井口健二のOn the Production
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2011年12月25日(日) 戦火の馬、善き人、すべての女に嘘がある、ヒューゴの不思議な発明、三国志英傑伝・関羽、ハンター、英雄の証明、きつつきと雨+年末挨拶

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『戦火の馬』“War Horse”
11月に『タンタンの冒険』を紹介したばかりのスティーヴン
・スピルバーグ監督の実写による最新作。因にスピルバーグ
監督の実写作品は、2008年『インディ・ジョーンズ/クリス
タル・スカルの王国』以来になるものだ。
原作はイギリスの作家マイクル・モーパーゴが1982年に発表
した児童文学。その原作から本作では、2000年『リトル・ダ
ンサー』などのリー・ホールと、2003年12月紹介『ラブ・ア
クチュアリー』などのリチャード・カーティスが脚色してい
る。
なお同じ原作からは、2007年にニック・スタフォードがロン
ドンで舞台化し、2008年のオリビエ賞や2011年にはアメリカ
のトニー賞で5部門に輝いた作品があり、スピルバーグはそ
の舞台を観て触発され、それから7カ月で本作の撮影に漕ぎ
着けたとのことだ。
物語の背景は第1次世界大戦。その開戦の少し前にイギリス
の農村デヴォンで1頭のサラブレッドが誕生する。母馬の許
で元気一杯に育ったその仔馬は競売で小作農の一家に買われ
るが、それは必ずしもその家に幸運はもたらさない。
やがて戦争が始まり、農家の息子によって調教されたサラブ
レッドは軍用馬として徴用される。しかし海を渡って赴いた
欧州戦線では、さらなる数奇な運命がその馬を翻弄し、独仏
の最前線での人と馬のドラマが繰り広げられる。
テーマ的には戦争ものということになるが、本作で描かれる
のはその悲惨さであり、それによって翻弄される馬とそれに
関る人々の姿だ。そしてそれは特に第1次世界大戦という背
景によってより際立つものになっている。

出演は、農家の息子にジェレミー・アーヴァイン、その母親
に2008年1月紹介『ウォーター・ホース』などのエミリー・
ワトスン、地主役に今年10月紹介『ロンドン・ブルバード』
などのデヴィッド・シューリス。
他に、今年6月紹介『マイティ・ソー』に出演のトム・ヒデ
ルストン、昨年7月紹介『魔法使いの弟子』に出演のトビー
・ケベル、今年9月紹介『サラの鍵』に出演のニエル・アレ
ストリュプらが脇を固めている。
舞台劇の影響なのか、本作でも場面が順に転換する構成で、
その場面ごとにドラマが描かれる。それは多少ぶつ切りの感
じもするが、作者の言わんとするところは明確に伝わってく
るものだ。それに登場する馬の名演技も見事だった。


『善き人』“Good”
1981年にロンドンで初演され、同年52歳で他界したイギリス
の劇作家C・P・テイラーの遺作となった戯曲の映画化。
ナチスが台頭する第2次大戦前のドイツを舞台に、その流れ
に逆らいながらも歴史に巻き込まれてしまう大学教授の悲劇
を描く。
主人公は、第1次大戦に出兵し、その後は学業を納めてベル
リン大学で文学の教鞭を取りながら小説も発表しているアー
リア人の男性。彼には幼馴染みで共に戦場にも行った精神科
医がいたが、妻の主治医でもある医師はユダヤ人だった。
その医師には国外に去ることを勧める主人公だったが、医師
はまだ仕事が残っていると応じず、主人公もまた事態に進捗
には甘く考えていたようだ。そんな主人公がナチスの検閲官
に呼び出され意外な申し出を受ける。それは彼自身と母国の
将来を変えて行くものだった。
オリジナルの戯曲は、突然主人公が歌い始めたり、時間軸が
非直線的に連なるなど、かなり難解なものだったようだ。映
画化では、その特徴は継承しながらも本来のテーマがより判
り易くなるように脚色がなされている。

主演は、1981年の当時は駆け出しで、オーディションを受け
るために訪れたロンドンで初演の舞台を観たというヴィゴ・
モーテンセン。そのときに圧倒されたという俳優は、まさか
4半世紀後に自分がその役を演じるとは思っていなかったそ
うだ。
共演は、『ハリー・ポッター』シリーズなどのジェイスン・
アイザックス、2007年8月紹介『ヴィーナス』でその時は新
人ながら見事な演技を見せたジョディ・ウィッテカー。
他に、『グリーン・ランタン』などのマーク・ストロング、
『アンダーワールド』などのスティーヴン・マッキントッシ
ュ、『ハリー・ポッター』などのジェマ・ジョーンズらが脇
を固めている。
因に舞台は日本でも2度ほど公演されているそうで、その舞
台を僕は観ていないが、仮に舞台の観客からは批判されたと
しても、テーマを明確にした今回の脚色は映画化の方法とし
ては正しいと思えるものだ。
それほどに見事に、図らずも歴史を作ることになってしまっ
た1人の男の悲劇を、本作は明確に描き出していた。


『すべての女に嘘がある』
役者、アイドルからAV、風俗嬢まで様々な女性たちが集ま
る女優集団KU.RO.FU.NE.による第1回製作作品。
物語は、精神病院を舞台にしたもので、その病院内で起きた
殺人事件と3人の女性の監禁事件が描かれる。殺されたのは
病院長の後妻、監禁されていたのは病院長の先妻の連れ子と
患者、それに病院に出入りする製薬会社のMR。
そして、警察は監禁されていた女性たちの尋問を始めるが…
彼女たちの証言は微妙に食い違う。ただ一致するのは、殺さ
れた被害者によって監禁され、彼女は「罪を認めて懺悔しな
さい」と言ったという。
というとで、精神病院で殺人となればサイコ的なお話が展開
されるかと思いきや、これがちょっと外されるところは、案
外新鮮な感じではあった。もっともそれは、期待外れと感じ
てしまう人もいるかも知れない微妙な部分だ。
それに上映時間が70分の作品では、結局あまり多くは望めな
いもので、特に物語のかなりの部分が説明に費やされるのは
物足りない。やはりこれはもっとドラマを見せるようにして
欲しかった。

脚本と監督は、2009年3月紹介『腐女子彼女。』で助監督を
務めていたという宝来忠昭。最近はショートムーヴィなども
発表しているようだが、恐らくこれが長編第1回作品になる
のだろう。映像的には多少凝ったところもあって、それなり
に楽しめた。
出演者で、女優陣は上記の通り新人が中心だが、中には昨年
7月紹介『花と蛇3』の琴乃、同11月紹介『ギャングスタ』
に出演のめぐり。他に浅居円、範田紗々、長谷川ミク、かす
みりさ、周防ゆきこ、木村葵、新井花菜が集団の構成員のよ
うだ。
また、今年9月紹介『GARO』などの蛍雪次朗、2007年1月紹
介『saru』などの高野八誠らが脇を固めている。
正直に言って、ベテランの脇役陣に比べて主演の女優たちの
演技は覚束ないし、まだまだの感じだが、集団としてはこれ
以降も舞台や来夏には映画の第2弾も計画しているようで、
今後に期待して紹介しておくことにしたい。


『ヒューゴの不思議な発明』“Hugo”
アメリカの絵本画家で作家のブライアン・セルズニックが、
2007年に発表した児童文学小説(邦訳:ユゴーの不思議な発
明)の映画化。全米図書賞のファイナリストにも選ばれたそ
の原作を、2007年『ディパーテッド』でオスカー受賞のマー
ティン・スコセッシが監督した。
1930年代のフランス・パリ。主人公のヒューゴは、モンパル
ナス駅の壁の中に住む少年。彼は唯一の身寄りだった叔父と
共に、駅の各所に備えられた大時計の修繕やネジ巻の管理を
していたが、叔父がいなくなってからも人知れずその仕事を
続けていた。
その一方でヒューゴは、博物館の火災で亡くなった父親の残
した自動人形の修理も続けていたが、父親がメモ帳に書き残
した足りない部品を手に入れるのも一苦労だ。そんなヒュー
ゴが目にしたのは駅の片隅にあるおもちゃ屋だった。
駅には浮浪孤児を捕まえる鉄道公安官もいて、その目を掻い
潜って店から小さなおもちゃを盗もうとしたヒューゴは店主
に捕まってしまう。しかも父親のメモ帳も奪われ、途方に暮
れたヒューゴは店主の自宅を突き止めてその孫娘に話し掛け
るが…。
それは映画史に残る出来事へと発展して行く。
映画の始祖の1人でもあるジョルジュ・メリエスが、1920年
代に姿を消し、1929年にモンパルナス駅のおもちゃ屋の店主
をしていたところを発見されたのは事実であり、その時、彼
が主演女優だったジャンヌと孫娘と共に暮らしていたのも真
実だ。
つまりこの物語は、主人公ヒューゴと彼の周囲のものを除け
ば全て実話に基づくもので、そんな物語が、克明に再現され
た当時のパリの風景と、メリエスの作品を中心にした数々の
サイレント映画の映像と共に描かれる。
それは特にメリエスの1902年作品『月世界旅行』が大画面に
映写される画面は圧巻で、しかもそれが当時も行われていた
1駒ごとの手着色によるカラーヴァージョンでの上映には、
正に感動の瞬間と言えるものだった。

