井口健二のOn the Production
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2017年03月26日(日) ReLIFE、メッセージ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ReLIFE』
ダウンロード数が1400万件を突破しているという国内最大級
のComic-Novelサイト〈comico〉で開設当初から連載されて
いる夜宵草原作の映画化。
主人公は27歳でニートの男性。大学を出て就職したが、ある
事情で辞職した。そして再就職もままならず貯金も尽きかけ
ているが、その状況を大学の同期生に誘われた飲み会でも話
すことができない。
そんな彼が酔って帰宅中、1人の若い男が声を掛けてくる。
その男は彼にカプセル剤を差し出し、「人生をやり直してみ
ませんか?」と持ち掛ける。その薬は飲んだ人の容姿を10歳
若返らせ、高校に再入学することができるのだという。
そしてそれは1年間の期限付きの実験で、その期間の彼の行
動が研究の対象となる。さらに実験が終了した後は元の年齢
に戻れると共に、その際に再就職も斡旋してくれるというも
のだった。
そんな胡散臭い実験に、酔った勢いもあって参加してしまう
主人公だったが…。再入学した高校では兎に角目立たないま
ま1年を過ごそうとした主人公は、生徒間のいろいろな状況
に徐々に巻き込まれて行く。

主演は、2016年11月紹介『きょうのキラ君』などの中川大志
と平祐奈。共演に、2012年2月紹介『桜蘭高校ホスト部』な
どの千葉雄大、2012年1月紹介『レンタネコ』などの市川実
日子。
さらに夏菜、高杉真宙、池田エライザ、岡崎紗絵、水崎綾女
らが脇を固めている。脚本は「日本テレビシナリオ登竜門」
に入選後、多数のテレビドラマを手掛けている阿相クミコ。
監督は、2011年4月紹介『アベック・パンチ』などの古澤健
が担当している。
2015年8月に同じ題名のアメリカ映画を紹介しているが、そ
の作品もSFファンにはお勧めしたい作品だった。そして本
作も、SFファンにはちょっと気になる展開の作品になって
いる。
それは宣伝チラシにもプレス資料にも「SF」という文言は
記されていないのだが。本作に登場するカプセル剤は明らか
にSFの産物と言えるもので、さらにその副作用が実にSF
ファンの心に触れるものなのだ。
2017年2月紹介『パッセンジャー』の時にも書いたが、SF
の設定でしか描けないラヴストーリーは、SFファンだから
こそ味わえる醍醐味だと言える。それがこの作品には描かれ
ている。そんなことでも認めたい作品だ。
ただ声高にSFと主張することが本作にプラスかどうか判ら
なかったが、実は試写後に宣伝担当者から僕の素性を知った
上での意見を求められたもので、僕はSFとしてちゃんと評
価できると答えた。
それはもちろん本格SFと言えるほどのものではないが、こ
の作品をSFと理解して貰えていることには、嬉しく感じた
ものだ。
なお題名に関しては、〈comico〉の開設は2013年10月だそう
で、その当初からの連載であるなら本作の原作の方が上記の
アメリカ映画に先行していることになる。

公開は4月15日より、全国ロードショウとなる。

『メッセージ』“Arrival”
1999年のスタージョン賞と2000年ネビュラ賞中長編小説部門
を受賞した中国系アメリカ人作家テッド・チャンの原作小説
“Story of Your Life”(邦題『あなたの人生の物語』)の
映画化。
主人公は女性の言語学者。以前にも軍に協力したことのある
彼女に新たな要請が来る。それは世界各地に飛来したUFO
の乗員の言語を解明して欲しいというものだった。そこで彼
女は、アメリカ国内に飛来したUFOの現場に赴く。
そのUFOは草原地帯の一点に留まり、地上から数mの高さ
に浮遊していた。そして18時間毎にUFOの下部に開口が開
き、そこから内部に侵入できるのだ。その内部で主人公らは
2体の異星人と相対する。
その異星人は音声と図形で言語を操り、特にその図形を解明
するべく主人公らは作業を開始するが…。そこには驚愕の体
験が待ち受けていた。さらに同じくUFOの飛来した中国や
ロシアなどとの外交や軍事の駆け引きなどが描かれて行く。

出演は、2014年4月紹介『her/世界でひとつの彼女』など
のエイミー・アダムス、2014年1月紹介『エヴァの告白』な
どのジェレミー・レナー、2014年6月紹介『ケープタウン』
などのフォレスト・ウィティカー。
脚色は、2010年5月紹介『エルム街の悪夢』(リメイク)な
どのエリック・ハイセラー、監督は、2016年1月紹介『ボー
ダーライン』などのドゥニ・ヴィルヌーヴが担当した。
地球に飛来した異星人とのファースト・コンタクトを描いた
作品では、何と言っても1977年の『未知との遭遇』が一番の
話題作だろう。あの作品でも音声や視覚を通した意思疎通の
手順が描かれたが、本作はさらにそれを追求したものだ。
そして原作小説では、言語学的な理論に基づく様々な探求が
行われ、その進捗の過程の描写がSFとして評価されている
ものと思われる。僕は原作に直接当っていないが、周囲の情
報からそのような印象を受けた。
さてそこで今回の映画化に関しては、恐らく原作小説を読め
ば上述の点は容易に理解できると思われるが、映画だけでそ
の全てを理解するのはかなりハードルが高い。しかし映画で
は、その点を映像で巧みに補っているようにも思える。
その辺でSF好きかどうかで微妙に評価が分かれてくるとも
思える。ただし全体の背後に流れる物語に関しては、映画だ
けでは少し説明が足りないようにも思われ、特に時制に関し
ては、英文法との絡みで日本人には不得手に思えた。
でもまあそんなことも映像で幻惑されたまま観てしまえば、
それはそれで構わないような感じもするものだが…。取り敢
えず提示される映像は面白かった。

