井口健二のOn the Production
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2016年08月28日(日) カノン、エヴォリューション、アルジェの戦い

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『カノン』
2012年2月紹介『僕等がいた』などの比嘉愛未、2008年5月
紹介『落語娘』などのミムラ、7月24日題名紹介『いきなり
先生になったボクが彼女に恋をした』などの佐々木希が三姉
妹を演じ、鈴木保奈美、多岐川裕美、古村比呂、島田陽子が
脇を固める女性映画。
三姉妹は金沢で老舗料亭を営む祖母に育てられた。その祖母
が亡くなり葬儀も滞りなく済むが、その遺言状には意外な事
実が記されていた。それは数年前に死んだと知らされていた
実母が生きているという事だった。
しかしそこに記された介護施設を訪ねた三姉妹は、長年の飲
酒で痴ほうになり、実の娘の記憶もない母親の姿に呆然とす
る。その後はそれぞれの生活に戻る三姉妹だったが、彼女た
ちもまた人生の岐路に立たされていた。

監督は2008年2月紹介『チェスト!』などの雑賀俊郎、脚本
も同作を手掛けた登坂恵里香が担当している。
共演には「仮面ライダーW(ダブル)」の桐山漣と、2013年
8月紹介『スクールガール・コンプレックス−放送部篇−』
などの長谷川朝晴。
物語は、アルコール依存症からDV(モラルハラスメント)
まで、現代女性の置かれている危険な状況が次々に提示され
るもので、自分が男性の目で観ているとかなり居心地の悪い
作品にもなっている。
でもこれが現実の社会の何処かで実際にあり得る姿なのだろ
うし、特に誇張されているとも思えない。それをしっかりと
見据えることが男性の観客にも求められることなのだろう。
そんな問題意識はしっかりと描かれた作品と言える。
その一方で僕が注目したのは、本作の最後に描かれるピアノ
演奏のシーンだ。ここでは題名にもなっている「パッヘルベ
ルのカノン」が演奏されるのだが、ここでの展開には2014年
2月紹介『僕がジョンと呼ばれるまで』が思い出された。
その作品では、東北大学加齢医学研究所センター長川島隆太
教授が提唱する痴ほう症に対する音楽療法が、アメリカで実
践され効果を上げている実例として報告されているのだが。
本作のクライマックスには正にそれが描かれていたのだ。
本作の脚本家がその事実を知ってこの脚本を執筆したか否か
は不明で、単に物語的な効果を狙って描いただけかもしれな
いが、本作の展開にはそんな医学的な裏打ちがあることも述
べておきたいものだ。

公開は10月1日より石川県、富山県の各劇場と、東京は角川
シネマ新宿他で、全国順次ロードショウとなる。

『エヴォリューション』“Évolution”
2010年3月紹介『エンター・ザ・ボイド』などのギャスパー
・ノエ監督の公私に渡るパートナーで、同作の脚本にも協力
した2004年『エコール』などのルシール・アザリロヴィック
が、11年ぶりに手掛けた長編監督作品。
海岸で少年たちが遊んでる。その1人が海中に潜り、遺体と
思しきものを見る。しかし少年が家に帰り、家人の女性にそ
の話をしても取り合ってもらえない。そして女性は少年に薬
を飲ませ、ベッドで眠るように指示する。
その女性を少年は母と呼ぶが、少年自身がそれには疑問を感
じているようだ。やがて少年は研究施設のような部屋に連れ
て行かれ、何やら医療処置を施される。そしてその部屋で若
い看護士の女性と親しくなるが…。

出演は、オーディションで選ばれたマックス・ブラバンと、
昨年のフランス映画祭で上映された『エール!』に出ていた
ロクサーヌ・デュラン、2012年4月紹介『キリマンジャロの
雪』などのジュリー=マリー・パルマンティエ。
脚本はアザリロヴィック監督と、2015年に数多くの映画祭で
受賞を果たした“Sangailės vasara”という作品の女性監督
アランテ・カヴァイテが名前を連ねている。
一応、ダーク・ファンタシーというカテゴリで紹介される作
品で、僕などにも意見を求められるが、正直に言って回答に
窮する作品だ。海外の評価でもクローネンバーグ、ギーガー
らが引き合いに出されるが、それも悩みの結果だろう。
タイトルから見て、描かれるのは進化への模索だと思われる
が、その進化の目標が何なのか? ここで登場する女性たち
が水棲人という示唆はあるが、それが目標としてそれと少年
たちに施される医療行為との関係が明確にされない。
ただその途中で少年が目撃するシーンに、少年たちへの医療
行為の意味が示唆されているようなのだが。これが映倫審査
によって修正を余儀なくされていて、多分そうなのだろうと
想像するしかなくなっている。
でもまあ、その辺からいろいろと想像は広がって行く訳で、
それはSFとして評価しても良いと思える作品だ。しかもそ
こにギーガー、クローネンバーグが引き合いに出されるよう
な映像が付いてくるのだ。
因にプレス資料によると、監督は中川信夫の『地獄』や若松
孝二の作品を撮影監督に観せて映像の参考にさせたそうだ。
また監督は塚本晋也とも親交があるようだ。

