井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2017年12月31日(日) レオン

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『レオン』
2007年12月紹介『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』など
の塚本連平監督が、清智英+大倉かおり原作コミックスを、
K-POP「KARA」の元メンバーで、2017年10月紹介『DCスー
パーヒーローズvs鷹の爪団』の声優も務めた知英の長編映画
初主演として描いたファンタシーの要素の強い作品。
内容は1982年『転校生』の大人版というところかな。大手食
品会社のワンマン社長と、同社の経理部に派遣で勤務してい
た冴えない女子社員の精神と身体が交通事故で入れ替わって
しまうというもの。
しかもその会社では、社長の甥と経営コンサルタントによる
乗っ取りが図られており、そのコンサルタントは女子社員に
も手を付けていた。そこで女子社員の身体に宿った社長の精
神は、乗っ取りを阻止すべく行動を開始するが…。

脚本は、2017年8月紹介『恋と嘘』などの吉田恵里香。共演
は竹中直人と、2013年12月紹介『仮面ティーチャー』などの
大政絢、2017年10月紹介『斉木楠雄のΨ難』などの吉沢亮。
さらにミッツ・マングローブらが脇を固めている。
なお、知英の変身ぶりも見所となる作品だ。
大林宣彦監督の作品以降、同旨の映画ドラマは多数作られて
いると思うが、その中ではうまく作られている方かな。ファ
ンタシーの設定はすでに定番という感じで破綻が生じる要素
もない。
その一方で、会社経営の背景や経営コンサルタントの暗躍な
どは、それなりにうまく戯画化されている感じがした。勿論
コミックスのレヴェルではあるが、昨今の日本の同族系会社
の混乱ぶりなどを見ると、あり得るかもしれない。
そんな社会的な要素も、映画以上に各局のテレビドラマを数
多く手掛けている塚本監督が卒なく描いている作品だ。さら
に過去作へのオマージュみたいなシーンもちゃんと設けられ
ているのは感心した。
ただし竹中の怪演振りなどは、テレビの演出が色濃く出てい
る感じかな。映画に馴れた目には多少戸惑いもあるが、これ
が今の日本の演技レヴェルということだろう。その意味では
竹中の演技は嵌っているものだ。
その他にもテレビ的な演出は処々に観られる作品だが、最近
のテレビの人気ヴァラエティ・ディレクターと称する連中が
片手間で撮ったような映画とは一線を画している。さすがに
映画作品の実績も増えてきた監督というところだろう。

公開は2018年2月24日より、東京は新宿バルト9他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『修道士は沈黙する』“Le confessioni”
(2007年4月紹介『そして、デブノーの森へ』などのロベル
ト・アンドー原案、脚本、監督による作品。前作もそうだっ
たが、この監督の作品は背景が特異で僕にはなかなか理解し
辛い。本作ではG8財務相会議を背景に、出席者のIMF専
務理事に呼ばれた修道士が告解を聞く。その翌朝理事が不審
な死を遂げる。しかし修道士は自分が被疑者になっても告解
の内容を話すことができなかった。政治的な訴え掛けがある
ようにも感じるが、自分が根本的に宗教に関っていないと、
修道士の行動などを何と評価して良いかも判らなかった。出
演は、2013年9月紹介『眠れる美女』などのトニ・セルヴィ
ッロ、『デブノーの森へ』などのダニエル・オートゥイユ、
2017年6月紹介『ワンダーウーマン』などのコニー・ニール
セン。公開は2018年3月17日より、東京は渋谷のBUNKAMURA
ル・シネマ他で全国順次ロードショウ。)
『Лайка/ライカ』
(2014年12月紹介『クレヴァニ、愛のトンネル』などの今関
あきよし監督の新作。片仮名の題名を見て不覚にもドイツの
カメラを先に思い浮かべてしまった。しかし物語は地球生物
初の宇宙旅行をしたソ連の犬に準えたもの。そして登場する
のはロシア人と日本人の2人の女性。俳優の卵のロシア人の
部屋に日本人が入り込むが、その日本人は自分はライカ犬の
ようだと称している。そんな2人の暮らしにはいろいろ行き
違いもあるが…。ロシア人がいつも薬を飲んでいて、チェル
ノブイリの絡みかと思ったが、試写後に監督に訊いたら「今
回はそれには触れなかった」との回答だった。出演は長編作
品は初めてというクセーニア・アリストラートワと、2008年
12月紹介『クジラ』に出ていたという宮島沙絵。R15+指定
となるシーンもある作品だ。公開は2018年2月17日より、東
京は新宿K's cinema他にて全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年12月24日(日) 牙狼 GARO 神ノ牙 KAMINOKIBA、ザ・リング/リバース

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『牙狼 GARO 神ノ牙 KAMINOKIBA』
2005年10月から2006年3月まで、テレビ東京系列の深夜枠で
全25話放送された特撮番組『牙狼<GARO>』は、その後
2010年7月紹介『GARO THE MOVIE 3D: RED REQUIEM』など
20作品以上が多岐に展開されてきたものだが、本作はその中
から2013年4月−9月に放送された道外流牙を主人公とする
テレビシリーズ第3作の集大成となる作品のようだ。
とは言うものの僕は全作品を観ている訳ではないが、邪念を
基に人に入り込みホラーと呼ばれる化身となって人類社会を
支配しようとする魔の存在と、それを狩る魔戒騎士と総称さ
れる変身ヒーローとの対決という図式が判っていれば、どれ
も問題なく鑑賞できるものだ。
その本作では、道外=牙狼と同じく魔戒騎士である蛇崩猛竜
が、女魔戒法師の策略で騎士の鎧を奪われる事態が発生。そ
こで高名な魔戒法師リュメに呼ばれた道外は、蛇崩とさらに
魔戒騎士の楠神哀空吏と共にその謎を追うことになる。
そこには神ノ牙と呼ばれるホラーを不滅存在にするアイテム
を巡って様々な思惑が交錯し、道外の最大のライヴァルで、
最強の敵ジンガが復活。さらにホラーの始祖を巡って壮絶な
戦いが繰り広げられる。
その戦いがアクションやCGIを駆使して描かれるものだ。

出演は栗山航、池田純矢、青木玄徳、井上正大、南里美希。
他に泉谷しげる、斉木しげる、影山ヒロノブ(声)らが脇を固
めている。
原作・監督・脚本は雨宮慶太、アクション監督は横山誠。シ
リーズの根幹を担う2人による2011年9月紹介『牙狼<GA
RO>〜MAKAISENKI〜』以来のタッグとなってい
る。
僕はこのシリーズは上記の2010年作から観させて貰っている
が、特に2011年紹介のテレビシリーズで人の邪念がホラーに
つけ込まれるという展開が好きだ。その点で言うと本作は、
魔戒騎士とホラーの戦いが主に描かれるもので、物語よりは
アクションが狙いの作品となっている。
とは言え一時期の作品のような異世界が舞台ではなく、現実
の都会が背景になっているということでは、多少足が地に着
いて来ているというか、僕の考える本来の姿に少し戻ってい
るという感じではあった。ただまあ僕の考える物語を突き詰
めるのは映画では難しいのだろう。
その辺は映画とテレビを巧みに渡り歩く作品と言えるのかも
しれない。なお本作は続きがあるようで、それがどのように
展開されるかも楽しみだ。

