井口健二のOn the Production
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2016年12月25日(日) ハードコア、君と100回目の恋

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ハードコア』“Hardcore Henry”
2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのティムール
・ベクマンベトフ監督がプロデューサーとして参加している
FPS(First-person shooter)のゲームを模した一人称の
カメラ撮影によるアクション作品。
物語は、カメラの視点でもある主人公が目覚めるところから
始まる。そこは研究施設のような場所で、ベッドに寝かされ
た主人公は過去の記憶が蘇らないまま、切断された手足に女
性の手でメカニカルな義肢が装着される。
ところがそこに謎の一団が侵入し施設の破壊を始める。この
事態に主人公は辛くもその場を脱出するが、侵入者は主人公
の看護に当っていた女性を連れ去る。そこで主人公は女性の
救出に向かうことになるが…。
メカニカルの手足を装着された主人公は、まだ声帯が装着さ
れていないために喋ることはできないものの、身体能力では
驚異的な行動力を発揮し始める。という展開が、全編一人称
のカメラで描かれる。
そこでは銃撃戦から格闘技、また至近距離での爆発やバイク
アクション、さらにはフリークライミングによる外壁登りに
スカイアクションと、ありとあらゆるアクションシーンが、
一人称の視点で観られるのだ。
これはもう、これらのアクションを実体験している気分にも
させてくれる作品になっている。

出演は、2010年3月紹介『第9地区』などのシャールト・コ
プリー、2016年11月13日題名紹介『マグニフィセント・セブ
ン』などのヘイリー・ベネット。さらにロシア・モスクワ出
身のダニーラ・コズロフスキー、2016年1月紹介『ヘイトフ
ル・エイト』などのティム・ロスらが脇を固めている。
脚本と監督は、モスクワのパンクバンド「バイティング・エ
ルボーズ」のフロントマンを務めるイリヤ・ナイシュラー。
作品は、ナイシュラーが自分のバンドのPVとして製作した
短編をYouTubeにアップしたところ、それがベクマンベトフ
の目に留まり、ベクマンベトフからコンタクトが来て長編化
を勧められたというものだ。
そして撮影はゴープロというアクション用のカメラで行われ
たが、そのシステムが大画面での上映にマッチするかなど、
様々な実験や試行錯誤も行われたようだ。そこにはゴープロ
の開発チームも参加して綿密な準備が行われている。
しかし実際の撮影はオールモスクワロケで行われたものの、
悪天候や例年より早かった冬の訪れなどに中断を余儀なくさ
れ、遂には製作資金が底を突いてクラウドファンディングの
助けも得たとのことだ。
内容的には、2012年9月紹介『ユニバーサル・ソルジャー』
なども想起するものだが、FPSという視点のユニークさは
抜群で、特にフリークライミングのシーンなどは、本当に手
に汗を握る映像になっている。
一方、実は敵の侵入者のリーダーがテレキネシスを発揮して
いるらしいのだが、それがFPSでは垣間見られるだけで、
その辺のちょっともどかしさを感じさせる演出も巧みで良い
感じだった。
POV(Point of View)とは異なる新たな映像世界の誕生
とも言えそうだ。

公開は4月1日より、東京は新宿バルト9他で、全国ロード
ショウとなる。

『君と100回目の恋』
2014年10月紹介『マエストロ!』に続くシンガーソングライ
ターのmiwaがヒロインを務めるかなりファンタスティックな
要素を含む作品。
主人公は同じ大学に通う幼馴染の男子とバンドを組んでいる
女子。そのバンドは地元の花火大会のライヴステージに出演
することになっており、彼女はそのステージの後にイギリス
への留学が決まっている。
そんな彼女は幼馴染の男子に恋心を持っていたが、何事にも
卒がなくクールな彼にはまだ告白もしていない。その他にも
トラブルが発生し、モヤモヤした気分で臨んだステージは彼
女にとって最悪の出来だった。
そのため泣きながら会場を飛び出した彼女は、何と致命的な
事故に遭ってしまう。ところが彼女がふと目覚めると、彼女
の時間は事故の数日前に戻っていた。そして彼女が経験した
出来事が次々に繰り返されて行く。
何が起ったのか戸惑う彼女に、その謎の鍵を幼馴染の男子が
握っていた。

共演は、2015年11月1日付「第28回東京国際映画祭」で紹介
『残穢−住んではいけない部屋』などの坂口健太郎。他に、
2012年9月紹介『大奥〜永遠〜』などの竜星涼、2015年7月
紹介『TNGパトレイバー』などの真野恵里菜、2016年4月
紹介『秘密 THE TOP SECRET』などの泉澤祐希。
さらに田辺誠一、大石吾郎、2016年3月紹介『テラフォーマ
ーズ』などの太田莉菜、2012年7月紹介『ひみつのアッコち
ゃん』などの堀内敬子らが脇を固めている。
2015年NHK大河ドラマ『花燃ゆ』などの大島里美の脚本か
ら、監督は、東京藝術大学大学院映像研究科修了の月川翔が
担当した。
物語の展開は、2005年3月紹介『バタフライ・エフェクト』
を想起するものだが、時間を繰り返すほどドツボに嵌って行
くハリウッド作品に対して、本作ではそこに巻き込まれた主
人公たちの人としての在り方が追及されている。
その視点は間違いないものだし、SFファンとして作者がこ
の作品で描きたかったものは理解するところだ。しかし本作
では、肝心要の繰り返される出来事が曖昧で、運命を避けら
れない理由がはっきりしない。
それは勿論、そこに作者らの視点がないのは明らかだが、そ
れが描かれないとまるで主人公がバカにしか見えなくなって
しまう。つまり避けられないことが偶然であれ必然であれ、
観客にそれを提示することが作者の義務だと思うのだ。
それはかなり周到に考える必要があるものだし、作者の力量
がそこに至っていないのかもしれないが、観客を納得させる
何らかのアイデアは出すべきだし、それができない内は本作
は完成していないと思う。
口煩いSFファンの言い草だが、そこにちゃんと拘りがあれ
ば、本作は名作になり得たと思うのだ。

