井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2016年04月24日(日) トランボ、ニュースの真相、牙狼<GARO>-DIVINE FLAME-、知らない町、秘密 THE TOP SECRET

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』“Trumbo”
米ソ冷戦時代の赤狩りで公にはハリウッドを追放されたもの
の、偽名を使って数多くの作品を世に出し、2つのオスカー
まで獲得した名脚本家ダルトン・トランボを描いた作品。
僕にとってのトランボは1973年に公開された彼唯一の監督作
品『ジョニーは戦場へ行った』に尽きる。日本公開時に往時
の虎ノ門ホールで鑑賞した作品は、観た後で自分の身体の有
ることに疑問が生じるほどの衝撃を受けたものだ。
以来、僕はその作品を自分の生涯のベスト10で上位を占める
ものとしている。
そんなトランボに関しては、当時からハリウッド・テンの一
員として映画界を追放された人物で、オスカー受賞作『黒い
牡牛』の真の名義人であることは知っていたが、それ以上の
ことはあまり情報もなかったように記憶している。
本作は、そのトランボの真実の姿を描き出しているものだ。
そこには有りもしない脅威で民衆を煽り立てて個人の思想を
弾圧する。まるで現代にも通用しそうな恐怖社会の実態も描
かれている。
因にトランボは実際にアメリカ共産党の党員であったものだ
が、それでも言論、思想の自由は合衆国憲法においても保障
されているものであり、その自由を平然と奪った連中は紛れ
もない悪魔の所業と言える。
しかしそんな中にあっても毅然として、強かに境遇を生き抜
き、さらにはその間に2度のオスカーまで獲得した。そして
その名誉も回復したトランボの姿は、正しく真の英雄と呼べ
る存在だろう。
その姿がユーモアもたっぷりに描かれている。特に体制に迎
合して弾圧を繰り返した連中への辛辣な描き方は、痛快とも
言えるもので、正しく溜飲が下がる思いもさせてくれた。こ
れぞ硬派の作品と呼べるものだ。

主演は、2010年6月紹介『ブレイキング・バッド』でブレイ
クしたブライアン・クランストン。共演は、2010年12月紹介
『RED/レッド』などのヘレン・ミレンと2013年7月紹介
『マン・オブ・スティール』などのダイアン・レイン。
他にはテレビで活躍するデヴィッド・ジェームズ・エリオッ
ト、ルイス・C・K、それに舞台出身のマイクル・スタール
バーグ。さらにジョン・グッドマン、エル・ファニングらが
脇を固めている。
脚本は、テレビ出身で劇場用映画はデビュー作というジョン
・マクナマラ。その脚本から2005年9月紹介『ミート・ザ・
ペアレンツ』などのジェイ・ローチが監督した。因に監督は
近年では政治映画も手掛けているそうだ。
日本映画界では、政治絡みの作品は企画段階で押し潰されて
しまうというぼやきを若手の監督から聞いたことがあるが、
次に紹介する作品も含めて、まだしもハリウッドの方がまし
ということなのかな?

公開は7月、東京はTOHOシネマズ・シャンテほかで、ロード
ショウとなる。

『ニュースの真相』“Truth”
2005年に起きた「CBSニュース」のアンカーマン=ダン・
ラザーの更迭劇。そのニュースの真相を共に更迭された当時
の番組プロデューサーが綴った物語の映画化。
物語の中心は、報道番組の女性プロデューサー。彼女は米国
陸軍による捕虜虐待をスクープして賞賛されたばかりだが、
そんな彼女の許に一つの情報が寄せられる。それは現大統領
の軍歴詐称に関するもので、以前にも追及を試みたが挫折し
たものだった。
しかし今回はそれを証明し得るメモのコピーがあるというこ
とで、早速その所有者にコンタクトした彼女は、情報源を明
かさない約束でその検証に乗り出す。それは4人の鑑定人に
よる真偽の確認で、コピーしかない状況ではその検証は困難
だったが、それでも文書内容などから判断がなされる。
そして2004年大統領選挙の予備選の最中、再選キャンペーン
を繰り広げる現大統領がベトナム戦争を忌避し、しかもその
代わりの軍務からも離脱していたという番組が放送され、現
大統領の再選に暗雲をもたらすのだが…。それは彼女にとっ
ての悪夢の始まりとなる。