公開は2018年1月6日より、東京は新宿バルト9他にて全国
ロードショウとなる。

『ザ・リング/リバース』“Rings”
2005年4月紹介『ザ・リング2』“The Ring Two”に続く、
大ヒットジャパニーズ・ホラーのハリウッド版リメイク。
邦題の「リバース」は、劇中に‘REBIRTH’という単語が出
てくるものだが、片仮名からは‘reverse’も思い浮んで、
これはダブルミーニングなのかな? いずれにしても物語は
呪いのヴィデオを巡る恐怖が再び巻き起こるものだ。
そして今回は、大学の研究室が舞台となっており、これは原
作小説の続編『らせん』への伏線のようにも感じられる。こ
の続編は、日本では1998年に『リング』と同時公開で映画化
されているが、呪いに科学的なアプローチをする展開だ。
さらに原作小説は、『ループ』という作品で初期の3部作と
なるが、この第3部は完全にSF小説として書かれている。
実際に第3部は当時の日本SF大賞の候補にもなっており、
この時の選考委員だった僕は一番に推していた。
この様に原作小説はホラーからSFへ巧みに変成して行くも
のだが、日本の映画化では上記の『らせん』までしか製作さ
れていない。そこで本作では遂にハリウッド版『らせん』が
期待されるものだが、そこから『ループ』に進めるか?
実は以前にこれらの作品を考察した時に、『らせん』の映像
化までは日本映画でも何とかなるが、『ループ』は日本では
無理ではないかと考えた。それはSFマインドの点で当時の
日本の映画人にはそれができないと思ったものだ。
そこに今回はハリウッドが挑戦してくれるかもしれない。そ
んな期待を感じさせる作品にもなっている。ただしハリウッ
ドの映画人でも、これをしっかりと受け止めて映像化するの
は、かなりハードルが高そうだ。
これを脚色、監督できるのは、僕には2014年11月紹介『イン
ターステラー』などのクリストファー・ノーラン監督ぐらい
しか思い浮かばないところだ。それくらいの究極のSFドラ
マが『ループ』では期待される。

本作の監督は、2008年の長編処女作“Tres días”(DVD
邦題『アルマゲドン・パニック』)がベルリン国際映画祭の
パノラマ部門で上映されたというスペインの俊英F・ハビエ
ル・グティエレス。監督の第2作にして初のスタジオ作品だ
そうだ。
脚本は、2012年9月紹介『ドリームハウス』などのデヴィッ
ド・ルーカが担当した。因に前作は、『ザ・リング』の先の
2作をリードしたナオミ・ワッツが主演しているものだ。
出演は、イタリア出身でファッションモデルとしても活躍す
るマチルダ・ルッツ。女優のハリウッドデビュー作となる。
他に、2016年3月紹介『フィフス・ウェイブ』などのアレッ
クス・ロウ、2008年7月紹介『ハンコック』などのジョニー
・ガレッキ、2015年『ジュラシック・ワールド』などのヴィ
ンセント・ドノフリオらが脇を固めている。
ヴィデオの呪いは、観ると直後に電話が架かってくる。それ
から7日間で死に至る。それまでに誰かに見せれば呪いは移
るが、その人物が死ぬと戻ってくる。これは当初から変って
いないが、本作では研究室でテールと呼ばれる次の被験者を
用意するという展開になっている。
ところが本作で、ヒロインがヴィデオを観たと知った彼女の
婚約者が、直後に架かって来たテールが見つかったとする電
話に対してそれを断るシーンがあり、ここではヒロインなら
まだしも婚約者ではおかしい訳で、これは脚本の勇み足かな
と思ってしまった。
些細なことだがそんなことも気になる作品だ。

公開は2018年1月26日より、東京は渋谷HUMAXシネマ、TOHO
シネマズ新宿他で、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『ドリス・ヴァン・ノッテン
         ファブリックと花を愛する男』“Dries”
(1980年代末からベルギー・アントワープを本拠にメンズ&
レディースのコレクションを発表し、日本にもブティックを
展開する世界的なファッションデザイナーに密着したドキュ
メンタリー。作中には初期からのファッションショウの記録
映像も登場し、それに本人がコメントする趣向もあり、それ
はファッションに疎い僕でも納得のできる巧みな構成になっ
ていた。その他にも生地に拘るためにインドに織物工場を持
つなど、多角的且つ国際的な視野にも感心させられるところ
があった。最近ではファッションデザイナーのドキュメンタ
リーや伝記ドラマ作品も多いが、その中でも真摯に受け止め
られる作品だ。公開は2018年1月13日より、東京はヒューマ
ントラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)
『北の桜守』
(吉永小百合の出演120作目という作品。戦前の樺太で桜樹
を育てるもソ連軍の侵攻で網走に帰還した女性の姿を描く。
時は1971年、オリンピックを翌年にした札幌では華やかな賑
わいと新たな店舗の進出が相次いでいた。その中にアメリカ
に渡ってコンビニエンスストアを知り、手腕を買われて凱旋
した女性の次男もいたが…。彼を追い立てるように送り出し
た母親との確執や、桜樹を見ると守らずにいられない女性の
物語が綴られる。共演は堺雅人、篠原涼子。他に佐藤浩市、
阿部寛らが脇を固めている。監督は2008年6月紹介『おくり
びと』などの滝田洋二郎。また作中では戦時下の様子が舞台
劇で描かれ、そこだけケラリーノ・サンドロヴィッチが演出
を担当。公開は2018年3月10日より、全国ロードショウ。)
『ローズの秘密の頁』“The Secret Scripture”
(第2次世界大戦下のアイルランドを舞台にした1人の女性
の物語。彼女は戦後50年余りを精神病院で暮らしていた…。
作品は彼女の転院手続きで鑑定にやって来た医師の目から描
かれ、戦時下アイルランドの特殊な事情が語られる。出演は
ルーニー・マーラ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。他にジャ
ック・レイナー、テオ・ジェームズ、エリック・バナらが脇
を固めている。製作、脚本、監督は1993年『父の祈りを』な
どのジム・シェリダン。実は映画では語られないが、大戦中
のアイルランドは中立の立場を取りながらも反英の国民感情
から枢軸側に肩入れしていた事実があり、それを知っている
といろいろ興味深い作品だ。公開は2018年2月3日より、東
京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『チェリーボーイズ』
(林遣都、�暴啾析此∩位酳�哉が田舎町の25歳童貞3人組を
演じる青春(?)コメディ。林が演じるのは音楽をやると東京
に出たものの、何もしないまま父親の病気で家業を継ぐため
に帰ってきた若者。そんな若者が幼馴染と再会するが、その
町には昔からの苛めっ子や、東京で風俗嬢だったという噂の
女性もいて…。共演は2017年9月17日題名紹介『一礼して、
キス』などの池田エライザ。他に吹石満、立石涼子らが脇を
固めている。脚本は、2017年11月5日「東京国際映画祭」で
紹介『アイスと雨音』などの松居大悟、監督は助監督出身の
西海謙一郎が長編デビュー。原作は古泉智浩のコミックスの
ようだが、話は有り勝ちかな。公開は2018年2月17日より、
東京はシネ・リーブル池袋他で全国ロードショウ。)
『花咲くころ』“გრძელი ნათელი დღეები”
(1992年のジョージア内戦を背景にした2人の少女の青春ド
ラマ。1991年にソ連邦から独立したジョージアは、その後に
激しい民族間の紛争に巻き込まれる。そんな中で束の間の平
穏が訪れた首都トリビシ。しかし1人の少女の父親は政治的
な意図で刑務所に入ったまま。そしてもう1人の少女は恋人
から護身用の拳銃を渡される。それでも少女たちは学校生活
や街でのお喋りを楽しんでいたが…。脚本と監督は、1978年
トリビシ生まれのナナ・エクフティシュヴィリ。共同監督に
ドイツ出身のジモン・クロス。物語はジョージア出身監督の
体験に基づくもののようだが、拳銃に関る緊張感も堪らない
作品だ。公開は2018年2月3日より、岩波ホール創立50周年
記念作品として上映後、全国順次ロードショウ。)
『彼の見つめる先に』“Hoje Eu Quero Voltar Sozinho”
(2014年のベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し
たブラジルの作品。一般学級に通う盲目の少年の性の目覚め
を描く。主人公は近所に住む幼馴染の少女と共に通学してい
るが、夢は海外留学。そして彼女の手助けで盲人の学生を受
け入れてくれる留学先も見つけるが、彼女は町を出ることに
消極的で、過保護な両親にも話せない。そんな苛々を感じた
日、同じクラスに少年が転校してくる。その少年は学内の女
子の人気者になり、幼馴染の少女も気にしてるようだが…。
脚本と監督は本作で長編デビューのダニエル・ヒベイロ。自
作の短編を長編化したようだが、監督のコメントには重大な
ネタバレがあるので要注意。公開は2018年3月10日より、東
京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『ナチュラルウーマン』“Una Mujer Fantastica”
(主人公はウェイトレスをしながらナイトクラブで歌ってい
るトランスジェンダー。初老の恋人と仲睦まじい生活だった
が、その恋人が突然の病気で死んでしまう。ところが死因を
不自然とする元妻や息子が現れ、さらには性犯罪専門の女性
刑事も登場して話が混迷して行く。脚本と監督は2013年『グ
ロリアの青春』でベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)受賞の
セバスチャン・レリオ。本作でも銀熊賞(脚本賞)受賞した。
出演は実際にトランスジェンダーのダニエラ・ヴェガ。他に
2017年10月29日題名紹介『ネルーダ』などのルイス・ニェッ
コや、主にチリのテレビ俳優が脇を固めている。物語には謎
解きの要素もあってそれなりに面白い。公開は2018年2月、
東京はシネスイッチ銀座他で全国ロードショウ。)
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
                   “The Big Sick”
(パキスタン出身のスタンダップ・コメディアン=クメイル
・ナンジアニの実話に基づく作品。息子を弁護士にするため
アメリカにやって来た一家。しかし息子はコメディアンの道
を進んでいる。そんな息子が劇場でヤジを飛ばした女性と親
しくなる。しかしイスラム教徒の彼にとって他教徒との結婚
は家族を捨てることだった。ところが優柔不断の彼に愛想を
尽かした彼女が突然重病になり、駆け付けた彼は治療のため
人工的に昏睡状態する許可を求められるが…。実話の本人が
主演し、共演にはエリア・カザンの孫娘のゾーイ・カザン。
他にホリー・ハンターらが脇を固めている。製作総指揮ジャ
ド・アパトー。公開は2018年2月23日より、東京はTOHOシネ
マズ日本橋他で全国順次ロードショウ。)
『ザ・シークレットマン』
“Mark Felt:The Man Who Brought Down the White House”
(2005年に正体が明かされた1974年ニクソン辞任劇の引き金
となったディープ・スロート。その出来事を実話に基づいて
描いた作品。1972年J・エドガー・フーバー長官が死去。そ
れを機にFBIの機密を得んとする政権の動きが強まる。こ
れに対して副長官の座にあったマーク・フェルトは、ニクソ
ンが潔白とされたウォータゲート事件などの捜査情報をワシ
ントン・ポスト紙やその他の報道機関に匿名で提供。遂には
辞任に追い込む。今またトランプ疑惑が高まる中、本作は歴
史の繰り返しを暗示するか? 出演はリーアム・ニースン、
ダイアン・レイン。製作、脚本、監督は元従軍記者という異
色な経歴のピーター・ランデズマン。公開は2018年2月24日
より、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『ジュピターズ・ムーン』“Jupiter holdja”
(カンヌ映画祭コンペティションに出品され、審査員だった
ウィル・スミスが絶賛したという作品。一応SF映画とされ
ているので僕としては大きく扱うべきなのだろうが、実態は
SFというより宗教的な側面が強く感じられるもので、取り
上げることを躊躇してしまう。特に主人公が行う人体浮遊が
奇跡とされるのは、イエスを考えるし、映画の中では天使を
観たという表現まで出てくる。つまり超能力ではないという
ことだ。しかも内容は全てを失った男が主人公によって救わ
れて行くもので、感動的なドラマにはなっている。監督は、
2010年“A Frankenstein-terv”という作品もカンヌ映画祭
に出品されたコーネル・ムンドルッツォ。公開は2018年1月
27日より、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年12月17日(日) ゆれる人魚

