井口健二のOn the Production
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2016年10月30日(日) 母の残像、ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「戦火の馬」

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『母の残像』“Louder Than Bombs”
2011年12月紹介『メランコリア』などの鬼才ラース・フォン
=トリアー監督の甥にあたるノルウェーの俊英ヨアキム・ト
リアーの監督第3作にして、初めてハリウッドの製作陣と組
んだ英語の作品。
登場するのは父親と2人の息子の父子家庭。長男は少し離れ
た街で若くして大学教授の職にあり、次男はまだ高校生だ。
そして今は亡き母親は、戦場カメラマンとして戦争被害者の
姿を撮り続け、数々のスクープもものにしていた。しかし帰
国後に襲ったその死は謎に包まれていた。
そんな母親の回顧展の話が持ち上がり、その準備のため長男
が帰宅する。そしてそれに合わせて死の真相に迫る記事の掲
載が決定し、その真相をまだ幼い次男に告げるべきか、父親
と長男の想いは交錯する。さらにその影響からか次男の態度
もおかしくなり始める。

出演は、2014年『ヴァンパイア・アカデミー』などのガブリ
エル・バーン、2016年7月紹介『グランド・イリュージョン
見破られたトリック』などのジェシー・アイゼンバーグ、新
人のデヴィン・ドルイド。そして2013年9月紹介『眠れる美
女』などのイザベル・ユペール。
脚本は監督と、短編映画時代からの盟友エスキル・フォクト
によるオリジナルの作品だ。
ラース・フォン=トリアーの作品は、特に近年では鬼才と呼
ぶにふさわしい作品が多いが、その甥の作品は極めてオーソ
ドックスなドラマだった。しかしその内容は見事に人の心理
を突いたものであり、観客に深い想いを感じ取らせるものに
なっていた。
それは多少特異なシチュエーションにはなっているが、描か
れた内容には普遍性があり、それを描き切った手腕にも注目
が集まるのは当然と言える作品だ。万人に勧めることのでき
る作品であり、正に王道の作品に仕上げられている。これは
見事だ。
なお、作品中には母親の遺品として複数の写真が紹介される
が、それらには実際の戦場写真が数多く引用されており、ま
た挿入される映像も現実のもので、描かれる人間ドラマと同
時に、戦争の悲惨さを伝える作品にもなっている。

公開は11月26日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他にて、全国順次ロードショウとなる。

『ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「戦火の馬」』
         “National Theatre Live: War Horse”
2011年12月紹介スティーヴン・スピルバーグ監督作品『戦火
の馬』の基となった舞台劇で、2014年の第1次世界大戦開戦
100周年に演じられた舞台を撮影した映像作品。
物語は映画化されたものとほぼ同じで、1914年の第1次世界
大戦開戦の年にイギリスの片田舎で生まれた1頭の狩猟馬が
歴史の流れに翻弄され、ヨーロッパ戦線に従軍してイギリス
人だけでなく、フランス人、ドイツ人とも交流を持つ。また
その馬の後を追う飼い主の若者の姿を通じて、戦争の悲惨さ
を訴える作品だ。
そしてそこに登場する馬の姿が、映画では実物の馬とCGI
によって描かれたが、舞台でのそれは実物大のパペット。し
かも3人の操演者の姿も観客に曝されているというものだ。
しかしその操演の巧みさと演出の力で、見事に生きている馬
以上の感動を観る者に与える。その様子がしっかりと伝わっ
てくる作品だった。
さらに舞台は、装置としてはスケッチ帳から破り取られた紙
を摸したスクリーンと、そこに背景がスケッチ画風の絵画と
アニメーションでプロジェクションされるだけという極めて
シンプルなもので、その前の回り舞台と出演者が手持ちする
簡単な道具だけで全ての場面が構成される。その構成演出の
素晴らしさでも観る者を惹き付ける。

その演出はマリエンヌ・エリオットとトム・モリス。そして
パペットのデザイン・制作・演出はヴェイゼル・ジョーンズ
&エイドリアン・コーラー(ハンドスプリング・パペット・
カンパニー)
初演のイギリスでは、2007年イブニング・スタンダード賞、
批評家サークル賞、2008年ローレンス・オリヴィエ賞などに
輝き、さらに2011年のブロードウェイ公演では、トニー賞で
作品賞を含む5部門を制覇した作品だ。
なお映像作品の中間ではインターミッションと解説があり、
そこでは原作者と演出家による製作の経緯などの紹介も行わ
れる。
その中で原作者のマイクル・モーパーゴは、「初版時は全々
売れなかったが、出版社がしつこく再版してくれて徐々に売
れだした。馬の視点で描くのは良いアイデアだと思ったが、
考えてみたら先に『黒馬物語』があった。本作は栗毛だが、
黒毛にしておけばよかった」とエピソードを紹介。
また演出家からは、「ナショナル・シアターのパペットの技
術を使う企画を探していた時にこの原作に巡り会った。最初
はどのような舞台にするかも決めず、まずワークショップで
馬のパペットの検討を始めた。その中で徐々に形が見え始め
た」と語り、そこではワークショップの様子も紹介された。
つまり舞台は、まず馬のパペットありきで始まったもので、
そこに本物の馬を使ったスピルバーグのアプローチが如何に
間の抜けたものであったか、そんなことも理解のできる解説
だった。因に解説の中では『ミスター・エド』の題名も出て
きたが、映画化については一切触れられなかった。

公開は11月11日から16日まで、東京はTOHOシネマズ日本橋他
で、限定ロードショウとなる。

この週は他に
『ガール・オン・ザ・トレイン』
              “The Girl on the Train”
(NYタイムズのベストセラーリストで21週の第1位と77週
に亙るランクインを記録した原作の映画化。2016年1月紹介
『ボーダーライン』などのエミリー・ブラントの主演に、ハ
リウッド期待の新星ヘイリー・ベネットと、2015年8月紹介
『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』など
のレベッカ・ファーガソンが演技を競う。かなりトリッキー
な話だが、岸辺を走る通勤列車などの映像も際立っている。
公開は11月18日より、全国ロードショウ。)
『僕と世界の方程式』“A Brilliant Young Mind”
(1959年から毎年行われている国際数学オリンピックに挑む
高校生の姿を描いたイギリス製の青春映画。特異な題材では
あるが、内容は純粋な青春映画で、この手のイギリス作品は
伝統的に手堅くてうまい。はっきり言って少しオタク気味の
若者が、青春に目覚めて行く姿が見事に描かれている。監督
はドキュメンタリー出身のようで、その目の堅実さが本作に
も活かされているようだ。公開は2017年1月28日より、東京
はYEBISU GARDEN CINEMA他で、全国順次ロードショウ。)
『ホワイト・バレット』“三人行”
(2010年3月紹介『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』などで
香港ノワールの旗手とされるジョニー・トー監督による病院
が舞台のソリッドシチュエーション・アクション。ルイス・
クー、ヴィッキー・チャオ、ウォレス・チョンの共演で、前
半は息詰まる心理戦から後半の強烈なアクションまで、見事
な展開が繰り広げられる。いやはや物凄いとしか言いようの
ないエンターテインメントだ。公開は2017年1月7日より、
東京は新宿武蔵野館にてレイトショウ。)
『魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』
(今年3月20日に題名だけ紹介した『プリキュア』シリーズ
の秋の新作。お子様向けのアニメーションではあるのだが、
実は今回物語の中心は主人公が抱えるクマのぬいぐるみで、
その敵役があ「くま」というのは有り勝ちかなと思ったが、
さらに登場するのがダー「くま」ター。しかもこの先にもう
1段あって、これは侮れないと思わせる作品だった。公開は
10月29日より、全国ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。