出演は、『LOTR』や『ホビット』などのケイト・ブラン
シェットと、1976年『大統領の陰謀』などのロバート・レッ
ドフォード。
その脇を、2007年4月紹介『スパイダーマン3』などのトフ
ァー・グレイス、2012年3月紹介『ソウル・サーファー』な
どのデニス・クエイド、2013年12月紹介『トップ・オブ・ザ
・レイク』などのエリザベス・モスらが固めている。
脚本と監督は、2007年4月紹介『ゾディアック』などの脚本
を手掛けたジェームズ・ヴァンダービルト。オスカー候補に
もなった脚本家の監督デビュー作だ。
物語の中では、匿名のネットブロガーによる誹謗中傷など、
現在にも通じる話も登場する。その一方でプロポーショナル
のタイプライターなど、時代を背景にした事象も描かれる。
因に問題とされる「th」の添え字は、僕自身が子供時代に観
てなんだろう? と思っていたものだ。
それにしても、プロポーショナルが打てるIBMのボールタ
イプのタイプライターなどは、上記の『トランボ』にも登場
するもので、こんな単純なことを問題にするブロガーの無知
も呆れ果てた。とは言えそれで論点のすり替えが実効されて
しまうのだから、目的は果たしているのだろう。
時の権力者が行うことの恐ろしさを実感させてくれる作品。
そう言えば、最近の日本のテレビでも多くの名物キャスター
が様々な理由で降板しているようだが。日本映画界がその真
相を映画化できる日は来るのだろうか?

公開は8月、東京はTOHOシネマズ・シャンテ他で、全国順次
ロードショウとなる。

『牙狼<GARO>-DIVINE FLAME-』
2010年7月紹介『GARO THE MOVIE -RED REQUIEM-』、2012年
12月紹介『牙狼<GARO>〜蒼哭ノ魔竜〜』に続く、雨宮慶太
原作によるダークヒーローシリーズの最新作。
実は、このシリーズ(TVシリーズを併せてGARO PROJECTと
称される)に関連しては上記の2作の後にも何作か観させて
貰っていたのだが、初期の頃と少しコンセプトが違って来て
いる感じがあって、紹介をしなくなっていた。
しかし本作では、時代背景などは異なるもののコンセプトは
少し初期の頃に戻ったようでほっとした。ただし、本作品は
アニメーション。雨宮は本来特撮の人という認識だったので
ちょっと気になったが、状況で仕方ないのかな。
因に作品は、2014年に放映されたPROJECT初アニメーション
シリーズ『牙狼<GARO>-炎の刻印-』に続くもので、同作の
物語から4年後という設定だそうだ。とは言うものの僕はそ
の作品を観ていないが、鑑賞に問題はなかった。
物語は、以前の闘いで黄金騎士“ガロ”が勝利して4年後。
一見平和な日々に異変が伝えられる。それは今は亡き近隣の
小国に強力なホラーが現れたというもの。しかもそいつは、
魔界の亡者を呼び戻す準備をしていた。…。
初期の作品は現代日本が背景で、そこでの人間の欲望が様々
なホラーを呼び出し、それを牙狼らが諌めて行くというもの
だった。それが本作では、舞台が中世ヨーロッパということ
で少し戸惑いはしたが、まるで異世界よりは良いかな?
そこで人間の欲望が…、という辺りも少し曖昧な感じもする
が、物語の背景部分の経緯などは手際よく説明されていたよ
うだし、とにかくホラーと魔界騎士との闘いは充分に堪能で
きるものだ。
なお本作はGARO PROJECTの一環を成すものだが、本作で雨宮
は原案のみのクレジットで、脚本は東映戦隊ものなどを手掛
ける小林靖子。監督は2012年10月紹介『009 RE:CYBORG』で
絵コンテを手掛けた林祐一郎が担当した。
正しく特撮とアニメの融合というところかな? その効果で
コンセプトが初期に戻った感じになったところもあるのかも
しれない。それはそれで良かったと言えることにもなるのだ
ろう。
とは言うものの特撮ファンの立場としては、セルタイプのア
ニメーションは、どう頑張っても実写の迫力には物足りない
と思ってしまうもので、早く実写特撮の世界に戻ってきて欲
しいという気分にはさせられた。

