| 2015年12月28日(月) |
未体験ゾーンの映画たち2016(ロスト・パトロール、スティンガー、コインロッカーの女、ディスクローザー) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 未体験ゾーンの映画たち2016 『ロスト・パトロール』“A Estrada 47” 第2次世界大戦でヨーロッパ戦線に従軍したブラジル軍兵士 を描き、リオデジャネイロ国際映画祭で主演男優賞と編集賞 を受賞したドラマ作品。 第2次世界大戦中、ドイツとイタリアの艦船に自国の商船を 襲撃されたブラジルは連合軍への参加を決断、25,000人を超 える若者がヨーロッパ戦線へ送られたそうだ。そんな彼らが 着任したのは冬の北部イタリア。南国育ちの若者たちを雪の 降りしきる極寒の世界が待ち受けていた。 しかも突然の敵襲に遭い本隊から逸れてしまった主人公たち の部隊は、彼らの行動が脱走ではないことを証明するため、 本隊に先行してその進撃路に敷設された地雷を撤去すること になる。そこにイタリア軍の脱走兵や負傷したドイツ軍人の 捕虜が加わり、死と隣り合わせの任務が遂行されて行く。 出演は、2008年『ファヴェーラの丘』などのダニエル・デ・ オリベイラ、ラッパーで2011年11月紹介『エリート・スクワ ッド』などのThogun。さらに2007年5月紹介『イタリア的、 恋愛マニュアル』などのセルジオ・ルビーニらが脇を固めて いる。 脚本と監督は、ドキュメンタリー映画出身のビセンテ・フェ ラッツが担当した。 第2次世界大戦関連のブラジルに関しては、終結時の日系人 社会の混乱などは伝わっているが、実際に兵士がヨーロッパ に出兵したとは知らなかった。しかしその事実関係の記録が ほとんど残っていないというのも、本作に描かれている通り なのだろう。 そんな日本人の知らない歴史を教えてくれるのも映画の役割 と思えるものだ。ただ映画の字幕で「枢軸国への参戦」とあ るのは、「枢軸国との闘いへの参戦」と明確にすべきではな いかな。字幕のままでは枢軸国側に参加したようにも取れて 誤った認識になってしまいそうだ。 公開は2月2日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『スティンガー』“Скольжение” モスクワ郊外の闇社会を舞台にしたロシアン・ノアールとで も呼べそうな作品。 開幕は郊外の住宅を包囲する警察隊。麻薬流通監督庁と連邦 保安庁(F.S.B)の共同作戦で麻薬組織のアジトを急襲 する計画は、あと一歩のところで齟齬をきたし、潜入捜査官 の身に危険が迫ることに。 一方、FSBの内部ではおとり捜査のために調達した麻薬の 手当で問題が起きてしまう。さらにはその調達に使った裏金 の始末など、様々な事情が絡まり始める。そして潜入捜査官 は辛くも危機を脱するが…。 出演は、ウラジスラフ・アバシンとアレクセイ・イグナチェ フ。脚本と監督は、本作が長編デビュー作のアントン・ロー ゼンバーグが担当した。 物語は麻薬流通監督庁と連邦保安庁、それに麻薬マフィアの 三つ巴のもので、さらには保安庁内部の汚職なども絡むから かなり複雑。正直には1回観ただけでは充分には理解できて いないものだ。でも雰囲気などは存分に楽しめるもので、正 しくノアールという感じの作品になっている。 ロシア映画も今後はこんな作品が増えてくるのかな。 公開は2月2日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『コインロッカーの女』“차이나타운” 2015年カンヌ国際映画祭の批評家週間に出品され、韓国公開 では自国映画の初登場第1位を記録したという作品。 主人公は、10番のコインロッカーに捨てられていたことから イリョン(韓国語で10の意味)と名付けられた少女。ホーム レスの間で育てられたが、手入れの際に警察に保護される。 ところがその警察からとある女性の許へ。その女性は高利貸 しだが、集金が滞ると負債者の臓器を売って回収するという 悪魔のような女だった。 こうして少女は魔窟のような社会で成長して行くが、ある日 集金に訪れた若い男性の優しい心根に触れてしまう。そして 彼女の運命が回転し始める。 主演は、続けてイ・ビョンホン共演の『MEMORIES追憶の剣』 という作品も日本公開されるキム・ゴウン。共演には2014年 公開『観相師』などのキム・ヘス。さらに『のだめカンター ビレ』の韓国版に出演のパク・ボゴム、コ・ギョンピョらが 脇を固めている。 脚本と監督は本作が長編デビューというハン・ジュニ。 「大切な人は、みんな死んでいく」というのが宣伝コピーだ が、その内のかなりの部分には主人公自身が関与しているの だから、これは強烈な作品だ。しかも見事なドラマが構築さ れている。終盤には観客を震撼とさせるシーンも用意されて おり、これなら批評家週間の上映も納得の作品だった。 公開は2月16日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『ディスクローザー』“Felony” 2013年1月紹介『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジョエル ・エドガートンの製作・脚本・主演でオーストラリアの警官 を描いたドラマ作品。 主人公は銃撃戦の中を身の危険も顧みず突撃して犯人を逮捕 してしまうような熱血刑事。そんな彼がある事件を解決し、 同僚たちと酒を酌み交わし車での帰宅中を悲劇が襲う。彼の 車の前に飛び出してきた自転車の少年を避け切れず、跳ねて しまったのだ。 しかも彼は正直に事故を報告せず、ひき逃げ事件の目撃者を 装ってしまう。それでも何となく事は収まりそうだったが、 そんな彼の様子を新たに着任した刑事が疑いの目を持って追 求し始める。ところがその刑事の行動は上司によって妨害さ れ、斯くして事件は闇へ葬られようとしたが…。 共演は、2013年7月紹介『ローン・レンジャー』などのトム ・ウィルキンスン、2015年7月紹介『ターミネーター:新起 動/ジェニシス』などのジェイ・コートニー、2009年6月紹 介『30デイズ・ナイト』などのメリッサ・ジョージ。 