井口健二のOn the Production
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2013年06月30日(日) ペーパーB、ディアトロフI、アップサイドダウン、イントゥ・ダークネス、アイス、エンド・オブ・W、パニック・マーケット、I・ベルイマン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ペーパーボーイ真夏の引力』“The Paperboy”
ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコ
ノヒー、ジョン・キューザックの共演で、1969年のアメリカ
南部を背景にした人間ドラマ。
物語の始まりは、差別主義者の白人保安官が何者かに刺殺さ
れたというもの。そして1人の男が逮捕され、さしたる物証
もないまま死刑の判決を受けた。
そして主人公は、その事件の起きた南部の町で父親の経営す
る地方新聞社に勤める青年。彼は元は水泳選手だったがある
事情で競技を断念し、以来悶々とした生活を送っている。そ
こにフロリダで新聞記者として活躍する兄が帰ってくる。
その兄の目的は死刑判決が冤罪との投書を得て、その真偽を
確かめるというもの。そして投書の主の女性も現れ、兄の運
転手をすることになった主人公と共に、事件の真相を暴いて
行くことになるが…
1969年というのはキング牧師が暗殺された翌年とのことで、
まだまだ人種差別の根強いアメリカ南部を舞台に、沼地に暮
らすワニ漁師の生態などの異様な風景も挟みながら、奥深い
人間の性が描かれて行く。
4月に紹介した『欲望のバージニア』もそうだったが、日本
とは全く違う文化に彩られた作品で、それはその状況を理解
するだけでも観客に覚悟が必要な作品かもしれない。しかし
その文化の違いを興味深く観られるのも映画の面白さだ。
そしてそんな状況に振り回される主人公の姿を、2008年11月
紹介『ハイスクール・ミュージカル』などのザック・エフロ
ンが、今までの作品とは全く違う雰囲気で演じ切っている。

監督は、2009年『プレシャス』でオスカーノミネートを果た
したリー・ダニエルズ。本作は1995年に発表されて文学賞な
どにも輝くピート・デクスターの原作から、監督は原作者と
共同で脚色も手掛けている。
共演は、今年1月紹介『アウトロー』などのデヴィッド・オ
イェロヴォ、1983年『ライトスタッフ』などのスコット・グ
レン。他にシンガーソングライターでもあるメイシー・グレ
イ、テレビ女優のニーラ・ゴードン、『トワイライト』など
のネッド・ベラミーらが脇を固めている。
題材的には取っ付き難い作品かもしれないが、観れば興味も
湧いてくるし、人間ドラマはかなり深くて面白い。正にアメ
リカの一面を描いている作品で、これこそが映画を観ている
感じのしてくるもの。普段は馴染みのないアメリカ南部の風
物も興味津々で楽しめた。

日本公開は7月27日から、新宿武蔵野館ほかで予定されてい
る。

『ディアトロフ・インシデント』
“The Dyatlov Pass Incident”
2008年12月紹介『ザ・クリーナー』などのレニー・ハーリン
監督が、ロシア系と思われる映画プロデューサーの依頼を受
けて、1959年当時のソビエト連邦ウラル山脈で起きた事件に
インスパイアされた物語を映画化した作品。
1959年の事件はWikipediaなどの情報によると、ウラル山脈
北部で「死者の山」と呼ばれる場所にスキー登山に向かった
大学生らの一団が遭難したというもの。ところがその死の状
況に不審な点が多く、さらにその後の数年に亙ってソビエト
政府がその近辺を立ち入り禁止にしたことから様々な憶測を
呼んだようだ。
そして映画の物語は、現代を背景にアメリカ人の大学生がそ
の事件の謎を検証しようと現地に向かうところから始まり、
その多くの部分は彼らが撮影したとされるヴィデオの映像に
よって構成されている。因にこの映像もロシア政府は公開禁
止としたが、密かにネットにアップされたという設定だ。
という、如何にも最近の映画に有り勝ちな展開で進む作品だ
が、実は物語の中には映画化もある著名なSF小説や、こち
らも過去に映画化されたアメリカ軍部のオカルト実験などへ
の言及もあり、SF映画ファンには正しくニヤリとする展開
になっている。

脚本はヴィクラン・ウィート。今までは主にテレビシリーズ
の裏方などをしてきた作者の第1作とのことだ。そしてこの
脚本からハーリンが演出したものだが、その冬山登山の描写
などは、さすが1993年『クリフハンガー』も手掛けた監督の
手腕が発揮されたと言える作品にもなっている。
出演は、ジェマ・アトキンスン、リチャード・レイド、マッ
ト・ストーキー、ルーク・オルブライト、ホーリー・ゴス。
この内、アトキンスンはイギリスのテレビシリーズなどにも
レギュラー出演して、本作の後には“Night of the Living
3D Dead”という作品に主演もしているようだが、基本的に
は新人たちが中心の配役のようだ。
出だしは有り勝ちなファウンド・フッテージ物だが、内容は
UFOから未知生物まで多岐に亙っていて、これで話は纏ま
るのかなと心配していたら、そこからの決着は多少意外性も
あって面白かった。また、実際にロシアの冬山やその近辺で
ロケしたらしい映像もそれなりの効果を上げていた。

公開は8月10日から、ヒューマントラストシネマ渋谷など、
全国順次で行われる。

『アップサイドダウン/重力の恋人』“Upside Down”
サム・ライミ版『スパイダーマン』でMJ役のキルスティン
・ダンストと、昨年12月紹介『クラウド・アトラス』などの
ジム・スタージェスの共演で、2つの重力方向を持つ世界に
暮らす男女を描いたSF作品。
設定の説明は最初にあって、極めて接近した双子惑星が作り
出した奇跡の世界。それぞれの世界の物体には属性があり、
属する世界の重力に従う。そして主人公は彼らが呼ぶ「下の
世界」に属し、その世界は繁栄する「上の世界」に搾取され
ていた。
そんな2つの世界の地勢は対称形のようで、互の山の頂上は
手を伸ばせば届きそうに接近している。その山の頂上で2人
は出逢った。しかし2つの世界の人間の交流は厳しく規制さ
れており、発見された2人は引き離されてしまうが、年月が
経ち主人公は、「上の世界」に近づく方法を発見する。
荒廃した「下の世界」の頭上に、繁栄する「上の世界」が広
がっている。そのヴィジュアルは面白いし、中でも上下の世
界が繋がっているオフィス最上階の風景や、「上の世界」か
らロープウェイで訪れる「下の世界」のレストランなどは、
その情景が最初にあったのだろうと思わせるものだ。
ただSFとして見た場合に、その間を結びつけるいくつかの
設定が如何にもご都合主義な感じで、正直に言って辻褄も良
くは合っておらず、多少面はゆい感じがしてしまった。特に
太陽光線は何処から差してくるのかなど、SF考証として問
題な点も散見される。
でもまあ、ファンタシーといことで一般的には許されてしま
うのかな。とりあえずヴィジュアルの面白さを楽しめばいい
という作品だろう。

脚本と監督は、アルゼンチン出身のフアン・ソラナス。長編
作品は2作目だが以前はCMやミュージックヴィデオを手掛
けていたそうで、ヴィジュアル先行作品は頷けるところだ。
でも脚本には誰かSFの判っている人がアドヴァイスして欲
しかったところだ。

共演者では『ハリー・ポッター』シリーズなどのティモシー
・スポールらが登場している。
公開は9月7日から、東京は角川シネマ有楽町、ヒューマン
トラストシネマ渋谷他でロードショウされる。

