井口健二のOn the Production
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2016年09月25日(日) ホドロフスキーの虹泥棒、ちょき

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ホドロフスキーの虹泥棒』“The Rainbow Thief”
1970年の『エル・トポ』や2014年3月紹介『ホドロフスキー
のDUNE』などのチリ人監督アレハンドロ・ホドロフスキーに
よる1990年製作のイギリス作品。実は製作時のトラブルで、
当時は87分のヴァージョンで上映されたが、今回は監督自身
の監修による92分版が日本初公開される。
物語の始まりに登場するのは、港で暮らす風来坊のディマ。
彼はこそ泥で生計を立てているが、同時に街の地下道にも精
通しているようだ。
続いて描かれるのは大富豪の会食の席。そこに財産を狙う連
中が集まるのだが、全て飼い犬が優先の料理に皆は這う這う
の体で逃げ出してしまう。そしてその後には娼婦たちが招か
れ、乱痴気パーティが始まる。
ところがそのパーティの最中に富豪が発作で倒れる。そこで
遺書の開示が求められるが、富豪が昏睡状態で死んでないた
め、開示は死亡の確定まで留め置かれることになる。そんな
騒ぎをよそに富豪の甥は愛犬と共に街を彷徨っていた。
その甥が落す占いカードに誘われたディマは、彼を地下道に
匿い富豪の遺言が開示される日を待つことになる。こうして
ディマはこそ泥などで稼いだ金をつぎ込んで富豪の甥の面倒
を見続けるが、時は瞬く内に数年が経ってしまう。
そしてその間も地下道に匿われたままの富豪の甥は、愛犬を
亡くしたショックもあって少し精神がおかしくなり始めてい
た。そこについに富豪の死が伝えられるが…。

出演は、オマー・シャリフとピーター・オトゥール。それに
富豪役でクリストファー・リー。因にシャリフとオトゥール
は1962年『アラビアのロレンス』での初共演から3度目とな
る共演作だ。
撮影はポーランドのグダニスクで行われ、その撮影中に製作
者と衝突したホドロフスキーはその後のプロモーションには
一切関らなかったとされている。しかし『ホドロフスキーの
DUNE』の製作が色々な呪縛を解いたようで、2014年の来日時
には本作にも言及し、今回の公開に繋がっている。
物語的には多少掴みどころのない作品だが、何となくDUNEの
砂漠の宮殿にイメージの繋がる富豪の甥が匿われた地下道の
様子など見どころはいろいろある。特にそこが水没して行く
シーンは、主人公たちの心情と共に巧みに描かれている。
撮影の行われたグダニスクの風景も美しく、また富豪の飼い
犬として多数登場のダルメシアンや甥の愛犬の大型犬など、
犬も活躍する作品だ。正直に言ってホドロフスキーのファン
がどう取るかは判らないが、こんな作品も良いものだ。

公開は11月12日より、東京は渋谷アップリンク他で、全国順
次ロードショウとなる。

『ちょき』
2013年10月紹介『ゆるせない、逢いたい』が長編デビュー作
だった金井純一監督の第3作。
主人公は、和歌山県の小さな町で美容院を営む男性。数年前
に妻を亡くし、その痛手からまだ立ち直れていないようだ。
そんな彼の許に1本の電話が架かる。それは最初は無言だっ
たが、2度目には「ちょきさんですか?」と訊ね、主人公は
「サキちゃんかい?」と返す。
その少女は、以前に美容院の2階で妻が開いていた書道教室
に通っていた。しかし10年前のある事件で視力を失い、専門
の施設で暮らしていた。そして高校卒業の年齢に達し、次に
進むべき道を決める時期に来ていた。そんな折に昔を思い出
して主人公に電話を掛けてきたのだ。
こうして主人公は、10年ぶりに美容院を訪ねてきた少女と再
会することになるが…。

出演は、2012年4月紹介『道−白磁の人−』などの吉沢悠、
金子監督の短編デビュー作に出ていたという増田璃子。
他に、2012年『桐島、部活やめるってよ』などの藤井武美、
2014年『太秦ライムライト』などの和泉ちぬ、2016年『つぐ
むもの』などの広澤草。さらに芳本美代子、小松政夫らが脇
を固めている。
金子監督の第2作は観ていないが、第1作も本作もかなり特
別なシチュエーションを描いたもので、それは見方を変える
と反発も受けかねない物語が展開される。しかしその物語を
金子監督は実に丁寧な演出で、普遍的に考えることのできる
作品に仕上げている。
さらに本作では視覚障碍者についても描いているが、その描
写も実によく考えられている感じがした。実は僕の娘が視覚
障碍者の団体に勤務していたことがあって、そこでの話を何
度か聞いているが、その中で語られていたことが巧みに表現
されているようにも思えた。
なお物語は金井監督が和歌山を訪れて、その取材の中から編
み出されたものとなっている。その訪れた理由などは明らか
にされていないが、物語は普遍性の中に和歌山という風土を
巧みに取り入れたもののようにも感じられた。その融合のさ
せ方も見事と言える。
調べたところによると金井監督は中央大学理工学部の出身の
ようで、理工系の緻密さのようなものが本作にも現れている
ようだ。僕も工学部の出身者なので、その辺にも共感できる
のかもしれない。