なお今週は、東京国際映画祭の開催期間となっているが、
その報告は映画祭終了後に纏めて行う予定だ。



2016年10月23日(日) 「沈黙−サイレンス−」記者会見、ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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「沈黙−サイレンス−」記者会見
2017年1月21日の日本公開が決定したマーティン・スコセッ
シ監督の最新作について約15分間のフッテージ上映を含めた
記者会見が行われた。
作品は、遠藤周作が1966年に発表した長編小説を映画化する
もので、スコセッシは1988年公開の『最後の誘惑』の映画化
を進めていた際に、ニューヨークで会ったキリスト教関係者
から原作を紹介され、以来映画化の夢を抱き続けていたのだ
そうだ。
物語は17世紀、江戸時代の初期のキリスト教弾圧の行われた
日本を舞台に、死罪を免れるために棄教したとされる司祭の
真意を求めて日本に潜入した2人の若い司祭の行動が描かれ
る。そこで彼らは異文化と出遭い、その中で自らの信教が試
されることになる。

出演は、2012年6月紹介『アメイジング・スパイダーマン』
などのアンドリュー・ガーフィールド、2015年公開『SW
フォースの覚醒』などのアダム・ドライヴァ、それにリーア
ム・ニースン。さらに日本側から窪塚洋介、浅野忠信、イッ
セー尾形、塚本晋也、小松菜奈らが共演している。
上映されたフッテージに関してはまだ未完成ということで、
詳しい紹介は出来ないものだが、公開された4つのシーンは
いずれも日本人俳優が絡むもので、中にはかなり激烈なもの
もあり、本編への期待が膨らむ映像が紹介された。特に塚本
のシーンは強烈だった。
なお紹介されたシーンの多くは日本人と司祭との会話シーン
だが、その殆んどが英語だった。ここは本来ならポルトガル
語のはずだが、ハリウッド映画という形態の性質上、これは
仕方がない。場面中にはなぜ日本語でないのかという歴史的
な説明もされていた。

また会見では、映画化の実現に30年近くも掛った経緯につい
てもスコセッシの口から語られた。その中で2009年にはかな
りの線まで行っていたことが伺われた。この当時のことに関
しては、僕自身がこのページで、2006年3月15日付や2007年
3月15日付などでも書いていたものだ。
そこでは、プラッド・ピットとジョニー・デップの共演など
という話もあったものだが、その頓挫の理由についてスコセ
ッシは「権利関係がややこしくなっていた」とだけ語ってい
た。まあ当時の状況から考えるとハリウッドの2社での綱引
きがあったとも考えられる。
因に今回の製作は、イタリアやメキシコなど多国籍のプロダ
クションの共同製作の形で行われている。またアカデミー賞
狙いで年内に行われるアメリカの公開はパラマウントが担当
しているが、同社は直接的な制作会社の中には入っていない
ようだ。
さらに会見に同席した浅野からは、撮影が全てフィルムで行
われたことも証言され、本作への本気ぶりが伺われた。なお
浅野は窪塚が演じた役でオーディションを受けたようだが、
スコセッシから論理性のある役柄が合っていると見抜かれて
現在の役を得たそうだ。
また全編が台湾で行われた撮影では、村を丸ごと建築するな
どの大掛かりなことも行われたようだ。フッテージでは植生
が少し南方かなとも感じたが、自然の背景を求めるとこれも
仕方がないのだろう。物語の背景も九州辺りで良いのだから
これでも問題はない。

以上、本編を観たらまた紹介すると思う作品だ。

『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
            “Jack Reacher: Never Go Back”
2013年1月紹介『アウトロー』の続編。同作で新たな主人公
に挑戦したトム・クルーズが再びその役を演じる。そして監
督には、2003年11月紹介『ラストサムライ』で組んで以来の
エドワード・ズウィックが起用された。
プロローグの後、映画はリーチャーが以前の所属部署だった
軍警察のターナー少佐に連絡を取る所から始まる。そこで少
佐が女性であることを知ったリーチャーは会ってみることに
するが、ワシントンDCの本部を訪ねたリーチャーは少佐が
逮捕されたことを告げられる。
そこでリーチャーは少佐の弁護担当者を探り出し、面会した
リーチャーは事態の流れに不信感を抱く。一方、リーチャー
は娘の養育費の問題で訴えられていることも告げられ、その
娘に会うことも試みるが…。リーチャーの会った相手が次々
に殺され、リーチャーにその嫌疑が掛けられる。
斯くして、軍関連企業と軍上層部の癒着に関る大きな疑惑が
リーチャーの前に出現し、それを巡ってターナー少佐やリー
チャーの娘をも巻き込んだ物語が展開される。

共演は、2012年6月紹介『アベンジャーズ』に出演のコビー
・スマイルダーズ、2015年『ストレイト・アウタ・コンプト
ン』などのオルディス・ホッジ、ダンサー出身で多くの舞台
にも立っているダニカ・ヤロッシュだが、比較的著名でない
俳優が多いようだ。
脚本は、監督のズウィックと彼の盟友であるマーシャル・ハ
ースコヴィッツ、それに2012年9月紹介『エクスペンダブル
ズ2』などのリチャード・ウェンクが加わっている。ズウィ
ックの監督歴では比較的文芸的な作品が多いと思うが、本作
のアクションはウェンクが支えたのだろうか。
因に、リー・チャイルドの原作ではジャック・リーチャーの
シリーズは既刊21冊を数えるもので、前作『アウトロー』は
その第9巻、そして本作は第18巻となるものだ。そこで英語
版のWikipediaでこの原作をチェックすると、物語の概要は
そこに載っているものと一致するようだ。
ただし原作ではターナー少佐はすでに第14巻と第15巻でも登
場しているそうで、映画の最初の方でリーチャーが少佐を女
性と知って驚くそぶりをするのは、ちょっと原作とは違えら
れている。その第14巻は「61時間」という邦題で翻訳も出て
いるようなので、チェックすると面白そうだ。