公開は5月21日より、東京は新宿バルト9他で、全国ロード
ショウとなる。

『知らない町』
2005年多摩美術大学卒業。卒業制作の作品がロッテルダム国
際映画祭に招待されたという大内伸悟監督による、2006年に
第2作を発表以来7年ぶりという新作。
最初に登場するのは廃品回収をしている男。男はあまり善良
ではないらしく、トラブルを起こしながら古びたソファーを
引き取る。そして友人の部屋に持ち込むが、そこに忘れ物を
探しているという女が現れる。
一方、若いカップルの男性がアルバイト先の先輩の命日の集
まりに先輩の彼女を招こうとしているが、過去に捉われたま
まの彼女はその誘いに応じようとしない。それでも男性の熱
意に墓参りは了承するが…。
ここから物語は有り勝ちな幽霊話になって行くのだが、最期
がちょっと捻られているのかな…?
でもそれが登場人物たちにどのような作用があったのか。そ
の辺をもう少し整理して明確にしていれば、それなりの作品
になったと思うのだが、最後が混乱というか描き切れていな
い感じなのが物足りなかった。
ただ上映前に監督の挨拶があったが、多少アヴァンギャルド
な趣を持たせたかったそうで、それはそうとしか言いようの
ない作品だが、この展開ならそうでない真面な作品の可能性
もあったと思えたものだ。

出演者は、日本のインディペンデント映画で活躍する俳優陣
が集結した感じで、2016年木村文洋監督『息衝く』などの柳
沢茂樹、2003年山下敦弘監督『バカのハコ船』などの細江祐
子、2013年2月紹介『旅立ちの島唄〜十五の春〜』などの松
浦祐也らが共演している。
プレス資料のプロダクションノートによると制作には3年が
費やされているようで、その理由がどこにあるのかはよく判
らないのだけれど、結局その辺の混乱が作品にも影響してし
まっているのかな。
アヴァンギャルドを標榜しても、そこにはそれなりの理論も
必要な訳で、物語の混乱をそこに持ってこられてもに何か面
はゆい感じもしてしまう。作品のテーマ自体は良いと思える
し、もっと真正面から取り組んで欲しかった。
結末で女性に与えられたであろうポジティヴな影響がもっと
明確に描かれていたら、それはそれなりに心に残る素敵な作
品になったとも思える。そんな作品を次回には期待したいも
のだ。

公開は6月11日より、東京はシアター・イメージフォーラム
(渋谷)にてレイトショーとなる。

『秘密 THE TOP SECRET』
2012年6月紹介『るろうに剣心』などの大友啓史監督が、実
はそれ以前から企画していたという清水玲子原作近未来SF
コミックスの実写映画化。
物語の背景は、MRIと称される死体の脳に残された記憶を
再生する技術が確立している時代。それは警察の犯罪捜査に
応用されて大きな成果を上げていたが、現場主義の刑事など
からは胡散臭い目で見られていた。
その技術は死体の脳を活性化して残留の記憶を所定の手段で
繋げられた捜査官の頭脳に投影するというもの。しかしそれ
は、犯罪行為を目の当たりにする捜査官には精神的な負担が
極めて大きなものだった。
そんな部署に1人のエリート刑事が赴任してくる。彼は大学
を優秀な成績で卒業し、正にMRIに憧れてその部署にやっ
てきたのだが…。その捜査では過去に何人もの捜査官が死亡
したり、発狂する事例も存在していた。
そして彼が最初に手掛けることになったのは、家族を惨殺し
て死刑になった父親の脳。事件では家族の1人が行方不明と
なっており、その行方をMRIで探ろうというものだった。
ところがそれが新たな犯罪をあぶりだす。
斯くしてその犯罪を追い始めた主人公らは、過去に何人もの
捜査官を死に追いやった連続殺人鬼との繋がりを知ることに
なり、その記憶を再び探る必要が生じてしまう。それは極め
て危険な行為だった。

出演は、2012年2月紹介『僕等がいた』などの生田斗真と、
2008年12月紹介『重力ピエロ』などの岡田将生。共演に松坂
桃李、栗山千明。さらに吉川晃司と映画初出演の織田梨沙。
そしてリリー・フランキー、椎名桔平、大森南朋らが脇を固
めている。
脚本は、大友監督と2010年1月紹介『ソラニン』などの高橋
泉。さらに韓国から2002年6月紹介『燃ゆる月』を手掛けた
LEE SORK JUNとKIM SUN MEEが参加している。
内容的には、今年2月紹介『スキャナー』に通じるところも
あるが、先に紹介した作品がどちらかというと軽めに作られ
ていたのに対して、本作では上映時間2時間28分を掛けて、
重厚かつドラマティックに物語を描いている。
それは今が旬の若手俳優たちの共演とも相まって、正に映画
を堪能させてくれる作品になっていた。今年は日本製のSF
映画が当たり年かも知れないと以前に書いたと思うが、その
流れを絶やさない作品だ。