公開は5月19日より、東京はTOHOシネマズ六本木他で、全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『ある決闘-セントヘレナの掟-』“The Duel”
(『ハンガー・ゲーム』のリアム・ヘムスワースと、2016年
7月紹介『グランド・イリュージョン』などのウッディ・ハ
レルスン共演で、19世紀中葉のリオグランデ河岸を舞台にし
たダークなウェスタン。アメリカが仕掛けた戦争で新たな国
境とされた河に複数のメキシコ人の遺体が上がる。その中に
は行方不明だった将軍の甥も含まれ、その調査が元テキサス
レンジャーの男に託される。その調査の対象は彼と因縁の或
るカルトの教祖だった。そしてその教団の村に彼はメキシコ
人の妻と共に潜入するが…。2017年3月12日題名紹介『ノー
・エスケープ』にも通じる話で、今の時期に続けてこのよう
な作品が出てきたのも興味深い。公開は6月10日より、東京
は新宿バルト9他で全国順次ロードショウ。)
『心に吹く風』
(韓流ブームの切っ掛けとも言われるドラマ『冬のソナタ』
を手掛けたユン・ソクホ監督初の劇場映画。その作品が日本
で作られた。舞台は北海道。写真家の男性がその風景を撮り
にやって来る。しかし友人に借りた車がエンストし、訪ねた
家にいたのは数10年前の学生時代に彼が愛した女性だった。
そして彼女を撮影の案内人兼アシスタントとして2人の行動
が始まるが…。美しい背景の中での報われぬ恋愛物語。正し
く『冬ソナ』の世界が展開される。まあ1本だけの映画では
ドラマのようなたっぷりとした情感には浸れないが、ファン
にはその雰囲気は伝わりそうだ。出演は2016年10月9日題名
紹介『愚行録』などの眞島秀和と、映画出演は10数年ぶりと
いう真田麻垂美。公開は6月、全国ロードショウ。)
『シチリアの恋』“谎言西西里”
(中国上海とシシリア島を舞台にしたかなり捻りのある恋愛
ドラマ。主人公は上海のデザイン会社に勤める中国人女性。
彼女は同僚の韓国人男性と恋仲だったが、突然彼に「別れよ
う」と言われ、彼はイタリアに行ってしまう。そんな彼の仕
打ちに悲嘆する彼女だったが、さらに彼女は彼なしには何も
できない自分に気が付く。そこに彼の葬儀の通知が届き…。
出演は、2011年5月紹介『サンザシの樹の下で』などのチョ
ウ・ドンユイ、2008年3月紹介『光州5・18』などのイ・
ジュンギ。監督は、台湾出身でドキュメンタリー映画での受
賞歴なども持つリン・ユゥシェン。前半はかなりベタな恋愛
劇で心配したが後半の捻りは。見事だった。公開は4月22日
より、東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『パトリオット・デイ』“Patriots Day”
(2013年4月15日、アメリカの祝日に開催されるボストンマ
ラソンで起きた爆弾テロ事件と、その犯人逮捕までの様子を
描いた実録作品。ピーター・バーグ監督とマーク・ウォール
バーグ主演は2017年3月5日題名紹介『バーニング・オーシ
ャン』と同じ顔合わせで、2013年の『ローン・サバオバー』
と併せて実録3部作と呼ばれている。因に1本目の試写は観
たが、戦争映画であり紹介は割愛した。実録物というのは無
視できない実話が背景にあり、その表現に限界が生じる。そ
こに如何にフィクションを持ち込むかが勝負だと思うが、本
作では少年の遺体を巡るエピソードが秀逸だった。共演はケ
ヴィン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J.K.シモンズ、
ミシェル・モナハン。公開は6月、全国ロードショウ。)
『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』
         “Robert Doisneau: Through the Lens”
(2017年3月5日題名紹介『Don't Blink』に続いての写真
家の足跡を追ったドキュメンタリー。写真家を有名にしたの
は1950年に撮影された「パリ市庁舎前のキス」。Life誌の依
頼で撮ったこの写真は1980年代にポスターにもなり、一躍そ
の名を世界的にした。そんな写真家の業績を孫娘である監督
が愛情をこめて描いて行く。そこには35万点に及ぶという中
からの選択された作品と共に、本人のアーカイヴ映像や日本
人を含む関係者へのインタヴューなども挿入されている。そ
の中では本人が語る制作の意図や、題名にも掲げられた3秒
の意味には成程と思わされた。公開は4月22日より、東京は
恵比寿の東京都写真美術館ホール、渋谷ユーロスペース他で
全国順次ロードショウ。)
『いつまた、君と』
(俳優向井理の企画出演により「何日君再来」の歌に載せて
戦後の混乱期を生き抜いた庶民の姿を描いた作品。原作は向
井の祖母が書いた自叙伝によるもので、映画の中にも登場す
る孫息子の行為が向井本人のもののようだ。そこには苦労に
苦労を重ねた戦後の庶民の暮らしぶりが描かれている。僕自
身の両親が同じような時期を過ごしてきたからそれなりに思
うところもあるが、それよりもこんな暮らしを強いられた当
時の人々を思いやるべきだろう。主演は尾野真千子。共演に
は岸本加世子、駿河太郎、イッセー尾形、野際陽子らの顔触
れが並ぶ。脚本は『ゲゲゲの女房』などの山本むつみ。監督
は2017年2月紹介『サクラダリセット』などの深川栄洋が担
当した。公開は6月24日より全国ロードショウ。)
『潜入者』“The Infiltrator”
(2016年4月紹介『トランボ』などのブライアン・クランス
トン、2011年4月紹介『アンノウン』などのダイアン・クル
ーガー、2012年5月紹介『リンカーン弁護士』などのジョン
・レグイザモ共演で、全米の麻薬組織を壊滅に導いたという
潜入捜査の実話に基づく作品。2時間7分の作品だが、その
時間を感じさせない綿密な作戦が描かれ、さらにまるで漫画
のような結末には「これが実話か…」と思わせる痛快な作品
になっている。監督は『リンカーン弁護士』のブラッド・フ
ァーマン、脚本は本業は弁護士というエレン・ブラウン=フ
ァーマン。捜査対象を途中で麻薬からマネーロンダリングに
替えるなど実感のある作品だ。公開は5月13日より、東京は
ヒューマントラストシネマ渋谷他で、全国ロードショウ。)
『ブラッド・ファーザー』“Blood Father”
(メル・ギブスンの主演で、組織に追われる実娘を救うため
奔走する父親の姿を描いた作品。主人公は仮出所中でトレー
ラーハウスに暮らす入れ墨師。断酒を誓い、細々と暮らす男
の許に行方不明だった実娘から電話が入る。その実娘の危機
を救うため男は長年培ってきたサヴァイヴァル術で戦いを挑
むことになるが…。ギブスンが大型バイクを乗り回すなど、
往年の姿も思い出させる作品だ。共演は同時期に別の作品も
あるエリン・モリアティ、2013年8月紹介『エリジウム』な
どのディエゴ・ルナ、2012年5月紹介『リンカーン弁護士』
などのウィリアム・H・メイシー。監督は、2009年10月紹介
『ジャック・メスリーヌ』などの俊英ジャン=フランソワ・
リシェ。公開は6月3日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年03月19日(日) 夜は短し歩けよ乙女/夜明けを告げるルーのうた、いぬむこいり

