井口健二のOn the Production
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2018年04月29日(日) 審判(告白小説、アメリカン・アサシン、兄友、ガチ星、ゲティ家の身代金)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『審判』
1924年に没したチェコの作家フランツ・カフカによる、作者
死後の1927年に発表された未完(ただし発端と結末は完成さ
れていた)長編小説の映画化。
主人公は30歳の誕生日に逮捕される。逮捕と言っても通知が
あっただけで、その通知に来た男たちに付き纏われる以外は
生活に何ら変わりはない。とは言っても通知に従って裁判所
に出向いた主人公は、具体的な罪状も聞かないまま、意味不
明の審理に付き合わされることになる。
このような発端から、主人公の勤務先や住まいの隣人との奇
妙な出来事が綴られて行く。その中には逮捕の通知に来た男
が繰り返し観るという門番のいる謎めいた建物の話なども語
られる。そして主人公は、叔父やその叔父に紹介された弁護
士らと共に逮捕回避の道を探るのだが…。
なお今回の映画化では、物語の背景は現代の日本と思われる
時代に変更されて再構築されている。

脚本と監督は、英国生まれで1988年に来日、上智大学外国語
学部英語学科教授のジョン・ウィリアムズ。監督は2001年の
デビュー作以来4作目で、過去の作品は各国の映画祭などで
グランプリを含む多くの受賞に輝いている。
出演は、監督の過去作にも出ているにわつとむを始め、多く
は常連俳優が締めるが、他に高橋長英、品川徹、歌舞伎役者
の坂東彌十郎らが脇を固めている。
カフカの作品は不条理と呼ばれ、常識では在り得ない物語が
展開されて行くものだが、本作においても社会通念を超えた
理不尽さが随所に描かれる。とは言ってもそれは主人公の立
場から見たものであり、相手側にはそれなりの理論があるの
かもしれない。今回の映画化ではそんなことも感じた。
20世紀を代表する文学の一つともされる原作からは、過去に
も1963年オーソン・ウェルズ監督版や、1992年デヴィッド・
ジョーンズ監督版が知られるが、92年版が1912年を背景にし
ているのに対して、63年版と本作はそれぞれの映画の制作時
が背景にされている。
それは原作の普遍性にもよるものだが、特に今回の映画化を
見ているとむしろ現代の日本にこそ、この作品の意味がある
ようにも感じられた。それはまあ日本に限らず現代の世界の
どの国にも当て嵌まるのかもしれないが…。
因にカフカはユダヤ人だが、ナチスの台頭は原作者の死後の
1933年以降のことだ。

公開は6月30日より、東京は渋谷ユーロスペース他で全国順
次ロードショウとなる。

この週は他に
『告白小説、その結末』“D'après une histoire vraie”
(2012年1月紹介『おとなのけんか』などのロマン・ポラン
スキー監督による2014年『毛皮のヴィーナス』以来、4年ぶ
りの新作。主人公は自らの家族を綴った小説がベストセラー
になった女流作家。しかし次作の筆が進まない彼女の許に、
エルと名のる女性が現れる。彼女は著名人の自伝のゴースト
ライターだと言い、作家同士で理解し合える彼女を自宅に招
いた作家は奇妙な共同生活を始めるが…。出演は監督夫人で
もあるエマニュエル・セニエと、2012年5月紹介『ダーク・
シャドウ』などのエヴァ・グリーン。他にヴァンサン・ペレ
ーズらが脇を固めている。1990年『ミザリー』に似た感じも
あるが、物語はフランスの女性作家デルフィーヌ・ド・ヴィ
ガンの原作に基づくもので、かなり捻りの利いたものだ。脚
本はポランスキーと、2017年4月16日題名紹介『パーソナル
・ショッパー』などのオリヴィエ・アサイヤスが共同で執筆
した。公開は6月23日より、東京はヒューマントラストシネ
マ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『アメリカン・アサシン』“American Assassin”
(2017年3月5日題名紹介『バーニング・オーシャン』など
のディラン・オブライエン、2014年3月紹介『ロボコップ』
などのマイクル・キートン共演で、CIA内の対テロ組織専
門極秘スパイチームにリクルートされた男を描く、ビンス・
フリン原作「ミッチ・ラップ」シリーズ初の実写映画化。主
人公は恋人を無差別テロで殺され、以来独自の手法でCIA
も近づけなかったテロ首謀者を襲った男。その手腕を買われ
た男は、さらに元ネイビーシールズの鬼教官の許で過酷な訓
練を積む。そしてロシアで盗まれた原爆の材料を追うが…。
そこにゴーストと呼ばれる謎の敵が現れる。共演は、2016年
7月紹介『グランド・イリュージョン』などのサナ・レイサ
ンと、2018年3月紹介『オンリー・ザ・ブレイブ』などのテ
イラー・キッチュ。監督はテレビ出身のマイクル・クエスタ
が担当した。クライマックスのVFXは豪華だが、日本人と
してはいろいろ考えてしまうかな。公開は6月、東京はTOHO
シネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『兄友』
(累計発行80万部を超えるという赤瓦もどむ原作少女コミッ
クスの実写映画化。2人兄妹の妹と、兄の友人で全く初心な
男子とのややこしい恋愛事情が描かれる。何と言うかそれに
してもという感じのお話で、還暦過ぎのおっさんには何とも
評価が難しいかな。ただ、最近の荒唐無稽のラヴコメでない
ところが多少救われるのかな。まあおっさん的には、初心な
男子より、濡れた靴に新聞紙を詰めるなど家事万端の妹の方
に注目したが、女性にはどうなのだろう? 出演は、2018年
1月28日題名紹介『honey』などの横浜流星(初単独主演)
と、2017年3月12日題名紹介『トモシビ』などの松風理咲。
他に松岡広大、古川毅、小野花梨、人気声優の福山潤らが脇
を固めている。監督は2015年4月紹介『サムライ・ロック』
などの中島良、脚本も同作の中川千英子が担当した。公開は
5月26日より、東京は新宿バルト9他にて1週間限定ロード
ショウ。なお、映画の公開前に同じキャストによる全4話の
ドラマ版も、MBS/TBS系で放送されるようだ。)