出演は、2009年5月紹介『縞模様のパジャマの少年』のエイ
サ・バターフィールド、今年5月紹介『モールス』のクロエ
・グレース・モレッツ、そして1982年『ガンジー』のガンジ
ー役でオスカー受賞のベン・キングズレー。
他に、サッシャ・バロン・コーエン、エミリー・モーティマ
ー、クリストファー・リー、ジュード・ロウ、レイ・ウィン
ストン、ヘレン・マックロリーらが共演している。
なお本作は、ジョニー・デップ主宰のプロダクション=イン
フィニタム・ニヒルの製作作品だが、デップ本人の出演は記
録されていない。ただコーエンやリーなど所縁の俳優が出演
しているのは、デップの意向という感じのするところだ。
SF映画ファンには正に最高の贈り物で、またメリエスが建
設したグラスハウスやその他の撮影風景の再現など、映画フ
ァンにとってもこれ以上のものはないと言える作品。本作を
楽しめない映画ファンなどいるはずのない作品だ。


『三国志英傑伝・関羽』“関雲長”
中華街の関帝廟に奉られている中国後漢末期(西暦160年頃)
の武将で、劉備の義弟として生涯の忠誠を誓って戦い、後世
は神格化されて関帝聖君(算盤の発明者で商売の神様だそう
だ)と呼ばれるようになる関雲長の姿を描いた香港映画。
物語の始まりで関羽は劉備の敵である曹操に捕えられている
が、曹操は最高の敬意で関羽を遇している。そして曹操の白
馬の陣地が袁紹の顔良に攻め込まれた際、劣勢となった曹操
は関羽に助けを求め、聞き入れた関羽は顔良を討って曹操に
勝利をもたらす。
この働きでさらに関羽を厚遇する曹操だったが、後漢の皇帝
から爵位を贈られても、関羽の劉備に対する忠誠心は変らな
い。ところが曹操の陣地にはもう1人、関羽と同郷で劉備の
許嫁である綺蘭がいて、彼女の存在が関羽の心に影を落とし
始める。
そして曹操は、綺蘭と関羽を劉備の許に送り返すことにし、
その間の各関所には無事通行を許可するよう命令を送るのだ
が…。その道中の関羽の前には様々な刺客が現れる。果たし
てその命令を下したのは誰なのか。

出演は、関羽役に、共に今年3月紹介の『処刑剣』『孫文の
義士団』や昨年11月紹介『イップ・マン葉問』などのドニー
・イェン。他に2000年『鬼が来た』を監督主演したチアン・
ウェン、2006年2月紹介『SPIRIT』などのスン・リーらが共
演している。
正直に言って話がかなり入り組んでいるというか、大体最初
に敵の捕虜になっているのに頼まれて戦い、しかも勝利に導
く辺りからなかなか話が判り難いのだが、多分『三国志』の
読者にはこれで良いものなのだろう。
それでこの関羽という人物が希代の戦士というか猛将で、行
く先々で死体の山を築いてしまう。その様子がドニー・イェ
ンのアクションで描かれるのだから、それはまあアクション
映画としてはこの上のない題材と言えそうなものだ。

そして映画はその期待通りの作品になっている。監督と脚本
は、2002年『インファナル・アフェア』などのアラン・マッ
クとフェリックス・チョン。元々は2人の共同脚本をマック
が監督していたが、最近はチョンも共同監督に名を連ねてい
るものだ。

『ハンター』“The Hunter”
イギリスオブザーバー紙が、「21世紀の21人の作家」の1人
に選んだジュリア・リーの原作で、1999年に発表された小説
の映画化。稀少生物を求めて、未開の大自然に挑むハンター
の姿を描いたオーストラリア映画。
主人公の男性は、医薬会社の依頼を受けてタスマニア島に降
り立つ。その目的は1936年に絶滅したとされるタスマニアン
タイガー。その目撃情報が寄せられ、会社はその生物が持つ
新規な毒素に関わるDNAの採取を傭兵ハンターの彼に命じ
たのだ。
こうして島に降り立った主人公は会社が指示した一家の貸間
にベースを置き、未開の森林地帯に分け入って調査を開始す
る。しかしそこは森林伐採業者と環境保護団体とが激しく対
立している場所でもあった。
そして環境保護団体の手先と見做された主人公は、団体の中
心人物でもあった父親が行方不明になっている一家と共にそ
の矢面にも立たされることになるが…。そこには彼の雇主で
ある会社の別の思惑も関っていた。
何しろタスマニア島の大自然がこれでもかと言うくらいに出
てくる作品。その大自然の中で父親が行方不明になっている
一家の幼い姉弟や母親との交流が描かれる。それは孤独なハ
ンターの心を徐々に溶かす一方で、大自然の厳しさを教える
ものでもある。

出演は、昨年9月紹介『デイブレイカー』でも共演している
ウィレム・デフォーとサム・ニール。2003年12月紹介『タイ
ムライン』に出演のフランシス・オコナー。それに子役のモ
ルガナ・デイヴィスとフィン・ウッドック。
脚本のアリス・アディスンと、監督のダニエル・ネットハイ
ムは共にテレビ界の人のようだが、どちらも手堅い仕事をし
ている感じだ。また製作は、今年11月紹介『アニマル・キン
グダム』のヴィンセン・シーハンが務めている。
映画にはタスマニアンタイガーの実際の記録映像なども挿入
されて、この絶滅したとされる生物への思いも感じられる作
品。その野性生物の尊い命が人間の醜い争いの中で奪われて
行く哀しみも描いている。

『英雄の証明』“Coriolanus”
シェイクスピア最後の悲劇と呼ばれる「コリオレイナス」。
その物語の舞台を現代に移して描いたレイフ・ファインズ初
監督作品。
最近では『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿としても
知られるファインズは、元々はイギリス王立演劇アカデミー
の出身で、2003年にはロイヤル・シェイクスピア・カンパニ
ーにも参加している。
そのファインズが初監督作品として選んだのは、ローマ時代
を背景にした2人の戦士の闘いの物語。しかも本作はシェイ
クスピアをそのまま描くのではなく、2000年『グラディエー
ター』などジョン・ローガンの脚色で、驚くような作品に作
り変えられている。
映画の時代背景は現代。しかしローマには独裁者がいて、そ
のローマに向けて隣国からは近代装備の軍隊が侵略を仕掛け
ている。つまりこれは一種のパラレルワールドのような舞台
設定。そしてその舞台の中で、正にシェイクスピアが現代劇
として甦っている。
台詞の多くはシェイクスピアのそのままかとも思わせるが、
登場人物たちの演説や弁論などで素晴らしい言い回しが次々
に述べられる。そこには政治劇のような様相もあって、詭弁
のような弁論には現代政治家の姿も観えて来る。
その一方で戦闘のシーンはセルビアやモンテネグロで撮影さ
れたもので、戦火の爪痕が残る市街地でのシーンには正に慄
然とするものがあった。これには戦争を利用している点で釈
然としないものもあるが、これも戦後復興の一環と考えるな
ら良しとしよう。

出演は、ファインズのコレオレイナス役に加えて、その宿敵
オーフィディアス役にジェラルド・バトラー、コレオレイナ
スの母親役にヴァネッサ・レッグレイヴ、妻役に今年6月紹
介『ツリー・オブ・ライフ』のジェシカ・チャスティン。
他に『ボーン』シリーズのブライアン・コックスや、1996年
『ゴースト&ダークネス』などのジョン・カニ、2005年9月
紹介『ミリオンズ』などのジェームズ・ネスビットらが脇を
固める。
闘うことでしか生きられなかった男の悲劇が、ベテラン俳優
たちの見事な演技合戦で描き出されている。