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『夜は短し歩けよ乙女』
『夜明けを告げるルーのうた』
2004年公開の長編デビュー作『マインド・ゲーム』で文化庁
メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した湯浅政明
監督による新作2作品が相次いで公開される。
まず1本目は、累計発行部数が130万部を超えているという
森見登美彦原作の映像化。京都を舞台に一夜の冒険物語が描
かれる。
登場するのは気弱な大学生(先輩)と後輩の黒髪の乙女。先
輩は乙女を気に入っているが、気弱なためにそれを告白する
ことができない。そこで先輩はなるべく乙女の目に留まるよ
うにする「ナカメ作戦」を実行していた。
そんなある日、先輩は乙女の思い出の絵本の情報をキャッチ
してその絵本を古本市で見つけ出し、彼女にプレゼントしよ
うと思い立つ。しかしそれは並大抵の努力だけでは実現でき
ないことだった。
一方、乙女は実はかなりの酒豪で、面白いことを探して夜の
京都を歩く内、不思議な冒険に巻き込まれる。そこには学園
祭を巡る主導権争いやゲリラ演劇を実行するグループ、さら
には謎の大富豪などがいて…。

声優は、先輩役にいま評判の星野源が初単独主演、乙女役は
声優賞を数多く獲得している花澤香菜。他に神谷浩史、中井
和哉、甲斐田裕子、吉野裕行。さらにお笑いトリオ・ロバー
トの秋山竜次、ミュージカル女優の新妻聖子らが脇を固めて
いる。
京都は最近行く機会が多くて、それなりの土地勘も出来てき
たが、描かれる風景や、さらにテーマの一部が古書に纏わる
ものだったり、ホルヘ・ルイス・ボルヘスを思わせるところ
もあるなど、僕には楽しめる作品だった。

そして2本目は、湯浅監督初のオリジナル脚本による作品。
物語はとある漁港を舞台に、人魚伝説に纏わるかなりファン
タスティックなストーリーが展開される。
登場するのは、両親の離婚で鬱屈した生活を送っている男子
高校生。彼はそんな気持ちをネットに自作の曲をアップする
ことで解消していたが、その正体を学友に見破られ、彼らの
バンドの練習に付き合わされる。
その練習は港の沖の人魚島で行われていたが、彼らの練習が
始まると人魚のルーが現れて楽しそうに踊り始めた。そして
主人公はルーと行動を共にする内、徐々に自分のモヤモヤが
消えて行くのを感じていたが…。
彼らの暮らす町にとって人魚は災いをもたらす存在だった。
それは悪気があってのことではなかったのだが。

声優は、共に子役出身の下田翔大と谷花音。さらに柄本明、
柔道家の篠原信一。声優の寿美菜子、斉藤壮馬、お笑い芸人
千鳥の大悟、ノブらが脇を固めている。
アニメは日本の文化みたいな風潮だが、最近の大ヒット作は
いずれも実写でも出来るものをわざわざアニメーションにし
ている感が拭えず、手塚治虫さんなら眉を顰めるだろうとい
う思いがしていた。
それに対してこの2作は、いずれもこれぞアニメーションと
いう感じの作品で、これなら手塚さんも認めるのではないか
な。そんな観ていて実に心地の良い作品だった。

公開は1本目が4月7日より、2本目は5月19日より、いず
れも全国ロードショウとなる。

『いぬむこいり』
プロデューサーとして鈴木清順監督の諸作やテレビ特撮シリ
ーズ『鉄甲機ミカヅキ』なども手掛けた片嶋一貴脚本・監督
による上映時間245分、ファンタシーの要素もある作品。
主人公はアラフォーの女小学校教師。彼女の実家には、武勲
を挙げた忠犬が姫を娶ろうとし、それを受け入れた姫と共に
島流しになったという言い伝えがあり、彼女自身も人の悪意
を嗅ぎ取る能力を持っていた。
しかし教室で生徒の悪意に満ちた悪戯に耐え切れず、さらに
付き合っていた男性にも別れを告げられた日、彼女は南の島
に彼女の求める宝があるとの啓示を受ける。斯くして舟も通
わぬその島に向うアドヴェンチャーが開始される。