公開は11月、東京は渋谷アップリンク、新宿シネマカリテ他
にて、全国順次ロードショウとなる。

『アルジェの戦い』“La Battaglia Di Algeri”
アルジェリア独立戦争を描き、1966年のヴェネツィア国際映
画祭で金獅子賞(グランプリ)に輝いたジッロ・ポンテコル
ヴォ監督作品。その作品がディジタルリマスターにより修復
され、再公開されることになった。
1954年のFLN(アルジェリア民族解放戦線)の設立から、
1960年に独立を勝ち取るまでの出来事を、FLNに身を投じ
た1人の男を中心に描いて行く。その男の名前はアリ。彼は
就学経験もなく、土木作業員やボクサーなどをしていたが、
何度も警察の厄介になっているような男だった。
そんな男が刑務所を脱獄して街に舞い戻った時、1人の少年
がFLNからの指令をアリに届ける。そしてその指令に忠実
に従ったアリはFLNの幹部の前に連れて行かれ、その幹部
から仲間に入ることを認められる。そしてFLNは飲酒や麻
薬の禁止など、独立の標榜と共に様々な施策を打ち出す。
やがてFLNは兵士や警察官の殺害などのテロ行為を繰り広
げるようになる。それに対してフランス側は、警察署長自ら
が爆弾テロを行うなど、双方が作戦行動をエスカレートさせ
て行く。それと共にフランス軍の介入が始まり、その一方で
アルジェリア問題が国連に上程される。
そしてアルジェリアに侵攻したマチュー中佐率いるフランス
陸軍は、FLNが敢行したゼネストに対抗し、さらにFLN
幹部の逮捕に乗り出して行く。その捜査の網はアリの近辺に
も迫っていた。斯くしてアルジェリア独立を目指したFLN
は壊滅状態になって行くが…。

出演は、マチュー中佐に扮したジャン・マルタン以外は現地
で集められた素人で、その多くは実際に独立戦争に関ってい
た人々とされている。またポンテコルヴォは記録映像を一切
使用せず、5年間の準備を費やして全てを再現したもので、
そこには8万人の市民の協力があったということだ。
僕自身はこの作品を高校生時代にロードショウで観たものだ
が、この前年にはオールスターキャストの『パリは燃えてい
るか』もあって、民衆の蜂起による戦いにはある種の憧れも
感じていた。その中でのモノクロ映像のこの作品は、同種の
作品を評価する上での基準としていたものだ。
そんな作品を略50年ぶりに再見したものだが、それは巻頭の
シーンから記憶が甦り、その後の展開などには流石に全てを
記憶していた訳ではないが、それでも個々のシーンの中には
鮮明に思い出されるものもあった。
ところが最後のシーンになって、これが記憶と違っていて愕
然とした。僕の記憶ではもっと女性たちの叫び声が長くて、
それが余情を感じさせていたのだが…。今回観直すとそれが
意外と短くてあっさりしていた。しかし当時はそれを自分の
中で勝手に長くして、物語を噛みしめていたようだ。

公開は10月に、東京は新宿K's cinema他で、全国順次ロード
ショウとなる。

この週は他に
『聲の形』
(週刊少年マガジンの連載で、「このマンガがすごい!」や
「マンガ大賞」などで高い評価を受けた大今良時の原作から
のアニメーション作品。主人公の小学生時代とその5年後の
姿を通して、仲の良かったグループが離散し、やがて再会す
るまでが描かれる。公開は9月17日より全国ロードショウ。
公開第2週は日本語字幕付き上映となるそうだ。)
『将軍様、あなたのために映画を撮ります』
             “The Lovers and the Despot”
(日本では1998年に公開された北朝鮮映画『プルガサリ』の
監督とされる韓国出身の申相玉と、元夫人で後に再婚した女
優の崔銀姫の拉致事件の真相を描いたドキュメンタリー。申
監督には自主的亡命説もあったが、金正日の肉声テープなど
によってそれが完全否定されている。公開は9月24日より、
渋谷ユーロスペース他で、全国順次ロードショウとなる。)
『ジュリエッタ』“Julieta”
(2013年のノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローの原
作を、2012年2月紹介『私が、生きる肌』などのペドロ・ア
ルモドバル監督が映画化。数奇な運命に翻弄される母と娘。
失踪した娘の謎がある切っ掛けから氷解して行く。その展開
が見事で心に響く。公開は11月5日より、新宿ピカデリー他
で、全国ロードショウとなる。)
『ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄』
                  “Pay the Ghost”
(1679年に始まるアメリカの暗黒史に関る作品。ハロウィン
の人込みで子供たちが行方不明になる。そこには中世末期の
魔女狩りに始まる怨念が籠められていた。息子を拉致された
ニコラス・ケイジ扮する大学教授がその謎に迫るが…。有り
勝ちな話だが、観てる間は楽しめる。公開は11月22日より、
渋谷シネパレス他で、全国順次ロードショウとなる。)
『メカニック/ワールドミッション』
              “Mechanic: Resurrection”
(1972年のチャールス・ブロンスン主演作を2011年にリメイ
クした作品の続編。前作に引き続き主演のジェイスン・ステ
イサムが、全世界を舞台に標的を事故に見せ掛けて殺す暗殺
のスペシャリストを演じる。共演者にはジェシカ・アルバ、
ミシェル・ヨー、トミー・リー・ジョーンズという豪華版。
9月24日より全国ロードショウ。)
『うつろいの標本箱』
(2015年公開『過ぐる日のやまねこ』などの鶴岡慧子監督の
新作。前作も試写は観たが紹介を割愛した。複数の物語が並
行して描かれ、最期にそれが一つに纏まるスタイルの作品だ
が、それが纏まった時にもう少し何かあれば良かったかな。
エンディングの写真にも工夫が欲しかった。公開は10月29日
より、渋谷ユーロスペース他でレイトショウとなる。)
『BOYS AND MEN One For All, All For One』
(2015年4月紹介『サムライ・ロック』などのBoys & Menが
自らを演じる青春グラフィティ。最近では外部の作品にも進
出するようになったメムバーたちの葛藤や悩みが描かれてい
る。しかしそれが綺麗ごとで終ってしまうのは、結局ファン
向けの作品の域を出ていない。でもまあこれはそれでいいの
だろう。公開は10月29日より、ロードショウとなる。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年08月21日(日) 闇金ウシジマくんザ・ファイナル、スーパー歌舞伎��:ワンピース