公開は11月19日より和歌山県内での先行上映の後、東京では
12月3日より渋谷HUMAXシネマにて期間限定レイトショウ。
その後は全国順次公開となる。

この週は他に
『ミス・シェパードをお手本に』“The Lady in the Van”
(Dameの称号を持つ名女優マギー・スミスが、16年間にわた
り主演してきた舞台劇の映画化。劇作家アラン・ベネットの
実体験に基づくとされる作品で、数奇な運命に翻弄された女
性との厳しくも温かい交流の物語が、ちょっと捻った構成で
展開される。公開は12月より、シネスイッチ銀座他でロード
ショウ。)
『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間』
                    “Miles Ahead”
(1991年に死去した不世出のトランぺッターの、1975年から
約5年に亙る活動休止にスポットを当てた、ドン・チードル
製作脚本監督主演による作品。演奏シーンもあるが、物語は
単なる謎解きではなく、かなり凝った手法で音楽家の実像に
迫っている。公開は12月23日より、TOHOシネマズシャンテ他
で全国順次ロードショウ。)
『僕らのごはんは明日で待ってる』
(幻冬舎刊、ベストセラー小説の映画化。この出版社の作品
らしく、あざとい位に感動を呼び起こすエピソードが描かれ
る。でも本当に描くべきは女性の葛藤の方ではないのかな。
それに振り回される男性の方が判り易いのは確かだが、その
分、感動も浅いような気がする。公開は来年1月7日より、
全国ロードショウとなる。)
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
              “Florence Foster Jenkins”
(今年の東京国際映画祭でオープニングを飾る作品。1944年
に歌唱力が全くないのに、カーネギーホールでリサイタルを
開いた「オペラ歌手」の実話の映画化。実話は日本のテレビ
番組などでも紹介されていたが、先に書いた『ミス・シェパ
ード』とある意味真逆かな。そんな作品を続けて観られたの
も面白い。公開は12月1日より、全国ロードショウ。)
『マイ・ベスト・フレンド』“Miss You Already”
(トニ・コレットとドリュー・バリモア共演で女性同士の友
情を描く作品。監督はキャサリン・ハードウィック、脚本は
コメディエンヌでもあるモーウェナ・バンクス。正に女だら
けの作品だ。シビアな内容だが、病の経験者でもある脚本家
が巧みにユーモアで描き上げている。バリモア絡みの台詞も
良かった。公開は11月18日より、全国ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年09月18日(日) ハドソン川の奇跡、七人の侍、スター・トレック BEYOND

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ハドソン川の奇跡』“Sully”
クリント・イーストウッド監督が、トム・ハンクスを主演に
迎えて、2009年にニューヨークで起きた航空機事故を描いた
実話に基づく作品。
その旅客機は1月15日の定刻にニューヨーク・ラガーディア
空港を離陸した。ところがその上昇中に鳥の群れが激突。左
右2基のジェットエンジンが共に停止してしまう。このため
機長は緊急処置を発動するが、それらはもっと高空での事態
を想定したものばかりだった。
そこで機長は咄嗟の判断でハドソン川への着水を決断、それ
は乗員乗客合せて155名の生命を救うのだが…。国家運輸安
全委員会に呼び出された機長は、着水の判断が正しかったか
どうか問われることになる。しかもシミュレーターは近隣の
空港への着陸が可能だったとの結論を出す。
外では英雄と称えられる機長が、ここでは容疑者として裁か
れる。果たして彼の決断は正しかったのか? 本当の戦いは
ここから始まった。

共演は、2014年6月紹介『アイ・フランケンシュタイン』な
どのアーロン・エッカートと、2016年1月紹介『Mr.ホーム
ズ』などのローラ・リニー。他には救援に駆けつける観光船
の船員や救助隊など、多くの当時事件に関った人たちが、自
身の役柄で出演しているようだ。
映画の中で機体が着水する直前にビジネスマン風の男性が隣
の席の女性の赤ん坊を代わりに抱えるシーンがある。これに
は1985年の日航機墜落事故の際にも血縁のない幼児を抱えた
男性の遺体があったという報道を思い出した。
1985年に何があったのかは判らないが、本作の描写は証言に
基づくのだろう。人間は最後の瞬間に他人を守ろうとする、
そんな本能ってあるのかな。日米2つの事件で同じことが起
きていたことに人間への信頼を思い起こした。
なお本作の撮影では65�个裡稗唯腺悒�メラが使用されたそう
だ。僕は残念ながら試写室のワイド画面での鑑賞だったが、
事故機が低空で川面を飛行するシーンなどは、恐らく上の空
と下の水面の広がりが効果的だったと予想される。
2011年12月紹介『ミッション・インポッシブル/ゴースト・
プロトコル』では部分的にIMAX撮影が実施されて、その
シーンの空間的な広がりが見事だったが、本作のIMAX上
映でもそれが期待できそうだ。

公開は9月24日より、東京は丸の内ピカデリー、新宿ピカデ
リー他で、全国ロードショウとなる。

『七人の侍』
1954年製作、黒澤明監督によるモノクロ・スタンダードの作
品が4K画質でディジタルリマスターされ、再公開されるこ
とになった。
物語は改めて書くまでもないと思うが、野盗の襲撃に苦しむ
寒村の村人が意を決して侍を雇い、野盗の撃滅を目論む。時
代は戦国が終った頃で、街には浪人の侍が溢れていた。しか
しいくら痩せても武士は武士、一宿一飯だけの報酬では中々
人材は集まらなかった。
ところがふと村人の目に留まった初老の侍が寒村の窮状を理
解し、村の立地などから七人の精鋭で護れると踏んだ侍は、
彼に心酔する若侍と共に人選を開始する。斯くして集められ
た七人の侍は村に向かい、村人たちと共に野盗の軍団を迎え
撃つ準備を始めるが…。