公開は8月6日より、全国ロードショーとなる。

この週は他に
『恋恋風塵』“戀戀風塵”
『任侠野郎』
『エルヴィス、我が心の歌』“El Ultimo Elvis”
『サウスポー』“Southpaw”
『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』
               “Where to Invade Next”
『夏美のホタル』
『亜人第2部−衝突−』
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年04月17日(日) LAMBERT & STAMP、復活、ラザロ・エフェクト、心霊ドクターと消された記憶

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『LAMBERT & STAMP』“Lambert & Stamp”
ケン・ラッセル監督の1975年作品『トミー』の原作アルバム
などで知られる英国のロックバンドThe Whoの軌跡を描いた
ドキュメンタリー。
このバンドに関しては2008年9月に『ザ・フー:アメイジン
グ・ジャーニー』という作品も紹介しているが、本作は彼ら
の誕生に関った2人のマネージャーの姿から追ったものだ。
作品は、主にはメムバーのピート・タウンゼントと元マネー
ジャーのクリス・スタンプへのインタヴューに沿うもので、
そこに当時の映像などが挿入される形式になっている。
そこにはメムバー間の諍いやメムバーとマネージャーとの確
執なども見えてくるが、全体には思い出話であり、ちょっと
ノスタルジックな温かさも感じられるものだ。
そのマネージャーはクリスとキット・ランバート。ランバー
トは現代音楽家の息子でハーバード大学を卒業、その後にパ
リの映画学校に通ったというセレブ。
一方のスタンプは父親がタグボートの船長という下層階級の
出身だが、実は性格俳優テレンス・スタンプの実弟で、兄の
伝手で映画スタジオで働いていた。
そんな2人が出会い映画について語り合う内にあるアイデア
が生まれる。それは無名のバンドを育て上げ、その軌跡を映
画化するというものだ。
斯くして2人はライヴハウスを巡り、2人のアイデアに合致
するバンドを探すのだが…。見つけたのはメムバーの容姿も
いまいちでテクニックもあまりないバンドだった。
しかしそのバンドと契約した2人は、映画の現場で得た収入
をつぎ込みながらバンドを育てて行く。そしてバンドは英国
3大バンドの一つと呼ばれるまでになる。
しかしランバートとスタンプの夢見た映画が実現することは
なかった。そんなバンドとマネージャーとの紆余曲折が描か
れて行く。
そのランバートとスタンプについては、THe Whoの日本語版
ウィキには記載がなかったが、英語版では彼ら自身の項目も
あり、そういうレヴェルの人物だ。
しかし本作を観ると2人がThe Whoに注いだものの大きさが
判るし、2人がいてこそのThe Whoであったことも理解でき
る。そのことが見事に描かれた作品だ。
それはThe Whoのファンにはバンドの来歴を知る上で貴重な
作品だが、映画ファン的には映画版『トミー』ができるまで
の経緯も面白く見られる作品だった。
そしてさらにSFファン的にはロック・オペラの第2弾とし
て企画され、英語版ウィキにはScience fictionと紹介され
る“Lifehouse (rock opera)”のことも気になるものだ。
それについてランバートは「超常的過ぎた」と語っているも
のだが、1969年に発表された『トミー』に続いてその作品が
完成していたら、それはSF史にも関ったかも知れない。
そんないろいろなものが見えてくる作品だ。

監督のジェイムズ・D・クーパーは監督は初のようだが、長
年撮影監督などで業界にいた人のようで、温もりのある視点
が本作を心地良い作品に仕上げている。
公開は5月21日より、東京は新宿K's Cinema他で、全国順次
ロードショウとなる。

『復活』“Risen”
ソニー・ピクチャーズの配給で、キリスト教を題材にした映
画3作品を連続公開する内の第1弾。
物語は毎年3〜5月に行われるキリスト教の祝祭イースター
(復活祭)の許となるイエスキリストが処刑されて3日後に
復活したとされる出来事に基づくもので、本作ではその物語
を処刑に関ったローマの百人隊長の視線で描いている。
それは自らが槍で止めを刺し、墓所に収めた後にその入り口
を封蝋で閉ざしたイエスキリストの遺体が、封蝋を破壊して
忽然と消え去ったという状況。そしてその遺体を捜索する内
に彼は復活したイエスキリストと巡り会うことになる。
そんな聖書に著されたイエスキリストの復活劇が、VFXを
駆使してスペクタクル性も豊かに描かれる。