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『闇金ウシジマくんザ・ファイナル』
2012年6月紹介作でスタートした映画版シリーズの第4作に
して最終章。
2011年の小学館漫画賞を受賞した真鍋昌平原作の実写映画化
で、本作に関連しては2010年10月スタートのテレビ深夜ドラ
マ化もされている。そのドラマシリーズのSeason 3が7月に
放送されたのに併せて、7月末週題名紹介した『Part 3』と
本作が劇場公開されるものだ。
出資法により上限金利が29.2%に定められている中で、10日
で5割という、文字通り法外な利息で貸金を行う闇金業者。
しかしそこは銀行などからは金の借りられない人たちの最後
の砦であり、一方、その高金利でも返済のめどが立つ特殊な
業界人の集まる所にもなっている。
そんな闇金の世界を背景に、社会の底辺に生きる人たちや、
その人たちを食い物にする連中。あるいは詐欺まがいの手段
で金を集めようとする連中が、様々な金にまつわる物語を展
開する。そして本作では、主人公丑嶋らの中学生時代からの
因縁の物語が絡み付く。
そこには、貧困ビジネスと称される借金の返済を名目に過酷
な労働を強いる職場や、過重債務の解消を語りながら藁をも
掴む債務者を食い物にする悪徳弁護士などが登場し、丑島ら
の仕事を根幹から揺るがせようとする。そしてその裏には、
丑島の中学時代からの宿敵が潜んでいた。

出演は、山田孝之、綾野剛、やべきょうすけ、崎本大海のレ
ギュラー陣に加えて、最上もが、高橋メアリージュン、マキ
タスポーツの準レギュラー。さらに本作では永山絢斗、真飛
聖、安藤政信、太賀、八嶋智人らがゲスト出演。
また、オーディションで発掘された狩野見恭兵、2016年6月
紹介『貞子vs伽椰子』などの玉城ティナらが、丑島らの中学
生時代を演じている。

因に7月末週に題名紹介の『Part 3』には、本郷奏多、乃木
坂46白石麻衣、筧美和子、山田裕貴、前野朋哉、浜野謙太、
藤森慎吾、児嶋一哉、大杉連、筧美和子らがゲスト出演して
いた。
製作、脚本、監督は4作通じて山口雅俊。また脚本には4作
通じて福間正浩も名を連ねている。
映画の最後には「闇金優は違法です。」というテロップが掲
示され、その他にも劇中で描かれる様々な違法行為に対する
注意喚起が行われる。そんな危ない内容を描いた作品だが、
一方でそれは現実に即したものでもあり、今の日本社会が赤
裸々に描かれた作品でもある。
そしてそこに描かれる丑島らの行為は、非道ではあるが一つ
の信念(拠り所)に従ったものであり、一概には否定できな
い物に描かれている。そしてそれが、僕にはある種の共感も
覚える作品になっていた。
『ザ・ファイナル』と銘打たれた本作だが、いつかまた続き
が観たい、そんな気分にもさせてくれる作品だ。

公開は、『Part 3』が9月22日より、『ザ・ファイナル』は
10月22日から全国ロードショウとなる。

『スーパー歌舞伎��:ワンピース』
2016年7月10日題名紹介の『ONE PIECE FILM GOLD』に続い
て、同じく尾田栄一郎の原作を市川猿之助率いる「スーパー
歌舞伎」で上演した作品。その舞台が2012年2月紹介『高野
聖』などと同じ「シネマ歌舞伎」として上映される。
財宝を求めて旅を続けていたルフィたち麦わらの一味は船の
修理のためとある島に立ち寄る。ところがそこは違法な奴隷
商人の島で、しかも道案内をしてくれた人魚が商人に誘拐さ
れて市場で競りに掛けられてしまう。
それでも金を払って穏便に人魚を取り戻そうとした一味だっ
たが、そこに横やりが入り戦いが始まってしまう。そしてル
フィらは跳ね飛ばされて散り散りに。そんな中でルフィは、
兄と慕ったエースが捕えられ処刑されるという話を聞く。
そこでルフィはエースが囚われた監獄の島に潜入し、救出を
目論むのだったが…。因にこの物語は、原作の中で「サバイ
バルの海 超新星編」の掉尾となる「頂上戦争編」に基づく
ものになっている。