『きつつきと雨』
2009年『南極料理人』の沖田修一監督が自身のオリジナル脚
本を映画化し、2011年第24回東京国際映画祭のコンペティシ
ョンで審査員特別賞を受賞した作品。山間の村に撮影のため
やってきた若い監督と、無骨なきこりの男性との素朴な交流
が描かれる。
物語の始まりは、林の中でチェーンソーを使って樹木の伐採
しているきこりの男。その樹木が倒れる先から中年の男が現
れ、撮影中の騒音を止めるように要請される。ここでは助監
督の男ときこりとのちぐはぐな会話が笑い誘う。
しかしこのシーンだけで、その村で映画の撮影が行われてい
ることと、きこりの男が既にそれを了解していることの両方
が理解されるのだから、これは始まりからしてなかなか巧み
なシナリオと言えるものだ。
そしてひょんなことからその映画にエキストラ出演すること
になったきこりの男は、徐々に映画の撮影に飲み込まれて行
くのだが…。何事にも自信の無さげな監督の率いるその撮影
現場には殺伐とした雰囲気が漂い、撮影は行き詰まり掛かっ
ていた。
一方、きこりには監督と同年代の息子がいてその息子への思
いが監督と重なって行く。そんなきこりとの何気ない会話が
監督の心に響き、彼を勇気付け始める。そんな紆余曲折の中
でゾンビ映画の撮影が進められて行く。

出演は、役所広司、小栗旬。他に古舘寛治、高良健吾、臼田
あさ美、嶋田久作、平田満、伊武雅刀、山崎努らが脇を固め
ている。
役所演じるきこりの、本当に何気ない会話や行動が小栗扮す
る監督を勇気付け、そして自信を取り戻した監督の許ではそ
れまで協力的かどうかも判らなかった助監督や撮影監督らが
適切な助言を出し始める。
そしてある意味で理想的とも言える撮影現場が形成されて行
く。それは素晴らしい人情味にあふれたシーンだし、そんな
素敵な展開が見事に描かれている作品だった。
なお映画祭で上映されたオリジナルの上映時間は2時間9分
だったが、試写では映画祭のときから冗漫だった部分が少し
再編集されていたようで、一般公開では多少短くなっている
かもしれない。

        *         *
 年末に入り、突然の足の痛みに襲われました。現在医者に
は椎間板ヘルニアと診断され、絶対安静を命じられておりま
す。このため今回の記事はあまり推敲できていませんので、
その点ご了承ください。
 また年末のサッカー試合の応援にも行くことができず、今
年はホーム戦は全試合の応援に駆けつけたのに、年内最後の
ホーム側での応援に行けなかったのは残念至極です。また今
年はバンコクでの最初の試合も観戦したのに、国内での最後
の試合を観戦できなかったのも心残りでした。
 なおサッカーの応援では、九州・山陰、北陸などにも出掛
けましたが、それらの観戦記は、Jリーグファンサイト[J's
GOAL]のスタジアムガイドにも、OnthePrductionの名義で投
稿していますので、よろしかったらご覧になってください。
 年内は今回が最後の更新になります。また来年もよろしく
お願いします。良い年をお迎えください。



2011年12月18日(日) トワイライト、Gドクター、恋人たちのパレード、果てしなき路/断絶、ジョン・カーター(特)、ウタヒメ、ニュー・イヤーズ・イブ+Alice

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ブレイキング・ドーンPart1』
     “The Twilight Saga: Breaking Dawn - Part 1”
2009年1月紹介『トワイライト−初恋−』で始まったシリー
ズが最終話を迎え、前後篇で公開されるその前篇「Part 1」
の試写が行われた。因に本作はアメリカでは11月の第3週に
公開され、史上第5位のオープニング記録を達成した後は、
3週連続の興行成績1位に輝いているようだ。
という作品だが、ここで僕は一体何を紹介すればいいのだろ
う。内容は、クリスティン・スチュアート扮するベラ・スワ
ンと、ロバート・パティンスン扮するエドワード・カレンの
結婚式とそれに続くハネムーンが描かれるもの。
そこには人間とヴァンパイアの結婚という特殊性はあるもの
の、その特殊性に関わる部分の殆どは恐らくは「Part 2」へ
の伏線で、本作で物語となっているものではない。つまり本
作では、2人の結婚式とハネムーンのホームヴィデオを見せ
られているようなものだ。
しかし本シリーズに4年間付き合っているファンたちには、
ベラもエドワードも家族の一員みたいなものだから、その家
族のホームヴィデオということではこれで成立してしまうの
かな。ホームヴィデオなら繰り返し観るのも当然のことなの
かも知れない。
アメリカでの3週連続第1位には、そう考えるしか解釈のし
ようがなさそうだ。

脚本は、「Part 2」も含めてシリーズ全作を担当したメリッ
サ・ローゼンバーグ。因に彼女は、本作の後は1986年製作の
ファンタシー“Highlnder”のリメイクで、2014年の公開予
定の脚本にも関っている。
監督は2005年5月紹介『愛についてのキンゼイ・レポート』
などのビル・コンドン。結局このシリーズでは各回ごとに監
督が交替したが、最後の前後篇はコンドンが担当している。
出演は、ほぼ全員がシリーズを通しての出演となっており、
本作には出て来ないダコタ・ファニングも「Part 2」には登
場するようだ。
『ハリー・ポッター』に続いて『トワイライト』も終幕を迎
え、いよいよその後釜狙いの争いが激しくなってきそうだ。

『グッド・ドクター』“The Good Doctor”
『LOTR』や『POTC』で人気スターになったオーラン
ド・ブルームが、自ら製作も務めて主演した医療ドラマ。
主人公は、大病院で研修医になったばかりの男性。フェロー
(認定医)を目指すなど向上心はあるが、特に優秀という訳
でもなく、家柄もないようで、ベテランの婦長からは嫌がら
せのような仕打ちを感じていたりもしている。
そんな医師が投薬ミスを疑われて落ち込んでいたところに、
若い女性が腎盂腎炎の発症で入院してくる。そしてその主治
医になった医師は、彼女に医師−患者以上の好意を持ち、彼
女を手元に置き続けるための「医療」を始めてしまう。
しかしそれは想定外の結果を招き、さらに別の問題も引き起
こしてしまうが…。周囲からは「良い先生」と呼ばれる医師
の実体が明らかにされて行く。

脚本は、主にテレビ界で“Veronica Mars”や“The Sarah
Connor Chronicles”などの脚本とプロデューサーを務めて
きたジョン・エンボム。監督は、アイルランド出身で本作で
ハリウッドデビューとなるランス・デイリー。
共演は、エルヴィス・プレスリーの孫娘で昨年12月紹介『ラ
ンナウェイズ』にも出ていたライリー・キーオ。他に2008年
12月紹介『ベンジャミン・バトン』でオスカー候補のタラジ
・P・ヘンスン、前回紹介『ペントハウス』などのマイクル
・ペーニャ。
さらに2004年2月紹介『卒業の朝』に出演のロブ・モロウ、
ライミ監督版『スパイダーマン』3部作でスパイダーマン嫌
いの新聞発行者役を演じていたJ・K・シモンズらが脇を固
めている。
脚本では、主人公の行動がちょっと短絡的に過ぎるかなあと
いう感じはするが、それで全体は統一されているからこれで
もいいのだろう。撮影は閉鎖された病院などを使って行われ
ており、演出はそれなりにリアルで悪くなかった。
ただ結末はこれでいいのか…、と思ってしまうところではあ
るが、制作者たちは現実はこんなものだと言いたかったのか
も知れない。そんな感じもしてしまった。


『恋人たちのパレード』“Water for Elephants”
2006年に出版され、NYタイムズ紙のベストセラーリストに
12週間に亙って掲載されたというサラ・グルーエン原作小説
の映画化。
1930年代の大恐慌の最中、主人公は名門コーネル大学の獣医
学科を卒業目前にして両親が交通事故に遭い、中退を余儀な
くされる。そんな主人公が都会に向かう鉄道沿いを歩き、疲
れてふと飛び乗ったのはサーカス列車だった。
そのサーカスには猛獣もいてさらに団長の妻は曲馬乗り。そ
の馬の病気を言い当てた主人公は団長の気に入られ、サーカ
ス団に雇われることになる。一方、不況によってテントを畳
むサーカス団も多い中、彼の団は潰れた団の出し物を雇って
拡大して行く。
そして彼のいるサーカス団に象がやってくるが…。良いとこ
ろもあるが、暴力を振るい出すと止まらなくなる団長や、そ
の妻、さらにその他の団員たちを巡ってドラマが展開されて
行く。