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
“Star Trek Into Darkness”
2009年『スター・トレック』の同じ監督、キャストによる続
編。前作の時はマスコミ試写には招かれなかったが、今回は
観させて貰えた。
その物語は、ファンにはTOS(The Original Series)と
呼ばれる最初のテレビシリーズに基づくもので、ジェームズ
・T・カーク船長の下、スポック、マッコイ、スコッティ、
ウフーラ、スールー、チェコフらが搭乗する宇宙船USSエ
ンタープライズの物語が展開される。
そして本作では、そのプロローグで宇宙艦隊の規定に反して
未開惑星の危機を救ったカークに対し、船長解任の命令が下
されるところから始まる。
ところがその直後に、1人の男性によって宇宙艦隊の大本営
が襲われ、ほとんどの艦長が死亡若しくは負傷する事態とな
る。このため急遽カークらがその跡を追い、男性が逃亡した
惑星に赴くことになるのだが…。その惑星が位置するのは、
敵対するクリンゴンの支配する領域だった。
こうしてカークらは隠密裏に惑星に潜入し、犯人を確保する
作戦を開始する。しかしその先には、宇宙艦隊を揺るがす別
の脅威も待ち構えていた。
物語的にはテレビシリーズのテイストと言えるかな。ただし
本作では、それを精緻なVFXと3D、さらに一部劇場では
IMAXの大画面で豪華絢爛に描くものだ。しかもその中には、
過去のシリーズの名場面や人物も登場し、成程この後の物語
がそう続くのかと納得できる作りにもなっている。
実は前作の時には、観ていて多少の違和感があった。それは
俳優が違うだけでなく、キャラクターの性格付けなどが何と
なくオリジナルと異なる感じがしたものだ。しかし本作を観
てその想いは払拭された。そしてまさか自分がスタ・トレで
泣くとは…という展開になっていたものだ。

出演は、クリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・
アーバン、サイモン・ペッグ、ゾーイ・サルダナ、ジョン・
チョウ、アントン・イェルチンのレギュラーに加えて、昨年
5月紹介『SHERLOCK』のベネディクト・カンバーバッチ、同
月紹介『MIB3』のアリス・イヴ、さらに初代ロボコップ
のピーター・ウェラーらが登場する。
監督はJ・J・エイブラムス。エイブラムスは、来年撮影さ
れる“Star Wars Episode �察匹隆篤弔�発表されており、本
シリーズの後続作品に関る可能性は低いと思われるが、本作
はそんな彼がシリーズを後継者に託すのにはベストの作品だ
と言えそうだ。

日本公開は8月23日から、2D/3D及びIMAX3Dで行われ
る。

『アイス』“Ice”
1989年「山形国際ドキュメンタリー映画祭」で最優秀作品賞
を受賞し、1997年には再来日して同映画祭の審査員を務め、
1999年に急逝したアメリカの孤高の左翼系映画作家ロバート
・クレイマーが、1969年に発表した作品。
舞台はアメリカの近未来。映画の巻頭ではメキシコで解放戦
線が攻勢を強めているという状況が紹介される。一方、アメ
リカ国内には地下に潜った革命組織が有り、彼らは潜伏状態
から抜け出すためのゲリラ戦の開始を模索している。
そのゲリラ戦の展開には、黒人組織やプエルトリコ、メキシ
コ人の組織との同盟が不可欠だったが…。作品が発表された
1969年というと、ベトナム反戦運動も最盛期と思われるが、
映画の物語はその方向には向かず、あくまでもアメリカ国内
の革命を目指しているようだ。
しかもそこには、黒人やヒスパニックの人たちとの確執が描
かれるなど、現在の僕らの認識からはかなりの違和感を覚え
る。逆に言えばそれが当時の現実だったとするなら、これは
僕自身の当時に対する認識も変えられることになる。
それは確かに1970年公開の映画『いちご白書』でも黒人問題
の描き方は微妙だったものだが、それがノンポリの白人学生
ではなく、1936年生まれの左翼系映画作家の認識もそうだっ
たとするなら、認識を改める必要はありそうだ。
それほどまでにアメリカの人種問題というのは複雑で根が深
かったということなのだろう。
その一方で、映画には革命に対する焦りのようなものも感じ
られ、日本の1969年は「70年安保」を控えて学生運動も盛
んだったが、それがその後は「日本赤軍」など鬱積して行く
状況が見事に予言されている感じもする作品だった。

公開は8月上旬に、東京は渋谷のユーロスペースにて。なお
公開はクレイマー監督の1975年作品『マイルストーン』と、
2作品一挙ロードショウとなる。
本作は上映時間130分、併映作は206分。上映はオリジナルか
らりストアされた16mmフィルムで行われる。
本作はノスタルジーで観ることもできる作品だが、描かれる
焦燥感は現代の感覚にも共通する。その点では共感も湧いて
くる作品だった。


『エンド・オブ・ウォッチ』“End of Watch”
ロサンゼルスの中でも犯罪の最多発地区と言われるサウスセ
ントラルを巡回する警官の日常を描いたPOVによる作品。
描かれるのは警察学校からの親友同士という白人とメキシコ
系の警官コンビ。白人警官は大学法学部への進学を目指し、
その入試課題に映像制作を選択して日夜デジカメで撮影を続
けている。そしてついに胸に付ける小型カメラを導入して、
お互いを撮ることを開始する。
また白人警官には付き合い始めたばかりの女性がいて、彼女
とは将来の結婚も考えている。一方、メキシコ系の警官は高
校時代の恋人と18歳で結婚し、2世の誕生も間近という状況
だ。そんな2人は、日々逃走車の追跡や容疑者との銃撃戦な
ど危険の任務の連続だった。
そして街では、ヒスパニック系のギャングが勢力を広げ、そ
の陰には麻薬組織の介在の可能性が考えられた。さらに人身
売買のための違法入国者の隠れ家の摘発や家族ぐるみの不法
銃器の売買。またFBIも絡んで、アメリカが抱える病巣の
ような犯罪に立ち向かう警官たちの姿が描かれる。
タイトルはEOWと略され、警察官が1日の終りに付ける業
務日誌の最後に時刻と共に添える文字だそうだ。またそこに
は「殉職」の隠語も含まれるとされる。

出演は、製作総指揮も兼ねる昨年8月紹介『ミッション:8
ミニッツ』などのジェイク・ギレンホールと、今年2月紹介
『L.A.ギャングストーリー』などのマイクル・ペーニャ。そ
の相手役に2011年9月紹介『50/50 フィフティー・フィフテ
ィー』などのアナ・ケンドリックと、2008年9月紹介『デス
・レース』などのナタリー・マルティネス。
POVは、特にホラーサスペンス系の作品で流行りの手法に
なっているが、本作では警官側だけでなく、犯罪者側も依頼
者に報告する記録を撮っているという設定で、多方面の映像
が登場する仕組みになっている。それはまあ多少の無理はあ
るが、全体としてはリアル感に溢れる作品になっていた。
しかも本作は、題材が警官の日常ということで、そこには実
に様々なエピソードが登場するが、それが徐々に1つの事件
に収斂して行く構成は見事だった。

脚本と監督は、2001年デンゼル・ワシントンにオスカーをも
たらした『トレーニングデイ』などの脚本を手掛けてきたデ
イヴィッド・エアー。因にエアー自身がサウスセントラルの
出身なのだそうで、彼自身の体験がこのリアルな物語を生み
出したようだ。

『パニック・マーケット3D』“Bait”
試写会場では『バイオハザード�掘戮痢帖△半匆陲気譴燭�、
マニアには『ハイランダー』と言った方が通りが良いと思わ
れるラッセル・マルケイがオリジナル脚本と製作総指揮も務
め、母国のオーストラリアとシンガポール合作で作り上げた
3Dパニック作品。
主人公は元ライフガードの若者。1年前に結婚式直前だった
彼は、二日酔いで本来は自分の仕事だったブイの点検を花嫁
の兄に代わってもらう。ところがその兄が人食いザメの犠牲
になり、トラウマに悩む彼は婚約者にも去られ、今ではやる
気のないスーパーマーケットの店員だった。
そんなある日、突然の地震と津波が街を襲う。そして主人公
のいるマーケットも水浸しになる。このため主人公らは棚の
上に避難するが、その水の中には津波と共に体長3mを超え
る人喰いザメが迷い込んでいた。
さらに避難者の中には、里帰りしていた元婚約者とその恋人
らしき男性。また強盗や重傷を負った保安官らもいて、外部
からの救援が望めないと判断した彼らは、協力して脱出の道
を探し始めるが…
作品は、1年前の発端部分が多少まだるっこしいが、津波が
襲ってから後は展開も滞りなく、結構ハラハラドキドキも感
じられる作品になっていた。また3D効果も突然目の前に浮
遊物が現れるなど、ハリウッド映画より外連もあって楽しめ
る作品だった。