主演は1986年の『星空の向こうの国』で映画デビューを果た
し、同年の『キネマの天地』で各映画賞の新人賞を独占した
有森也実。相手役にパンクバンド「勝手にしやがれ」のヴォ
ーカルで本作の主題歌も歌っている武藤昭平。
さらに2010年9月紹介『君へのメロディー』などの江口のり
こ、2007年8月紹介『スキヤキウェスタン・ジャンゴ』など
の尚玄、2011年1月紹介『ランウェイ☆ビート』などの笠井
薫明、2016年1月紹介『復讐したい』などの山根和馬。
また韓英恵、ベンガル、PANTA、緑魔子、石橋蓮司、柄本明
らが脇を固めている。
背景となる実家の言い伝えは、「南総里見八犬伝」の援用と
思われるが、映画の開幕が人形劇なのはNHKへのリスペク
トなのかな。その他にも途中に舞台風の演出があったり、い
ろいろと細工は施された作品だ。
実は僕が試写を観た日は、その後にハリウッド映画のワール
ドプレミアがあり、知り合いの何人かはその前に重厚な作品
は辛いとして本作の試写会を敬遠したとのことだった。それ
は上映時間だけでも及び腰にはなる。
しかし実際の作品は、確かに軽いものではなかったが、辟易
するほど重いというほどのものでもなく、上述の仕掛けなど
寧ろエンターテインメントとして面白く観ることのできる作
品だった。
それは事前に作品が4章立てであることは判っていたが、そ
れぞれの章のテイストが違えられている。その第1章は都会
が舞台のプロローグで、第2章は選挙が絡む風刺劇、第3章
はサヴァイヴァル劇で、第4章が戦争映画といった具合。
こんな風に目先が変ることで上映時間の長さも感じさせない
ものだった。しかもR15+指定となる部分もあり、映画のい
ろいろな要素が一度に楽しめるという作品にもなっている。
兎に角、エンターテインメントとしては合格点の作品だ。

公開は5月13日より、東京は新宿K's cinemaにて、また初夏
に鹿児島ガーデンズシネマでの上映も予定されている。

この週は他に
『美女と野獣』“Beauty and the Beast”
(2010年9月に3D公開で紹介した1991年製作のディズニー
アニメーションが、『ハリー・ポッター』シリーズなどのエ
マ・ワトスンの主演で実写映画化された。物語はオリジナル
とほぼ同じで、本好きのちょっと変わった少女が父親の身代
わりで野獣の城に幽閉され、彼女を救出しようとする村の住
民との戦いに巻き込まれる。開幕のディズニーのロゴから舞
台の村と城が描かれ、長年のディズニー映画のファンとして
は「おお!」という感じにもなる作品だ。ただ個人的にはオ
リジナルでお気に入りだったシーンの一つがカットされて、
その点は少し残念。でもまあ実写でやると多分違和感だった
のだろう。監督は2003年2月紹介『シカゴ』などのビル・コ
ンドン。公開は4月21日より、全国ロードショウ。)
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
(最果タヒの詩集をドラマ化した作品。詩集の映像化という
のは、風景映像に詩の朗読を被せるようなイメージだけど、
本作では一歩進んで恋愛ドラマが創作され、そこに多分詩集
の中の言葉が台詞として散りばめられている。それは見事な
詩の表現であり、しかもその詩が現代の若者を描いているか
ら、巧みな恋愛映画として昇華している。これは素晴らしい
作品だ。特にコミックスの映画化のような稚拙な恋愛ゲーム
ばかりの時代には、久し振りに本物を観た感じがした。出演
は新人の石橋静河、池松壮亮。他に松田龍平、市川実日子、
田中哲司らが脇を固めている。脚本と監督は2010年2月紹介
『川の底からこんにちは』などの石井裕也。公開は5月13日
より新宿ピカデリーで先行上映の後、全国ロードショウ。)
『作家、本当のJ.T.リロイ』
            “Author: The JT LeRoy Story”
(2004年にアーシア・アルジェントの脚本・監督・主演で映
画化された『サラ、いつわりの祈り』の原作者に纏わる事実
のドキュメンタリー。真の原作者のローラ・アルバートは自
らのコンプレックスから別人になりたいと願い、その気持ち
で偽名で発表した小説がベストセラーになる。しかし彼女は
実名を明かさず、別人を仕立てて自らはそのマネージャーと
して行動してしまう。それが徐々に大事になり、遂には国際
映画祭のレッドカーペットを歩くまでになるのだが…。以前
は出版界と付き合いもあった自分としては、かなり愉快だし
憧れも感じる作品だ。特に顛末が多数の著名人との留守番電
話の録音で描かれるのは見事だった。公開は4月8日より、
東京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『映画プリキュア・ドリームスターズ!』
(2016年10月30日に題名紹介した作品に続く映画シリーズの
最新作。基になるのは2月5日にスタートした『キラキラ☆
プリキュア・アラモード』でそのテーマはお菓子。そして物
語は、主人公の見た夢が現実と交錯するところから始まる。
その夢世界から現れた少女が3つのアイテムに関る仲間を探
すというのだが、そこで提示されるのがお菓子と宝石と鍵。
ここでお菓子が現行シリーズのアイテムであることは判った
が、後の2つも過去のシリーズのアイテムだそうだ。昨年秋
の映画の仕掛けでは言葉遊びが気に入ったが、今回の仕掛け
は僕には不明だったが納得はできたものだ。ゲスト声優には
木村佳乃、山里亮太、お笑いコンビのライスらが登場する。
公開は3月18日より、全国ロードショウ。)
『バイオハザード:ヴェンデッタ』
(2008年公開『ディジェネレーション』、2012年公開『ダム
ネーション』に続くCGIアニメーションシリーズ第3弾。
開幕は洋館を舞台にしたゾンビとの攻防戦。僕はオリジナル
のゲームはやらなかったが、子供がやっているのを観ていた
もので、この開幕のシーンには懐かしさが溢れてきた。そし
て物語は、その洋館事件を生き延びた主人公を巡るもので、
アンブレラ社の無き後、新たに登場したバイオ兵器産業との
闘いが描かれる。その一方で対バイオ兵器の開発も進められ
ていたが…。実写版は2016年12月紹介『ザ・ファイナル』で
完結したが、アニメーション版はまだまだ続くようだ。公開
は5月27日より、東京は新宿ピカデリー、ヒューマントラス
トシネマ渋谷他で全国ロードショウ。)
『オリーブの樹は呼んでいる』“El olivo”
(2013年1月紹介『天使の分け前』などの脚本家ポール・ラ
ヴァーティの脚本を、妻でスペインの女性監督イシアル・ボ
ジャインが映画化した作品。その昔にローマ人が植樹し、樹
齢2000年を超えるものもあるというオリーブの樹がスペイン
の大地から引き抜かれ、ドイツや遠く中国にまで売られてい
るという。そんな事実を背景にした物語。主人公は勝ち気で
家族からも疎まれている若い女性。しかし仲良しだった祖父
が病に倒れ、その原因が売られたオリーブの樹にあると考え
た彼女はその奪還作戦に乗り出す。スペイン社会の現状など
も反映した作品だが、主人公の心情には共感できるし、後半
の展開には拍手も贈りたくなった。公開は5月下旬より、東
京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年03月12日(日) ハロルドとリリアン、スプリット、リトル京太の冒険