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ゆれる人魚』“Córki dancingu”
ディズニー作品『リトル・マーメイド』でもお馴染みハンス
・クリスチャン・アンデルセン原作『人魚姫』を現代風(?)
にアレンジしたポーランド映画。
物語の舞台は1980年代のワルシャワ。浜辺に遊びに来ていた
ミュージシャンのグループを海中から観た人魚姉妹の妹が、
グループの1人に目を留める。そして陸に上がった姉妹は乾
燥でひれを足に変え、ナイトクラブへと辿り着く。
そこで妹はミュージシャンに恋心を打ち明けようとするが、
彼の心は別の女性へと向いてしまう。そして彼の恋心を得ら
れなかった人魚の末路は…。大筋ではアンデルセンの原作に
沿っているが、多少味付けが異なる作品だ。

監督は、2007年に『アリア・ディーヴァ』という短編作品で
ニューヨーク映画祭など複数の映画祭で受賞している女流の
アグニェシュカ・スモチンスカによる長編デビュー作。脚本
も『アリア・ディーヴァ』に協力したロベルト・ボレスコが
担当いる。
出演は、2017年5月21日「フランス映画祭」で紹介『夜明け
の祈り』で修道女の1人を演じていたマルタ・マズレク、本
作の次の作品でチェコ・アカデミー賞の女優賞を受賞したミ
ハリーナ・オルシェンスカ。
他に2009年7月紹介『アンナと過ごした4日間』などのキン
ガ・プレイス、2014年『ドラキュラZERO』などに出演の
ヤーコブ・ジェルシャルらが脇を固めている。
映画祭に愛されるポーランド映画祭らしく、本作も2016年サ
ンダンス映画祭<ワールドシネマコンペティションドラマ部
門>審査員特別賞を始め、プレス資料によると世界の10箇所
以上の映画祭で受賞に輝いている。
とは言うものの、一般的な映画の感覚からするとどうなのか
な? 『リトル・マーメイド』のハリウッド的ハッピーエン
ドが原作の思想からかなり外れることは確かだが、本作の展
開も僕にはちょっと容認し切れない部分はあった。
でもまあ世界中の映画祭で受賞ということは、これが受けれ
られたのだろうし、それは認めるべきものなのだろう。それ
に1980年代を再現したというクラブの雰囲気は、それなりに
怪しげで逆に新鮮であったのかもしれない。
僕自身はそのクラブシーンに嵌ったことはないが、当時の映
画などで紹介された映像はこんなだったかなあと思わせるも
のではあった。しかし根本的な人魚の設定が…。こういうの
が最近の映画ファンには受けてしまうのかな?
2017年11月紹介『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ
・デル・トロは、見事に『人魚姫』を換骨奪胎してくれたと
思ったが。