監督は、テレビシリーズを多数手掛け、本作が長編2作目の マシュー・サヴィエルが担当した。 実は2015年5月に「カリテ・ファンタスティック!シネマコ レクション2015」を紹介した際に提供されたサンプルDVD はあと3作品ほどあって、その1本の『最後まで行く』とい う韓国映画がよく似た内容だった。 ただし韓国映画の方がもう少しどぎついというか、人間模様 などがかなり複雑で、その点で言うと本作の方が理解し易い かな。でもその辺は観る人の好き好きにもよるといった感じ のものだ。因に製作年度は本作が先に出来ている。 公開は2月20日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。 * * 来年の「未体験ゾーンの映画たち2016」では全部で50本が 上映される予定で、その内から本ページでは11月29日付紹介 2本を併せて10作品を紹介できた。 ただし今回紹介した中では、SF映画ファン向けと言える 作品が『エリザベス 神なき遺伝子』『アフターデイズ・ボ ディ』『ラバランチュラ』くらいしかなく、その点では少し 残念だったが、元々このシリーズは「ファンタスティック映 画祭」ではないのだから、これは仕方ないことだろう。 それよりも今回の上映では『ロスト・パトロール』『コイ ンロッカーの女』のように、一般興行でも通用しそうな作品 が増えてきているもので、これは今後の展開にも期待したく なってくるものだった。良い映画をたくさん観られるのは、 何と言っても嬉しいことだ。
| 2015年12月27日(日) |
未体験ゾーンの映画たち2016(スウィート・ホーム、アフターデイズ・ボディ、ラバランチュラ、アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ3) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 未体験ゾーンの映画たち2016 『スウィート・ホーム』“Sweet Home” 2008年3月紹介『●REC』などシリーズ全作の製作総指揮 を務めたカルロス・フェルナンデスが仕掛けるアパートが舞 台のサスペンス作品。 主人公は不動産ブローカーの女性。彼女が担当するアパート の周囲では再開発の動きが顕著になり、担当する物件からも 居住者の退去が相次いでいた。しかし彼女はただ1人居残る 老人を守るため最善の努力を続けていた。 そんなある日のこと、彼女は預かっている鍵を使ってボーイ フレンドを空き室に連れ込むのだが…。そこに居残る老人を 暴力的に排除しようとする連中が現れ、何と老人を殺害。そ の現場を観た彼女とボーイフレンドに魔の手が迫る。 出演は、スウェーデン出身でスペイン映画でも活躍するイン グリッド・ガルシア・ジョンソン。彼女は2014年に主演した “Hermosa juventud”でゴヤ賞にもノミネートされている。 他に2014年7月紹介『記憶探偵と鍵のかかった少女』に出て いたというブルーノ・セビラ、スタントマンでもあるオリオ ル・タリーダ・ホメデスらが脇を固めている。 脚本と監督は2012年3月紹介『[●REC]³ ジェネシス』で 本国の予告編を担当していたというラファ・マルティネスの 長編デビュー作となっている。 『●REC』シリーズでは3作目からアパートを飛び出して しまったが、本作はそこに回帰した感じの作品だ。とは言え 物語のテーマは全く違ってしまった。僕としてはアパートで 展開される『●REC』の新作も観たいものだが。 公開は1月2日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『アフターデイズ・ボディ 彼女がゾンビと化した世界』 “Contracted: Phase II” 2013年12月29日付「未体験ゾーンの映画たち2014」で紹介し た『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日 間』の続編。 物語はちゃんと第4日からスタートし、第6日までが描かれ る。今回も克明にゾンビ化の様子が描かれるもので、その描 写はかなりえぐい。でもまあそれが目的の作品だから、それ は認めないといけないものだろう。 ただし今回の展開では、前作にもちょっと出ていた謎の男が クローズアップされ、事件の全容を操る男の存在が描かれ始 める。それはその男が企んだ全人類をターゲットとする陰謀 のようなのだが…。。 主演は、前作に引き続いてのマット・マーサー。他にマリア ンナ・パルカ、モーガン・ピーター・ブラウン。また前作で 主演のナジャラ・タウンゼントらも登場する。 脚本と監督は共に長編デビューで、監督は“Thumb Wars”に 参加していたというジョシュ・フォーブス、脚本はクレイグ ・バレンジャクが担当している。因に前作の脚本製作監督を 手掛けたエリック・イングランドはノータッチのようだ。 実は上記した概要はほぼ結末まで書いているもので、本作に 描かれる物語はまだ完結していない。従って“Phase �掘匹� 当然あるものと考えられるもので、来年あたりそれが観られ ることが楽しみだ。 公開は1月2日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『ラバランチュラ全員出動!』“Lavalantula” 1984年『ポリスアカデミー』などで人気を博したスティーヴ ・グッテンバーグが主演するデザスター・コメディ。 映画の都ハリウッドが舞台の作品。その町でスター気取りの 主人公は、一時はスーパーヒーローもので人気を博したが今 やその栄光も過去のものという俳優。生活は何とかなってい るが、妻や息子にも少し疎まれているようだ。 そんな彼が気の乗らない撮影を放り出して帰宅の途中、突然 ロサンゼルスを地震が襲い。背後の山地では噴火が起きて町 には地割れなどの異変が生じる。しかもその地割れからは溶 岩を吐き散らす巨大なクモの群れが出現し…。 とまあ何とも滅茶苦茶な展開の物語だが、それなりに映画界 の裏話などもあって、さらには映画の特殊効果スタッフたち が災害を食い止めるために大活躍をするという。これは映画 ファンには堪らない作品になっていた。 共演は『ポリ・アカ』シリーズでも共演のマイケル・ウィン スロー、マリオン・ラムジーとレスリー・イースターブルッ ク。「全員出動!」は『ポリ・アカ2』に添えられたものだ が、正にそういう感じの作品だ。 グッテンバーグの名前は『ポリ・アカ』が抜群だろうが、僕 にとっては、1985年の『コクーン』や1986年の『ショート・ サーキット』が懐かしい俳優だ。しかしその俳優は1987年の 『ポリ・アカ4』でシリーズを降板、以後はよりメジャーな 作品を目指すが徐々に姿を消していた。 そんな俳優の復活作でもあるものだが、そこに昔の仲間が再 結集しているというのも嬉しい話だ。因に本作には、2016年 公開予定で“2 Lava 2 Lantula!”という続編も予定されて いるそうだ。 公開は1月5日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
『アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ3』 “I Spit on Your Grave 3” 2013年12月29日付「未体験ゾーンの映画たち2014」で紹介し たシリーズの第3弾。 前回の紹介のときにも書いたが、僕は今回のシリーズの1作 目は観ていなかった。ただし1978年のオリジナル版『発情ア ニマル』は観る機会があり、前作では舞台も変ってシリーズ はそんなコンセプトで進むのかと思っていた。 ところが本作はシリーズ第1作の正当な続編に相当するもの で、しかもその第1作はオリジナル版の完全なリメイクでは なかったようだ。ということで物語の前提が理解できるか多 少心配になったのだが…。 心配はご無用。何と本作では第1作のハイライトが主人公の 回想の形でかなり丁寧に再録されており、これでシリーズ第 1作の内容もそれなりに理解できたものだ。といってもまあ 内容が内容なので、さほど重要な話ではないが。 ただしお話は凌辱された女性の壮絶な復讐劇だから、これは 爽快とまでは言わないものの、それなりに理解は持って観ら れたもので、これなら下種な下心は無くても観られる感じは したものだ。 主演は第1作から復活のサラ・バトラー。他には1956年から 2010年まで続いた長寿番組“As the World Turns”で近年版 に出演のジェニファー・ランドンや1990年『アラクノフォビ ア』に出演のハーレイ・ジェーン・コザックなどベテラン俳 優が脇を固めている。 監督は、2013年に“100 Degrees Below Zero”という作品が 日本公開されているはずのR・D・ブラウンシュタイン。脚 本は前2作の製作や、2012年のテレビ版“The Philadelphia Experiment”にも関ったというダニエル・ギルボーイが担当 した。 公開は1月9日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 他でロードショウとなる「未体験ゾーンの映画たち2016」の 1本として上映される。
| 2015年12月20日(日) |
ザ・ガンマン、鉄の子、アイリス・アプフェル、ディーパンの闘い、新劇場版 頭文字D |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ザ・ガンマン』“The Gunman” 2012年2月紹介『きっとここが帰る場所』などのショーン・ ペンが初めてアクション映画に挑戦したという作品。 物語の背景はコンゴ民主共和国の内戦。その紛争地帯で主人 公はヨーロッパの民間警備会社から派遣され、空港建設工事 の警備に従事していた。しかしそれは表向きで、その裏側で は別の任務の準備が進んでいたのだ。その一方で彼には、現 地で医療に携わる恋人もいたが…。 遂に本社から指令が届き、主人公はスナイパーとして政府要 人の暗殺を実行することになる。しかもその任務の遂行後は 直ちにアフリカ大陸からの退去が命じられており、主人公は 恋人に別れも告げぬまま現地を離れなければならなくなる。 それから8年の歳月が流れる。 主人公は再びアフリカの地に舞い戻り、今度は銃を持たずに NGOで井戸掘りの作業に従事していた。しかしその作業場 が襲われ、反撃に転じて襲撃者を撃破した主人公は、彼らの 目標が自分自身であった確証を得る。斯くしてヨーロッパに 戻った彼前で8年前の関係者が次々殺されていった。 共演は、2008年3月紹介『ノー・カントリー』などのハヴィ エル・バルデム、2001年12月紹介『息子の部屋』などのジャ スミン・トリンカ。他に、2013年7月紹介『パシフィック・ リム』などのイドリス・エルバ、2012年6月紹介『スノーホ ワイト』などのレイ・ウィンストンらが脇を固めている。 監督は2009年6月紹介『96時間』でリーアム・ニースンを アクションスターにしたピエール・モレル。制作会社はニー スン主演で2014年7月紹介『フライト・ゲーム』を発表した シルヴァ・ピクチャーズ。元々『マトリックス』シリーズな どで一世風靡した会社だが、また勢い付いてきたようだ。 そして脚本は、ジャン=パトリック・マンシェット原作『眠 りなき狙撃』に基づくもので、その原作からペンと、2008年 2月紹介『バンテージ・ポイント』などの監督のピート・ト ラヴィス、さらに1998年版『アベンジャーズ』などのドン・ マクファーソンらが脚色している。 「ショーン・ペンが初めてアクション映画に挑戦した」とい うフレーズは試写前に宣伝担当者が言ったものだが、確かに シルヴァ作品への参加という点ではその通りだろう。しかし 本作には様々なアクションシーンも描かれているものの、物 語の本質は世界情勢も背景としたかなりポリティカルなもの だ。そしてペンは本作の脚本、製作にも名を連ねている。 それはこの脚本がペン自身の体験にも基づいているからだそ うで、実際にハイチでの救援活動などにも熱心なペンが、現 地で交流した元特殊部隊員などの話を織り込んで脚本が創ら れているのだそうだ。そんなオスカー俳優の思いも込められ た作品になっている。 公開は2月6日より、東京は新宿バルト9ほかで全国ロード ショーとなる。