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ハロルドとリリアン』
     “Harold and Lillian: A Hollywood Love Story”
幾多のハリウッドの名作、大作に関りながら、エンディング
ロールには名前が登場しない。しかし多数の映画人に敬愛さ
れたカップルを紹介するドキュメンタリー。
ハロルドは東部のユダヤ人名家の息子。リリアンもユダヤ人
だが両親はなく孤児院で育った。そんな2人はハロルドが第
2次大戦から凱旋の後に出逢うが、家柄のないリリアンとの
仲は一族に大反対される。
一方、戦地で画才を認められたハロルドはその才能を活かし
たいと思い、カリフォルニアでその機会を狙おうと考える。
そして西海岸に移住したハロルドは、列車の切符を同封した
手紙でリリアンに一緒に暮らすことを提案する。
斯くしてハリウッドで暮らし始めた2人は、3人の息子を授
かる一方で、ハロルドは自筆の絵画を映画会社に持ち込み、
偶然もあってコロムビア映画に採用される。そこで絵コンテ
の技術を学んだハロルドは徐々に頭角を現して行く。
しかし2人の暮らしは満帆ではなかった。実は第1子が自閉
症と診断され、そのセラピーにリリアンは疲れ切る。このた
め虚無感に陥ったリリアンに、ハロルドは映画会社での調査
のヴォランティアを勧める。
それは日本映画で言う時代考証のような映画製作の許になる
情報を調査し、収集する仕事だった。そしてリリアンもまた
その仕事で頭角を現して行く。
そんな2人が関ったのは、1950年代では『泥棒成金』『知り
すぎていた男』『十戒』『ベン・ハー』『地底探検』。60年
代では『スパルタカス』『ウエスト・サイド物語』『史上最
大の作戦』『鳥』『クレオパトラ』『卒業』『ローズマリー
の赤ちゃん』。
70年代は、『イージー・ライダー』『屋根の上のバイオリン
弾き』『ジョニーは戦場へ行った』『エクソシスト』『ロッ
キー』『1941』『スター・トレック』。80年代は、『レ
イジング・ブル』『ブレードランナー』『ライトスタッフ』
『ビバリーヒルズ・コップ』などなど。
しかもこの中で紹介される『鳥』や『卒業』などのハロルド
の絵コンテは、正に詳細なカット割りまで示されたもので、
特に名場面が記された絵コンテには、監督は何をしたのかと
いう考えを持つほどのものになっている。
またリリアンが語る『屋根の上のバイオリン弾き』の衣装に
関るエピソードは、これこそリサーチャーの神髄と言いたく
なるものだった。こんな2人にはハリウッドから特別な賛辞
も贈られている。
この他にも、ハロルドがプロダクションデザイナーとしてオ
スカー候補になった『スター・トレック』に関るエピソード
は、ファンならニヤリとしてしまうものだ。そんな2人の愛
すべき人生が紹介される。
映画ファン必見の作品と言えそうだ。

公開は5月27日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA他にて、
全国順次ロードショウとなる。

『スプリット』“Split”
2004年8月紹介『ヴィレッジ』などのM.ナイト・シャマラ
ン監督による最新作。本編の前に監督からの「結末は絶対に
喋らないでね!」というコメントが上映される。
始まりは女子高生の誕生日パーティ。そこに集まった3人は
主賓の父親の車で帰ろうとする。ところが運転席に乗り込ん
できた見知らぬ男が催眠スプレーを吹き掛け、気が付くと地
下室のような場所に閉じ込められていた。そして男が現れ、
彼女らを拉致したと告げる。
ところがその男、次に現れた時には女装して話し方も違って
いる。その後も次々にいろいろな人格で現れ、その時々で彼
女らに対する要求も違っているようだ。こうしてチラシに従
えば「誘拐された3人vs誘拐した23人格」というお話が始
まる。
一方、その男は女性の精神科医に掛っており、その女医は多
重人格の研究をしているようだ。しかもその研究では、人格
ごとにアレルギーなども異なる場合があるというのだが…。
その女医は男の態度に不審なものを感じ始める。折しもテレ
ビでは3人の女子高生の行方不明が報じられていた。
最初は単純な拉致物のように始まり、徐々にその内容が変化
して行く。それは多重人格物ということになるが。そこから
一筋縄で行かないのがシャマランの真骨頂だ。実際に物語は
喋っちゃいけない結末で、とんでもない展開を迎えることに
なるのだ。
と言ってもそれがどれだけの観客に理解されるか、かなり心
配。そんなレヴェルの仕掛けの施された作品になっている。

主演は、2013年9月紹介『フィルス』などのジェームズ・マ
カヴォイ。共演にトニー賞にも輝いたブロードウェイ女優で
シャマラン監督の2008年作『ハプニング』にも出演のベティ
・バックリー。
さらにアメリカ芸能誌で「次世代スター」にも選ばれたアニ
ヤ・テイラー=ジョイ、2016年『スウィート17モンスター』
などのヘイリー・ルー・リチャードスン、テレビ出演歴の長
いジェシカ・スーラらが女子高生役を演じている。
そしてもう1人、最期にとんでもないスペシャルゲストが登
場する。それは物語を根底からひっくり返すもので、その結
末は喋っちゃいけないものだが、果たして日本の観客でこれ
が即座に判る人がどれだけいることか。
勿論その伏線は先に敷かれているし、この結末でそれが納得
できるものにもなっているのだが…。いやはやこれで続きが
作られることになるのかな?