公開は11月11日より、東京はTOHOシネマズ新宿、新宿ピカデ
リー、新宿バルト9他で、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『浅草 筑波の喜久次郎 浅草六区を創った筑波人』
(昭和の前半まで隆盛を誇った浅草六区の基礎を築いたとさ
れる筑波出身の侠客を描いたドラマ作品。SF仕立にしてく
れたのは良いのだが、ちょっと中途半端で却って夾雑な感じ
になってしまっている。それよりもっと本人の行動を詳細に
描いて欲しかった。でもそれをすると多分製作費が膨大にな
ったのだろう。これはこれで人物の紹介にはなっているのだ
が…。公開は12月3日より、全国順次ロードショウ。)
『After 10 Years』
(2004年のスマトラ沖地震で甚大な被害を受けたスリランカ
のホテルの10年後を写真家のホンマタカシが撮影した作品。
後半には多少地震のことも描かれるが、ほとんどはホテルの
日常を撮影したもので、無事10年を迎えたということでは、
関係者にとっては良いのだろうが、それが観客には伝わって
こない。紹介されるいくつかの証言はそれなりだが…。公開
は、2016年11月末渋谷イメージフォーラムにて。)
『ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男』“Relève”
(映画「ブラック・スワン」の振付師で、ナタリー・ポート
マンの夫のバンジャマン・ミルピエの、パリ・オペラ座への
挑戦を追ったドキュメンタリー。史上最年少の芸術監督とし
て新作を手掛けながら、350年の歴史を持つ劇場の伝統や慣
習との対峙が描かれる。ただその対峙の部分は微妙で、新作
の創作ノートのような場面が多い。それはファンには貴重な
ものだろうが…。公開は12月23日より、渋谷Bunkamura ル・
シネマにてロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。

なお今週はこの他に東京国際映画祭の事前試写も行われ、
コンペティション作品6本など全部で8本を鑑賞したが、
その報告は映画祭終了後に纏めて行う予定だ。



2016年10月16日(日) インフェルノ、俺たち文化系プロレスDDT

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『インフェルノ』“Inferno”
2006年5月紹介『ダ・ヴィンチ・コード』、2009年5月紹介
『天使と悪魔』に続くダン・ブラウン原作、ロバート・ラン
グドン教授シリーズの映画化第3弾。
巻頭で追い詰められた男の投身のシーンがあり、やがてその
男が人類滅亡の鍵を握ったまま死亡したことが判る。一方、
ラングドンは負傷して病院で目覚めるが、彼にはその記憶が
ない。しかもボストンの大学にいたはずが、病院の所在地は
イタリアのフィレンツェだった。
さらにそこに刺客が現れ、彼は主治医の女性医師と共に辛く
も病院を脱出する。そしてその間の彼の脳裡には、終末か地
獄を思わせる幻想が付き纏っていた。そこから人類への災厄
まで24時間の期限の中で、ラングドンにしか叶わない鍵の解
明と災厄阻止の任務が発動する。

出演は3作通して主人公ラングドン教授を演じるトム・ハン
クスと、今回の相手役には2013年2月紹介『ヒステリア』な
どのフェリシティ・ジョーンズ。
他に、2013年2月紹介『アンタッチャブルズ』などのオマー
ル・シー、2009年1月紹介『スラムドッグ$ミリオネア』な
どのイルファン・カーン、2007年8月紹介『アフター・ウェ
ディング』などのシセ・バベット・クヌッセン、2016年5月
29日に題名紹介『疑惑のチャンピオン』などのベン・フォス
ターらが脇を固めている。
監督も3作通してのロン・ハワード、脚本は『天使と悪魔』
に続いてのデヴィッド・コープ、音楽は3作通してのハンス
・ジマーが担当している。
『天使と悪魔』の紹介の時にも書いたが、『ダ・ヴィンチ・
コード』は原作の第1作ではなく順番が入れ替わっていた。
そして本作に関しては原作の第4作で、これの前に2009年に
刊行の『ロスト・シンボル』があるものだ。
この要領で行くと、この後に『ロスト・シンボル』も映画化
されるのかな? ただしこの作品はフリーメイソンを扱って
いるからいろいろ障害があるのかもしれない。いずれにして
もヴァチカンを敵に回したり、大変なシリーズだ。
ただまあ、『ダ・ヴィンチ・コード』が大話題作になってし
まったために、どうしてもその続きには同じテイストを期待
してしまうのだが、あの謎解きはあまりにも見事なもので、
それに匹敵するものはなかなか難しい。
それに対して本作では、実にしょうもないことを知っている
ラングドンのオタクぶりが楽しめるもので、それが薀蓄によ
る謎解きとは一味違う面白さになっている。その辺が知人に
そういう感じの人物の多い自分としては楽しめた。
その点で自分的には好ましい作品だった。

公開は10月29日より、全国ロードショウとなる。

『俺たち文化系プロレスDDT』
試合前にパワーポイントを使って見所をプレゼンテーション
するなど、異色の興行を行っているプロレス団体、DDTの
現在を追ったドキュメンタリー。
DDTは1997年に選手3人で設立された新興の団体だったが
徐々に規模を拡大し、今では盟主とされる新日本プロレスに
次ぐ団体になっているのだそうだ。その興行には上記のプレ
ゼンテーションのような少し変った演出が施され、故に文化
系とも称されている。
その文化系の演出を担っているのが、本作の監督でもあるマ
ッスル坂井。彼は早稲田大学シネマ研究会出身で、映像班と
してDDTに参加した後にレスラーとなった。そして家業を
継ぐために一旦は引退したものの、社長業の傍らパートタイ
ムのレスラーとして復帰したのだそうだ。
そんな彼が社長業で培ったパワーポイントを駆使した試合前
のプレゼンテーションを行ったり、さらに試合のシナリオも
作成して興行を盛り上げている様子。また、DDTの試合や
舞台裏の状況が描かれる。そこには新興団体ならでは仲間と
の繋がりみたいなものもあるようだ。
そして本作では、マッスル坂井が仕掛ける新日本プロレスか
ら棚橋弘至選手を招いての、DDT所属HARASHIMA選手との
対戦が描かれる。それは先に行われた交流戦で惨敗を喫した
HARASHIMA選手の思いに応える企画でもあった。しかしその
シナリオがなかなか完成しなかった。