主演は、『トワイライト』シリーズでブレイクしたロバート
・パティンスン。そして団長の妻役に、本作では製作も務め
る2006年『ウォーク・ザ・ライン』でオスカー受賞のリーズ
・ウィザースプーン。因に日本では、上記『ブレイキング・
ドーンPart1』と同日公開になるようだ。
他に、2009年『イングロリアス・バスターズ』でオスカー受
賞のクリストフ・ヴァルツ、2008年5月紹介『イントゥ・ザ
・ワイルド』でオスカー候補になったハル・ホルブルック、
今年1月紹介『お家をさがそう』に出演のポール・シュナイ
ダーらが脇を固めている。
以前にも書いたと思うがバックステージものは好きだし、サ
ーカス列車は40年近くも前にロサンゼルスで貨物ヤードに留
まっているのを高架橋から観たことがあって、その中がどう
なっているかも興味津々だった。
まして本作が描くのは、アメリカ文化の中でも特異な時代の
1930年代。そんな古き良き(?)時代が見事に再現されてい
た。特に、背景にブルックリン橋とエンパイアステートビル
が観える景観は素晴らしいものだった。

脚本は、2008年『P.S.アイラヴユー』では脚本と監督も務
めたリチャード・ラグラヴェネーズ、監督は、2005年2月紹
介『コンスタンティン』と2007年12月紹介『アイ・アム・レ
ジェンド』のフランシス・ローレンス。丁寧な演出が見事な
作品を生み出している。

『果てしなき路』“Road to Nowhere”
『断絶』“Two-Lane Blacktop”
まず『果てしなき路』は、ロジャー・コーマン製作の1959年
『魔の谷』などで知られるモンテ・ヘルマン監督による長編
は21年ぶりという2010年の作品。
映画は、最初に本作と同じ題名の映像作品をCD-ROMで再生す
るところから始まる。それに連れて、作品を制作した監督が
映画製作の模様を説明し始める。その作品は、事故死した女
性を巡る謎を実話に基づいて解明して行くものだった。
映画の製作はまず脚本の完成とスタッフの招集、そして俳優
の選考から始まる。しかし主演女優の選考が難航し、その中
で監督は少し変わったオーディションテープを送ってきた無
名の女優に目が留まる。こうして主演女優も決まり撮影が開
始されるが…。
監督はその女優に魅了されて、徐々に親密な関係になって行
く。しかしその女優の経歴には謎の部分があった。一方、撮
影スタッフの中に元保険会社の調査員という男がいて、その
男は女優の謎に気付き始める。
事故死した女性と主演女優の関係、そして女性が事故死した
原因とは…。それは製作中の映画にも重大な影を落とし始め
る。

出演は、2001年『ロック・ユー!』などのシャニン・ソサモ
ン、2006年9月紹介『スネーク・フライト』に出演のタイ・
ルニャン、1997年のエイドリアン・ライン監督による『ロリ
ータ』でロリータを演じたドミニク・スウェイン。
他に、クリフ・デ・ヤング、イタリアでヴィットリオ・デ・
シーカ監督作品などに出演のファビオ・テスティらが脇を固
めている。
脚本は、ヘルマン監督とは1971年以来のつきあいというステ
ィーヴン・ゲイドス。本作は2人が映画製作を続けてきた間
での苦労や悲惨な状況など、様々な出来事が反映されている
そうだ。
そこで本作のエンドロールには、this film is true(だっ
たかな)という文字が表示される。ここで通常は、based on
a true eventというような言葉が使われるものだが、今回の
表示の意味は…、冗談にしてもかなり微妙に感じられるもの
だ。

またエンドロールにはfor laurieという記載もあるが、これ
はヘルマン監督の1971年作品『断絶』に主演したローリー・
バードという女優に捧げられているもの。彼女は無名の新人
を監督が主演に抜擢したものだが、その後26歳で自殺したそ
うだ。
従ってその女優起用の経緯などには、本作とも共通する要素
もあるものだが、今回の公開に併せてその『断絶』もニュー
プリントで再公開されることになっている。
その映画の内容は、LAからDCのロード・ムーヴィだが、
当時『イージー・ライダー』などが持て囃されたのとは一線
画した作品で、実は当時の評判はあまり芳しくなかったよう
だ。実際、今回試写も鑑賞したが風変わりな作品という感じ
だった。

ただ、使われている自動車(シェビーとポンティアックGT
O)などの時代背景には今観ると面白いものがあり、それな
りの興味を曳かれる作品とは言えそうだ。上映は同じ劇場で
レイトショーされるようだ。

『ジョン・カーター』“John Carter”(特別映像)
全米公開は来年3月、日本は4月13日公開が予定されている
エドガー・ライス・バローズ原作「火星」シリーズの実写映
画化について、約20分のフッテージ(部分映像)の紹介が行
われた。
紹介されたのは、�_仞院焚鮴發靴織廛蹈妊紂璽機爾�marsと
呼んでいたが、通訳はバルスームに統一していたようだ)に
行く前の地球での様子、��火星の到着して緑色人タルスとの
出会い、�N仗Э佑吠瓩┐蕕譴討離�ャロット(火星の犬)と
の出会い、�ぅ妊献磧次Ε愁螢垢竜濬个叛鐺�、�ソ莊詐譴任�
大白猿との闘い、及び初公開の日本版予告編。
他に、コンセプトアートやキャラクターと出演俳優の比較、
撮影地の実景とVFXを施した背景映像、身長4mの緑色人
登場シーンの撮影風景などのメイキングがスライドで紹介さ
れた。
さらにバローズの原作や、今回の監督と脚本家についてもス
ライドを使って説明が行われた。因にプロデューサーの解説
によると、バロウズの原作では登場人物の心理面が描かれて
おらず、映画化に当ってはその点が主に補充されたとのこと
だ。
その脚本は、ピューリッツァ賞受賞者で『スパイダーマン』
の映画化のストーリーも手掛けたマイクル・シェイボンと、
『スパイダーマン』『レミーのおいしいレストラン』などの
ストーリーボードを手掛けたマーク・アンドリュースによっ
て執筆されている。
そして監督は、2003年『ファインディング・ニモ』や2009年
『ウォーリー』を手掛け、後者でアカデミー賞長編アニメー
ション賞を受賞しているアンドリュー・スタントンが初の実
写作品に挑んでいるものだ。
ということで、映像を観ての印象だが、VFXに関してはい
まさら特筆する事もないほどに見事なもので、それはファン
タシー・アドヴェンチャーの世界感を様々なクリーチャー、
さらに今回は巨大な緑色人との共演などのシーンも完璧に描
き出していた。
一方、ジョン・カーターの心理面に関しては、背景となる地
球での出来事がかなり克明に描かれており、それは戦闘シー
ンでのカットバックなどの手法で、フッテージで観ているだ
けでも感動的に描かれていた。この辺はシェイボンの手腕と
いう感じだ。
ただまあそれが、特に原作がよく知られているアメリカのフ
ァンにどのように映るかは、多少気になるところだが…。逆
にそんなことに拘わるのは、口煩い日本のファンの方かなと
は思ってしまうところでもあった。
ということでは実は一点、少し気になるところがあって、そ
れは映像の中に階段が観えたような気がしたものだ。
この階段に関しては、バローズ自身が原作の中で火星の特徴
としても紹介していたところだし、近年バリアフリー社会を
先見していたような部分でもあったので、その設定が無視さ
れたのはちょっと気になった。まあこれが口煩い日本のファ
ンの意見な訳だが。

なお今回のフッテージ上映は2Dだったが、来年4月の公開
は3Dでも行われる。その3D効果にも注目したいものだ。

『ウタヒメ』
1982年宝塚月組娘役トップの黒木瞳と、1995年宝塚花組トッ
プの真野みきの共演で、生活に疲れた主婦たちが選んだ究極
のストレス解消法を描いた作品。その作品を2009年8月紹介
『僕らのワンダフルデイズ』の星田良子が監督した。
主人公は、郊外の住宅地の一戸建てに夫と1人娘と共に住ん
でいる専業主婦。元は秘書課勤務で何にでも気が回ってしま
うが、それが家族にはちょっと疎ましい? そして夫との関
係は冷えきり、娘は登校拒否でコンビニに行くとき以外は部
屋を出てこない。
そんな主人公が、検診で行った病院で元秘書課の後輩と出会
い、娘を連れ戻しに行ったコンビニでパート店員募集の張紙
を観たことから何かが変り始める。それはコンビに訪れる女
性客も巻き込んで…
ある切っ掛けで彼女らとカラオケに行った主人公は、ふと高
校時代に憧れた「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を演奏
する男子生徒たちの姿を思い出す。そして演奏したいと口走
った彼女に離婚慰謝料の入った元後輩が動き、演奏の目標も
できてしまう。
それは娘の在籍する学校の学園祭で開催されるチャリティ演
奏会への出演だった。それに向けて特訓が始まるが…。