公開は2018年2月10日より、東京は新宿シネマカリテ他で、
全国ロードショウとなる。

この週は他に
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
(アダルト雑誌を数多く手掛けた編集者末井昭の自伝エッセ
イを原作とする作品。末井の母親は彼が幼い頃に隣家の息子
とダイナマイト心中をしたとのことで、そのトラウマを抱え
て18歳で田舎を飛び出し、工場に勤めながらデザイン学校に
通い、風俗店の看板描きを出発点に雑誌の編集者になったの
だそうだ。そんな男の人生が警察の取り締まりとの攻防戦な
ども絡めて描かれる。出演は柄本佑、前田敦子、三浦透子、
峯田和伸、松重豊、村上淳。そして尾野真千子が母親役を演
じる。脚本と監督は2017年8月20日題名紹介『南瓜とマヨネ
ーズ』などの冨永昌敬。警察との攻防戦は面白いが、母親の
死を整理し切れていない感じが痛々しい。公開は2018年3月
17日より、東京はテアトル新宿他で全国ロードショウ。)
『ベロニカとの記憶』“The Sense of an Ending”
(2013年の長編デビュー作『めぐり逢わせのお弁当』が世界
的なヒットとなったインド映画の監督リテーシュ・パトラに
よる第2作は、イギリスでブッカー賞受賞作の映画化となっ
た。主人公は、年金暮らしで小さな中古カメラ店を営む高齢
の男性。弁護士の妻とは別居だが、今でも相談の出来る友人
として付き合っている。そんな彼の許にある女性の遺品を送
るとの手紙が届く。それは彼の学生時代の友人の日記帳だと
いうのだが…。それが彼の秘めた記憶を呼び起こす。出演は
ジム・ブロードベント、ハリエット・ウォルター、エミリー
・モーティマー、そしてシャーロット・ランプリング。名優
たちが見事なドラマを織り上げる。公開は2018年1月26日よ
り、東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『ロシア・アニメーション特集』
(「ロシアンシーズンズジャパン2017」の一環で上映された
もので、2013年12月紹介『ミトン』及び人気者のチェブラー
シカ初登場となった『ワニのゲーナ』のリマスター版と、同
作を生んだ「ソユーズムリトフィルム」の新作短編5本が上
映された。旧作は共に人形アニメーションだが、新作のテク
ニックは多岐に亙っており、内容も実験的なものもあってい
ろいろな模索が行われているようだ。そして上映に先立って
行われたトークショウでは、これらの作品では各国の映画祭
での受賞もしているとのこと。先に紹介している韓国や中国
なども含めて世界のアニメーション事情もいろいろ変化して
いるようだ。作品は大人も楽しめるものだったが、残念なが
ら一般公開は予定されていない。)
『泳ぎすぎた夜』
(1981年フランス生まれのダミアン・マニヴェルと、1983年
静岡県生まれの五十嵐耕平。すでに映画祭での受賞歴もある
2人が、冬の青森県を舞台に共同監督した作品。描かれるの
は6歳の少年。魚市場に向かう父親が早朝に出掛けた後、ふ
と目覚めた少年は海で泳ぐ魚の絵を描き始める。そして眠ら
ぬまま学校に向った少年は登校せず、列車に乗って冒険に飛
び出す。フィクションとしては面白い。ただ自分が子育てを
終えた親としては、この種の作品は親の気持ちになって落ち
着けなくなってしまう。本作はドキュメンタリーではないの
だから、その辺は割り切って観るべきなのだろうが…。公開
は2018年3月下旬より、東京は渋谷のシアター・イメージフ
ォーラム他にて全国順次ロードショウ。)
『ボリショイ』“Большой”
(「ロシアンシーズンズジャパン2017」の一環で上映された
作品。ソビエト連邦の時代から幾多の来日公演も行われてい
るボリショイバレエ団を背景にしたドラマ。主人公は貧しい
環境の生まれ、しかしダンスの天分を持ち、憧れだったボリ
ショイ劇場のバレエアカデミーに入学を許されるが…。ライ
ヴァルでもある親友や、トラブルの引き金になる老教師など
正しくメロドラマという物語が展開される。監督は、1989年
『令嬢ターニヤ』の監督を父に持つワレーリー・トドロフス
キー。撮影はボリショイ劇場の全面協力の許に行われ、中心
になる2人には共に現役のバレリーナが扮して、主人公らの
パフォーマンスも素晴らしい作品。日本公開を実現して欲し
い作品だ。)
『スリープレス・ナイト』“Sleepless”
(2012年6月10日「フランス映画祭2012」で紹介した“Nuit
blanche”のハリウッドリメイク版。前の紹介でフランス映
画らしさもあると書いたのが何処か忘れたが、本作は見事に
ハリウッド映画化されている。舞台はラスヴェガス。そこで
麻薬の強奪事件が起きる。その犯人は在ろうことか地元の警
察官だったが…。主人公の息子が拉致され、麻薬の奪還を求
められるなど、物語の大筋は同じだが、ラスヴェガスという
風景だけでリアリティが湧くというか、これは有だという雰
囲気が漂う。出演はジェイミー・フォックス、ミシェル・モ
ナハン。監督は2014年『ピエロがお前を嘲笑う』でブレイク
したスイス人のバラン・ボー・オダー。結末が違ったかな。
公開は2018年2月3日より、全国ロードショウ。)
『The Beguiled 欲望のめざめ』“The Beguiled”
(1971年にドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド
主演で映画化(邦題『白い肌の異常な夜』)されたトーマス
・カリナンの小説を、ソフィア・コッポラ監督が女性の視線
で再映画化した作品。出演はコリン・ファレル、ニコール・
キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニング。
他に登場するウーナ・ローレンス、アンガーリー・ライス、
アディソン・リーケ、エマ・ハワードはいずれも2000年以降
の生まれだが、それぞれ実績のある若手が起用されている。
1971年の作品は観たかどうか記憶にないのだが、本作は見事
に女性映画になっている。特に4人の若手女優がこれから伸
びてきそうだ。公開は2018年2月23日より、東京はTOHOシネ
マズ六本木ヒルズ他で全国ロードショウ。)
『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー]“戦狼2”
(2016年11月紹介『ドラゴン×マッハ!』などのアクション
俳優ウー・ジンが、2015年に製作総指揮、監督、主演で発表
した作品の続編。前作の日本公開はDVDのみのようだが、
本作では主人公の背景としてあるだけで物語は本作のみで楽
しめる。その内容はアフリカの新興国を舞台に、外国勢力に
操られる反乱軍に対して主人公が単独で戦いを挑むというも
の。その経緯も納得のできる作品だった。共演は2017年4月
紹介『パージ』などのフランク・グリロ。2人の対決も面白
い。他にセリーナ・ジェイド、ウー・ガン、チャン・ハンら
が共演。なお最後に『戦狼�掘戮旅霖里�出て、これは前作を
観ておく必要がありそうだ。公開は2018年1月12日より、東
京はTOHOシネマズ六本木ヒルズ他で全国ロードショウ。)
『デヴィッド・リンチ:アートライフ』
            “David Lynch: The Art Life”
(2007年5月紹介『インランド・エンパイア』などの監督の
デイヴィッド・リンチが、1976年『イレーザーヘッド』以前
の自分について語った作品。そこにアトリエでの絵画の制作
風景や、以前の自主映画の断片などが挿入される。ただここ
で自分自身をさらけ出しているかというとそれほどでもなく
て、聴き応えがあるという風でもなかった。実際、僕として
は1984年『砂の惑星』前後の話が一番聞きたかったもの。特
にアートという面では僕がMCを務めた来日記者会見で紹介
された「魚の解体」アートの実態なども知りたかった。本作
の監督には、是非とも続編を作って貰いたいと思うものだ。
公開は2018年1月27日より、東京は新宿シネマカリテ他で全
国順次ロードショウ。)
『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』“क्वीन”
(デリーの保守的な家に育った女性が結婚式の当日に婚約を
破棄され、失意の暮らしから一大決心の末に1人て出発した
ハネムーン(?)で、自己に目覚めて行く姿を描いたインド映
画。歌と踊りも満載の作品だが、実は試写で上映されたのは
2時間5分の国際版で、一般公開は2時間26分のオリジナル
版で行われるようだ。従って完全な評価はできないが、最初
は保守的な家族関係に辟易しながら観ている内に、主人公が
目覚めて行くことが爽快感も感じさせてくれた。さらに映画
はパリやアムステルダムでもロケが行われ、観光映画として
も楽しめるものになっている。公開は2018年1月6日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年12月10日(日) <TANIZAKI TRIBUTE>、スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット、野球部員、演劇の舞台に立つ!