出演は、志村喬、三船敏郎、木村功、加東大介、千秋実、稲
葉義男、宮口精二。他に土屋嘉男、藤原釜足、左卜全、津島
恵子らが村人の役を演じる。
本作は、1954年度ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞の
他、アメリカアカデミー賞の美術賞、衣装デザイン賞、イギ
リスアカデミー賞の作品賞にもノミネートされた。
という作品がディジタルリマスターされたものだが、今回は
それが4K画質で行われたということで、午前10時から日本
橋で行われた特別上映に駆けつけた。そこには本作のスクリ
プターだった野上照代氏、俳優の仲代達矢氏も来場されて、
上映後には対談も公開された。
そこで野上氏は、「こんなに美しい画面で観られるなんて、
これを黒澤さんにも見させてあげたかった。」と感激の面持
ちで発言され、さらに今回は音声もクリアにされたことに関
して「三船さんの台詞が聞き取れないと文句を言われたが、
これならちゃんと聞き取れる。」と…
これは従来の光学式サウンドトラックでは、リプリントの度
に劣化が激しく、それが音声を不鮮明にしていたものだが、
今回はその部分も画像取り込みで処理することによって、音
声もオリジナルの通りに再現されたものだ。
実際に三船の演じる菊千代が百姓生活の苦しさを語るシーン
は、演技との兼ね合いでくぐもった声ではあるものの、その
内容はしっかりと聞き取れるものになっていた。
この他にも、画面の傷取は勿論、上下の揺れや画面間の明る
さの変動なども今回は見事に修復され、3時間半近い上映時
間を過ごしても目の疲れなどを感じないものになっている。
最近は往年の名作のディジタルリマスターを観る機会が増え
ているが、正直に言ってここまで完璧なリマスターは初めて
だと言える。今後はこれを基準にして欲しいものだ。

公開は「午前十時の映画祭7」にて、まず10月8日〜21日に
TOHOシネマズ新宿他のグループAで、10月22日〜11月4日に
TOHOシネマズ日本橋他のグループBで、それぞれ2週間限定
の上映となる。

『スター・トレック BEYOND』“Star Trek Beyond”
2009年に物語の原点に戻って再開された劇場版新シリーズの
第3作。
物語は、3年間の調査任務を終えたジェームズ・T・カーク
船長以下のクルーの乗るU.S.S.エンタープライズNCC-1701が
宇宙基地ヨークタウンに帰投するところから始まる。そこに
は連邦を構成する多数の星の住人たちが共に暮らしており、
カークには基地副提督への道も開けていた。
ところがその基地に所属不明の宇宙船が接近し、乗っていた
女性異星人から未知星雲で遭難したクルーを助けてくれとの
依頼が寄せられる。そこで星雲内の航行に実績のあるカーク
にその緊急任務が命じられるが…。そこは宇宙連邦に敵対す
る勢力の巣窟だった。

出演は3作連続のクリス・パイン、ザッカリー・クイント、
カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、
アントン・イェルチン、ジョン・チョウ。
そこに本作では、2012年7月紹介『プロメテウス』などのイ
ドリス・エルバ、2015年8月紹介『キングスマン』などのソ
フィア・ブテラが新たに登場している。
監督は、前2作の監督を務めたJ・J・エイブラムスが製作
に下がって、代わりに2013年5月紹介『ワイルド・スピード
/ユーロ・ミッション』などのジャスティン・リンが担当。
脚本は、テレビシリーズを数多く手掛けるダグ・ユングと、
本作の出演者でもある2014年2月紹介『ワールズ・エンド』
などのサイモン・ペッグが共同で担当している。
作品の乗りとしては完璧にテレビシリーズ『宇宙大作戦』に
沿ったもので、それを物足りなく感じる人はいるかもしれな
いが、僕自身としてはOKの作品だと言える。それは毎度の
敵が出てきてそれをやっつけるだけということではあるが、
それはそれで毎回目先が変れば楽しめるものではある。
しかも今回は宇宙基地ヨークタウンの景観など、それは中々
の絵柄も登場するもので、それらを存分に楽しみたいを思う
作品だ。そこにクルー間の絆などが描かれれば、ファンとし
ては言うことなしだろう。ということで本作は純粋に楽しみ
たいと思える作品だ。
なお本作は昨年2月他界したレナード・ニモイに捧げられて
いる。ニモイは新シリーズの前2作にも出演しており、この
献辞は当然のものだが、今回はその想いが強過ぎてシリーズ
の成立を少し逸脱させたようにも感じる。まあ仕方ないと言
えば仕方ないが、トレッキー的には少し悩ましい。
それともう1人、本作は今年6月他界したチェコフ役のアン
トン・イェルチンにも捧げられていた。イェルチンは2002年
4月紹介『スパイダー』の時から注目していたが、その後の
低迷を脱して一気にブレイクしていたもので、27歳の夭逝が
残念に思えるところだ。この後はどうするのかな?
因に本作の日本版プレス資料では「最後のミッション」とさ
れているが、特に上記の逸脱に関しては明確な理由付をした
第4作が観たいところだ。ペッグならその辺は考えて脚本を
作っていると思うのだが。