公開は2月4日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『逆行』“River”
(ラオス農村部の診療所で働く白人の医師が、休養のため訪
れたリゾート地の島で殺人事件に巻き込まれる。しかも状況
から犯人とされた医師は辛くも島を脱出するが、共産国家の
威信に掛けた追跡が始まる。果たして彼は生き延びて自らの
嫌疑を晴らすことができるのか…? 2016年11月13日題名紹
介『バンコクナイツ』でも一部にラオスロケが行われていた
が、本作はほぼ全編ラオスで撮影されたもので、東南アジア
でもまた少し違った雰囲気が味わえる。主演はドナルド・サ
ザーランドの息子のロッシフ・サザーランド。脚本と監督は
本作が長編第1作のジェイミー・M・ダグ。異郷での逃亡劇
はかなりワクワクする作品だ。公開は3月11日より、東京は
渋谷ユーロスペース他で、全国順次ロードショウ。)
『恋愛奇譚集』
(日本でも雑誌やCMのモデルとして活動している台湾女優
ヤオ・アイニンが日本映画に初主演した作品。福島県の田園
地帯を背景に、コミュニケーションのもどかしさをちょっと
ファンタスティックな要素も織り込みながら描いて行く。共
演は2008年11月紹介『ヘブンズ・ドア』に出演の和田聰宏と
福田麻由子、2011年6月紹介『極道めし』などの内田慈。脚
本は2007年9月紹介『未来予想図』などの狗飼恭子、監督は
2016年1月紹介『華魂 幻影』に助監督として参加していた
倉本雷大。ファンタスティックな部分と本筋との関りは多少
微妙だが、全体はテーマ性も明確な作品になっている。公開
は2月4日より、新宿シネマカリテ、フォーラム福島他で、
全国順次ロードショウ。)
『ザ・コンサルタント』“The Accountant”
(2012年9月紹介『アルゴ』などのベン・アフレックが裏社
会に君臨する会計コンサルタントに扮する捻りの利いたヒー
ロー(?)アクション。そんな主人公が、ある企業の数10年
に亙る不正経理を見破ったことから危機に見舞われる。それ
は財務省やマフィアも巻き込んだ事件となる。共演は2013年
6月紹介『エンド・オブ・ウォッチ』などのアナ・ケンドリ
ックと、2015年8月紹介『Re:LIFE〜リライフ〜』などのJ
・K・シモンズ。アフレックはブルース・ウェインに扮する
『ジャスティス』も控えているが、本作では数字に天才的な
頭脳を発揮する一方で、重火器の扱いにも優れた新たなヒー
ロー像に挑戦している。公開は1月21日より、東京は丸の内
ピカデリー、新宿ピカデリー他で、全国ロードショウ。)
『アシュラ』“아수라”
(不正の蔓延る韓国で、開発の進む地方都市を舞台に、不正
にまみれた市長に関る警察官の姿が描かれる。中央政界から
地方自治体まで、韓国の不正体質は繰り返し映画化されてき
たが、さらに本作では主人公の正義感も曖昧で、それは強烈
な作品になっている。脚本監督は2003年9月紹介『MUSA
-武士-』などのキム・ソンス。出演は『MUSA』にも出て
いたチョン・ウソンと、2009年1月紹介『アンティーク』な
どのチュ・ジフン。さらに2008年8月紹介『ハピネス』など
のファン・ジョンミン、2011年7月紹介『アジョシ』などの
クァク・ドウォンらが脇を固めている。体制べったりの日本
映画では、まずはお目に掛れない作品だ。公開は3月4日よ
り、東京は新宿武蔵野館他で、全国順次ロードショウ。)
『相棒 劇場版�検�
(テレビでも高視聴率を続ける水谷豊主演シリーズの劇場版
第4作。物語の背景は数年前に海外で起きた邦人拉致事件。
その因縁が国内での大規模テロ事件となって甦る。自国民の
安全か国際テロとの対決か。弱腰な政府の思惑が揺れ動く中
で、その謎を解くため、仲間由紀恵、及川光博、石坂浩二ら
劇場版ならではのメムバーも参戦する。ゲストは北村一輝、
山口まゆ、鹿賀丈史。脚本と監督は、テレビシリーズも手掛
ける太田愛と橋本一。僕は劇場版を観るのは初めてだが、後
半には大掛かりなモブシーンなども登場して、映画館の大画
面でこそ楽しめる、テレビ画面には収まり切れないスケール
の作品に仕上げられていた。公開は2月11日より、全国ロー
ドショウ。)
『彼らが本気で編むときは』
(ジャニーズ生田斗真が性転換者に扮して、セクシャル・マ
イノリティの問題に迫るドラマ作品。物語の中心は小学生の
少女。母子家庭の母親に生活力がなく、その母親が家を出て
しまい彼女は叔父の家に向かう。ところがその家で妻と紹介
されたのは性転換者だった。脚本と監督は、2006年1月紹介
『かもめ食堂』などの荻上直子。今までの作品では癒し系な
どとも呼ばれる監督が、アメリカ留学時の自らの体験などを
踏まえて新たなジャンルに踏み出した作品だ。共演は桐谷健
太、柿原りんか。その脇をミムラ、小池栄子、りりィ、門脇
麦、田中美佐子らが固めている。題名は主人公らが或る物を
手編みで作ることに由来するが、その件では居住まいを正す
思いがした。公開は2月25日より、全国ロードショウ。)
『スプリング、ハズ、カム』
(広島から上京して東京の大学に通う一人娘。その暮らす場
所を探すために、冬の一日を東京世田谷で過ごす父子の姿を
追ったロードムーヴィ風の作品。それは最初は不動産屋の案
内で、続いては住むことになるアパートの大家と一緒、そし
て最後は何故か異国人と共に。祖師ヶ谷大蔵のウルトラマン
のバナーなども登場して、東京で暮らしている人間が観ても
ちょっと新鮮な想いのする物語が展開される。そしてそこに
親から子への深い思いが描かれる。出演は、落語家の柳家喬
太郎と2015年『ソロモンの偽証』などの石井杏奈。他に声優
の朴璐美、お笑いトリオ「東京03」の角田晃広らが脇を固め
ている。脚本と監督は2012年『あかぼし』の吉野竜平。公開
は2月18日より、新宿武蔵野館にてモーニングショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年12月18日(日) バイオハザード:ザ・ファイナル、汚れたミルク あるセールスマンの告発

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『バイオハザード:ザ・ファイナル』
         “Resident Evil: The Final Chapter”
日本のゲームを基に2001年にスタートしたシリーズの第6作
にして最終章。
最後の舞台はシリーズが開幕したラクーンシティ。シティを
支配するレッドクイーンが48時間後の人類滅亡を宣言し、そ
れを阻止するため、T−ウィルスに感染したもの全てを死滅
させるワクチンを手に入れるミッションが発動する。
そのためアリスは爆心地の穴に開いたトンネルから地下要塞
と化したアンブレラ社の研究施設ハイブに潜入。しかしそこ
には強力な警備員たちと様々な罠、そしてアンデッドと生物
兵器たちの群れが待ち構えていた。
果たしてアリスは刻限までにワクチンを手に入れ、地球人類
を救うことができるのか…?

出演は、夫で製作者・脚本家・監督のポール・W・S・アン
ダースンと共に、シリーズ全篇を駆け抜けたアリス役ミラ・
ジョヴォヴィッチ。
それに第3作、第4作に登場したクレア役アリ・ラーター。
さらに第4作、第5作に続いて登場のショーン・ロバーツ、
第2作、第3作以来となるイアン・グレン。
また、オーストラリア出身のルビー・ローズ、アイルランド
出身のオーエン・マッケン、韓国のイ・ジュンギ、キューバ
生まれのウィリアム・レヴィ、日本からROLAらが脇を固
めている。
2012年9月紹介『バイオハザードVリトリビューション』で
は、シリーズ第1作のレイン役ミシェル・ロドリゲスと、第
2作のジル役シエナ・ギロリーを再登場させ、それも含めて
次での終結を予想したが、その通りになってしまった。
その前作の紹介でも書いたが、元々アンダースン監督はこの
シリーズを3部作で構想していたもので、それが大ヒットの
お蔭で延長されていた。しかしちょうど2倍の第6作での終
結は、監督も満足のところだろう。
因に監督は、3部作の構想を普段の生活からゲームへの導入
→ゲーム世界→ゲーム世界からの帰還としていたものだが、
その第3部となる本作は、もっと突飛なものも予想したが、
意外としっとりとした余韻のあるものになっていた。
これは15年間シリーズに付き合ってきた者にも、素敵な贈り
物と言えそうだ。

