井口健二のOn the Production
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2016年05月29日(日) ウィー・アー・ユア・フレンズ、シアター・プノンペン

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ウィー・アー・ユア・フレンズ』
                “We Are Your Friends”
2013年6月紹介『ペーパーボーイ真夏の引力』などのザック
・エフロン主演で、ロサンゼルス郊外のサン・フェルナンド
を舞台にした青春ドラマ。
エフロンが演じるのはプロのDJを目指す若者。ある日彼が
出演する地元のクラブに人気者のヴェテランDJが来場し、
楽屋裏で意気投合した2人は街に繰り出す。それは酒と薬に
酔い痴れる一夜だった。
その途中でつぶれた主人公が目を覚ましたのは、人気者DJ
の自宅。そこで繰り広げたれるのは正に主人公が夢見る暮ら
しだった。しかもマネージャー兼恋人に紹介された主人公は
彼女の美しさにも心を惹かれる。
さらに人気者DJは彼に成功の秘訣を伝授し始める。それは
彼の才能も見込んだものだったが…。その一方で主人公は生
活のために不動産屋に勤めるが、そこはちょっと怪しげな雰
囲気の漂う場所だった。
そして事件が起きてしまう。

共演は、2014年11月紹介『インターステラー』に出ていたと
いうウェス・ベントリーと、2014年『ゴーン・ガール』に出
ていたというエミリー・タラコウスキー。
他に2013年4月紹介『マーヴェリックス』などのジョニー・
ウェストン、2011年4月紹介『赤ずきん』などのシャイロー
・フェルナンデス、2012年7月紹介『WIN WIN』でダメ少年
を演じたアレックス・シェイファーらが脇を固めている。
脚本と監督は、ナイキ、ペプシなどのコマーシャルを数多く
手がけ、最近までMTVで共同プロデューサー兼カメラマン
&ホスト役の番組も持っていたというマックス・ジョセフ。
本作は彼の長編デビュー作となる。
全体的には、極めてよくあるアメリカンドリームものという
感じだが、何となく現在より少し昔の話なのかな? 僕は以
前にも書いたように音楽に関しては全く明るくないのだが、
全体が少しレトロな雰囲気に撮られている感じがした。
そんな中で主人公がドラッグを摂取するシーンでは、思わぬ
VFXなども使われて、その映像が昔の『ヘビーメタル』や
LSD映画のような感じもして、そこではちょっと懐かしさ
も感じてしまう作品だった。

公開は6月24日より、東京は渋谷HUMAXシネマ、TOHOシネマ
ズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ新宿他で、全国ロードショウ
となる。

『シアター・プノンペン』“ដុំហ្វីលចុងក្រោយ”
2014年11月3日付「第27回東京国際映画祭《コンペティショ
ン以外》」で『遺されたフィルム』“The Last Reel”とし
て紹介した作品が一般公開されることになり、改めて試写が
行われた。
主人公はカンボジアの首都プノンペンに暮らす女子大学生。
病弱な母親と、軍人で厳格な父親、そして口うるさい弟との
生活は毎日がストレスの連続だったが、それでも大学の仲間
と夜の街に出かけるくらいは出来ていた。
そんなある日、彼女は廃屋と化した古い映画館で密かに上映
が行われていることを発見する。上映されていたのは1974年
製作の『長い家路』という作品。そしてそこに貼られたポス
ターには母親の若き日の姿が映っていた。
その映画に引き込まれるように見入った主人公は、映画製作
の翌年に樹立した政権によって映画の上映が禁止され、さら
にその後の内戦で映画の最終巻が失われていることを知る。
そして彼女は上映しているのが監督だと思う。
斯くして彼女は、生きる術を失ったかのような母親に生気を
取り戻させるべく、その最終巻を撮り直そうと思い立つのだ
が…。一方、上映を行っていた監督(?)も、若きにの女優に
生き写しの主人公に思いを巡らせる。
ポル・ポト政権時代の悲劇については1985年のオスカー助演
男優賞などを受賞した『キリング・フィールド』でも描かれ
ていたが、その後の内戦も含む人々への影響は描き尽されて
はいなかった。
そんな政権が行う恐怖を、別の角度から見事に描いた作品と
も言えるだろう。今年4月紹介『トランボ』も背景は違うが
同等の恐怖を描いたもので、文化の大きな担い手である映画
はこの様な恐怖に襲われる可能性は高いのだ。
とは言え本作では、その恐怖を少し別に視点から描いたもの
で、それは巧みな作劇と言えるものにもなっている。特に映
画の失われたリールを探すというテーマは、映画好きにとっ
てはロマンを掻き立てられるものだ。
さらに映画製作の裏側など、様々な要素が見事に重ね合わさ
れた作品にもなっている。そしてエンディングロールに登場
する映像は、強烈なメッセージとなって観客の胸に突き刺さ
るものだ。

