井口健二のOn the Production
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2017年02月26日(日) 美しい星、ろくでなし、キングコング髑髏島の巨神

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『美しい星』
原作は1970年11月に壮絶な死を遂げた作家・三島由紀夫が、
1962年に雑誌連載で発表した長編小説。その映画化に2012年
日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した吉田大八監督が挑戦
した。
登場するのは、夫妻とフリーターの息子に大学生の娘の4人
家族の一家。夫は気象予報士でニュース番組に出演して人気
もあるようだ。その夫が不倫後の帰路で車ごと光に包まれ、
気付くと郊外の田圃で空から落下したような車内にいた。
一方、バイク便で都内を疾走する息子は乗用車と事故りそう
になり、猛然と追跡した息子はその車に乗っていた国会議員
の秘書から事務所を訪ねるように誘われる。さらに高揚した
気分でプラネタリウムに行った彼はある体験をする。
そして娘は、美しい容姿で大学では浮いた雰囲気だが、ある
日、帰り道で聞いた路上ライヴに心を惹かれ、「金星」と題
されたその歌のCDを購入する。さらにその歌に誘われるよ
うに金沢を訪れ、海岸で空飛ぶ円盤に遭遇する。
こうしてそれぞれが火星人、水星人、金星人に覚醒した家族
は、それぞれの使命を果たすべく行動を開始するが…。

出演は、2016年9月題名紹介『お父さんと伊藤さん』などの
リリー・フランキー、2013年4月紹介『俺俺』などの亀梨和
也、2015年11月1日「東京国際映画祭」紹介『残穢』などの
橋本愛、2013年12月紹介『小さいおうち』などの中嶋朋子。
他に佐々木蔵之介らが脇を固めている。
脚本も手掛けた吉田監督は、30余年前に原作を読んで以来、
自らの手で映画化することが夢だったそうだ。だがそれは、
それ以前に大島渚監督らも抱きながら実現しなかったもの。
そのチャンスが巡ってきた。
しかし原作発表から55年が過ぎ、もちろん原作当時の時代設
定のままでの映画化も可能ではあったが、それでは足りない
と監督は考える。そこで時代を現代に移し替える大胆な脚色
が施されたが、その作業は容易ではなかった。
実際監督は、三島が現代に生きていたらどう描くかを念頭に
脚色したと言っているが、正直に言って僕は、三島だったら
こうは描かなかったと考える。しかし本作は三島の思想を活
かしつつ、見事に映画として成立させているものだ。
これこそが文字通りの「換骨奪胎」と言える作品だろう。そ
の他、様々な微妙な点もクリアしながら、エンターテインメ
ントとして成功させている。また敢えて3/11=福島原発に
踏み込まなかった点も評価したいところだ。
これなら原作の読者も納得させられる映画化だと思える。

公開5月26日より、全国ロードショウとなる。

『ろくでなし』
2016年6月紹介『クズとブスとゲス』の奥田庸介脚本・監督
による新作。
登場するのは地方から上京して来た男と、都会の裏社会で生
き抜いてきた男。そんな2人の男が渋谷のクラブで出会い、
同じクラブで働く女性を巡って様々な裏社会の出来事に遭遇
する。
上京してきた男はめっぽう喧嘩が強く、もう1人の男は裏社
会での身のこなし方を心得ている。そんな男たちが裏社会に
落ちてしまった姉妹と共に都会の裏社会を生き抜いて行く。
そこには犯罪も絡むが、それなりの決着にはなる。
2016年作と同様のかなりやばい裏社会の状況を描いた作品だ
が、監督は何処かで人間を信頼しているのかな。本作もそん
な微かに感じられる温かさが観客にも心地良さを与えてくれ
る。そんな作品になっている。

出演は、2016年1月紹介『華魂 幻影』などの大西信満と、
『クズと…』にも出演の渋川清彦、それにベテランの大和田
獏。さらにオーディションで選ばれた遠藤祐美と上原実矩、
2015年の東京国際映画祭で上映された『ケンとカズ』でカズ
を演じていた毎熊克哉。
僕にとって渋谷は、今でも試写会などで行くことが多いが、
小学生の頃に初めてロードショウの映画を観た場所であり、
学生時代には仲間のたまり場もあって、それなりの青春を過
ごした場所でもある。
従って多少の土地勘はあるが、そんな場所に今も残る昭和の
雰囲気と、一方でヒカリエ前に移設中の銀座線渋谷駅の風景
など、見事に時代が交錯する。それは新鮮でもあり、渋谷の
実像でもあるものだ。
そんな見事に渋谷が捉えられている作品とも言えそうだが、
実は監督自身のシナリオの初稿では多少違っていたそうで、
そのリライトをした山本政志(海外でも活躍する映画監督)
にも拍手を贈りたい。
因に本作は、山本監督が主宰するシネマ☆インパクトという
ワークショップに奥田監督が講師として招かれ、その一環で
製作が進められたもの。同ワークショップからはすでに多く
の作品が生まれているようだ。
東京の裏社会というと、とかく新宿歌舞伎町が舞台になりが
ちだが、それとは一味違う「渋谷」がここに描かれている。
その雰囲気も面白かった。池袋・新宿・渋谷にはそれぞれ違
う風景があるようだ。

公開は4月15日より、東京は渋谷ユーロスペース、新宿K's
cinema他にて、全国順次ロードショウとなる。

『キングコング髑髏島の巨神』“Kong: Skull Island”
1933年製作のオリジナル以来、すでに1976年、2005年とリメ
イクもされた『キングコング』。その生誕の島を舞台にした
作品。
開幕は太平洋戦争の末期、空中戦をしていた日米の戦闘機が
相次いで墜落し、パラシュートで降下した2人の兵士は地上
でも闘いを続けようとする。そんな2人の背後に巨大生物が
現れる。
時代は下ってベトナム戦争も終わりの頃。一つの情報が気象
衛星からもたらされる。それは南太平洋に一年中嵐に閉ざさ
れた孤島があるというもの。そこに眠る資源を求めて研究者
が派遣される。
そしてベトナムからその研究者の警護に当たることになった
部隊と共に、嵐をものともしない軍用ヘリコプターで一行は
その島に到着する。ところが研究者の調査を始めると、突如
ヘリ部隊が巨大生物に襲われ、壊滅状態となる。
しかも嵐の影響か無線も通じない状況の中で、研究者たちは
島の反対側にある帰還のための集合地点を目指すことになる
が…。その一行を様々な巨大生物が襲い始める。一方、部下
を殺された部隊長は復讐に燃えていた。