監督は選手でもあるマッスル坂井と、2006年3月紹介『セキ
★ララ』などの松江哲明。坂井は2014年に『劇場版プロレス
キャノンボール2014』という作品を発表しており、本作が第
2作。松江は2012年10月「東京国際映画祭」で紹介『フラッ
シュバックメモリーズ 3D』以来の長編作品となる。
作中に描かれるプロレスにシナリオがあることに関しては、
予想はしていたものだが、本作ではそこから真剣勝負に至る
様子も理解できた。観客のどこまでがそれを理解しているの
かは知らないが、これはこれでエンターテインメントとして
成立するものだろう。
ただ棚橋選手とDDTの選手との実力の差は素人目にも歴然
としていたもので、それも理解してこの結果を受け入れるの
は、その後の流れを考慮してもなかなか納得が難しい。でも
まあそれに歓声が上がっているのだから、観客はそれで良し
としているのだろう。深い世界だ。
一方、松江監督に関しては、2012年の作品は映画祭の観客賞
を受賞し興行もヒットしたようだが、上記の紹介を読んで貰
えば判るように僕には納得の出来ない作品だった。それは明
らかに松江監督の作品ではない部分が多くあるように観えた
からに他ならない。
その点で言うと、本作に関しても坂井監督による部分も多く
あると思われるが、そこに織り込まれるマッスル坂井に関す
る部分が松江監督らしさを感じさせ、これなら松江作品と認
められると思えた。他にもいろいろな思いが伝わってくる感
じもする作品だ。

公開は11月26日より、東京は新宿バルト9他にて、全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『島々清しゃ』
(沖縄県慶良間諸島を舞台に、音感が良すぎて周囲に溶け込
めない少女と、その島に演奏にやってきたヴァイオリニスト
との交流を描く。少女は音程の狂いから米軍機の墜落も予測
できる。沖縄音階の民謡もふんだんに取り込まれ、ジャズと
のコラボレーションなども面白いが、お話としては有り勝ち
かな。2005年12月紹介『転がれ!たま子』などの新藤風監督
による11年ぶりの作品。公開は2017年新春第2弾としてテア
トル新宿他にて、全国ロードショウ。)
『聖の青春』
(今年の東京国際映画祭でクロージングを飾る作品。1998年
に29歳で早世した将棋界の「西の怪童」村山聖の生涯を松山
ケンイチの主演で映画化。病魔と闘いながら名人位を争った
羽生善治との闘いなど名勝負が再現される。実話だから仕方
がないが、クライマックスの勝負のシーンが苦悶の表情ばか
りなのは息苦しい。観客も彼の苦闘を追体験することにはな
るが…。棋譜の紹介などに何か工夫があっても良かったので
はないか。公開は11月19日より、全国ロードショウ。)
『胸騒ぎのシチリア』“A Bigger Splash”
(声帯を痛めて医者から喋りを禁止され、再婚した年下の男
性と共に島のリゾートで静養する女性ロッカーの許に、元の
亭主が娘を連れてやってくる。元亭主は彼女に未練があり、
現亭主は若い女性の色香に迷いだす。何と言うか下世話な話
が地中海を背景に繰り広げられるが…。上映時間2時間5分
たっぷりで、観終って何とも言えない雰囲気にさせられる作
品だった。公開は11月19日より、新宿ピカデリー他にて、全
国ロードショウ。)
『変態だ』
(2009年4月紹介『色即ぜねれいしょん』などの原作者みう
らじゅんが「小説新潮」に発表した原作を、自らの企画・脚
本、イラストレーターの安齋肇の初監督により映画化した作
品。何と言うか題名通りの作品で、売れないミュージシャン
が糟糠の妻とスポンサーの女性との三角関係に陥る話だが、
強いて述べるほどの物語はなく、雪山でのSMプレイなどが
繰り広げられる。公開は12月10日より、新宿ピカデリー他に
て、全国順次ロードショウ。)
『ソーセージ・パーティー』“Sausage Party”
(2011年9月紹介『50/50 フィフティー・フィフティー』な
どのセス・ローゲンが製作原案脚本主演を務めるR15+指定の
CGIアニメーション。スーパーマーケットの食品売り場に
並ぶソーセージの主人公が、いろいろな妄想を膨らませなが
ら恐ろしい現実に目覚めて行く姿が描かれる。『トイ・スト
ーリー』の食品版といった感じだが、ソーセージには洋の東
西を問わず同様のイメージがあるようで…。公開は11月4日
より、全国ロードショウ。)
『いたくても いたくても』
(「恋はさんかく、リングはしかく」という惹句で、恋愛と
プロレスを絡めた物語。東京藝術大学大学院映像研究科の製
作配給によるもので、同様の形態では2013年12月に『神奈川
芸術大学映像科研究室』という作品も紹介しているが、前作
も今回も物足りなさが残る。三角関係を描くなら相手の側も
ちゃんと描き込んで欲しかったかな。それなりの描写はされ
ているが、バランスが良くない感じがした。公開は12月3日
より、渋谷ユーロスペースにてレイトショウ。)
『太陽の下で−真実の北朝鮮−』“V paprscích slunce”
(ロシア出身のドキュメンタリー作家が、北朝鮮の平壌に暮
らす8歳の少女を1年に亙って取材した作品。脚本などは事
前検閲を受けているが撮影素材は自由に持ち出せたようで、
リアルな北朝鮮の日常が描かれている。北朝鮮の要請を受け
たロシア政府は監督への非難と上映禁止処分を出したが、各
国の映画祭での上映はされたようだ。公開は2017年1月21日
より、シネマート新宿他にて、全国順次ロードショウ。)
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』“Ossessione”
(没後40年を迎えるルキノ・ヴィスコンティ監督の初期3作
がディジタルリマスターされて再公開される。その内の本作
は監督のデビュー作だが、オリジナルの141分版は損傷の激
しいフィルムしか現存せず、本作は状態の良いフィルムと近
年発見されたオリジナルネガから修復された現状ではベスト
のものだそうだ。全てロケーションによるネオリアリズムの
原点が観られる。公開は2017年1月7日より、新宿武蔵野館
にて限定ロードショウ。)
なお同館では、12月24日より『若者のすべて』“Rocco e i
suoi fratelli”と、2017年1月21日からは『揺れる大地』
“La terra trema”も、それぞれ2週間ずつ限定でのロード
ショウとなる。
『ブラック・ファイル 野心の代償』“Misconduct”
(ニューオーリンズを舞台に、巨大製薬会社の薬害問題を追
及する若き弁護士の姿を追った作品。2011年7月紹介『トラ
ンスフォーマー/ダークサイド・ムーン』などのジョシュ・
デュアメル主演で、アル・パチーノ、アンソニー・ホプキン
ス、イ・ビョウンホンらが脇を固める。監督は2004年『THE
JUON呪怨』などの製作を手掛けたシンタロウ・シモサワによ
る長編デビュー作。公開は2017年1月7日より、新宿ピカデ
リー他にて、全国ロードショウ。)
『31』“31”
(2013年9月紹介『ロード・オブ・セイラム』などのロブ・
ゾンビ監督によるハロウィンがテーマのスラッシャー作品。
町中に妖怪が溢れる夜、廃墟に拉致された5人の男女が、命
を賭けた12時間の脱出ゲームに挑む。脇役にジュディ・ギー
スンやマルカム・マクダウェルなど往年のスターが顔を揃え
ている。好きな人には堪らない作品だが、前半が少し飛ばし
過ぎで、後半が失速気味かな。11月22日より新宿シネマカリ
テ他、全国順次ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年10月09日(日) 造られた殺人、MICメン・イン・キャット、オー・マイ・ゼット!