公開は5月12日より、全国ロードショウとなる。

『リトル京太の冒険』
東日本大震災を背景とした児童映画の範疇に入ると思われる
作品。
物語の主人公は群馬県桐生市に暮らす12歳の少年・京太。あ
の日の記憶から逃れられない彼はいつも蛍光色の防災頭巾を
被っている。そんな京太は、男性の外国人英語教師と片言の
英語で会話をするのが好きだった。
その先生は震災後に一旦は母国に帰ったが、1年後に再び学
校に来てくれたのだ。そんな先生の許に新たに女性の外国人
がやって来る。そこでその女性にも町を気に入って貰いたい
と活動を開始する京太だったが…。

出演は、京太役にテレビ『まれ』などの土屋楓、その母親役
に2010年3月紹介『瞬』などの清水美沙。他に、スコットラ
ンド出身のアンドリュー・ドゥ、テレビ『花子とアン』など
の木村心結らが脇を固めている。
脚本と監督は、日本大学藝術学部とNYコロムビア大学大学
院卒業という大川五月。すでに短編映画で映画祭の受賞歴な
ども持つ女性監督の長編デビュー作となる。
2017年2月5日に題名紹介したオムニバス『ブルーハーツが
聴こえる』でも李相日監督が被災した子供の問題を扱ってい
たが、首相談話も行われなくなったこの時期に映画人が相次
いでこのテーマを取り上げたことは嬉しく思う。
特に福島問題があるから、原発推進の首相は口を噤みたいの
だろうが、放射能汚染の問題はまだまだ終った訳ではなく、
特に子供の心には大きな傷跡が残ったままだ。その問題を真
摯に描いてくれたことに感謝をしたい。
この点に関しては日本映画人の心意気を感じたものだ。
ただし、一般の人の中で震災の記憶が薄れつつあることは事
実であって、その点を踏まえると本作では僕には少し残念に
思えるところがあった。それは外国人男性教師に関して、そ
の去就の事情が明確になっていない。
それは、恐らく母国政府からの勧告で一時帰国せざるを得な
かった先生が1年後に戻ってきてくれた。そのことが主人公
にとって大きな心の支えだったと思うのだが。その点を本作
ではもっと明瞭に描いて欲しかった。
ここで実は、本作には先に2012年『京太の放課後』と2014年
『京太のおつかい』という2本の短編が製作されていたよう
なのだが、上記の点はもしかしたらその短編で描かれていた
のかもしれない。
しかしその短編を観ていない観客が現にここにいる訳で、本
作の制作に当ってはその点を少し考慮して欲しかったと思っ
たものだ。その点を除けば本作は、子供目線で巧みに状況を
描いていたと思う。
従って特に子供たちにしっかりと観て貰いたい作品だ。

公開は4月1日より、東京は渋谷のシアター・イメージフォ
ーラム他にて、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『猫忍』
(2013年12月紹介『猫侍』をヒットさせたスタッフが新たに
仕掛ける人間×猫のコラボ作品。この作品も先にテレビシリ
ーズがあり、本作はその完結編のような展開になっている。
物語は江戸時代の太平の世。乱世に活躍した忍者は役目もな
くなっていた。そんな中で主人公の暮らす忍者の里で秘伝の
巻物「変化の術」が解かれ、主人公の父はそれと共に姿を消
す。そこには父親と同じ特徴を持つ猫がいたが…。斯くして
その猫と共に抜け忍となった主人公は「変化の術」の謎を追
う。主演はミュージカル俳優の大野拓朗と猫の金時。その脇
を佐藤江梨子、藤本泉、渋川晴彦、鈴木福、ふせえり、永澤
俊矢、柄本明、麿赤児、船越英一郎らが固めている。公開は
5月20日より、全国ロードショウ。)
『トモシビ-銚子電鉄6.4kmの軌跡-』
(千葉県のローカル鉄道を舞台にした青春ドラマ。主人公は
地元の高校で文化系の部活に所属する女子。そんな女子高生
が地元を走る電車と高校生の駅伝との競争を企画する。とこ
ろが開催日が間近になっても選手が集まらず、一方電鉄会社
の側でもトラブルが発生する。果たして競争は実施できるの
か…? そこに主人公の母親と電車の運転士との交流など、
地元と電車を繋ぐ物語が展開される。地元のライター吉野翠
の原作に基づき、監督は故森田芳光監督の助監督を長年務め
た杉山泰一が長編第2作として手掛けた。出演は、初主演の
松風理咲。その脇を前野朋哉、植田真梨恵、有野晋哉、富田
靖子、井上順らが固めている。公開はイオンシネマ銚子先行
上映の後、5月20日より新宿武蔵野館他で全国順次公開。)
『夜明けを告げるルーのうた』
(2004年の長編デビュー作『マインド・ゲーム』で文化庁メ
ディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した湯浅政明監
督の最新作。同監督の作品ではもう1本公開が控えていて、
実はそちらが先の公開となるので、紹介はその作品と纏めて
次回に行うことにしたい。)
『赤毛のアン』
     “L.M. Montgomery's Anne of Green Gables”
(1908年に発表された少女小説の定番を、原作の舞台である
カナダで映画化した作品。製作総指揮に原作者の孫も名を連
ねている極め付き。主人公は赤毛の少女アン。孤児院育ちの
少女が田舎町で老兄妹が暮らす家に、本来は男の子が希望だ
ったところをやって来る。しかし持ち前の気性で徐々に周囲
に溶け込んで行く姿が描かれる。原作は何度も映像化のある
作品だが、従来の作品が読者向けに作られているのに対して
本作は入門書のよう。次々登場する原作の名場面はまるで挿
絵の羅列のようだが、初めて接するには良い感じと言えそう
だ。出演はオーデションで選ばれたエラ・バレンタインとハ
リウッド俳優のマーティン・シーン。他はカナダの俳優が脇
を固めている。公開は5月6日より、全国ロードショウ。)
『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』“危城”
(前回題名紹介『おじいちゃんはデブゴン』のサモ・ハンが
アクション監督を務める大型歴史劇。背景は1914年。中国が
内戦に明け暮れていた頃のこと。とある村が近隣士族の私設
軍の標的にされる。それは残虐な当主の息子に率いられた皆
殺し部隊だった。しかもその息子が身分不明のまま先に自警
団に捕えられ、私設軍は村の安全を取引条件としてその釈放
を迫ってくる…。出演はエディ・ポン、ルイス・クー、ラウ
・チンワン、ウー・ジン、ユアン・チュワン。監督は2011年
9月紹介『新少林寺』などのベニー・チャン。前作もそうだ
がサモ・ハンの演出は拳法と言うより殺法と呼びたい強烈な
もの、そのリアルさに目を見張った。公開は6月10日より、
東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『ノー・エスケープ自由への国境』“Desierto”
(2013年10月紹介『ゼロ・グラビティ』の原案・脚本を手掛
けた監督の息子のホナス・キュアロンが製作・脚本・監督・
編集を務めた上映時間88分の作品。舞台はメキシコ・アメリ
カ国境の荒涼とした地帯。そこにメキシコ側からの密入国を
企てる一団がトラックで現れる。ところが車がエンストし、
一団は徒歩で国境を越えることにするが…。アメリカ側には
狩りと称して違法入国者をライフルで狙う男が待ち受けてい
た。出演はガエル・ガルシア・ベルナルと、2013年9月紹介
『ウォーキング・デッド』シリーズなどのジェフリー・ディ
ーン・モーガン。密入国を描いた作品は何本も観ているが、
トランプ大統領が誕生した、正に今でしょという感じの作品
だ。公開は5月5日より全国ロードショウ。)
『笑う招き猫』
(元SKE48の松井玲奈と今話題の清水富美加が共演する女性
漫才コンビを主人公とするドラマ作品。脚本と監督は2017年
2月5日題名紹介『ブルーハーツが聴こえる』の一編も手掛
けていた飯塚健。原作は、本作の基になった小説で小説すば
る新人賞を受賞した山本幸久。漫才師の話は品川ヒロシ監督
の2011年『漫才ギャング』なども観ているが、お笑いブーム
の中で狙いやすい題材と言えるのかもしれない。しかも漫才
師役に本職ではない人を起用するのは、品川作品とも共通し
てしまうところだ。まあそれが女性というのは目新しいが、
女性漫才師というのは風貌から特徴のある印象が強いので、
その点でこの2人の主演というのはかなり冒険だったかな?
2人は頑張っているが…。公開は4月29日より、東京は新宿
武蔵野館他で、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年03月05日(日) ひるね姫、レゴバットマン ザ・ムービー