出演は、2016年5月紹介『ハイ・ライズ』などのトム・ヒド
ルストン、2016年の『ルーム』でオスカー受賞のブリー・ラ
ースン。さらにサミュエル・L・ジャクスン、ジョン・グッ
ドマン、ジョン・C・ライリー。
また、前回紹介『グレート・ウォール』などの中国人女優ジ
ン・ティエンと、同じく前回紹介『無限の住人』では主題歌
を提供していたロックアーティストのMIYAVIが本作で
は俳優としてスクリーンに登場している。
実は1933年のオリジナルには同年制作された続編があって、
“Son of Kong”(邦題『コングの復讐』)と題されたその
作品では、再び島を訪れた冒険家たちが様々な冒険に遭遇す
る様子が描かれていた。
つまり本作は、その続編を巧みにリメイクしたと言えるもの
で、その部分から僕は嬉しくなっていた。因に1986年製作の
『キングコング2』は、墜落したコングが人工心臓で復活す
るというとんでもない展開にがっかりしたものだ。
そんな訳で僕は1933年版の続編の結末を想像しながら観てい
たのだが、それとは違う本作の結末にはさらに驚きが待って
いた。それは確かに本作の前に物語があったとは誰も言って
いなかったが…。
恐らく本作の公開前にはあらかたの情報は出てしまうのかも
しれないが、本作のエンディングロールでは絶対に席を立た
ないように。何も情報を入れずに観ていた僕は、エンディン
グロール後の展開に心底驚かされたものだ。
それともう1点、本作の中では地球空洞説が言及されるが、
それは物理的にはペルシダー型では成立しないもの。しかし
その点も踏まえて考えられているとしたら、これはとんでも
ない展開があり得そうだ。
続編が待ち遠しくなる。

公開は3月25日より、2D/3D、IMAX−3Dにて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『わすれな草』“Vergiss mein nicht”
(認知症を患った女性の姿を息子であるドキュメンタリー監
督が取材したドイツの作品。以前に同様のフランスの作品も
観ているが、自分の親が同じ境遇になっていると日本と海外
の格差も気になってくる。正直、どちらも子供がこれをでき
る環境だということが、日本と違うとも思ってしまうところ
だ。だから作品は微笑ましくもあるのだけれど、自分の現実
と重ねて後ろめたさというか、日本ではこうはいかないとい
う感じも持ってしまった。その一方で被写体の女性の壮絶な
過去には驚かされもしたもので、個人的にはそちらの事情を
もっとちゃんと見たい感じもした。それこそ時代の生き証人
のような作品になったと思うのだが。公開は4月15日より、
東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『T2 トレインスポッティング』“T2 Trainspotting”
(1996年に公開されて、世界中に旋風を巻き起こした物語の
20年後を、同じ監督、同じ配役で描いた作品。実はオリジナ
ルの作品は、当時の若者文化を描いたという点で理解はする
が、特に結末などは釈然としない感じで、個人的にはあまり
好みではなかった印象がある。そんな気分で観に行ったが、
今回は描く視線が自分に近づいたようで、これは違和感なく
観ることができた。しかもそれをダニー・ボイル監督、主演
のユアン・マクレガーを始め、キャストも同じメムバーで描
いているのだからこれは凄い。さらに記憶が定かでない部分
もフラッシュバックなどで補ってくれるから実に判り易く、
当時は釈然としなかった部分も今回了解できた感じがした。
公開は4月8日より、全国ロードショウ。)
『破裏拳ポリマー』
(1974−75年に放送されたタツノコプロ制作テレビアニメの
実写映画化。物語の背景は、警視庁が密かに開発した対人用
の攻撃防御スーツ。それはヘルメット形状で、装着してキー
ワードを発すると全身を覆うスーツとなる。そして主人公は
スーツの開発者である父親に反発して家を飛び出したが、父
親の死去で、唯一キーワードが音声認識される者として呼び
戻される。こうして主人公は反発を感じながらスーツ装着者
となるが…。主演はアクション映画初出演という溝端淳平。
他に「海賊戦隊ゴーカイジャー」の山田裕貴、原幹恵、グラ
ビアアイドルの柳ゆり菜、長谷川初範らが脇を固めている。
監督は『劇場版仮面ライダー』などで多数のアクション監督
を務めてきた坂本浩一。溝端の見事なアクションは監督の手
腕が大きそうだ。公開は5月13日より全国ロードショウ。)
『残像』“Powidoki”
(昨年10月9日に急逝したアンジェイ・ワイダ監督の最後の
作品。内容は共産主義政権下で迫害された画家を描いた実話
に基づくとされるもので、こんなことが実際に行われたとい
うことには震撼とさせられる。それはワイダ監督本人も国内
上映禁止などの迫害を受けていたもので、そんな自身の体験
も踏まえて描かれているのだろう。ただ共産主義がヨーロッ
パではほぼ壊滅した状況で、何をいまさらという感じもしな
いでもないが、この様な迫害は共産主義に限られたものでな
く、民衆に支持された独裁者はいつでも同様の強権を発動す
る恐れがある。そんなことをワイダ監督は言いたかったのか
もしれない。公開は6月10日より、東京は岩波ホール他で、
全国順次ロードショウ。)
『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど』
(日台、特に台湾でベストセラーになったという日本人男性
と台湾人女性による共著の映画化。東日本大震災に遭遇した
日本人男性が、災害を案じるメッセージを寄せた台湾人女性
とFacebookを通じて知り合う。そこに多少の偶然も重なって
交際は深まって行くが…。原作はFacebookの交信記録のよう
で、それに2人のデートの様子などが写真で挿入されていた
ようだ。それは写真を見るだけでもかなり愛らしいもので、
成程これで読者も増えたのだろうと想像される。その辺を映
画は巧みに再現しており、デートスポットの紹介作品として
も評価できそうだ。ただ最初に震災を写していながら、以後
その話が全く出ないのは少し気になったが。公開は初夏に、
東京は新宿シネマカリテ他で、全国順次ロードショウ。)
『日々と雲行き』“Giorni e nuvole”
(Viva! イタリア vol.3として上映される3作品の1本で、
本国ではダビッド・ディ・ドナテッロ賞にて、主演女優賞、
助演女優賞など受賞した2008年の作品。登場するのは豪邸で
仲睦まじく暮らす中年の夫妻と20歳の娘の一家。妻は長年の
夢だった学位を取るためフレスコ画の修復に参加している。
その業績が上がり始めた頃、夫の失職が判明する。その日か
ら家族の繋がりに亀裂が入り始めるが…。自分が同様の境遇
だったから主人公の気持ちも判らないではないのだが…。な
お娘役のアルバ・ロルヴァケルは、その後にドナテッロ賞の
主演賞やヴェネツィア映画祭の主演賞にも輝き、国際女優に
成長している。公開は5月27日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で、全国順次ロードショウ。)
『トトとふたりの姉』“Toto si surorile lui”
(ルーマニアのアカデミー賞とされるGOPO賞で最優秀ドキュ
メンタリー映画賞に輝いた2014年の作品。登場するのは題名
通りの3姉弟。父親はおらず、母親は麻薬売買の罪で刑務所
に服役中、トトは10歳、姉は14歳と17歳という幼い一家だ。
そんな姉弟は叔父名義のアパートで暮らしているが、その部
屋にはヤク中の連中が屯し、17歳の姉も麻薬から離れられな
くなっている。そしてある日、14歳の姉とトトはそんな境遇
から抜け出すために施設に入ることを決意する。ルーマニア
の麻薬は共産党政権下で蔓延ったものだが、国を挙げての状
況ではこんな現実も存在してしまうのだろう。ただ震撼とし
てしまう、そんな感じの作品だった。公開は5月より、東京
はポレポレ東中野他で、全国順次ロードショウ。)
『LION ライオン 25年目のただいま』“Lion”
(今年のアメリカアカデミー賞にも関ったインドとオースト
ラリアが舞台の実話に基づくとされる作品。インドの貧しい
村で暮らしていた幼い少年が回送列車に閉じ込められ、よう
やく下車できたのは言葉も通じない場所だった。そこで保護
された少年は身元も判らないままオーストラリアの夫妻に里
子に出される。そして成長した少年は、Google Earthで故郷
を見つけ出した。同じ国内で言葉が通じないインドと世界を
包括するインターネット。何とも言えない今だからこそ有り
得る物語だ。出演は、2009年1月紹介『スラムドッグ$ミリ
オネア』などのデヴ・パテルと少年時代を演じたサニー・パ
ワール。共演にニコール・キッドマン、ルーニー・マーラ。
公開は4月7日より、全国ロードショウ。)
『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』“터널”
(突然のトンネル崩壊、その中に閉じ込められた男性を巡る
韓国作品。トンネルに閉じ込められるということでは、日本
映画でも2008年9月紹介『252生存者あり』があったが、
日本の作品が救助隊の行動などを克明に追うのに対して、韓
国は少し視点が異なるようだ。そこには政府の高官なども登
場して、かなりいやらしい人間模様となる。大体トンネル崩
壊の原因からして、今の韓国の状況を擬えるような展開で、
そこから日本映画とは違う雰囲気となる。しかも監督がほと
んどためを作らない演出をするから、その印象も強くなる。
これが日韓映画の違いという感じもする作品だ。出演はハ・
ジョンウ、ペ・ドゥナ、オ・ダルス。公開は5月13日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『WE ARE X』“We Are X”
(昨年の紅白歌合戦で『シン・ゴジラ』と共演した日本を代
表するロックバンドX Japanの軌跡を、先にローリング・ス
トーンズのドキュメンタリーも手掛けたアメリカ人の監督が
追った作品。リーダー Yoshikiを語り部として、かつてのメ
ムバーの死や洗脳の事実などが赤裸々に描かれる。実は監督
のスティーヴン・キジャックは本作に関るまでバンドのこと
は知らなかったそうだが、そんな偏見のない目がバンドの歴
史を見事に描き出した。それにしても、Yoshikiが語る経緯
は壮絶とも言えるもので、こんなものを背負って活動を続け
る姿にはただ畏敬の念しか抱けなかった。またHideの死に関
して、明確に事故という認識を示してくれたことも嬉しいも
のだった。公開は3月3日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年02月19日(日) グレート・ウォール、無限の住人

