| 2013年07月30日(火) |
ニーナ、サイコメトリー、サイド・エフェクト、人類資金、ホワイトハウスD、ビザンチウム、フローズン・グラウンド、Cハーロック |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ニーナ/ローマの夏休み』“Nina” 昨年の東京国際映画祭「コンペティション」で上映された作 品。コンペ作品なので会期中に鑑賞して10月28日付けで纏め て紹介もしているが、今回は日本公開を前にした試写を観直 したので改めて紹介する。 物語の背景は夏のローマ。バカンス中で人影もまばらなその 街に主人公のニーナは東洋への留学を夢見、その勉学のため に居残っている。そして彼女はバカンスに行く友達に頼まれ て老犬の世話をしたり、研究者について習字の練習をしたり もしている。 さらに本来は小学校の音楽教師である彼女は、内緒で声楽の コーチをしたり…。その他に町には、アパートの子供管理人 や、犬の散歩中に出会ったチェリストの男性や、数人の人々 は暮らしているが、町の全体は普段の喧騒が嘘のように静寂 で厳しい日差しだけが町に溢れている。 脚本・監督のエリザ・フクサスは、世界的に著名な建築家の 娘だそうで、彼女自身も大学では建築学を学んだが、卒業後 にニューヨークで映画制作と脚本のワークショップに参加。 2006年からミュージックヴィデオやドキュメンタリー、短編 映画などを手掛けた後の長編デビュー作となっている。 因に、監督が好きなのはデヴィッド・リンチとフェデリコ・ フェリーニだそうで、彼らの作品にも通じる幻想的な物語が 展開されて行く。ただし物語はあまりテーマ性のあるもので はなく。実は映画祭で鑑賞したときには意味が良く判らなか った。 このため今回試写を観直したものだが、結局監督は物語を重 視していないようで、ただバカンス中の普段の喧騒とは違う ローマが印象的に描かれている作品だった。それが東京の文 化人には心地良さにもなったようで、数多くの人たちから賛 辞が寄せられているようだ。 東京に暮らす人間にとっては、ヨーロッパのバカンスは想像 するものでしかないが、もし日本にもバカンスがあって、東 京がこんな風景になったらそれはそれで面白いだろうとは思 えてくる。 なお映画では、建築家専攻だった監督らしくローマの様々な 建物も随所に収められており、物語の後半でそこに幻想的な ものが登場してくるのは、なかなかのシーンになっていた。
『サイコメトリー〜残留思念〜』“사이코 메트리” 2010年6月紹介『パラレルライフ』のクォン・ホヨン監督に よる新作。 監督はデビュー作の前作でも「平行理論」という奇妙な題材 を扱ったが、本作では物体に触るだけでそれが過去に関った 事象を感じ取ることの出来るサイコメトリーという超能力に ついて描いている。 主人公は、多少問題児の刑事。その刑事の勤務地で幼女誘拐 事件が起きる。そのとき主人公は最初から事件性を主張する が、身代金の要求もない状況に失踪届けは24時間は受け付け ない原則の警察署は初動捜査に遅れ、事件は最悪の結果とな る。 ところがその捜査中に主人公は不思議な出来事に遭遇する。 それは街角の壁に書かれたグラフィティに警察が明らかにし ていない事件の詳細が描かれていたのだ。そこに手掛かりを 見出した主人公は、そのグラフィティを描いた人物の行方を 追いかけるが…。そして次の事件が起きる。 サイコメトラーを描いた作品は他にもあると思うが、本作で は一般の人間とは異なる能力を持つことの苦しみが巧みに描 かれる。そしてそれが韓国刑事映画特有の激しいアクション と絡まって、見事なエンターテインメントに仕上げられてい る。 また能力の表明の仕方がグラフィティというのも上手いとこ ろを突いてきたものだ。 出演は、2010年12月紹介『男たちの挽歌』などのキム・ガン ウと、テレビドラマ『花より男子』などのキム・ボム。他に 昨年2月紹介『青い塩』に出ていたというモデル出身のイソ ム、2009年韓国版『白夜行』などのパク・ソンウン、子役の ギム・ユビンらが脇を固めている。 グラフィティが鳥瞰図で、何故そうなのかという理由がハト に触ってそのヴィジョンを感じ取ったというのは、オスカー ・ワイルド作「幸福な王子」を思い出させて、その無償の行 為の崇高さを感じさせた。 そして描かれたグラフィティも、かなりシュールレアリステ ィックな大作で、グラフィティの専門家との準備に1ヶ月、 構図の決定に1週間、そして作画作業に100時間を費やして いるそうだ。映画の中で全貌が出るのは一瞬だが、眼を凝ら して観て欲しい。
『サイド・エフェクト』“Side Effects” 2008年11月紹介『チェ』2部作などのスティーヴン・ソダー バーグ監督による本年ベルリン国際映画祭出品作品。 本作における題名の意味は、医薬品の副作用。生活の不安か ら自殺未遂に至ったと診られた女性が、鬱病の新薬を処方さ れる。ところがその新薬が夢遊病を引き起こす。そしてそれ が重大な結果を招いてしまう。 このため新薬を処方した医師は、その責任追及の矢面に立た されることになるが…。 出演はジュード・ロウ、昨年1月紹介『ドラゴン・タトゥー の女』などのルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョー ンズ、同4月紹介『君への誓い』などのチャニング・テイタ ム、同4月紹介『だれもがクジラを愛してる。』などのヴィ ネッサ・ショウ。 脚本は、2006年のオスカー受賞作『不都合な真実』の製作を 務め、ソダーバーグ監督の『インフォーマント!』(2009年 10月紹介)と『コンテイジョン』(2011年10月紹介)の脚本 も担当したスコット・Z・バーンズ。 バーンズは、彼と共に本作の共同製作に名を連ねる精神科医 サシャ・バーデイ博士の協力を得て、10年以上掛けてこの脚 本を完成させた。因にバーンズは、当初は自ら監督も手掛け る計画だったが、完成した脚本を見たソダーバーグが強く監 督を希望し、譲ったのだそうだ。 宣伝コピーには「ソダーバーグが初めて挑んだヒッチコック 風サスペンス」とあったが、確かに男女の交錯する物語はそ れ風という感じもするものだ。ただしヒッチコックなら主要 なキャラクターの中に金髪女性を配するが、ソダーバーグは そこまではしなかったようだ。 とは言うものの、ソダーバーグ監督なら後半の展開にはもっ と別のものもあるのではないかと思わせたが、そこまでも含 めてヒッチコック風というのなら、その通りという感じのも のだった。 なお以前に監督は、「今は映画が最高の表現手段だと考えて いるが、別の表現手段が見つかったら映画は止める」と語っ ていた。それに関連して本作では「劇場で公開される作品は 最後にする」とのことで、遂にその日が来たようだ。 ところが監督はその後に“Behind the Candelabra”という TVムーヴィを発表。また来年度向けにはTVミニシリーズ の制作も進んでいるようで、映像から離れることはなさそう だ。
『人類資金』 2005年公開の映画『亡国のイージス』の原作者福井晴敏と、 監督阪本順治が再び手を組んだポリティカルフィクション。 なお本作は書下ろし原作で、映画の公開に前後して原作本が 出版される予定のようだ。 戦後日本の詐欺事件を何度も賑わしたM資金。そのMを人類 =Mankindと位置づけ、その資金をめぐる日米間の攻防戦が 描かれる。 そして主人公は、M資金詐欺を繰り返している男。実は父親 がM資金の行方を追う過程で不慮の死を遂げた過去があり、 彼自身もM資金にはそれなりの知識も持っている。そんな主 人公が突然M資金の渦中に身を置くことになる。 それは終戦時に旧帝国軍が秘匿していた金塊を奪取しM資金 を創設した人物の子孫が仕掛けた戦略で、彼はM資金を人類 資金として低開発国の支援に充てようとした。しかしM資金 を共同管理するアメリカ側がそれ妨害していたのだ。 そこで彼は、主人公の協力を得て時価10兆円とされるM資金 を奪い、自らの目的を進めようと考えた。その手段は巧妙な 詐欺の手口だったが…。アメリカ側はそれを察知し、さらに 彼が始めた支援策も押し潰そうと画策する。 出演は、佐藤浩市、香取慎吾、森山未来、観月ありさ。その 周りを岸部一徳、オダギリ・ジョー、寺島進、三浦誠己、石 橋蓮司、豊川悦司、ユ・ジテ、ヴィンセント・ギャロ、仲代 達矢らが固めている。 また撮影では、日本映画で初とも言われる国際連合ビル周辺 での交通遮断や本会議場でのクライマックスシーンを始め、 厳冬のハバロフスク、灼熱のタイ、さらにニューヨーク市内 など作品のスケールに合わせた国際ロケーションが行われて いる。 M資金を扱った映画では、2011年5月に『日輪の遺産』を紹 介しているが、本作はその続きと言って良いような作品だ。 一応、架空事件物ということで、SFの範疇にも入る作品だ が、SF映画とするには多少躊躇してしまう。それはあくま でも僕の感覚的なものだが、大嘘ならもっとでっかく吐いて 貰いたいというか、何か妙な後ろめたさが作品に感じられる せいかもしれない。その辺で多少物足りない感じはある。 でも日本映画にしてはスケールの大きな作品だし、何とか頑 張って欲しいものだ。