『鉄の子』 オールドファンには『キューポラのある町』で知られる埼玉 県川口市を舞台にした子供の成長が主題の家族ドラマ。 主人公は鋳物工場が並ぶ町で母親と2人暮らしだった少年。 そこに同年の少女連れの男性が母親の再婚相手としてやって くる。しかもその少女と同級生となった少年は、最初は反発 するがやがて少女も同じ思いと気付き、再婚した両親を離婚 させるべく共同戦線を張ることにする、が…。 出演は、ボーイズ集団EBiDAN所属の佐藤大志と、2010年12月 紹介『毎日かあさん』などの小西舞優。それに田畑智子と、 2012年11月紹介『ユダ』などの裴ジョンミョン。さらにお笑 いのスギちゃんらが脇を固めている。 脚本と監督は、埼玉中心の活動で本作が3作目の福山功起。 因に試写前の挨拶によると、本作は監督の実体験に基づいて いるのだそうだ。 思春期の子供たちが巻き起こす大人の想像を超えた行動を描 く作品ということでは、2012年3月紹介『先生を流産させる 会』などもあるが、本作はさらに現実的に子供たちの身辺に 起きる出来事として考えさせられるものになっている。 ただし本作では物語がその点に絞り込まれておらず、結末も 両親の生活態度など子供たちの行動とは異なる次元の話で進 んでしまうもので、その点が少し歯痒くも感じてしまった。 監督の実体験に基づくのであれば、もっといろいろな思いも 込められたと思えるし、その辺で少し物足りない感じもして しまう作品だった。 しかも母親が夜の商売というのは…。川口という土地柄の反 映なのかも知れないが、内容的にはPTA的な方向も考えて もよかったのではないかな。そんなことも考えてしまった。 老婆心ながら。 公開は2月13日より、東京は角川シネマ新宿、また埼玉県は MOVIX川口ほかで全国順次上映となる。
『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』“Iris” 1921年生まれ、94歳にしてニューヨークのファッションアイ コンと呼ばれる女性の姿を追ったドキュメンタリー作品。 アイリスはニューヨーク州クィーンズでロシア系ユダヤ人夫 妻の1人娘として生れた。一家はガラスと鏡のビジネスで成 功していたようで、母親はファッションブティックも営んで いたという。 そんな環境で育った彼女は、ニューヨーク大学で美術史を学 んだ後に美術学校にも通い、卒業後はインエリアデザイナー の助手なども務める。そして結婚した夫と共に織物工場を立 ち上げ、伝統的なデザインに基づく様々な意匠を考案。 さらにその研究のために世界中を旅して各国々の衣装やイン テリアなどを収集して行く。こうして独特のファッションセ ンスを磨いたアイリスは、メトロポリタン美術館で特集を組 まれるほどの名声を築いたのだ。 そんなアイリスの行動や生活、さらに意見などが見事に集約 されたドキュメンタリーになっている。 監督は、1969年『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・ シェルター』などのアルバート・メイズルス。2015年3月に 他界した監督の最後の作品となったようだ。 高齢化の進む近年では、いろいろな境遇にいる高齢者の姿を 追ったドキュメンタリーは何本も観ている気がするが、自分 自身がそちら側に近い年齢になっていると、痛々しいという か、何となく観ていて辛い気分にもなってしまう。 その点で言うと本作に登場する94歳の女性は、正しくそんな 高齢者に勇気を与えてくれる存在と言えそうだ。しかも本作 では、その女性に対し見事にファッションアイコンとしての リスペクトを持って捉え切っている。 観ていて元気が貰えるような作品だった。 公開は3月5日より、東京は角川シネマ有楽町ほかでロード ショウとなる。
『ディーパンの闘い』“Dheepan” 戦乱の母国を逃れてヨーロッパで暮らす難民の姿を描き、昨 年のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたドラマ作品。 主人公はスリランカで反政府系の戦闘員だったが、政府軍に 追い込まれ、とっさに女性とその女性が連れてきた女の子を 家族に仕立ててヨーロッパへと脱出する。そして辿り着いた フランスでは、郊外のアパート団地で管理人の職を得て生活 の基盤を得る。 ところが彼の担当する棟の集会スペースは不良のたまり場と 化しており、その団地の向いの棟にはギャング団らしき連中 が出入りしていた。そんな中でも連れてきた少女を学校に通 わせ、女性にも向いの棟に住む老人の介護の職が来て貧しい ながらも生活も安定して行くが…。 そんな彼の生活に新たな試練が襲い掛かってくる。 出演は、実際にスリランカの反政府軍「解放の虎」に入隊し ていたというアントニーターサン・ジェスターサン、南イン ドの劇団に所属していたカレアスワリ、スリニバサン、それ に撮影時9歳のカラウタヤニ・ヴィナシタンビ。 脚本と監督は、2012年12月紹介『君と歩く世界』などのジャ ック・オディアール。今回はタミル語を話す俳優たちと通訳 を介しての演出で、新たな世界を繰り広げている。 元々はサム・ペキンパーの『わらの犬』のような構想だった そうだが、そこに難民問題を織り込むことで物語は大幅に変 化している。その難民は現在のヨーロッパでは重大な社会問 題であり、そこに一石を投じる作品にもなりそうだ。 難民問題に関しては、政府の方針が国際基準を満たしていな い日本では、なかなかその状況を理解し難いが、大量難民を 受け入れる一方でテロにも遭うヨーロッパの現状をこういう 映画を観て少しでも理解したいものだ。 それにしても日本の観客は、エピローグのこの映像で主人公 らがどこに行ったのか理解できるのかな? 公開は2月12日より、東京は日比谷のTOHOシネマズシャンテ ほかで全国公開となる。