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『グレート・ウォール』“The Great Wall”
2011年5月紹介『サンザシの樹の下で』などのチャン・イー
モウ監督が初めてハリウッドに進出し、主演にマット・デイ
モンを迎えた米中合作のVFXアクション大作。
物語は「万里の長城」で数多語られる伝説の1つに基づくと
される。
時代背景は、まだ黒色火薬が欧州に伝来していない頃。その
秘密を狙って2人のイギリス人が国境地帯へとやって来る。
ところがそこで何者かに襲われ、その敵から切り落とした腕
を抱えて向った先には長城が立ちはだかっていた。
その長城の守備隊に捕えられた2人だったが、やがて長城が
設けられた恐怖の訳を知ることになる。それは60年ごとに北
方から押し寄せる異形の群れを阻むためのもの。そのための
多彩な防御手段も長城に設けられてはいたが…。
そこで主人公の持ち込んだ腕がその異形の物と判り、さらに
その攻撃力を削ぐ手段も判り始める。こうして2人は守備隊
と共に異形の群れに立ち向かうことになる。だがそこには彼
らの他にも黒色火薬の秘密を狙う者がいた。

共演はウィレム・デフォーと、テレビ『ゲーム・オブ・スロ
ーンズ』で人気を博したチリ出身のペドロ・パスカル。それ
に中国側から2014年3月紹介『ポリス・ストーリー/レジェ
ンド』などのジン・ティエン。
さらにアンディ・ラウ、ロック歌手でもあるルハン、2008年
10月紹介『戦場のレクイエム』などのチャン・ハンユーらが
脇を固めている。
テイスト的には『LOTR』なのかな。異形の群れの来襲に
人類がいろいろな仕掛けで対抗する。それは中国映画特有の
アクションにも彩られたもので、そこにVFXが絡んで壮絶
な戦いが描き出されている。
『サンザシの樹の下で』の紹介ではイーモウ監督が武侠作品
を撮ることに懸念を書いたつもりだが。実は2003年5月紹介
『HERO』の来日記者会見では、「この種の武侠物語に子
供のころから親しんできた」とも語っていたもので、監督自
身は喜んで撮っている印象だった。
ましてや本作は監督のハリウッド初進出作となったもので、
それが迎合ではなく自身の好きなものを思い切り撮れたとし
たら、これも素晴らしいと言えるものだ。それに人類が繰り
出すいろいろな仕掛けも、アイデアたっぷりで面白かった。
それにしても「万里の長城」にこんな伝説があったとは…。

公開は4月14日より、3D/2D,IMAX−3D、MAX
4D、4DXで全国ロードショウとなる。

『無限の住人』
漫画家・沙村広明が「月刊アフタヌーン」に1993年6月から
2012年12月まで連載した長編コミックスを、2016年3月紹介
『テラフォーマーズ』などの三池崇史監督が、木村拓哉を主
演に招いて映画化した作品。
背景は江戸時代。1人の武士が集団に囲まれ、目の前で妹を
惨殺された上、自らも深手を負わされる。ところがそこに現
れた尼僧が「血仙蟲」と呼ばれる寄生虫を体内に押し込み、
その力で武士は不死身の身体となる。
そして50年後、今も変わらぬ姿の武士の許に1人の若い女性
がやって来る。彼女は道場主の娘だったが両親を剣客集団に
殺され、その仇討ちを遂げるまでの用心棒を不死身の男に頼
みに来たのだ。
その依頼に最初は面倒くさがる主人公だったが、やがて一途
な女性の姿に亡くした妹を思い出し、その仕事を引き受ける
ことになる。しかしそれは壮絶な戦いの場に彼を引き摺り込
むものだった。
実は彼女の両親を襲った剣客集団というのが、公儀によって
武術の統一を図ろうとするものであり、既にほとんどの道場
は取り潰しとなっていた。しかしその在り方を巡る戦いが起
き、それに主人公らも巻き込まれて行くのだ。