出演は、2006年11月5日付「東京国際映画祭コンペティショ
ン」で紹介した『2:37』(日本公開題名:明日、君がい
ない)や『エクリプス:トワイライト・サーガ』にも出てい
たというゼイヴィア・サミュエル、2010年“Step Up 3D”な
どのシャーニ・ヴィンスン。
さらに昨年4月紹介『フェイシズ』などのジュリアン・マク
マホン、2011年8月紹介『サンクタム』などのアリス・パー
キンスンらが共演している。
監督は、2003年11月紹介『マトリックス/レボリューション
ズ』や、2007年2月紹介『ゴーストライダー』などの第2班
監督を務めたキンブル・レンドール。
なお本作の日本公開では、国民感情に考慮して一部映像のカ
ットが行われている。それは見ていると大体見当がつくが、
日本公開の上映時間は89分、オリジナルはデータベースによ
ると93分となっているからおよそ4分間がカットされたよう
だ。

公開は8月24日から、東京はシネマート新宿他で全国ロード
ショウとなる。

『第七の封印』“Det sjunde inseglet”
『野いちご』“Smultronstället”
『処女の泉』“Jungfrukällan”
2007年に亡くなったスウェーデンの映画作家イングマール・
ベルイマンが1956年、57年、59年に発表し、それぞれカンヌ
国際映画祭の審査員特別賞、ベルリン国際映画祭の金熊賞、
米アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した作品がディジタル
リマスターされ、「3大傑作選」として連続上映される。
『第七の封印』は、ペストが蔓延する中世ヨーロッパを背景
とする物語。十字軍の遠征から帰途につく騎士の主人公は、
とある浜辺で死神と遭遇する。しかし騎士は死神をチェスに
誘い、勝負の間は死をお預けとし、主人公が勝ったら解放す
る約束で勝負をはじめるが…。
そこに旅芸人の一座や妻を寝取られた鍛冶屋などが絡んで、
幻想ともつかない物語が展開される。
『野いちご』は、現代を舞台にした高齢の医師の物語。大学
で名誉博士号を受けることになった医師は、自ら車を運転し
て行くと言い出し、居合わせた息子の嫁と共に出発する。そ
の道中ではヒッチハイクの若者たちと遭遇したり、過去の幻
想が現れたりする。
この作品にも幻想的なシーンが頻繁に挿入され、かなり不思
議なムードの漂う作品になっている。
『処女の泉』は、16世紀の森に囲まれた屋敷が舞台。主人公
は教会に寄進するロウソクを愛娘に託し、娘は侍女と共に出
掛けるがその道中で悲劇が起きる。その帰りを待つ屋敷の主
人公と、その屋敷の偶然やってきてしまう犯人たち。さらに
娘を妬んでいた侍女らの葛藤が描かれる。
この作品は全体に漂うムード自体が幻想的で、特に最後に起
きる奇跡が印象的な作品だった。

主演は、『第七の封印』と『処女の泉』が後に『エクソシス
ト』のメリン神父を演じるマックス・フォン・シドー。『野
いちご』は本作の演技で米ナショナル・ボード・オブ・レビ
ューの主演男優賞を受賞したヴィクトル・シェーストレム。
他に、イングリッド・チューリン、ビビ・アンデショーンら
ベルイマン作品の常連が顔を揃える。
公開は7月20日から、東京は渋谷のユーロスペースにて連日
3作品の上映が4週間限定で行われ、以後は全国順次ロード
ショウが予定されている。



2013年06月20日(木) 「フランス映画祭2013」

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※このページでは、明日21日から開催される「フランス映※
※画祭2013」で上映される作品を紹介します。なお、※
※文中物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読ま※
※れる方は左クリックドラッグで反転してください。  ※
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『テレーズ・デスケルウ』“Thérèse Desqueyroux”
オドレイ・トトゥの主演で、フランスのノーベル賞作家フラ
ンソワ・モーリアックの原作を映画化した作品。
物語の背景は1920年代。主人公は家同士が決めた政略結婚を
受け入れた女性。しかし旧態依然とした家族制度が徐々に彼
女を蝕んで行く。主人公は破滅思想とでも言うのかな、とに
かく物事の全てを悪い方向に進めてしまう考え方の持ち主。
そんな女性のダークサイドをトトゥが巧みに演じて行く。

昨年2月紹介『ある秘密』などのクロード・ミレール監督に
よる2011年の作品で、監督は昨年4月に逝去し本作が遺作と
のことだ。
日本での一般公開は未定。

『恋のときめき乱気流』“Amour et turbulences”
リュディヴィーヌ・サニエの主演で、旅客機で隣同士になっ
た男女の恋の経緯を描いたラヴコメディ。
主人公は自身の結婚のためフランスに帰国する途中の女性。
座席がビジネスクラスに振替になりラッキーと思った矢先、
隣の席にやってきたのは、3年前に彼女が恋をし、その未練
を断ち切ったばかりのたプレイボーイだった。
ラヴコメ自体が日本では難しいが、本作は回想シーンを巧み
に取り入れ、それはうまく描かれていた。その回想シーンで
はパリ観光も楽しめる仕組みになっている。

監督は、本作が長編デビュー作となるアレクサンドル・カス
タネッティ。共演は後で紹介する『タイピスト!』にも出演
のニコラ・ブドス。
本作も日本での一般公開は未定。

『ウェリントン将軍〜ナポレオンを倒した男〜』
“Les Lignes de Wellington”
1810年、フランス・ナポレオン皇帝の命によるポルトガル征
服を描いた歴史絵巻。
ナポレオンのヨーロッパ征服というと、北方のロシア戦線で
冬将軍の到来により敗退する話は聞いているが、南方戦線の
話は西洋史の授業でも聞いた記憶がない。しかし当然それは
あったもので、そこではイギリスからの派遣軍とポルトガル
軍の連合戦線が果敢な攻撃を仕掛けていたようだ。
そして連合舞台を率いるイギリス軍のウェリントン将軍には
ある秘策があった。本作はそんな戦いに関った人々の様子を
豪華なオールスターキャストで描いている。

出演は、タイトルロールにジョン・マルコヴィッチの他、マ
チュー・アマルリック、カトリーヌ・ドヌーブ、ミシェル・
ピコリ、イザベル・ユペール、キアラ・マストロヤンニ、メ
ルヴィル・プポー。監督はヴァレリア・サルミエント。
上映時間152分の大作で、日本公開は来年の予定。

『母の身終い』“Quelques heures de Printemps”
2010年11月紹介『君を想って海をゆく』などのヴァンサン・
ランドン主演で、生きることに不器用な母親と息子の姿を描
いた作品。
主人公は長距離トラックの運転手だったが、密輸に絡んで逮
捕服役、出所した時には職を失っていた。そして人生を立て
直そうと母親のもとに転がり込むが、その母親は不治の病で
余命短く、尊厳死を選択しようとしていた。
尊厳死というのは所詮自殺なので個人的に容認できないが、
そこに至る人間ドラマは見事だった。ただ途中で母親が愛犬
に行う行為は意味不明というか…、結果オーライではあるの
だが。

共演は、エレーヌ・ヴァンサン、エマニュエル・セニエ。監
督は本作でセザール賞候補になったステファヌ・ブリゼ。
日本公開は、2013年晩秋に予定されている。

『椿姫ができるまで』“Traviata et nous”
2011年春。エクサンプロバンス音楽祭での上演に向けて行わ
れたヴェルディの名作「椿姫」のリハーサルの模様を記録し
たドキュメンタリー。
舞台の演出はジャン=フランソワ・シヴァディエ、主演には
フランスのオペラ歌手ナタリー・デセイを迎えて、2人は時
に和気藹々と、また時にせめぎ合いながら舞台を作り上げて
行く。
オリジナルの舞台を観ていないので、そこに新解釈があるの
かどうかは判らないが、シヴァディエが個々の場面の演出を
付けて行く中では、それらのシーンの彼の解釈を聞くことも
でき、演出ノートを見ているような作品になっている。
そしてデセイが見事なソプラノで歌い上げる「椿姫」の数々
の名場面も堪能でき、今後「椿姫」を観る機会があれば参考
にもなる作品だ。それにしても繊細かつ堂々としたデセイの
姿が素晴らしい作品だった。