公開は10月21日より、2D/3D、IMAX−3Dにて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『ひかりをあててしぼる』
(2006年に東京の渋谷で起きた実際の事件を基に制作された
舞台劇を、舞台の演出家自らの監督で映画化した作品。かな
り際どい内容だが、舞台は2011年の初演で、そこから相当に
練り込まれたと思われるしっかりとした作品になっている。
公開は11月下旬、渋谷ユーロスペース他でロードショウ。)
『ザ・ギフト』“The Gift”
(2006年6月紹介『キンキー・ブーツ』に主演のジョエル・
エドガートンが、脚本監督助演を務めたサイコサスペンス。
エドガートンの演じる役名にベケットの戯曲を思い出すのは
考え過ぎかな? そう思うと不条理劇としても面白い。公開
は10月28日より、TOHOシネマズ新宿他でロードショウ。)
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
                  “Eye in the Sky”
(無人機ドローンによる中東での要人殺害を描いたイギリス
映画。自爆テロ首謀者の居所を突き止め確認して攻撃。しか
しそこに色々な要因が絡む。アメリカ製の先行作もあるが、
本作ではアメリカ側の描写が痛烈だった。公開は12月より、
TOHOシネマズシャンテ他でロードショウ。)
『映画作家 黒木和雄 非戦と自由への想い』
(黒木監督は元より、本作ドキュメンタリーの監督にも自分
と似通った思想を感じると、現状を憂えることにも歯痒さを
感じてしまう。黒木監督ならここに何かの打開策を提示でき
たのではないかな。そんなことも思いながら観てしまった。
公開は11月、渋谷ユーロスペース他でロードショウ。)
『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』
               “Crazy About Tiffany's”
(原題が全てを現す。Tiffany fanの、Tiffany fanによる、
Tiffany fanのための作品。会社の歴史や色彩などの意味付
け、さらに高価な宝飾品の解説まで、それこそファンには垂
涎の作品と言えそうだ。公開は11月5日より、新宿武蔵野館
のリニューアルオープンを含めて全国ロードショウ。)
『キリマンジャロは遠く』
(最近テレビの刑事もので人気が出ているという片桐竜次が
俳優生活45周年で映画初主演を果たした作品。和製フィルム
ノアールを標榜する作品で、珈琲の香りに載せて判っていて
も判らない振りをする。そんな男の物語が展開される。公開
は10月29日より新宿K's cinemaにてレイトショウ。)
『バースデーカード』
(2008年6月紹介『P.S.アイラヴユー』にも似た話だが、
本作の場合は理由も何もかも判っているから話はスマート。
でもそこにこれだけの物語を盛り込むのはかなりの手腕だ。
諏訪が舞台で父親の職業が天文学者というのも気に入った。
公開は10月22日より全国ロードショウ。)
『秋の理由』
(詩人でもある福間健二監督が自作の詩集を脚色して映画化
した作品。脚本には2014年2月紹介『そこのみにて光輝く』
などの高田亮が参加し、物語は判り易く仕上げられている。
初老の編集者と作家の男同士のドラマが展開される。公開は
10月29日より新宿K's cinemaにてロードショウ。)
『アニメーションの神様、その美しき世界(全6作)』
(日本の旭日小授賞勲章も授与されているロシアのアニメー
ション作家ユーリー・ノイシュテンの作品による特集上映。
アメリカで「歴史上、世界最高のアニメーション」と認定さ
れた『話の話』など6作品が上映される。公開は12月、シア
ター・イメージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年09月11日(日) 宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち・記者会見、ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち、92歳のパリジェンヌ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち』記者会見
2012年3月と2014年12月で紹介した往年の大ヒットシリーズ
からのリメイク版『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編。その作品
が、1978年の旧作続編と同じ副題を付けて製作されることに
なり、その製作発表記者会見が行われた。
以前にも書いたように、僕にはこのシリーズへの思い入れが
ほとんどないものだが、実は1978年の旧作続編に関しては、
当時その結末に対して批判的であったために不愉快な思いを
した記憶がある。
それは今で言うネトウヨがするような中傷であったが、当時
にネットがあったら正に炎上していたのかなと思うようなも
のだった。今回はそんな題名を付けた作品の記者会見という
ことで、多少構えて観に行ったものだ。

その会見では、2009年からシリーズに関わり『2199』の企画
を立ち上げた西��彰司、『2199』の声優の小野大輔、桑島法
子に加えて、本作の監督を務める羽原信義、シリーズ構成・
脚本の福井晴敏が登壇した。
因に羽原は、本シリーズの思い出としては「オリジナルを裏
番組の円谷作品を見ずに視聴していた」そうだが、会見場で
このエピソードを語っても反応は薄かったものだ。また先の
『2199』では一部の絵コンテを担当していた。
これに対して福井は、1978年の旧作続編の公開時には別の映
画館で『キタキツネ物語』を観ていたそうだが、2013年7月
紹介『人類資金』の原作・脚本や、アニメでは2010年からの
『機動戦士ガンダムUC』のストーリーも提供している。
その福井が今回のリメイク版に関しては、「結末は同じには
しない」と強い口調で語ったもので、その中では近年横行す
る自爆テロにも言及しているところから、それなりの考えも
あっての発言と思われる。
ただし福井は、『人類資金』の時にも記者会見で強い思いを
語っていたものの、映画化ではそれが充分には反映されてい
なかった感じがしたもので、その辺では羽原監督との連携も
注目したいところだ。
なお会見では、リオオリンピックの銀メダリストが登場した
スポーツメーカーとのコラボレーションの発表や、サプライ
ズを含む予告編の公開などもあったが、それらが本編にどの
ように活かされるのか、その辺も注目したい。