出演は猿之助以下、市川一門と歌舞伎界の役者たちの他に、
2015年7月紹介『TNGパトレイバー首都決戦』などの福士
誠治、大衆演劇の嘉島典俊、元劇団夢の遊眠社の浅野和之ら
が脇を固めている。
脚本と演出は、「スーパー歌舞伎」を長年に亙って手掛けて
いる横内謙介、演出は猿之助との共同で、さらに先代の猿翁
がスーパーバイザーとして名を連ねている。
作品では、巻頭にルフィらの物語の来歴がナレーションで解
説されており、それはまあ仕方のないところだろう。ただ上
映時間を2時間以下にしたかったのか、途中でもほぼ1つの
エピソードがカットされてナレーション説明となっており、
その辺は少し残念な気もした。
でも題材の関係でお子様の来場も考えると、このエピソード
のカットは仕方ないのかな。まさか歌舞伎の舞台でそれほど
濃密なものが描かれたとも思えないが。
その一方で見得や台詞回しなどは歌舞伎の演出がしっかりと
残されていて、それは大げさであったり滑稽であったりもす
るが、普通の映画やドラマとは違う世界を味あわせてくれる
感じもするものだ。
ただし舞台装置や衣装など全体的にはかなりポップな雰囲気
に作られていて、特に群舞のシーンなどは歌舞伎というより
「劇団☆新感線」を観ているのかと思うほどだった。
そしてさらに多量の水を使用した立ち回りやそれに続く宙乗
りのシーンなどは、観客席も巻き込んだ素晴らしい演出で、
その迫力にも圧倒された。他にも巨大な造形物やプロジェク
ションマッピングなど、これは生の舞台も観たくなる。
その意味ではスーパー歌舞伎の宣伝の効果も大きそうだ。

公開は10月22日より、東京は東劇。新宿ピカデリー他にて、
全国ロードショウとなる。

この週は他に
『種まく旅人 夢のつぎ木』
(2012年1月22日紹介『みのりの茶』で始まったシリーズの
第3作。実は2015年に『くにうみの郷』という作品も観せて
貰ったが紹介は割愛してしまった。ただ前2作は伝統農法的
なものが背景だったが、本作は人々の繋がりの話でテーマが
少し変ったかな。それも今では失われたのかもしれないが。
公開は10月22日より岡山先行の後、全国ロードショウ。)
『アズミ・ハルコは行方不明』
(山内マリコ著(幻冬舎刊)の小説を、2011年12月紹介『アフ
ロ田中』などの松居大悟が蒼井優を主演に迎えて映画化。一
女性の失踪を中心にその前後の状況が並行して描かれる。こ
の出版社の作品はエピソードの羅列ばかりでストーリーが希
薄のことが多い。本作も同様。それが受けているらしいが。
公開は12月に新宿武蔵野館他で予定。)
『華麗なるリベンジ』“검사외전”
(2016年5月1日題名紹介『ヒマラヤ』などのファン・ジョ
ンミンと、2012年1月紹介『超能力者』などのカン・ドンウ
ォンの初共演で、韓国法曹界の闇を描いた作品。嵌められた
元検事が法律を盾に復讐する話だが、主役の2人が全く善人
でないところが上手い。コメディタッチも巧み。公開は11月
12日よりシネマート新宿他で、全国順次ロードショウ。)
『ブルーに生まれついて』“Born to Be Blue”
(2015年11月1日付「東京国際映画祭」では原題で紹介した
作品。実は映画祭の時は多少引き気味だった作品だが、観直
すとそれなりに主人公の哀しみも伝わってきた。ただし名声
のある人物の実話の映画化では、これが限界かと思うシーン
もある。もっとシビアに描くべきだとも思える。公開は11月
26日より角川シネマ新宿他で、全国順次ロードショウ。)
『オケ老人』
(連続テレビ小説『ごちそうさん』の主演でブレイクした杏
が映画初主演を飾った作品。演奏会で感激して楽団への入団
を希望したものの、間違ってよく似た名前の別の素人楽団に
入ってしまうという有り勝ちな物語だが、そこからの展開が
案外良く出来ていた。原作は2010年6月紹介『ちょんまげぷ
りん』の荒木源。公開は11月11日より全国ロードショウ。)
『イタズラなKissハイスクール編』
(累計発行部数3500万部とされる、女性に絶大な人気を誇る
コミックスの映画化。筆者が男性の立場では何とも言えない
物語だが、女性には正に「胸キュン」のようだ。なお本作を
第1作としてすでに第2作は撮影済み、続けて第3作以降も
次々製作の予定だそうだ。本作の公開は11月25日より、全国
ロードショウとなる。)
『奇蹟がくれた数式』“The Man Who Knew Infinity”
(20世紀初頭のケンブリッジを舞台に、数学の世界で数々の
偉業を残したインド人数学者ラマヌジャンの姿を描いた実話
に基づく作品。数学者の映画は2002年3月紹介『ビューティ
フル・マインド』から昨年の『イミテーション・ゲーム』ま
でいろいろあるが、映画人の興味を引くのかな。公開は10月
22日より角川シネマ新宿他で、全国順次ロードショウ。)
『ハート・オブ・ドッグ 犬が教えてくれた人生の練習』
                  “Heart of a Dog”
(ミュージシャンで2010年2月紹介『アーサーと魔王マルタ
ザールの逆襲』の出演者でもあり、2013年に他界したルー・
リードの未亡人が、夫の生前から製作を進めていたムーヴィ
エッセイのようなドキュメンタリー。2人の愛犬を中心に、
様々な社会現象が語られる。公開は10月より、渋谷イメージ
フォーラム他で、全国順次ロードショウとなる。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年08月14日(日) インターン!、幸福のアリバイ Picture、スタートライン