映画の監督は、同種の作品を数多く手掛けるフィリップ・ベ
ジアが担当。
日本公開は、今秋に予定されている。

『わたしはロランス』“Laurence Anyways”
昨年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映され、主演のス
ザンヌ・クレマンが最優秀女優賞に輝いた作品。
高校で国語教師を勤めるロランスは、恋人のフレッドに「女
になりたい」と打ち明ける。それを聞き最初は激しく非難す
るフレッドだったが、やがてその思いの強さを知った彼女は
彼の最大の理解者であろうとする。
そこからの10年に亙る2人の葛藤の日々が描かれる。そこに
は周囲の人々の無理解や、偏見、拒否反応などあらゆる障害
が待ち受けていた。
内容はマイノリティの問題など多岐に亙るが、僕自身が男性
で保護者の立場で見ると、本作では女性のフレッドの立場が
注目された。その彼女がランチで切れるシーンにはドキッと
させられたものだ。

ロランス役は『ウェリントン将軍』にも出演のメルヴィル・
プポー。他にナタリー・バイらが共演している。
監督は弱冠23歳にして、「ある視点部門」には2度目の出品
というグザヴィエ・ドラン。特異な題材ではあるが、巧みに
まとめあげていた。
上映時間168分の大作で、日本公開は今秋予定されている。

『短編集』
このプログラムでは、今年は8本が上映される。
「妻の手紙」“Lettres de femme”
ダンボール細工のような人形を用いた15分11秒のアニメーシ
ョン作品。第1次大戦と思われる戦場を舞台に、負傷兵を救
護する衛生兵と家族から届く手紙の儚い物語が綴られる。
ま
ったくもって見事な作品だった。
「からっぽの家」“La maison vide”
19分の実写作品。玄関錠の修理にやってきた鍵師の息子が、
父親の修理した錠前の合鍵を手に入れ、留守の邸宅に侵入す
る。いろいろ象徴するものはあるのかもしれないが、僕には
よく判らなかった。

「日本への旅・捕縄術」
“Portraits de voyages Japon: Hôjô Jutsu”
スケッチと簡単なアニメーションで綴られる日本の思い出?
最初は日本の印象記のようだが、途中からあらぬ方向に話が
進んで行く。
上映時間は3分だが、それなりに面白く観られ
る作品だった。
「すべてを失う前に」“Avant que de tout perdre”
クレモンフェラン国際短編映画祭で最優秀作品賞など4部門
を受賞した作品。DVに苦しむ妻と2人の子供が、妻の勤務
先だった大型スーパーを舞台に決死の脱出行を敢行する。
上
映時間の30分が見事な緊張感で演出された名品。
「次で最後(63年秋)」“Next to last(Automme 63)”
マチュー・アマルリック監督による5分36秒の作品。陽の差
し込む部屋に飾られた絵画の解説に、様々な言語でニュース
などの音声が重ねられる。ただし字幕はフランス語の解説に
対してだけで、他の言語には添えられておらず、多分英語で
は核問題があったと思うが、定かには聞き取れなかった。

「オマール海老の叫び」“Le cri du homard”
今年のセザール賞で短編映画賞を受賞した作品。フランスで
難民生活を送る一家の息子が祖国での戦いに出兵し帰還した
日の出来事。歓待の食事に出されるオマール海老を象徴的に
使って、戦争の恐ろしさが描かれて行く。
胸に突き刺さる作
品だった。
「移民収容」“Retention”
旧東欧圏から脱出して不法滞在している人々を巡る物語。主
人公は人道的な見地から収容者の強制送還の阻止を図るが…
不法滞在者の収容と強制送還の問題は、日本の事情も何本か
のドキュメンタリーで観たが、本作も政治と人道のせめぎ合
いを鮮烈に描いていた。

「春」“Le printemps”
春の到来を告げる森の様子をCGIアニメーションで描いた
15分13秒の作品。様々な楽器を模した造形が、華やかな音楽
を奏でながら行進する。中にはちょっと象徴的なものも登場
しているようだったが、僕の知識では理解できなかった。

以上合計で約135分だが、映画祭のみの上映となる。

『森に生きる少年』“Le Jour des Corneilles”
アヌシー国際アニメーション映画祭でプレミア上映された作
品。
深い森の奥で男手一つで育てられた少年は、父親から森の外
は行ったら命のない魔界だと教えられていた。一方、少年に
は様々な森の仲間がいて、緊急の時にはアドヴァイスもして
くれる。そして父親が大怪我をして…
キャラクターには『もののけ姫』に通じるところもあり、ジ
ブリの影響が色濃く見える作品だった。ただし物語はジャン
=フランソワ・ボーシュマンの原作に基づき、地に足のつい
たものになっている感じだった。

監督は、本作が初長編作品となるジャン=クリストフ・デッ
サン。声優はジャン・レノや2010年に亡くなったクロード・
シャブロールらが担当している。因にジャン・レノは、宮崎
駿監督の『紅の豚』でフランス語版の主人公を担当したこと
があるそうだ。
日本での一般公開は未定。

『ローラ』“Lola”
2009年1月紹介『シェルブールの雨傘』などの名匠ジャック
・ドゥミ監督による1961年のデビュー作。
港町ナントを舞台に、街の若者とキャバレーの踊り子、それ
に海軍の水兵や街に舞い戻った男などがちょっと入り組んだ
恋模様を描いて行く。
その街で退屈な毎日を送っていた主人公は、幼馴染の踊り子
と10年ぶりに再会し、彼女に恋心を伝えるが、彼女は7年前
に別れた男の影を追っていた。
ドゥミは2年後の『シェルブール』に本作の主人公を再登場
させ、7年後の『モデル・ショップ』では踊り子の後の姿を
描いており、それらの作品の原点とも言える物語がミシェル
・ルグラン作曲、アニエス・ヴァルダ作詞の音楽と共に綴ら
れている。

出演は、踊り子役にアヌーク・エーメが扮してドゥミが当て
書きしたというキャラクターを見事に演じている。
上映は仏米の映画財団によってディジタル修復された映像で
行われるが、日本での一般公開は未定となっている。

『タイピスト!』“Populaire”
1950年代を背景にした若い女性のサクセスストーリー。
主人公は田舎の雑貨屋の娘。父親が偶然仕入れたタイプライ
ターに興味を持ち、それは彼女を都会に連れ出す鍵となる。
そして人差し指だけの早打ちで秘書の座を射止めた彼女は、
敏腕コーチの指導の許「早打ち世界大会」への挑戦を開始す
るが…
女性タイピストの話では2003年6月紹介『セクレタリー』な
ども思い出すが、それに勝るとも劣らない女性の痛快な活躍
が描かれていた。

出演は、2005年9月紹介『ある子供』などのデボラ・フラン
ソワと、2011年7月紹介『ハートブレイカー』などのロマン
・デュリス。監督は、本作で長編デビューのレジス・ロワン
サル。
なお、本作は試写の時点では原題で紹介されたが、その後に
邦題が決定した。日本公開は8月に予定されている。

『In the House(英題)』“Dans la maison”
2010年9月紹介『Ricky』などのフランソワ・オゾン監
督による最新作。本作は昨年のサン・セバスチャン国際映画
祭で最優秀作品賞及び最優秀脚本賞を受賞している。
主人公はかつて作家を志したこともある国語教師。しかし今
は、凡庸な生徒たちの作文の採点に辟易する毎日だ。そんな
彼の前に才気溢れる作文が登場する。その文章に魅せられた
主人公はそれを書いた生徒の個人指導を始めるが、そこには
思いもよらない落とし穴が待ち構えていた。
無垢に見える生徒とのやりとりが、やがて息詰まる心理戦へ
と変化して行く。