脚本と監督は、1991年『ロビン・フッド』や1995年『ウォー
ターワールド』などのケヴィン・レイノルズ。劇場用映画は
10年ぶりとなるレイノルズだが、今年2月に全米公開された
本作では、第1週の週末3日間に1180万ドル(第3位)の興
行を達成したとのことだ。
主演は2011年4月紹介『レッド・バロン』などのジョセフ・
ファインズ。共演に『ハリー・ポッター』シリーズのドラコ
役トム・フェルトン。他に2001年『パール・ハーバー』など
のピーター・ファース、2012年6月紹介『コロンビアーナ』
などのクリフ・カーティスらが脇を固めている。
ソニー・ピクチャーズでは一昨年にも、2014年10月に紹介し
た『天国はほんとうにある』『神は死んだのか』を公開して
いるが、本来日本の企業と思っているソニーがキリスト教の
映画というのも、ちょっと不思議な感じもするところだ。
でもまあ需要があればそれに応えるのが企業の理念というこ
となのかな。それにちゃんとヒットもさせているのだから、
他人がとやかく言う筋合いでもなさそうだ。

公開は5月28日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。
なおソニー・ピクチャーズからは、本作に続き6月18日より
『天国からの奇跡』、7月9日より『祈りのちから』がそれ
ぞれ3週間ずつの限定で、同様の体制にて公開される。

『ラザロ・エフェクト』“The Lazarus Effect”
2009年12月紹介『パラノーマル・アクティビティ』や、11年
6月紹介『インシディアス』、15年6月紹介『パージ』など
を手掛けるブラムハウス・プロダクションが放った最新作。
上の作品でイエスキリストは処刑から3日後に復活するが、
本作に冠されたラザロ(ラザラス)というのは、そのイエス
キリストがそれ以前に復活させたユダヤ人の名前。つまり本
作は題名によってその本質が明らかにされているものだ。
それは日本人には馴染みが薄いかもしれないが、本作の制作
者たちにはそのように理解されていると思えるもの。従って
以下の紹介文は、その点はネタバレに当らないないと解釈し
て記すことにする。
物語は、若い女性が記録係としてとある研究室に雇われると
ころから始まる。その研究室では医療従事者が蘇生に掛けら
れる時間を引き延ばし、それによって蘇生の可能性を高める
実験が行われていた。
ところがそのため開発された脳を一時的に活性化させる血清
が思わぬ効果をもたらす。それは血清を投与されて蘇生した
犬において血清の効果が持続し、その効果で犬が患っていた
白内障の症状も改善させたのだ。
斯くして研究の成果に祝杯を挙げる研究者たちだったが…。
それも束の間、研究者たちは無許可の実験を行ったとして契
約違反を告発され、彼らの研究成果の全てが取り上げられる
事態に直面する。
そこで彼らは、実験室が使えなくなる12時間後までに研究室
に忍び込み、再度実験を成功させてその記録を確保しようと
考える。しかしそれが悲劇を生んでしまう。しかも禁断の実
験に立ち入った彼らを待っていたのは…。

出演は、主にインディペンデンス映画で活躍しているマーク
・デュラスと、2010年10月紹介『トロン:レガシー』などの
オリヴィア・ワイルド。
他に、2012年4月紹介『ザ・マペッツ』などのドナルド・グ
ローヴァー、2010年10月紹介『キック★アス』などのエヴァ
ン・ピータース、2013年5月紹介『モスダイアリー』などの
サラ・ボルジャーらが脇を固めている。
脚本は、2008年に“Shutter”というホラー作品を手掛けた
ルーク・ドウスンと、『デスノート』のハリウッド版リメイ
クを担当しているジェレミー・スレイター。
監督は、2012年12月紹介『次郎は鮨の夢を見る』などのデイ
ヴィッド・ゲルブ。因にこの情報は2013年7月1日でも報告
したものだが、随分と違った題材をかなり手馴れた感じで料
理している。
公開は6月11日より、東京は新宿バルト9他で、全国ロード
ショウとなる。