『ホワイトハウス・ダウン』“White House Down” 今年4月紹介『エンド・オブ・ホワイトハウス』に続いて、 米大統領府ホワイトハウスがテロリストに襲撃されるお話。 『エンド・オブ・ホワイトハウス』と7月紹介の『レッド・ ドーン』の敵役が続けざまに北朝鮮だったので今回はどうか なと思ったら、さすがに違う相手だった。 そのホワイトハウスの主は反戦主義の大統領で、彼は世界の 平和に向けて確実に歩み続けていたが、国内の特に軍人や軍 需産業に関係する国防族からは眼の敵にされる存在だった。 その大統領が国際会議でまた平和への一歩を進め専用ヘリで 官邸に帰ってくるところから物語は始まる。 一方、大統領府には1人の男性が面接に訪れていた。議会警 備官の彼は元海外派兵の兵士で、戦場の経験を活かしたいと 願う彼は、大統領を警護するシークレットサーヴィスを目指 していた。しかし面接では戦場での優秀さに比べて議会警備 での評判の悪さが指摘され、採用は拒否されてしまう。 それでも女性秘書官から大統領府の入館証を2枚手に入れた 彼は、離婚した妻の許にいて彼とは疎遠になりつつある娘を 見学に誘う。彼女はホワイトハウスオタクで、現大統領は彼 女にとってヒーローだった。こうして父娘は大統領府の見学 ツアーに参加するが…。 4月の作品では軍隊による緻密に計算された襲撃だったが、 それに比べると本作の襲撃はかなりラフな感じがした。でも まあそれなりのアクションで展開されると、これも起きない とは言い切れないものにはなっている。特に国内からの襲撃 は可能性も高そうだ。 そして対抗するのは、4月の作品が元シークレットサーヴィ スで館内に詳しかったのに対して本作は部外者。しかしその 分、観客にも判りやすく説明されるし、過去の映画や都市伝 説的な情報も登場したりして、興味を繋ぐことは周到に行わ れていた。 出演は、ジェイミー・フォックスとチャニング・テイタム。 他にマギー・ギレンホール、4月紹介『欲望のバージニア』 などのジェイスン・クラーク、2011年5月紹介『モールス』 などのリチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ウッズらが 脇を固めている。 『アメイジング・スパイダーマン』などのジェームズ・ヴァ ンダービルト野脚本から、『2012』などのローランド・ エメリッヒが監督した。 実はすでに公開されたアメリカでの評判が芳しくなくて、心 配しながら観に行ったが、最後にかなり感動的なシーンを置 くなど、なかなか巧みに作られた作品だった。タイミング的 に二番煎じのそしりは免れないが、これはこれでアクション 映画としては面白い作品だったと言える。
『ビザンチウム』“Byzantium” 1984年『狼の血族』や1994年『インタビュー・ウィズ・ヴァ ンパイア』のニール・ジョーダン監督が、久々に挑戦したゴ シック・ロマン作品。 登場するのは姉妹のように見える2人の女性。少し年上の女 性クララは奔放に男を漁っているが、年若の女性エレノアは 人目を避けるように生活している。そんな2人がうらびれた 浜辺のリゾート地にやってくる。 そこでクララは遊園地で出会った男が貸間をやっていると聞 き、言葉巧みにその男を丸め込む。そしてその男が所有する 廃業したホテルに居座ると、街角にいた若い女たちを集めて 娼館を始めてしまう。 一方、エレノアは老人介護施設で働く青年に声を掛けられる が、いつもの通り素っ気無い素振りでそれに応じてしまう。 しかし彼の持つ孤独感には奇妙な親近感を覚えるのだった。 そして彼女たちには19世紀から続く長い物語があった。 そんな彼女らを2人の男が追っていた…。 出演は、2010年4月紹介『プリンス・オブ・ペルシャ:時間 の砂』などのジェマ・アタートンと、2007年12月紹介『つぐ ない』でオスカー候補になり、2011年5月紹介『ハンナ』や 昨年7月紹介『ウェイバック〜脱出6500km〜』にも出演のシ アーシャ・ローナン。 彼女らの周りを今年5月紹介『オン・ザ・ロード』などのサ ム・ライリー、4月紹介『アンチヴァイラル』などのケイレ ブ・ランドリー・ジョーンズ、それに2006年2月紹介『イー オン・フラックス』に出演のジョニー・リー・ミラーらが固 めている。 若い女性の吸血鬼ということでは、ハリウッド製のシリーズ の他にも、2011年5月『モールス』や2011年10月『ブラディ ・パーティ』などを紹介しているが、ヨーロッパ発信の作品 が男性吸血鬼との関係を微妙に描いているのは面白い。それ が特に本作では丁寧に描かれており興味深かった。 因にジョーダン監督は、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパ イア』では男性吸血鬼を描いている訳で、本作はそれと対に なる作品とも言える。ただしその1994年作では、キルスティ ン・ダンストが演じた少女吸血鬼も登場しており、本作はそ の続きと言えるかもしれない。 その本作では『モールス』でクロエ・グレース・モレッツが 演じた少女吸血鬼にも繋がる切なさも見事に描かれており、 クリストファー・リーらが怪奇に演じてきた吸血鬼は、彼女 らによって新たな次元に突入しているようだ。 なお本作は、イギリスの劇作家モイラ・バフィーニが2008年 に発表した舞台劇に基づき、原作者自身が脚本も手掛けてい る。
『フローズン・グラウンド』“The Frozen Ground” 1980年代にアラスカ州で起きた連続殺人事件の実話に基づく 作品。 主人公は州警察の刑事。しかし彼は気の乗らない仕事に石油 企業への転職を決めていた。そんな彼の許に1人の女性が保 護を求めてくる。彼女は街娼だったが、金で誘われた仕事先 で暴行を受け、銃でも狙われて逃げてきたというのだ。 そのころ町の郊外では、熊が掘った穴から女性の遺体が発見 され、しかもその遺体は銃で撃たれていたことが判明する。 ところがアンカレッジ市警察は娼婦の証言を重視せず、事件 はうやむやになろうとしている。 そこで主人公は、州警察の権限で事件の捜査を進めることに するが、広いアラスカの荒野が相手では証拠を集めることに も困難が付きまとっていた。それでも地道に捜査を続ける主 人公は、徐々に犯人を追い詰める。 事件は最終的に犯人が司法取引をしても、裁判で懲役461年 が言い渡されたという凶悪なもの。しかし司法取引以前には 17件の殺人を自白し、まだ余罪がある可能性もある。しかし それは闇の中だという。 物語はこの捜査の模様に、当時17歳だった娼婦の行動や、裏 の人間を使って娼婦を亡き者にしようとする犯人の動きなど も絡めて、アラスカの大自然を背景にサスペンスフルに展開 されて行く。 出演は、ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック、それに 2011年4月紹介『エンジェル・ウォーズ』などのヴァネッサ ・ハジェンズ。他にラダ・ミッチェル、カーティス‘50¢’ ジャクスンらが脇を固めている。 脚本と監督は、ニュージーランド出身、ヨーロッパのマーケ ティング業界に長く居てソニーPSが1億ドルを掛けた世界 戦略の責任者の1人だったとされるスコット・ウォーカー。 その後に映画界に身を投じての長編デビュー作だ。 監督は、当初は別の連続殺人鬼の映画の企画を進めていた。 しかしその過程で参考とした本件に興味が湧き調査を進めた が、まだ事件から日も浅く、関係者の多くも現存する事件に は躊躇いも大きかったという。 しかし事件発覚の切っ掛けとなった女性が全面的に協力し、 彼女の「もっと早く私が誘拐され、レイプされて脱出してい たら、もっと多くの女性が生きていたかもしれない」という 発言に映画化を決意したとのことだ。 その他にも、今だに行方不明の被害者の関係者の多くも制作 に協力しているようだ。