教師役は、昨年4月紹介『屋根裏部屋のマリアたち』などの
ファブリス・ルキーニ。生徒役に新人のエルンスト・ウンハ
ウワー。他にクリスティン・スコット・トーマスらが共演し
ている。
5月に紹介した『コンプライアンス』は心理学に基づく実話
の映画化だったが、本作は見事なフィクションで創作の妙を
感じさせた。
日本公開は秋に予定されている。

『遭難者』(仮)“Le Naufragé”
『女っ気なし』(仮)“Un monde sans femmes”
1977年生まれの新鋭監督による2009年のデビュー短編と、そ
の1年後に同じ舞台で、一部の登場人物も共通に作られた作
品の2本立て。後者はフランス批評家組合の最優秀短編賞を
受賞している。
1本目は、長距離サイクリングの途中の田舎町でタイヤがパ
ンクしてしまった男性に、田舎の青年が救いの手を差し伸べ
るが…。2本目は、バカンスでやってきた若い母親と幼い娘
にその田舎の青年が所有するアパートを貸す。そして母子と
青年は一緒に買い物をするような仲になるが…
どちらも有り勝ちな感じの作品だが、フランスでも2本立て
で公開されてロングランを記録。高く評価されたようだ。

監督のギョーム・ブラックはフランス国立映画学校の卒業生
で、長編の次回作も完成している。青年役のヴァンサン・マ
ケーニュはフランス高等演劇学校の卒業生で、昨年5月紹介
『灼熱の肌』にも出ていたようだ。
日本公開は秋に予定されている。

『アナタの子供』“Un enfant de toi”
1996年『ポネット』などのジャック・ドワイヨン監督が、実
娘で歌手のルー・ドワイヨンを主演に迎えたラヴコメディ。
物語の語り手は7歳のリナ。母親のアヤは優しい歯医者のヴ
ィクトールと恋人同士だが、実は元カレのルイともヨリを戻
しているらしい。そしてリナがその証拠を掴んだとき、母親
はリナにもう1人子供が欲しいと打ち明ける。その子供の父
親は…?
他愛もないラヴコメだが、男女が取り交わす会話などには、
さすが名匠と呼ばれる監督の力量が発揮され、嫌味のない巧
みな物語が展開されていた。

共演は、サミュエル・ベンシェトリ、マリック・ジディ。そ
してリナを演じた子役のオルガ・ミシュタンは注目だ。
上映時間136分の大作で、日本での一般公開は未定。

『黒いスーツを着た男』“Trois mondes”
アラン・ドロンの再来と言われるラファエル・ペルソナーズ
主演のサスペンスドラマ。
主人公は、3日後に結婚を控えている男性。貧しい母子家庭
に育った彼は自動車販売の会社で頭角を現し、支配人の娘も
射止めて次期支配人の座も目前にしていた。しかし正に魔が
差したというタイミングで交通事故を起こし、思わず現場か
ら逃走してしまう。
ところがその事故には窓辺から目撃していた女性がいた。そ
して被害者が不法移民で、その被害もぞんざいに扱われる状
況を目にした彼女は、密かに逃亡したひき逃げ犯を調査し、
その身元を突き止めるが…。その行為が彼女を思わぬ危険に
陥れてしまう。
映画の始まりは若者の馬鹿げた行為に見え、そこに典型的な
巻き込まれの女性が関って行く。そしてそこからのサスペン
スの盛り上げが見事な作品だった。

共演は、昨年6月10日付「フランス映画祭2012」で紹介
『ミステリー・オブ・リスボン』のクロチルド・エスムと、
2008年11月紹介『ロルナの祈り』のアルタ・ドブロシ。監督
は多くの女性映画で知られるカトリーヌ・コルシニが手掛け
た。
日本での一般公開は8月31日から予定されている。

以上の作品が24日まで開催の「フランス映画祭2013」で
上映され、一部はその後に日本公開もされる。フランス映画
祭も何年か紹介させてもらっているが、今年は特に力作揃い
で堪能できた。



2013年06月16日(日) 第195回(Star Wars Episode ��,Tom Clancy's Ghost Recon,The Queen of the Tearling)

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
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 今回はこの話題から。すでに“Star Wars Episode �察匹�
監督が発表されているJ・J・エイブラムスから、ついにそ
のスケジュールが公表された。
 それによると撮影は来年早々にイギリスで開始される。そ
のため監督は、家族と共に6ヶ月以内にロンドンに移住し、
来年1年間はその地にいることになるだろう…とのことだ。
因に作品の公開は再来年に予定されている。
 ただし監督は、それ以上の作品の内容については一般的な
事柄以外の発言は避けていたようだ。そしてオリジナルから
派生した小説等が存在することに関しては、「人々にとって
それが重く、重要なものであることは承知している。それが
今回シリーズを前進させた鍵であったことも確かだ。しかし
自分は、作品を前と同じことの繰り返しにはしない」と回答
している。
 つまり前のシリーズ6作は、正に「スター・ウォーズ」の
連続であったものだが、監督はそこからの方向性を少し変え
ることも示唆しているようだ。それがどのような方向に向く
のか…。とは言え“Star Wars”のタイトルは変えられない
のだし、物語自体はジョージ・ルーカスのアイデアに基づく
としている訳で、そこにエイブラムスが何を盛り込むか、注
目されるところだ。
 脚本は、2010年6月紹介『トイ・ストーリー3』などのマ
イクル・アーント。因にアーントは、今年4月紹介『オブリ
ビオン』にも別名で参加していたようだ。
 配役には、すでに紹介したマーク・ハミル、キャリー・フ
ィッシャー、ハリスン・フォードに加えて、ランドー・カル
リシアン役のビリー・ディー・ウィリアムス、C3PO役の
アンソニー・ダニエルスの出演も噂されている。
        *         *
 現在はパラマウントで“Transformers 4”を撮影中のマイ
クル・ベイ監督が、ワーナーとゲームメーカーのUbisoftが
進めているゲームソフトの映画化に参加することを発表。
次期監督作品として進められる可能性が高まっている。
 作品は“Tom Clancy's Ghost Recon”と題されたもので、
『ジャック・ライアン』シリーズなどの原作者トム・クラン
シーのアイデアに基づくゲームは、2001年に第1作が発表さ
れ、昨年の5月には最新作の“Tom Clancy's Ghost Recon:
Future Soldier”がリリースされている。
 内容は、米大統領の私設兵団として活動する陸軍特殊部隊
の行動を描くもので、彼らは最新技術の駆使して問題地域に
侵入し、世界の脅威を排除した後にはその痕跡を全く残さな
い…というものだ。最新技術というのが一体どのくらいのも
のかは不明だが、説明だけ読んだ印象は『ミッション:イン
ポッシブル』のような感じがする。
 ただしこの計画で、Ubisoftの映画担当者は「この物語は
SFではない」と称している。とは言え『ミッション:イン
ポッシブル』だって基本的にはSFではないがファンは充分
に楽しめるものだし、しかもベイ監督ならそれなりに期待し
たいものだ。
        *         *
 『ハリー・ポッター』シリーズを手掛けたプロデューサー
のデイヴィッド・ヘイマンとワーナーブラザースは、新たな
ファンタシーシリーズとしてエリカ・ヨハンスン原作による
“The Queen of the Tearling”という作品の映画化に乗り
出すことを発表した。
 そしてその主演に、1999年の『ハリー・ポッター』のオー
ディションでハーマイオニー役を射止めたエマ・ワトスンの
起用も発表されている。
 物語は、2007年のデレク・オバマ大統領の演説から原作者
がインスパイアされたものとのこと。原作本は2014年にハー
パー・コリンズから出版予定となっており、3部作が予定さ
れている。因にヨハンスンは本作がデビュー作の新人作家だ
が、その出版には7桁($)の契約金が支払われており、そ
れだけの期待作ということだ。
 概要としては大規模な環境破壊から3世紀が経過した世界
を舞台に、邪悪な力を持った赤の女王に対抗する人々の姿を
描いたもの。より具体的には、翻訳もされているジョージ・
R・R・マーティン著『七王国の玉座』の女性版といった感
じのもののようだ。その中でワトスンは19歳の女性主人公を
演じることになっている。
 因に『七王国の玉座』も最初は3部作と発表されたが、現
在は7部作での出版が進行中のようだ。
 なお今回の映画化の計画は、まだ脚本家も監督も未定のも
のだが、ワトスンは1990年生まれで現在23歳。19歳の主人公
を演じるとしたら、その長くは待てないだろう。またワトス
ンは3月16日付で紹介したようにディズニーが実写で進めて
いる“Cinderella”を降板したが、その理由が本作との競合
だとしたら、“Cinderella”は今秋撮影、2014年公開予定と
なっているものだ。