公開は今週末の12月23日より、全国ロードショウとなる。

『汚れたミルク あるセールスマンの告発』“Tigers”
1990年代後半のパキスタンで起きた多国籍企業の強引な販売
活動による障害事件を描いた実話に基づく作品。
主人公は地元の製薬会社の営業マンだったが外国企業の進出
で取引先を奪われる。そこで彼は自らが外国企業に就職し、
以前の顧客リストを駆使して成績を上げて行くが…。彼の販
売した製品がとんでもない事態を引き起こす。
その原因は企業の責任だけではなかったが、彼にはその事実
を隠蔽しようとする企業の体質が許せなかった。そしてその
事態を告発しようとする主人公の前に、軍警察も絡んだ妨害
工作が立ちはだかる。
物語は告発に踏み切った主人公がドキュメンタリー作家に映
画の製作を依頼する形式で進められ、監督や製作者が弁護士
を交えて各種の問題点を探る模様と共に、再現ドラマで事態
の推移が描かれて行く。

出演は、インド・パキスタンで多数のファンを持つが非ボリ
ウッド映画には初出演のイムラン・ハシュミと、本作が4作
目のギータンジャリ。
その脇を、2009年『ウルヴァリン』などのダニー・ヒュース
トン、2008年1月紹介『君のためなら千回でも』などのカー
リド・アブダッラー、2014年1月紹介『エージェント・ヴィ
ノッド』などのアディル・フセインらが固めている。
脚本と監督は、2005年12月紹介『美しき運命の傷痕』などの
ダニス・タノヴィチ。共同脚本に、2016年7月17日題名紹介
『クワイ河に虹をかけた男』で触れた『レイルウェイ運命の
旅路』のアンディ・パタースンが参加している。
題名からは僕らの世代では「ヒ素ミルク事件」を思い出した
が、全くレヴェルの違う話だった。それは前回題名紹介『ス
ノーデン』の食品版とも言えそうなものだが、それがサスペ
ンスもたっぷりに描かれている。
しかも本作は、実は2014年にインド=フランス=イギリスの
合作で製作されているものだが、それが未だに映画祭以外で
の一般公開がされていないのだそうだ。そんな作品が日本で
世界初公開となる。
映画の巻頭には、1970年代にアメリカ合衆国内で起きた同様
に事件に対する公聴会での音声が流される。そこでは当時の
エドワード・ケネディ上院議員の追及に企業側が屈服してい
る様子が登場する。
つまりその当時から指摘されていた事態が、その後もアフリ
カや南米でも繰り返されたという。これは確かに企業責任も
問われるべきものだろう。しかも本作の一般公開が未だに阻
害される。これもその事態の一因と言えるのかもしれない。

日本公開は3月4日より、東京は新宿シネマカリテ他で、全
国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『人類遺産』“Homo sapiens”
(後半では軍艦島がフィーチャーされる廃墟ばかりを撮影し
たドキュメンタリー(?)作品。ナレーションも音楽も一切
なく。ただ廃墟の映像だけが羅列される。そこには☭の壁画
が飾られた巨大な屋内施設のボロボロに朽ち果てた姿なども
登場する。ただ解説の字幕もないと、自分は何を観ているの
だろう?という気分にもなるが、最近の廃墟マニアと呼ばれ
る人たちにはこれで良いのだろう。その点で言うと本作はド
キュメンタリーではなく、環境ヴィデオのような作品だ。と
は言え映画の最初で日本語の張り紙のされた自転車置き場が
写し出され、それが福島だと理解した時には、自分にそうい
う認識がなくショックを受けた。公開は2月下旬、渋谷シア
ター・イメージフォーラム他で、全国順次ロードショウ。)
『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』
           “Quatsch und die Nasenbarbande”
(世界の12箇所以上の映画祭で観客賞や子供映画賞を受賞し
ている2014年製作のドイツ映画。地図上でドイツのセンター
とされる村を舞台に、その村があまりに平均的であるために
モニタリング会社が進出して巻き起こる騒動を、子供たちの
活躍で収めるというお話。中心になるのは子役というよりま
だ幼児という感じの子供たちで、その子供らの奔放な行動が
ドラマとして描き出されている。しかも合成やそこそこ大掛
かりな屋台崩しなどもあって、それらは大人の目で観ると多
少退いてしまうところもあるが、子供が観るには楽しいもの
だろう。まあたまには童心に返って楽しんで貰いたいという
作品だ。公開は2月11日よりTOHOシネマズ二子玉川他にて、
全国順次ロードショウ。)
『セル』“Cell”
(1970年代『キャリー』、80年代『シャイニング』、90年代
『ミザリー』などのスティーヴン・キングが自らの原作から
脚色も手掛けたホラー作品。よく似た題名では2001年公開の
ターセム監督『ザ・セル』があるが内容は別物。本作のセル
はセルフォン(携帯電話)のことで、携帯依存症の現代人へ
の警鐘のような作品にもなっている。主人公はコミックスの
作家。ようやく作品が出版社に売れ、地元の空港に帰着した
彼の前で惨劇が始まる。それは携帯電話での通話が切っ掛け
だった。出演はジョン・キューザック、サミュエル・L・ジ
ャクスンと、2009年9月紹介『エスター』などのイザベル・
ファーマン。公開は2月11日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ
他で、全国ロードショウ。)
『ゾウを撫でる』
(ウェブサイトのネスレアミューズで配信された1話6分×
10本の短編連作を再編集し、追加撮影も施して仕上げられた
作品。映画製作の裏話を、脚本家、監督から出演者、さらに
は脚本の印刷所、ロケ地のフィルムコミッションまで登場さ
せて各方向から描いて行く。それぞれの脈絡はないが実に巧
みに物語が進行され、正しく映画愛を感じる作品になってい
る。監督は2011年5月紹介『日輪の遺産』などの佐々部清、
脚本も『日輪』などの青島武。出演者には小市慢太郎、高橋
一生、羽田美智子、大杉漣らが顔を揃えている。因に題名は
「群盲象をなでる」の諺から映画製作の各部を描いたものだ
が、象が片仮名なのは映像に掛けたそうだ。公開は1月14日
より、渋谷シネパトス他で全国順次ロードショウ。)
『沈黙−サイレンス−』“Silence”
(2016年10月に記者会見の模様を報告したマーティン・スコ
セッシ監督の最新作がマスコミに披露された。作品は上映時
間2時間41分に及ぶもので、江戸時代初期を背景に江戸幕府
の切支丹弾圧に屈して棄教したとされる師の跡を追って日本
に密入国した2人の宣教師の苦悩と苦闘が、宗教の真の意味
を問う形で描かれる。それはまあ日本人としては多少心苦し
いところもあるが、現代の世界に対しては日本人の意見の方
が正論と言える部分もあり、これから始まる海外での評価も
気になる所だ。なお出演者などは前記の記事をご覧いただき
たい。それにしても台湾ロケされた背景の自然の美しさと、
特に塚本晋也の熱演が印象に残る作品だ。公開は1月21日よ
り、全国ロードショウ。)
『咲-saki-』
(2006年に連載が開始され、すでにインターネットラジオや
ドラマCD、テレビアニメにもなっている人気漫画の実写映
画版。自分の学生時代は麻雀ブームで、僕はさほど熱心でな
くてもそれなりに試合のルールなどは知っているものだが。
そんな目で観ていてこの作品は実に面白かった。それがちゃ
んとやる人にはどう映るか知らないが。とにかく終盤の有り
得ない展開には笑いが止まらなかった。そんな馬鹿々々しい
けど愉快な作品と言える。出演は浜辺美波、浅川梨奈、廣田
あいか。他に夏菜、佐野ひなこらが脇を固めている。監督は
2010年5月紹介『結び目』などの小沼雄一。因に主人公らの
手つきはプロの雀士の指導による演技だそうだ。公開は2月
3日より、TOHOシネマズ日本橋他で全国ロードショウ。)
『LUPIN THE �沓劭� 血煙の石川五ェ門』
(モンキー・パンチ原作『ルパン3世』を再構築し、ルパン
らの若き日とその出会いを描いたアニメーション作品。監督
は2010年7月紹介『REDLINE』などの小池健で、監督
は2014年に『次元大介の墓標』という作品も発表している。
物語の開幕は伊豆沖を進むカジノ船。そこから大金を盗み出
したルパン、次元、不二子だったが、直後に船が爆発。その
あおりで暴力団の組長が死亡し、用心棒だった石川は爆発を
図った殺し屋との対決に挑む。しかしその殺し屋は2丁の斧
を操る最強の敵だった。声優は栗田貫一、小林清志、浪川大
輔、沢城みゆき、山寺宏一。上映時間54分だが、何しろアク
ションの連続する作品だ。公開は2月4日より、新宿バルト
9他で4週間限定ロードショウ。)
『NEON DEMON』“The Neon Demon”
(2011年11月紹介『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング
・レフン監督が、2016年4月紹介『トランボ』などのエル・
ファニングを主演に迎えた最新作。本作は今年の東京国際映
画祭でも招待上映された。主人公は田舎町からロサンゼルス
に出てきたばかりの16歳の少女。ファッションモデルに憧れ
る彼女は天賦の美貌で階段をとんとん拍子に昇って行くが、
そこは正に魔窟とも呼べる世界だった。ファニングが次々に
華麗なファッションに身を包むのも見所だが、後半はかなり
異様な雰囲気になって、俊英監督の描く世界観も楽しめる。
共演は、2008年5月紹介『イントゥ・ザ・ワイルド』などの
ジェナ・マローン。他にキアヌ・リーヴスらが脇を固めてい
る。公開は1月13日より、全国ロードショウ。)
『新宿スワン�供�
(綾野剛の主演、園子温監督による2015年作品の続編。実は
前作も試写を観させて貰ったが、結末で何が起きたのかその
意味が良く判らず、紹介を手控えてしまった。その謎が本作
ではほぼ解消されたもので、これは続編を想定しての仕業で
あったことを納得した。その物語は、前作で規模拡大に成功
した主人公の属する歌舞伎町のスカウト会社が、さらに横浜
進出を目論むというもの。当然そこには地元の会社があって
そことの抗争となるが…。それに前作からの因縁やその他の
柵が絡み付く。麻薬との線引きが明確で、その点は善良?な
作品になっている。また大掛かりなスタントアクションもあ
り、エンターテインメントとしては合格だろう。公開は1月
21日より、全国ロードショウ。)
『くも漫。』
(風俗店で絶頂を迎えた瞬間にくも膜下出血を発症したとい
う原作者の実体験に基づく漫画を実写映画化した作品。知り
合いでこの病になった人もおり、意外に身近なテーマだが、
その展開が男性にはかなり後ろめたさも感じさせるもので、
R−15指定は何となく納得させる。病気がテーマの作品では
あるが、その予防法などを紹介するものではなく、ただその
状況に陥った主人公の混乱ぶりが、ステレオタイプだが実に
有りそうな周囲の人々と関る様子と共に面白おかしく描かれ
る。身につまされるが笑えてしまえる作品だ。主演はお笑い
芸人の脳みそ夫。共演に平田満、立石涼子、柳英里紗、沖ち
づる。公開は1月末、東京は新宿バルト9他にて、全国順次
ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年12月11日(日) ポッピンQ、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』来日記者会見、中島みゆきConcert「一会」