共演は、2016年2月紹介『スキャナー』などの杉咲花、『仮
面ライダーフォーゼ』の福士蒼汰、2016年11月20日題名紹介
『RANMARU 神の舌を持つ男』などの市原隼人、2016年9月紹
介『デスノート』などの戸田恵梨香。
他に北村一輝、栗山千明、満島真之介、金子賢、山本陽子、
市川海老蔵、田中泯、山崎努らが脇を固めている。また本作
の主題歌を、2013年に世界デビューを果たしたロックアーチ
ストのMIYAVIが担当している。
木村の剣術は、以前にヴァラエティ番組で剣道を披露してい
るのを見たことがあるが、中学生まで道場に通っていたとの
ことで、段持ちではないものの相当の実力はあるようだ。
しかし本作では、元々が不死身という設定を描くためには切
られなくてはならない訳で、しかも劇中でも長年争いを避け
てきたというような台詞もあり、その辺がギャグっぽい部分
も含めて巧みに描かれていた。
とは言うものの宣伝コピーにもある1人vs.300人という剣戟
では、これはかなり壮絶に切りまくり、中々迫力のある映像
が作られていた。この他、福士、市原、戸田の剣戟シーンも
見事だった。
因にこれらのシーンでは、原作に描かれた通りの奇怪な刀剣
の数々がそれぞれ相応のアクションで描かれている。それに
してもこれらの剣戟シーンは、切った数ではギネス級ではな
いのかな?
なお本作に関しては完成報告の記者会見も行われたが、その
中で三池監督は、「(映画祭等への対応を訊かれ)映画祭を
考えながらではこの作品は出来ない。そのようなことは一切
考慮せずに作り上げた。」と決意を語っていたものだ。

公開は4月29日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『oasis FUJI ROCK FESTIVAL '09』
(2016年12月4日題名紹介『oasis: supersonic』のロック
バンドが、事実上の解散する約1か月前に日本で行った野外
ライヴの模様を撮影した作品。実は最近までこのヴィデオの
存在すら知られていなかったということで、どの程度の作品
かも心配しながら観に行ったものだが、何と撮影カメラは少
なくとも6台、全てHDでの撮影でこれは完全に公開を意識
しての作品だった。それが何故に存在すら不明だったのかも
ミステリーだが、撮影されているのは土砂降りの中という悪
条件でありながら、見事にライヴの全てが完璧に収められた
もの。これは彼らのファンならずとも刮目して観るべき作品
だ。公開は3月4日より、東京は新宿ピカデリー他にて期間
限定のロードショウ。)
『ピーチガール』
(すでに台湾でのドラマ化や日本ではアニメ化もされている
上田美和原作による人気コミックスの実写映画化。純粋で真
面目な性格だが外見がギャル風で誤解されやすい女子の主人
公の心が、幼馴染と彼女の窮地を救ってくれた学校一のモテ
男との間で揺れ動き、さらに彼女の好きなものは何でも横取
りしたい同級生との間で確執を生む。「5分に1回事件が起
きるラヴコメ」という宣伝コピーで、確かに巻頭からのテン
ションは凄い作品だ。出演は山本美月と「Hey! Say! JUMP」
の伊野尾慧。伊野尾は映画初出演で初主演。それに真剣佑、
永野芽郁が共演。監督は助監督出身で本作が長編デビューの
神徳幸治。現場出身らしい手堅い作品になっている。公開は
5月20日より、全国ロードショウ。)
『ドッグ・イート・ドッグ』“Dog Eat Dog”
(1985年『暴走機関車』の脚本でも知られるエドワード・バ
ンカーの原作を、1976年『タクシー・ドライバー』などの脚
本家ポール・シュレイダーの脚色・監督で映画化した作品。
刑務所から出所した男が、刑務所仲間の男たちと一緒に大金
の稼げる仕事を請け負う。しかし簡単に見えた仕事は次々に
齟齬をきたし、遂にはにっちもさっちも行かなくなってしま
う。出演はニコラス・ケイジとウィレム・デフォー。ちょっ
としたことからあっという間に事態が崩壊する。単に男たち
がバカなのか、それともこれがアメリカの直面している現実
なのか。何ともやるせない気持ちだけが残る作品だ。公開は
6月、東京はヒューマントラストシネマ渋谷他で、全国順次
ロードショウ。)
『PARKS』
(東京吉祥寺の井の頭公園を背景に、祖父の遺品にあった写
真の主を探す物語。それは祖父たちの青春時代を知ることに
もなるが、そこにオープンリールに残された祖父の作った歌
が登場する。しかしその録音は途切れていた…。出演は橋本
愛、永野芽郁、染谷将太、石橋静河、森岡龍。さらに佐野史
郎、麻田浩など、吉祥寺や音楽に所縁の顔触れが登場する。
脚本と監督は2010年10月紹介『嘘つきみーくんと壊れたまー
ちゃん』などの瀬田なつき。正直に言って2010年の作品は僕
的には厳しいものだったが、本作でも何処かが物足りない。
それは例えば音楽の完成に達成感が得られないなどにあると
思うが、やはり脚本の詰めが甘いのかな。公開は4月22日よ
り、東京はテアトル新宿他で全国順次ロードショウ。)
『たたら侍』
(2016年9月11日題名紹介の作品で、実は一般公開に向けて
少し編集が変えられたものだが、情報的には同じなので前回
の記事を参照していただきたい。)
『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』“Mr. Right”
(2013年8月紹介『ランナウェイ/逃亡者』などのアナ・ケ
ンドリックと、2010年1月紹介『月に囚われた男』などのサ
ム・ロックウェルの共演で、2013年8月紹介『クロニクル』
などのマックス・ランディスの脚本を映画化した作品。願望
は強いが男運に恵まれない女子が、ふと出会った暗殺者の男
に隠されていた能力を開花される。ランディスの脚本では前
作の『エージェント・ウルトラ』はちょっとやり過ぎかな?
という感じもしたが、本作は父親譲りの巧みなコメディに仕
上がっていた。ケンドリックのアクションもまずまずだし、
ティム・ロス、2013年4月紹介『アイアン・フィスト』など
のRZAらの脇役も良かった。公開は5月12日より、東京は
新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『TAP THE LAST SHOW』
(2016年12月25日題名紹介『相棒』などの水谷豊が、40年以
上温めてきた企画を、自らの監督、主演で映画化した作品。
公演中の事故で栄光の座を去ったタップダンサーが、ダンス
場の閉館を前に最後の舞台を作り上げる。しかしその舞台は
若手ダンサーたちに極限の技術を要求するものだった。共演
は北乃きい、岸部一徳、六平直政、前田美波里。他に清水夏
生、西川大貴、HAMACHIらミュージカルやタップのプロが出
演している。因に清水とHAMACHIは2003年『座頭市』で下駄
タップを演じたメムバーのようだ。タップダンスは、観てい
るだけでも興奮するものだが、本作ではその舞台裏から巧み
に描かれ、エンディングロールまで堪能できる。公開は6月
17日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2017年02月12日(日) サクラダリセット前編/後編、バーフバリ伝説誕生、ジャッキー ファーストレディ 最後の使命