『インターン!』
2007年12月紹介『東京少女』などのBS-TBS(旧BS-i)製作・
配給によるちょっとファンタシーの要素もあるドラマ作品。
主人公は就活中(?)の女子大生。まだ先の目標が定められ
ていない状態の彼女が女友達に誘われてIT企業のセミナー
に参加。しかもその友達のせいでインターンシップにも応募
してしまう。
ところがセミナーの終了後、会場の外でぼんやりして自動車
に轢かれそうになった彼女は、咄嗟に飛び出してきた企業の
経営者に救われる。しかし代わりにその経営者が意識不明に
なってしまう。
一方、その経営者は病室で目を覚ますが、そこには死神と名
告る見た目は若者の男が現れていた。その死神は経営者が間
違って死んだと告げ、その間違いを正すには助けた彼女に死
をもたらすしかないと告げるが…。
そんなことができるはずもない経営者は、2人とも助かる道
を模索。そして彼女の運命が変わるような出来事を起こせば
2人の未来に道が開けると知り、インターンシップを利用し
て彼女の運命を変えようと考える。

出演は、2013年8月紹介『スクールガール・コンプレックス
−放送部篇−』などの新木優子、2009年2月紹介『ヤッター
マン』などの岡本杏理。さらに「仮面ライダー鎧武」の佐野
岳、風間トオルらが脇を固めている。
脚本はハロプロの舞台なども手掛ける劇団「散歩道楽」主宰
の太田善也、監督はTBSテレビ制作局制作センタードラマ
制作部所属の吉田秋生が担当した。
前々回紹介『ミスワイフ』と同様の生者と死者の入れ替わり
がテーマで最近の流行りかなとも思うが、脚本家の太田には
「リボーン〜命のオーディション〜」何て作品もあるようだ
から、それなりの想いもあるのかもしれない。
一方、監督の吉田は『怪談新耳袋』などを継続的に手掛けて
いるようだから、その方面が指向なのかな? まあでもその
程度ということもできる。いずれにしても以前のアイドル路
線というほどではないが、ファン向けの作品だ。
ただ、経営者を死の淵に立たせた人物にインターンシップな
んて、何と太っ腹な企業かとも思うし、そのインターンシッ
プの課題をもう少し描き込めばそれなりのドラマにもなった
と思うが、それは荷が重かったかな。
ただまあ、頑張っている人にはもっと頑張れというエールを
贈るような作品にはなっていた感じだ。

公開は11月5日より、東京はシネ・リーブル池袋他で、全国
ロードショウとなる。

『幸福のアリバイ Picture』
俳優の陣内孝則が9年ぶりに監督を務めた第3作で、陣内の
原案を基に人生の節目である冠婚葬祭をテーマに描いたオム
ニバス形式のコメディ作品。
最初は葬式。遺影の前で訳アリらしい2人の男が酒を酌み交
わしており、そこに葬儀屋が相談にやってくる。それは遺族
間のもめ事に起因しているらしいが、そこに大物の弔問客が
来て話しが紛糾し始める。
初っ端からかなり強烈な話が展開して、これはやるなと思わ
せた。そしてその後も見合いに成人式、子供の誕生に結婚式
と、各々は普通の出来事なのだが、それぞれがちょっと尋常
でないシチュエーションの物語が展開されて行く。
それはファンタシーと言えるようなものではないが、多少は
その雰囲気も感じられるかな? そんな作品に仕上げられて
いた。

出演は、中井貴一、柳葉敏郎、大地康雄、山崎樹範、浅利陽
介、木南晴夏、渡辺大、佐藤二朗、木村多江。因に陣内本人
の出演はなかった?ようだ。
脚本は陣内の原案に基づくものだが、それを2012年『桐島、
部活やめるってよ』から、昨年は『幕が上がる』と『ストレ
イヤーズ・クロニクル』、今年は『ディストラクション・ベ
イビーズ』などを手掛ける喜安浩平が執筆。
実は上記の作品は全て試写を観ているが、それぞれは優れた
作品と認めるものの、何か自分の中でしっくりこなかった。
それは全体的にドライで、主人公の内面を敢えて描かないよ
うにしている、そんな感覚が好きになれなかった。
一方、陣内の監督作品はたぶんデビュー作は観たはずだが、
何と言うかこちらもピンと来なくて、ここでの紹介はしてい
なかった。それは以前の作品では言いたいことが多すぎて整
理がついていない感じもしていたものだ。
そんな2人の顔合わせだが今回は結構気に入った。内覧試写
でプレス資料も充分でなく、詳細が確認できていないものも
あるが、オムニバス形式で陣内の言いたいことは良く伝わっ
てきたし、情感もほどほどに盛り込まれていた。
定番と言えば定番のつくりだし泥臭さもあるが、それが安定
感でもあり小細工をしていないところも気に入ったものだ。
因に、本作の元のテーマは写真だったそうで、その辺の様式
的な纏まりの付け方も良い感じがした。

公開は11月18日より、全国ロードショウとなる。

『スタートライン』
聾唖者である今村彩子監督が、自ら自転車で沖縄から北海道
まで走破した模様を綴ったドキュメンタリー。
今村監督は1979年生れ、名古屋出身、愛知教育大学在学中に
カリフォルニア州立大学に留学して映画製作を学んだという
経歴で、すでに全国公開された作品もある。そんな監督が、
撮影兼任の伴走者はいるものの、基本的にはその手助けは受
けないというルールで沖縄県から北海道を目指す。
確か以前にも障害者というか高齢者が長距離自転車行に挑む
ドキュメンタリーを観た記憶があり、その途中の困難や訪問
するそれぞれの土地での交流など、今回もそれに似た感動作
かなと思いつつ試写会に臨んだ。ところが本作はそんな綺麗
ごとの作品ではなかった。
まず本作では自転車選びから始まり、ロングライドは初心者
の監督にパンク修理などの基本を訓練する様子が描かれる。
それは当然の話で、映画でも詳細に語られる訳ではないが、
本作の本気ぶりというか真面目さは伝わってくる。その他に
も法律など健聴者も参考になる事項が述べられていた。
そして旅が始まるのだが…。監督が意欲満々の割にメカに弱
く、さらに思い込みやいろいろなものが重なって伴走者との
意思の疎通もままならなくなってしまう。それでも伴走者の
男性の根気強さや真面目さに支えられて、四苦八苦しながら
も目的地に向かって進んで行く。
その間に、同じ障害を持つ人たちとの交流や、その中には外
国人もいて、見事なドラマが描かれて行く作品だ。その一方
で伴走者の男性の話す内容は、健聴者の自分を振り返って考
えさせられる事柄も多く、僕自身が障害者には理解がある方
だと思っていたが、それ以上に学ぶことが多かった。
特に本作でさらに重要なテーマとなるコミュニケーションの
問題は、監督が聾唖だということでなく、様々な要素を描き
出しているように見える。それは監督のお蔭で顕著になって
はいるが、健聴者の我々にとっても等しく存在するものだ。
そんなことも描かれているように見えた。