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
<TANIZAKI TRIBUTE>
谷崎潤一郎の描いた3つの短編小説が3人の監督によって映
画化され、上記のタイトルで連続上映される。
『神と人との間』
主人公は田舎町の開業医。親友の売れない漫画家と共に2人
は熱帯魚屋の女店員に恋していたが、主人公は彼女を漫画家
に譲ってしまう。そして漫画家と女店員は結婚するが、漫画
家はすぐに愛人を作り、さらに主人公には妻との不倫をけし
かける。その行動はさらにエスカレートし…。

脚本と監督は、2016年『下衆の愛』などの内田英治。出演は
同作の渋川清彦と、2017年10月紹介『ゆらり』などの戸次重
幸。それに2017年11月26日題名紹介『ピンカートンに会いに
いく』などの内田滋。
谷崎の実体験に基づくともされる原作だが、映画化ではさら
にもう1人の登場人物を加えて、ちょっと不思議な感覚の作
品に仕上げられている。

『富美子の足』
富豪の老人がデリヘルで見つけた女性を愛人にし、特にその
女性の足を偏愛する。そしてフィギュア作家の甥に彼女の足
を等身大のフィギュアにすることを命じるのだが、甥が作る
フィギュアを気に入ることはなかった。そして何度も作り直
す甥にある提案をする。

脚本と監督は、2017年『天子のいる図書館』が文部科学省選
定作品になったウエダアツシ。出演は2017年9月17日題名紹
介『あゝ、荒野』などのでんでん、舞台女優の片山萌美と、
2017年4月2日題名紹介『ダブルミンツ』などの淵上泰史。
原作は2010年にも映像化されているようだが。原作では油絵
だったところをフィギュアにすることで、フェティシズムみ
たいなものがより強烈に表現されているように感じた。原作
の時代には考えられなかった展開が面白い。

『悪魔』
主人公は大学入学のため上京した若者。閑静な住宅街の家に
下宿するが、その家には大家の女性と高校生なのに不思議な
色香を醸す娘。そしてその娘を偏愛する親戚の青年がいた。
そして環境の変化に馴染めない主人公の部屋を、娘は度々訪
れるようになるが…。

脚本は山口健人。監督は2014年『オー!ファーザー』などの
藤井直人。出演は2017年9月24日題名紹介『ビジランテ』な
どの吉村界人と、2017年5月28日題名紹介『兄に愛されすぎ
て困ってます』などの大野いと。それに2013年12月紹介『仮
面ティーチャー』などの前田公輝。
この作品では悪魔は誰なのかが焦点になるが、本来なら家の
娘であるはずの設定が、映画では何となく親戚の青年のよう
にも見えて、その辺の微妙なところが気になった。監督があ
えてそうしたのなら、それもありだと思えるが。

公開は、1本目が2018年1月27日より、2本目が2月10日よ
り、3本目が2月24日より、いずれも東京はテアトル新宿他
で全国順次ロードショウとなる。

『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』
        “Starship Troopers: Traitor of Mars”
ロバート・A・ハインライン原作『宇宙の戦士』に基づき、
1997年に第1作が製作されて以降、ほぼ5年置きに製作され
ているシリーズの第5弾。2012年の前作からは日本人監督に
よるフルCGアニメーションで制作されているが、脚本はハ
リウッド製だ。
いつ終わるともしれない昆虫型生命体バグズとの闘いが続く
中、第1作からの主人公であるジョニー・リコは前線を離れ
てテラフォーミングされた火星で新兵の訓練に当っていた。
一方、その火星では地球による植民地支配から離脱する住民
運動も始まっていた。
そんな折、突如火星にバグズの群れが現れる。そこでリコは
新兵の小隊を率いてそれに立ち向かうことになる。その頃、
地球ではバグズと独立運動を一気に消滅させる計画が密かに
進められていた。斯くしてリコの小隊は、バグズと地球の両
方を敵に回すことになるが…。

公開は日本語吹替え版のみになるようだが、オリジナルでは
第1作の出演でブレイクしたキャスパー・バン・ディーンが
声優と製作総指揮も務めている。他にも第1作登場のディナ
・メイヤーが声優で復帰。そして脚本はシリーズ全作に関る
エドワード・ニューマイヤーが担当しているものだ。
1997年の実写版の第1作では、2015年6月紹介『エクストラ
テレストリアル』などの強面マイクル・アイアンサイドが主
人公らをしごく鬼軍曹に扮して、それが当時放送されていた
SFテレビシリーズのイメージとも重なって面白かったもの
だが、それを今回はリコが引き継いでいる感じかな。
その辺のオリジナルへのオマージュみたいなものも感じさせ
る作品になっている。
ただし、ハインラインが1959年に発表した原作は、パワード
スーツというアイテムで、後の『機動戦士ガンダム』などの
原点とも言われたものだが。映画化では第1作を除いてその
ようなイメージはほとんど消失してしまった。
従って映画は、舞台が宇宙なだけの普通の戦争映画といった
感じだが、そこで本作の地球政府が採る戦略みたいなものは
ちょっと短絡的に過ぎるかな。結末もこれでバグズを殲滅で
きるとも思えない。
特にせっかくテラフォーミング装置があるのならその機能を
利用した作戦もあると思うのだが…。とここまで書いて、ホ
ロコーストが思い浮んでしまった。それは正にジェノサイド
な訳だし、それをハリウッドでやるのはちょっと無理なのか
も知れない。
それにしても、太陽系内の惑星に橋頭保を築かれているのに
地球政府のこの対応は、常識的にはかなりやばすぎる訳で、
こんな政府の軍隊では、次回作も思いやられる感じかな。ま
あ5年後が楽しみになってきた。

公開は2018年2月10日より、吹替え版のみで2週間限定全国
ロードショウとなる。

『野球部員、演劇の舞台に立つ!』
福岡県八女市の高校教員が行った10年間に亙る実践記録に基
づく作品。その原作と10年前に出逢った独立プロ所属の中山
節夫監督が、同志のプロデューサーと共に歳月を掛けて地元
を巻き込み、実現に漕ぎ付けたという作品だ。
内容は題名の通りで、春の選抜出場を目指すも県の秋季大会
1回戦で逆転負けを喫した高校球児が、監督から自分たちに
足りないものを学べると言われ、こちらも全国大会を目指す
演劇部に参加するというもの。
その演劇部ではOBが執筆した脚本で、ボクシングをテーマ
にした演劇が創作されており、スポーツで鍛えられた身体の
出来ている球児たちが、主人公とそのライヴァルのボクサー
を演じることになるのだが…。

出演は、2015年3月紹介『忘れないと誓ったぼくがいた』な
どの渡辺佑太朗と、2013年『青空エール』などの舟津大地、
それに2017年4月2日題名紹介『ダブルミンツ』などの川籠
石駿平。3人はいずれも元高校球児だそうだ。
他に、2012年4月紹介『シグナル』などの柴田杏花、2015年
『リアル鬼ごっこ』などの佐々木萌詠、2017年3月12日題名
紹介『トモシビ』などの芋生悠。さらに林遣都、宮崎美子、
宇梶剛士らが脇を固めている。
この種の作品の場合、如何に説得力を持たせるかと、傍観者
にならざるを得ない我々に感動を与えられるかがポイントに
なると思えるが。その点では原作の実践記録に忠実であるこ
とが説得力の原動力と言える。
さらに監督が拘ったというスポーツで鍛え上げられた肉体が
そこにリアリティをもたらす。特に上半身をさらした瞬間の
背中は、これは本物だと思わせてくれたものだ。因に監督は
オーディションの後で筋肉の維持だけは要求したそうだ。
そして感動という点では、今年80歳という監督は実に巧みに
作品を作り上げている。それはフィクションに関る部分と思
われるが、それをあざとくなくナチュラルに描き切るのは、
ベテランの味と言えるものなのだろう。
一方、この種の地元協力の映画では、地元紹介の側面も持た
されるが、その点でもベテラン監督はそつがない。本作では
前半に八女茶の茶畑の緑の風景がインサート映像で巧みに紹
介され、それは清涼剤にもなっている。
そして後半では登場人物の実家という設定で「あまおう」と
電照菊が紹介され、特に電照菊は1本取られたという感じで
上手く織り込まれていた。なお地元は仏壇や石灯籠でも知ら
れるが、それらは高校生に合わないとして断ったそうだ。
地元の協力を得るというのも大変なようだが、本作ではプロ
デューサーの1人が7年間地元に住み込んで粘り強く話を進
めたそうで、そんな本作への想いが、作品にも見事に反映さ
れていると思える作品だった。