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『サクラダリセット前編』
『サクラダリセット後編』
2009年にスタートした河野裕原作シリーズの映画化。SFの
範疇に入るこの作品の脚色・監督に、2010年10月紹介『白夜
行』などの深川栄洋が挑んだ。
物語の舞台はとある地方都市。そこの高校に通う主人公と彼
のガールフレンドにはある超能力が備わっていた。それは少
女が「リセット」と唱えると過去のある時点にタイムスリッ
プするというもの。そして主人公にはその過去に遡った記憶
が残るというものだ。
これによって2人はコンビを組み、悲惨な出来事を修復する
ことができた。ただし彼女がリセットできるのは過去の3日
間までで、さらに1回リセットすると24時間はその能力が封
じられてしまう。そこで2人は3日ごとに時刻をセーブする
作業も行っていた。
そしてその町には他にも様々な超能力を持つ者がいたが、実
はその超能力は街の中だけで発揮されるもので、町を離れる
と失われてしまう。そのため主人公は親元を離れてその町に
1人で暮らしていた。しかも彼らの行動のすべてはある組織
に管理されていた。
という背景で、別の手段を用いて彼女より遠い過去まで遡る
ことのできる能力を持っていた老人が、その能力を奪われた
ことから事件が始まる。果たしてその背後に潜むものは…?
そこに個人の未来を透視することのできる能力ゆえに組織に
軟禁されている女性などが絡んで前編は語られて行く。

出演は、2014年3月紹介『パズル』などの野村周平、2016年
8月21日題名紹介『オケ老人』などの黒島結菜。さらに、平
佑奈、健太郎、玉城ティナ、加賀まりこ、及川光博らが脇を
固めている。
公開では2部作に分けられるが、試写会では前後編が連続で
上映された。そこで上に書いたのは前編の概要だが、これは
一般の観客にも判り易い、いわゆる超能力物といった感じの
作品になっている。
ところが後編では、彼らを管理する組織との対立という図式
が登場して、さらに発揮される超能力も通常とは少し異なる
ものになって、かなり複雑な展開となっている。これは案外
SFファン向けの作品と言えそうだ。
いろいろな超能力が顕在している世界ということでは2006年
にスタートしたアメリカのテレビシリーズ『HEROES』などに
も影響されているのかな? それが原作でも最終巻で高い評
価を得たようだから、そこはオリジナリティなのだろう。そ
の辺を深川監督も巧みに脚色したようだ。
因に監督は、2010年『半分の月がのぼる空』で評判になった
が、2008年7月紹介『真木栗の穴』のような作品も手掛けて
いるからファンタシー系の物語にも理解がありそうだ。

公開は前編が3月25日より、後編は5月13日より、2部作連
続での全国ロードショウとなる。

『バーフバリ伝説誕生』“బాహుబలి:ద బిగినింగ”
2013年7月紹介『マッキー』のS.S.ラージャマウリ脚本・
監督によるインドの伝承叙事詩からインスパイアされたとい
う歴史活劇。前作と同じくテグル語の作品だが、ヒンディー
語、タミル語への吹替え版も含めてヒンディー作品以外では
初の全インド第1位を記録したそうだ。
物語の開幕は大きな瀧の滝壷付近。その水飛沫の上がる中を
高貴な服装の女性が赤子を抱えて彷徨っている。その背後に
は追っ手が迫り、遂に女性は赤子と共に入水、しかし赤子は
彼女の手で水面高く掲げられていた。
こうして救われた赤子は麓の村で育てられるが、彼には瀧の
上の世界への強い憧れが消えなかった。そして成長した若者
は瀧の登頂に挑み続け、遂にその想いを達成する。そこには
暴君に反抗する民がおり、若者は彼らと共に行動する。
そこは50年前までは平和な王国だったが、先王の死後の家督
争いで本来の皇太子が殺され、その息子も行方不明となって
いた。そこに蛮族の侵入も重なって遂には横暴な支配者が国
民を戦いに駆り立てる国家になっていたのだ。
その戦いの渦中に飛び込んだ主人公だったが…。

出演は、ラージャマウリ監督とは2005年以来2度目の顔合わ
せというプラバース、俳優になる以前はVFXコーディネー
ターなども務めたというラーナー・ダッグバーティ、モデル
なども務めてインドのファッションアイコン的存在とされる
タマンナー。
他に2011年『神さまがくれた娘』などのアヌシュカ・シェッ
ティ、ラムヤ・クリシュナ、2016年『チャーリー Charlie』
などのナーサル、2014年『チェンナイ・エクスプレス』など
のサティヤラージらが共演している。
また全編を彩るVFXの制作にはILMや、2012年12月紹介
『ライフ・オブ・パイ』を手掛けたリズム&ヒューズなど、
世界5カ国16社から600人を超えるスタッフが結集したとの
ことだ。
そのVFXでは巻頭から圧倒されるような景観が登場して、
それは見事な映像になっている。ただし物語の展開が、主人
公にとっての現在と25年前と50年前とが交錯し、さらに主人
公と父親を同じ俳優が演じているのが多少ややこしい。
でもまあその辺は徐々に判ってはくるのだが…。実は本作は
2部作の前編で、その終り方もあまりに強烈なのだ。クリフ
ハンガーは連続ものでは常套手段ではあるが、まさかここで
終るとは…。
実際に2部作であることを知らずに観た人たちは唖然として
いたようだ。幸い僕は2部作を心得ていたが、それでもまさ
かここで終るとは思っていなかった。これは本当に後編が待
ち遠しくなる展開だ。