主演は、1992年のオスカー外国語映画賞を受賞した『インド
シナ』に出ているそうだが本作が本格的なデビュー作となる
マー・リネット。共演には実際にポル・ポト時代を体験した
ソク・ソトゥンとディ・サヴェット。それに若手のトゥン・
ソーピー、ルオ・モニーらが脇を固めている。
脚本と監督は、2001年『トゥームレイダー』などのライン・
プロデューサーも務めたソト・クォーリーカー。脚本は元は
カンボジア在住のイギリス人イアン・マスターズが執筆した
ものだが、カンボジア人の視点に合わせて加筆したそうだ。
公開は7月2日〜7月29日に、東京は岩波ホールにてロード
ショウとなる。

この週は他に
『二重生活』
(直木賞作家小池真理子による「理由なき尾行」という異色
テーマの原作を、テレビ作品で数多くの受賞に輝く演出家の
岸善幸が初の劇映画作品として脚色・監督した作品。主演は
2016年1月紹介『太陽』などの門脇麦。)
『超高速!参勤交代リターンズ』
(一昨年公開された作品の続編。前作では解決策などに少し
物足りない感じがしたが、本作では人間模様などもしっかり
描き込まれて満足できた。何より物語が本当にリターンズな
のが良い。)
『夢二〜愛のとばしり〜』
(大正ロマンの代表とも言える画家・詩人竹久夢二の奔放な
生活ぶりを描いた作品。同種の作品では2011年11月紹介の作
品もあるが、敢えてそれに挑戦した心意気を買いたい。夢二
を駿河太郎、彦野を小宮有紗が演じる。)
『疑惑のチャンピオン』“The Program”
(ツール・ド・フランス7連覇を果たしたものの、ドーピン
グに関ったとされて、その名誉をはく奪されたアスリートを
描いた作品。作品では選手個人の問題ではないようにも描い
ているが、それを深く追及できないのが歯痒い。)
『いしぶみ』
(松山善三演出、杉村春子の朗読で1965年に放送され、その
年の芸術祭優秀賞やギャラクシー賞などを受賞した放送番組
『碑』を、是枝裕和監督、綾瀬はるかの朗読でリメイクした
作品。とにかく見事としか言いようのない作品だ。)
『暗殺』“암살”
(日本に併合された第2次世界大戦中における韓国臨時政府
の動きを描いた作品。作品的には一部歴史的事実も踏まえた
フィクションだが、当然あったと思える話が巧みに展開され
る。日本人としていろいろ考えさせられた。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年05月22日(日) アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅、ハイ・ライズ、天国からの奇跡

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
          “Alice Through the Looking Glass”
2010年3月紹介『アリス・イン・ワンダーランド』の続編。
前作の最後で新たなる冒険の旅を目指したアリスが、その旅
から戻ってきてのお話。
父親の後を継いで貿易船の船長となったアリスは、辛くも海
賊の襲撃を交わして中国から帰ってくる。しかし待っていた
のは、新社長からの解雇通告。それは老いた母の住む屋敷を
取るか、父の愛した船を取るかの選択だった。
そして乗り込んだ新社長のパーティで居たたまれなくなった
アリスは、1羽の蝶に誘われ暖炉の上の鏡を抜けて不思議の
国へと帰還する。ところがそこではマッドハッタ―が哀しみ
の底に沈んでいた。
その哀しみの元を断つためアリスは、時の守護者の許を訪ね
過去へと旅立つ。それはマッドハッターだけでなく、彼女自
身やその他の不思議の国の住人たちの心をも救う旅となる。