公開は2017年2月25日より、東京は新宿ピカデリー他の全国
15館にて「第1章」の2週間限定劇場上映が行われ、さらに
シリーズ全7章の劇場上映が決定しているそうだ。

『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』
                  “Nicky's Family”
1939年3月14日〜8月2日の間に、669人のユダヤ人の子供
をナチスによる迫害の増すチェコスロヴァキアからイギリス
に救出した一証券マンの姿を描いたドキュメンタリー。
スタートは1938年12月。スイスへのスキー旅行に行こうとし
ていたウィントンは、同行予定だったチェコ駐在の友人から
の電話を受ける。それは「旅行を止めてこちらに来てくれ」
という要請だった。
その要請に従ったウィントンがチェコで目撃したのは、ナチ
スドイツの侵攻で迫害の標的にされたユダヤ人の姿だった。
この時はまだ占領地からの退去を求めていたものだったが、
既にそれを受け入れる国が足りなかった。
そこでウィントンは子供だけでも助けられないかと考えを巡
らすが、唯一受け入れを表明したイギリスでも厳しい条件が
課せられていた。その条件をクリアするためにウィントンは
動き始めるが…。
1993年の『シンドラーのリスト』や昨年の『杉原千畝』、さ
らに日本では一般公開できない2009年“John Rabe”など、
戦時下の体制に抗して人命の救助に尽くした個人というのは
考える以上に多くいるようだ。
そんな人間の素晴らしさを感じることのできる作品だ。
しかし本作のウィントンには、戦後50年間も家族(妻)にも
自分の行為を話さなかったという事実がある。そこには彼が
数1000人分の申請を受けながら669人しか救えなかったとい
う自責の念に駆られていた感じがある。
特に9月出発の準備が整ったものの列車に乗る直前に戦争が
始まり、イギリスへの脱出の叶わなかった250人の子供たち
の多くは、その後に強制収容所で死亡したという。それが彼
の口を閉ざす要因でもあったのだろう。
その点を踏まえながら本作では、単に彼の偉業を称えるだけ
でなく、それが後に与えた影響も検証して行く。そこでは子
供たちやその子孫が学術やヴォランティア活動などに多大な
業績を生んでいることも紹介される。
そこにこそ彼の行ったことの意味が見えるようにも思えるも
のだ。そんな未来に繋がるドキュメンタリーが描かれた作品
だ。そこには2016年7月17日に題名紹介の『クワイ河に虹を
かけた男』にも通じる感慨が浮かんだ。

公開は11月26日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMAほかで、
全国順次ロードショウとなる。

『92歳のパリジェンヌ』“La Dernière leçon”
今年のフランス映画祭で上映され、観客賞を受賞した作品。
元フランス首相の実母が実行した実話に基づく映画化。
その母親は一人暮らしだったが、寄る年波で身体の不調が続
いていた。そんな中で母親は遂にある決断をする。それは息
子と娘の家族が開いてくれた誕生日パーティの席で、「私は
2カ月後に逝きます」と宣言することだった。
その宣言に息子や娘は驚き反発するが、孫の若者はある程度
の理解を示したようだ。そして母親は思い出の残る様々な品
物の整理を始めるが…。どうしても理解できない息子と、あ
る程度の理解をしようとする娘の葛藤が続いて行く。

出演は、1932年生まれ1981年『愛と哀しみのボレロ』などの
マルト・ヴィラロンガ、2008年11月紹介『彼女の名はサビー
ヌ』の監督でもあるサンドリーヌ・ボネール、コメディ俳優
のアントワーヌ・デュレリ。
他に、2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』などのジル・
コーエン、若手のグレゴアール・モンタナ、2014年11月2日
付「第27回東京国際映画祭」で紹介『1001グラム』に出てい
たザビーネ・パコラらが脇を固めている。
脚本と監督は女優でもあるパスカル・プサドゥー、共同脚本
として監督でもあるロラ・ドゥ・バルティーヤが参加。脚本
は、元首相の妹でフランス文芸家協会副会長も務めるノエル
・シャトレが実母を綴った著作に基づいている。
今年は先にドイツ映画の『君がくれたグッドライフ』や7月
紹介『世界一キライなあなたに』などがあって、自殺を嫌う
僕としては忸怩たる想いが続いているが。この傾向は数年前
から見え始めたもので、その背景も知りたいところだ。
それにしても、この映画の登場人物たちが介護施設をここま
で拒否する理由は何なのだろう。それは確かに介護を受ける
ということには人間としての尊厳の問題はあるのだろうが、
家族への迷惑を考えれば僕は許容できる。
実は僕の母親も90歳を超えて、痴ほうも患っている関係で施
設に入れて貰っているが、医者からは100歳まで生きると言
われて、それが本人として幸せなのかどうか。でも生きてい
てくれることが家族にとって幸せであることは確かだ。
正直に言ってしまえば、僕の母親の場合は痴ほうであるため
に本作のような悩みには煩わされずに済んでいる訳だが…。
僕自身も家族に迷惑を掛けないように、最期を迎えたいとは
思っている。
ただし自らの命を絶つことに対しては、僕は絶対反対の立場
を取る。仮に肉体的な苦痛があってもそれを緩和する手段は
あるものだし、余命を宣告されてもその期間は全うしたい。
その点ではやはり容認できない作品なのだと思う。