『ガチ星』
(戦力外通告されたプロ野球選手が一念発起、競輪選手を目
指すというスポーツ根性ドラマ。サッカーだと下部組織から
トップに上がれなかった選手が競輪を目指すという話は聞く
が、元々足腰が勝負のサッカー選手はともかく、野球のまし
てや投手というのはどうなのかな。ただしプレス資料による
と20代で地方リーグから競輪選手になった人はいるのだそう
だ。そんなお話だが、映画では伊豆の競輪学校がかなり丁寧
に写され、以前にテレビ番組で観たことはあったが中々興味
深かった。出演は自身が元高校球児で、競輪選手だった父親
の影響で卒業後にその道を目指したが、怪我で断念したとい
う安部賢一。実はその後に俳優になるも鳴かず飛ばずだった
安部が「これをやるのは自分しかない」との信念で主演を勝
ち取ったそうだ。他に2017年12月紹介<TANIZAKI TRIBUTE>
『富美子の足』などの福山翔大。さらにモロ師岡、博多華丸
らが脇を固めている。公開は5月26日より、東京は新宿K's
cinema他で全国順次ロードショウ。)

『ゲティ家の身代金』“All the Money in the World”
(1973年にローマで起きた当時世界一の富豪とされるゲティ
家3世の誘拐事件。それは莫大な身代金の金額と共に、その
支払いを当主が拒否したことでも話題になる。その事件の真
相が、誘拐された3世の母親とゲティ家に仕える元CIAの
戦略担当者の目から描かれる。事件自体がセンセーショナル
だけれど、その裏側がさらに興味深い作品だ。出演は2018年
1月紹介『ワンダーストラック』などのミシェル・ウィリア
ムスと、2014年7月紹介『トランスフォーマー』などのマー
ク・ウォールバーグ。そしてクリストファー・プラマー。プ
ラマーは前配役のキャンセルを受け急遽登板したものだが、
違和感のない演技を見せる。他にロマン・デュリス、ティモ
シー・ハットンらが脇を固めている。脚本はジョン・ピアス
ンの原作からデヴィッド・スカルパが脚色。本作は2015年の
ブラックリストに選出され、それをリドリー・スコットが監
督した。公開は5月25日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他
で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2018年04月22日(日) 名前(縄文に、仮面ライダーA、カメラを止、母という名、ルイ14世、明日にかける、バトル・S、レディ・B、30年後、犬ヶ島、ゼニガタ)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『名前』
直木賞受賞者で、テレビのクイズ番組などに回答者/出題者
としても登場するミステリー作家の道尾秀介が、書き下ろし
の原案を提供したかなり捻りのあるヒューマンドラマ。
描かれるのはいくつもの名前を使い分けて、その場しのぎの
自堕落な生活を続けている男。男は田舎町の一軒家に住み、
生活費はペットボトル再生工場での力仕事で賄っているが、
そこでも嘘の経歴で職に就いていたようだ。
ところがその嘘がばれそうになった時、ふと現れた少女が彼
の窮地を救う。そしてその少女の出現によって彼の人生が動
き始める。その後も彼の許に現れ続ける少女は、彼の過去に
関りがあるようなのだが…。

出演は、2017年12月3日題名紹介『ニワトリ★スター』など
の津田寛治と、2017年3月26日題名紹介『心に吹く風』など
の駒井蓮。他に筒井真理子、内田理央、波岡一喜らが脇を固
めている。
監督は、2014年11月紹介『横たわる彼女』などの戸田彬弘。
脚本は2017年4月9日題名紹介『ラオス 竜の奇跡』などの
守口悠介。因に、少女の学園生活の部分は道尾の原案にはな
かったものだそうだ。
その少女の存在はかなり謎めかされており、一部にはオカル
トを期待したくなる描写もあるのだが…。全体的には論理的
な物語で、その各ピースがぴたりと嵌って行く展開も心地よ
く感じられる作品だった。
男の生活態度については、謎が解き明かされて行く中でその
理由も理解されるようになっており、それは人生で陥り易い
陥穽かな。別に誰が悪い訳でもないのに、そんな状況になっ
てしまっている。
個人主義が進む現代社会では有り勝ちかもしれない、そんな
ことも考えさせられる。つまり本作は、そんな現代社会の一
面を見事に切り出した作品のようにも見えるものだ。しかも
それが心の襞に吹く暖かい風のように描かれている。
最近の日本映画を観ていると、ヴィジュアルやアクションに
頼って物語がおろそかな作品が多いように感じる。それに対
して本作はまず物語がしっかり構築され、そこにいろいろな
シーンが散りばめられる。
そんな本来の映画の面白さが具現化された作品のようにも感
じられた。そこに道尾の原案が見事に活かされた作品と言え
そうだ。なお道尾の原作料は、芋焼酎の一升瓶1本だったそ
うだ。