出演は前作から引き続いてのミア・ワシコウスカ、ジョニー
・デップ、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム・カーターに
加えて、2012年12月紹介『レ・ミゼラブル』などのサッシャ
・バロン・コーエンが新たな役柄で登場する。
また声の出演では、今年1月に他界したアラン・リックマン
に特別な献辞が贈られていた。
脚本は前作と同じくリンダ・ウールバートン。監督はティム
・バートンに代って、2012年4月紹介『ザ・マペッツ』及び
2014年8月紹介『ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー』を手
掛けたジェームズ・ボビンが担当している。
お話は前作の続きとして新たに創作されており、原題に痕跡
の残るルイス・キャロルの原作からは想像もつかない代物に
なっている。でもまあ前作も原作からは相当かけ離れていた
から、それは仕方のないところだろう。
取り敢えず時間を扱った冒険物語としては、それなりに工夫
もされた巧みな作品にはなっている。しかも友情や家族愛な
どの映画に盛り込まれたテーマは、原作にはない情感を与え
る作品にはなっていた。
それで先に原作からは想像もつかないと書いたが、実は最初
にアリスが鏡を抜けるシーンだけは原作の挿絵を完璧に再現
していて、これは原作へのリスペクトと言うか、ファンへの
お詫びのしるしといった感じだ。
僕はこれだけでこの作品を認めることにした。

公開は7月1日より、2D/3Dにて全国ロードショウとな
る。なお僕は2Dでの試写を観たが、3Dではいろいろな仕
掛けもありそうだ。


『ハイ・ライズ』“High-Rise”
1960年代にイギリスで始まったSFニュー・ウェーヴ運動。
その旗手の1人とされたJ・G・バラードが1975年に発表し
た長編小説の映画化。
舞台は1975年のイギリス。ロンドン郊外に建つ高層アパート
の25階に1人の医師が引っ越して来る。そのアパートの入居
者は俳優やモデルなどいわゆるセレブ達で、彼らは毎夜パー
ティを開いて狂乱に明け暮れていた。
そんな中で主人公は、アパートの最上階に暮らすその建物の
コンセプトを考案した建築家にも気に入られ、優雅な生活を
満喫していたが…。ある日、彼は住む階の高低による差別の
あることを聞かされる。
そして思いもよらぬ停電が起きた時から、住人たちの関係が
変化し始め、それは重大な事態へと発展して行く。

出演は、2013年12月紹介『マイティ・ソー』などのロキ役ト
ム・ヒドルストン、2013年11月紹介『ビューティフル・クリ
ーチャーズ』などのジェレミー・アイアンズ、2014年12月紹
介『ホビット・決戦のゆくえ』などのルーク・エヴァンス。
他に、2006年3月紹介『カサノバ』などのシエナ・ミラー、
今年4月紹介『ニュースの真相』などのエリザベス・モス、
それにモデルでもあるステイシー・マーティンらが脇を固め
ている。
脚本と監督は、2014年2月9日付の記事の中で紹介『サイト
シアーズ殺人者のための英国観光ガイド』などのエイミー・
ジャンプ(脚本)とベン・ウィートリー(監督)のコンビが
手掛けている。
原作は、1973年発表の“Crash”、1974年発表の“Concrete
Island”と共に「テクノロジー3部作」と呼ばれる作品群の
一編とされ、この内の“Crash”は1996年にデイヴィッド・
クローネンバーグ監督によって映画化され、カンヌ国際映画
祭の審査員特別賞などに輝いている。
バラードの初期の長編は背景のスケールも壮大で、映像化は
かなり難しいものと想像される。それに比べるの本作は、舞
台も高層アパートの中と限定的で、特にハリウッド以外での
映画化には好適と言えるものだろう。
因にクローネンバーグ作品はカナダ映画で、本作はイギリス
映画となるものだ。そして本作では、北アイルランド・ベル
ファスト近郊に1970年に建てられたBangor Leisure Centre
で多くの撮影が行われたとされている。
まあ、本作自体の時代設定が1975年ということではあるが、
そんな中に案外未来的な雰囲気も描かれている。それも本作
の面白さと言えるだろう。