『キャプテン・ハーロック』 松本零士が1977年に発表した宇宙海賊コミックスを、CGI アニメーションで映画化した作品。 物語の背景は、遠い未来か、遠い過去かもしれない時代の大 宇宙。その大宇宙に進出した地球人類はその無辺の広がりに 寂寥し、母星への帰還を求める。しかし膨大な人口となった 人類に地球はその全てを受け入れる余地がなかった。 こうして始まった「カムホーム戦争」で、地球側の切り札と なったのが4隻のデス・シャドウ級戦艦。その4番艦の艦長 の名はハーロック。ところが戦いが地球側の勝利に終わり、 地球が立ち入り禁止の聖域となったとき、叛旗が翻る。 ハーロックは自ら宇宙海賊と名告って、地球政府への反乱を 始めたのだ。何故ハーロックは反乱を開始したのか? その 真の目的は…? そして地球政府は民衆の英雄となりつつあ るハーロック暗殺計画を進めていた。 この物語に、海賊に憧れハーロックが率いるアルカディア号 に乗り組むことに成功する若者や船の要となる異星人、そし てハーロックの過去などが絡んで、大宇宙のドラマが展開さ れる。 声優は、ハーロック役を小栗旬、若者役を三浦春馬。他に、 蒼井優、古田新太、福田彩乃。さらに人気声優の森川智之、 坂本真綾、沢城みゆき、小林清志、大塚周夫らが脇を固めて いる。 監督は、2004年『アップルシード』などの荒牧伸志、脚本は 『人類資金』と同じく福井晴敏が担当している。 それにしても、「『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』って こんな話だったかなあ?」というのが映画を観ての最初の印 象。僕は原作コミックスも読んでいないし、昔のアニメも観 ていないが、何か聞いている印象を違う感じがした。 でもまあこれがジェームズ・キャメロンに絶賛され、すでに 76以上の国と地域に公開が決まったというのだから、これで 正しいのだろう。ただ『人類資金』と同様にSFの衣は着て いるがSFではないという感じの作品だ。 福田の脚本は、2005年の『戦国自衛隊1549』のときも、 これはSFではないと感じたものだが、これがこの人の本質 なのだろうし、それが一般的には受けているのだから、それ は認めない訳にはいかない。 でも本物のSFを期待する者には寂しいところだ。しかしそ れが現実ということだ。ただし物語の始めの方で、ロープを 使って振り子で相手の船に乗り込むのは、無重量状態ではお かしいことは指摘しておきたい。そんな作品だ。
| 2013年07月20日(土) |
ローン・レンジャー、共喰い、おしん、ストラッター、美輪明宏、マッキー、セブン・サイコパス、私は世界の破壊者となった(書籍) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ローン・レンジャー』“The Lone Ranger” 『POTC』のジェリー・ブラッカイマー製作、ゴア・ヴァービ ンスキー監督、ジョニー・デップ主演のトリオが再び顔を揃 えて贈る往年の人気テレビシリーズからの映画化。今年夏の ディズニー映画の掉尾を飾る2時間30分の超大作。 物語の背景は、19世紀半ばの西部。鉄道の敷設が進み未来の 波が押し寄せようとする未開の地で、白人とインデアン、盗 賊団とテキサスレンジャー、さらには騎兵隊や怪しげな娼館 の女主人、事件の陰に潜む巨悪も絡んでの壮大な物語が展開 される。 お話は、東部で法律を学んだ青年が開通したての鉄道で故郷 に帰ってくるところから始まる。その列車では極悪人のキャ ヴェンディッシュも護送中で、その奪還を目指す悪党一味に 列車が襲われる。この時、主人公は同乗していたインデアン と共に獅子奮迅の活躍で最悪の事故は防ぐのだが… 映画は、のっけから巨大な蒸気機関車の暴走で始まり、最後 までほぼこの鉄道にまつわるアクションが展開される。この ためロケ地には全長8km、一部複線のレールが敷設され、迫 力を増すため実際より大きく建造されて時速64kmで走行可能 な機関車を使って撮影が行われているとのこと。さらに転覆 シーンも実物大の車両をワイアーで操演しているそうだ。 なおプロローグとエピローグ、それに中間にも1933年のサン フランシスコが登場するが、この年号はアメリカのラジオで オリジナルのドラマ放送が始まった年。映画はそこには触れ ないが、思わずニヤリとしたところだ。 原案と脚本は、『POTC』のテッド・エリオットとテリー・ロ ッシオ、それに今回は2008年『レボリューショナリー・ロー ド』などのジャスティン・ヘイズが原案と脚本で参加。全体 は『POTC』のスケール感がそのまま西部に再現された感じの アドヴェンチャー・ストーリーになっている。 共演は、タイトルロールをアーミー・ハマーが演じる他に、 ヘレナ・ボナム=カーター、トム・ウィルキンスン、ジェー ムズ・バッジ・デール、ウィリアム・フィクトナー。さらに 今年1月紹介『アンナ・カレーニナ』が映画デビューのルー ス・ウィルスン、子役で本作が映画デビューのブライアン・ プリンスらが脇を固めている。 5月20日付で特別映像を紹介した時には、主人公のテーマ音 楽である「ウィリアム・テル序曲」がどこで使われるか気に なっていた。それがエンドロールに流れるのは予想通りだっ たが、もう1箇所、正に絶妙という感じでその曲が流れたの には、思わず全身の毛が逆立つ感じだった。 勿論これは往年のテレビシリーズに思い入れのある人に限ら れるが、僕はその音楽を聴くためだけにも、もう1度映画館 に足を運びたくなる、そんな感じがしたものだ。
『共喰い』 2007年8月紹介『サッド ヴァケイション』などの青山真治 監督の新作。 青山監督の作品では、デビュー作『Helpless』とカンヌ受賞 作の『EUREKA』、そして『サッド ヴァケイション』 までを、監督の出身地である北九州市が舞台の「3部作」と するようだが、本作は北九州市門司区の対岸下関を舞台に、 これも奥深い人間ドラマが描かれている。 主人公は、父親とその愛人と共に暮らす高校生。生みの母親 も近くに住んでいるが、その母親は戦災で片手の手首から先 が無かった。そんな母親は戦後に父親と結婚し主人公を産ん だが、主人公を残して家を出たのだった。 そして主人公には同級生の恋人がいて、彼女とは肉体関係も あったが、主人公はある不安に苛まれていた。それは母親と の離婚の原因でもある父親の危険な性癖のこと。そしてその 血は自分にも確実に流れていた。 男の暴力に耐えながらしたたかに生きて行く女たち。しかし その忍耐が限界を超えたとき、女はさらに偉大な力を持って 男を圧倒する。そして時代は、昭和から平成に変わろうとし ていた。 出演は2011年2月紹介『高校デビュー』などの菅田将暉と、 2006年アミューズオーディションでグランプリの木下美咲が 若いカップルを演じ、他に光石研、篠原友希子、田中裕子ら が脇を固めている。 物語は田中慎弥の同名小説によっているが、原作はそのまま 撮っても長編映画にはならない長さだったそうで、本作はそ の原作から2011年6月紹介『大鹿村騒動記』などの荒井晴彦 が見事な脚色を施したものになっている。 その脚色は、脚本家曰く「ロマンポルノにしたかった」のだ そうだが、監督の青山もその意向を受けて、見事に昭和のロ マンポルノの味わいを作品に描き込んでいる。この脚色には 原作者も脱帽したそうだ。 そして俳優たちも見事にその意気を感じさせる演技を披露し ているものだ。特に木下が、数回ある過激なシーンも体当た りで見事に演じきっているのには感心した。また三石のサイ コぶりも良かった。
『おしん』 1983〜84年に放送されて一世を風靡、その後は東南アジアを 中心に世界にも発信された連続テレビ小説の映画化。 正直に言って「何を今さら」という感じで、高を括って試写 を観に行った。しかし巻頭の幼い少女が吹雪の中を歩いてく るシーンには「何かが始まりそうだ」という予感を抱かせ、 以後の展開は現代にも通じる定番の感動が描かれていた。 映画の物語はオリジナルテレビシリーズの前半、主人公おし んの幼少期を描くもので、7歳にして奉公に出され、様々な 苦労の中で人との出会いや別れが描かれる。その中には日露 戦争を背景にした脱走兵などもいて社会性も描かれる。 ただまあ、全体はオリジナルのダイジェストであって、それ は多少深みに欠ける感じもするが、今さらオリジナルの再放 送を観る時間もない者には、これで充分に作品を味わえるも のになっている。 因に僕はオリジナルのシリーズをちゃんとは観ていないが、 それでも知っているような名場面の連続で、観ていてなるほ どと思えるような作品になっていた。それは各シーンが見事 に再現されているということでもある。 ただしおしんの出立のシーンは、オリジナルは奇跡的な晴れ の天候で撮影されたと伝えられるが、本作では雪が降りしき る中。その映像がより強く主人公の行く末を暗示しているよ うで見事だった。 出演は、おしん役に約2500人のオーディションから選ばれた という濱田ここね。その両親役を上戸彩と稲垣吾郎。また昨 年の「美少女コンテスト」で審査員特別賞の井頭愛海。そし てオリジナルでおしんの母親役を演じた泉ピン子。 さらに岸本加世子、小林綾子、吉村実子、満島真之介、乃木 涼介、ガッツ石松らが脇を固めている。 監督は、2008年2月紹介『あの空をおぼえている』などの冨 樫森。以前から子役の扱いは上手い監督と承知していたが、 本作でも見事にその手腕が発揮されている。因に監督は山形 県の生まれだそうで、その故郷にかける思いも本作には反映 されているようだ。