公開は2018年2月24日より、東京は渋谷ユーロスペース他、
Tジョイ久留米、小倉コロナシネマワールドなどで全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『コンフィデンシャル共助』“공조”
(北朝鮮で国家機密のドル紙幣の偽造原版が強奪され、その
真実は隠したまま、韓国警察に逃亡犯逮捕のための共助の要
請が届く。そしてちょうど停職中だった主人公に、北朝鮮刑
事に協力し監視する任務が命じられるが…。止めを刺すべき
相手にそうしなかったことで事件が起きる典型みたいな展開
で、やれやれと思ってしまったが。そこを除けば刑事2人の
バディムーヴィとしてはアクションもありで成立している。
ただ北の国家犯罪があからさまなのは、現在の両国の関係の
反映なのかな。韓国では大ヒットしたそうだ。出演は2006年
11月紹介『百万長者の初恋』などのヒョンビンと、名脇役の
ユ・ヘジン。他に「少女時代」のイム・ユナらが脇を固めて
いる。公開は2018年2月に全国ロードショウ。)
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』
(すでに公開されているため割愛)
『バーフバリ王の凱旋』“ಬಾಹುಬಲಿ 2:ದ ಕನ್‍ಕ್ಲೂಝ಼ನ್”
(2017年2月紹介『バーフバリ伝説誕生』の続編。原題にも
2とあるが、元々前後編として製作された作品のようだ。前
作で王家の元に戻った主人公が、国民の絶対的な支持や隣国
の美しい姫の愛などを得ながらも、兄との確執によって運命
に翻弄されて行く。そのような物語が壮大なセットや高水準
のVFXと共に展開される。その流れの中には実はかなり予
想外の展開もあって2時間21分の長尺も飽きさせなかった。
ただ物語には親子関係や国王の権限の在り方、奴隷の身分な
ど、多少判り難い部分もあったが、その辺は文化の違いでも
ある訳だし、柔軟に理解したい。でもまあトリッキーなアク
ションや何よりVFXでそれらをカヴァーしている作品とも
言える。公開は12月29日より、全国ロードショウ。)
『犬猿』
(会社の営業担当で生真面目な弟と粗暴なヤクザの兄。家業
を切り盛りする聡明な姉とタレント志望のギャルな妹。そん
な2組が織りなす人間模様。出演は窪田正孝+新井浩文と、
江上敬子+筧美和子。脚本と監督は2016年2月紹介『ヒメア
ノ〜ル』などの𠮷田恵輔。自分も少し歳の離れた兄がいる身
としては、本作ほどひどくはないにしても、こんな感じで面
倒臭かったなという想いにはなる。その辺は上手く描かれた
作品で、確かに犬猿の仲というのは有りそうだ。一人っ子も
多い時代には、正しく描かれるべき作品とも言えるだろう。
正直には面倒臭いだけで、本作のような結末はあまりないの
かもしれないが…。公開は2018年2月10日より、東京はテア
トル新宿他で全国ロードショウ。)
『巫女っちゃけん。』
(2011年『ハードロマンチッカー』などの下関出身、在日韓
国人二世グ・スーヨン監督が、福岡県の宮地嶽神社をロケ地
として撮った作品。宮司の娘で巫女を務めてはいるが全くや
る気のない主人公が、境内で悪戯を働く少年を介して徐々に
自己を啓発して行く姿が描かれる。出演は広瀬アリスとオー
ディションで選ばれた山口大幹。他にMEGUMI、飯島直子、リ
リー・フランキーらが脇を固めている。監督の以前の作品は
かなり過激なようで、本作は初めて人が死なない作品だそう
だ。とは言え本作の台詞はかなり過激だが、それがユーモア
として機能しているところは上手い。国宝もある神社がロケ
地というのもすごい作品だ。公開は2018年2月3日より、東
京は新宿武蔵野館他で全国ロードショウ。)
『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』“西遊記之大聖帰来”
(最近ではチャウ・シンチー監督作品や、ドニー・イェン主
演作品などもある中国の古典を3Dアニメーションで映像化
した作品。同じ題材のアニメーションでは手塚治虫の『悟空
の大冒険』や、近年では『ドラゴンボール』なども知られる
ものだが、アニメ=子供向けということではいろいろ工夫が
なされる。その方策として本作のように子供を語り手兼脇役
に据えるのは有りだと思うが、本作ではそれがあまり上手く
機能しているようには見えなかった。でもまあお子様向けと
いうことではこの程度でいいのかな。中国本国では2015年の
公開時に国産アニメーションでの歴代興行記録を打ち立てた
そうだ。日本公開は2018年1月13日より、東京は新宿ピカデ
リー他で全国ロードショウ。)
『サニー/32』
(2017年11月19日題名紹介『孤狼の血』の白石和彌監督が、
2013年『凶悪』の脚本家高橋泉と再び組んだ作品。因に本作
は、2人が2010年の監督デビュー以前に企画しできなかった
作品への再挑戦だそうだ。発端は13年前の女子小学生による
同級生殺害事件。ネットで犯人が特定され「かわい過ぎる殺
人者」と囃された事件だ。そして13年後、女性教師が拉致さ
れ、拉致犯は彼女をその殺人者だとするのだが…。事件はネ
ットを介して奇怪な様相を呈して行く。出演は先にNGT48
から卒業が発表された北原里英。他にピエール瀧、門脇麦、
リリー・フランキーら脇をが固めている。物語はネット配信
からドローンまで登場して正しく現代という感じのものだ。
公開は2018年2月17日より、全国ロードショウ。)
『生きる街』
(2015年8月紹介『木屋町DARUMA』などの榊英雄監督が夏木
マリを主演に招き、大震災から5年経った宮城県石巻を舞台
に描いた作品。主人公は津波で夫を失った女性。娘と息子が
いるが、娘はヴォランティアで来た男性と結婚して名古屋で
暮らし、息子も街に出たまま家に寄り付こうとしない。そし
て本人は、借り受けた高台の家で民宿を開いていた。共演は
佐津川愛美、堀井新太、イ・ジョンヒョン。他に岡野真也、
吉沢悠、升毅、原日出子らが脇を固めている。震災から6年
経って記憶は心の隅に追いやられている感もあるが、本作で
その現実が改めて胸に突き刺さってきた。韓国人を絡めた脚
本も巧みな作品になっている。公開は2018年3月3日より、
東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『目撃者 闇の中の瞳』“目撃者”
(台湾製の心理サスペンス。主人公が購入した中古車はある
事故の被害に遭っていた。その事故に興味を持った主人公は
経緯の調査を始めるが、それは驚愕の事実を彼に突き付ける
ことになる。話の展開は確かに面白い。だが主人公の意図や
心情が判り難い。それでも物語的にありだと言われれば仕方
がないが、人間性を無視した展開は観ていて居心地が悪いも
のだ。もっともこのように人間性の欠如した連中が増えてい
るというメッセージなら、それもありではあるが…。出演は
共に新進のカイザー・チュアンとティファニー・シュ。他に
2010年11月紹介『モンガに散る』などのアリス・クーらが脇
を固めている。公開は2018年1月13日より、東京は新宿シネ
マカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『パディントン2』“Paddington 2”
(2017年6月に亡くなったイギリスの作家マイクル・ボンド
原作による人気シリーズの映画化で、2014年本国公開作品の
続編。前作はペルーからイギリスにやってきた主人公が、ブ
ラウン家で暮らすまでを描いたものだったが。本作ではいよ
いよロンドンでの彼の活躍が描かれる。そして今回はペルー
で暮らす養母の100歳の誕生日に贈り物をするというテーマ
で骨董品の飛び出す絵本を選ぶのだが、それが大冒険を招き
寄せる。出演はベン・ウィショー(声)と、サリー・ホーキン
ス、ジュリー・ウォルターズ、サミュエル・ジョスリン、マ
デリン・ハリス、ヒュー・ボネヴィル。他にヒュー・グラン
ト、ジム・ブロードベント、ブレンダン・グリースンらが登
場する。公開は2018年1月19日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年12月03日(日) ロープ 戦場の生命線、レディ・ガイ、ホペイロの憂鬱