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『造られた殺人』“특종: 량첸살인기”
2014年公開『観相師』などのチョ・ジョンソク、2011年5月
紹介『鯨とり−ナドヤカンダ−』などのイ・ミスク、2012年
11月紹介『R2Bリターン・トゥ・ベース』などのイ・ハナ
共演で、連続殺人犯を追う事件記者を描いた韓国映画。
物語の発端で、主人公はある企業のスキャンダルをスクープ
するが、その会社が自社のスポンサーであった事から仕事を
失ってしまう。そこでふと主人公は、未解決の連続殺人事件
のタレこみ情報を思い出し、その現場に行ってみる。
そこは半地下のアパートで、近くには殺人現場で目撃された
と同じ赤い乗用車も駐車していた。そして部屋に潜入した主
人公は、暗闇の中で1枚のメモ用紙を手に入れる。それには
殺人者の告白と思われる文章が記載されていた。
そのメモ用紙をテレビ局に売り込み、報道番組に出演した主
人公は事件記者として華々しい復活を遂げるのだが…。それ
はとんでもない事態に彼を追い込むことになってしまう。果
たして彼の報道は誤報だったのか?

さらに共演者では、2013年5月紹介『殺人の告白』などのペ
・ソンウ、『観相師』などのキム・ウィソン、ドラマ『ミセ
ン〜未生〜』などのキム・デミョンらが脇を固めている。
脚本と監督は、2013年デビュー作で上海国際映画祭のアジア
新人作品賞を受賞し、さらに同年の女性映画人賞、監督賞を
受賞したノ・ドク。デビュー作は恋愛映画だが、ストーリー
とキャラクターが共感を呼び評価されたそうだ。
そして本作は、2003年に構想し、2008年から脚本を書き始め
たというもので、発端は有り勝ちな連続殺人事件の追及なが
ら、スクープから誤報、さらには意外な展開…と、緻密な構
成で観客を引き込んで行く。
特に離婚し掛っている主人公と妻との関係という、普通なら
うざくなるサブストーリーを見事に成立させ、また主人公の
女性上司の存在など、これは女性監督ならではと思わせる。
それを男性にも納得できるように描いている。
実は前回題名紹介の『ミュージアム』では、そのようなサブ
ストーリーをほぼ排除して、犯人捜査の推理に重きを置いて
いる。それは推理の点では日本映画に軍配を上げるものの、
本作には大人の映画の楽しみがあるようにも感じられた。
さらに結末には、おや?と思わせる仕掛けも用意してあり、
これは全く一筋縄ではいかない作品に仕上げている。これは
観客への挑戦状とも言える、正に大胆な作品だ。

公開は11月19日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ
ート心斎橋、愛知はイオンシネマ名古屋茶屋他で、全国順次
ロードショウとなる。

『MICメン・イン・キャット』“Nine Lives”
2012年5月紹介『MIB3』などのバリー・ソネンフェルド
監督が、2013年8月紹介『ハウス・オブ・カード』などのケ
ヴィン・スペイシーを主演に迎えたファンタシー作品。
スペイシーが演じるのは一代で財を成したワンマン経営者。
部下には厳しいがやることは破天荒で、今は本社を移すため
ニューヨークに建てた北米大陸一の高さを誇るビルにご執心
だ。ところが、その落成式を目前にしてシカゴにもっと高い
ビルの建つことが判明する。
一方、社内には社長のやり方に反発するグループも存在し、
彼らは株式を公開して社長の発言力を弱める計画を進めてい
た。そんなことは知らず、社長は愛娘の誕生日のプレゼント
に、好きでもない猫を買うため偶然見かけたペットショップ
を訪れる。
そこで不細工な猫を購入した社長は帰路に就くが、その途中
で反対派の部下に新社屋の屋上に呼び出される。そこで部下
と言い争いになり、部下をクビにしようとした瞬間、落雷の
直撃に遭い社長と猫の身体が入れ替わってしまう。しかも社
長の身体は昏睡状態に…。
この事態に部下は計画を推し進めようとし、猫の姿でその陰
謀を知った社長は、人間の言葉も喋れない猫の姿のままその
阻止に乗り出す。しかしそれは簡単に出来るものではなく、
部下の計画は着々と進行。そこに社長の息子も加わり、事態
は思わぬ方向に展開する。

共演は、2010年1月紹介『バレンタインデー』などのジェニ
ファー・ガーナー、2016年8月紹介『ジャングル・ブック』
では声優を務めていたクリストファー・ウォーケン。
因に、本作でスペイシーの役名のトムと、ウォーケンの役名
のフェリックスは、いずれも著名な猫のキャラクターの名前
だが、調べたらガーナーの役名のララにも猫のキャラクター
がいるようだ。そんなことにも拘っている作品だ。
主演はスペイシーだが、実は作中のかなりの部分は昏睡状態
で病床に寝たまま。替わって大活躍するのが6匹で演じられ
たという猫。CGIも使われていると思うが、エンディング
ロールのスタッフ欄の先頭には、2人のアニマルトレーナー
の名前が掲げられ、特別の敬意が表されていた。
なおウォーケン扮するフェリックスが自分を紹介するときに
cat whispererという言葉を使っていた。これには1998年の
ロバート・レッドフォード監督作品『モンタナの風に抱かれ
て』の原題“The Horse Whisperer”を思い出した。
字幕では「トレーナー」となっていて、それも誤りではない
が、少しニュアンスを感じたいところだ。

2016年6月紹介『ペット』は見事に犬好きを納得させる作品
だったが、本作では猫好きが大喜びしそうだ。僕自身、子供
の頃に猫を飼っていた経験もあるので、その目で観ていても
これは堪らない作品だ。
公開は11月25日より、全国ロードショウとなる。