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ひるね姫』
2016年11月20日付で題名紹介した作品が完成し、改めて試写
が行われた。
少女の見る夢と現実が交錯するファンタスティックな要素も
大きく作用する物語。
主人公は岡山県倉敷市で父親と2人暮らしの女子高生。特に
取り得もない彼女はいつも居眠りをしている。ところが最近
になって同じ夢ばかりを見るようになっていた。そこは機械
産業が発達した王国で、彼女はその国の王女だったが…。
そして現実の背景は2020年の夏、東京オリンピックの開会式
が3日後に迫った日。とは言うものの、そのイヴェントは彼
女にはあまり関係が無いようだ。ところがそんな彼女の周囲
に不穏な雰囲気が漂い始める。
その日、突然父親が警察に任意同行を求められ、そのまま身
柄は東京に送られることに。一方、お盆で墓参りに行った主
人公は父親が隠したタブレットを発見。そして帰宅した彼女
は侵入者から辛くも脱出する。
斯くして帰省していた幼馴染の大学生と共に、父親が改造し
たバイクで父の後を追うことに決めた主人公だったが、その
途中では様々な不思議な出来事に遭遇する。それは夢の中で
彼女が使う魔法のようだった。

原作、脚本、監督は2012年10月紹介『009 RE:CYBORG』など
の神山健治。声の出演は高畑充希、満島真之介、古田新太、
高橋英樹、江口洋介。さらに釘宮理恵、高木渉、前野朋哉、
清水理沙らが脇を固めている。
昨年11月に観た時はほぼ線画の状態で、さらに音声は台詞だ
けという状況だったが、それが完成するとこんなにも印象が
変わるのかと驚くほどだった。
実際、昨年観た時にはもっとファンタシーの要素が強いかと
思っていたが、完成品ではそれほどでもなく。むしろ現実の
中にうまく溶け込んでいる感じで、その描き方も的確なもの
だった。
特に魔法だと思っていたことの種明かしが巧みで、それには
ニヤリとさせられたところ。これはファンタシーより、むし
ろSFだったようだ。2020年の直近の未来がここまでSFに
なるかは判らないが、そんな夢も楽しい作品だ。
夢の中の王国を襲う巨人など、過去の日本のアニメ作品への
オマージュのようなシーンも数多くあり、それらへの評価が
どうなるかは多少気になる所だが、物語としてのオリジナリ
ティはしっかりしていると思えた。
それは主人公が何の取り得もない少女という設定も良いし、
その主人公が歌う主題歌「デイ・ドリーム・ビリーバー」も
作品にマッチして良い感じだった。

公開は3月18日より、全国ロードショウとなる。

『レゴバットマン ザ・ムービー』
               “The LEGO Batman Movie”
2014年2月紹介『LEGOムービー』のスタッフ再結集で、DC
スーパーヒーローの世界を描くパロディ作品。
実は前作ではバットマンの人気が特に高かったのだそうで、
そこで今回は彼が主演にフィーチャーされている。となれば
敵役は当然ジョーカーだが、その立ち位置の微妙なところが
本作の売りと言えそうだ。
実際バットマンには他にもいっぱい敵がいる訳で、そこから
物語が動き始める。そしてジョーカーはありとあらゆる悪役
に総動員令を掛けてしまうのだ。そこで登場するのが…。い
やはや全部LEGOとは言えこれは凄い。
特に、他の物語から動員された、それぞれが最恐と言われた
悪役たちには、そうかこいつらもワーナー映画の所属だった
んだと妙な関心もしてしまったくらい。これは映画ファンも
ニヤリとさせるものになっている。
そしてバットマン側には、お決まりのアルフレッド(仕掛け
在り)を始めとするファミリーが集結となるもので、これも
長年のファンにはニヤニヤし通しの展開となっている。それ
にしてもLEGOの表現力にも感心する作品だった。