『心霊ドクターと消された記憶』“Backtrack”
2002年『戦場のピアニスト』でのオスカー受賞者で、2004年
8月紹介『ヴィレッジ』などのエイドリアン・ブロディが、
心に闇を持つ心霊ドクターを演じるサスペンス作品。
主人公は娘を亡くした精神分析医。その状況は彼にも責任が
あるらしく、彼はその痛手から立ち直れていない。そんな彼
の許には先輩のドクターが紹介してくれた患者が訪れるが、
治療の成果は覚束ないようだ。
ところがそんな彼の許に1人の少女が現れたことから事態が
動き始める。その少女は彼の前では一言も喋らなかったが、
彼女の残した1枚のメモが彼をある場所へと誘う。そこは彼
の心の闇を解き明かす場所だった。

共演は、2010年9月紹介『デイブレイカー』などのサム・ニ
ール、2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのロビ
ン・マクリーヴィー。他にオーストラリア出身のジョージ・
シェヴィソフ、クロエ・ベイリス、ブルース・スペンス。
脚本と監督は、2011年2月紹介『ザ・ライト[エクソシスト
の真実]』の脚本を手掛けたマイクル・ペトローニが担当し
た。
全体が見事な謎解きを構築している作品で、それはできるだ
け情報を入れずに観て貰いたい作品だ。そこでネタバレは極
力避けたいと思っているが、本作ではチラシのコピーにも上
記の次の段階のことが書かれていて、それは仕方がないかな
あとも思ってしまう。
そこでその部分を書いてしまうと、上記の少女は亡霊という
ことになるが、これが単純な幽霊話ではないところが本作の
見どころと言えるだろう。特に最初はちょっと変に思えると
ころが最後にぴったりと辻褄が合う。その脚本の緻密さは最
近ではなかなか少なくなっているレヴェルのものだ。
しかも幽霊話に特有の切なさみたいなものがしっかりと感じ
られるのも素晴らしかった。

公開は5月14日より、東京は角川シネマ新宿他で、全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『ミモザの島に消えた母』“Boomerang”
『二ツ星の料理人』“Burnt”
『ミスター・ダイナマイト
         ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』
       “Mr. Dynamite: The Rise of James Brown”
『歌舞伎NEXT 阿弖流為』
『海よりもまだ深く』
『劇場版 遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』
『ラスト・タンゴ』“Un tango más”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年04月10日(日) さとにきたらええやん、冬冬の夏休み

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『さとにきたらええやん』
大阪府西成区にある釜ヶ崎で38年間に亙って子供の保護施設
「こどもの里」を運営している一女性と、その施設の模様を
描いたドキュメンタリー作品。
タイトルだけを観ていて、「さと」という言葉には何となく
エコロジー系のドキュメンタリーを連想させるものもあった
が、映画が始まった途端にとんでもない現実を突きつけられ
る思いがした。
釜ヶ崎という地名には、僕自身が子供のころにニュースなど
でよく見た記憶があるが、今回ネットで少し調べてみたら、
それは歴史上の地名であって現実の行政が用いる名前ではな
いようだ。
だから近年の報道では「あいりん地区」などという如何にも
誤魔化しのような地名を目にするようになったが、それも意
味がないわけではないようだ。そんな如何にもあいまいな場
所が舞台となる。
そして巻頭は、狭い道の人込みを猛スピードで走る自転車の
映像。それは被写体でもあり、またカメラの目線にもなる。
こうして観客は釜ヶ崎へと案内されるが、そこは現在でも朝
の職安に人が群がる日雇い労働者の街だ。
そんな中で運営されている「こどもの里」は、母親が夜の仕
事を持っているような子供たちの避難所にもなっている。し
かもその母親には子育ての能力がなく、生まれた子供にもあ
る種の障害がある。
正に負の連鎖とでも呼べそうな状況の中で、それでもその連
鎖を断ち切って子供たちを未来へ羽ばたこうとさせる人々。
そこには公的な支援も先細る中で、自らの健康も顧みずに必
死に活動を続けている姿があった。