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ポッピンQ』
東映アニメーション設立60周年記念作品。中学卒業を目前に
して進路や未来など不安で一杯の少女たちが、時空を超えて
世界を破滅から守る冒険に駆り出される。
主人公は高知県桂浜の中学に通う陸上部の3年生。卒業式も
目前だが、彼女は毎朝の練習で自己ベストの更新を目指して
いた。それにはある思いも込められていたが…。その一方で
彼女には、両親の都合で卒業式の後に東京に引っ越すという
問題もあった。
そんな彼女が卒業式の朝、両親との口げんかの末にふと通学
とは逆方向の列車に乗ってしまう。その列車は見知らぬ浜辺
の駅に到着し、降り立った主人公は砂浜で光るクリスタルの
破片を拾い上げる。それは全宇宙の時間を司る「時の谷」へ
の入り口のキーだった。
斯くして「時の谷」へと誘われた主人公は、そこで全宇宙の
時が乱れ始め、それを修復するには彼女の協力が必要だと告
げられる。しかし自分に自信の持てない主人公はその協力を
躊躇するが、そこに同じように誘われた3人の仲間が現れ、
彼女を使命に目覚めさせる。

原作は、2016年10月30日題名紹介『魔法つかいプリキュア』
などの東堂いづみ。この名前は東映アニメーションのハウス
ネームだそうで、つまり企画部の原作ということ。監督は、
2013年3月紹介『ドラゴンボールZ 神と神』などのCG監
督で本作が本編デビュー作となる宮原直樹が担当した。
声優は、瀬戸麻沙美、井澤詩織、種崎敦美、小澤亜李、黒沢
ともよらが担当している。
正直に言ってお話は少し弱いかなという印象だ。それは上映
時間が95分という長さの中に歌や踊りも入れ込むとなると、
物語自体は多少舌足らずになる。特に主人公以外のメムバー
の背景などはもう少し詳しく欲しい感じがした。
という、僕としては少し不満の残る作品だったが、実は本編
上映後に特報映像が流れて、それは本作の続編が企画進行中
というものだった。これは一般公開の際にも上映されるもの
だが、そこでは高校生になった主人公たちが描かれる。
しかもその特報では、本作で「時の谷」を襲った危機が、今
度は元の世界に戻った主人公たちに襲い掛かる。つまり本作
はそのプロローグだったようで、そうなるとこれはかなりの
物語が展開されそうだ。
しかもその続編では3部作も検討されているということで、
そうなると相当のサーガになりそうだ。それが実現するため
には本作のヒットが欠かせないとのことで、まずは本作から
応援したいものだ。

公開は12月23日より、全国ロードショウとなる。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
                     来日記者会見
12月16日に全世界一斉公開となる作品の監督・キャストによ
る記者会見が行われた。
全世界一斉公開ということで、恐らくマスコミ向けの事前試
写も無さそうで、本作のここでの紹介はこれだけになりそう
だ。しかも内容に関してはかなり強力な箝口令が敷かれてい
るようで、会見でもその辺はほとんど語られなかった。
ただ事前の紹介では、物語の背景が『新たなる希望』の直前
であることと、内容が『新たなる希望』でレイヤ姫がR2−D2
に託すデススターの設計図を手に入れるお話ということ。そ
してダースベーダ―が登場するということだった。
それに加えて会見では、本作の監督を務めた2011年6月紹介
『モンスターズ/地球外生命体』などのギャレス・エドワー
ズ監督からダースベーダ―以外にも『新たなる希望』のキャ
ラクターが登場すること。
それに主演の2016年10月紹介『インフェルノ』などのフェリ
シティ・ジョーンズからは、彼女が演じたキャラクターなど
が紹介された。因に彼女はベーダ―以外のキャラクターを聞
かれた時に口を滑らせ掛けたが、監督が誤魔化した?
また監督からは、本作は後ろが決まっている作品なので作品
は自由に作らせて貰えたが、続編の可能性は少ないことも語
られていた。
会場では映画の公開に併せたグッズの紹介なども行われて、
いよいよ今週末の公開に向けての準備は万端に整っているよ
うだ。