『新劇場版 頭文字D Legend 3−夢現−』 2005年6月紹介『頭文字D』と同じ原作を映像化する劇場用 アニメーション作品。 漫画家のしげの秀一が1995年から2013年まで発表した原作の 映像化に関しては、テレビのアニメシリーズやその劇場版、 さらにOVAなどで多様に展開されているようだが、本作は 2014年から『新劇場版』として新たに展開されているもの。 ただし前2作『Legend 1−覚醒−』と『Legend 2−闘走−』 は試写の案内が貰えなかった。 ということで今回は『Legend 3−夢現−』が初観賞になった が、冒頭には前2作のダイジェストが添えられており、その 間の経緯などは理解できるようになっていた。とは言うもの の、元々が峠のレースバトルを様々なテクニックを駆使して 勝利して行くことが主題の作品だから、その過程を観られな いのは多少残念には思えたものだ。 でもまあそれらは原作の通りなのだから、読者ファンならそ れでもOKなのかな。そして本作ではそれらのバトルで注目 を集めるようになった主人公と、赤城最速と言われた男との 究極のレースが描かれる。 監督は『ポケモン』などを手掛ける日高政光の総監督の許、 前作も担当した中智仁が務めている。 またドライヴィングなどのテクニックの監修には現役レース ドライヴァーが起用され、重量感や物理法則の則った車両の 動きなどが3DCGによって忠実に再現されているそうだ。 さらにエンジン音や走行音なども実際の走行で生収録した音 が使用されている。 という迫力の作品だが、さらに公開時には今月初めの『ボク ソール★ライドショー』でも紹介した4DXでの上映も行わ れる。実は本作の4DXによる完成披露試写会が来年1月末 に予定されており、それも観に行くつもりなので、その報告 は改めてしたいと思っている。 公開は2月6日より、全国ロードショーとなる。
この他に今週は 『蜃気楼の舟』 『ふたりの死刑囚』 『別れた女房の恋人』 『牡蠣工場』 『ネコのお葬式』 を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2015年12月13日(日) |
フォースの覚醒記者会見、これが私の人生設計、白鯨との闘い、オートマタ、ゾンビスクール!、ジェンダー・マリアージュ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒記者会見」 12月18日18:30の世界一斉公開を目前に、監督と主演者3人 による来日記者会見が行われた。 とは言うものの、本編の試写は行われておらず、作品を観て いない状況での質問というのは至難の業だ。そんな中での記 者会見だったが、案の定、出てくる質問は日本の印象など他 愛のないものばかり。 それに対する主演の若い2人の回答も、原宿が楽しかっただ の、秋葉原で沢山買い物をしただので、これでは質問は作品 に関するものに限るという事前の取り決めにも反するのでは ないかという感じだった。 因に僕は監督に対して「原案はジョージ・ルーカスというこ とだが、その原案の創られたのはいつ頃だと思うか?」とい う質問をしたかったが、質問がテレビのレポーター優先で、 しかもその数3問で終わりでは…。 とは言うものの収穫が全くなかった訳ではなくて、「全く明 かされていない物語の中に何か日本向けのものはないか?」 という質問に対して、一旦は「No!」と答えた監督が「実は 惑星の名前に日本の地名を付けた」とのことだ。 その地名は会見場では実名が出されたが、監督が初めて来日 した際に宿泊した場所とのこと。皆さんには本編が公開され たらそれを観て気付いて欲しいものだ。 そしてもう1点、会見最後の写真撮影に登場したドロイドの BB−8には正しく度肝を抜かれた。 このドロイドは予告編にも出てきているので、その動きなど は承知していたが、それは多分CGIだろうと思っていた。 ところが会見場に登場したドロイドが、正にその通りの動き を目の前でして見せたのだ。 それは着ぐるみなどではない純粋にメカニカルなもので、吊 りワイアーなどもなかったが。それが多分リモコン操作で実 に軽快に会場を動き回って見せた。その動きを観られただけ でもこの会見に来た価値を見い出せたものだ。 試写を観られないので多分今後も本編の紹介はできないが、 記者会見の報告だけさせて貰っておく。
『これが私の人生設計』“Scusate se esisto!” 1970−80年代にローマ郊外に建設された集合住宅の再生計画 を背景に、様々な社会状況を軽快なタッチで感動的に描き上 げたイタリアンコメディ。 主人公は田舎町の出身だが建築を学んで海外に雄飛し、特に ロンドンで実績を積んだ女性建築士。そんな彼女が母国イタ リアに帰って新たな挑戦を始めようとするが…。女性は恋愛 の対象としか考えない男性社会では中々思うようには成果を 上げられない。 そんな中で集合住宅の再生計画に応募した彼女は、男性社会 で勝ち抜くためのある秘策を考え着く。ところがそれが様々 な波紋を呼んでゆき、さらには大きく社会を動かして行くこ とになる。そんな未来のために奮闘する女性の姿がユーモア たっぷりに暖かく描かれる。 監督は、「イタリア映画祭2014」で上映された『ようこそ、 大統領!』などのリッカルド・ミラーニ。主演は監督夫人の パオラ・コルッテレージ。他に2010年9月紹介『シチリア! シチリア!』などのラウル・ボヴァ、2012年『K2〜初登頂 の真実〜』などのマルコ・ボッチらが脇を固めている。 物語には保守的社会におけるマイノリティの問題も深く描か れており、それがクライマックスを迎えるシーンはかなり感 動的なものだった。その中には僕自身が弱小チームのサポー ターとして「成程、そうなのか」とニヤリとするものも含ま れており、胸を突かれたものだ。 公開は2016年3月5日より、東京は新宿ピカデリーほかにて ロードショウとなる。
