹介を割愛してしまった。しかし今回 は正式のプレス資料も郵送されてきたので、改めて紹介をさ せてもらう。 そのプレス資料によると、色素性乾皮症の患者は日本では出 生2万2千人に1人。およそ300〜600人がいると推定されて いるそうだ。 この人数が多いのか少ないのか判らないが、本作のオリジナ ルの日本映画の公開時には患者会が病気に対して特定疾患と しての認定を求める署名活動を行っており、僕自身もその署 名をした記憶がある。 というのも、実は僕が応援している湘南ベルマーレの下部組 織に、当時この病気の子供が所属しており、その子のための 署名活動がトップチームの試合会場でも行われて、その折に 署名をしたものだ。 その甲斐があってか、映画公開の翌年の2007年3月12日に特 定疾患の認定となったものだが、案外近くにその患者がいた ことにも驚かされた。実際に日本人の患者の割合は欧米人の 10倍以上とも言われており、そのことも心に留めて観て貰い たい作品だ。 公開は5月11日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード ショウとなる。
『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』 “Winchester” 本作は2018年4月15日に題名紹介したものだが、その際には 仮だったプレス資料の正式のものが送付されたので、改めて 紹介をさせて貰う。 物語は、合衆国国家歴史登録財に指定されているカリフォル ニア州サンノゼに実在する邸宅Winchester Mystery Houseが 舞台。 建築主のサラは銃器ビジネスで財を成した一族の相続者で、 製造した銃で殺された人々の霊に呪われていると信じ、家を 建築し続ければ生き長らえるとして、1922年に死去するまで 38年間365日24時間ぶっ通しの増築を続けたという。 そこには銃器ビジネスに纏わる展示と共に、天井にぶつかる 階段や、どこにも通じない扉、さらに多数の隠し通路など、 様々な不思議な設計が存在し、正にミステリーハウスの様相 を呈している。 そんな邸宅の様子がオカルト的な物語と共に興味深く描かれ る。 時代は1906年、精神科医のエリックは銃器会社の取締役会か ら大株主であるサラの精神鑑定を依頼される。それは彼女の 精神異常が認められれば、彼女が巨費を投じている邸宅の建 設を止められるためだ。 そして訪れた邸宅は、当時7階建て、部屋数500室もの威容 を誇っていた。しかも増築は365日24時間休みなく続けられ ていた。そんな中で精神科医の仕事は始まるが、彼の傍には どこからともなく現れる執事などが付き纏う。 そして謎めいたサラの精神鑑定が進む内、彼の周囲には思い もよらぬ事態が出現し始める。 脚本と監督は2010年9月紹介『デイブレイカー』や、2015年 1月紹介『プリデスティネーション』などのマイクル&ピー ター・スピエリッグ兄弟。元となる脚本は先にあったようだ が、兄弟は2年間に亙り何度も邸宅を訪れて脚本を練り上げ たそうだ。 そして出演は、Dameの称号を持つヘレン・ミレンと、2015年 7月紹介『ターミネーター:新起動』などのジェイスン・ク ラーク。因にミレンは、オスカーを受賞した2007年『クイー ン』などで実在の人物を演じることに定評があるが、本作で もその才能は如何なく発揮されているものだ。 他に、『プリデスティネーション』にも出ていたセーラ・ス ヌーク、そのスヌークとはテレビシリーズでも母子を演じた というフィン・シクルーナ=オープレイ。さらにデヴィッド ・リンチ監督の新作『ツイン・ピークス The Return』など のエイモン・ファーレンらが脇を固めている。 現存のウィンチェスターハウスは4階建のものだが、本作に 描かれるのは7階建て、そうなった理由は映画の後半に明ら かにされる。個人的には観に行きたかったが果たせなかった 場所の一つで、今回は内部も丁寧に紹介されて存分に楽しむ ことができた。 公開は6月29日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国 ロードショウとなる。 * * 今週はゴールデンウィークで試写会がほとんど行われてお らず、今回紹介した最初の作品はサンプルDVDを提供され たもの。後の2本は正式のプレス資料が送付されて改めて紹 介させて貰った。 次週からはまた最新の試写会報告をさせて貰いますので、 よろしくお願いいたします。
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