公開は4月8日より、東京は新宿ピカデリー、大阪はなんば
パークスシネマ他で全国順次ロードショウ。
因に後編はインドで4月公開予定となっている。


『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』“Jackie”
1963年11月22日日本時間32時30分に起きたケネディ、アメ
リカ大統領暗殺事件と、その後のジャクリーン・ケネディの
姿を追ったドラマ作品。
この日のことはよく覚えている。この日は、翌年に開催され
る東京オリンピックに向けての日米間初の衛星テレビ中継が
行われることになっており、僕は早朝からテレビを点けてそ
の画面を見ていたのだ。
そこに飛び込んできたのが大統領が狙撃されたらしいという
第1報だった。当時中学生だった僕にとって、史上最年少で
アメリカ大統領になったケネディは英雄であり、その英雄を
襲った悲劇に呆然としたものだ。
僕にはそんな思い出もある出来事だが、本作では僕の予想を
覆す真実が描かれる。それは当時のケネディが政治的な実績
もなく再選すら覚束ない状況で、ダラスでのパレードも人気
稼ぎだけのものだったということだ。
そして映画の中ではロバート・ケネディの台詞として「実績
と言えるのはキューバ危機の回避だけで、しかもそれはソ連
邦との対立を煽り、今思えばやるべきではなかった」とまで
言われてしまう。
確かにそれは、その後のヴェトナム戦争の泥沼にアメリカを
引き摺り込む原因になったともされているものだ。こうした
ジョン・Fの人気のなさの中でのジャッキーの採った行動が
描かれている。

出演は、本作でオスカー候補になっているナタリー・ポート
マン。他に、ピーター・サースガード、2016年11月27日題名
紹介『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』などのグレタ
・ガーウィグ、2004年1月紹介『ビッグ・フィッシュ』など
のビリー・クラダップ、今年1月他界したジョン・ハートら
が脇を固めている。
監督は、2012年10月28日付「第25回東京国際映画祭」で紹
介『NO』などのパブロ・ラライン、脚本は2014年『メイズ
・ランナー』などのノア・オッペンハイム。製作はダーレン
・アロノフスキーが担当した。
ポートマンはアロノフスキーとの関係で出たのかな? 何て
思いながら観に行ったら、プロローグからそのそっくりぶり
にびっくり。特殊メイクの成果もあるが、見事に僕の記憶し
ているジャクリーヌ・ケネディの姿になっていた。
映画の中では、ジャクリーヌがホワイトハウスの内部を紹介
したテレビのアーカイブ映像なども登場するが、元々が当時
のテレビ画面で不鮮明なこともあり、どこまでが本物でどこ
からがポートマンなのか、全く区別できなかった。
その変身ぶりも含めて渾身の演技と言えそうだ。これを観る
だけでも価値のある作品となっている。それにジャクリーヌ
が果たした役割も見事に描かれていて正に裏面史だが、それ
以上に追及しないところも好感する作品だった。

公開3月31日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で、全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『MY FIRST STORY DOCUMENTARY FILM 全心』
(結成から5年で日本武道館に駆け上ったロックバンドを、
その前に行った47都道府県全てでのライヴツアーから追った
ドキュメンタリー。と言う触れ込みで観に行った作品だが、
そこには見事な人間模様が描かれていた。それはヴォーカル
がのどのポリープに脅かされているなど有り勝ちなものから
始まるのだが…。実はそのヴォーカルがある芸能一家の一員
で、両親は離婚しているが共に著名な歌手、兄も著名ロック
バンドを率いている。それはファンには周知のことなのだろ
うが、その極めて特殊な環境で成長した若者の魂の叫びが見
事に表現されていた。そこには家族への思いなども織り込ま
れ、ファンならずとも感銘を受ける作品だった。公開は2月
17日より、2週間限定で全国ロードショウ。)
『ボヤージュ・オブ・タイム』
          “Voyage of Time: Life's Journey”
(2011年6月紹介『ツリー・オブ・ライフ』などのテレンス
・マリック監督が大宇宙の壮大な歩みを描いた新作。以前は
寡作と紹介した監督だったが、近年は創作意欲が増している
ようで、昨年に続いての新作となっている。ただし僕は昨年
の作品は試写を観ておらず、個人的には2011年6月紹介『天
国の日々』の再公開以来となる。しかも本作はドキュメンタ
リーに近いもので、それも内容が深遠だから、観客としては
かなり戸惑う作品だ。ただ僕にとしては『ツリー・オブ・ラ
イフ』の時に感じたのと同じ感覚に襲われたもので、これは
もはやテレンス・マリックはそのリメイクに向けて動くべき
ではないか…とも思った。公開は3月10日より、東京はTOHO
シネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)
『光をくれた人』“The Light Between Oceans”
(世界中でベストセラーになったという原作小説を、2013年
4月紹介『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』など
のデレク・シアンフランス監督が映画化した作品。第1次大
戦後の時代背景で、欧州戦線の死地から生還した男が孤独な
灯台守の職に就く。それは孤独な仕事だったが、やがて妻と
なる女性も現れる。しかしそれが悲劇を生んで行く。出演は
2012年7月紹介『プロメテウス』などのマイクル・ファスベ
ンダー、2015年8月紹介『コードネームU.N.C.L.E.』などの
アリシア・ヴィキャンデル、2012年8月紹介『ボーン・レガ
シー』などのレイチェル・ワイズ。正に究極の人間ドラマと
も言える作品だ。公開は3月31日より、東京はTOHOシネマズ
シャンテ他で全国ロードショウ。)
『フリー・ファイヤー』“Free Fire”
(2016年5月紹介『ハイ・ライズ』などのエイミー・ジャン
プ(脚本)とベン・ウィートリー(監督)のコンビが再び放
つ狂気の世界。舞台背景は1978年ボストン。アイルランド系
のギャング一味が銃器の購入で男と接触する。ところがその
男は別のギャング団の一員で、突如銃撃戦が始まる。傘工場
とされる大きな空間の中で熾烈な銃撃戦が展開されるという
お話だが、何と言うか正に狂気の産物という感じで、これが
この脚本家、監督コンビの真骨頂なのだろう。出演はブリー
・ラースン、シャールト・コプリー、キリアン・マーフィ、
アーミー・ハマー、ジャック・レイナー、サム・ライリー。
製作総指揮をマーティン・スコセッシが務めている作品だ。
公開は4月29日より全国ロードショウ。)
『ねこあつめの家』
(スマートフォンのゲームアプリをドラマ化、実写映画化し
た作品。主人公はスランプに陥った作家。筆が進まない彼は
とある田舎町に引っ越す。そこでもスランプは変わらなかっ
たが、ふと庭先に現れたねこに興味を持ち始め、そこから生
活が変わりだす。出演は伊藤淳史、忽那汐里。他に田口トモ
ロヲ、木村多江、大久保佳代子らが脇を固めている。監督は
2013年12月紹介『ゲームセンターCX THE MOVIE』などの
蔵方政俊が担当した。お話し自体はどうということもないも
のだし、そこに捻りなどもないものだが、とにかく猫のかわ
いらしさは描けている。猫好きには堪らない作品と言えそう
だ。公開は4月8日より、東京は新宿武蔵野館他で全国ロー
ドショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお、今週はもう1本の完成披露試写が行われたが、情報解
禁が後日なので、紹介はそれ以降にさせて貰う。