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ロープ 戦場の生命線』“A Perfect Day/El pozo”
1995年、停戦直後のバルカン半島で人道支援に携わる人々の
姿を描いたヒューマンドラマ。僕自身が今年観てきた500本
を超える映画の中で、ベストの1本と思える作品。
映画の開幕は、井戸から遺体を引き上げているNGO隊員の
様子。しかし水膨れした遺体の重さに耐えかねた古いロープ
が途中で切れてしまう。そこで本部に連絡するなどロープの
調達を始める隊員たちだったが…。
外国人には物資を売ろうとしない商店やくすぶり続ける住民
感情など、様々な要因が彼らの行動を阻んで行く。そしてさ
らに彼らの行動の是非を判断する女性査察官もやって来る。
彼女はチームリーダーと特別な関係にもあった。

出演は、2012年7月紹介『セブン・デイズ・イン・ハバナ』
などのベニチオ・デル・トロ、2011年7月紹介『グリーン・
ランタン』などのティム・ロビンス、2017年4月23日題名紹
介『ザ・ダンサー』などのメラニー・ティエリーと、2013年
4月紹介『オブリビオン』などのオルガ・キュリレンコ。
製作と脚本、監督は、スペインのアカデミー賞ゴヤ賞で多数
の受賞に輝くフェルナンド・レオン・デ・アラノア。名匠と
呼ばれる監督が自身のプロダクションで作り上げた作品だ。
巻頭の水場を汚すために投げ込まれた遺体という展開では、
1962年『アラビアのロレンス』でオアシスの泉に投げ込まれ
たラクダの死体を思い出した。そこで何故に人間なんだ…?
という疑問が湧いたが、その直後に「動物は食料になる」と
の台詞があって衝撃を受けた。ここでは人間の価値が家畜以
下なのだ。
そんな衝撃からスタートした作品だが、映画ではティエリー
の演じる新人隊員の目線が正に観客に一致しており、それが
観ていて僕らの理解を深めてくれる感じがした。その点では
極めて優れた作品と言える。
しかもそこに豊かなユーモアも散りばめられたもので、それ
をデル・トロとロビンスが的確且つ絶妙に演じ切っている。
そのユーモアが現実のシビアさを描く上で全くそれを阻害せ
ず、却ってそれを際立たせている点にも感心した。
この他にも自分が今まで夢にも考えなかった事象が次々に描
き出され、それを描き切る勇気にも感動する作品だった。
そして何より素晴らしいのは結末。それはあー言っちゃった
という感じの台詞から始まるのだが、その先に何とも言えな
いエンディングが訪れる。これにはカンヌ映画祭でのスタン
ディングオベーションも頷ける、見事な結末だった。

公開は2018年2月10日より、東京は新宿武蔵野館、渋谷シネ
パレス他で全国ロードショウとなる。

『レディ・ガイ』“The Assignment”
『エイリアン』シリーズの製作者に名を連ねるウォルター・
ヒル監督の2012年『バレット』以来となる最新作。
一時期はハリウッドを代表するアクション映画の人気監督の
1人と言えたヒルだが、僕が彼の作品を観るのは、2000年に
トーマス・リー名義で発表された『スーパーノヴァ』以来と
なる。その前は1997年の『用心棒』リメイク=『ラストマン
・スタンディング』かな。
そんなヒル監督の新作はかなり捻りの利いたアクション作品
だった。
まず登場するのは拘束衣に縛られた女医。違法な手術をした
として告発されている彼女は、それが革新的な研究だったと
主張する一方で復讐のためだったことも認める供述を行う。
そして彼女が逮捕された状況を供述するが、彼女が真犯人と
する殺し屋の存在が不明だった。
しかも違法とされる手術の被害者も見つかっておらず、その
供述も曖昧で、そのため彼女は精神病院に収容されているの
だ。そんな彼女の証言に従って、事件の全容が明らかにされ
て行く。それは女医の弟が殺し屋に襲われるところから始ま
る復讐劇だが…。
一方、名うての殺し屋フランク・キッチンはマフィアの指示
で女医の弟に制裁を加えたが、その女医がマフィアにとって
の重要人物だったために逆に彼自身が狙われることになる。
そしてマフィアに拘束され女医の許に連れて行かれたフラン
クは、女医の手術の被害者になってしまう。
斯くして包帯でぐるぐる巻きにされ、安ホテルの部屋で目覚
めたフランクは、自分が性転換手術を施されたことを知る。
これにより女性になったフランクは女医への復讐を誓う。

出演は、『バイオハザード』から『ワイルドスピード』まで
アクション映画に欠かせない女優ミシェル・ロドリゲスと、
『エイリアン』でアクション映画の女王とされたシガニー・
ウィーヴァー。因にヒルが自らの監督作品で女優を主演者に
するのは初めてだそうだ。
他に、2017年11月12日題名紹介『ジャコメッティ』などのト
ニー・シャループ、2017年8月13日題名紹介『アナベル』な
どのアンソニー・ラパリア、2012年『スマイリー』などのケ
イトリン・ジェラードらが脇を固めている。
原案にも名を連ねるヒルは、1970年代に持ち込まれた企画か
ら当時のグラフィックノヴェル化も手掛けたそうで、本作は
その長年の企画を実現したものだ。そして当初はゲイ男優の
主演も考えたが、ロドリゲスの出演を得て本作を完璧なもの
にしている。
そのロドリゲスは、前半ではかなり巧みに男性の殺し屋を演
じており、製作前には企画に対してトランスジェンダーから
の批判もあったようだが、その批判を黙らせる演技力を見せ
つけている。

公開は2018年1月6日より、東京は新宿シネマカリテ他にて
全国順次ロードショウとなる。

『ホペイロの憂鬱』
2003年公開『T.R.Y.』の原作者でもある井上尚登が、2009年
に東京創元社で発表した小説の映画化。因に作者は夕刊紙に
コラムを持つほどのスポーツ通だそうだ。
主人公はJ3リーグ所属サッカーチームの用具係。経験は浅
いが研究熱心で、用具の様子から選手の不調を見破ることも
できる。ところが勝てばJ2昇格という大事な試合の前に社
長室に呼ばれ、J2に昇格したら用具係は続けられないと告
げられる。
その一方で、ベテラン女性広報の下に若い新人女性が入って
きたり、街に貼られた試合の告知ポスターが破られたり、さ
らには監督のジンクスのぬいぐるみのクマが消えたり。様々
な事件が主人公の周囲で巻き起こる。果たして主人公はこれ
らの難問を解決できるか? そして主人公の運命は…?