『ストラッター』“Strutter” 昨年の東京国際映画祭「world cinema」で上映された作品。 1992年『ガス・フード・ロジング』などで知られるアリスン ・アンダース監督がカート・ヴォスと共同で監督し、1987年 『ボーダー・レディオ』、1999年“Suger Town”に続く3部 作の完結編となっている。 なお本作の製作には、クエンティン・タランティーノ、ガス ・ヴァン・サントらアメリカ映画界の鬼才たちが支援の輪を 広げたとのことだ。 物語は、ロッカーの男が突然恋人から別れを告げられ、さら にバンドのメムバーからも脱退宣言をされ、その失意の中で もがき苦しみながらも、徐々に自らを立て直して行こうとす る姿を描いている。 実は試写を観ていてかなりの既視感に囚われた。それで本作 は昨年の東京国際映画祭でも上映されているので、その際に 観たのかとも考えたが、昨年の鑑賞リストを見直してもそれ はなかった。 それでも既視感は変わらないのだが、本作はそのような映画 を長年観てきた者に対する親しみというか、見事に共感を呼 ぶ作品になっているようだ。そしてそれは僕にとって実に気 持ちの良い感覚だった。 そこには挫折のどん底に置かれた主人公がいて、その主人公 自身はもはややる気も失いかけているのだが、そんな気持ち が僕の胸にはストレートに響いてきて、そこから立ち直って 行く姿が心地よく感じられたものだ。 映画を観ていてこんな共感は滅多に感じられるものではない し、そんな体験も過去にはほとんど覚えがないが、本作では そんな稀有な体験をしてしまった。これは他人と共有できる ものではないが、僕の心にはいつまでも残りそうだ。 出演は、ミュージシャンで短編映画にも何本か出演している フラナリー・ランスフォードと、短編映画の監督で出演は初 めてのエリーズ・ホランダー。他はダンテ・ホワイト=アリ アーノ、クレグ・スタークら主にミュージシャンの面々が脇 を固めている。 僕は音楽のことはよく判らないが、本作には主演者も含めて ミュージシャンの出演も多く、実際に彼らが自作自演する生 の楽曲も数多く登場しているようだ。そんなミュージシャン の出演で音楽シーンを描いた作品。 元々共同監督のカート・ヴォスも自らバンドを率いていると のことで、それは音楽愛好家には音楽に対する慈愛に溢れて いると取れるようだ。そしてそれは部外者の僕にとっても全 てが心地よく、観終って全てがハッピーに感じられるような 作品だった。
『美輪明宏ドキュメンタリー〜黒蜥蜴を探して〜』 “Miwa, à la recherche du lézard noir” 最近ではテレビのヴァラエティ番組でもお馴染みのシャンソ ン歌手の姿を、フランスの映画監督パスカル=アレックス・ ヴァンサンが追った作品。 僕自身は美輪明宏が丸山明宏だった時分から知っている世代 で、ちょっと日本人離れした風貌のシャンソン歌手は、高英 男などと共に一時はテレビでもよくその歌声を聞いていた。 だからその丸山明宏が、突然「ヨイトマケの唄」を歌った時 にはかなり衝撃を受けたものだ。因に僕の子供の頃には、近 所で家の新築の時などにヨイトマケはよく行われていたし、 僕自身も遊びで綱を引かせてもらった記憶もある。 そしてその丸山が美輪に変身したのには違和感も感じたが、 今やその美輪の方が当たり前になってしまった。そんな世代 の僕にとって、この作品はかなり注目だったし、フランス人 がどう描いたかも興味津々だった。 そういう目で観て本作は、僕にとっては多少物足りない部分 もある反面、若い人や外国の人には実に上手く美輪を伝える 作品になっているように思えた。実際この作品はフランスで 紹介されたものだから、これはこれで充分と言える。 とは言うものの、例えば「ヨイトマケの唄」の誕生の経緯は もう少し詳しく聞きたかったし、『黒蜥蜴』に出演する経緯 も三島由紀夫に請われたという話は、判っていれば判るけれ ど、もう少し詳しく話して欲しかった感じもした。 その一方で、日本における同性愛差別に関しては、歴史学者 の解説も交えて説明がなされるもので、これはある意味で新 たな知見でもあって面白かったが、これを美輪のドキュメン タリーに入れることには多少の異論も生じそうだ。 でもまあそれも含めて本作は『美輪明宏ドキュメンタリー』 である訳で、その点は満遍なく描かれている。 なお作品では、横尾忠則へのインタヴューや、アーカイヴだ が映画版『黒蜥蜴』を監督した深作欣二の発言なども挿入さ れており、その制作までの経緯なども面白く興味深かった。 因に、ヴァンサン監督はこの映画版『黒蜥蜴』を観て美輪の 妖艶さに魅了され、本作を作り上げたとのことだ。 しかし美輪の舞台は『黒蜥蜴』だけではなく、ジャン・コク トーや寺山修司の作品もあるもので、それらへの言及がほと んどされていないのは、やはり本作に物足りなさを感じると ころだ。
『マッキー』“ఈగ” 昨年3月紹介『ロボット』がインド・タミル語映画でのNo.1 ヒット作、今年3月紹介『きっと、うまくいく』がヒンディ ー語のNo.1。そして本作はインド東南部テルグ語映画のNo.1 ヒット作だそうだ。 ただし、今回上映されたのはヒンディー語の吹き替え版で、 題名はそのヒンディー語によるもの。テルグ語では“eega” となる。因にテルグ語版では上映時間が145分のようだが、 今回は125分の国際版で上映された。 主人公はお調子者の貧乏青年。彼は向かいの家に住むマイク ロ・アーティストの女性に片思い中だが、彼女は恵まれない 子供を助ける慈善家でもあった。そして彼女が寄付を募るた め、とある建設会社を訪れたことから物語が始まる。 その建設会社の社長は野心家で、かなり悪どいやり口で事業 を拡張していたが、その手口の一つは持ち前にセクシーさ。 それを武器に人妻も籠絡してその夫との契約を取り付けたり している。 そんな社長が彼女に目を付ける。さらに彼女と主人公との関 係を知った社長は、自ら主人公を殺害してしまうのだが…。 ここで神の配剤か、主人公の精神がハエに宿ることになり、 主人公は非力なハエの身で社長への復讐を試みる。 という物語がCGI−VFXも満載で繰り広げられる。因にインド はハリウッドのVFX会社も支社を置くCGI−VFXの要であり、 その実力が見事に発揮されている作品だ。しかもヒーローが 小さい分、より精緻なVFXが作品を引き締めている。 出演は、映画監督を目指してアシスタント・ディレクターや ラジオのDJもしているというナーニ、タミル語映画で大型 新人とされるサマンタ・ルス・プラブ。そしてカンナダ語映 画ではトップ5に入るという人気スターで今回初の悪役に挑 戦したというスディープ。 脚本と監督は、テグル語映画界切ってのヒットメーカーとさ れるS.S.ラージャマウリ。音楽は従兄弟という血縁で監督 の全作の音楽を担当する一方、インド各地の映画200本以上 を手掛けているというM.M.キーラヴァーニ。インド音楽の 古典からヒップホップまで多彩な楽曲で物語を彩っている。 なお原題に表記したのはテルグ語のeega=英語ではFlyだと 思われるが、これ自体がハエっぽいのも面白いところだ。
『セブン・サイコパス』“Seven Psychopaths” 2008年の長編映画デビュー作“In Bruges”で、いきなり米 アカデミー賞の脚本賞にノミネートを果たしたイギリス出身 マーティン・マクドナー脚本監督による第2作。 主人公はスランプに陥っている脚本家。『セブン・サイコパ ス』という題名だけが決まった脚本を契約しているが、まだ 1行も書けていない。そんな窮状を見かねた売れない俳優の 友人が、新聞に「サイコパス募集」の広告を出すと…。 一方その友人は、アルバイトで犬の誘拐ならぬ拝借業(拝借 した犬を飼い主に返して礼金を貰う)を手伝っていたが、拝 借した犬が超危険なマフィアのボスの愛犬だったことから、 彼らに追われる羽目に陥ってしまう。 その頃、主人公の脚本家の許にはウサギの抱いた不気味な男 が現れ、男は犯罪被害者の女性を助け、全米で凶悪な連続殺 人犯らを殺しまくった過去を語りだす。そして脚本の執筆に ある条件をつけて帰っていったが… 主人公の書く脚本の中の世界と現実が入り混じって、何とも 知れない世界が展開されて行く。 出演は、コリン・ファレル、サム・ロックウェル、クリスト ファー・ウォーケン。その脇をウディ・ハレルスン、アビー ・コーニッシュ、オアルガ・キュリレンコ、トム・ウェイツ らが固めている。 また、『プレシャス』でオスカー候補になったガボレイ・シ デペやハリー・ディーン・スタントンら、多彩なカメオ出演 も登場。そして本作でデビューのシーズー犬ボニーは、その 後はCMなどにも出演する人気犬になったそうだ。 実は今回も先に紹介したインド映画で、基本はコメディ映画 なのに人が安易に殺される展開が気になった。その前にも以 前の作品は評価したアメリカのコメディシリーズで、3作目 はやたらと人が殺されて辟易したこともある。 それが今の世界の映画の傾向なのかとも思ってしまうが、そ の点で言うと本作もその傾向の作品だ。ただし本作の場合は 元々のテーマがサイコパスである訳で、それが許せるという か、これこそが本物、まがい物はそこ退けという感じなのも 見事な作品だった。 ここまでやってくれれば、逆に爽快感も出てくるくらいのも のだ。そしてその殺しのシーンにも過去の様々な名作を参考 にしているとのことで、脚本の世界と現実の世界が入り混じ る複雑な物語を見事に映像化している。 脚本家が主人公で虚構と現実が入り混じるお話では、2003年 5月紹介『アダプテーション』など気に入っている作品もい ろいろあるが、その中にまた愛すべき作品を観たようだ。