公開は6月30日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『縄文にハマる人々』
(約1万5,000年前から約2,300年前まで日本列島で発展した
新石器時代に相当する縄文文化。遮光器土偶や火焔型土器な
ど独特の様式を持った時代に魅せられた人々がその想いを語
るインタヴュー中心のドキュメンタリー。その文化形態には
平等性など現代人の心をくすぐるようなものも多いようだ。
とは言うもののインタヴューを受ける側にはかなり怪しげな
人物もおり、全体的にはうさん臭さも感じられる。でも多分
それが狙いでもある作品なのだろう。正直には環状列石など
も登場する縄文文化には、もう少し世界的な視野に立った解
説も欲しかったところで、敢えて縄文文化の独自性を優位に
描こうとする姿勢には、そこにもうさん臭いものを感じてし
まった。なお本作は土器の魅力を伝えるため、全篇3Dでの
撮影が行われているそうだ。公開は7月上旬より、東京は渋
谷イメージフォーラムにてモーニング&レイトショウ。)

『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』
(1974〜75年に放送されたテレビシリーズを基に、2016年に
Amazonプライム・ビデオ初の日本オリジナル作品として製作
された新シリーズの完結編。実はシリーズは観ていないが、
本作では人工生命体アマゾンズの殲滅作戦が佳境を迎え、主
人公を含む2体だけが残っているという設定。そして山奥の
村に追い詰められた主人公の前に、人類の危機を背景とした
アマゾンズを巡る新たな展開が登場する。人工生命体という
設定からテーマには2010年12月紹介『わたしを離さないで』
に通じるものも感じられる。アクション中心だがそれなりに
奥深いものもある作品だ。なお描写には地上波テレビ向きで
はない(?)と思わせるものも登場する。出演は藤田富、谷口
賢志、武田玲奈。監督は石田秀範、脚本の監修を小林靖子が
務める。公開は5月19日より全国ロードショウ。なお本作に
先立ってシリーズの総集編も2作公開される。)

『カメラを止めるな』
(2017年11月にイヴェント上映されて大好評を博したという
映画専門学校「ENBUゼミナール」製作の作品。巻頭に37分に
及ぶ1カメラ、1カットのゾンビ映画が登場し、そこからそ
の映画のメイキングのようなバックステージのドラマが展開
される。脚本と監督は、短編映画では各地の映画祭で話題を
振りまいたという上田慎一郎の長編第1作。巻頭の展開では
多少まだるっこしいシーンもあるが、それらの理由は後半で
説明される。その流れは映画ファンのツボには嵌るかな?
でも一般の観客にはどうなのだろう。特に巻頭の部分が多少
稚拙に見えてしまうのは、映画としては勿体ない気がした。
ただしエンディングロールの登場する映像には、本作の別の
側面も見えてくるもので、ここには監督のしたたかさが感じ
られて、正しく脱帽した。公開は6月23日より、東京は池袋
シネマ・ロサ、新宿K's cinemaにて2館同時上映。)

『母という名の女』“Las hijas de Abril”
(2012年『父の秘密』、2015年『或る終焉』でカンヌ国際映
画祭「ある視点」部門の連続受賞を果たしているメキシコ人
監督ミシェル・フランコの最新作。リゾート地に暮らす姉妹
を中心に、幼くして妊娠した妹とそこに現れる母親の確執が
描かれる。とは言うものの、筆者が男性の目で傍から見る感
じだと、正にいやはやという感じかな。日本でもこういう親
のことは「毒親」などの言葉で一般化しているようだが、人
の闇を描き続けるフランコ監督の目には格好の題材だったよ
うだ。出演は、2016年8月28日題名紹介『ジュリエッタ』で
ゴヤ賞受賞のエマ・スアレス。他に、アナ・バレリア・ベセ
リル、エンリケ・アリソン、ホアナ・ラレキ。それにしても
男性には判り難いというか…。でも言葉が一般化するほどの
状況があることも事実なのだろう。公開は6月16日より、東
京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)

『ルイ14世の死』“La mort de Louis XIV”
(「朕は国家なり」の言葉でも知られるフランス王国国王の
最晩年を描いた作品。1715年9月1日に崩御するまでの数日
間が、まるでタイムマシンに乗って現地に行ったかのように
克明に描写される。「ギネス世界記録」にも認定される史上
最長72年もの治世を行い、太陽王とも称される栄華を極めた
国王は、その一方で度重なる戦争によって国を疲弊させ、晩
年には国民の心も離れていたとされる。そんな国王の陳腐と
も言える死の様子。それは他国人の目からすると「だから何
なの」と言いたくなるようなものでもあるが、その国民から
すれば、ある種の覗き見をしたくなるようなものなのかもし
れない。出演は、ヌーヴェルヴァーグの申し子とも呼ばれた
ジャン=ピエール・レオ。脚本と監督はスペインの鬼才アル
ベルト・セラ。公開は5月26日より、東京は渋谷シアター・
イメージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)