出演は、2017年7月紹介『東京喰種トーキョーグール』など
の白石隼也と、2013年11月紹介『バイロケーション』などの
水川あさみ。他に永井大、2011年1月紹介『心中天使』など
の郭智博、「王様のブランチ」リポーターの小室ゆら。
さらに菅田俊、川上麻衣子、白川和子、佐野史郎らが脇を固
めている。
監督は大阪藝術大学・映像学科卒業、前作『少年モン、本当
の名前は知らない』で2016年福井映画祭審査員特別賞受賞の
加治屋彰人。脚本は、2010年8月紹介『アブラクサスの祭』
などの佐向大と、アニメーション監督のサトウタツオ、それ
に監督が手掛けている。
映画は、撮影協力もしたJ3リーグのSC相模原をモデルに
しているようで、僕はその南隣のチームのサポーターだが。
長年チームを応援してきた目で観ていると、水川が演じる女
性広報にはこちらのチームの元広報も髣髴とさせてニヤリと
してしまった。
その他にも、応援の様子やその応援団の掲げる横断幕の文字
の濁点が微妙だったりするのは、言ってみればJリーグある
あるみたいなもので、その辺は良く研究されて描かれている
感じがした。
ただ、宣伝コピーにもなっている「負けたらクビ! 勝って
もクビ?!」というのが、映画のように新規の親会社の意向と
いうのは、確かにJリーグでもない訳ではないが。これは一
般企業でもある話で、ここはもっとJリーグに特化したもの
にして欲しかった。
特にJ3からJ2に上がる場合は、J2ライセンスの取得の
関係でプロ契約選手の人数を増やす必要があり、そこで予算
規模が変わらなければ、用具係のような立場の弱いスタッフ
にしわ寄せがくる。そんな話を過去にも聞いたことがある。
そんなサッカー界に特化した展開も欲しかったところだ。
それともう1点。事件の要部となるサッカーボールの軌道は
VFXなどで具体的に示して欲しかったものだが。これは製
作費の都合で無理だったのかな? この辺が少し残念に思わ
れたものだ。

公開は、2018年1月6日からMOVIX橋本での先行上映の後、
1月13日より、東京は角川シネマ新宿他での全国順次ロード
ショウとなる。

この週は他に
『ラーメンヘッズ』
(2006年に千葉県松戸に開業したつけ麺屋「とみ田」。その
10周年記念のイヴェントを中心に描いたドキュメンタリー。
海外の映画祭で話題になったという作品。基本的に中華麺は
嫌いではないし、以前は行列のできる店に並んで食べたこと
もあるが、最近はそんな暇もない感じかな。とは言えここに
紹介された店にわざわざ行く気も湧かなかった。と言うか、
観ていて店主らの凄さは判るが、何か本質のようなものが伝
わってこない。特に後半のイヴェントに関る部分では、テレ
ビの宣伝ドキュメンタリーを観ているような気分になった。
でもまあ海外で評価されたというのは、日本文化を紹介する
上では適当な作品なのかな? 公開は2018年1月27日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『プリンシパル 恋する私はヒロインですか?』
(いくえみ綾原作・少女コミックスの実写映画化。主人公は
両親が離婚し、母親との都会生活に行き詰り、北海道の父親
の許にやって来た少女。その転入した高校で彼女はイケメン
男子コンビに出逢う。その1人は彼女の家の隣人、もう1人
は彼の幼馴染で毎朝彼の家まで迎えに来る。こうして彼女は
通学路で一緒になるが…。男子コンビは全校女子生徒の憧れ
の的。そこで主人公は全校女子を敵に回すことになる。出演
はNHKでも主演を張る黒島結菜とジャニーズWEST小瀧
望。他に高杉真宙と川栄李奈。監督は2017年2月5日題名紹
介『花戦さ』などの篠原哲雄。男子コンビがBLかと思いき
やそこをさらりと抜けて、意外と爽やかで巧みな物語になっ
ていた。公開は2018年3月3日より、全国ロードショウ。)
『ニワトリ★スター』
(2008年4月紹介『ハブと拳骨』では原案、クリエイティブ
ディレクターなどを務めたアーティストのかなた狼が、自ら
の原作を初監督した作品。2008年の東京新宿の安アパートを
舞台に、社会を逸れて生きる2人の男と他の住人たちのちょ
っと危ない世界が描かれる。出演は、2017年9月3日題名紹
介『光』などの井浦新と、2016年12月11日題名紹介『キセキ
あの日のソビト』などの成田凌、それにモデル出身で2017年
ミュージカル「RENT」に出演したという紗羅マリー。他に津
田寛治、奥田瑛二、LiLiCoらが脇を固めている。多少SF的
な場面があるが、本編には直接関らない。でも見所にはなっ
ていたかな。公開は2018年3月17日より、東京はヒューマン
トラストシネマ渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『DEVILMAN crybaby』
(2017年10月22日題名紹介『マジンガーZ』に続く永井豪画
業50周年記念リブート作品。1972年連載開始の原作はテレビ
アニメとの連動企画で表現などにかなり規制があり、原作者
の想いなどは明瞭には出されなかったようだ。そして放送終
了が先であったことから、映像は結末まで描かれなかった。
それを今回は始まりから結末まで完全に描くというものだ。
ただし試写が行われたのは全10話とされるシリーズの3話ま
でだが、確かに当時のテレビでは描けなかったシーンも満載
の作品だった。とは言うものの監督は2017年3月紹介『夜は
短し歩けよ乙女』などの湯浅政明が担当しており、その独特
のムードが作品に新たな味わいも加えている。公開は2018年
1月5日(JST)より、Netflixで全世界同時配信となる。)
『息衝く』
(2008年12月紹介『へばの』の中村文洋監督が、その10年後
に再び挑んだ原子力施設を巡る物語。ただし今回はそこに政
権と結託する宗教団体を配置し、原子力問題を別の角度から
も追及して行く。主人公は宗教団体幹部の選挙活動に従事す
る男性。元々は親が帰依したためそこに居たものだが、幼い
頃の指導者だった幹部の選挙では成功を収めていた。しかし
その幹部は失踪した。そして今回はその幹部の地盤も使って
新たな幹部を当選させるが…。そこには様々な思惑が渦巻い
ていた。監督は2012年にオウム真理教を扱った作品も発表し
ており、本作で言いたいことは理解する。しかしちょっと論
点が分散しているかな。公開は2018年2月下旬より、東京は
ポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)
『愛の病』
(2002年に起きた「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」の
実話に基づくドラマ作品。サイトでサクラを演じていた女性
が、アクセスしてきた男性を騙して犯罪を実行させる。まさ
かと思うような低レベルの事件でいやはやとしか言いようが
ない。しかも実話に沿った映画化では全く説得力がなく、も
う少し別のものも描けたのではないかとは思ってしまった。
出演はモデル出身で舞台でも活動する瀬戸さおりと、2017年
8月27日題名紹介『氷菓』などの岡山天音。他に劇団 EXILE
の八木将康。さらに山田真歩、佐々木心音、藤田朋子らが脇
を固めている。監督は2014年5月紹介『女の穴』などの吉田
浩太。公開は2018年1月6日より、東京はシネマート新宿他
で全国順次ロードショウ。)
『アバウト・レイ 16歳の決断』“3 Generations”
(2017年10月紹介『パーティで女の子に話しかけるには』な
どのエル・ファニングがトランスジェンダーを演じるドラマ
作品。主人公はシングルマザーの母と、レズビアンの祖母と
共に暮らす少女。彼女は自分の性別に違和感があり、16歳で
性転換を決断する。しかし未成年が手術を受けるには両親=
父親の同意も必要となり…。共演はナオミ・ワッツとスーザ
ン・サランドン。脚本と監督は多くの短編を手掛け、2005年
の長編第2作はサンダンス映画祭のオープニングを飾ったと
いうゲイビー・デラル。テーマに沿ってファニングがボーイ
ッシュな容姿を見せたりもするが、全体は今を生きる女性を
温かく描いた作品だ。公開は2018年2月3日より、東京は新
宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
また<TANIZAKI TRIBUTE>と題された2作品を観ているが、
残る1本と共に次回に紹介します。


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井口健二