『私は世界の破壊者となった』 “Trinity: A Graphic History of the First Atomic Bomb” 本作は書籍で、すでに販売もされているものだが、本を贈呈 されて読んでみたら、将来映画化されても面白いと思わせる 作品だったので、その期待も込めてここで紹介する。 物語は、原題にある通りの人類最初の原子爆弾を巡る出来事 を、残された文献や関った人々が当然したであろう発言など で描いて行く。そこにはキーパースンとしてJ・ロバート・ オッペンハイマーやトルーマン大統領も登場するが、全体と してはキュリー夫妻の研究から説き起こして原子爆弾開発の 歴史があらゆる側面から描かれているものだ。そしてそこに は原子力に潜在する危険性が克明に描かれていた。 しかも作品は、前半では時間軸を前後に振りながらその瞬間 に向かってドラマティックに展開されており、その映画的な 構成も巧みなものになっている。それが本作を映画化しても 面白いと思わせるポイントだ。実際に前半何度か挿入される その瞬間までのカウントダウンと各エピソードとの転換は、 このままアニメーションにして観てみたいと思わせた。 内容的には、理科系で僕らの年代の人間だとすでに聞き知っ ている情報も多かったが、改めて整理されて提示されると理 解も進むし、新たな視点で見られるのも有難かった。そして このような歴史に興味を持たない人にも、今の自分たちの置 かれている状況を知るという意味で、是非読んで欲しいと思 わせる内容だ。 それくらいにこの作品は原子力のことを本質的に描いている し、我々が今どういう状況にいて、これからどうすべきかを 考えさせる作品だ。だから興味のない人にもこの本は是非手 に取って貰いたい。いや手に取らないならアニメーションに でもしてより多くの人に観せたいものだ。 原著者はジョナサン・フェッター・ヴォーム。スタンフォー ド大学で歴史学を学び、古典文学や自然科学書をグラフィッ ク・ノヴェル化して出版する事業を興したという作者の年齢 は本書の紹介文では明らかにされていなかったが、別のイン タヴューで、「冷戦の最初の記憶がベルリンの壁の崩壊」と 語っているからかなり若い人のようだ。そんな人が原子力の 脅威を真剣に捉えた物語だ。 日本版は翻訳:内田昌之、監修:澤田哲生、出版:イースト プレス。因に翻訳では原著に数箇所の誤りが見つかり、それ らはフィードバックした上で訂正されているそうだ。 また本書は、書店によって科学や歴史など様々な棚に置かれ ているということで、探すのに多少手間取りそうだが、是非 手に取って貰いたい本だ。
| 2013年07月16日(火) |
第197回(Iron Sky ��-The Coming Race) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は続編の話題から。 昨年5月に紹介したフィンランド、ドイツ、オーストラリ ア共同製作によるSF作品『アイアン・スカイ』に、“Iron Sky ��-The Coming Race”と題された続編が計画され、前作 に出演のウド・キアと、前作でアメリカ大統領を演じたステ ファニー・ポールの再演も発表された。 オリジナルは、2004年のティプトリーJr.賞の受賞者でも あるフィンランド在住の女流作家ヨハンナ・シニサロの原案 に基づき、2005年“Star Wreck: In the Pirkinning”が話 題になったティモ・ヴォレンソラ監督が発表したもので、お 話は先の紹介を見れば判るように、かなりハチャメチャなも の。しかしベルリン国際映画祭でプレミア上映された作品は 評価も高く、瞬く間に世界中で公開されたものだ。 そして今回はその作品の続編となるものだが、実は制作費 はネットなどで公募されており、1460万ドルの予算に対して すでに14.6万ドル程の応募が集まっているとのこと。因に、 撮影は再来年(2015年)の予定となっている。 なお続編の物語は明らかにされていないが、監督と前作の 原案を提供したシニサロ、前作の脚本を担当したマイクル・ カールスニコ、それに“Star Wreck”の共同脚本家のジャル マ・パスカラが脚本を執筆中。さらにアメリカ人脚本家の参 加も交渉中とのことだ。 続編の製作はフィンランドのブラインド・スポット・ピク チャーズが進めており、資金の調達はIndieGoGoという会社 が行っている。どんな作品が誕生するか興味津々だが、すで に世界中のエージェントや配給会社から問い合わせが殺到し ているとのことだ。
(情報は後日追加する予定です)
| 2013年07月10日(水) |
マン・オブ・S、レッド・ドーン、ワールド・ウォーZ、パシフィック・リム、陸軍登戸研究所、標的の村、リトルファイター、飛べ!ダコタ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『マン・オブ・スティール』“Man of Steel” 『バットマン』を『ダークナイト』としたのと同じく、すで に映画化のあるDCコミックスのスーパーヒーローを別名で リブートするシリーズの第2弾。今回は『スーパーマン』が 「鋼鉄の男」の別名の下に蘇った。 その物語は、スーパーマンの故郷クリプトン星の滅亡の様子 と、その寸前に地球でスーパーマンとなるクリプトン星人の 幼児カル・エルが送り出されるところから始まる。 実はこの話は以前のシリーズの冒頭でも述べられていたが、 今回は出発に当ってこの子の持つ能力が、到着した星の住人 に直ちには受け入れられないという運命が示され、スーパー マンが人類に受け入れられるまでの物語が描かれる。 そこには女性記者ロイス・レーンも登場し、彼女とクラーク ・ケントの関りも描かれる。それは従来の「彼はクラーク・ ケントと名乗って正体を隠し…」とは少し違う設定だが、ス ーパーマン・コミックスにはいろいろな設定が並行して存在 するのだそうで、これもありのもののようだ。 ということで本作では、幼少期からのスーパーマンが自らの 能力を封じて地球人と暮らして行くために苦闘する姿が描か れている。もちろんその中でも、時には仲間を救うために能 力を発揮してしまい、それによって徐々にその正体が露見さ れて行く物語だ。 そしてスーパーマンの存在を認めさせる強大な敵が現れる。 出演は2011年11月紹介『インモータルズ』などのヘンリー・ カヴィル、昨年9月紹介『人生の特等席』などのエイミー・ アダムス。 さらにケヴィン・コスナー、ダイアン・レイン、ローレンス ・フィッシュバーン、ラッセル・クロウ、昨年2月紹介『テ イク・シェルター』などのマイクル・シャノンらが共演して いる。 製作は『ダークナイト』の監督のクリストファー・ノーラン が務め、同じく『ダークナイト』を手掛けたデイヴィッド・ S・ゴイヤーの脚本から、『300』のザック・スナイダー が監督した。
『レッド・ドーン』“Red Dawn” 1984年に映画化された『若き勇者たち』のリメイク。オリジ ナルは、後に1995年『ウォーターワールド』などを監督する ケヴィン・レイノルズの原案・脚本と、1982年『コナン・ザ ・グレート』などのジョン・ミリアスの共同脚本・監督によ る作品だ。 オリジナルは、ソ連正規軍を中心とする共産国家の連合軍が アメリカに攻め入ってくるというもの。しかし21世紀の今日 では、さすがにソ連正規軍というのは無理で、代わりに別の 現共産国が攻めてくる設定だ。 そしてその際、偶然難を逃れた若者たちが山に隠って侵攻軍 への反撃を試みるのだが…。これがオリジナルでは単純なゲ リラ戦だったのが、本作ではかなり本格的な戦闘を展開させ る。子供でも戦争ができる、この辺が近代兵器の威力なのか とも感じさせられた。 ただしこの作品、実は撮影は侵攻軍が別の国の設定で行われ たが、撮影後に諸般の事情から攻めてくる国が変更されたと のこと。つまり映像に写っている国家を象徴するシーンは全 て撮影後に修正されたものだそうだ。登場人物はいずれにし ても東洋系なので西洋人からは区別できないだろうが… セリフは吹き替えで変更できるにしても、占領された街に掲 げられた垂れ幕、張り紙などのスローガンの文字は全て後か ら修正されているようだ。今のCGIの技術ではそんなこと も可能になる、そんな技術成果も確認できる作品だ。 出演は、昨年6月紹介『アベンジャーズ』などのクリス・ヘ ムスワース、7月紹介『ハンガーゲーム』のジョッシュ・ハ ッチャースン、今年4月紹介『G.I.ジョー2』のエイドリ アン・パリッキ、2010年9月紹介『デイブレイカー』に出て いたというイザベル・ルーカス。 そして、期待の若手とされるジョッシュ・ペック、トム・ク ルーズの息子のコナー・クルーズらが若き勇者たちを演じて いる。 対する占領軍側は、韓国系で昨年6月紹介『トータル・リコ ール』などに出ていたというウィル・ユン・リー、台湾出身 で2008年7月紹介『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』 などのフェルナンド・チェンらが演じている。 監督は、『スパイダーマン』や『ジェイスン・ボーン』シリ ーズでスタント・コーディネーターを務めてきたダン・ブラ ッドリーの劇場公開デビュー作となる。 脚本は、2007年9月紹介『ディスタービア』などのカール・ エルスワースが担当した。