共演は、2006年6月紹介『フラガール』などの山崎静代と、
2007年5月紹介『怪談』や2008年『ぐるりのこと。』では日
本アカデミー賞主演女優賞も受賞した木村多江。日本一不幸
が似合う女優といわれる木村の弾けた演技は観ものだ。
他に、西村雅彦、六角精児、相島一之、太田基裕、赤座美代
子、栗咲寛子(新人)、佐野史郎らが脇を固めている。また、
五十嵐貴久の原作に基づく脚本は、2006年9月紹介『アジア
ンタムブルー』などの神山由美子が担当した。
物語の多くを占めるのは、中年女性たちの本音のぶつけあい
みたいなもので、それは妻帯者の男性にとっては観ていて忸
怩たる気分になる部分もある。従って作品は多分に女性向け
と思われるが、男性は女性の本音を知るためにも観ておくと
良いかも知れない。
物語の展開では、クライマックスの直前でちょっとテンポが
緩むところがあって、これが原作に沿ったものなのかは不明
だが、映画的には少し工夫が欲しかった感じはした。ただこ
れを無くすと話が凡庸になってしまうし、正に工夫のし所だ
ろう。
しかしクライマックスで演奏される曲は、僕が応援している
サッカーチームのチャントに使われるほどの名曲中の名曲と
言えるものだし、それを4人の女優が懸命に演奏して歌う姿
は感動的でもあった。


『ニュー・イヤーズ・イブ』“New Year's Eve”
2010年1月紹介『バレンタインデー』のゲイリー・マーシャ
ル監督が、今回もまた、ある特別な1日に起きる様々な恋物
語を描いたアンサンブルドラマ。
ロサンゼルスを舞台にした前作から約2年。本作の製作に当
っては前作の続編という事前情報もあったが、完成されたの
は、大晦日の喧噪が最も似合う街ニューヨークを舞台にした
前作とは全く別の物語だった。
そこに登場するのは、今や世界中が注目するタイムズ・スク
エアのボール・ドロップを初めて任された地元協議会の副代
表から、喧噪に背を向けて部屋に閉じ籠っているアーチスト
までの様々な人々。
その中には、セレブパーティを任されたケータリングの女性
シェフと人気歌手、死期を迎えたのに誰も見舞いに来ない老
人と彼を見守る看護士、その年の最初に誕生した赤ん坊に贈
られる懸賞金を目当てに出産を競い合う両親たち。
その一方で、大晦日まで仕事をしているバイク便の配達人と
その受取人の女性、大晦日を思い切り楽しみたい10代の娘と
過保護な母親。そして、去年の大晦日にパーティを抜け出し
て出会った女性と1年後の再会を約束しているセレブの男性
などなど。
そんな人々が約2時間の映画の中で、様々なドラマを織り出
して行く。

出演は、オスカー受賞者のロバート・デ・ニーロ、ヒラリー
・スワンク、ハル・ベリー。ノミネーターのアビゲイル・ブ
レスリン、ミシェル・ファイファー。前作にも出演していた
ジェシカ・ビール、アシュトン・カッチャー(それぞれ役柄
は異なる)。
さらにこの街には欠かせないサラ・ジェシカ・パーカー、人
気歌手のジョン・ボン・ジョビ、今年9月紹介『グリー』の
リー・ミシェル、2008年11月紹介『ハイスクール・ミュージ
カル』のザック・エフロン。
また、2009年8月紹介『男と女の不都合な真実』のキャサリ
ン・ハイグル、昨年12月紹介『かくぞはじめました』に出演
のジョッシュ・デュアメル、今年7月紹介『ワイルド・スピ
ード』に出演のクリス・“リュダクス”・ブリッジス。
さらに、ノンクレジットでマイクル・ブルームバーグ市長本
人や今月紹介『ペントハウス』のマシュー・ブロデリックら
も顔を出している。
喧噪の渦巻く中で次々に発生するトラブルや、それを何とか
修復しようと頑張る人々。特にハル・ベリーを中心にした2
つの物語が素晴らしい彩りを添えていた。
        *         *
 今回はちょっと気になった情報を一つ。
 11月27日に死去した1980年『アルタード・ステーツ』など
のイギリスの名匠ケン・ラッセル監督が、生前に1976年公開
“Alice in Wonderland”のリメイクを計画し、オリジナル
の製作者ビル・オスコと共に脚本も略書き上げていたという
ものだ。
 この情報にはティム・バートン版も公開されたばかりなの
に何を今更、という感じになるが、実はこの作品、正式には
“Alice in Wonderland: An X-Rated Musical Fantasy”と
呼ばれているもので、つまりポルノ・パロディ。オスコは、
1974年には『フレッシュ・ゴードン−Space Wars』の邦題で
日本公開もされた“Flesh Gordon”も発表しており、その後
は1984年に“Night Patrol”なんて作品も製作しているが、
その手の作品では有名な製作者だった。
 そして今回のオリジナルに関しては、当時毎年夏休みに訪
米していた僕は現地で鑑賞していたもので、その時は「宇宙
船」誌などに報告もした。そんな作品をラッセルがリメイク
する計画だったということだが。今回の情報では監督の未亡
人が遺志を継いで映画化を実現したいとして、現在製作資金
の調達と監督の選考を行っているとのこと。
 オリジナルを観て一番感心した部分は、実はバートン版で
も描かれてしまっているが、勿論それも踏まえてどのような
ラッセル版が誕生するか、これは楽しみなことだ。



2011年12月11日(日) ワイルド7、わが母の記、顔のないスパイ、ピープルvs.GL、ビーストリー、幕末太陽伝、メランコリア、ウォーキング・デッド+Oscar/VFX

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ワイルド7』
望月三起也原作アクション漫画の映画化。
ワイルド7。それは警察内に超法規的処置によって創設され
た極秘部隊。その隊員は何れも元は凶悪犯という過去を持つ
7人によって構成され、通常の警察では対処できなくなった
事件を超法規的な判断によって解決する。
一方、新聞記者の藤堂は、今や都市伝説とも言われるワイル
ド7の存在を実証しようと調査を進めている。しかし彼が確
証を得たと考えて書いた記事は全て何かの圧力で没にされて
しまう。それでも新人記者の岩下と共に事件を追い続けてい
たが…
そんな中で新たな事件が勃発し、その事件もワイルド7の出
動で解決するが、そこにある謎が生じる。それは警察内に潜
む何者かがワイルド7の活動を利用して富を得ているという
疑惑だった。
ところがその疑惑の解明を進めようとしたワイルド7は、突
然テロリストに仕立てられ、全警察を敵に回して戦うことを
余儀なくされてしまう。
ワイルド7は全員がバイクを疾走させ、さらに爆薬や拳銃な
どの凶悪犯時代に培った技術を駆使して犯罪撲滅のため戦い
続ける。それらが映画の前半ではバイクアクション、後半で
は銃撃戦として映像化される。

出演は、ワイルド7に、2010年12月紹介『まほろ駅前多田便
利軒』などの瑛太、2009年2月紹介『レイン・フォール』な
どの椎名桔平、関ジャニ∞の丸山隆平、今年9月紹介『スマ
グラー』などの阿部力、宇梶剛士、平山祐介、松本実。
他に、深田恭子、中井貴一、吉田鋼太郎、中原丈雄、要潤、
本仮屋ユイカらが脇を固めている。
撮影は川口市、北九州市、大分市などで行われており、最近
北九州を訪れた自分には門司港の風景などが懐かしかった。
ただし物語の舞台は東京とされているもの。そこで都内での
走行は困難と思われる超大型車両がばく進するシーンなどは
かなりの迫力があった。
監督は人気の『海猿』シリーズや、2009年3月紹介『おっぱ
いバレー』などの羽住英一郎、脚本は、長谷部安晴作品を多
く手掛けている深沢正樹が担当している。

『わが母の記』
平成3年に亡くなった昭和の文豪井上靖による自伝的小説の
映画化。その原作から2008年『クライマーズ・ハイ』などの
原田眞人が脚色・監督した。
主人公は、ベストセラーも出始めた人気作家。その著作権の
検印紙貼りは、家族や編集者も総出の大騒ぎだ。その最中に
故郷の伊豆湯ヶ島に病床の父親を見舞った主人公は、ふと母
親の言動が気掛かりになる。
そんな主人公には、幼い頃に台湾へ移住した家族と別れさせ
られ、1人伊豆の祖母の許で暮らした経験が、母親に捨てら
れたという記憶として残っていた。それは今でも母親への確
執となっている。
一方、主人公の一家では末娘が反抗期に入り、主人公の言う
ことを聞かなくなる。それは家族のことを作品の題材にする
父親への反発でもあった。そんな一家の混乱ぶりが、30年代
半ばからの昭和期を背景に描かれて行く。
その昭和の再現は、車のナンバープレートから電話機まで、
かなり克明に行われており、ちょうどその頃に子供時代を過
ごした僕のような人間には、心地よい懐かしさにも感じられ
た。
そして母親の問題は、以前にも書いたように自分の母親も同
じような状況なので、それなりに理解しながら観ることが出
来たものだ。