映画の公開は10月29日より、東京はシネスイッチ銀座他で、
全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『彼岸島 デラックス』
(2002年より連載の松本光司原作コミックスの映画化。同じ
原作は2010年にも映画化があるが、当時は困難だった巨大モ
ンスターのVFXが可能となり、本格的な映画化となってい
る。因に原作はホラーよりギャグの要素も強いそうで、観客
もその点を考慮する必要はありそうだ。公開は10月15日より
全国ロードショウとなる。)
『記憶の中のシベリア(祖父の思い出/ソウルからの手紙)』
(自分の父親がシベリア抑留者だったこともあって興味深く
観たが、何か興味の視点がずれている感じが否めなかった。
まあでも今の人にはこれで良いのかな。戦争があったことも
知らない若者が多いのだから。ただそういう人たち向けには
もう少し背景も説明して欲しかったかな。10月8日〜21日に
新宿K's cinemaにて上映。)
『お父さんと伊藤さん』
(上野樹里、藤竜也、リリー・フランキーというかなり個性
の強い3人が共演するファミリー?ドラマ。2012年7月紹介
『ふがいない僕は空を見た』などのタナダユキの監督で、原
作ものではあるが監督らしい作品に仕上がっている。公開は
10月8日より、東京は新宿バルト9、渋谷シネパレス他で、
全国ロードショウとなる。)
『VR ミッション:25』“The Call Up”
(仮想現実の中で繰り広げられるバトルゲーム。その体験版
に参加したゲーマーの運命を描いたアクション作品。テーマ
的には押井守監督の『アヴァロン(2000)』などが思い出され
るもので映像は精密になったが、もう少し内容を掘り下げて
欲しかったかな。公開は11月19日より、池袋HUMAXシネマズ
他で、全国ロードショウとなる。)
『誰のせいでもない』“Every Thing Will Be Fine”
(2011年10月紹介『Pina』で3D撮影に挑戦したヴィム
・ヴェンダース監督が、今回はドラマでそれに挑んだ作品。
それは当然シミュレーションではなくナチュラルな3Dで、
その見事な映像は3Dの新たな可能性を示している。公開は
11月12日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで、全国
順次ロードショウとなる。)
『ブリジット・ジョーンズの日記
   ダメな私の最後のモテ期』“Bridget Jones's Baby”
(2001年と2004年に公開されたレネー・ゼルウィガー主演作
の第3弾。実に12年ぶりの新作だが、その間には制作会社側
の事情もあったようで…。でもその間隔が本作では、主人公
も上手く成長してかえって良かったような感じもする。さら
に続編は有かな? 公開は10月29日より、全国ロードショウ
となる。)
『灼熱』“Zvizdan”
(クロアチア紛争を背景に、1991年、2001年、2011年3つの
時代の2つの民族の姿を描いた2時間3分の大作。各時代の
それぞれの物語を同じ俳優たちが異なる役柄で演じる。複雑
になるかとも思われたが、内容はシンプル且つ明確に描かれ
ていた。公開は11月、シアター・イメージフォーラム他で、
全国順次ロードショウとなる。)
『kapiw と apappo〜アイヌ姉妹の物語〜』
(東京と阿寒に離れて暮らすアイヌの姉妹が、東日本大震災
を機にデュエットのコンサートを開くまでを描いたドキュメ
ンタリー。終盤に描かれるライヴの模様が素敵で、そこに至
るまでの葛藤が何だったのかと思わせる。特に訳の判らない
プロデューサーは要らなかったのでは? 公開は11月19日〜
12月2日に、ユーロスペースにてレイトショウ。)
『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやってきた』
                 “Ants on a Shrimp”
(7年連続ベスト5入り、内4度は世界一のレストランが本
国の店を閉め、2015年1月から5週間限定で東京に出店した
際の模様を描いたドキュメンタリー。実は先にノーマ本体を
描いたドキュメンタリーも観たがそちらは完成形で、本作で
はそこに至る道筋が観られる。公開は12月10日より、YEBISU
GARDEN CINEMAほかで、全国順次ロードショウとなる。)
『たたら侍』
(今年のモントリオール世界映画祭で最優秀芸術賞を受賞し
た作品。EXILE HIROの製作総指揮で、EXILE青柳翔、小林直
己、AKIRAらが主演。脚本監督は2006年7月紹介『ミラクル
バナナ』などの錦織良成。内容は戦国時代を背景にした若者
の成長物語だが、そこに古来の製鉄法や刀鍛冶が描かれる。
公開は2017年初夏、新宿バルト9ほかで予定されている。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年09月04日(日) シークレット・オブ・モンスター、ある戦争、デスノート Light up the NEW world