2017年02月05日(日) 虐殺器官、パッセンジャー

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『虐殺器官』
2015年の10月と11月に連続公開された『屍者の帝国』『ハー
モニー』に続く伊藤計劃の原作をアニメーション映像化する
「Project Itoh」3部作の第3作。
世界中の紛争地帯で特殊任務に当たる米軍部隊の大尉を語り
手として、その紛争の陰に潜む存在を追跡する任務を描く。
そこには言語学を主な手段として人間の本性を呼び起こし、
人類を虐殺マシンへと変貌させる男がいた。

脚本と監督は、2014年『機動戦士ガンダムUC』などのコンテ
を担当してきた村瀬修功。テレビアニメでは監督作品もある
ようだが、劇場作品は監督デビュー作のようだ。
キャラクター原案は3部作の全作を手掛けるredjuice。声優
は中村悠一、三上哲、梶裕貴、石川界人、大塚明夫らが担当
している。
実は「Project Itoh」の前の2作も観たが、2013年『ハル』
の牧原亮太郎と、2013年10月紹介『寫眞館』のなかむらたか
し&2006年11月紹介『鉄コン筋クリート』のマイクル・アリ
アス監督が手掛けたそれらは、アニメーションとしては優秀
かもしれないが、物語は舌足らずで不満だった。
それはまあ、原作の読者には理解できるのかもしれないが、
一般の観客は無視したような、独り善がり(第2作の監督は
2人だが)の作品にも見えた。
それに対して本作は、物語もしっかりと伝えられているし、
SF的なギミックもたっぷりで原作のファンだけでなく一般
の観客にもアピールできる作品と言える。
ただし根本のSFの部分はかなり深遠で、まあそれは聞き流
しても構わないものではあるのかもしれないが、じっくり観
るとさすがに評判の高い原作だと思わせる。その点を監督も
良く理解して描いている点も見事な作品だ。
もっともその部分をしっかり語っているために、却ってSF
的なギミックの部分が浮いて感じるのは痛し痒しで、これな
らSFにしなくても良かったのではないかとも思える。
特に近年、『007』や『ミッション:インポッシブル』が
何かというと衛星兵器のような近SF的題材を多くしている
のを観ていると、この作品からは敢えてSF的なギミックを
外して勝負して欲しかったようにも感じた。
多分それは原作のファンからは批判を浴びるのだろうが、本
作の本質はSFの部分ではないことが、この作品を観ていて
強く感じられたものだ。原作者の夭逝を惜しむ気持ちを強く
する、そんな想いのする作品だ。

公開は2月3日より、全国ロードショウとなっている。

『パッセンジャー』“Passengers”
2014年8月紹介『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』な
どのクリス・プラットと、2012年『世界にひとつのプレイブ
ック』でオスカー受賞のジェニファー・ローレンス共演で、
大宇宙に取り残された男女の姿を描いたドラマ作品。
舞台は大宇宙を半光速で飛行する巨大宇宙船。前方にはエネ
ルギーフィールドを展開して障害物を排除していたが、航路
上で小惑星帯に遭遇し、迂回進路は採ったものの一つに衝突
してしまう。そして生じた不具合が船内で悲劇を生み出す。
その宇宙船の航路は片道120年。5000人の乗客と200余人のク
ルーは全員が冬眠状態でその間を過ごすことになっていた。
ところが衝突で生じた不具合が乗客の1人を覚醒させてしま
う。それは出発から30年、まだ飛行は90年を残していた。
それはつまり、他の乗客が覚醒する前に自身の寿命が尽きて
しまうことを意味していた。そしてその1年後にもう1人が
覚醒し、以後は2人の暮らしとなるが、そこからいろいろな
ドラマが生じて行く。

監督はノルウェー出身で2014年『イミテーション・ゲーム』
などのモルテン・ティルドゥム。脚本と製作総指揮は2012年
7月紹介『プロメテウス』などのジョン・スペイツ。彼は、
2012年10月紹介『ダーケストアワー・消滅』や、2016年12月
紹介『ドクター・ストレンジ』の共同脚本にも参加している
SF映画の専門家だ。
さらに共演者には、2009年1月紹介『フロスト×ニクソン』
などのマイクル・シーンや、『マトリックス』3部作などの
ローレンス・フィッシュバーンらが登場してドラマに様々な
味付けもしている。
そして映画は、アカデミー賞で美術部門にノミネートされた
プロダクションデザインとセットデコレーションに彩られて
いるものだ。
恒星間飛行で生じる時間経過を絡めたラヴストーリーとして
は、小説ではアーサー・C・クラークの短編「遙かなる地球
の歌」が思い浮かぶが、映画でこのテーマを描いたのは初め
てかもしれない。
そんなSF映画では珍しいラヴストーリーが、ジェニファー
・ローレンスとクリス・プラットによって演じられて行く。
それはSFでしか味わうことのできない特別なもの。これこ
そが本作の醍醐味とも言える。
という作品だが、実はSFファン的にはかなり問題を抱えて
いる。
それは例えば人工重力の問題で、映画の中では突然そのシス
テムがダウンするという描写があり、そこではジェニファー
・ローレンスが地上では起きないトラブルに巻き込まれるの
だが…。実はこの描写がありえない。
元々水の振る舞いがこの様にはならない点はさておき、シス
テムダウンするような重力装置があるのなら、宇宙船が回転
している理由がないのだ。でもまあ映像的にはそれを見せた
かったのだろう。それでこの点は目を瞑ることにしたい。
しかしさらに大きな問題は、宇宙空間に出た主人公の流した
涙が頬を伝う点だ。これは1977年公開『カプリコン・1』で
も指摘されていたもので、それを気付かなかったとは言って
欲しくない。
しかしこの点はある種の確信犯かな? 判っているけど敢え
てやっているのなら、それはSF映画への愛情として、これ
も目を瞑ることにしよう。