『中島みゆきConcert「一会」 2015〜2016劇場版』
2016年1月紹介『橋の下のアルカディア』に続く中島みゆき
のコンサートの模様を収録した映像作品。2015年11月12日〜
2016年2月11日に東京・大阪で15回開催され、6万人を動員
したという公演が映画館に登場する。
プレス資料によると劇場版は第7弾だそうだが、僕はその内
の最近の3作品を観させて貰っている。僕自身は音楽には疎
いし、歌われる楽曲も大ヒットしたもの以外はほとんど知ら
ない状態での鑑賞だが、それは毎回圧倒される内容で、ただ
ただ敬服してしまうという印象だ。
何しろ本編の上映時間がほぼ2時間におよぶ全編に亙って、
中島は正しく圧倒される声量で1人で歌い切る。そこにバッ
クコーラスは付いているが、それはバックコーラスでしかな
いもので、実質的な歌声は中島みゆきただ1人だけなのだ。
楽器の伴奏ですら添え物でしかない。
僕自身がサッカーの観戦に行けば、15分のハーフタイムを挟
んで45分+αずつの前後半を大声を張り上げて応援し続ける
ことはあるが、それで今までに何度声を枯らしてしまったこ
とか。大詰めの肝心な時に声を出せずに悔しい思いをした経
験も度々だ。
それに対して本作の中島は、本編では割愛されている中入り
のMCでも喋り続けのようで、喉を休める時間もないままに
2時間以上を演じ切る。それはプロフェッショナルであるか
らそのための準備は細心に行われているのであろうが、それ
にしてもこれは、常人の能力をはるかに超えるものだ。
なお劇場公開では、本編の前にリハーサルの様子を撮影した
約28分のドキュメンタリーが上映される。そこでは歌われる
楽曲の造り込みや衣装、舞台セットなどの舞台を作り上げて
行く入念の準備が観られるものだが、特に楽曲の音程を半音
上げるか否かという選択の模様も登場する。
その後で本編を観ていて、実はコンサートの間に中島がイヤ
フォンを用いていないことに気が付いた。それは自身の音程
に絶対的な自信を持っていることの表れだとも思われるが、
あれだけの声量で半音の狂いもなく2時間を歌い切る、その
技(能力)は国宝級とも言えるものだ。

公開は1月7日より、東京は新宿ピカデリー、丸の内ピカデ
リー他で、全国ロードショウとなる。
ここで「百聞は一見に如かず」という言葉を使うのが正しい
用法かどうかは判らないが、これは是非とも映画館で目撃し
て欲しい作品だ。