公開は8月6日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

『天国からの奇跡』“Miracles From Heaven”
4月17日紹介『復活』に続く、ソニー・ピクチャーズの配給
によるキリスト教映画の第2弾。
登場するのはテキサス州の田舎町に暮らす一家。両親は敬虔
なキリスト教の信者であり、その許に育った姉妹も深い信仰
を持っている。ところがそんな一家を試練が襲う。姉妹の中
でも一番信仰心の厚い次女が突然の病に侵されたのだ。
最初は何気ない症状に見えたその病気はChronic Intestinal
Pseudo-obstruction(慢性偽性腸閉塞症)。それは現代医学
ではどうにもならない難病だった。
そこで母親がすがったのはボストンに住む小児科の名医。し
かし高名なその医師には予約患者が一杯で、診察を受けられ
るのは数年後。この事態に母親は思い掛けない行動に出る。
それが奇跡を呼び起こした。

出演は、2010年1月紹介『バレンタインデー』などのジェニ
ファー・ガーナー、2015年『パパが遺した物語』で主人公の
幼女時代を演じたカイリー・ロジャーズ。他に、2004年8月
紹介『トルク』などのマーティン・ヘンダーソン。さらにク
イーン・ラティファらが脇を固めている。
脚本は2012年9月紹介『人生の特等席』のランディ・ブラウ
ン、監督はメキシコ出身のパトリシア・リゲンが担当した。
描かれる病は原因は解明されていないものの神経の一部がブ
ロックされてしまうもののようで、それが外部からの衝撃で
回復してしまうのは起こり得ない話ではない。実際に僕自身
が腰痛から来る足裏のしびれを抱えているが、これが麻酔の
針で治る事象もあるとは医者から聞いた話だ。
従って本作の出来事は医学的には起こり得る話で、それが信
仰の賜物であるかは別にして起これば奇跡ということにはな
る。その辺も考慮したのか、映画ではその他にも奇跡が起っ
ていたことを紹介して、話の纏まりが付くようにしている。
宗教映画も生硬な宗教論のような作品には辟易するが、本作
の場合はそれを別にして家族愛やそれを見守る周囲の状況な
どが描かれ、それは普遍的なファミリーピクチャーとしても
充分通用するように作られている。
その辺は、さすがメインの製作者として『アリス・イン・ワ
ンダーランド』も手掛けるジョー・ロスが名前を連ねている
所以という感じもした。宗教の問題を別にして、王道のハリ
ウッド映画という感じの作品だ。

公開は6月18日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『ロング・トレイル!』“A Walk in the Woods”
(ロバート・レッドフォードとニック・ノルテの共演で、ア
パラチアン・トレイルが舞台の老年男性が頑張るお話。脚本
に少し疑問はあるが、何となく判るお話だ。)
『ソング・オブ・ラホール』“Song of Lahore”
(パキスタンのイスラム革命で芸能活動を禁じられる中、何
とか生き延びた民族楽器によるジャズバンドのドキュメンタ
リー。シタールでのTake Fiveの演奏は感動だった。)
『The Violin Teacher(英題)』
            “Tudo Que Aprendemos Juntos”
(ブラジルのファヴェーラで子供たちに音楽を教えるヴァイ
オリニストのお話。有り勝ちといえば有り勝ちな内容だが、
ファヴェーラという風景が味わいをもたらしている。)
『だCOLOR?』
(ココリコ田中の主演で、政治犯で監獄があふれた近未来を
描いた作品。パズル劇かと思ったら心理劇で、その展開には
捻りもあるが、もう少し何かが欲しかったかな?)
『海すずめ』
(武田梨奈主演で、愛媛県宇和島を舞台にしたご当地映画。
武田は神奈川県横浜市の出身だが、2013年11月紹介『祖谷物
語』での徳島県に続いて四国2県目制覇?)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年05月15日(日) 10クローバーフィールド・レーン、マネーモンスター