監督は、大阪府出身、映像系の専門学校を卒業して制作会社
に入り、その後フリーで活動しているという重江良樹。彼は
2008年から最初はヴォランティアとして「こどもの里」に関
り、2013年から本作の撮影を開始したとのことだ。
従って内情なども知り尽くした眼が、正しく子供たちに寄り
添うようにいろいろな出来事を捉えて行く。それは悲惨さだ
けでなく、将来への希望も描き出す。その眼差しが観る者に
も希望を与える作品だ。
とは言うものの、厳しい現実も明確に描かれた作品で、それ
は安寧の中にいる自分にも突き付けられる。そんな感じにも
捉われた。知らないでは済まされない現実。しかしほとんど
の人には知ることもできない。
そんな現実を知らしめてくれる作品だ。

公開は6月中旬より、東京はポレポレ東中野、大阪は第七芸
術劇場他で、全国順次ロードショウとなる。

『冬冬の夏休み』“冬冬的暇期”
1980〜90年代に起きた台湾新電影の担い手の1人とされる侯
孝賢監督が1984年に発表し、映画祭での受賞に輝いた作品。
その作品がディジタルリマスターされて再公開されることに
なった。
冬冬が小学校を卒業した夏休みの事。お母さんが病気の治療
で手術をすることになり、看病で忙しくなるお父さんは子供
をお母さんの実家に預けることにする。そしてお母さんには
毎週手紙を書くと約束した冬冬は、妹の婷婷と一緒に祖父の
家へと向かうのだが…。
僕自身が子供の頃の夏休みには両親の帰省で滋賀県の田舎に
行っていたもので、その頃に子供たちだけで近所を冒険した
りはよくしたものだ。それは普段は町場に住んでいた僕には
観るもの全てが珍しい、異世界を冒険するような気分だった
のかもしれない。
そんな自分自身の思い出というか、原風景が目の前に繰り広
げられているような感じの作品だった。とは言うものの、僕
自身の子供時代は1960年前後で本作品は1984年。実は最初の
方で台詞に「東京ディズニーランド」という言葉が出てきて
ちょっと驚いてしまった。
1990年に日本公開された作品は、実はその頃にも見ていたは
ずだが、その当時はあまり気にしなかった言葉が今回は気に
なったもので、多分それは物語が自分の子供時代にマッチし
過ぎていたことと現実の時代とのギャップだったのかもしれ
ない。それが以前には気にならなかった。
それにしても、ここに描かれる世界は見事に僕自身にとって
の1960年当時の思い出なのであって、それが台湾の1980年で
あったとしても全く気にならない、そんな思いで観終えてし
まえる作品だ。それは3つの時代に跨っての全く不思議な体
験でもあった。

出演は王啓光と李淑�蓮0�に、王啓光に関しては資料が見つ
からなかったが、李淑�呂聾紊剖眷�獎なども受賞して現在も
台湾のテレビなどで活躍しているようだ。他に侯孝賢監督作
品の常連となる梅芳や、映画監督の楊��昌らが脇を固めてい
る。楊��昌は本作の音楽も担当。
全ての世代の人に通用するかどうかは判らないが、少なくと
も僕と同じ団塊世代には共感が呼べるのではないのかな。そ
うでなくても、中で起きるいろいろな出来事にはそれぞれ共
感や納得の出来るものも多く取り揃えられているし、それぞ
れが面白くも観られる作品だ。

公開は5月21日より、東京は渋谷ユーロスペース他で、全国
順次ロードショウとなる。

この週は他に
『GARMWARS』
『アウトバーン』“Collide”
『ダークプレイス』“Dark Places”
『クリーピー』
『葛城事件』
『王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間』“사도”
『森山中教習所』
『日本で一番悪い奴ら』
『幸福は日々の中に。』
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。



2016年04月03日(日) 団地、帰ってきたヒトラー

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『団地』
2016年1月紹介『ジョーのあした』などの阪本順治監督が、
自ら脚本も手掛けて制作した2013年7月紹介『人類資金』以
来となるドラマ作品。
物語の舞台は大阪市の郊外にある空き家の目立つ団地。登場
するのはその団地に最近引っ越してきた初老の夫婦。夫婦は
近くの商店街で伝統ある漢方薬局を営んでいたが、ある事情
から店を畳んだようだ。
そんな夫婦の許にちょっと奇矯な男が訪ねてくるところから
物語は開幕する。その男は親族のために夫婦の作る漢方薬が
必要だと説明し、特別に薬品を調合して呉れるように懇願。
保存していた薬草で作って貰えることになる。
一方その団地では、子供の虐待など様々な事件が起きている
ようだが、優柔不断な自治会長は中々その解決に当ろうとし
ない。そして自治会長の選挙が行われ、夫婦の夫も他薦でそ
の候補者になる。
ところがその選挙の開票の当日から夫の姿が消える。しかし
妻は意に介していないようで、普段通りの姿を見せ続ける。
その姿が憶測を呼び、夫婦の周囲はただならぬ事態となって
行くのだが…。