『ワールド・ウォーZ』“World War Z” 映画監督メル・ブルックスの息子のマックス・ブルックスが 2006年に発表した長編小説を、ブラッド・ピットの製作主演 で映画化した作品。 ピットが演じる主人公は、元国連職員で紛争地域の調査を担 当していた男性。しかし世界を飛び回る仕事は家族と共にい る時間を奪い、それを理由に彼は職を辞していた。ところが そんな彼に現場復帰の要請が来る。 それは世界中に感染者を増大させるゾンビの蔓延。その根源 地域を探り、感染者の増大を食い止める手段を発見するのが その任務だ。そして家族の許に居たいとする彼に対し、家族 の安全を担保にした出動命令が下る。 こうして、まずは最初にゾンビの情報を発信した在韓米軍基 地、次には事前に準備をしていたためにゾンビ感染を食い止 めたイェルサレムが調査地として浮かび上がるが…。調査を 進める彼の前に未曾有の惨禍が繰り広げられる。 描かれるゾンビはかなりの高速系で、本来高速系のゾンビは 好きではなかったが、本作に限っては物語の展開に上手く嵌 っていた。特にイェルサレムのシーンでは、活動的なゾンビ の生態が物語を盛り上げる。 さらに彼の安全を祈る家族の姿など、作り物としての話の展 開も良く出来ている作品だった。 共演は、今年2月紹介『L.A.ギャングストーリー』に出てい たというミレイユ・イーノス。他にもダニエラ・ケルテス、 アビゲイル・ハーグローヴ、スターリング・ジェリンズら新 人に近い顔ぶれが多く登場している。 また、2005年11月紹介『ホテル・ルワンダ』のファナ・モコ エナ、昨年7月紹介『声をかくす人』のジェームズ・バッジ ・デール、2010年2月紹介『ハート・ロッカー』のデヴィッ ド・モース、2008年2月紹介『バンテージ・ポイント』のマ シュー・フォックスらが脇を固めている。 脚本は、2009年4月紹介『消されたヘッドライン』などのマ シュー・マイクル・カーナハン。他に2008年12月紹介『チェ ンジリング』のJ・マイクル・ストラジンスキー、『クロー バーフィールド』のドリュー・ゴダード、『イントゥ・ダー クネス』のデイモン・リンデロフらが共同脚本に名を連ねて いる。 監督は、2011年11月紹介『マシンガン・プリーチャー』など のマーク・フォースター。今までにも様々な題材に挑んでき た才人監督が、今回は飛び切りの異常な物語に手腕を発揮し ている。
『パシフィック・リム』“Pacific Rim” 2007年4月紹介『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デ ル=トロ監督が、2008年9月紹介『ヘルボーイ/ゴールデン ・アーミー』以来の脚本・監督を担当した作品。 映画の巻頭に「KAIJU」という語の解説テロップが登場し、 以後はドラマの中でも「カイジュー」という言葉が連呼され る。その怪獣は太平洋の真ん中にできた裂け目から出現し、 太平洋沿岸の諸都市に襲い掛かる。この脅威に対して人類は 一致団結して兵器を開発。何とかそれを食い止めた。 その兵器とは巨大ロボット。その中には2人の操縦士が乗り 込み、2人は精神のレヴェルで融合し、あたかも1人の操縦 士となって怪獣に立ち向かう。そして主人公はアメリカが開 発したロボットに兄と共に乗り込む連勝の勇者だった。 ところが怪獣も進化し、ある戦いでの怪獣の反撃により兄が 戦死。精神の一部を奪われたような主人公には、もはや戦う 力は残っていなかった。こうして主人公はもう1つの対抗策 である巨大防護壁の建設に従事していた。 そして年月が過ぎ、巨大ロボットの開発にも限界が見えてき たとき、怪獣に新たな進化が報告された。その怪獣に対して はもはや対抗手段は無いかに見えたが…。この状況下で主人 公が戦線に復帰し、新たなパートナーを見つけてゆくドラマ が描かれる。 それにしても、怪獣vs.巨大ロボットという現代日本の映像 カルチャーの代表と言える2大要素が激突する作品で、日本 のジャンル映画を愛する人には必見の作品だ。 出演は、2003年11月紹介『ケイティ』がデビュー作というチ ャーリー・ハナム、2011年6月紹介『マイティー・ソー』に 出演のイドリス・エルバ、そして2007年1月紹介『バベル』 で米アカデミー賞にノミネートされた菊地凛子。 また2011年9月紹介『モンスター上司』などのチャーリー・ デイ、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』などのロン・ パールマン、2009年7月紹介『アドレナリン/ハイ・ボルテ ージ』などのクリフトン・コリンズJr.らが共演。さらに人 気子役の芦田愛菜がハリウッド映画デビューを飾っている。 原案と共同脚本は、2010年4月紹介『タイタンの戦い』など のトラビス・ビーチャム。ビーチャムのオリジナル脚本に、 怪獣及びメカオタクとしても知られるデル=トロがいろいろ なアイデアを盛り込んで物語を作り上げている。 なお試写会場で永井豪さんと一緒になり、話しながら出てき たら映画会社の人が心配そうに立っていた。しかし永井さん は良い人なので、そこはにこやかに応対していたが、会社側 は月末に来日するデル=トロ監督との対談も要請していたよ うだ。映画には「マジンガーZ」の用語も出て来ており、実 現したら面白そうだ。
『陸軍登戸研究所』 神奈川県川崎市生田の丘陵、今は明治大学生田キャンパスの 立つ場所に、1937年設立された陸軍第九技術研究所(別名: 登戸研究所)の実態を、当時の関係者らへのインタヴューを 基に纏めたドキュメンタリー。 1919年に毒ガス兵器の研究のために東京新宿戸山ヶ原に発足 された陸軍科学研究所を母体として設立された陸軍登戸研究 所は、スパイ養成所である陸軍中野学校などとも手を組み、 偽札作りやカバンに仕掛ける隠しカメラの開発など、様々な 秘密兵器の研究を行っていた。 しかしその実態は、秘密厳守の徹底の下に当時の研究員らも 自らの研究対象以外のことはほとんど知らなかったという。 そんな登戸研究所の旧職員らに、6年の歳月を掛けて取材し 纏められた作品だ。この取材は今後は関係者の生存も厳しく なるから、おそらく最後のチャンスだったとも言える。 その具体的な内容では、前半には怪力線と称する殺人光線の 話なども登場して、これには20m先の小動物ぐらいは殺す威 力があったというから、それなりの成果があったようだ。そ してその実験には皇族も見学に来たというが、その際のエピ ソードなどはなかなか面白いものだった。 ただし、3時間の上映時間の大半は当時の関係者らに対する インタヴュー映像で、それに対する物的証拠などはほとんど 提示されないから、その辺は多少面はゆい感じも否めない。 殺人光線のくだりでも、皇族も映る写真は登場するが、もう 少し研究そのものの証拠も欲しかったところだ。 その一方で、同じく登戸研究所開発の風船爆弾に関しては、 かなり具体的なものも提示される。ここでは関係者が多いた めか時間も多く割かれていたが、実は僕自身が以前から興味 のあった者としては、先に文献などで知っていた話が多く、 ここはもう少し短くても良かったと思えたものだ。 そして後半では偽札作りの話が出てくるが、実は戦時中には 相手国の原版が入手できたのでほとんど成果はなかったそう だ。しかし戦後になって米軍に雇われた研究者は偽パスポー ト作りなどで成果を上げたようで、このため登戸研究所から は1人も戦犯が出なかったとのことだ。 この最後の話も、もっと具体的な追求や調査が欲しかったと ころだ。この他にも、映画の前半では毒ガス兵器に関連して 中国で人体実験を行っていたなどの証言もあり、これも重要 な話だと思われた。しかし制作者らはその追跡は自分らの役 目でないと割り切ったのか、本作が描くのはここまで、それ が少し物足りなくも感じられる作品だった。