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『10クローバーフィールド・レーン』
                “10 Cloverfield Lane”
2008年日本公開された『クローバーフィールドHAKAISHA』の
続編。
物語の冒頭で本作のヒロインは車を運転しながら携帯電話の
着信に応答を躊躇っている。そしてようやく電話に出た彼女
は相手と口論になるが、その時、車に何かが衝突し、彼女は
気を失ってしまう。
その彼女の意識が戻ったのは牢獄のような場所、しかも彼女
は鎖で壁に繋がれ、腕には点滴をされていた。そしてロック
されたドアが開き、入ってきた男は彼女に「ここに居れば安
全だ」と告げる。
地下の牢獄のような場所にはもう1人の男性がいて、彼の言
葉を信じるなら、地球は何者かに襲われ、地表は毒ガスで覆
われたという。しかし話を信じられない彼女は脱出を図るの
だが…。
彼女が外部とのエアロックに辿り着いた時、顔の爛れた女が
現れて「入れてくれ」と叫び、その場所の意味と男性の話は
現実味を帯びてくる。

出演は、2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのメ
アリー・エリザベス・ウィンステッド、2016年4月紹介『ト
ランボ』などのジョン・グッドマン、それに2004年9月紹介
『エイプリルの七面鳥』などのジョン・ギャラガー・Jr.
監督は前作のマット・リーブスに代って新人のダン・トラク
テンバーグ。脚本はジョシュ・キャンベル、マット・ストゥ
ーケンの原案・脚本に、2014年『セッション』でオスカー候
補になったデイミアン・チャゼルが加わっている。
2008年作品の続編と聞いていたが、映画の進め方の違いには
かなり戸惑った。とは言え、それは2004年9月紹介『ソウ』
に似たところもあり、また今年のオスカー受賞作『ルーム』
にも通じて成程とも思わせた。
その一方で僕は、「ミステリーゾーン」のエピソード『水爆
落ちる』“One More Pallbearer”を思い出していた。その
話は、財を成したビジネスマンが自宅の核シェルターに知人
を招き、そこに核攻撃の情報が…というものだったが。
前作を観ている観客は侵略の事実を知っているが、ヒロイン
はそれを知らない。従って『ルーム』のヒロインには単純に
脱出して欲しいと願えるが、本作ではそうはいかないのだ。
そんなちょっと捻った感覚が巧みに展開さる作品だ。
因にエンドクレジットによると、本作のVFXには専門会社
の参加がなかったようだ。前作の時も特定の会社ではなく、
各社からの混成チームが手掛けていたが、そういうやり方で
もこれだけの作品が成立するというのも驚きだった。

公開は6月17日より、全国ロードショウとなる。

『マネーモンスター』“Money Monster”
ジョディ・フォスターの監督、ジョージ・クルーニーとジュ
リア・ロバーツの主演で、株式市場の闇を暴く作品。
物語の舞台は、経済情報専門のテレビ局FNN(Financial
News Network)の人気番組Money Monster。そこでは人気も
信頼も高いキャスターが軽妙な進行で株式投資のお勧めなど
を紹介している。
しかしその日は少し様子が違っていた。それは少し前に番組
で購入を勧めた株が暴落し、全米で8億ドルもの損失が生じ
たのだ。そこで番組ではその創業者へのインタヴューを取り
付けたが、直前になってキャンセルされてしまう。
しかし代わりに広報担当の女性重役が出演することになり、
創業者の乗ったプライヴェートジェットとの連絡が取れない
という彼女の言い訳を聞きながら番組の準備は進んで行った
が…。その裏では番組ジャックの準備も進んでいた。