伴走と撮影は堀田哲生。「ジテンシャデポ」というチェーン
店のスタッフだそうだが、英語も喋れて中々のキャラクター
だ。他にオーストラリア人の青年などが登場する。
公開は、9月3日より東京新宿ケイズシネマ、17日より名古
屋シネマスコーレ、以後は大阪第七藝術劇場など、全国順次
ロードショウとなる。
聾唖者を描いたドキュメンタリーでは、2010年5月に『アイ
・コンタクト』という作品も紹介しているが、どちらもいろ
いろな意味で深い作品に感じられた。

この週は他に
『サラダデイズ SALAD DAYS』“Salad Days”
(1980年代のワシントンD.C.で興った初期パンクシーンを描
いたドキュメンタリー。先に6月19日題名紹介の『バッド・
ブレインズ』を観ていたので多少親しみが湧いた。内容的に
も手の甲にXを描く意味など、首都でのパンクロックという
のはなかなか興味深いものがあった。)
『ディアスポリスDIRTY YELLOW BOYS』
(4月3日に題名紹介した作品の劇場版。実は前に観たのは
テレビ版の第1話で今回は同じ配役による拡大版だ。ただし
本作だけでは設定などの説明がなく、テレビ版を観ていない
と主人公の立場などが理解し難いかな? 舞台も拡大した豪
華版だが、オリジナルの話もしっかり観たかった。)
『スーサイド・スクワッド』“Suicide Squad”
(スーパーマン亡き後のDCコミックス世界を描いた作品。
最凶の魔女が復活し、それに対抗するべくバットマンに捕え
られた悪人たちがチームを組む。ウィル・スミス、『ターザ
ン:REBORN』のジェーン役マーゴット・ロビー。さらにオス
カー俳優のジャレッド・レトがジョーカーを演じる。)
『湾生回家』“湾生回家”
(戦前の日本統治下の台湾で生まれ育ち、戦後に日本引揚を
余儀なくされた人々を追った台湾製ドキュメンタリー。北方
領土と違い、今でも訪問すれば温かく迎えられるという人た
ちだが、そこにも苦難の歴史やドラマはある。特に岡山の女
性の話は日本側でさらに後を追って貰いたいものだ。)
『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』“Freeheld”
(アメリカで同性婚を認める切っ掛けとなったとされる実話
のドラマ化。ベテラン女性刑事が若い女性と恋に落ちる。し
かし刑事の余命が宣告されたとき、同性パートナーへの遺族
年金が拒否される。ジュリアン・モーア、エレン・ペイジ、
マイクル・シャノン、スティーヴ・カレルらが共演。)
『ラスト・ウィッチ・ハンター』“The Last Witch Hunter”
(ヴィン・ディーゼル、マイクル・ケイン、イライジャ・ウ
ッド、『ダウントン・アビー』のローズ・レスリー共演で、
現代のニューヨークを舞台に、魔女一族と魔女狩りの戦士が
共存する世界を描いたVFXアクション作品。上のDC作品
と設定は異なるが展開の似通るのは仕方ないか。)
『疾風ロンド』
(6月に記者会見を報告した東野圭吾原作のユーモアの要素
も強いとされる小説の映画化。スキーとスノボのチェイスな
どアクションの見どころは多いが、コメディにするための演
出にちょっと無理があるかな。特に10℃以上で発動するもの
をポケットに入れるというのは…。)
『CUTIE HONEY TEARS』
(2004年にも映画化された永井豪原作のアンドロイドもの。
上層と下層に2分化された未来社会を背景に、都市機能を掌
握するA.I.と、宿敵ジルによる陰謀をキューティーハニーが
食い止める。主演は西内まりや。他に三浦貴大、石田ニコル
らが脇を固めている。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年08月07日(日) BFG、ジャングル・ブック、お元気ですか?