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『シークレット・オブ・モンスター』
       “The Childhood of a Leader”
2012年11月紹介『マーサ、あるいはマーシー・メイ』などに
出演の俳優ブラディ・コーベットによる初長編監督作品で、
脚本も執筆したコーベットは、2015年のヴェネツィア映画祭
にて新人監督賞及びオリゾンティ部門の脚本賞を受賞した。
物語の背景は1919年。登場するのは世界大戦の休戦を受ける
パリ講和会議に派遣されたアメリカ代表団一員の家族。妻が
フランス語に堪能なため夫が代表団に加わった一家は、幼い
息子と共にパリ郊外の邸宅に滞在することになる。
ところがその直後から息子が奇妙な行動をとり始める。それ
は単に反抗期と言えるものではなかった。そしてその行動は
徐々にエスカレートして行き…。

出演は、2012年2月紹介『アーティスト』でオスカー候補に
なったベレニス・ベジョ、2016年5月紹介『ハイ・ライズ』
などのステイシー・マーティン、2010年4月紹介『タイタン
の戦い』などのリーアム・カニンガム。それに、2013年2月
紹介『コズモポリス』などのロバート・パティンスンと、新
人のトム・スウィート。
また本作の音楽は、元ウォーカー・ブラザースのスコット・
ウォーカーが担当しているが、映画の始まりから引き摺り込
まれるような音楽演出で、さらに重厚かつアヴァンギャルド
な楽曲は本作の緊張感を見事に高める効果を上げている。
コーベットは脚本について、フランスの哲学者ジャン=ポー
ル・サルトルが著した同じ英語題名の短編小説にインスパイ
アされたと語っているものだが、その一方で『フランス軍中
尉の女』の原作者で知られるジョン・ファウルズの長編小説
“The Magus”からも想を得たとしている。
このファウルズの小説は1968年に映画化されているが、その
映画作品はウディ・アレンが、「生まれ変わっても同じ人生
を歩みたいと思うが、この映画だけは二度と観たくない」と
語っているものだそうだ。
そしてコーベットが2008年9月紹介『ファニー・ゲームU.
S.A.』にも出ていたと書けば、本作の雰囲気は大体理解し
て貰えると思う。それは子供の態度が極めて不愉快に描かれ
ているものだ。しかしそれが独裁者を育む様子は正にそうだ
と思わせる演出になっている。
しかもこのような育ち方をしている子供が、現代には数多く
存在しているのでは…?と思わせる辺りも、本作の不気味さ
を強くさせる。その現実から目を背けてはいけない、そんな
気持ちにもさせてくれる作品だ。
因に主人公の少年は1919年の時点で10歳前後と思われるが、
その世代に著名な独裁者はいないようだ。ただフィクション
ではジョージ・オーウェル『1984』の支配者が該当する
かもしれないが、本作はそれとは無関係な作品だと思う。
過去を描いた作品ではなく、現代に問題提起する作品だ。

公開は11月より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で、ロード
ショウとなる。

『ある戦争』“Krigen”
2011年3月紹介『光のほうへ』の脚本家でもあるトビアス・
リンホルムによる監督第3作で、今年のアメリカアカデミー
賞外国語映画部門の候補になったデンマーク映画。
登場するのは、デンマークからアフガニスタンに派遣されて
いる陸軍部隊の部隊長。派遣の任務は民間人をタリバンの脅
威から守ることだが、巡回中に兵士が地雷に触れて亡くなる
こともまれではない。
そんな部隊長は毎週末に母国の自宅に電話を掛ける。その電
話で妻からは長男の行動がおかしいと訴えられるが、それは
父親の不在が要因であることも明らかだった。それでも任務
のために帰国もままならない。
そして民間人からの訴えに応えた彼の部隊が砂漠の村を訪れ
た時、突然の敵襲で兵士1人が瀕死の重傷を負ってしまう。
しかも激しい攻撃に救援もままならない。そこで部隊長はあ
る決断を迫られることになるが…。

出演は、リンホルム監督の全3作や2014年8月紹介『LUCY/
ルーシー』にも出ていたピルー・アスベック、2010年8月紹
介『食べて、祈って、恋をして』などに出ていたツヴァ・ノ
ヴォトニー、監督の前作に出ていたソーレン・マリン。
僕は基本的に戦闘を描いたら反戦映画は成立しないと思って
いるが、その点で言うと本作は反戦映画ではない。戦争の是
非はともかくとして、それに巻き込まれた人の苦悩を描いた
作品だ。
2015年11月1日付「第28回東京国際映画祭<コンペティショ
ン部門> 」で紹介した『地雷と少年兵』“Under Sandet”
もそうだったが、デンマーク映画が描く戦争は、常に他国と
は違う視点に立つように感じる。
それは主戦国ではないのに、何故か戦争に巻き込まれて犠牲
を強いられる。若しくは戦争の犠牲者を傍観せざるを得なく
なる。そんなデンマークの苦悩を、本作では当事者の立場で
描きながらも訴えているように感じられた。
本作ではアフガニスタンと家庭と、それにもう一つの計3つ
の「戦争」が描かれるが、そのいずれもが明確な勝利を得ら
れてはいない。そんなもどかしさが観客にもいろいろな思い
を伝えてくれる作品だ。
本作は反戦を声高に訴えるものではないが、その思想は明確
に描かれている。それは最初のシーンから目がスクリーンに
くぎ付けになる。そして結末には何とも言えない雰囲気が漂
う。そんな感じの作品でもあった。