共演は、アンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アン
ブロークン』に主演したジャック・オコンネル。他に2012年
3月紹介『ジョン・カーター』などのドミニク・ウェスト、
2013年10月紹介『グランド・イリュージョン』などのカイト
リオーナ・バルフェらが脇を固めている。
脚本は、2004年12月紹介『ナショナル・トレジャー』などの
ジム・カウフとテレビ脚本家のアラン・ディフィオーレの原
案に、2011年6月紹介『親愛なるきみへ』などのジェイミー
・リンデンが参加して作られている。
FNN(Financial News Network)は1981年から1991年まで
実在した放送局で、デイトレーダーなどの株式市場の大衆化
にも貢献したメディアと言えるが、それは同時に株式の投機
化にも繋がったもので、そんな背景が本作にはある。
その一方で株式の電子取引による危険性なども描かれている
ようで、ある種の警鐘とも言える。ただ現実にこれが可能か
というと多分専門家は否定するのだろうが、それがひょっと
すると可能…? というのが本作のポイントなのだ。
作品的には監督と主演の2人の名前だけで充分という作品だ
が、内容をしっかり見ると現代を見据えたかなり深い作品と
も言える。ただ物語の黒幕は少し物足りないかな、ここには
もっとアッと驚くような仕掛けが欲しかった。
それにしても、女性監督でこのテーマというのもさすがとい
う感じがした。

公開は6月10日より、TOHOシネマズ日本橋他で、全国ロード
ショウとなる。

この週は他に
『カンパイ!世界が恋する日本酒』
           “Kampai! For the Love of Sake”
『ブレイク・ビーターズ』“Dessau Dancers”
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』
『ラサへの歩き方 祈りの2400km』“岡仁波斉”
『全員、片想い』
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』“Les héritiers”
『めぐりあう日』
      “Je vous souhaite d'être follement aimée”
『太陽のめざめ』“La tête haute”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年05月01日(日) シンドバッド、ウフィツィ美術館3D・4K、ホーンテッド・キャンパス、雨女4DX

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『シンドバッド』
「世界名作劇場」シリーズで知られる日本アニメーションの
40周年記念作品として製作された劇場用アニメーション。
実は本作は3部作の第3部で、その第1部は昨年試写を観せ
て貰ったが、物語が全く完結していないので紹介を控えた。
その後の第2部は試写状が届かなかったが、今回は第3部を
鑑賞したものだ。ただし本作の巻頭に前2作のダイジェスト
が付いているので物語の鑑賞には全く支障はなかった。
その物語は、港町で母親と暮らす少年が主人公。船乗りの父
親は航海に出たまま帰ってこないが、少年はその父親が観た
であろう遠い国を訪れるのが夢だった。そんな少年が空を飛
ぶ魔法の馬に乗った少女を助けたことから道が開ける。
寄港した船の船長に気に入られた少年は乗船を許され、悪人
に追われて匿われた少女と共に彼女の目指す西の国に向かう
こととなる。そこは彼女の故郷のはずだったが…。というの
が第1部で、続く第2部でも冒険があったようだ。
そして第3部では、少女の故郷である魔法の国の歴史が描か
れ、魔法族とその魔法を利用しようと企んだ者たちの闘争が
語られる。つまり第1部は序章で、第2部は派生篇、そして
第3部で本来の物語が語られているものだ。
その物語は、多分第2部で仄めかされてはいたのだろうが、
ここでは魔法を利用する者の資質が問われている。それは現
代における科学技術の利用に対する人の在り方を説いている
ようにも見える物語だ。
特に科学技術=原子力と観るのは極めて容易なことだろう。
そんな物語が、若い男女の冒険と共に描かれて行く。そこに
空飛ぶ絨毯や魔法のランプなど、アラビアンナイトのアイテ
ムが鏤められた作品だ。

脚本は2008年12月紹介『トミカヒーロー/レスキューフォー
ス』などの川崎ヒロユキ、監督は2013年2月に紹介した「ア
ニメミライ」でその前年に製作された『しらんぷり』などの
宮下新平。いずれも制作会社白組のメムバーだ。
声優は、村中知、2011年8月紹介『ラビット・ホラー3D』
などの田辺桃子。他に鹿賀丈史、薬師丸ひろ子らが脇を固め
ている。
上にも書いたようにいろいろな観方のできる作品だが、その
本題が語られるのは主に第3部で、そこまでの展開は正直に
言って別物のようにも感じる。
因に第1部、第2部の川崎はシリーズ構成のクレジットで、
脚本は2014年11月の「東京国際映画祭《コンペティション部
門》」で紹介した『紙の月』の早船歌江子が担当しており、
第3部に力が掛けられたのは明らかだ。
であるなら、やはりこれは第3部を中心とした1本の作品に
仕上げた方が良かったのではないかな。幸い第3部の巻頭に
はダイジェストが付いて、これだけで観られるようになって
はいるが、悩ましいところだ。