『明日にかける橋 1989年の想い出』
(2002年『Returner』で人類の未来を救った鈴木杏が、再び
時間を超えて未来を変えようと奮闘する上映時間2時間11分
の作品。2010年、地方都市の中小企業に勤めるOLの主人公
は、20年前の花火大会の朝に弟を失い、当時のバブル経済の
崩壊と共に家族も崩壊した過去を背負って生きていた。そん
な彼女が全力で走り抜けると願いが叶うという橋の伝説を実
行、彼女は花火大会の前日にやって来るが…。脚本と監督は
2015年『向日葵の丘 1983年・夏』などの太田隆文。監督は
バブル期への特別な思いがあるらしく、本作でもその思い出
に浸るようなシーンが羅列される。ただ遠景で風力発電用の
風車が林立しているのは違うと思うが。いずれにしてもその
ノスタルジーに共感できる人には喜ばれるのだろう。しかし
SFとしての共感はあまりなかったかな? 公開は6月30日
より、東京は有楽町スバル座他で全国順次ロードショウ。)

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
                “Battle of the Sexes”
(1970年代初頭のテニス界において、大会のオープン化に伴
う賞金制度での男女間不平等を訴え、「女子テニス協会」の
設立などに貢献したプロテニスプレイヤー、キング夫人。彼
女が1973年にボビー・リッグスとの「性差を超えた戦い」を
行うまでを描いた実話に基づく作品。内容には多少微妙な点
も含むが、作品はそれらを超えた社会問題として描き切られ
ている。出演はエマ・ストーンとスティーヴ・カレル。カレ
ルのコメディは日本人にはなかなか難しいが、本作はそれを
逆手に取って巧みにクライマックスを盛り上げる。製作はダ
ニー・ボイル、脚本は『スラムドッグ$ミリアネア』のサイ
モン・ボーフォイ。監督は『リトル・ミス・サンシャイン』
のヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン。コンペテ
ィションを描くには最強のチームだ。公開は7月6日より、
東京はTOHOシネマズ・シャンテ他で全国ロードショウ。)

『レディ・バード』“Lady Bird”
(2017年4月16日題名紹介『20センチュリー・ウーマン』な
どの女優で、脚本家でもあるグレタ・ガーウィグが、自作の
脚本を初の単独監督でオスカー候補になった作品。監督の出
身地であるカリフォルニアの州都サクラメント市を舞台に、
東部の大学への進学を望む女子高生の最終学年での暮らしぶ
りが描かれる。出演は、2007年12月紹介『つぐない』などの
シアーシャ・ローナン。他に『トイ・ストーリー』シリーズ
のアンディの母親役でも知られる舞台女優のローリー・メト
カーフらが脇を固めている。サクラメントは上記のように州
都であり、都市圏人口は全米27位という街だが、監督の故郷
に対するの印象は違うのかな? 映画では「それどこ?」と
言われて慌ててサンフランシスコと言い直すシーンも出てく
る。でも監督の故郷に対する愛情はしっかりと伝わってくる
作品だ。公開は6月1日より、全国ロードショウ。)

『30年後の同窓会』“Last Flag Flying”
(2014年10月紹介『6才のボクが、大人になるまで。』など
のリチャード・リンクレーター監督が、同作でも感じさせた
国家への不信感を露わにした作品。試写会では馬鹿笑いして
いる奴もいたが、僕には監督の想いの痛々しさしか感じられ
なかった。出演は同じ日2本目だったスティーヴ・カレル。
ヴェトナム戦争で不名誉除隊だった主人公が、30年ぶりに戦
友に会いに来る。それはイラクで戦死した息子を共に弔うた
めだった。しかし基地で遺体を見た彼はアーリントン墓地へ
の埋葬を拒否し、故郷へ連れ帰ることにする。その遺体には
息子の戦友が付き添い。そこで真相が明らかになる。原題の
後ろの2語は国旗掲揚の意味だが、その前にLastと付くのが
痛々しい。共演はブライアン・クランストンとローレンス・
フィッシュバーン。公開は6月8日より、東京はTOHOシネマ
ズ・シャンテ他で全国ロードショウ。)

『犬ヶ島』“Isle of Dogs”
(2012年12月紹介『ムーンライズ・キングダム』などのウェ
ス・アンダースン監督が、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受
賞。近未来の日本を舞台に、少年と犬との交流を描いた人形
アニメーション作品。犬との共存が長く続いていた日本の大
都市。しかし犬に流行病が発生し、島に隔離する政策が実行
される。その第1号は主人公と長年一緒だったガードドッグ
だった。ところが流行病は収まらず、ついに隔離した犬も抹
殺する法律が施行されることに…。主人公は愛犬を探すため
小型機を奪って島に渡り、そこで出会った犬たちと共に大冒
険が始まる。通訳機によって犬語も他の言語も理解出来ると
いう設定だが、その辺がちょっと判り難いかな。でもまあ犬
好きには堪らない描写も多く、監督の犬好き度は理解できる
作品だ。豪華な声優陣も注目される。公開は5月25日より、
東京はTOHOシネマズ・シャンテ他で全国ロードショウ。)