出演は、今年7月紹介『一命』などの役所広司、前回紹介の
『ツィゴイネルワイゼン』などの樹木希林、さらに昨年6月
紹介『オカンの嫁入り』などの宮��あおい。
他に、2007年8月紹介『呉清源』などの南果歩、2010年7月
紹介『神様ヘルプ!』などのキムラ緑子、2008年5月紹介の
『落語娘』などのミムラ、2010年『森崎書店の日々』などの
菊池亜希子。
また、昨年2月紹介『RAILWAYS』などの三浦貴大、ハロプロ
出身の真野恵里菜らが脇を固めている。それと三國連太郎が
不思議な役柄で登場していた。
なお本作は今年のモントリオール世界映画祭でプレミア上映
されて審査員特別グランプリを受賞した他、釜山国際映画祭
のクロージング作品にも選ばれている。

『顔のないスパイ』“The Double”
2008年『ウォンテッド』や2009年6月紹介『3時10分、決断
のとき』などを手掛けたマイクル・ブラントとデレク・ハー
スのオリジナル脚本で、ブラントが監督デビューを果たした
作品。
物語の発端は、アメリカの対ロシア政策にも関わる要人の暗
殺。その手口はすでに死亡したはずの旧ソビエトの伝説的殺
し屋カシアスの犯行と同じだった。そこで当時そのカシアス
を追い詰めることに功績のあった元CIAのエージェントが
呼び戻される。
そのエージェントが出席した会議では、若いFBIの捜査官
によるカシアス犯人説の意見が述べ立てられる。しかし元エ
ージェントは「カシアスは死亡しており、犯行は模倣犯によ
るもの」との主張を譲らない。
そんな2人が暗殺犯追跡の任務に当たることになるが…

出演は、元CIAのエージェントにリチャード・ギア、FB
Iの若き捜査官に2007年4月紹介『スパイダーマン3』で敵
役のヴェノムを演じたトファー・グレイス。
他にマーティン・シーン、昨年10月紹介『キック・アス』に
出演のテイマー・ハッサン、今年7月紹介『プリースト』に
出演のスティーヴン・モイヤー、2009年3月紹介『ザ・スピ
リット』に出演のスタナ・カティック、2008年『クローバー
・フィールド』に出演のオデット・ユーストマン(最近アナ
ベルに改姓したようだ)らが脇を固めている。
邦題と原題を合わすと、二重スパイの話であることの予想が
付いてしまうが、さすがに新進脚本家の作品は捻りとパンチ
の利いたものになっていた。しかも冷戦時代から現代に至る
国際情勢の変化も巧みに織り込んで物語が構成されている。
ただ、劇中でシーンの演じる役柄がどこまで事情を知ってい
たのかが、多少曖昧に感じられたところで、その辺はチャン
スがあったら確認したくなった。恐らくは全て知っていたと
いう設定なのだろうと思うのだが。

なおブラントとハースの次回作は、ニューラインの製作で、
Richerd Doetsch原作による“The Thirteenth Hour”という
タイムトラヴェル物の脚色を進行中だそうだ。

『ピープルvs.ジョージ・ルーカス』
            “The People vs. George Lucas”
1977年にアメリカの若き映画監督ジョージ・ルーカスが発表
した『スター・ウォーズ』。それはある種の文化とも言える
ものになっている。しかしその文化は一体誰のものなのか、
創造者であるルーカスと、ファンの戦いが始まる。
事の発端は1997年公開の『特別篇』。この公開をルーカスは
「旧作の修復と、当時は技術的な問題で出来なかったシーン
の追加」と称したが、その他にも旧作の設定をも変えかねな
い演出の変更も施されていた。
それは、エピソード4では有名なジャバ・ザ・ハットの登場
シーンなどだが、このシーンの紹介では、オリジナルの俳優
で撮影された映像も併せて映写され、これはファンには貴重
なものになっている。
しかし問題はそこだけではなかった。その他に密かに行われ
た演出の変更では、確かにこれはファンが問題にしてもいい
と言えるものが本作の中で明らかにされている。そしてこの
シーンでも、オリジナルと変更後が一目瞭然に写し出される
ものだ。
このように本作では、ファンが問題にする『特別篇』やエピ
ソード1〜3の問題点などが映像を使って克明に紹介され、
それは今まで何となくあったこれらの作品に対するもやもや
感が、かなり晴らされるものにもなっている。
その意味ではこの作品は、『スター・ウォーズ』ファンに対
する素晴らしい贈り物ということが出来るだろう。
ただし本作では、そのもやもや感は解消できても、それなら
『スター・ウォーズ』をどうすれば良いのかは提示してくれ
ない。それは勿論の本作をルーカスが観て改心してくれれば
良いのだが。それが望めるほど明確な解決策の提示はされて
いないのだ。
でもこれが、現時点でのファンの意見の集約であることは確
かなものだし、これに対してルーカスは何らかの回答を出す
必要はあるのではないか。そんなことは考えさせる作品には
なっていた。

いずれにしても本作では、いろいろ貴重な映像も紹介され、
『スター・ウォーズ』ファンなら一度は観ておいて損のない
作品だ。

『ビーストリー』“Beastry”
ディズニーのアニメーションやミュージカルでも有名な『美
女と野獣』の物語を、アメリカの高校生を主人公に描き直し
たアレックス・フリン原作ヤングアダルト小説の映画化。
主人公はイケメンの高校生。母親は居ないが、父親はテレビ
の人気キャスターで、主人公も学内でのモテモテ男だ。そん
な主人公は、その勢いで学生委員会の委員にも立候補してみ
るが…
その主人公が立候補した選挙戦には、ちょっとシャイな女子
学生も立候補していた。その彼女がちょっと気になる主人公
だったが、それより気になったのは魔女と噂される別の女子
学生だ。
その魔女は彼の選挙ポスターに落書きをするなど、何かと彼
の行動を批判し続ける。そこで彼も仕返しをしてしまうのだ
が…、それは飛んでもない結果を招いてしまう。怒った魔女
によって彼は醜い姿に変えられてしまったのだ。
こうして醜い姿となった主人公は、父親によって別荘に軟禁
され、そこで彼は盲目の教師と、家族を祖国に残して出稼ぎ
に来ているメイドと共に暮らすことになる。そしてある夜、
顔を隠して街に出た彼は選挙に立候補していた女子学生と再
会するが…
期限までに真実の愛を得られれば元の姿に戻れる…というの
は原作と同じ設定だが、その間の経緯が、かなりいろいろと
現代社会を反映したものになっている。その辺りでこれは現
代の若者にも受けそうなお話だ。

出演は、今年6月紹介『アイ・アム・ナンバー4』のアレッ
クス・ペティファーと、2008年11月紹介『ハイスクール・ミ
ュージカル/ザ・ムービー』のヴァネッサ・ハジェンス。ペ
ティファーはかなりハードなメイクにも挑戦している。
他に、起業家としても著名なメアリー=ケイト・オルセン、
2008年3月紹介『路上のソリスト』などのリサ・ゲイ・ハミ
ルトン、ハリウッドボウルで上演された『レント』の演出も
手掛けたニール・パトリック・ハリスら多彩な顔ぶれが脇を
固めている。
脚本と監督は、2008年“Phoebe in Wonderland”がサンダン
ス映画祭で話題になったダニエル・バーンズ。本作は監督の
長編第2作だ。

『幕末太陽伝』
1963年に45歳で亡くなった川島雄三監督による1957年、39歳
のときの作品。モノクロ/スタンダード・110分の作品が日
活創立100年を記念してディジタル修復され、再公開が行わ
れる。
この作品を、僕は以前にNHKか何処かのテレビ放送で観て
いたものだが、今回の試写を観ている内にそれぞれのシーン
の記憶が次々に甦り、さすがインパクトのある作品だったと
再確認もできた。
物語は、落語の「居残り佐平次」を中心に「品川心中」「三
枚起請」などをミックスしたもので、幕末期の品川宿を舞台
に、佐平次を中心とした客たちと、女郎や番頭、女将らの人
間模様が描かれて行く。そして客の中には高杉晋作らの姿も
交じっている。
時は幕末。開国と攘夷の狭間で世間には不穏な雰囲気も漂っ
ている。しかし江戸を少し離れたここ品川宿は、酒と女を求
める客で今日も大賑わい。しかしそんな中では、長州藩士た
ちが何やら謀議も進めているようだ。
そして佐平次は、仲間3人と飲み食いした挙げ句に居残りを
決め込むが、これが如才なくて見事に店を仕切ってしまう。
その店の中では、借金に追い詰められて初な男と心中を図る
女郎がいたり、起請文を乱発する女郎がいたり…
長州藩士による御殿山異人館焼き討ちなどの歴史的な事件も
織り込みながら、混乱期を図太く生き抜く庶民の姿が描かれ
ている。