2013年06月10日(月) 悪魔のいけにえ、ウォーム・ボディーズ、ダークスカイズ、ハートの問題、タイム スクープ ハンター、樹海のふたり、歌藝、ジンジャーの朝

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『3D(飛びだす)悪魔のいけにえ』“Texas Chainsaw 3D”
1974年トビー・フーパー監督によって発表され、オリジナル
は、マスターフィルムがニューヨーク近代美術館(MoMA)に
永久保存されている伝説的ホラー作品の後日譚。
物語は、オリジナルでの惨劇により、その犯人を含む一族の
住居が焼き討ちされる描写から始まる。その一件により一族
は滅亡したとされるが、実はその現場から生まれたばかりの
赤子が連れ去られていた。
そして時代は現代。精肉店で働く若い女性の許に1通の手紙
が届けられる。それはテキサスに住む老人が亡くなり、唯一
の繋累である彼女に邸宅が遺贈されたというのだが、その時
まで彼女は自らの出自を知らなかった。
こうして彼女は友人たちと共にその邸宅を訪ねるが、それは
思いの外に大きな屋敷で、しかもその地下には謎めいた開か
ずの扉が設けられていた。その後の展開は、まあよくあるパ
ターンでまた惨劇が繰り返されることになるのだが…。
この種のホラーに有り勝ちな、何でそんなことするの…とい
う部分もあるが、主人公自身について言えば情報の欠如によ
る誤解などもあって、その辺はオリジナルに対するリスペク
トというか、愛情も感じられる作品だ。
そして本作では、その展開が題名の通り「3D(飛びだす)」
映像で描かれたもので、これが最近のハリウッド3Dの奥行
き感ではなく、正に飛び出してくるのには、久々に3Dを堪
能できたとも感じられた。

主演は、2006年9月紹介『イカとクジラ』や、2010年『パー
シー・ジャクソン』とその続編でもヒロインを務めるアレク
サンドラ・ダダリオ。
他に、テレビ『コールド・ケース』などのタニア・レイモン
ド、グラミー賞に2度ノミネートされたというR&Bシンガ
ーのトレイ・ソングス、2002年7月紹介『ジョンQ』に出て
いたというケラム・マレッキ=サンチェス。
また、マリリン・バーンズ、ガンナー・ハンセン、ジョン・
デュガン、ビル・モーズリィらオリジナルやその続編に出演
した俳優がゲスト出演して彩りを添えている。特にオリジナ
ルでは特殊メイクでグランパ役を演じたデュガンは、今回は
素顔で同じ役を演じているそうだ。
監督は、2010年『テイカーズ』という作品で評価されたとい
うジョン・ラッセンホップ。脚本は、監督でもあるアダム・
マーカスと、女優としても活躍するデブラ・サリヴァンが手
掛けている。

『ウォーム・ボディーズ』“Warm Bodies”
『トワイライト』シリーズの原作者ステファニー・メイヤー
が絶賛したというアイザック・マリオン原作の映画化。
背景は、人類にゾンビ化現象が起き、生き残りの人間は外界
から隔離された砦に暮らし世界が滅亡に瀕している近未来。
主人公であり物語の語り手は、自分の名前は頭文字のRしか
思い出せないゾンビ化した青年。
ところがある日、仲間と食料の人間を求めて砦の方にやって
きた主人公は、医薬品の調達で砦を出てきた人間の一団に遭
遇する。そしてその脳みそを食べた主人公にはその男性の記
憶が蘇り、思わず1人の女性を保護してしまう。
こうしてその女性をゾンビの居住区に連れ帰った主人公だっ
たが…。この女性の名前がジュリーで、主人公とはRとJの
関係。こうしてシェイクスピアの悲恋物語になぞらえたドラ
マが展開されて行く。
さらにそこにはゾンビより危険とされるガイコツの集団も存
在もあった。

出演は、今年3月紹介『ジャックと天空の巨人』などのニコ
ラス・ホルト、2011年6月紹介『アイ・アム・ナンバー4』
などのテリーサ・パーマー。
他に、2008年6月紹介『俺たちダンクシューター』など
のロブ・コードリー、2011年10月紹介『フライトナイト−恐
怖の夜−』などのデイヴ・フランコ、同じく10月紹介『ラブ
・アゲイン』などのアナリー・ティプトン、そしてジョン・
マルコヴィッチらが脇を固めている。
脚本と監督は、2011年9月紹介『50/50 フィフティー・フィ
フティー』などのジョナサン・レヴィン。因にレヴィンは、
監督を目指して米国映画協会に在学中に起用されたデビュー
作が『血まみれ金髪女子高生』というホラー作品だったそう
だ。
また特殊メイクアップ効果を、“Barney's Version”という
作品で2011年の米アカデミー賞にノミネートされたエイドリ
アン・モロが担当している。
ゾンビはロメロ風のふらふら歩くタイプだが、それが必死に
走る様はそれなりにうまい展開になっていた。『ロミオとジ
ュリエット』へのオマージュでは、バルコニーのシーンなど
が巧みに再現されて行くが、最後までRをロミオとしないと
ころも、見識という感じかな。おかげで結構ハラハラの気分
も持続された。
人間が避難した砦を囲む壮大な壁や、走り回るガイコツ軍団
などのCGI-VFXもなかなかうまく作られている作品だった。


『ダークスカイズ』“Dark Skies”
『パラノーマル・アクティビティ』シリーズの製作者ジェイ
スン・ブラムが、2010年4月紹介『レギオン』と2011年7月
紹介『プリースト』のスコット・スチュワート監督と組んだ
最新作。
舞台は郊外の住宅地。登場するのは2人の息子とそこに暮ら
す夫妻。一家の暮らしは平穏だが夫は失業中で、節約のため
防犯アラームは切られている。ところがある夜、しっかり施
錠された室内が荒らされる。
その後も室内に異様なオブジェが形成されたりもするが、警
察は子供を疑うばかり。そして防犯アラームを再開すると、
今度はそのアラームが誤動作を起こす。それは8箇所のセン
サーが一斉に何かを感知したというのだ。
そんな異様な事件が繰り返され、夫は室内に監視カメラを設
置し、昼夜の監視を開始するが…
監督が創作の基にしたのは、娘殺しの容疑者にされた両親が
最終的に無罪となった実話の事件だそうで、不確かな証拠の
みで容疑者とされ、社会から悪人扱いされた人の姿を描くこ
とを考えたのだそうだ。
そこに本作では、さらに想定外の超常的なものが介在してい
たら…という発想で、これこそは不確かな証拠の典型と言え
るもの。そんなこの種の作品を好きな観客の微妙な心理を突
いた作品とも言えそうだ。
その一方で監視カメラの設置などは、製作者の過去の作品を
知っているとニヤリとするところだった。ただそれで監督の
意図が明確化されているかというと、それは多少悩むところ
ではあったが。

出演は、妻役に2010年4月紹介『小さな命が呼ぶとき』など
のケリー・ラッセル、夫役に同1月紹介『お家をさがそう』
などのジョッシュ・ハミルトン、2人の息子役に2011年10月
紹介『リアル・スティール』のダコタ・ゴヨと、テレビの公
開オーディション番組で人気を得て今年3作品に出演という
ケイダン・ロケット。
監督は家族にリアリティを持たせることを念頭にこの配役を
選んだそうだ。他にライミ監督版『スパイダーマン』3部作
でスパイダーマン嫌いの新聞発行者役を演じていたJ・K・
シモンズらが脇を固めている。
超常現象の介在を悪と決め付けている辺で、ちょっと気にな
るところはあったが、プロダクションノートに掲載された上
記の創作の意図を読むと監督の視線はその方向にはなかった
ようで、それは仕方がないというところだろう。