『ゼニガタ』
(テレビドラマで人気を集め、2018年3月18日題名紹介『家
に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』などに出演の
大谷亮平が、映画初主演で居酒屋の店主と闇金屋の2つの顔
を持つ男を演じる人間ドラマ。闇金の実態がどんなものかは
知らないが、2016年8月紹介『闇金ウシジマくん』などもあ
る中、本作は荒唐無稽とも思える設定でドラマが作られてい
る。それは山田孝之主演作も荒唐無稽だが、本作はちょっと
度が過ぎるかな。どっちがより現実的かは判らないが…。そ
の辺は観客の好みと言えそうだ。共演は小林且弥、佐津川愛
美、田中俊介。他に安達祐実、升毅、渋川清彦らが脇を固め
ている。脚本は『人狼ゲーム』シリーズなどの企画を手掛け
る永森裕二。監督は園子温作品の助監督で『人狼ゲーム』シ
リーズで監督デビューした綾部真弥。公開は5月26日より、
全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2018年04月15日(日) 死の谷間(妻よ薔薇、ゆずりは、毎日がアルツ、さらば青春、四月の、TOKYO L D、サバービコン、キスできる、ウィンH、虹色D、リズと)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『死の谷間』“Z for Zachariah”
アメリカの児童文学作家ロバート・C・オブライエンの原作
で、1973年に他界した作家の死後に遺族の手で発表されて、
1976年度のエドガー賞 Best Juvenile Mystery Fiction部門
に輝いた小説の映画化。
因にオブライエンは、2014年に世界のアニメーション専門家
によって選出された歴代ベスト100で、41位に選ばれた“The
Secret of NIMH”(邦題:ニムの秘密)の原作者でもある。
物語の背景は核兵器を使用した全面戦争後の世界。地球上の
ほとんどの場所は放射能で汚染され、人間の居住は不可能に
なっている。ところがその中で唯一つの谷間だけが、地形や
気流の関係なのか汚染を免れていた。そして少女はその谷間
にたった1人で暮らしていた。
そんな谷間に1人の男が現れる。男は不格好な放射能防護服
で身を覆い、可動型の核シェルターを積んだ荷車を引いて谷
間に続く道をやってきたのだ。やがて谷間に辿り着くと男は
ガイガー計で放射線量を確認し、防護服を脱ぎ捨てて森に走
り込む。こうして谷間に第2の人間が現れた。
そんな男を少女は木々の陰から観察していたが、やがて声を
掛けざるを得なくなる。男の存在は善なのか悪なのか。緊張
した状態が続く中で物語は進行して行く。

出演は、2018年3月11日題名紹介『アイ,トーニャ』でオス
カー候補になったマーゴット・ロビー。2013年『それでも夜
は明ける』でオスカー候補のキウェテル・イジョフォーと、
2016年9月紹介『スター・トレック BEYOND』などのクリス
・パイン。
監督は2013年5月紹介『コンプライアンス−服従の心理−』
のクレイグ・ゾベル。脚本はイギリスのロンドン出身だが、
ロサンゼルスの南カリフォルニア大学で映画を学び、2013年
に“Breaking at the Edge”という作品で脚本家デビューを
果たしているニサール・モディの第2作。
本作は新人の登竜門ともされるサンダンス映画祭で、2015年
1月にプレミア上映された。
所謂‘Post-apocalyptic’と呼ばれるジャンルの作品だが、
その旗頭ともされる『マッドマックス』とは一線を画した作
品で、ある種のサヴァイヴァル・ドラマとも呼べるような展
開になっている。でも本当の狙いは登場人物たちの葛藤など
を描いた心理劇という感じだろう。
ただ映画で心理劇というのは小説より難しいもので、本作で
も登場人物たちの心理が明確に描き切れているかというと、
多少物足りない部分は残ってしまう。でもまあサヴァイヴァ
ル劇としてはそれなりに面白く描かれていたし、ほとんどの
観客はそれで満足できるものだろう。
海外の映画評でも評価は高いようだ。

公開は6月23日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロー
ドショウとなる。

この週は他に
『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ�掘�
(山田洋次監督が2016年から毎年1作のペースで発表してい
るシリーズの第3作。実は監督は2013年に全く同じ顔ぶれで
『東京家族』を撮っており、さらにその間には2014年『小さ
なおうち』、2015年『母と暮らせば』でも家族の絆を描いて
いる。そんな監督の新作は「妻の役割」の見直しという感じ
かな。男性の観客としては多少耳の痛い話が続くが、それな
りに夫の役割の説明もあるのは山田監督の心情というところ
かもしれない。脚本は平松恵美子との共同になっている。出
演は橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、
林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優。他に小林稔侍、風吹ジュンら
のレギュラーに加えて、立川志らく、笹野高史、笑福亭鶴瓶
らがゲスト出演している。各派の落語家が並ぶのは監督の好
みかな。落語の人情噺とはちょっと違う雰囲気のお話だが。
公開は5月25日より、全国ロードショウ。)