『白鯨との闘い』“In the Heart of the Sea” ハーマン・メルヴィルが『白鯨』を執筆するために取材した 実話に基づくとされる3Dドラマ作品。 時は1850年、ナサニエル・ホーソーンの『緋文学』が話題を 呼んでいるアメリカ文学界で1人の作家が次作の構想を巡ら してた。彼の名はハーマン・メルヴィル。捕鯨船に乗り組ん だこともあるという作家は、捕鯨船員に伝わる伝説を物語に しようとしていた。 ところが彼が訪ねた伝説の起源を知るとされる老船員は中々 重い口を開こうとしない。しかし作家の熱意に触れた老船員 は長年連れ添った妻にも話せなかった航海の話を始めるが。 それは巨大な白い鯨との遭遇を軸に、人間性の極限にも関る 重大な物語だった。 出演は『マイティ・ソー』などのクリス・ヘムズワースと、 2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのベンジャミ ン・ウォーカー、2014年5月紹介『トランセンデンス』など のキリアン・マーフィ。他にベン・ウィショー、ブレンダン ・グリースンらが脇を固めている。 監督はオスカー受賞者のロン・ハワード、ストーリーと脚本 は2002年4月紹介『光の旅人』などのチャールズ・レヴィッ トが担当した。 物語はメルヴィルの時代には口にすることも憚られるような 出来事を描いたもので、その辺は現代の映画だから描くこと ができるということなのかもしれない。でもそれをちゃんと 描いたというところも評価すべきだろう。 それに加えて本作の物語とメルヴィルの『白鯨』との繋げ方 も巧みなところで、成程これならと納得できるものだった。 この辺の巧みなドラマ作りにも感心する作品だった。 公開は2016年1月16日より、東京は新宿ピカデリーほかにて 2D/3Dロードショウとなる。
『オートマタ』“Automata” 試写会場でアントニオ・バンデラス初の本格SF作品と紹介 された作品。 時は2044年、太陽風の異変によって地表は砂漠化し、人類は ロボットの助けなしには生きて行けない状況となっている。 そんな状況下で開発されたロボットには、1:生命体に危害 を加えてはいけない。2:自らを修理改造してはいけない。 という制御機能が組み込まれた。 そして主人公は、そんなロボットの開発会社から派遣される 調査員。彼はロボット嫌いの刑事に破壊されたロボットを調 査する内、そのロボットが何者かの手で改造され、制御機能 2が無効にされていた事実を突き止める。 そこでさらなる調査に乗り出した主人公だったが、謎の組織 に襲撃されてカーチェイスの末に砂漠で車が横転。気を失っ た主人公が目覚めたとき、彼はロボットの一団と共に砂漠を 何処へともなく進んでいるところだった。 共演はデンマーク出身のビアギッテ・ヨート・スレンセン。 さらに1988年『ワーキング・ガール』でオスカー候補のメラ ニー・グリフィス、共に2015年9月紹介『サバイバー』に出 演のディラン・マクダーモットとロバート・フォースターら が脇を固めている。 脚本と監督は、2008年『シャッター・ラビリンス』で長編デ ビューのガベ・イバニェスが担当した。 宣伝はロボット物で売るのだろうが、SFファンとして観え る物語は人類とA.I.の関係を描いたものだ。それは物語の最 後に流れる音楽がそれを示しているもので、そこで流れるの は“Daisy Bell”。 これは1961年にベル研究所のコンピュータが初めて歌った曲 であり、『2001年宇宙の旅』で機能停止されるHAL 9000が最 後に歌う歌なのだ。つまりこれは本作の物語が人類とA.I.の 関係を描いたものであることを示している。 そこで翻って本作を考えると、主人公とロボットの一団の砂 漠の旅は『2001年』で木星に向かう旅であり、目的地の直前 での戦いはボーマンとHAL 9000の戦いにも重なってくる。そ してその結末は…。そんな意味も感じられる作品だ。 さらに本作は、長年ロボットSFの決まりだった「アシモフ の3原則」を覆した作品でもあり、これはA.I.時代の新たな ロボット像を描いた作品と言えるものにもなっている。SF ファンは見逃してはいけない作品だ。 公開は2016年3月5日より、東京は新宿ピカデリーほかにて 全国ロードショウとなる。
『ゾンビスクール!』“Cooties” 製作総指揮に『スター・ウォーズ』のヘイデン・クリステン セン、製作に『パラノーマル・アクティビティ』のスティー ヴン・シュナイダーと、主演も務めるイライジャ・ウッドが 名を連ねるというゾンビ映画。 主人公は地元の小学校に国語の教師としてやってきた男性。 実は小説家を目指してNYに出たが、夢を諦めて故郷に舞い 戻ったのだ。そんな彼は教員室で昔の恋人とも再会するが、 彼女にはすでに体育教師のマッチョな婚約者がいた。 そしてその日の給食に出たのは地元名産のチキンナゲット。 ところがそれを食べた生徒たちに異変が起きる。突然子供た ちが凶暴になり、先生たちを襲い始めたのだ。しかもその標 的は校外にも向き始め…。 共演は、2011年4月紹介『スコット・ピルグリムvs.邪悪な 元カレ軍団』などのアリスン・ピル、2011年5月紹介『メタ ルヘッド』などのレイン・ウィルスン。 そして本作では脚本と製作総指揮も務める『ソウ』シリーズ などのリー・ワネルと、2011年9月紹介『グリー/ザ・コン サート』などのイアン・ブレナンらが脇を固めている。 子供が大人を襲うというテーマでは、1976年の『ザ・チャイ ルド』など著名な作品もあるが、本作はそれを継ぐものにな れるのかな。取り敢えずPTAが顔をしかめそうな作品には なっている。 しかも、そこにこのスタッフ・キャストの顔触れが揃ったと いうのも凄い作品だ。 公開は2016年2月20日より、東京はシネマサンシャイン池袋 ほかにて全国ロードショウとなる。
『ジェンダー・マリアージュ全米を揺るがした同性婚裁判』 “The Case Against 8” 2005年5月に一度は合法とされたカリフォルニア州の同性婚 だが、同年11月オバマが当選した大統領選挙と一緒に行われ た住民投票でその禁止法(提案8号)が可決される。その是 非を巡って5年に及んだ裁判を描いたドキュメンタリー。 映画はAmerican Foundation for Equal Rights(AFER) という団体が訴訟を決めるところから始まる。この団体は当 初よりこの訴訟のために作られたものではあったが、そこに 2人の強力な助っ人が現れる。その2人は弁護士のテッド・ オルスンとデイヴィッド・ボイス。 彼らは2000年に行われたブッシュ対ゴアの大統領選挙に関連 して、その投票の有効性を巡る裁判を両陣営に分れて争って きた関係者で、特にブッシュ陣営のボイスが今回の弁護団に 入ることは予想されていなかった。 しかし彼らが参画したことで裁判の行方は一気に全米の注目 を浴びることになる。そしてまず原告の選考が開始される。 ここで原告は純粋に同性婚を求める人でなければならず、さ らに相手から無用な追及を受けないことが重要とされる。 