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』“The BFG”
2005年7月紹介『チャーリーとチョコレート工場』の原作者
ロアルド・ダールが1982年に発表した同名の小説を、同年の
世界No.1ヒットを記録した『E.T.』のスティーヴン・スピ
ルバーグ監督&メリッサ・マシスン脚本で映画化した作品。
映画の中で明確な年号は出ていなかったと思うが、アメリカ
大統領がレーガンだった時代。ロンドンのとある児童施設で
暮らすソフィーは、眠れない夜の午前3時、ふと覗いた窓で
巨人と目が合ってしまう。そしてブランケットと共に摘み出
されたソフィーは巨人の国に連れて行かれる。
そこには、彼女を連れてきたBFGの他にもっと大きな巨人
が10人いて、奴らは時々人間の国にhumanbeanを食べに出か
けていた。その中で小柄なBFGは不味い野菜を食べながら
人間に夢を届ける優しい巨人だったが…。その秘密を守るた
めソフィーを連れてきたBFGも窮地に陥ってしまう。
それでも仕事を続けるBFGに、ソフィーは全ての問題を解
決するためのある計画を提案する。

出演は、スピルバーグ監督の前作では冷酷なソ連のスパイを
演じていたというマーク・ライランスと、半年以上を掛けた
オーディションで数千人の中から選ばれたというルビー・バ
ーンヒル。
他に、2012年10月紹介『マリーゴールド・ホテルで会いまし
ょう』などのペネロープ・ウィルトン、2014年5月紹介『ト
ランセンデンス』などのレベッカ・ホール、2012年12月紹介
『ライフ・オブ・パイ』などのレイフ・スポールらが脇を固
めている。
また、スピルバーグ、マシスン以外のスタッフでは、製作総
指揮キャスリーン・ケネディ、製作フランク・マーシャル、
音楽ジョン・ウィリアムスの『E.T.』の面々が再結集して
いる他。
さらに撮影監督には『シンドラーのリスト』でオスカー受賞
のヤヌス・カミンスキー、プロダクション・デザインは『リ
ンカーン』でオスカー受賞のリック・カーターなど、スピル
バーグ組とも言える顔ぶれが参集している。
というエンドクレジットも注目される作品だが、実はその中
に‘in memory of Melissa’という項目があって、本作は昨
年11月に他界した脚本家への追悼作にもなっている。マシス
ンは多作な人ではなかったが、ファンタシー映画の分野では
大きな足跡を残しており、65歳の死は惜しまれるところだ。

映画の公開9月17日より、全国ロードショウとなる。
なお今回は2Dでの試写だったが、3Dでの試写があったら
改めて紹介したいものだ。


『ジャングル・ブック』“The Jungle Book”3D吹替版
ラドヤード・キップリングが1894、95年に発表した児童文学
の映画化。ディズニーでは1967年にもアニメーションによる
映画化があるが、本作はその実写版というか、主役の少年は
実写だけどそれ以外の動物も背景も全てCGIという作品。
2016年6月5日付で題名紹介した作品を改めて3D吹替版で
鑑賞した。
物語の舞台は19世紀末のインド。その奥地のジャングルでは
人間の少年モーグリが狼の家族と共に暮らしていた。少年は
幼い頃にジャングルに置き去りにされ、黒豹のバギーラに発
見されて狼の長に預けられたのだ。
それから何年もの歳月が流れたが、人間の子供のモーグリの
成長は遅く成年狼の話し合い場には参加を許されなかった。
そんなある日、話し合いの場に虎のシア・カーンが現れ、人
間に恨みを持つ虎はモーグリの身柄を要求した。
しかし狼たちはその要求を撥ね退けるのだが、モーグリには
「人間の世界に帰る時が来た」と別離が要求される。そして
バギーラにも説得されたモーグリは人間の村に向かう道を辿
り始めるが…。

出演は、モーグリ役に約2000人のオーディションで選ばれた
ニール・セディの他は全てCGIという作品だが、その声優
には、ベン・キングズレー、ビル・マーレイ、イドリス・エ
ルバ、ルピタ・ニョンゴ、クリストファー・ウォーケン、ス
カーレット・ヨハンソンら錚々たる顔ぶれが並んでいる。
また吹替版でも、松本幸四郎、西田敏行、宮沢りえ、伊勢谷
友介らが声優を担当し、特に宮沢は前回紹介の『湯を沸かす
ほどの熱い愛』と併せると中々の感慨も覚えるものだ。
脚本は2009年2月紹介『ストリートファイター/レジェンド
・オブ・チュンリー』などのジャスティン・マーカス、監督
は2005年11月紹介『ザスーラ』などのジョン・ファヴローが
担当した。
というところで3D版を観直しての感想だが、実は本作の撮
影(と言ってもモーグリのシーンの撮影だが)にはARRIRAW
(3.4K) (dual-strip 3-D) という3Dの撮影システムが使用
されており、後付けではない3Dの迫力が伝わってくる。
それは他のキャラクターや背景などのCGIのシーンにも良
い影響を与えて、全体で近年ではベストと言える3D映像が
作り出されている。3D映画の最高峰が『アバター』である
ことは間違いないが、本作はそれに匹敵する。
この作品は3Dで観てこそ価値のある作品と言えるだろう。
また音楽では1967年版に最大の敬意が評されており、1967年
版でオスカー候補になった「ザ・ベアー・ネセシティ」や、
「君のようになりたい」「信じて欲しい」などの楽曲が新た
なイメージで作品を彩っている。
特に「信じて欲しい」は、ヨハンソンの歌声が吹替版のエン
ディングでも聞けるのが嬉しいところだ。

公開は8月11日より、3D/2D、IMAX-3D、4DXで全国
ロードショウとなる。

『お元気ですか?』
2016年1月紹介『復讐したい』などの室賀厚監督が、1990年
版『櫻の園』で女優デビューの宮澤美保を主演に迎えたドラ
マ作品。
登場するのは1人の女性。彼女は携帯電話で次々に電話を掛
け続けている。それは辞めたばかりの元の職場の店長や、小
学校の恩師、学生時代の悪友など。そんな彼女が山道でドラ
イヴに来ていた医大生のカップルに声を掛けられる。
そのカップルの姿に少し顔を曇らせる彼女だったが、2人の
誘いで次の目的地まで車で送って貰うことになる。そしてそ
の後も電話を掛け続ける彼女だったが、そんな彼女が10人目
に掛けた相手は…。