『ゆずりは』
(2018年1月28日題名紹介『おみおくり』に続いて葬儀の現
場を描いたドラマ作品。先の作品では納棺師の技術的な側面
が江川悦子のスペシャルメイクを駆使して見事に描かれてい
たが、本作は葬儀社のあり方を問う作品。同様にいくつかの
エピソードを積み重ねながら、その中での新人の成長が描か
れる。そのエピソードが先の作品ではちょっとどうかなと思
うものもあったが、本作ではオーソドックスに涙を誘うよう
になっている。ただ両作共に自死の話があるのは、そういう
時代の反映なのだろうか? 出演はものまねタレントのコロ
ッケ、ただし本作では本名の滝川広志名義で登場し、お笑い
は封印している。他に、2016年10月紹介『オー・マイ・ゼッ
ト!』などの柾木玲弥。監督はテレビの人気ディレクターで
映画は2004年以来2作目の加門幾生。公開は6月16日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル 最期に死ぬ時。』
(2014年5月紹介した作品の続き。前作では認知症の介護の
実態が巧みに描かれ、今後の自分のあり方を考えさせられた
が、本作ではさらに進んで被介護者が最期を迎えるときの問
題がテーマとされる。それは多少不謹慎かなとも思えるテー
マだが、実は監督自身が入院手術という局面に立たされて、
それを真剣に取り上げざるを得なかったものだ。そしてその
中では、デイケアのあり方から終末医療、スイスで取材され
る「自死幇助」の問題まで、多岐に亘る側面が簡潔に判り易
く描かれていた。実はスイスでの問題に関しては以前にそれ
を扱ったドラマ作品を観て、その時は多少怒りに近い感覚だ
った記憶があるが、今回は真剣に論じられる様子が正にこれ
も考え方の一つという思いもした。そんなこれからの我々が
迎える問題が丁寧に描かれた作品だ。公開は7月14日より、
東京はポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)

『さらば青春、されど青春』
(2017年4月2日題名紹介『君のまなざし』に続く宗教家・
大川隆法の原案・製作総指揮により、幸福の科学出版が製作
した実写作品。出演は前作の大川宏洋と旧名清水富美加の千
眼美子。背景は昭和50年代、故郷を離れ東京の大学に進学し
た主人公は勉学に励んだ末に大手商社に就職。将来を期待さ
れエリート街道を進むが…。彼には他人に明かせない秘密が
あった。宗教家は自分と年齢が近いこともあって以前から興
味もあり、映画作品は初期のアニメーションからそこそこ観
てきた。その作品は結末は教義に従うもののそれなりにファ
ンタシーで忌憚なく観られたが、今回は宗教家の半自伝的な
作品で多少自慢話めくところが気になったかな。それに初期
の著作で語られた宗教に目覚めた瞬間が、今回は違う経緯の
ようで、それもちょっと残念に感じられた。公開は5月12日
より、東京は丸の内TOEI他で全国ロードショウ。)

『四月の永い夢』
(2016年『走れ、絶望に追いつかれない速さで』などの中川
龍太郎脚本・監督で、2017年のモスクワ国際映画祭で国際映
画批評家連盟賞とロシア映画批評連盟特別表彰をW受賞した
ヒューマンドラマ。3年前に中学校の音楽教師を辞め近くの
蕎麦屋で働ていた女性の許に、3年前に亡くなった恋人の書
き残した手紙が届くことから状況が動き出す。出演は2009年
8月紹介『携帯彼氏』などの朝倉あき。他に三浦貴大、舞台
女優の川崎ゆり子、青柳文子、高橋由美子、森次晃嗣、志賀
廣太郎、高橋惠子らが脇を固めている。監督の前作も観てい
るが、本作と同様に恋人や友人の死を受け入れられない主人
公が新たな道に歩み出すまでを描いていた。その心情は重く
中々紹介には踏み切れないものだ。でもそんな人が世間には
多くいることも事実なのだろう。公開は5月12日より、東京
は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『TOKYO LIVING DEAD ID♡L』
(2018年2月11日題名紹介『ラーメン食いてぇ!』などの熊
谷祐紀脚本・監督によるゾンビ作品。ブレイクの兆しの見え
てきた地下アイドル3人組のセンターが、楽屋に侵入してき
たゾンビに咬まれ、72時間後に発症の窮地に追い込まれる。
ところが隔離施設に移送中をファンだという警官に逃亡を幇
助され、とある探偵事務所に助けを求めるが…。蔓延し続け
るゾンビ禍の裏にはある重大な秘密が隠されていた。出演は
アイドルグループSUPER☆GiRLSの浅川梨奈、阿部夢梨と尾澤
ルナ(休業中)。他に星守紗凪、尚玄や『HiGH & LOW』など
パルクールのメムバーらがアクションを披露している。この
テーマは元々好きなものだが、日本製のゾンビ物には単なる
スプラッターではない、それなりの変化球で面白い作品も多
く存在する。本作もそんな一編。公開は6月9日より、東京
はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)

『サバービコン 仮面を被った街』“Suburbicon”
(2014年『ミケランジェロ・プロジェクト』などのジョージ
・クルーニーが、共同脚本にジョエル&イーサン・コーエン
兄弟を招いて、1950年代の人種差別問題と、その背後で起き
る奇妙な事件を脚色、自ら監督したドラマ作品。出演はマッ
ト・デイモン、ジュリアン・モーア、オスカー・アイザック
と、2018年3月紹介『ワンダー』にも出演して今注目のノア
・ジュープ。始りは白人居住区に引っ越してきた黒人一家に
対する排撃だが、それが徐々にエスカレートする様が恐ろし
い。でも本当に描かれるのはその背後で起きる白人一家の陰
湿な事件で、その描き方には正しくコーエン兄弟の毒が散り
ばめられていた。観客の苛々感を募らせるクルーニーの監督
も見事な作品だ。50年代の憧れだったアメリカの真実が描き
尽されている。公開は5月4日より、東京はTOHOシネマズ日
比谷他で全国ロードショウ。)