公開は5月14日より、東京はイオンシネマ板橋ほかで、全国
ロードショウとなる。

『フィレンツェ、メディチ家の至宝
               ウフィツィ美術館3D・4K』
            “Firenze e gli Uffizi 3D/4K”
2014年12月紹介『ヴァチカン美術館3D・4K天国への入口』に
続く、美術館の魅力を3Dで紹介するドキュメンタリー。
今回の舞台は、15世紀にルネサンスを生み出したイタリア中
部の町フィレンツェ。その街並みとメディチ家の至宝が収め
られた美術館が、15世紀後半の隆盛を支えた当主ロレンツォ
・デ・メディチの案内で紹介される。
そのドローン空撮を含めた風景や大聖堂を筆頭とする建築物
などの街並み、さらに美術館の建物や収められた彫像などは
実写3Dで紹介されるが、そこに加わるのが、ヴァチカンの
ときと同じく3D化された絵画の数々だ。
そこではボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」「春(プリ
マヴェーラ)」やミケランジェロの「聖家族」、ラファエロ
の「ひわの聖母」、ダ・ヴィンチの「受胎告知」などの名画
が3D化されて紹介される。
また、煤に埋もれて発見され、2011年から修復が進められて
いるダ・ヴィンチの未完の作「東方三博士の礼拝」の全貌は
スクリーンを通じて初の公開となるものだそうだ。それらの
映像が4Kの画面で鮮明に写し出される。
さらにフィレンツェの象徴とも言えるサンタ・マリア・デル
・フィオーレ大聖堂の姿は実写の3D映像だけでなく、その
構造なども建設当時の図面を立体化して紹介しており、それ
も興味深いものになっていた。
そしてその中でも僕が気に入ったのは、カラヴァッジョ作の
「メデューサ」。円形の盾の前面に描かれたその頭部は、勇
者ペルセウスが切り落とした直後を描いており、頭髪の蛇や
滴る血などが見事な3D映像で再現されていた。
以前の『ヴァチカン』では3D化されたシスティーナ礼拝堂
の天井画に驚嘆したが、今回の「メデューサ」はそれを超え
るリアルさで、1981年レイ・ハリーハウゼンの『タイタンの
闘い』を思い出させてくれた。
フィレンツェのルネサンスとメディチ家の関係では、2013年
12月紹介『ダ・ヴィンチ・デーモン』なども思い出したが、
本作ではそれに勝る3Dアドヴェンチャーを体験した感じも
したものだ。
このシリーズでは『ヴァチカン美術館』が先鞭を付けたこと
から他の美術館も追随はし易くなっているものと思えるが、
さらに世界各地の美術館でも同様の作品が制作されることも
期待したいものだ。

公開は7月上旬より、東京はシネスイッチ銀座ほかで、全国
ロードショウとなる。

『ホーンテッド・キャンパス』
累計発行部数70万部、第19回日本ホラー小説大賞で読者賞を
受賞したという櫛木理宇原作の映画化。
主人公は幽霊が見える能力を持つ若者。本人的にはそれが負
担で、出そうなところには近づかないことを心掛けている。
ところが一浪して入った大学で、再会した1年後輩の女性が
あろうことかオカルト研究会に入部してしまう。そのため彼
女に思いを寄せる主人公も入部を決意。
ところがそこは怪異現象の相談所で、早速壁に女性の顔の染
みが浮き出るという相談を受けた研究会は、主人公の能力も
あって謎を解決してしまう。そして次の謎は、大学側がひた
隠しにする自殺者の幽霊と、それに関って閉じ籠りになった
大学教授の娘を助けることになるが…。
そんな物語が、ウィジャボードなどの小道具や薀蓄を鏤めて
語られて行く。因に原作はすでに9巻が発表されているもの
だが、本作の前半はその第1巻に沿ったもののようだ。