『ハートの問題』“Questione di cuore”
2001年から開催されているイタリア映画祭で上映された作品
の中から3作品が選択されて特集公開される「VIVA!ITALY」
の内の1本。
登場するのは、共に心筋梗塞で緊急入院・手術を受けた2人
の男性。2人は集中治療室の隣り合うベッドで入院中に徐々
に親しくなる。
その1人は脚本家で、洞察力が鋭く知識も豊富だが、人付き
合いが下手で今も独身。もう1人は貧しい環境から叩き上げ
た若き工場経営者で賑やかな家族が見舞いに来る。
そんな対称的な2人だったが、退院後に再会してお互いの存
在が重要であることに気づく。そして脚本家は経営者の家族
とも親しくなり、旅行にも同行するようになるが…
物語は多くのイタリアンコメディのように、騒々しくてドタ
バタしているが、その根幹は正しく「ハートの問題」であっ
て、結末には思わず居住まいを正すような人情味に溢れた感
動が待ち受けていた。

主演は、ウディ・アレンの2012年作品『ローマでアモーレ』
に出演のアントニオ・アルバネーゼと、2003年2月紹介『ピ
ノッキオ』などのキム・ロッシ・スチュワート。2人の掛け
合い漫才のような会話も絶妙の作品だ。
監督は、1993年『かぼちゃ大王』などのフランチェスカ・ア
ルキブージ。なお監督は、映画の演出には2人の主演俳優の
提案なども取り入れ、その完成には彼らの力が大きかったと
語っているようだ。本作は2009年の作品。
この他に「VIVA!ITALY」では、2007年1月紹介『幸せのちか
ら』以降はアメリカで活躍しているガブリエレ・ムッチーノ
監督が2001年に発表した『最後のキス』と、2001年『ぼくの
瞳の光』などのジュゼッペ・ピッチョーニ監督が1999年に発
表した『もうひとつの世界』という作品が上映される。
今回は試写スケジュールの都合で1作品しか観られず詳しい
紹介はできないものだが、いずれも本国では多数の賞に輝い
ている秀作のようだ。
イタリア映画の特にコメディには、ハリウッドやフランス映
画とも違う独特の味わいを感じるが、その泣き笑いの感覚は
何となく日本のコメディに通じているようにも思える。従っ
て本作は日本の観客には受け入れ易いと思うのだが。
それが今なかなか理解されないというのは、それを感じる日
本の笑いの文化が変質してしまっているのかな。僕はこの作
品で充分に泣き笑いさせて貰えたが、これを純粋に理解でき
ない人が増えているというのは気になるところだ。


『タイム スクープ ハンター−安土城 最後の1日−』
NHKで今年第5シーズンが放送されているSFシリーズの
映画版。
物語は、タイムマシンが開発された未来から歴史上の出来事
を記録する為に派遣されるジャーナリストが主人公。彼の担
当は史書には残らない庶民の姿を記録することであり、今回
の取材対象は、本能寺の変の後の京都御所で禁裏に避難した
民衆を救護した織田武士の姿だった。
ところがその武士に、本能寺を逃れてきた博多の豪商を警護
して送り返す任務が与えられる。こうして止む終えずその旅
に同行することになった主人公は、織田の居城だった安土城
の焼失という大事件に遭遇することになる。そしてそこには
歴史の陰に隠れた人々の姿があった。
僕が子供の頃にはNHKラジオで、毎年正月に放送される報
道局製作による架空実況中継の特別番組があって、定かには
覚えていないが、確かマラソン競技起源となったマラトンの
戦いの架空実況などを聞いた記憶がある。それは年イチのお
楽しみでもあったものだ。
そんな記憶もあっての親しみも感じる本作のテレビシリーズ
は、多分第2シーズン以降は全話を視聴している。従ってシ
リーズの構成なども知った上で観ている僕としては、レギュ
ラー陣の動きも理解できるし、少しアバウトな作り方なども
納得で楽しめる作品だった。
ただそれが、普段のシリーズを知らない観客にどう映るかは
多少不安にはなるが、テレビ放送より豪華なオープニングや
ゲスト俳優陣には思わずニヤリとした。特に、シリーズでは
モニター上にしか登場しない本部の情景が、いろいろ紹介さ
れるのもファンとしては面白かった。

出演は、要潤、杏のレギュラーに加えて、カンニング竹山、
宇津井健、夏帆らが本部要員。また時任三郎、上島竜兵、嶋
田久作、小島聖らが歴史上の人物として登場する。
脚本と監督は、シリーズを企画から立ち上げ、全作の脚本演
出を手掛ける中尾浩之。1998年のMTVコンテストでグランプ
リを獲得、2000年のカンヌ広告祭で、世界の新人監督8人の
中の1人に選ばれた俊英。映画は初作品になる。
因に、シリーズは2008年の新番組コンペに応募され、そこか
らシリーズ化、そして映画化に漕ぎ着けたものだ。
なお撮影は、現存する安土城址でも行われており、そこに往
時の姿がCGIで合成されている。そして歴史の謎とされる城
が炎上する姿も再現された。またエンディングロールに添え
られた映像も楽しめた。


『樹海のふたり』
ドキュメンタリー作家として数多くの受賞に輝く山口秀矢監
督が、お笑いコンビ・インパルスの板倉俊之と堤下敦を主演
に迎えて描いた実話に基づくドラマ作品。本作は今年のゆう
ばり国際ファンタスティック映画祭に正式出品された。
物語の舞台は富士山麓の樹海。主人公は制作会社に所属する
2人のフリーディレクター。彼らは会社から出された企画へ
の不満から、自ら立てた企画を持って樹海の中央にあるバス
停のそばに止めた車で張り込みをしている。
その企画とは、樹海に自殺のためにやってくる人物を捉え、
その心境などをインタヴューすると共に、自殺を思い止まる
ように説得して、その模様を映像に収めるというものだ。そ
して何日も張り込みを続けた2人はついに1人の男性の取材
に成功するが…
物語の発想は、10年ほど前に樹海をテーマにした民放のドキ
ュメンタリーを制作した際に、2人のフリーディレクターを
紹介され、正にその彼らが自殺志願者を説得する番組を制作
していたのだそうだ。
その話を聞いた監督は、最初はあまり良い印象を持たなかっ
たようだが、彼らと共に仕事をする内に、彼らの内に秘めた
葛藤を知り、そのピュアな気持ちに感動してこの物語を映画
にしたいと考えたという。
以来10年の歳月を掛け練り上げた作品とのことだ。

インパルス以外の出演者は、遠藤久美子、きたろう、烏丸せ
つこ。特に烏丸は、以前に山口が演出したドラマに出演した
事が有り、偶然再会した時に企画段階の話しを聞かされて、
ぜひ制作するようにと励ましたという。
映画初主演となるインパルスの演技は、当然ながら特にうま
いというものではないが、そのちょっと不自然さもある感じ
がかえって本作のイメージには合っている感じで、樹海の風
景とも合わさって超常的というほどではないが不思議な雰囲
気を醸し出している。
それはゆうばり国際ファンタスティック映画祭で正式上映さ
れるに相応しいものにもなっていた。
以前にも何度か書いていると思うが、僕は自殺を描いた作品
を肯定しない。一方で富士の樹海は、管轄する行政が自殺が
テーマの作品の撮影を許可しないのだそうで、本作も自殺自
体がテーマではなくその防止を描いているものだ。
それはいろいろ微妙なところもありはするが、本作は映画祭
に正式招待というファンタスティックな雰囲気も含めて評価
できる作品になっていた。