斯くして2組カップル4人の原告が選出され、弁護士と共に カリフォルニア州最高裁から裁判が開始される。しかしこの 裁判は被告側にあの手この手の画策によって、連邦最高裁ま で5年に及ぶものになってしまうのだ。 因に映画ファン的には、裁判の被告が当時のカリフォルニア 州知事アーノルド・シュワルツェネッガーだったことは記し ておきたい。ただしこれは手続き上のもので、シュワルツェ ネッガー本人は映像には登場しない。 そして映画では、正にドラマティックな展開も含めて裁判の 顛末と、そこに至るまで舞台裏の状況などが克明に描かれて 行く。それは百戦錬磨の弁護士までもが感動を表明するほど の見事な作品だった。 製作と監督は、2013年11月紹介『愛しのフリーダ』などを手 掛けたライアン・ホワイトと、2006年『不都合な真実』にも 携わったというベン・コトナー。作品は正に裁判の最初から 最後までを克明に綴ったものだ。 日本でも東京の渋谷区や世田谷区で同性パートナーの権利が 登録によって認められる運びとなっているが、本作はさらに 同性を婚姻として認めるというもので、日本とアメリカの意 識の違いを見るなり突きつけられてしまった。 今回先に紹介した『これが私の人生設計』でもマイノリティ の問題が扱われているが、正にこれらが差別の問題であるこ とを日本人の観客は明確に理解しなければいけない。そこに ある差別の意識が全てに関ることなのだ。 しかもそれを我関せずという態度で見過ごすことも、さらに 差別を増長させるということも理解しなければいけない。未 だに差別発言を平然と繰り返す政治家がまかり通っている日 本の現状も考えさせられる作品だ。 公開は2016年1月30日より、東京はシネマート新宿、大阪は シネマート心斎橋ほかにて、全国順次ロードショウとなる。
この他に今週は 『クーパー家の晩餐会』“Love the Coopers” 『リリーのすべて』“The Danish Girl” 『ロイヤル・コンセルトヘボウオーケストラがやって来る』 “Om de wereld in 50 concerten” 『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』“5 Flights Up” 『背徳の王宮』“간신” 『再会−禁じられた大人の恋』 を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。
| 2015年12月06日(日) |
の・ようなもの、IT FOLLOWS、DENKI GROOVE、ボクソール★ライドショー、TOO YOUNG TO DIE、Tokyo Comic Con初開催発表記者会見 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『の・ようなもの の ようなもの』 2011年に急逝した森田芳光監督が1981年に発表したデビュー 作「の・ようなもの」のその後を、森田作品の多くで助監督 を務めた杉山泰一が初監督で描いた作品。因に杉山監督は、 2015年7月紹介『TNGパトレイバー首都決戦』の助監督も 務めている。 物語は、落語家の家に内弟子修行している若者が行方不明の 兄弟子を探して右往左往する前半と、後半ではその兄弟子の 新作落語をものにしていこうとする姿が描かれる。それに師 匠の娘などが絡む青春ドラマ。 主演は、森田監督の遺作となった2012年2月紹介『僕達急行 ・A列車で行こう』にも主演した松山ケンイチ。それに北川 景子。さらに伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、内海桂子ら のオリジナルの登場人物と、森田作品に所縁の俳優たちが脇 を固めている。 昔はよく落語も聞いたし、最近は列車旅も好きな僕にとって この作品は、物語の前半ではいろいろな列車が登場して森田 監督の遺作を髣髴とさせ、オマージュも感じ取れた。 そして後半では、伊藤の「黄金餅」は過去に名演を聞いてい る僕には懐かしさの反面物足りなさが募った。しかし松山の 墓前のシーンはそれを補って余りあるもの。これは全編も聞 きたくなった。さすが松山ケンイチと思わせたものだ。 公開は1月16日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード ショウとなる。
『IT FOLLOWS』“It Follows” 本作が2作目という新鋭監督によるかなり斬新なアイデアの ホラー作品。 主人公は田舎町の女子大生。ある日行きずりの男と一夜を共 にした彼女は、その男から「それ」を移したと告げられる。 「それ」は凶悪な殺人者で、いろいろに姿を変えて移された 者を殺すまで付き纏うという。また「それ」は他人に移すこ ともできるが、その移された者が死ぬと元に戻ってくるとい うのだ。 こうして恐怖の状況に陥れられた主人公は、幼馴染の仲間と 共に対策を練り始めるが…。 「うつす」という言葉には「伝染す」という漢字も充てられ るが、状況などから何となくエイズのイメージが付いてしま いそうなので、敢えて「移す」としてみた。 でも、脚本も手掛けた監督にも近いイメージはあるのかな。 そんな誰にでも忍び寄り、伝染ったら逃れられない現代の恐 怖を象徴するような作品だ。 主演は、2014年公開『ザ・ゲスト』でも準主役を張っていた マイカ・モンロー。因にこの作品は試写を観たが、自分のテ リトリーではないと判断したので紹介はしなかったもの。し かしそれなりの秀作だったとは記憶しているものだ。 そして脚本と監督は、2010年に“The Myth of the American Sleepover”という作品を発表したデヴィッド・ロバート・ ミッチェルが担当した。この監督には今後も注目してよさそ うだ。 公開は1月8日より、東京はTOHOシネマズ六本木ヒルズほか で全国ロードショウとなる。