『標的の村』 2012年10月1日、沖縄に軍用ヘリコプター・オスプレイが配 備されるまでを巡る反対派住民たちの姿を追った琉球朝日放 送制作のドキュメンタリー。 主な取材地は沖縄本島北部の東村高江区。そこはヤンバルの 森の豊かな自然に囲まれた人口160人ほどの小さな山村だ。 しかしその村は、国内最大の米軍軍事施設、総面積7800haの ジャングル戦闘訓練場に囲まれ、基地のヘリパッドに離着陸 する軍用ヘリコプターは、あたかも標的の村を視認するかの ように超低空で周囲を飛行する。因に米軍機は平時であって も国際的な航空法規の規定外にあるそうだ。 そしてその訓練場に新たなヘリパッドの建設が認められ、そ こには世界中で墜落事故の頻発するオスプレイの配備が想定 された。このため住民による反対運動が始まるが…。 この種の反対運動の常として、日本国政府は反対派住民を弾 圧し、住民を裁判に掛ける。その被告の中には現場にはいな かった反対派中心人物の当時7歳の娘も含まれていた。 こうして裁判で脅しを掛けながら、ヘリパッドの建設が進め られて行く。そしてオスプレイの配備。その際には沖縄中で 基地封鎖などの反対運動が行われるが、ここではpressの腕 章をつけた報道陣までも弾圧の標的にされる。 と、この映像を見ていて僕は昨年の10月のこの様子をほとん ど知らなかったことにショックを受けた。そして一緒に試写 を観ていたテレビ関係の人にも確認したが、その報道が本土 ではほとんど行われなかったという事実を知った。 実際に作品に描かれる反対闘争の様子は、自分が学生だった 頃の70年安保を髣髴とさせたが、東京ではそれが全くと言え るほど報道されなかった。その事実にも暗澹としたものだ。 この他に作品の中では、1960年代の対ベトコン訓練に住民が 動員されてベトコンの役をやらされたという事実や、その際 に枯葉剤が使用されたという疑いも報告されるが、今となっ ては真偽の検証をすることも不可能だろう。枯葉剤は残留も あり得るが、基地内では調査できない。 そんな日本の主権地でありながら、アメリカ軍のやりたい放 題、そしてそれを国民に伝えることもできない現実が、この 作品には見事に描かれていた。
『リトルファイター 少女たちの光と影』“Buffalo Girls” タイの国技である格闘技ムエタイを戦う2人の少女を追った ドキュメンタリー。 ムエタイはタイの国技とされるにもかかわらず、その社会的 なステータスは低いそうだ。その理由はムエタイが賭博の対 象になっているためで、本作もそんな賭けの対象とされてい る少女たちの姿が描かれる。 それは少女と呼ぶにもまだ幼い8歳の2人。しかし鍛錬を重 ねリングに上がる姿はそれなりのアスリートだ。そして2人 はチャンピオンの座を目指して戦いを繰り広げて行く。もち ろんそこには若年者に対する搾取の影は見えるのだが、彼女 たちが誇りを持って戦っているのも事実のようだ。 その少女の1人は、父親の建てている家に資金援助するのが 目的だ。そしてもう1人は、最初の少女より多少は経済的に 恵まれている感じだが、実はもっと幼い頃には病気に苦しん でおり、手術を受けムエタイで身体を鍛えたという。そんな 色々なものを背負って彼女たちの戦いは続いて行く。 監督はトッド・キールスティン。今までは1998年に日本でも 公開されたファンタシー作品“Jack Frost”などで、主に映 画の裏方をしていた人物が、何故タイの格闘技のドキュメン タリーを撮ることになったのか。その経緯などは不明だが、 作品は無用に同情を買うような姑息な演出もなく、ストレー トに現実を見定めたものになっていた。 因に2人が戦うのは20キロ級のタイ国内チャンピオンという ことだが、その戦いは懸賞金も勝者が独り占め。敗者には何 も与えられない上に、激励のため試合中にも賞金が釣り上げ られるという強烈なもの。 その勝者となった少女が、新築の家で自分の部屋や家具など も与えられる一方で、負けた少女は次の戦いに向けて地方で の試合を続けている姿には、哀れさよりも社会情勢の過酷さ が描かれていた。 もちろんこれは、児童が賭けの対象となっているのだから、 児童保護の観点からは許されるものでもないし、国内チャン ピオンといってもアンダーグラウンドなものだろう。しかし プロモーターやレフリーへのインタヴューはそれなりに管理 もされている感じで、外部の人間が勝手な思い込みでとやか く言えるようなものでもない感じがした。 しかも子供たちがそれなりの自覚を持って戦いを繰り広げて いる。その姿にはある種の感動すら覚えた。当然これは貧困 国の搾取されている子供たちの姿を描いたものだが、それだ けではない生きることの崇高さも見える作品になっていた。
『飛べ!ダコタ』 昭和21年1月14日。太平洋戦争の終結からわずか5ヶ月後に 新潟県佐渡島の小さな村で起きた実話の映画化。 物語の中心となるのは村長の娘。丘の上から海岸を眺めてい た彼女は、飛行機が低空で進入してくるのを目撃する。そし て海岸に駆けつけた彼女は飛行機から出てきた兵士と対峙す るが、彼女が発した片言の英語がその場を和ませる。 その飛行機は上海から英国領事を乗せてきたもので、悪天候 で航路を外れ、その海岸に不時着したのだった。そして領事 らは陸路目的地に向かうが、英国空軍のパイロットらは飛行 機を残していくことはできなかった。 こうして飛行機を修理するまで村に留まることになった英国 兵と村人らの交流が始まるが…。村人の中には、当然息子を 出征させた親もおり、またエリートで予科練に行ったものの 負傷して戦地にも行かず帰ってきた者もいる。 そんな様々な思いが交錯する中で、飛行機《ダコタ》を海岸 から再び飛び立たせるための作業が始まる。 物語は、実際に佐渡の寒村で起きたもので、それから64年後 に搭乗員だった兵士の息子が島を来訪、すでに他界した父親 が世話になった思い出を話していたこと、もう1度訪れたい と言いながら実現できなかったことを語ったのだそうだ。 それを切っ掛けにこの史実を風化させてはならないと映画化 が企画され、地元のフィルムコミッションなどの働きかけで 実現した作品とのことだ。 それにしても見事に美談と言える作品だが、映画ではさらに 予科練帰りの屈折した思いや、当時の社会情勢なども巧みに 織り込み、単なる美談だけに終わらせないなかなか深い物語 に仕立てられていた。 出演は、ヒロイン役に昨年2月紹介『僕等がいた』などの比 嘉愛未。他に、昨年7月紹介『ふがいない僕は空を見た』な どの窪田正孝、柄本明。さらにベンガル、綾田俊樹、洞口依 子、中村久美、芳本美代子、螢雪次朗、園ゆきよ、佐渡稔。 また英国兵役には、日本在住のマーク・チネリー、ディーン ・ニューコムらが扮している。 なお映画に登場するダコタ機は、英国領事が搭乗した現物も アメリカに保存されているそうだが、個人所有のため撮影に は使用できず。映画ではタイで発見された同型機を購入。解 体して佐渡の海岸に運んで撮影したそうだ。
| 2013年07月01日(月) |
第196回(Star Wars Episode ��,The Amazing Spider-Man 2,The Avengers 2,The Terminator 5,Jurassic Park 4,Maggie,Reawakening) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回もこの話題から。前回は大まかな撮影スケジュールを 紹介した“Star Wars Episode �察匹亡慙△靴董⊇弍藜圓鯀� ぶキャスティングの情報がリークされた。 その情報によると、来年早々にイギリスで開始される新作 には7つの主要な役柄があり、その内の1人は20代前半から 半ばくらいまでの男性。それに2人の若い女性。この2人に は身体的に要求されるものがあるということだ。そしてオビ =ワン・ケノービのような役柄の70代の男性。一応、7つの 主要キャラクターの内の4人はこのような感じの俳優が求め られているとのことだ。 因にこの情報は、J・J・エイブラムス監督が過去に手掛 けた全てのテレビシリーズ及び映画作品のキャスティングを 担当したエイプリル・ウェブスターとアリサ・ワイズバーグ というキャスティング・ディレクターの筋からもたらされた ものとのことで、この2人がアメリカ側でのキャスティング を開始しているようだ。 一方、キャスティングはイギリス側でも並行して行われて おり、こちらは2011年1月紹介『英国王のスピーチ』などを 手掛けたニーナ・ゴールドというキャスティング・ディレク ターが担当しているとのこと。 エイブラムス監督は、過去の『スター・トレック』『スー パー8』などでもほとんど無名の新人を抜擢しているとのこ とで、キャスティング・ディレクターたちが集めた俳優の中 からどのような出演者が選ばれるか、秋頃までには決定され る新たな配役も楽しみだ。 それにしてもオビ=ワン・ケノービのような役柄というの は、“Episode �機銑掘匹砲�けるリーアム・ニースンもその ような役柄だった訳で、前回の情報では「作品を前と同じこ との繰り返しにはしない」としていたエイブラムス監督が、 一体どのような目算を持っているのか、その辺も気になると ころだ。 