出演は、佐平次役にフランキー界、高杉役に石原裕次郎。他
に、左幸子、南田洋子、芦川いずみ、市村俊幸、金子信雄、
山岡久乃、岡田真澄、高原駿雄、菅井きん、小沢昭一、西村
晃、熊倉一雄、殿山泰司、二谷英明、小林旭ら懐かしい名前
のスターたちが顔を揃える。
脚本は川島監督と、後に1961年『豚と軍艦』を撮る田中啓一
(山内久)に今村昌平。今村は本作の助監督も務めている。
映画は、撮影当時の品川八ツ山陸橋の実景から始まり、文久
二年(1863年)へとタイムスリップする。そして物語が開幕
するが、脚本では最後も佐平次が撮影当時の現代に走り込む
という結末だったそうだ。
しかしそのシーンは、物語の完成度を崩すという判断で削除
されてしまった。もしその結末があったら…でもそれが無く
ても充分に記憶に残る作品だ。


『メランコリア』“Melancholia”
昨年11月紹介『アンチクライスト』のラース・フォン=トリ
アー監督の新作。今年のカンヌ国際映画祭でキルスティン・
ダンストが最優秀女優賞に輝いた作品。実はパルムドールの
呼び声を監督の舌禍で逃したとの意見もあり、完成度も高い
作品だ。
事前に、映画の内容として「放浪惑星が地球に接近し、危機
が迫ったときの人々の姿を描いている」との情報があり、そ
れをフォン=トリアーがどのように描いたか、僕には興味の
そそられる作品だった。
その物語はプロローグと、本編は登場する姉妹の名を取った
「ジャスティン」「クレア」と題された2部構成とされてお
り、まずプロローグでは、長編小説の口絵のように、これか
ら始まる物語の要所が描かれる。それはかなり強烈な印象を
残すものだ。
そして第1部では、湖畔の邸宅で開かれる結婚式の様子が描
かれ、その花嫁の精神が徐々に侵されて行く姿が描かれる。
しかしここではまだ惑星の接近は示唆はされるが具体的には
提示されない。
その結婚式が終り、普段の生活に戻ってからの第2部で惑星
の接近が明らかになる。だがここでも人々は摺り抜けると信
じており、平穏な生活が続けられる。しかしその中で徐々に
事態が進行して行く。
監督は長くうつ病を煩っており、本作の物語はその中から生
まれたものだそうだ。従って物語には患者の妄想のようなと
ころもあり、その妄想が見事なCGI=VFXによる圧倒的
な映像で提示される。
それは特にプロローグに顕著で、出来ればこのプロローグに
描かれたシーンの全てを本編の中で観たかったもの。実際は
台詞のみなど全ては描かれないが、本編に登場するシーンだ
けでも充分に満足できる作品だった。

共演はシャルロット・ゲンズブール、キーファー・サザーラ
ンド。さらにシャーロット・ランプリング、ウド・キアー、
ジョン・ハート。またいずれも北欧出身のステラン&アレク
サンダー・サースガード父子、イェスパー・クリステンセン
らが脇を固めている。
『スパイダーマン』のMJが受賞したことも嬉しかったが、
これでフォン=トリアー作品からは前作のゲンズブールに続
いての受賞者で、これも見事なことと言える。

『ウォーキング・デッド』
            “The Walking Dead - Season 1”
今年10月に第1話のみ試写を観て紹介したフランク・ダラボ
ン製作総指揮によるテレビシリーズで、本国では2010年10−
12月に放送されたシーズン1の全6話のDVDを提供された
ので改めて紹介する。
物語の全体は、作品の中ではウォーカーと呼ばれるゾンビの
出現により文明が崩壊してしまった世界を舞台としたもの。
主人公は田舎町のシェリフだったが、出動中に銃弾を受けて
意識不明となり、目覚めると文明はすでに崩壊していたとい
う開幕だ。
そして第1話では、ゾンビの町に立て籠っている黒人父子に
助けられた主人公が事情を理解し、その父子からアトランタ
にあるCDC(疾病予防管理センター)が対策を研究してい
るらしいとの情報を得て、彼は都市に向かうのだが…
第2話では、そのアトランタでゾンビの大群に取り囲まれた
主人公が辛くもアジア系の青年に助けられ、その仲間と共に
デパートで物資を調達し、さらに逃走路を見付けて郊外にあ
る彼らのキャンプに向かう。
そして第3話では、主人公はそのキャンプに居た妻子と再会
し、彼らと共に行動を始めるが…。
さらにアトランタに暮らす他のグループとの遭遇や、主人公
らのキャンプにもゾンビが現れ、仲間の何人かが襲われる事
態も発生する。そしてついに主人公らはCDCに向かうこと
を決意するが、そこには新たな展開が待ち受けていた。

本シリーズは、CS放送ではすでに全13話のシーズン2に突
入し、シーズン3の製作も決定されている。そのシーズン2
の開幕はシーズン1の38%増しの視聴者を得たとのことで、
これはかなりの高評価が得られていると考えていいようだ。
監督は、第1話のダラボンに続いて、第2話は昨年5月紹介
『ブレイキング・バッド』なども手掛けるミシェル・マクラ
レン。以下、監督は各話ごとに異なるが、物語の連続性やト
ーンなどが統一されているのはさすがと言うところだ。
物語の全体はゾンビものだが、そこに描かれているのは、通
常2時間程度の映画では描き切れないサヴァイヴァルの現実
と言っていいようなもの。それは命からがら集まった人々の
寄り合い所帯だから意見も纏まらないし、中には変な行動を
取る奴も現れる。
さらに主人公の同僚と家族を巡る話など…。その辺の描き込
みが、時間のたっぷりあるテレビシリーズの良さとも言えそ
うだ。
それに第6話の急激な展開から、さらに第2シーズンに向け
た期待も大きく膨らむものになっている。

        *         *
 アカデミー賞でVFX部門を争う第1次の予備候補作15本
が発表された。
 今年の15本は、“Captain America: The First Avenger”
“Cowboys & Aliens”“Harry Potter and the Death
Hallows Part 2”“Hugo”“Mission: Impossible - Ghost
Protocol”“Pirates of the Caribbiean: On Stranger
Tides”“Real Steel”“Rise of the Planet of the
Apes”“Sherlock Holmes: A Game of Shadows”“Sucker
Punch”“Super 8”“Thor”“Transformers: Dark of the
Moon”“The Tree of Life”“X-Men: First Class”となっ
ており、この中から来年1月4日に2次候補の10本が発表さ
れ、さらに1月19日にロサンゼルスでVFX部門会員向けの
フッテージの上映会が行われて、1月24日に他の部門と一緒
に5本の最終候補作が発表される予定だ。
 なお15本の中では、“The Tree of Life”が異色の選出と
して話題になっているようだが、これは今年6月の紹介記事
でも書いたように、僕には『2001年宇宙の旅』を想起させる
作品だったから、それなりの納得はできたものだ。
 逆に“Green Lantern”の落選も話題にはなっていたが、
今年はアート的な作品に評価が集まっているとのこと。でも
それなら、今回紹介“Melancholia”の落選も気になるが、
そちらへの言及はなかったようだ。



2011年12月04日(日) 無言歌、アーチ&シパック、J・エドガー、アフロ田中、ペントハウス、一万年愛してる、ミッション:インポッシブル-GP、ピアノマニア

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『無言歌』“夾辺溝”
2010年のヴェネチア映画祭で特別上映された中国・西安出身
のドキュメンタリー監督ワン・ビンによる初の長編劇映画。
1950年代後半の「反右派闘争」に於ける悲惨な収容所の模様
を、見事な演出と映像美で描き切っている。
1956年、毛沢東の提唱による「百花斉放・百家争鳴」の方針
で、中国では体制批判を含む政策論争が各地で巻き起こる。
ところがその翌年、北京政府は一転して「反右派闘争」を開
始、前年に体制を批判した多数の人々が拘束されて収容所に
送られることになる。
この経緯が、意図的な謀略であったか否かについては未だに
結論が出ていないようだが、毛沢東の個人独裁による恐怖政
治の始まりがこれによって告げられたものだ。
そして本作は「反右派闘争」に続く「反右傾闘争」が最盛期
だった1960年を背景としている。物語の舞台は中国西北部に
所在する夾辺溝労働教育農場。農場といっても名ばかりのそ
の場所は、周囲は樹木1本生えていない荒野の中だ。
そんな場所に収容された右派と呼ばれる人々は、日々灌漑用
水路と思われる溝の掘削や、自らが風と寒さ凌ぐ塹濠掘りに
追われている。一方、その頃の中国では政策の失敗から大飢
饉が発生し、収容所への食料の供給も跡絶えてしまう。
これに対して収容所の幹部たちは、収容された人々に家族か
らの食料の仕送りを要請するのだが…。そんな中で収容所で
は収容者が次々に亡くなって行き、中には逃亡を企てる者も
現れ始める。
こうした収容所の悲惨な様子が、ドキュメンタリストの鋭い
視線で克明に綴られて行く。それはある意味で収容者の人間
性をも奪い去る強烈な姿だ。そんな過酷な物語が風雪の荒野
を背景に繰り広げられる。