原案と脚本は、2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』な
どのセス・グレアム=スミス。そこに今夏公開『スパイダー
マン ホームカミング』も手掛けるクリス・マッケナ&エリ
ック・ソマーズと、2013年2月紹介『シュガー・ラッシュ』
などのジャレット・スターン。
さらに2009年9月に紹介した『カールじいさんの空飛ぶ家』
の続編プロジェクトにも参画しているというジョン・ウィッ
ティントンが共同脚本で加わっている。まあこれだけ揃うと
かなりの脚本ができるというものだ。
監督はテレビの人気アニメ『ロボット・キッチン』でエミー
賞やアニー賞にも輝いたクリス・マッケイが担当した。
声優は、オリジナルでは2009年12月紹介『スパイアニマルG
フォース』などのウィル・アーネット、2011年4月紹介『ス
コット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団』などのマイクル
・セラ。2人は他に多数のアニメ作品の声優も務めている。
さらに2015年11月紹介『007/スペクター』などのレイフ
・ファインズ、2008年10月紹介『イーグル・アイ』などのロ
ザリオ・ドースン、2012年4月紹介『ザ・マペッツ』などの
ザック・ガリフィアナキスらが脇を固めている。
主人公が『スーパーマン』に対抗意識を燃やしているという
図式は当然のこととして、その他にもいろいろなくすぐりが
登場する。ただ、主人公のお気に入りの映画がワーナー作品
ではないのだが、これはセレブ御用達という意味なのかな?

公開は4月1日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『あの日、兄貴が灯した光』“형”
(国際大会の決勝で見事な投げ技を受け、頭部を強打して失
明した柔道選手が、失意の中から立ち直って行く姿を描く感
動作。主人公には両親がおらず、そこに付け込んで多少悪の
異母兄が関ってくる。さらに彼を育て上げた女性のコーチも
いて、正直に言ってかなりあざとい展開になっている。でも
それが狙いな訳だし、実際それに涙も誘われるのだから、こ
れはこれで見事な作品だ。監督は2008年1月紹介『裸足のギ
ボン』などのクォン・スギョン。出演は2016年10月紹介『造
られた殺人』などのチョ・ジョンソク、人気グループEXO
のメムバーのD.O.、それに2012年6月紹介『Green Days』
などのパク・シネ。公開は5月19日より、東京はTOHOシネマ
ズ新宿他で全国順次ロードショウ。)
『おじいちゃんはデブゴン』“我的特工爺爺”
(香港映画界の重鎮サモ・ハンが、自ら20年ぶりの監督とア
クション監督・主演で発表したカンフーアクション作品。サ
モ・ハンが演じるのは元人民解放軍で要人警護に当たってい
た武道の達人。その退役後は故郷のロシア国境近くの寒村で
暮らしているが、最近は痴呆も始まっているようだ。そんな
彼の心の支えは隣家に住む幼い少女だったが、ギャンブル狂
の父親が地元の悪と関わり、さらにロシアマフィアも関係す
る事件に発展してしまう。そして少女が危機に陥り…。共演
に製作も兼ね主題歌も歌っているアンディ・ラウと、香港の
名子役とされるジャクリーン・チャン。他にユン・ピョウ、
ツイ・ハークらがゲスト出演。公開は5月27日より、東京は
新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『ターシャ・チューダー静かな水の物語』
(2008年92歳で他界したアメリカの絵本作家の生誕100周年
を記念して製作されたドキュメンタリー。2005年にNHKで
放送された番組を基に、現在の遺族の様子などが追加されて
いる。番組の企画はガーデニングの紹介だったそうで、東部
ヴァーモント州の作家の自宅とその庭が紹介される。そこで
は四季の花が咲き、さらにリンゴの収穫やその果汁からロウ
ソクを作る様子なども紹介される。正に自然の中に生きてい
る感じで、スローライフなどいろいろな言葉が思い浮かんで
くる。それは都会に住む者にとっては憧れとも言える暮らし
方だ。何しろ心が温かく穏やかになる。そんな感じのしてく
る作品だ。公開は4月15日より、東京は角川シネマ有楽町他
で全国ロードショウ。)
『バーニング・オーシャン』“Deepwater Horizon”
(2010年にメキシコ湾の石油掘削基地で起きた史上最大規模
の原油流出事故。その核心に迫る実録ドラマ。その現場は南
部ルイジアナ州の沖合。陸からは高速ヘリでも30分近くかか
る海上。その時の基地は油層到達までの最後の正念場に来て
いた。しかし機器に様々な不具合が発生。ところが遅延して
いる工期にその修理や検査もままならなかった。そして危険
を承知で行った掘削が事故を招く。映画の後半では事故の犠
牲になった作業員11人の氏名が呼び上げられ、実録物の重み
も感じさせる。監督は2012年4月紹介『バトルシップ』など
のピーター・バーグ。主演にマーク・ウォールバーグ。共演
はカート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ。公開は4月
21日より、全国ロードショウ。)
『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代』
            “Don't Blink - Robert Frank”
(現在も世界50都市を巡回中の展示会で、昨年11月開催の東
京では2週間で2万人の来場を記録した1924年生まれ写真家
の業績を描いたドキュメンタリー。1958年に彼を一躍有名に
した写真集“Les Americans”の制作の経緯や、その1点に
55万ドルの値が付いたオークションの様子。さらに彼自身の
制作による映画の抜粋など。正に写真家の業績が描かれてい
る。また作品には写真家の知己とされる様々な著名人の証言
も挿入され、著名ミュージシャンの楽曲も提供されている。
因に作品はインタヴュー嫌いとされる写真家が、初めて自ら
の生涯を語ったとされるもので、それ自体も貴重なもののよ
うだ。公開は4月29日より、東京は渋谷Bunkamura ル・シネ
マ他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二