『DENKI GROOVE THE MOVIE? 石野卓球とピエール瀧』 近年は俳優としても活躍するピエール瀧の原点であるテクノ ユニット「電気グルーヴ」を追ったドキュメンタリー作品。 2013年公開『恋の渦』(2014年1月紹介『愛の渦』の中で言 及)などの大根仁監督による作品だが、実はユニットの片割 れである石野卓球のウィキペディアを観るとほぼ本作と同じ であって、その辺を実に手際よく纏めた作品と言える。 実際に音楽に疎い僕とってピエール瀧は、電気グルーヴの存 在は知っていたが俳優としての認識の方が強かった。しかし 本作を観てその存在の大きさは認識できた。しかもその存在 の大きさが尋常でないことも良く理解できた。 そしてその中でのピエール瀧の位置づけも成程と理解できた もので、これで瀧のイメージが変わるかとも思っていたが、 そうではなかったものだ。でもまあ電気グルーヴという音楽 ユニットの凄さは理解できた。 テクノという言葉には何となくSFに通じるところもあって シンパシーも感じるところだが、今後の彼らの活動がどのよ うな方向に向いていくのか、その辺も含めていろいろ期待も 湧いてしまう作品だった。 公開は12月26日より、東京は新宿バルト9ほか全国の映画館 にて、2週間限定の年越しロードショウとなる。
『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』 2015年5月紹介『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』などの 白石晃士監督が、同じく5月紹介『お化け屋敷列伝/戦慄迷 宮MAX』の公開にも採用された4DXシアター専用に制作し た作品。 内容は、深夜にすすり泣く女性の声が聞こえるという廃校に 若い女性3人が白石監督自らが演じるカメラマンと共に潜入 するというもの。そのカメラマンの名前が田代なのだから、 これはまんま『戦慄怪奇ファイル』の一環の作品だ。 そしてその映像はそのまま劇場に配信されているという設定 で、実時間で物語は進んで行く。ただまあ展開はお化け屋敷 のようなもので、次から次にいろいろな驚かしのシーンが続 いて行くものだ。 しかもそれが4DXということで、椅子が動いたり背中をど んと突かれたりの衝撃も次々に襲ってくる。さらに5月紹介 の作品は後付けだったが、今回は最初からそれが目指されて いる訳で、雨は降るわ風は吹くわのオンパレードだ。 因に本作は25分の短編だが、それでもかなり濡れるほどの水 量で、これが長編だったら…と思ってしまったもの。ただし 各座席には水の噴射に関してはON/OFFスイッチが設けられて いるものだ。降ってくるのは水だけではないが。 そして今回は、ユナイテッドシネマ系列での4DXシアター のお披露目ということもあって、本編の上映前にはカーチェ イスを描いたプロモーション映像と、『スター・ウォーズ/ フォースの覚醒』の予告編も4DXで上映された。 その中でも『スター・ウォーズ』の空中戦のシーンは、これ は一度体験したいと思わせるもの。さらに公開時には映像も 3Dになるとのことで、これは本格的にアトラクションにな りそうだ。 『ボクソール★ライドショー』の公開は1月16日より、東京 はユナイテッドシネマとしまえん他、全国の4DXシアター で上映される。
『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』 連続テレビ小説『あまちゃん』などの宮藤官九郎が脚本監督 を手掛けた地獄の亡者を題材にした作品。 主人公は、憧れの女子に思いを伝えられないまま修学旅行の バスで事故に遭い、何故か彼だけが地獄に落ちてしまった高 校生。その地獄からは現世に戻ることも可能だが、その姿は 閻魔の裁定により人間とは限らない。 しかも7回の黄泉がえりの間に天国に行けないと、地獄の鬼 にされてしまうという。そんな状況下で主人公は、何とか自 分の思いを彼女に伝えようとするのだが…。現世と地獄の時 間差で時がどんどん過ぎてしまう。 という物語と、先に地獄に来て既に鬼になってしまっている 先輩の音楽を、天国に行った家族に伝えようとするお話。そ んな2つのミッションを達成しようとする主人公の奮闘ぶり が描かれる。 出演は2007年6月紹介『遠くの空に消えた』などの神木隆之 介と、2008年11月紹介『ヘブンズ・ドア』などの長瀬智也。 他に桐谷健太、古田新太、宮沢りえ、坂井真紀、中村獅童ら が脇を固めている。 地獄を描いた作品は過去にもいろいろあるが、その中で宮藤 官九郎らしさはそれなりに表現されていたと思える。ただ、 主人公は最終的に2つのミッションに関る訳だが、僕的には 後半の物語をもう少し丁寧に描いて欲しかったかな。 とは言え本作はすでに2時間超えの作品で、これ以上に盛る ことは難しい。それに対して前半を短くすることは、多分若 い観客に歓迎されないのだろう。その辺が悩ましい作品だっ た。 公開は2月6日より、全国ロードショウとなる。
「Tokyo Comic Con初開催発表記者会見」 ポップカルチャー・ファンにはお馴染みのコミコンが2016年 12月3日、4日に幕張メッセで開催されることになり、その 告知記者会見が行われた。 その呼びかけを行ったのはアップル創業者の1人スティーヴ ・ウォズニアックで、登壇したウォズニアックは「テクノロ ジーとエンターテインメントの融合を目指すイヴェントで、 来年4月にシリコンバレーで開催した後、12月に日本開催す る」との計画を発表した。 これはサンディエゴで開催されているいわゆるコミコンとは 異なるもののようだが、協力者にはマーヴェル社のスタン・ リーも映像で紹介されたもので、正にプロが主宰するコミコ ンになるようだ。 日本側の受け入れ態勢がどのようなものになっているのかな どは全く不明だが、シリコンバレーでは元々あったローカル コンがウォズニアックの参加表明で一気に膨れ上がったとの ことで、そのネームヴァリューなどが活かされることになり そうだ。 取り敢えず楽しみにして待つことにしたい。
今回は1週間に試写で観た全作品を紹介する予定だったが、 それは時間的にかなり難しいようだ。 因にこの週は他に 『LIVE!LOVE! SING!生きて愛して歌うこと』 『クリード/チャンプを継ぐ男』“Creed” 『虹蛇と眠る女』“Strangerland” を観たが紹介できなかった。申し訳ない。
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