『オー・マイ・ゼット!』
予告編ディレクターとして100作品以上の洋邦画を手掛けて
きたという神本忠弘監督による本編デビュー作。
背景はゾンビ禍が終息した世界。そこに久し振りにゾンビが
現れる。そして1人の若者がそのゾンビを一軒の民家に閉じ
込めることに成功するが…。その民家の住人や他にもゾンビ
を追ってきた男女などが登場し、ゾンビを巡って人々の思惑
が交錯する。
警察に通報すれば即殺処分という状況下で、そのゾンビを利
用して一儲け企む連中や、逆にゾンビに愛情を注ごうとする
人など。何たって事件の起こった場所の地名が露目路町とい
うくらいで、見事にジョージ・A・ロメロ監督にリスペクト
した物語が展開される。

出演は、お笑いトリオ“東京03”の角田晃広、2012年6月
紹介『ハイザイ〜神さまの言うとおり〜』などのともさかり
え、2013年12月紹介『ハロー!純一』などの森下能幸、同年
4月紹介『俺俺』などの町田マリー。
それにジュノンボーイ出身の柾木玲弥と、8月21日題名紹介
『オケ老人』などの萩原利久。他に声の出演で、玄田哲章、
間宮くるみら。
ゾンビと日常が並立する世界ということでは、2014年に放送
された『玉川区役所 OF THE DEAD』などもあるが、本作の場
合はゾンビ自体はあまり登場せず。主にその取り扱いを巡る
論議を描くというのは、案外日本的な感じもするものだ。
しかもほとんどのシーンが屋内の一室で進む会話劇で、これ
は事前に舞台劇でもあるのかと思ったが、本作は映画オリジ
ナルのようだ。それにしてもかなり巧みな展開には、舞台公
演で練り上げられた雰囲気もあった。
僕自身がゾンビものは好きなジャンルではあるが、近年の走
り回るゾンビなどはパロディとしても面白くは感じない。そ
の点で言ってもロメロ・ゾンビを丁寧に再現した本作は気に
入った作品だ。
といっても、ロメロ自身は常々死者に対するリスペクトを説
いているものだが、本作にそれはあまり感じられないかな?
しかしそれ以上に人間の酷さが描けており、これも有りだろ
うとは思えるところだ。

公開は11月5日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ
ート心斎橋にて、1週間限定レイトショウとなる。
その他の公開予定が発表されておらず、そのままDVDにな
るのかもしれないが、出来れば映画館で観て欲しい作品だ。
また舞台劇にしてさらに完成度を高めて欲しいとも思える。
いずれにしてもこの監督には注目したい。

この週は他に
『貌切り』
(1937年に起きた映画スター林長二郎に対する貌切り事件を
モティーフに、その事件を映画化しようとする監督らの企画
会議を描く舞台劇。さらにその中で行われるスタニスラフス
キーの演技論に基づくロールプレイと、それによる謎解きと
いう多層構造の作品。台詞の応酬が演劇の面白さを堪能させ
てくれる。公開は12月3日より新宿K's cinema、12月10日よ
り名古屋シネマスコーレ他、全国順次ロードショウ。)
『ハッピーログイン』“좋아해줘”
(韓国映画お得意のラヴコメだが、それぞれの条件が異なる
3組の男女のエピソードを独立、且つ、少し交差させて実に
巧みに描き込んでいる。有り勝ちな話だが捻り方が上手い。
チェ・ジウ、ユ・アイン、カン・ハヌル、イ・ミヨン、キム
・ジュヒョク、イ・ソムという各世代の代表とも言える韓流
スターの共演も魅力的だ。公開は10月15日より、東京は新宿
バルト9、大阪は梅田ブルク7などで限定ロードショウ。)
『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』
   “Teatro alla scala il tempio delle meraviglie”
(18世紀に設立され、世界三大オペラハウスの一つとされる
劇場を描いたドキュメンタリー。2014/15年シーズンの幕開
け準備の様子を追いながら、ルキノ・ヴィスコンティ演出の
『椿姫』におけるマリア・カラスの名演の映像なども挿入さ
れ、その偉大な歴史が手際よく纏められている。1946年の再
開時の映像も貴重だ。公開は12月23日より、渋谷Bunkamura
ル・シネマ他にて、全国順次ロードショウ。)
『幸せなひとりぼっち』“En man som heter Ove”
(本国スウェーデンでは『フォースの覚醒』を抑えたという
ハートフルコメディ。妻に先立たれた壮年男性が、自らの行
く末を考えつつ周囲の問題に関って行く。ルールに厳格な様
子や国産車への拘りなど、頑固おやじの典型のような姿は、
日本でも共感を呼ぶかな。外国人の存在や介護の問題は日本
社会も直面している話題だが…。公開は12月17日より、新宿
シネマカリテ他にて、全国順次ロードショウ。)
『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』
                 “Das Grosse Museum”
(1891年開館というウィーンにある「美術史博物館」。その
栄華を極める建物が、2012年から2年に亙って行った大規模
な改修工事に密着したドキュメンタリー。建物の改修だけで
なく、並行して行われた所蔵品の修復の様子なども紹介され
る。過去の修復で失われた下絵の話なども興味深い。『バベ
ルの塔』の処遇も気になった。公開は11月26日より、ヒュー
マントラストシネマ有楽町他で、全国順次ロードショウ。)
『この世界の片隅に』
(2007年4月紹介『夕凪の街 桜の国』などのこうの史代が
2007〜09年に発表した漫画賞受賞作によるアニメーション。
昭和19〜20年の呉市を主な背景に、広島市から嫁いだ女性の
戦時下の日常が描かれる。トンネルを通る蒸気機関車など、
細かな描写が続く中、昭和20年8月6日に向けて進む日付が
緊張感を高める。クラウドファンディングにより製作された
作品で、公開は11月12日より全国ロードショウ。)
『疾風スプリンター』“破風”
(台湾で盛んに行われているという自転車ロードレースを描
いた作品。台湾各地や世界中で行われるレースの様子が、大
掛りなロケーションにより美しい景色と共に描かれる。ただ
競技のルールが以前に観た日本のレースとは異なるようで、
その辺が少し気になった。本作の方が単純で明快ではあるの
だが…。公開は2017年1月、東京は新宿武蔵野館他で、全国
ロードショウ。)
『マックス・スティール』“Max Steel”
(バービー人形などで有名なMattel社が1997年から展開して
いる男児向けシリーズに基づくアクション作品。父亡き後、
母と共に各地を転々としていた主人公が故郷に帰ってきたと
き、父の務めていた研究所で謎の事故が発生する。先にアニ
メシリーズもあるようだが、本作はその誕生篇、ここからの
展開が面白くなりそうだ。公開は12月3日より、東京は池袋
HUMAXシネマズ他で、全国ロードショウ。)
『太陽を掴め』
(園子温監督らを輩出した「東京学生映画祭」でグランプリ
を受賞した中村祐太郎監督による劇場デビュー作。元子役だ
がスキャンダルで挫折した若者がミュージシャンとして再起
を図る。大麻の吸引シーンなどが無批判に描かれ、僕は単純
に認める作品とは言えないが、今年の東京国際映画祭「日本
映画スプラッシュ部門」に招待されている。公開は12月24日
より、東京はテアトル新宿他で、全国順次ロードショウ。)
『愚行録』
(東北大学卒業後、ポーランド国立映画大学で学んだという
石川慶監督の長編デビュー作。貫井徳郎による2006年直木賞
候補作の映画化。一家惨殺事件を追う雑誌記者と、我が子の
虐待死容疑で収監されているその妹。さらに惨殺事件の調査
の過程で浮かび上がる様々な人物の「愚行」が、現代に有り
勝ちな話として描かれる。公開は2017年2月18日より、全国
ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年10月02日(日) 追憶(2015)、TOMORROW パーマネントライフを探して、東京国際映画祭記者会見、東宝/ワーナー邦画記者会見