この週は他に
『海は燃えている イタリア最南端の小さな島』
                    “Fuocoammare”
(シチリア島の南西約220�辧▲船絅縫献△�らは東約113�劼�
位置するランペドゥーサ島。このイタリア最南端の島を舞台
に、アフリカからの漂流難民(違法移民)の救援に従事する
人々を追ったドキュメンタリー。その一方で作品は島の住民
の生活ぶりも描き、その平和な様子と難民の過酷な現実が色
濃く描き出される。監督は、2013年公開『ローマ環状線』で
ヴェネチア金獅子賞を受賞し、本作でベルリン金熊賞を受賞
したジャンフランコ・ロージ。実は前作も観ているが、僕に
はあまり響いてこかなかった。しかし本作では、正に世界最
前線の悲劇の一つが描かれ、これこそ今観るべき映画という
感じがしたものだ。公開は2月11日より、東京はBUNKAMURA
ル・シネマ他で全国ロードショウ。)
『娘よ』“Dukhtar دختر”
(パキスタンの出身でコロムビア大学に学んだ女性監督が、
母国を舞台に部族間の政略結婚に怯える母娘を描いたドラマ
作品。登場するのは結婚の意味も知らない幼気な少女とその
母親。母親は政略結婚で族長に嫁いだが、自分の娘に同じ思
いをさせたくなかった。ところが部族間の争いに終止符を打
つため、相手方の族長が娘との結婚を要求。その要求を父親
である族長は承認するが、母親は納得できなかった。そして
母娘の逃亡が始まる。そこには偶然も作用して逃亡は思いの
外うまくいくのだが、娘を差し出さなければ自分の命の危な
い部族の追手も執拗だった。いやはやという物語だが、映画
はアクションも巧みに取り入れて見事に仕上げられている。
公開は3月25日より、東京は岩波ホールで上映される。)
『PとJK』
(「別冊フレンド」で連載中の三次マキ原作コミックスを、
2013年4月紹介『俺俺』などの亀梨和也、2016年9月4日題
名紹介『金メダル男』などの土屋太鳳共演、2011年2月紹介
『軽蔑』などの廣木隆一監督で映画化した作品。監督はピン
ク映画出身だが、近年はこの種の若年向けの作品が多いよう
だ。とは言えヴェテランの監督は、そんな作品でもさすがに
しっかりとした作品に仕上げている。成人と女子高生が公に
出来ない夫婦になるという設定は、1970年代の『おくさまは
18歳』なども思い出すが、本作ではそこに至る事情の説明や
登場人物が抱える背景などもそれなりに描かれて、納得の作
品になっていた。作品自体は若年向けであることに変わりは
ないが…。公開は3月25日より、全国ロードショウ。)
『破門 ふたりのヤクビョーガミ』
(黒川博行原作「疫病神」シリーズの内、2014年の直木賞を
受賞した作品の映画化。同作は先にBSでのテレビドラマ化
もあるが、スタッフ・キャストを一新しての映画化になって
いる。その顔触れが、主演の佐々木蔵之介、横山裕、北川景
子から、脚本監督の小林聖太郎まで ほぼ関西出身者で固め
られているのは拘りかな? お話は暴力団幹部の男と亡父が
ヤクザだった若者がヤクザ社会に翻弄される内に、何となく
正義を行ってしまうという、それなりに痛快さもありカタル
シスも感じさせる作品になっている。ロケ地は香港、四国の
愛媛県まで足を延ばした上に、脇役陣も多彩で楽しめた。こ
れなら当然シリーズ化もあり得るだろう。公開は1月28日よ
り、全国ロードショウ。)
『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』
                   “Experimenter”
(2013年9月紹介『ハンナ・アーレント』でも言及されたナ
チスのユダヤ人虐殺が指令に盲従しただけだという見解。そ
れを実証した博士の研究を描いた作品。上からの命令があれ
ば人間は残虐な行為も厭わなくなる? その様子が事実に基
づいて再現されている。出演は、ピーター・サースガードと
ウィノナ・ライダー。他にアントン・イェルチン、ジョン・
レグイザモらも登場する。SF映画ファン的には1970年代に
実験がテレビドラマ化された様子の再現場面が面白い。その
作品ではウィリアム・シャトナーが博士役を演じており、人
気番組の裏話なども語られるのだ。さらに本作には『ミステ
リーゾーン』のような雰囲気も感じられた。公開は2月25日
より、新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『東京ウィンドオーケストラ』
(前回題名紹介『惑う After the Rain』の中西美帆主演、
小市慢太郎共演による世界遺産・屋久島を舞台にした音楽の
絡むドラマ作品。島の文化センターに招かれた人気オーケス
トラ。しかしやってきたのはよく似た名前のアマチュア楽団
だった。先に2016年8月21日題名紹介『オケ老人』があり、
よく似た名前のアマチュア楽団が間違われるという設定は重
なるかなと思ったが、その後の展開は相当に異なっていた。
しかしどちらも人間の間違いとして有り得るものだし、それ
への対処の仕方にも納得できる点は多くある作品だった。脚
本監督は、2013年12月紹介『神奈川芸術大学映像科研究室』
の坂下雄一郎。その商業映画第1作。公開は1月21日より、
新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『シネマ歌舞伎 阿古屋』
(現代最高の女方と呼ばれる坂東玉三郎が、女方の最高峰と
される演目に挑む様子を描いたドキュメンタリー。「シネマ
歌舞伎」であるから舞台の映像が中心ではあるが、現在では
玉三郎にしか演じられないとされるその演目の舞台裏が、本
人のナレーションによってつぶさに描かれた作品にもなって
いる。物語は平家が源氏に敗れての後、平景清探索の詮議の
場に武将の恋人阿古屋が引き出される。そこでの「琴責め」
と呼ばれる琴・三味線・胡弓の演奏がクライマックスとなる
ものだ。玉三郎はこの舞台のため、幼い頃から楽器のけいこ
に励んできたということだが、今の時代にそれを若手に望む
ことは難しい。その芸を後世に引き継ぐ模索が続いている。
公開は1月7日より、東京は東劇他で全国ロードショウ。)
『キセキ あの日のソビト』
(顔出しNGということでも有名な音楽グループGReeeeNの
誕生までを描いたドラマ作品。このグループの歌には個人的
にちょっとした思い出があって、僕は普段は音楽を聞かない
人間だが、この作品にはそれなりの親近感が湧いた。まあお
話としては有り勝ちなものだが、彼らの音楽が好きな人には
多分そのイメージは壊していないし、観ていて心地良い作品
だ。出演は松坂桃李、菅田将暉。さらに横浜流星、成田凌、
杉野遙亮がメムバーを演じて彼らはカヴァーCDも出すよう
だ。他に忽那汐里、平祐奈、麻生祐未、小林薫らが脇を固め
ている。監督は、2009年3月紹介『腐女子彼女。』などの兼
重淳。音楽プロデュースを本人たちも手掛けるJINが担当し
ている。公開は1月28日より、全国ロードショウ。)
『ゴンドラ』
(1987年に単館上映されて話題を呼んだ作品が30年ぶりに再
公開される。実は以前に観たかどうかが不明で、試写中に何
度かデジャヴに陥るシーンはあったが、それが本作の記憶な
のか他の作品がパクったシーンかも判別できない。しかしい
くつかの鮮烈なシーンと、全体のトーンの調和が心地よく、
またテーマ的にも現代に通じるもののある佳作だった。新宿
西口の都庁舎の敷地が更地だったり、公衆電話が日本電信電
話公社だったり、懐かしさも満喫できる作品だ。主演は後の
作品歴のない2人だが、その脇に木内みどり、出門英、佐々
木すみ江、佐藤英夫ら。原案脚本監督は後にピンク映画で活
躍する伊藤智生。公開は1月28日より、渋谷ユーロスペース
にて35�丱侫�ルムでの限定レイトショウ。)
『BASTILLE DAY(原題)』“The Take”
(本年度のフランス映画祭で上映された作品が一般公開にな
る。主人公はアメリカ人のスリ。そんな彼が置き引きしたの
は爆弾仕込みの縫い包みが入ったカバン。しかしそれに気付
かず放棄した途端に爆発が起こる。その場面が監視カメラに
残り彼はパリ警察に追われるが…、その様子を見たCIAの
窓際捜査官が違和感を抱き、彼の特技を利用してテロ組織に
挑もうとする。出演は、2016年9月紹介『スター・トレック
BEYOND』などのイドリス・エルバと、2015年『シンデレラ』
などのリチャード・マッデン、それに2016年1月紹介『ザ・
ウォーク』などのシャルロット・ルボン。監督は2012年9月
紹介『ウーマン・イン・ブラック亡霊の館』のジェームズ・
ワトキンス。公開は3月4日より全国順次ロードショウ。)
『スノーデン』“Snowden”
(2016年3月に紹介したドキュメンタリー『シチズンフォー
スノーデンの暴露』を、2009年4月紹介『ブッシュ』などの
オリヴァ・ストーン監督がドラマ化した作品。作品は春前に
完成していたが、大統領選挙への影響を考慮して公開が遅ら
されたそうだ。事件の内容的にはドキュメンタリーと同じだ
が、本作ではそこに至るスノーデン本人の背景なども描かれ
ている。ただこの監督ならアメリカ政権内の動きなども掘り
下げるかと思ったが、その辺を多少手控えているのは選挙と
の兼ね合いもあったのかもしれない。出演は2016年1月紹介
『ザ・ウォーク』などのジョセフ=ゴードン・レヴェット、
2012年1月紹介『ファミリー・ツリー』などのシャリーン・
ウッドリー、2009年12月紹介『フローズン・リバー』などの
メリッサ・レオ。公開は1月27日より、ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年12月04日(日) ドクター・ストレンジ、モンスターストライク、クリミナル 2人の記憶を持つ男

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ドクター・ストレンジ』“Doctor Strange”
マーヴェル・スタジオ製作によるアメコミ・ヒーロー映画の
最新作。
今回登場するのは元脳外科医。その手術は神業とも言われる
大胆且つ繊細なものだった。しかし自らが起した事故により
その感覚が失われる。その回復法を探求した主人公は、遂に
ヒマラヤ山中ネパールのカトマンズに辿り着く。
そこで精神的な修行を開始した主人公だったが、その修行の
場所にも危機が訪れようとしていた。そしてその危機に立ち
向かう主人公に、強力な助っ人が現れる。その助っ人と共に
新たな能力を発揮した主人公は…。

主演は2013年6月紹介『スター・トレック イントゥ・ダー
クネス』などのベネディクト・カンバーバッチ。共演者には
2013年8月紹介『パッション』などのレイチェル・マクアダ
ムスと、2010年7月紹介『ソルト』などのキウェテル・イジ
ョフォー。
さらに2012年7月紹介『プロメテウス』などのベネディクト
・ウォン、2006年11月紹介『007/カジノ・ロワイヤル』
などのマッツ・ミケルセン、そして2013年11月紹介『スノー
ピアサー』などのティルダ・スウィントンら、かなり渋めの
キャスティングが脇を固めている。
監督は、2013年4月紹介『フッテージ』などのスコット・デ
リクスン。脚本は、『プロメテウス』などのジョン・スペイ
ツと、『フッテージ』も手掛けた監督の盟友C・ロバート・
カーギルが担当した。
タイトルロールのカンバーバッチは、最初は髭の剃り跡も完
璧なさっぱりした風貌で登場するが、そこからコミックスで
お馴染みのキャラクターへの変貌ぶりも面白い。またトレー
ドマークのマントの相棒的な登場も良い感じだった。
因にマーヴェル製作では、アヴェンジャーズへのヒーローの
集結が最近の流れだが、本作でもその繋がりは描かれるもの
の、アヴェンジャーズは機械を操る敵が相手、対する本作は
精神的な武器が相手と、棲み分けが図られるようだ。
そして本作では、精神世界が作り出す驚異的な背景映像が見
どころとなる。それは2010年7月紹介『インセプション』の
世界観をさらに大掛かりにしたようなもので、正しくCGI
−VFXの醍醐味と言えるような映像を楽しめる。
なおSF映画ファンとしては、本作の題名からはスタンリー
・クーブリック監督の『博士の異常な愛情』を思い出してし
まうところだが、原作コミックスの初出は1963年6月、映画
の公開は1964年で、互いに問題にするものではなさそうだ。