出演は、藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、それに
斎藤工。さらに竹内都子、濱田マリ、宅間孝行、三浦誠己、
麿赤兒らが脇を固めている。
本作の後半の展開に関しては、SF映画ファンとして素直に
嬉しく思った。正直に言ってこのクラスの日本の監督がこの
様な展開を描けるとは予想していなかった。しかも的確に描
かれている。
『人類資金』やその前の『亡国のイージス』の流れから考え
るとこれも有かなとは思えるが、全体が大阪土着のこの雰囲
気の中でこれを描くのは相当の確信犯だと言える。そのこと
が僕には嬉しくて仕方のないものだ。
今年は1月紹介の『太陽』に始まって、日本のSF映画に秀
作の多い予感がしたが、その後も『あやしい彼女』『スキャ
ナー』『ひそひそ星』など、すでにBest 10が埋まりそうな
勢いだ。この調子が続くことを期待したい。
なお本作の結末に関してはいろいろ解釈が成り立つもので、
正直にはもう少しヒントがあってもいいかなとも思えるが、
これはこれで良い結末だと言える。「まあ何か判らないけど
良かったね」それで良い作品なのだ。

公開は6月4日より、東京は有楽町スバル座、新宿シネマカ
リテ、ユナイテッドシネマとしまえん他で、全国ロードショ
ウとなる。

『帰ってきたヒトラー』“Er ist wieder da”
2012年に発表されてドイツ本国ではベストセラーになったと
いう長編小説の映画化。
第2時世界大戦末期の1945年に自殺し、遺体はガソリンで焼
かれたとされているナチス総統アドルフ・ヒトラーが現代に
甦る。しかも自殺直前の記憶を持たない総統は当時の記憶の
ままに行動を開始する。
ところがその行動は「ヒトラーそっくりの役者かコメディア
ン」と誤解され、彼の言動は「芸」としてメディアの評価を
受けてしまう。そして特に過激な発言は強烈な風刺と受け取
られ、社会現象となって人気が高まって行く。
斯くして彼はメディアに持て囃され、人気者になって行くの
だが、彼自身は政権の復活を目論んでいた。

出演は、殆んどがドイツのテレビで活躍している俳優たちの
ようで、主演のオリヴァー・マスッチの他には、ファビアン
・ブッシュ、クリストフ・マリア・ヘルブスト、カッチャ・
リーマンなどとなっている。
なお、アドルフ・ヒトラー以外の登場人物の名前が原作のも
のから俳優名に併せて変更されているのは、他に実名で登場
する人物が多いせいなのかな? その辺の製作事情はちょっ
と知りたくなった。
実は原作本の翻訳が出たときに書店で手に取って、後書きに
映画化の情報もあったので買ってしまった。それでも普段は
なかなか読む暇もないのだが、本作は少し読み始めたら止め
られなくなって読み通してしまったものだ。
原作はそれくらいに面白いものだったし、さらに映画化され
たらどうなるのだろうという想いも広がったものだ。従って
期待の映画化ということで、試写状が来て早速観に行ったも
のだが…。
その映画化は、一人称で描かれていた原作に対してそうでは
ない本作の出だしでは多少戸惑ったが、ヒトラーが活躍を始
めるとそんなことは吹っ飛んでしまうくらいの風刺の痛快さ
は全く健在だった。
いやむしろ字面で読んでいるより映像になった分だけ痛烈に
なっているようにも感じられた。ただそれがあまりに生々し
くて、本当に大丈夫なのだろうかと心配にもなってしまった
くらいのものだ。
まあ撮影中は抗議や妨害もあったというから、それだけの問
題作と言えるのだろう。因に、イタリアではムッソリーニを
主人公にしたリメイクが計画されているそうだが、日本では
どうなのかな?

公開は6月。全国ロードショウとなる。

この週は他に
『フラワーショウ!』“Dare to Be Wild”
『シークレット・アイズ』“Secret in Their Eyes”
『ディアスポリス』
『オマールの壁』“Omar”
『ブルックリン』“Brooklyn”
『リリカルスクール未知との遭遇』
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二