『キスできる餃子』
(2016年12月4日題名紹介『傷だらけの悪魔』では女子高生
役だった足立梨花が、いきなりバツイチ、子持ちの女性を演
じる宇都宮餃子がテーマのご当地映画。主人公はイケメンに
惚れて親の反対も押し切り結婚、出産した女性。しかしその
イケメンに裏切られ、娘の手を引いて故郷に戻ってくる。そ
こでは人気店を廃業した頑固な父親が待っていたが…。人気
店を再興しようとする主人公の挑戦に新進プロゴルファーの
若者が絡んで物語が展開する。共演は‘BOYS AND MEN’の田
村侑久。他に麻生祐未、浅野和之、佐野ひなこらが脇を固め
ている。また佐藤美希がゲスト出演しているのはJリーグ・
サポーターにはニヤリだろう。脚本と監督は『アンフェア』
などの原作者の秦建日子。2016年に三重県で撮った映画が評
価されての抜擢だそうだ。公開は6月15日から栃木県での先
行上映の後、22日より全国ロードショウ。)

『ウィンチェスターハウス』“Winchester”
(合衆国国家歴史登録財に指定されているカリフォルニア州
サンノゼに実在する邸宅を描いた作品。建築主のサラは銃器
ビジネスで財を成した一族の相続者で、製造した銃で殺され
た人々の霊に呪われていると信じ、家を建築し続ければ生き
長らえるとして、1922年に死去するまで38年間365日24時間
ぶっ通しの増築を続けたという。そこには様々の不思議な光
景も存在し、そんな邸宅の様子がオカルト的な物語と共に興
味深く描かれている。出演はDameの称号を持つヘレン・ミレ
ンと、2015年7月紹介『ターミネーター:新起動』などのジ
ェイスン・クラーク。脚本と監督は2010年9月紹介『デイブ
レイカー』などのマイクル&ピーター・スピエリッグ兄弟。
個人的には観に行きたかったが果たせなかった場所の一つ、
今回は内部も丁寧に紹介されて存分に楽しめた。公開は初夏
に東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)

『虹色デイズ』
(「別冊マーガレット」連載、水野美波原作少女コミックの
実写映画化。性格も趣味もバラバラな男子高校生4人組の友
情と恋愛事情が描かれる。中でも一番おくての主人公が人気
女子に片想いしたことに始まるすったもんだが描かれるもの
で、さすがに筆者も今の歳になるとちょっと気恥しいかな。
でも、正に青春真っ只中の需要層には共感される話なのだろ
う。出演は、「GENERATIONS from EXILE TRIBE」の佐野玲於
と、2018年1月28日題名紹介『坂道のアポロン』などの中川
大志。他に高杉真宙、横浜流星。脚本と監督は、2017年3月
12日題名紹介『笑う招き猫』などの飯塚健。実は4人の男子
に対して4人の女子が登場するが、その中の千葉ちゃんと称
する役柄が良く判らなかった。まあ別段本筋とは関係ないの
だが、描き方があまりに中途半端で気になってしまった。公
開は7月6日より、全国ロードショウ。)

『リズと青い鳥』
(京都府出身の作家・武田綾乃による原作小説『響け! ユー
フォニアム』を、2016年8月28日題名紹介『聲の形』を手掛
けた山田尚子の監督で制作したテレビアニメーションからの
完全新作劇場版。高校生最後の吹奏楽コンクールを目指して
練習に励む女子2人が、演奏中で掛け合いを披露するパート
の解釈を巡って悩み苦しみ、その中で2人の関係が明らかに
されて行く。それは友情なのか支配なのか…。実は上記『虹
色デイズ』にも同じような女子2人の関係があるのだが、本
作ではそれが主題となってより掘り下げられた物語が展開さ
れる。劇中に演奏される楽曲の原作とされる物語の映像化が
挿入され、その構成にも惹かれるものを感じた。声優は種崎
敦美と東山奈央。それに本田望結がキーとなる役柄を宛てて
いる。公開は4月21日より、東京は新宿ピカデリー他で全国
ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2018年04月01日(日) リディバイダー(それから、ママレード・ボーイ、レザーフェイス)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『リディバイダー』“Redivider/Kill Switch”
イギリスのVFX監督ティム・スミットが2009年にネットで
公開した約10分の映像作品“What's in the box?”。それが
評判を呼び、その作品を自ら長編化した監督デビュー作。
物語の背景は、エネルギー資源が枯渇しかけている近未来。
そこに究極の資源確保のシステムが提案される。それは地球
をコピーしたエコーワールドを造り、その質量をエネルギー
に変えて地上に送り込むというものだった。
ところがそのシステムが暴走し、事態収拾のため元NASA
の宇宙飛行士でシステムの運営会社と契約していた主人公が
エコーワールドに向かうことになる。そこで手渡された黒い
箱を使って事態を修復するというのだが…。
空間転移装置で辿り着いたエコーワールドはシステムを巡る
戦闘状態にあり、兵器搭載の大型ドローンなどが飛び交う激
しい戦闘の中。そこで主人公は元の世界に暮らす家族を護る
ため、任務に邁進することになる。