なおこの配役に関連しては、“Episode �検銑此匹離沺璽� ・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリスン・フォード、 ビリー・ディー・ウィリアムス、アンソニー・ダニエルスら の出演も噂されているものだが、今回リークされた役柄は、 彼らとは別にキャスティングされているようだ。 * * 続いてもシリーズの話題で、2012年に再開されてソニー・ ピクチャーズが最も期待するフランチャイズ“The Amazing Spider-Man”に関して、2作品の追加が発表された。 なおこのシリーズに関しては、すでに2014年5月2日の公 開を目指して“The Amazing Spider-Man 2”の製作が進めら れているものだが、その後続としてさらに2016年6月10日と 2018年5月4日の全米公開日が発表されたものだ。従ってこ のシリーズは少なくとも4部作の構成となる。 一方、再開されたシリーズでは、主人公の恋人役が以前の メリー・ジェーン・ワトスンからグエン・ステイシーに変更 されたが、実は製作中の“The Amazing Spider-Man 2”には MJの登場があるとされ、その配役には昨年1月紹介『ファ ミリー・ツリー』などのシェイリーン・ウッドリーの名前も 発表されていた。 ところがここに来て突然MJの登場シーンのカットが発表 され、ウッドリー自身の報告によると、MJの登場は3作目 以降にお預けになるとのことだ。因に報告によると“2”の 撮影で彼女が参加したのは2日間だけだそうで、そのシーン もカットされたということは、スパイダーマン=ピーター・ パーカーの恋の行方は当面グエンに集中し、“3”以降に新 たな発展となるようだ。 一方、ウッドリーには2014年3月の公開予定で、デストピ ア物の主演作“Divergent”の撮影が進行中で、それとの競 合を避けたという見方もあるようだ。何れにしても映画での 人気が高まった後での出演となれば、シリーズの価値も高ま るものだろう。 “The Amazing Spider-Man 2”はアンドリュー・ガーフィ ールド、エマ・ストーンの主演。ジェイミー・フォックス、 サリー・フィールド、マーティン・シーンらの共演で、すで に主要な撮影は完了している。 * * お次もシリーズの第2作、第3作で、ディズニーが2015年 5月1日に公開を予定している“The Avengers 2”にロバー ト・ダウニーJrの契約が発表され、彼は2作品に出演すると のことだ。 ただしこれは、すでに歴代興行記録の第5位に到達してい る“Iron Man”の単独作を含むものではなく、あくまでも昨 年スタートした集団ヒーローシリーズの一員として出演する もの。しかし“The Avengers”シリーズの監督を務めるジョ ス・ウェドンは、「かつてショーン・コネリーがジェームズ ・ボンドであったように、ロバート・ダウニーJrはアイアン マンであり、彼抜きに“The Avengers”は考えられない」と して、シリーズの継続の絶対条件としていたものだ。 とは言うものの、ダウニーJr以外の“The Avengers 2”の キャスティングは未発表で、マイティ・ソーのクリス・ヘム スワース、キャプテン・アメリカのクリス・エヴァンス辺り はOKとしても、ブラック・ウィドーのスカーレット・ヨハ ンセン、ホークアイのジェレミー・レンナーのオスカー候補 組はどうなるか。 一方、ニック・フューリーのサミュエル・L・ジャクスン とハルクのマーク・ラファロはアメリカのデータベースでは まだウワサ段階とされているが、この2人はすでに契約した との報道もあり、オスカー候補役者ダウニーJrの契約が公式 発表されたことで、これからの動きも注目されるところだ。 なお前作の敵役のロキは、第2作には登場しない模様。そ の代わり今年末公開予定の“Thor: The Dark World”には、 ヘムスワース、ナタリー・ポートマン、アンソニー・ホプキ ンスらと並んで、ロキ役のトム・ヒデルストンも出演してい るようだ。 * * 今回はシリーズの話題が多いが、あとは纏めて紹介する。 まずは、今年2月1日付第186回で報告したアンナプルナ 製作による“The Terminator 5”に、2015年6月26日の全米 公開日が発表された。 この計画では、前月紹介『イントゥ・ダークネス』も手掛 けるスカイダンスとパラマウントが共同製作として参加し、 これら3社から公開日が発表されたものだ。 因に第5作の監督は未定だが、主演にはアーノルド・シュ ワルツェネッガーの再登場がほぼ決定とのこと。また脚本は 以前に紹介したパトリック・ルシエとレータ・カログリディ スが進めているが、具体的な物語の時代背景などは公表され ていない。 一方、今年1月16日付第185回で報告したシリーズ第4 作となる“Jurassic Park 4”について、公開日を2015年に 延期することがユニヴァーサルから発表された。 この計画に関しては、以前に報告した脚本のリック・ジャ フェとアマンダ・シルヴァに加えて、今年2月23日に発表さ れた「The 2013 Film Independent Spirit Awards」でBest First Feature賞の候補になった“Safety Not Guaranteed” のコリン・トレヴォロウ監督が抜擢されることも発表されて いた。しかしそのトレヴォロウ監督が開始した脚本のリライ トが手間取り、先に発表された公開日ではスケジュール的に VFXなどの処理が間に合わなくなるとのことだ。 そのため1年間の延期が発表されたものだが、実は公開予 定となる2015年にはすでに上記の“Star Wars Episode �察� “The Avengers 2”、そして“The Terminator 5”。さらに “Pirates of the Caribbean 5”などのシリーズ物の大作が ひしめいており、その中での公開はかなり大変なことになり そうだ。 * * あとは新規の話題で、上記の“The Terminator 5”にも登 場が期待されるアーノルド・シュワルツェネッガーにゾンビ 物の計画が発表されている。 計画は、ジョン・スコット3という脚本家による2011年の ブラックリストに掲載された“Maggie”と題された脚本を映 画化するもので、コマーシャル出身のヘンリー・ホブスンと いう監督の起用も発表されている。 物語は、ゾンビが蔓延 する世界を背景に、徐々にゾンビ化する娘を抱えた父親を主 人公にしたものだそうだ。 因にこの娘の役には、一時クロエ・グレース・モレッツの 配役も発表されていたようだが、その計画は一旦中止され、 それが再始動された今回の計画では、残念ながらスケジュー ルの都合で彼女の出演は難しいようだ。そのスケジュールで 撮影は今秋の予定となっている。 ただし、同時に紹介されたシュワルツェネッガーの予定で は、今年10月にライオンズゲイト製作の“Escape Plan”、 来年1月には前月紹介『エンド・オブ・ウォッチ』などのデ イヴィッド・エアー監督による“Breacher”という作品も計 画されており、来年春に予定される“The Terminator 5”の 撮影まで前カリフォルニア州知事のスケジュールは超多忙の ようだ。 * * 最後に、昨年12月に紹介したドキュメンタリー作品『次郎 は鮨の夢を見る』のデイヴィッド・ゲルブ監督の次回作とし て“Reawakening”というドラマ作品の計画が発表された。 作品は、2008年に“Shutter”というホラー作品の脚本を 手掛けたギリス・ルーク・ドウスンと、2015年に公開予定の “The Fantastic Four”の脚本を担当しているジェレミー・ スレイターの脚本に基づくもので、死者の記憶を取り出す研 究をしていた学生たちが、その方法は見つけるものの、それ は恐ろしい事態を招いてしまう…というもの。 そしてこの作品に、2011年8月紹介『カウボーイ&エイリ アン』などのオリヴィア・ワイルド、今年1月紹介『ゼロ・ ダーク・サーティ』に出ていたというマーク・デュプラス、 今年5月紹介『モスダイアリー』などのサラ・ボルジャーの 出演が発表されている。 物語の中心が学生ということで、正に今が旬という感じの 若手俳優が配役されている作品だが、それにしても鮨名人の ドキュメンタリーの次がホラー要素もありそうな作品とは、 ゲルブ監督はかなり思い切った作品の飛び込んだものだ。 製作会社は『ソウ』シリーズから『ハンガーゲーム』まで 飛ぶ鳥を落とす勢いのライオンズゲイトで、公開予定などは 未発表だが、面白い作品が期待できそうだ。
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