公開は3月24日より、3Dでの全国ロードショウとなる。

この週は他に
『マイ ビューティフル ガーデン』
             “This Beautiful Fantastic”
(テレビの『ダウントン・アビー』でブレイクしたジェシカ
・ブラウン・フィンドレイの主演で、CM出身のサイモン・
アバウドが監督したヒューマンドラマ。生後間もなく公園に
捨てられ、自然に対してトラウマ的恐怖心を持ち、何にでも
秩序を求めるちょっと風変わりな性格に育った女性が、引っ
越した家の隣人や周囲の人たちの影響で徐々に変わって行く
姿が描かれる。共演にトム・ウィルキンスン、アンドリュー
・スコット、ジェレミー・アーヴィング。小さな庭付きの戸
建てに住む自分としては、彼女の家の庭の様子が興味深く楽
しめたし、何よりそれを囲む人々の温かい心地良さが素晴ら
しい作品だった。公開は4月、東京はシネスイッチ銀座他で
全国順次ロードショウ。)
『トリプルX:再起動』“xXx: Return of Xander Cage”
(2002年9月紹介『トリプルX』の続き。実はシリーズでは
2005年に“XXX: State of the Union”という作品が作られ
たが日本では劇場公開もされなかった。その作品も踏まえて
本作は作られているが、物語には直接的な関係はない。とは
言うものの、組織のリーダーが新たなスポーツの天才をリク
ルートしているところから始まるのは、思想的にはその流れ
からの派生かな。ここでのゲスト出演者も見ものだ。その現
場が襲われるところから物語が始まる。後はアクションに継
ぐアクションで、世界の敵との戦いが描かれるものだ。ただ
第1作で主人公は全くの一匹狼だったが、今回チームプレイ
なのは少し気になった。でも人気ヒーローのカムバックは嬉
しいものだ。公開は2月24日より全国ロードショウ。)
『暗黒女子』
(2016年6月紹介『MARS』などの耶雲哉治監督で、イヤ
ミスと呼ばれる後味の悪さが売り物の原作小説の映画化。お
嬢様学校の文芸サークルを舞台に、メムバーの死の謎を各自
が書いた小説の朗読によって解き明かして行く。それは視点
の変化によってメムバーの違った側面が現れ、それぞれが異
なる犯人を糾弾するものだ。確かに嫌な感じの描写が続く。
でもまあ結末は僕等からすると想定内かな。それが目新しく
感じる人もいるのだろうけど。出演はいずれも雑誌モデル出
身の清水富美加と飯豊まりえ。他のメムバーに清野菜名、玉
城ティナ、小島梨里杏、平佑奈。脚本は2013年8月紹介『あ
の日見た花の名前を僕達はまだ知らない』などの岡田麿里。
公開は4月1日より全国ロードショウ。)
『花戦さ』
(華道池坊の源流を描く作品。戦国末期、岐阜城に招かれて
織田信長に生け花を献じた池坊専好は、豊臣の世になっても
京都で隆盛を誇っていた。ところが秀吉の横暴が影を落とし
始める。そして千利休が不興を買って切腹を命じられ、次に
は池坊に魔手が伸びるが…。その秀吉の横暴に専好は生け花
を持って諌めに掛る。どこまでが史実に則ったものかは判ら
ないが、秀吉の茶会に登場する黄金の茶室や生け花の技法な
ど、見ものはいろいろある作品だ。出演は野村萬斎、市川猿
之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市。鬼塚忠の原作か
ら2011年7月紹介『こち亀』などの森下佳子が脚色。2006年
8月紹介『地下鉄(メトロ)に乗って』などの篠原哲雄が監
督した。公開は6月3日より全国ロードショウ。)
『ブルーハーツが聴こえる』
(1995年に解散したロックバンド「THE BLUE HEARTS」の楽
曲を、飯塚健、下山天、井口昇、清水崇、工藤伸一、李相日
の各監督がそれぞれにインスパイアされた物語で映像化した
オムニバス作品。さらに出演者には尾野真千子、市原隼人、
斎藤工、優香、永瀬正敏、豊川悦司らの面々が並んでいる。
作品はそれぞれに監督の特色を出したもので、中でも下山監
督はVFXも多用したSFもの、井口監督もらしさを出して
いる。その一方で李監督の作品は正に今を描いた作品で、そ
れを忘れ去らせないようにする意識が感じられた。この作品
に関しては、このテーマで別のオムニバスを作っても良いと
も思えたものだ。公開は4月8日より、東京は新宿バルト9
他で全国ロードショウ。)
『日本と再生 光と風のギガワット作戦』
(3・11以降の日本の電力事情と世界の動きを追ったドキュ
メンタリー。巻頭では福島原子力発電所の爆発の様子が紹介
され、その衝撃の映像で世界中の原子力政策が転換したこと
が報告される。しかし日本では何故か政策は転換せず、寧ろ
放射能被害を受けながらも世界中で唯一とも言える原発推進
が堅持された。その理由が絵解きで紹介されるが、何ともそ
れが不明瞭で、やはりこの点はタブーなのだと再認識もさせ
られた。その一方で世界の風力発電の大半が中国企業の手で
進められているという事実が紹介され、これでは却って日本
の風力発電は進み辛いなとも思わせる。その他の海外取材は
すでに他でも紹介されたものが多く、日本独自の視点が物足
りなかった。公開は2月25日より全国ロードショウ。)
『お嬢さん』“아가씨”
(「このミス」で1位に輝いたイギリスの小説「荊の城」か
ら舞台を日本統治下の韓国に移して映像化した作品。孤児の
韓国人女性が日本人の家に女中として潜入。その家督を狙う
詐欺事件の顛末が描かれる。そこに濃厚なエロスも描かれ、
カンヌ国際映画祭で韓国人初の芸術貢献賞を受賞したのも頷
ける作品になっている。因に作中では日本語も多く聞かれる
が、そこには放送禁止用語が満載で、これが韓国でどのよう
に処理(字幕?)されたかは判らないが、到底日本のテレビ
では放送できない代物。正にいやはやという感じなのも面白
かった。脚本と監督はパク・チャヌク。海外ではすでに32以
上の受賞を果たしているそうだ。公開は3月3日より、東京
はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)
『スレイブメン』
(『ブルーハーツが聴こえる』の一編も手掛けた井口昇監督
の最新作。気弱な映画監督が偶然手に入れた超能力を発揮す
る仮面を巡って、善悪が入り混じっての活劇が展開される。
出演は中村優一、奥田佳弥子、味岡ちえり、岩永洋昭、小田
井涼平、阿部亮平、津田寛治。僕は監督と同じ苗字ではある
が親戚ではない。とは言え気にはなるから出来るだけ観てい
るが、今までの作品はどちらかというと血みどろ系で、海外
での評価も理解はするが自分としては退いてしまうところが
多かった。しかし本作ではその部分が多少軽減されているの
かな? ただその分のインパクトは減ってしまった感じで、
これが今後どうなるか気になる所だ。公開は3月10日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『ムーンライト』“Moonlight”
(下層階級が住む街に誕生した黒人少年の成長を通じてアメ
リカの今を問い掛けてくる作品。その少年の呼び名「リトル
→シャロン→ブラック」を章題とする3章で構成され、麻薬
常習者の母親によって育てられた少年が、周囲の助けも借り
ながら成長して行く。とは言うもののこの結末は、僕には容
認できないがこれが現実ということなのだろう。出演は、最
近の『007』でミス・マネーペニー役のナオミ・ハリス、
『ハンガー・ゲーム』などのマハーシャラ・アリ。他にはシ
ンガー・ソングライターやテレビ俳優らが少年と周囲の人々
を演じている。脚本と監督は本作が2作目のバリー・ジェン
キンス。本作でオスカー候補にもなった。公開は4月、東京
はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二