公開は10月8日より、東京は新宿シネマカリテ他で、全国順
次ロードショウとなる。

『デスノート Light up the NEW world』
2006年6月及び10月に紹介したコミックス原作シリーズの新
作。その原作には拠らない新たな物語が、テレビで「相棒」
シリーズの元日特番などを手掛ける真野勝成の脚本、2011年
公開『GANTZ』などの佐藤信介監督で映画化された。
物語は前作で起きた事件が終結してから10年後。警視庁には
「デスノート対策室」が設置され、そこにはデスノートを追
い続ける主人公以下の面々が各々偽名で勤務していた。因に
偽名なのはデスノートに名前を書かれないための方策だ。
そこに渋谷駅前の交差点でデスノートによるとみられる連続
死亡事件の報が入り、主人公らは直ちに出動。その目前で犯
人は死亡するが、現場からは1冊のデスノートが回収され、
直ちに厳重な監視の許で保管されることになる。
その回収を行ったのはLの後継者としてICPOから派遣さ
れていた男だった。ところがその直後にキラの後継者を名告
る男によってネットワークがジャックされ、警視庁が確保し
たデスノートの引き渡しが要求される。
斯くして、キラ、Lの後継者とされる2人と、主人公らによ
り、地上に6冊がばらまかれたとされるデスノートの争奪戦
が始まるが…。

出演は、東出昌大、池松壮亮、菅田将暉という旬な若手俳優
3人が揃う他に、戸田恵梨香、中村獅童が前作から再登場。
さらに前作から繋がる人物や新たなキャラクターらが物語を
綴って行く。
製作は前2部作を担当し、さらに『GANTZ』なども手掛けた
佐藤貴博。実は、彼は2006年10月には「これで完結」と宣言
していたものだが、佐藤信介監督と新たな企画を検討してい
た際に、語り切れていなかったことに気付いたそうだ。
そこで10年後という設定の新たな物語が始動したものだが、
本作では原作に示されたデスノートのルールが完全に踏襲さ
れ、さらに現代の世界情勢なども取り入れられた見事な物語
が描かれている。
実際に僕は、2006年10月の『デスノート the Last name』の
紹介では結末などに多少の不満を感じていたものだが、その
点も含めて本作では、完璧に物語が修復されている。それは
10年ぶりに鑑賞しても納得できるものになっていた。
実は今回の試写会ではかなり多岐に亘る緘口令が敷かれてい
て、上記した以外のことはほとんど紹介できないものだが、
いろいろな意味でのサプライズも含めて、ファンなら必ず満
足できる、そんな感じの作品だ。

公開は10月29日より、東京は丸の内ピカデリー、新宿ピカデ
リー他で、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『金メダル男』
(2005年11月紹介『ピーナッツ』などの内村光良監督による
第3作。内村監督の前作は他の作家の原作に基づくものだっ
たが、今回は再び自身の原作を自らの主演で映画化している
ものだ。それはまあ笑いも的確で安心して観ていられるが、
やはり何かもう少し冒険も欲しいかな。本作の主人公みたい
に…。公開は10月22日より、全国ロードショウとなる。)
『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』“The BFG”
(前月すでに紹介した作品だが、今回は吹替版で観直した。
実は前回の鑑賞でエンディングロールのライセンシーの欄に
‘E.T. Doll’という記載を見て、今回はその確認の目的も
あったが、見付けられなかった。時代的にはおかしくはない
ものだから何処かに飾られていても良いものだが…。公開は
9月17日より、全国ロードショウとなる。)
『真田十勇士』
(2014年にマキノノゾミ脚本、堤幸彦演出、中村勘九郎主演
で上演された舞台劇を、スタッフキャストもほぼそのままの
陣容で、VFXや野外ロケを取り入れて映画として製作した
作品。舞台的な演出も随所に見られるが、これはシネマ歌舞
伎ではない。その辺の違和感が多少出ている感じかな。公開
は9月22日より、全国拡大ロードショウとなる。)
『続・深夜食堂』
(2015年1月に公開された小林薫主演作品の続編。懐かしさ
を感じさせる飲み屋街の一角で午前0時に開店するめし屋を
舞台に、様々な人生が交錯するオムニバス形式の作品。前作
の紹介は都合で割愛したが、お涙頂戴ではない安定した人情
ドラマが描かれる。前作のゲストが本作ではレギュラー入り
の展開も良い。11月5日より、全国公開となる。)
『弁護人』“변호인”
(1980年代の全斗煥軍政時代を背景にした韓国版赤狩りとも
言える釜林事件と、その弁護人だった盧武鉉(後の大統領)
の実話に基づく作品。北朝鮮に対抗する民主主義を謳いなが
ら民衆を弾圧する。そんな凶悪な独裁政権とそれにおもねる
連中の姿が痛烈に描かれる。他人事ではないお話だ。公開は
11月12日より、新宿シネマカリテ他で順次公開となる。)
『ブルゴーニュで会いましょう』“Premiers crus”
(ロマネ・コンティなどを産出するフランスワインの名産地
ブルゴーニュに映画カメラが入り、初の全編ロケーションが
実現したとされる作品。近年再興されたローマ時代の手法に
基づくワイン造りの様子や歴史ある建物など、ワインマニア
には堪らないシーンが連続する。公開は11月19日より、東京
はBunkamuraル・シネマ他で、全国ロードショウとなる。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二