共演は、室賀監督の2013年作品『6月6日』にも出演の丸山
隼人と加藤藍子。他に『6月6日』に出演の田中俊、子役の
筧礼らが脇を固め、さらに菅田俊、長谷直美らがカメオ出演
している。
室賀監督は、元々はアクション映画が専門のようだが、僕は
上記の『復讐したい』の紹介でもドラマ部分を評価していた
ものだ。本作はそんな監督が脚本も手掛け、真っ向から人間
ドラマに挑んだ作品と言える。
その内容は、まあ映画を観馴れた者には作品の前半の内から
結末まで見通せるものだが、その展開は悪くないし、予想の
通りに進むことが心地良くも感じる作品だった。特に結末は
少しSF的なイメージも湧かせてくれた。
テーマ的には、僕は普段なら否定的な評価を下すものだが、
本作の場合は結末が見えている分、否定的な要素には繋がら
なかったし、それもベテラン監督の計算ずくなのかなとも思
えてきた。
いずれにしても、殺伐とした映画が多い中で、将来に希望を
持たせてくれる作品は積極的に評価したくなるものだ。

公開は10月15日より、東京は渋谷ユーロスペース他で、全国
順次ロードショウとなる。
因に本作の製作配給は、KOMピクチャーズとされているも
のだが、これはアクション映画監督の柏原寛司、大川俊道、
室賀厚の3人が設立した会社とのこと。同社では2008年製作
『STRAIGHT TO HEAVEN』と上記の『6月6日』に続く第3作
となるそうだ。

この週は他に
『過激派オペラ』
(2009年2月紹介『非女子図鑑』の中で「魁!!みっちゃん」
という作品の脚本も担当していた劇団毛皮族主宰江本純子に
よる監督デビュー作。女性劇団の旗揚げ公演から第2作に至
る顛末が描かれる。R15指定の作品で過激な描写もあるが、
全体は纏まりの良い作品になっている。映画の出演歴もある
監督はその辺よく判っているようで、今後も楽しみだ。)
『地獄に堕ちた野郎ども』
   “The Damned: Don't You Wish That We Were Dead”
(1976年に結成され、イギリス3大パンク・ロック・バンド
の一つと言われるダムドの軌跡を追ったドキュメンタリー。
離散集合の激しいバンドのようで、その状況などが描かれる
が、僕のようにその方面に疎い人間には「ああそうなんだ」
という感想しか浮かばない。ファンには贈り物だろう。)
『校庭に東風吹いて』
(1998年の調査で小学校低学年の児童の2%がこの症状を持
つとされる場面緘黙症を描いた沢口靖子主演のドラマ作品。
柴垣文子の小説を原作とするが、長津晴子の巧みな脚色が映
画に深みと広がりを持たせている。子役で2014年『まほろ駅
前狂騒曲』などの岩崎未来の演技も見事な作品だった。)
『アングリーバード』“Angry Birds”
(フィンランド発モバイルゲームを基にしたアニメーション
の劇場版。飛べない鳥たちの楽園を豚の軍団が襲い、奪われ
た卵を取り戻すため主人公のレッドらが立ち上がる。元々の
ゲームがプレーヤーの操作する鳥で豚を駆逐するというもの
で、それを踏まえた強烈な展開が映像化されている。)
『古都』
(1980年に山口百恵の2役で映画化された川端康成原作の再
映画化。松雪泰子が2役を演じる今回の作品では、京都と北
山に住む2人が結婚して娘がいるという設定でスタートし、
各々の娘の物語も展開される。そして物語の舞台はフランス
のパリにまで広がる豪華な作品になっている。)
『劇場版アイカツスターズ!』
(2012年に稼働が開始のトレーディングカード/アーケード
ゲームに基づくアニメーションシリーズで、今年スタートし
た新シリーズの劇場版。トップアイドルを目指す少女たちの
奮闘ぶりに宝探しの要素を加えた物語だが、それなりの展開
があったりして、お子様向けと侮るなかれだった。)
『だれかの木琴』
(普通の主婦がふと落ち込んでしまった真昼の陥穽。井上荒
野の小説を東陽一監督が映画化。常盤貴子、池松壮亮、勝村
政信、佐津川愛美という配役も面白い作品だった。)
『トレジャー オトナタチの贈り物。』“Comoara”
(ルーマニアの比較的下層階級の男性を主人公に、旧時代の
宝探しにのめり込んで行く姿を描く。探知機が鉄以外の金属
としたのに見つかった金属は鉄だけなど、途中の展開に少し
疑問はあるが、全体のコメディタッチは心地良い。カンヌ映
画祭の受賞も頷ける作品だ。)
『アスファルト』“Asphalte”
(パリ郊外の団地を舞台に、それぞれ孤独を抱える老若男女
を描いた群集劇。年上の元女優に憧れる少年や、我を通した
ために窮地に陥るさえない中年男、服役中の息子を持つ移民
の女性らの中に、何故か不時着したNASAの宇宙飛行士ま
でいて、それぞれが心温まるドラマを展開する。)
『JASON BOURNE』“Jason Bourne”
(2002年11月紹介『アイデンティティー』で始まったシリー
ズ第5作。2012年8月紹介『レガシー』は番外的だったが、
本作でマット・デイモン扮する本来の主人公が復帰し、新た
な展開が始まる序章のようだ。終盤に登場の車両の迫力には
圧倒された。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二