公開は1月27日より、2D/3Dでの全国ロードショウとな
る。

『モンスターストライク』
「モンスト」の略称で、世界中で3500万人以上が利用してい
るというスマートフォン用のアプリゲームを題材にした長編
アニメーション作品。
実は先にYouTubeから発信されている短編アニメーションの
シリーズがあるそうで、本作はその流れを引き継いだ作品と
いうことになっている。
しかし物語はプロローグで過去に遡る展開で、モンストの起
源に迫るというもの。そこでは主人公たちも何も知らされて
おらず。従って観客も白紙で観られる仕組みになっている。
勿論ゲームという前提は知っている必要はあるが、僕自身が
YouTubeのアニメを知らなくても物語は充分に楽しめた。
その起源の物語は、古代生物学者の父親が幼い頃に出奔した
ままという小学生の男子が主人公。彼の住む街には閉鎖され
た科学館と研究所があり、主人公ら4人の仲間はその研究所
に立ち入ることが許されている。そこには仲間の少年の両親
や主人公の祖父も働いていた。
そしてそこでは「モンスターストライク」というゲームが遊
べるのだったが…。ある日そこに謎の一団が侵入し、主人公
らは否応なしに冒険に巻き込まれることになる。実は主人公
らが遊びと思っていたゲームには裏があったのだ。つまり現
在遊ばれているゲームにも裏があるというコンセプト?

声優は、ミュージカルで菊田一夫賞を受賞しているという坂
本真綾、2016年5月紹介『シンドバッド』などの村中知。他
にLynn、木村珠莉。さらに小林裕介、北大路欣也、福島潤、
河西健吾、山寺宏一、水樹奈々らが脇を固めている。
脚本の岸本卓と、監督の江崎慎平は共にテレビアニメを数多
く手掛けている人たちのようだ。また主題歌を、2013年3月
紹介『旅歌ダイアリー』などのナオト・インテライミが担当
している。
物語は有り勝ちなものではあるけれど、それなりの説得力は
持たされているかな? そんなところでお子様向けの作品と
しては成立しているだろう。とは言えそれはかなり荒唐無稽
な冒険ストーリーではあるが…。ゲームのコンセプトなどは
活かされているようだ。
ただ、プロローグで過去に遡った本来の主人公たちが本編の
物語にほとんど関与していない点や、主人公の父親の行方な
どは謎のままで、これらは一体どうしたんだ…? と思って
いたら、最後に続編の告知らしきものがされていたようだ。
そういうことで次回作も期待することにしたい。

公開は今週末の12月10日より、全国ロードショウとなる。

『クリミナル 2人の記憶を持つ男』“Criminal”
共にオスカー受賞者のケヴィン・コスナーとトミー・リー・
ジョーンズ、それにゲイリー・オールドマンの共演で、ちょ
っとSF的な要素もあるドラマ作品。
物語の始まりはCIA捜査官の死。それは彼が追っていたハ
ッカーの行方を見失うものであり、そのハッカーは合衆国の
国防システムに侵入し、核ミサイルの発射を自在にできると
豪語していた。そしてそのハッカーの行方は、ハッカーの元
の雇い主であるテロ組織やロシアからも追われていた。
そこでCIAは、開発途上の死者の記憶を写し取る研究に目
を付け、捜査官の記憶を1人の男性の脳に移してハッカーを
探し出そうとする。そこで選ばれたのは、幼い頃に受けた脳
の損傷で感情や善悪の観念も失った犯罪者。そして施術は成
功するのだが…。
捜査員の知識を移植された男はそれを利用して巧みな逃亡を
開始する。しかし移植された記憶はその男に使命感とさらに
大事なものも思い出させる。果たしてCIAはハッカーを確
保し、核ミサイルテロによる世界の破滅を回避することがで
きるのか?

上記以外の出演者は、2016年『バットマンvsスーパーマン
ジャスティスの誕生』でワンダーウーマンを演じたガル・ガ
ドット、2008年9月紹介『ファニー・ゲームU.S.A.』な
どのマイクル・ピット、『スター・トレック イントゥ・ダ
ークネス』などのアリス・イヴと、2016年3月紹介『デッド
プール』などのライアン・レイノルズ。
脚本は、1996年『ザ・ロック』などのデヴィッド・ワイズバ
ーグとダグラス・S・クックのコンビ。監督は2013年『THE
ICEMAN氷の処刑人』などのアリエル・ヴロメンが担当した。
プロデューサーは2012年9月紹介『エクスペンダブルズ』シ
リーズなどのアヴィ・ラーナーの作品だ。
この手の記憶を扱う作品は、最近のブームのような面もある
が、本作はそれなりに工夫して描いていると言える。しかも
上記の顔触れでそれを描くのだからこれはもうそれだけで見
所満載の作品だ。それは物語の端々で巧みな描き方をしてい
るもので、それらは納得して観ていられた。
実は試写の前に宣伝担当者から「これは面白いです」と勝手
にハードルを上げられたのだが、正直に言って面白いよりも
良い作品だったと言える。ネタバレになるから何がどうとは
言えないが、上記の顔触れがその辺をしっかりと描き出して
いるとは言える作品だ。