『歌藝〜終り無きわが歌の道』
今年が没後12年、十三回忌を迎えた三波春夫の往年のリサイ
タル映像を上映する「特別シネマ公演」。
実は僕自身が15年ほど以前に中野区江古田の元三波邸跡地に
建てられた集合住宅に居住していて、当時は同じ建物の一角
に暮らしていた三波氏の姿も何度か見掛けたことがある。そ
んな訳で多少親しみもあって観た作品だった。
内容は2部構成で、前半では1976年(昭和51年)に荒川区民
会館で行われた「歌謡生活20周年記念リサイタル」が紹介さ
れる。
ここでは、デビュー曲の「チャンチキおけさ」から「世界の
国からこんにちは」までのヒット曲のオンパレードで、中で
も長編歌謡浪曲と銘打たれた代表作「俵星玄蕃」を完全版で
聞けるのは、かなり堪能したと思えたものだ。
因にこのリサイタルでは、この年の文化庁芸術祭優秀賞を受
賞しているが、その映像は残っていないとされていたもの。
しかし当時行われた中継の録画が放送局で発見され、今回は
それをHDリマスターしたものが上映される。
またこの前半では、三波氏のトレードマークとも言える「お
客様は神様です」の名台詞も聞かれるが、ここでは前置きと
して「歌う前には心を静かにして、神様の前に出るような気
持ちで歌っています。ですから…」との説明があり、その言
葉の真意が初めて判ったものだ。
そして後半には、1994年(平成6年)の「芸能生活55周年記
念歌舞伎座リサイタル」の模様が収められている。
ここでは前半で聞けなかった「東京五輪音頭」が登場する他
には、「俵星玄蕃」を別として前半に重複しない曲が選ばれ
ているが、中ではこの年発表で日本レコード大賞企画賞を受
賞した「平家物語」が全曲聞けるのも貴重なものだ。
またその前には、「平家物語」に関連するインタヴューが挿
入されて、そこでは舞台と違った三波氏の顔も見られる。実
はそのインタヴューが江古田の建物の中で行われているよう
で、夜間で見辛いが背景の窓の外には他の建物も見えて、そ
れも僕には懐かしかった。
三波氏は、国民歌手と呼ばれる存在だったが、「忠臣蔵」や
「平家物語」のような作品は、まさに日本文化の根源とも言
えるもので、それをその後の歌手が誰も引き継いでいないの
は、不思議なところだ。

公開は6月22日に東京は新宿バルト9、日比谷みゆき座他で
開始され、その後は全国順次公開される予定になっている。
オリジナルがNTSCで、走査線の粗さやクロスカラーなど
も生じるが、それも歴史を感じさせた。

『ジンジャーの朝』“Ginger & Rosa”
2005年7月紹介『愛をつづる詩』などのサリー・ポッター監
督の最新作。
背景は1960年代のロンドン。1945年の同じ日に生まれて以来
一緒に育ってきたジンジャーとローザという2人の少女の青
春が描かれる。
ビートルズもヌーヴェルヴァーグも誕生していないその頃の
若者にとって、最大の関心事は冷戦さなかの世界情勢。ソ連
が核ミサイルを開発し、キューバ危機が起き、街中では反核
デモが行われている。
そんな社会に影響される2人もまた、ファッションや煙草や
飲酒といった大人の世界に関心を寄せて行くが、どちらかと
いうと行動派のローザに対して、慎重派のジンジャーには躊
躇うことも多かった。
そんな中で父のいないローザは、思想家でもあるジンジャー
の父親に惹かれ、その思いは恋愛へと膨らんで行く。そして
2人の関係が明らかになったとき、2人の違いは決定的なも
のになってしまう。

主人公の2にを演じるのは、2011年6月紹介『スーパー8』
などのエル・ファニングと、2010年4月紹介『ブライト・ス
ター』などのジェーン・カンピオン監督の娘のアリス・イン
グラード。アリスは本作は本格デビュー作となる。
他に、2009年7月紹介『ココ・アヴァン・シャネル』などの
アレッサンドロ・ニヴォラ、2010年12月紹介『かぞくはじめ
ました』のクリスティーナ・ヘンドリックス、2011年2月紹
介『キッズ・オールライト』のアネット・ベニング。
さらに『ハリー・ポッター』シリーズのティモシー・スポー
ル、今年3月紹介『ライジング・ドラゴン』などのオリヴァ
ー・プラット、2007年9月紹介『レンブラントの夜警』に出
ていたというジョディ・メイらが脇を固めている。
ポッター監督は1949年生まれ。実は僕も同い年だが、そんな
監督の目に映る少女たちは、ある種の憧れだったのかな。単
なるノスタルジーでもない、特には何とも言えない感覚が映
画の各シーンには感じられた。
そしてそれは、今の若者たちでは描くことができないものの
ようにも感じられた。



2013年06月01日(土) 第194回(Blade Runner,The Man from U.N.C.L.E.)

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
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 まずはこの話題から。
 リドリー・スコット監督、ハリスン・フォード主演により
1982年に公開されたSF作品“Blade Runner”の続編が計画
されている。
 オリジナルは、アメリカの作家フィリップ・K・ディック
が1968年に発表した長編SF小説『アンドロイドは電気羊の
夢を見るか?』に基づくもので、原作から発想され、『未知
との遭遇』などのダグラス・トランブルが手掛けたVFXに
より映像化された未来都市の景観が評判を呼んで、特に日本
では多数のアニメ作品にその影響が見られるなど高い支持を
得ている。
 その続編の計画だが、実はオリジナルの製作当時にすでに
作品はシリーズの第1作と位置づけられていたのだそうで、
そのオリジナルの脚色を手掛けた脚本家のハンプトン・ファ
ンチャーはかなり早くから続編の構想を進めていたようだ。
そして計画は、2年前の2011年8月にワーナー傘下の製作プ
ロダクションのアルコンの主導で立ち上げられ、スコットが
再度監督を担当するという発表もされていた。
 ところがその計画はファンチャーの脚本に問題があったら
しく、ほどなくして頓挫。情報はそのまま聞こえなくなって
しまっていた。
 今回はその計画が再燃したもので、具体的な動きとしては
脚本のリライトに、テレビの『ヒーローズ』などを手掛ける
マイクル・グリーンとの交渉が報告され、ファンチャーの原
案に基づく新たな脚本が執筆されるとのことだ。因にファン
チャーの原案は1982年作の物語の数年後を舞台に、リック・
デッカードの新たな冒険が描かれているようだ。
 なお、オリジナルの舞台設定は2019年だったのだそうで、
今となってはかなりの近未来だが、現実にオリジナルの世界
観をどのように現実と摺り合わせるか、さらに続編の設定が
そこから数年後というのは、相当のさじ加減が必要になりそ
うだ。
 製作状況は、脚本家の名前が挙がっただけでその他は未定
だが、2年前の時はスコットの監督の他に、フォードとルト
ガー・ハウアーの出演も取りざたされていたもので、今後の
情報に目を光らせておくことにしたい。
        *         *
 お次はちょっと残念な報告で、4月1日付第190回で紹介
した“The Man from U.N.C.L.E.”の映画化から、トム・ク
ルーズの降板が発表された。
 その理由は明らかにされていないが、実はその直前に映画
シリーズの5作目となる“Mission: Impossible”の新作の
計画が発表されており、その作品が最優先で制作されるとの
ことでスケジュールの折り合いがつかなくなったようだ。
 ということで主演スターの降板となってしまったが、ワー
ナーでは直ちに代役の選考を進め、ワーナーでこの夏公開さ
れる“Man of Steel”でスーパーマン役を演じたヘンリー・
カヴィルの起用が検討されている。
 因にカヴィルは1983年生まれ、2005年には『007』の最
終候補にまで残っていたが、当時は若すぎるという理由で落
選したとのことで、テレビ放送の開始時にはイアン・フレミ
ングが企画に関わったという話もあったシリーズの主演には
問題なさそうだ。
 その他の配役では、5月1日付第192回での報告したアー
ミー・ハマーのイリア・クリアキン役と、さらに今年1月紹
介『アンナ・カレーニナ』に出ていたスウェーデン出身アリ
シア・ヴィカンダーの出演も紹介されているようだ。
 昨年1月紹介『シャーロック・ホームズ』などのガイ・リ
ッチーの監督で進められる作品の製作時期などは明らかにさ
れていないが、こちらも最優先で進められれば、クルーズの
主演作と同時期公開の可能性もある訳で、どちらもテレビシ
リーズが元のスパイシリーズの対決となれば、それも面白く
なりそうだ。


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井口健二