出演は、2017年3月19日題名紹介『美女と野獣』で野獣役の
ダン・スティーヴンスと、2012年11月紹介『007スカイフ
ォール』でボンドガールのベレニス・マーロウ。他の配役は
主にヨーロッパで活躍する俳優たちのようだ。
原題のスクリーン上の表記では最後のRがキリル文字のよう
な裏返しになっていて、全体が鏡像のようなイメージになっ
ている。また監督の名前も本作では半角開けを除いて同様の
イメージになっていた。それがテーマの作品だろう。
因に原題が2つあるのは、元々は前半の題名で製作されたの
だが、これと同じ名前のパンクバンド(Rも裏返し)がある
ようで、欧米のデータベースなどでは後半の題名で登録され
ているものだ。
という作品だが、実は今ちょうど翻訳の出ている「ペリー・
ローダン」の日本版が本国では1983年に出版されたもので、
そこでも地球の複製が出ているのにはニヤリとした。しかも
目的は違うがそこに生物はいないことになっている。
従ってこのような第2地球のイメージは欧米人には有り勝ち
なのかな? ただしそこを搾取するとなると話は複雑だ。だ
から生物はいないとか言っている訳だが、これがばれたら…
ただ事では済まないだろう。
そこでこの設定をもう少しスマートに成立させるなら、例え
ばエコーワールドを反物質の世界にして、それぞれがプラス
とマイナスのエネルギーを得るとすれば、互いに搾取するこ
となく、0=∞のエネルギーを得る設定ができる。
そこから何らかの不具合が出てのアクションとなれば、SF
的にも納得の話になるのだが。物語の展開は良いとしても、
本作の制作者にはその辺をもう少し考えて欲しかったとは思
える作品だった。

公開は6月9日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『それから』“그 후”
(2009年7月紹介『アバンチュールはパリで』などのホン・
サンス監督による2017年の作品。主人公は大学教授の紹介で
著名な評論家が社長の小さな出版社にやってきた女性。とこ
ろが出勤初日から評論家に言い寄られ、さらに乗り込んでき
たその妻から不倫相手と間違われる。こうしてすったもんだ
続くところに本物の浮気相手が現れて…。何ともはやのお話
だが、物語の背景に何となく親しみが湧いて、ニヤニヤしな
がら観てしまった。事務所が舞台の1幕劇のような展開で、
内容も台詞が多く舞台劇のような感じの作品だ。出演は監督
の新たなミューズとされるキム・ミニ、2017年7月紹介『隠
された時間』などのクォン・ヘヒョ。公開は6月9日より、
東京はヒューマントラストシネマ有楽町他で全国順次ロード
ショウ。なお同映画館系では、同じ監督、主演による4作品
が連続公開されるようだ。)

『ママレード・ボーイ』
(1990年代に少女誌で発表された吉住渉原作コミックスを、
2017年7月紹介『ナミヤ雑貨店の奇跡』などの廣木隆一監督
が実写映画化した作品。ハワイ旅行に行っていたそれぞれの
両親が、離婚し相手を交換して再婚。しかも一緒に住むとい
う異様な事態になった高校生男女を巡るお話。これも何とも
はやだが、後半には両親の過去を探る話や、「法律や社会の
モラルなんて…」という台詞があるなど、そこそこシビアな
話もあり、まあ観ていて飽きさせなかった。ただ自分がこの
親世代だと、親たちのモラルはどうだったの…? みたいな
点では気になったが、子世代の観客には関係ないのだろう。
それと中盤の夜の公園のシーンが意外と凝った照明で、その
辺も楽しめた。出演は桜井日奈子と吉沢亮。彼らの両親を筒
井道隆、谷原章介、檀れい、中山美穂が演じる。公開は4月
27日より、全国ロードショウ。)

『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』“Leatherface”
(1974年に全米公開され、その描写の芸術性から後にニュー
ヨーク近代美術館に永久保存されることとなった、トビー・
フーパー監督ホラー映画の前日譚を描いた作品。殺人一家に
生まれ1955年の5歳の誕生日にはチェーンソーを贈られた少
年が、紆余曲折の末に殺人鬼になって行くまでが描かれる。
昨年他界したフーパー監督が自ら製作総指揮に参画し、その
遺作となった。出演はサム・ストライク、ヴァネッサ・グラ
ッセ、ジェームズ・ブルーアらの若手中心だが、これから伸
びてきそうな顔触れが揃っている。その脇をスティーヴン・
ドーフ、リリ・テイラー、フィン・ジョーンズらが固めてい
る。監督は、2012年8月紹介『リヴィッド』などのアレクサ
ンドル・パスティロ&ジュリアン・モーリーが務めた。公開
は5月12日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロー
ドショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
        *         *
 実は一身上の都合でこの週の前半は試写を観ることができ
ず。翌週は体調を崩して1週間試写が観られませんでした。
観られなかった作品は何とか次週以降に観る算段はしており
ますので、もうしばらくお待ちください。


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井口健二