公開は2月25日より、新宿バルト9他で、全国ロードショウ
になる。

この週は他に
『マン ・ダウン 戦士の約束』“Man Down”
(2013年8月紹介『ランナウェイ/逃亡者』などのシャイア
・ラブーフが中東に派遣された海兵隊員に扮する作品。映画
は妻と幼子のいる家庭の様子と派遣前の訓練の模様。それに
中東での作戦行動と上官による尋問。さらに廃墟と化した街
でのサヴァイヴァルのシーンが交互に描かれ、かなりミステ
リアスな物語になっている。しかしその実態は、あまりにも
過酷な戦争の現実が描かれたものだ。僕は以前から戦闘シー
ンのある反戦映画は成立しないと考えているが、その考えで
言うと本作は反戦映画ではない。戦争のもたらす悲劇をとこ
とんまで描き切った作品だ。共演はゲイリー・オールドマン
とケイト・マーラ。公開は2月25日より、東京は新宿武蔵野
館他、全国順次ロードショウ。)
『LIVE FOR TODAY−天龍源一郎−』
(昨年11月に現役を引退したプロレスラーの、引退発表から
引退試合までを追ったドキュメンタリー。製作総指揮を自ら
の主宰団体の代表でもある実娘が担当しているもので、言う
なれば自作自演だから悪いところは出てこない作品だ。でも
それがファンにはプレゼントであろうし、そうではなくても
最後の試合シーンには感傷も生じた。正直なところは僕自身
が天龍とは同世代で、最近のプロレスは全く見ていないから
若いレスラーの名前にはほとんど馴染みは無かったが、名の
知れた往年のレスラーたちの姿には、お互い老けてしまった
なあという感慨も湧く。その多くが今も現役というのは感動
したところだ。公開は2月4日より、東京は新宿武蔵野館、
ユナイテッドシネマ豊洲他、全国順次ロードショウ。)
『惑う After the Rain』
(静岡県三島市を舞台に、脚本作りの段階から市民参加で行
われたというご当地作品。地元の名士のような人物も出てく
るが、全体的には家族愛なども巧みに取り込んで、中々面白
い作品に仕上げられていた。ポスター写真からは三島女郎の
話かとも勘ぐったが、その辺は趣だけに止めてまずは普遍的
な話が展開される。出演は佐藤仁美、この後に主演作も控え
る中西美帆、2016年8月7日題名紹介『だれかの木琴』など
の小市慢太郎、宮崎美子。僕自身が襖、障子に座敷、廊下の
日本家屋で育ったもので、本作に登場する建物には懐かしさ
も感じた。昭和の時代を気持ち良く再現した作品にもなって
いる。静岡県で先行上映の後、東京は1月21日より有楽町ス
バル座他、全国順次ロードショウ。)
『息の跡』
(2012年1月紹介『桃まつり〜すき〜』の中で『the place
named』という作品が上映された小森はるか監督による長編
第1作。監督は2011年の震災以降、岩手県陸前高田市に移り
住んで制作を続けているという、震災後の人々に生活ぶりを
記録したドキュメンタリー。本作では、そんな被災地で大津
波防備のために新設される大堤防の中に埋め込まれてしまう
場所で種苗店を営む男性の姿が記録されている。その男性は
歴史に遡っての津波の検証を行う一方で、震災の記憶を英語
や中国語、スペイン語などで発信し続けてもいる。映画の内
容は確かに理解できる。だが監督の主張したいところが良く
判らない。出来るなら種苗店跡地の今が観たいものだ。公開
は2月にポレポレ東中野他、全国順次ロードショウ。)
『うさぎ追いし 山極勝三郎物語』
(1915年に東京帝大病理学研究室において人工癌の発生に成
功し、日本における癌研究の礎を築いた科学者の足跡を辿っ
た作品。ウサギの耳にタールを塗って癌を発生させたという
話は子供の頃に聞いていたが、それが山極勝三郎という人の
研究で、さらには世界初の快挙であり、ノーベル賞の候補に
もなっていたという事実は本作を観るまで知らなかった。そ
んな信州上田出身の偉人の姿が描かれる。出演は遠藤憲一、
水野真紀、2013年8月紹介『許されざる者』などの岡部尚。
他に豊原功補、北大路欣也、高橋惠子らが脇を固めている。
監督は2011年3月紹介『お菓子放浪記』などの近藤明男が担
当した。長野県で先行上映の後、東京は12月17日より有楽町
スバル座他、全国順次ロードショウ。)
『傷だらけの悪魔』
(2011年6月紹介『行け!男子高校演劇部』などの足立梨花
主演で、転校生に対する苛めを扱った作品。苛めの問題を描
いた作品の多くが苛めの手口を紹介する作品となり、諌める
べきものを助長していると思えることが度々ある。その点で
言うと本作で描かれる苛めの手口は通り一遍なものであり、
対する周囲の反応や、特に大人や教師の無責任ぶりを描いて
いるのは現実的と言えるだろう。そしてそこからの反攻が、
かなりの攻防戦を含めて小気味よく描かれた作品だ。共演は
江野沢愛美、加弥乃、岡田結実。他に川原亜矢子、宮地真緒
らが脇を固めている。因に足立の女子高生はギリだが、原作
は現在も継続中だそうで、映画も続編を狙えそうだ。公開は
2月4日より角川シネマ新宿他、全国ロードショウ。)
『レオナルド・ダ・ヴィンチ美と知の迷宮』
      “Leonardo da Vinci - Il genio a Milano”
(2013年12月紹介『ダ・ヴィンチ・デーモン』など、伝記的
な作品も何本か観ている中世イタリアの芸術家・科学者の業
績を、修復された「最後の晩餐」の4K撮影による映像をク
ライマックスとして紹介した作品。内容は、現代の研究者や
評論家、それに往時を再現した関係者へのフェイクのインタ
ヴューなどで構成され、それなりに興味深くはあるが、観る
側にもある程度の知識が要求されるかもしれない。ただ4K
撮影された「最後の晩餐」は、その損傷も克明に再現された
もので、それは製作時からダ・ヴィンチ自身も気付いていた
というから仕方ないものだったとは言え、目の当たりにする
と哀しくなるものでもあった。公開は1月28日より、東京は
シネスイッチ銀座他、全国ロードショウ。)
『NERVE《ナーヴ》世界で一番危険なゲーム』“Nerve”
(ネット上などで問題となっている危険な挑戦を映像で配信
する風潮。それをさらに参加型のゲームにしたという設定の
作品。それは視聴者と挑戦者2つのカテゴリーで募集され、
その視聴料が挑戦達成への賞金となる。危険な挑戦の類は、
2016年1月紹介『X−ミッション』などでも描かれているか
ら、本作が上記の風潮に乗ったという点では忸怩たる思いも
する。しかし本作は敢えてそこからの警鐘とも取れるものに
なっており、その点のコンセプトは納得できる作品だった。
出演は、2013年12月紹介『なんちゃって家族』などのエマ・
ロバーツ、2016年7月紹介『グランド・イリュージョン』な
どのデイヴ・フランコ、それにジュリエット・ルイス。公開
は1月6日より、全国ロードショウ。)
『0円キッチン』“Wastecooking”
(全世界で毎年廃棄される食料品の量は13億トンにもなると
言われる。それを少しでも救助しようと立ち上がった監督ら
が、大型のごみ箱を改装したキッチンを自動車に繋ぎ、ヨー
ロッパ5カ国を巡って回収した食品を調理し振舞う啓蒙活動
を行う。その様子を描いたドキュメンタリー作品。2013年に
『もったいない!』“Taste the Waste”という作品があっ
て、そこでも大型スーパーなどで廃棄される食料品を回収す
るゴミ箱ダイヴの運動が紹介されていたが、日本でもヴァラ
エティ番組『鉄腕DUSH』の中で生産者の段階で廃棄され
る食品を回収して調理するコーナーが放送されるなど、世界
的にこのような気運は高まっているようだ。公開は1月21日
より、アップリンク渋谷他、全国順次ロードショウ。)
『oasis: supersonic』“Oasis: Supersonic”
(1991年の結成で、僅か5年後の1996年に2日間で25万人を
動員するコンサートを実現したイギリスのロックバンドの、
コンサートを行うまでを描いたドキュメンタリー。因にバン
ドは2009年に解散しており、本作はその解散後にメムバーの
中心だったギャラガー兄弟らにインタヴューを行い、その内
容に合わせた映像を集めて編集されているものだ。その中に
はジャパンツアーの様子なども収められており、当時の熱狂
的な歓迎ぶりがメムバーの印象に残った思い出なども語られ
ている。正直僕には音楽のことが全く判らないが、20年前の
ファッションなどが面白く観られる作品でもあった。公開は
12月24日より、東京は角川シネマ有楽町他、全国順次ロード
ショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二