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『追憶(2015)』
第2次世界大戦の後半、1944年9月15日から11月25日までの
72日間に及んだパラオ諸島ペリリュー島の戦いを描いた戦争
ドキュメンタリー。
戦いは中川州男陸軍大佐率いる日本軍守備隊に対して、アメ
リカ軍第1海兵師団及び第81歩兵師団が上陸戦を仕掛ける構
図で行われた。ペリリュー島には当時東洋一と言われた海軍
航空隊の飛行場があったが、すでに航空機は無かった。
そこで日本軍は山を要塞化して上陸部隊を迎え撃ち、さらに
縦横に掘られたトンネルを介してのゲリラ戦を敢行する。こ
れにより、当初のアメリカ軍側の予想では4日間で終るとみ
られた戦いは72日にも及ぶことになる。
それはアメリカ軍にとっては、塹壕から突然軍刀を振りかざ
して飛び出してくる日本兵に怯えながら、小銃や火炎放射器
を撃ちまくる。そして爆撃機が目標も定めず絨毯爆撃を繰り
返す。それがただ続くだけの戦闘だ。
その様子が、アメリカ国防総省に保管されていたカラーを含
む大量の記録映像と従軍した元米国兵士、それに戦闘終了後
も洞窟に潜み終戦後に投降したという元日本軍兵士らの証言
などによって描かれる。
以前から書いていることだが僕は反戦の立場を採っているの
で、基本的に戦闘を描いた作品は認めない。特にドラマ作品
では、反戦を謳っていても戦闘シーンが描かれたものは認め
ない方針でいる。
しかし本作に関してはあくまで記録であり、これは事実とし
て受け止めるべきもの。そこに私情は挟まれない。その観点
で本作に対すると、そこにあるのはただの殺戮であり、英雄
が活躍するドラマとはかけ離れたものだ。
そんな現実の戦いの様子が数10分に亙って延々と繰り返され
る。しかも実際には72日間も続いたのだと考えるとただ悲惨
であり、人間はこんなことに労力を費やしたのだと、哀しく
もなってくる。
とは言え人間は今だにその愚行を繰り返し続けている訳で、
さらにはそれを拡大しようとさえしている。その風潮は日本
が戦争をしたことも知らない若者に顕著にも感じるが、本作
はそういう人たちにこそ観て貰いたいものだ。
特に戦争アニメやゲームにむやみに興奮して、殺人者になる
ために戦場に行くことを渇望しているような人たちには、本
当の戦争の悲惨さも理解してもらいたいもの。そんな戦争の
真実が本作には描かれている。
ただし本作では、スタンダードで撮影された映像がワイド画
面に引き延ばされていたり、同じ空爆の映像が繰り返し登場
するなど問題もあるが、無残に殺されるだけの戦争の何が良
いのか、考える切っ掛けにはなる作品だ。

公開は11月5日より、東京都写真美術館ホール他にて、全国
順次ロードショウとなる。

『TOMORROW パーマネントライフを探して』“Demain”
2013年10月紹介『グランド・イリュージョン』などで国際的
に活躍するフランス人女優のメラニー・ロランが共同監督を
務めるエコロジー系のドキュメンタリー。
発端は、2012年6月の学術雑誌「ネイチャー」に掲載された
「今のライフスタイルを続けたら2040年〜2100年の間に人類
は滅亡する」という科学者たちの予測。これを基に「如何に
したら人類は生き延びられるか?」を検証する。
そこではまず食糧問題が取り上げられ、アメリカデトロイト
での都市農業の取り組みなどが紹介される。それにしてもこ
のデトロイトの状況に関しては全く知らなかったし、かなり
の衝撃だった。
次にはエネルギー問題が取り上げられ、デンマークやアイス
ランド、インド洋に浮かぶフランス領レユニオン島などが取
材される。因にレユニオン島に関しては字幕で所在地が言及
されなかったが、フランス人には常識なのだろう。
とまあ、ここまでは見た目にも判り易く、取材地は異なるに
せよ今までにも紹介されていた事象が多かったのだが、この
次からは過去の作品ではあまり記憶になかった問題が取り上
げられて行く。
その最初は経済問題。ここではまずはフランスの地域密着型
の企業が紹介され、次いでイギリスから地域通貨という取り
組みが報告される。これには東京でも各区が発行する買物券
みたいなものはあるが、そのレヴェルが違う。
何しろ首長の給料の一部もこれで支払われ、これが流通する
ことによって地産地消が完璧に達成されるというのだ。確か
にその地域でしか通用しない通貨が、その地域内での流通を
活発化させるのは明らかだ。
これによって、遠距離輸送などによって生じる無駄な経費や
環境問題も解消される。特に、今までの経済活動の基本かの
ように言われてきたグローバル化という言葉の無意味さが俄
かに認識される、見事なレポートだった。
さらに本作は民主主義という言葉の定義にも言及し、アメリ
カがすでに寡頭政治というべき状態に陥っているという指摘
や選挙制度の矛盾、それを解決するための究極の方策なども
紹介し、これも目から鱗が落ちる気分だった。
そして最後は教育問題に移るが、これには今年公開『マイケ
ル・ムーアの世界侵略のススメ』などもあったが、その取材
のレヴェルが全然違う感じで、深く突っ込んだものになって
いた。
この様に見事に世界各国の取り組みの現状が紹介される作品
だが、実は作品中に日本の紹介が全くない。中ではサミット
の記念写真で、日本の首相がど真ん中にしゃしゃり出る映像
はあるが、それが皮肉にも見える風景になっている。
さも有りなんではあるが、この映像には日本国民として全く
恥ずかしくなる、そんな気分にもさせられる作品だった。