主演は、2008年NHKドラマ『バッテリー』で主演デビュー
した中山優馬。テレビでは主演作が列挙される中山だが、映
画は初出演だそうだ。また歌手でもある中山は本作の主題歌
も歌っている。
共演は、AKB48の一員で2015年『劇場霊』などの島崎遥
香、2013年12月紹介『黒執事』などの大野拓朗、2014年5月
紹介『キカイダーREBOOT』などの高橋メアリージュン、それ
にジャニーズJr.の安井謙太郎。
他に大和田伸也らが脇を固めている。
脚本は、2015年『探検隊の栄光』などの徳尾浩司。藤原竜也
主演の前作はここでの紹介はしなかったが、試写は観てそれ
なりに納得できる作品だった。
監督は、関西でテレビドラマやCMなどを数多く手掛け、関
西ATP賞なども受賞している竹本聡志が担当。本作で映画
デビューを飾っている。
本作をSFの範疇に入れるかどうかには抵抗もあるが、物語
はそれなりに理詰めに作られていて納得できる作品だった。
『探検隊の栄光』もドタバタの割には展開には納得できたも
ので、この脚本家には注目しておきたい。
しかも青春映画としても機能しているし、その一方でホラー
シーンもしっかりと演出されており、その辺のバランス感覚
も良いように感じられた。とにかく好感の持てる作品と言え
る。それにしても今年は本当に当たり年になりそうだ。

公開は7月2日より、全国ロードショウとなる。

『雨女4DX』
昨年12月紹介『ボクソール★ライドショー』に続いて4DX
シアター専用に制作されたホラー作品。そのシステムに今回
は、『呪怨』などの清水崇監督が挑んだ。
主人公は父子家庭で育った女性。母親を知らずに育った彼女
は、彼女自身の「女性」に自信がなく、恋人の不倫を疑って
もそれを咎めることができなかった。
そんな彼女は同じ夢を繰り返し見る。それは雨の中を踏切の
前に佇む幼女が、男児を抱えて電車に跳ねられる黒衣の女性
を目撃するというもの。しかし彼女はその3人の顔に見覚え
はなかった。そして密かにその女性を雨女と呼んでいた。

主演は2015年12月紹介でようやく6月25日の公開が決まった
『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』などの清野菜名。相手
役に2014年3月紹介『恋につきもの』などの�暴啾析此B召�
高橋ユウ、田口トモロヲらが脇を固めている。
清水崇監督の近作は、2015年6月『7500』と2014年1月
『魔女の宅急便』を紹介しているが、その前には2011年8月
『ラビット・ホラー3D』、2009年9月『戦慄迷宮』を紹介
していて、新技術にも果敢に挑戦する人のようだ。
その監督が4DXに挑戦したものだが、実は僕が観た内覧試
写では4DX部分がまだ完成ヴァージョンではなく、完全で
はないと紹介されたもの。それでも題名から連想されるもの
は4DXで執拗に再現され、それは風情も感じられた。
昨年12月紹介『ボクソール…』はどちらかというとオカルト
映画の部類だったが、本作は正にオーソドックスな怪談話。
ただし上映時間が35分なので話の深みの点では少し物足りな
いが、夏の納涼には良い感じだろう。

公開は6月4日より、東京はシネマサンシャイン平和島、ユ
ナイテッドシネマ豊洲、ユナイテッドシネマとしまえん他、
全国の4DXシアター独占での上映となる。

この週は他に
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
            “Captain America : Civil War”
『教授のおかしな妄想殺人』“Irrational Man”
『ヒマラヤ 地上8,000メートルの絆』
            “히말라야 : 바람이 머무는 곳”
『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』
『あなた、その川を渡らないで』
             “님아, 그 강을 건너지 마오”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。

なお次回はゴールデン・ウィークのため休載の予定です。


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井口健二