公開は12月より、東京はシアター・イメージフォーラム他に
てロードショウとなる。

続いては記者会見の報告を2つ。
「東京国際映画祭記者会見」
今年は10月25日から11月3日まで10日間に亙って開催される
映画祭のラインナップ発表記者会見が行われた。
今回、会期中の上映作品は200本を超える見込みで、その内
のコンペティション部門は16本、アジアの未来部門が10本、
日本映画スプラッシュ部門8本、ワールド・フォーカス部門
19本などを注目したい。この内の何本が観られるか? コン
ペは出来るだけ制覇したいと思っているが。
なおコンペには日本から、8月21日に題名紹介『アズミ・ハ
ルコは行方不明』など2本が選出されているが、記者会見に
ゲスト登壇した蒼井優が選出された喜びを語る一方で、自ら
も主演女優賞候補であることを知らなかったようで、それを
告げられた時に素で驚いていたのが面白かった。
この他、クロスカット・アジアはインドネシア映画の特集。
また日本映画クラシックスとして、1953年の『雨月物語』、
1955年の『浮雲』、1962年の『キングコング対ゴジラ』、
1980年の『復活の日』、1983年の『里見八犬伝』がそれぞれ
4Kリマスターにて上映される。
9月紹介『七人の侍』で4Kリマスターの素晴らしさを報告
したが、それが基準になったことは嬉しい限りだ。

「東宝/ワーナー邦画記者会見」
すでに報道もされていると思うが、ここでは人気コミックス
『ジョジョの奇妙な冒険』の実写映画化が発表され、監督と
主要キャストが登壇しての会見が行われた。
その監督は三池崇史、そしてキャストは山��賢人、神木隆之
介、岡田将生、真剣佑、小松菜奈、山田孝之、伊勢谷友介と
いうものだ。他にキャストとして國村隼、観月ありさの名前
も報告された。
原作は、既刊117巻、累計販売部数9000万部を超え、現在は
第8部が連載中のものだが、映画化されるのはその第4部の
「ダイヤモンドは砕けない」で、宮城県仙台市をモデルとし
た杜王町が舞台。ただし撮影はスペイン・カタルーニャ州の
シッチェスで行われるとのことだ。
因にシッチェスは、三大ファンタスティック映画祭の一つと
される国際映画祭でも著名な場所で、三池監督の作品も受賞
していることから現地にも馴染みがあったのだろう。それに
しても日本が舞台の物語を南欧で撮影というのはトリッキー
なことだ。
ということも含めて多少の不安も感じる作品だが、来年夏の
公開を目指しての撮影が開始される。

この週は他に
『ミュージアム』
(巴亮介原作コミックスの映画化。この手のコミックスは映
像化ギリギリの線を狙ってくるが本作も同様。レーティング
はGだが、かなり観客を選ぶ作品だ。犯罪の手口も強烈で、
むしろこのレーティングに収めたプロデューサーを称賛した
くもなる。監督は大友啓史、主演は小栗旬。公開は11月12日
より、全国ロードショウとなる。)
『あたらしい野生の地』“De nieuwe wildernis”
(オランダの首都アムステルダムから50�劼両貊蠅如�干拓事
業が中止された6000ha程の土地に野生が復活した。その現在
を撮影したドキュメンタリー。人間の手も多少入ってはいる
ようだが、昔し観た『野生の王国』のような映像が展開され
る。人間が滅亡するとこんな世界が戻ってくるかな? 公開
は10月29日より、渋谷アップリンク他で、全国順次上映。)
『戦場のメロディ』“오빠 생각”
(朝鮮戦争時の戦争孤児を巡る実話に基づくとされる作品。
南北対立が子供の心にも影を落とす中で、コーラスがその心
の傷を癒して行く。9月4日題名紹介『弁護人』などのイム
・シワンと、2013年11月紹介『スノーピアサー』がデビュー
作のコ・アソンが共演。公開は10月29日より、シネマート新
宿他で、全国順次ロードショウ。)
『彷徨える河』“El abrazo de la serpiente”
(コロムビア映画として史上初のオスカー外国語映画部門に
ノミネートされた作品。20世紀初頭とその50年後の時代背景
で、アマゾン上流の密林域に足を踏み入れた探検家の姿を描
く。2015年作品だが、コロムビア・アマゾンの未開のままの
姿がスクリーンに登場して、これが凄い。公開は10月29日よ
り、シアター・イメージフォーラム他で、全国順次上映。)
『熊野から ロマネスク』
(2011年8月紹介『海と自転車と天橋立』の田中千世子監督
の最新作。前作では複数のテーマの混在が気になったが、本
作のテーマは「熊野」という一点なので纏まりは良い。ただ
本作は3部作の第2部、第1部もDVDで観せて貰ったが、
評価は完結後に改めてしたい。公開は2017年1月、シアター
・イメージフォーラム他で、全国順次ロードショウ。)
『エブリバディ・ウォンツ・サム!!
   世界はボクらの手の中に』“Everybody Wants Some”
(2014年10月紹介『6才のボクが、大人になるまで。』など
のリチャード・リンクレーター監督の最新作。1980年代の大
学新入生の姿を描いた青春映画。前作はその制作体制などで
評価されたが、僕には何か痛みが感じられた。その監督の次
の作品が80年代というのは、監督の心情の反映にも感じる。
公開は11月、新宿武蔵野館他で、全国順次ロードショウ。)
『コウノトリ大作戦!』“Storks”
(2008年11月紹介『寝取られ男のラブ♂バカンス』の監督で
2014年8月紹介『ザ・マペッツ』などの脚本家ニック・スト
ーラーが製作脚本監督を務めるCGIアニメーション作品。
コウノトリが赤ん坊を運んでくるという寓話を基に、そのコ
ウノトリが宅配便を始めたことによる混乱ぶりを描く。公開
は11月3日より、全国ロードショウ。)
『ホライズン』“Horizontes”
(1952年に史上5人目の最高位“プリマ・バレリーナ・アッ
ソルーダ”の称号を贈られたアリシア・アロンソと、その後
を継ぐ若きバレリーナの姿を追ったドキュメンタリー。貴重
なアーカイブ映像なども多数観られるが、詩情豊かという言
葉がこれほど適切な作品もないと思わせる。公開は11月12日
より、角川シネマ新宿他で、全国順次ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二