出演者の殆どは無名の新人だが、中で収容所を訪れる収容者
の妻を演じたシュー・ツェンツーは、本作の後で大スターと
も共演する人気者になったようだ。他には、実際の収容所の
生残りの人も出演しているそうだ。
毛沢東独裁政権による恐怖政治については、その後の「文化
大革命」や「下放政策」などの悲劇に関しては、近年いろい
ろな中国映画作品によっても紹介されている。しかしそれに
先立つ「反右派闘争」に関しては今だにタブーの部分も多い
ようだ。
実際、2007年には政府に対する補償問題などの高まりから、
「反右派闘争」に関する報道の自粛が中国メディアに要請さ
れていたりもしている。そんな中での作品。因に本作の国籍
は、香港=フランス=ベルギーの合作映画となっている。


『アーチ&シパック・世界ウンコ大戦争』“아치와 씨팍”
2007年のソウル国際カートゥーン&アニメーション・フェス
ティバルで大賞を受賞、その後のシッチェス・カタロニア国
際映画祭などでも受賞している韓国製アニメーション作品。
元は教育用CD−ROMに挿入されるアニメーションなどを
制作していたクリエーターが、それらを纏めた作品で1997年
のフェスティバルに応募し大賞を受賞。その勢いで企画した
ものの、それから完成までには6年の歳月が必要だったとい
う作品だ。
その企画の意図は、「ディズニーや日本アニメにないもの」
だったそうだが、その結果が表記の副題になってしまったも
のだ。ただし映像には直接ソレが出てくる訳ではなく、その
辺はそれなりの節度をもって作られている。
物語の背景は、地球上のエネルギー資源の殆どが枯渇してし
まった時代。その時代に最後に残されたエネルギー資源は人
間の排泄物だった。そこで政府は国民の肛門にICチップを
埋め込み、その管理を徹底させていた。
そして優秀な排便者にはアイスキャンデーを配給し、さらな
る排便を促すようにしていたのだが…。アイスキャンデーの
中毒性と副作用によって人々の身長が縮み知能が低下すると
いう事態が発生していた。
そんな背景の中で、主人公のアーチとシパックは輸送される
アイスキャンデーの強奪を生業とするチンピラ。そんな2人
が、猛烈な排泄を促すチップを埋め込まれた女優と出会い、
その後は彼女の争奪戦に巻き込まれてゆくことになる。
という何とも支離滅裂なお話に、『戦艦ポチョムキン』から
『インディ・ジョーンズ』、『マトリックス』など、様々な
映画作品のパロディを満載にして、とにかく見た目で楽しめ
る映画を作り上げている。

しかも、お話自体にはさほどの破綻も見られず。上記の設定
も含めてむしろ良く考えて作られている。それはSF映画と
しても楽しめるものになっていた。ただ、ここで心配になる
のは上記の副題だ。
この副題は、確かに設定のままだから仕方がないのではある
が、これが観客に拒否反応を生じさせはしないか。実際に試
写会仲間の人の中でも、題名を聞いて二の足を踏んでいる人
は居たように感じられた。
従って映画の公開までには、願わくはその拒否反応を乗り越
えるくらいのアピールが映画ファンに向けてされることを期
待したい。

『J・エドガー』“J.Edgar”
レオナルド・ディカプリオ主演、クリント・イーストウッド
監督による合衆国政界の裏側を描いた実録作品。
タイトルを観て、これがFBIの初代長官ジョン・エドガー
・フーヴァーのことだと判る人は、一体どのくらい居るのだ
ろう。アメリカならいざ知らず、日本では1月28日の公開に
向けて、これからそれを周知するために相当のキャンペーン
が必要になりそうだ。
と言うことで本作は、8人の大統領に仕え、彼らから最も恐
れられたという伝説の長官の姿を、ディカプリオが渾身の演
技で魅せてくれる作品だ。
映画の開幕は1960年代前半。すでに70歳を越えても、今だに
FBI長官として君臨するJ・エドガーは自叙伝の口述を始
めている。それは指紋のファイル化を進めて科学的捜査に端
緒を付けるなど、自らの業績を謳い上げるものだったが…
1919年、エドガーが司法省に勤務していた時、共産過激派に
よる司法長官の自宅に対する爆弾襲撃事件が勃発する。その
際、エドガーはいち早く長官の家に駆けつけ、長官の目に留
まった彼は新設された急進派対策課を任されることになる。
こうして第1歩を踏み出したエドガーは、幼い頃から彼を薫
陶してきた母親アニーや、個人秘書として生涯を共にした女
性ヘレンの支えを受けて、アメリカ合衆国の正義を守るため
に奮闘して行く。
そして最初はアル・カポネの逮捕などギャング団との対決か
ら、その後は1932年に起きたリンドバーグ子息誘拐事件など
によって、それぞれの政権からも独立した絶対的な権力を持
つFBIの長官として君臨して行くことになる。

共演は、ジュディ・ディンチ、ナオミ・ワッツ、そして昨年
10月紹介『ソーシャル・ネットワーク』で主人公を訴える双
子を好演したアーミー・ハマー、昨年12月紹介『かぞくはじ
めました』のジョッシュ・ルーカスらが脇を固めている。
フーヴァー長官に関しては、機密ファイルやゲイ疑惑、女装
癖など、いろいろスキャンダラスな噂も尽きない人物だが、
イーストウッド監督とディカプリオは、それらをある種の尊
敬の念を持って描き切っている。
それは、一面からは物足りない部分もあるかも知れないが、
既に亡くなった人物に対してのこれは、正に正当な行為だと
言えるだろう。それに加えて時々の政権者たちが翻弄される
姿は痛快であったとも言える。
作品は2時間17分の長尺だが、僕には真ん中にリンドバーグ
事件が描かれるなど興味の尽きない作品だった。それにディ
カプリオらに施された70歳代の老けメイクには、オスカーの
メイクアップ賞も間違いなしと思わせるものもあった。
さらにそのメイクで熱演したディカプリオにも、オスカーの
可能性はありそうだ。


『アフロ田中』
今年9月紹介『スマグラー』などの松田翔太主演、演劇ユニ
ット「ゴジゲン」の主宰松居大悟による監督デビュー作で、
「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載中ののりつけ雅春
原作コミックスの映画化。
主人公は、天然パーマで幼い頃から苛めに遭い、高校時代に
はアフロヘアーで挽回して悪餓鬼仲間は出来たものの、その
場の乗りで高校を中退。そのままの乗りで上京してトンネル
掘りの仕事を続け、恋も女も知らないまま早24歳になってし
まった男。
そんな主人公に悪餓鬼の1人から結婚式の招待状が届く。そ
して友人の挨拶も頼まれ感慨に耽る主人公だったが、ある約
束を思い出して愕然とする。その約束とは、仲間の結婚式に
はガールフレンドを連れて出席するというものだったのだ。
そこで結婚式までにガールフレンド獲得の計画を立てる主人
公だったが、その隣の部屋にアイドルのような女性が入居。
でもこれには高嶺の花と諦めていた主人公に、なぜか彼女の
方が積極的で、いつしかガールフレンド獲得の夢も叶いそう
になるが…
原作は、高校時代から始まって現在は社会人篇が連載中のよ
うだが、映画はその社会人になった主人公を描いている。そ
して何とも勘違い続きの主人公の姿が、面白おかしく、でも
それなりに爽やかに描かれているものだ。

共演は、2008年8月紹介『ハンサム★スーツ』などの佐々木
希、2009年7月紹介『悪夢のエレベーター』などの堤下敦、
先月紹介『セカイの向こうに』などの田中圭、2008年10月紹
介『ノン子36歳(家事手伝い)』などの遠藤要、2010年5月
紹介『サイタマノラッパー2』などの駒木根隆介。
他に辺見えみり、リリー・フランキー、原幹恵、美波、吹越
満、皆川猿時らが脇を固めている。
まあこんな勘違い男が世間にどれだけ居るか判らないが、最
近の軽い乗りの若者の風俗を観ていると、それなりに居そう
な感じもしてしまう。ただし本作では、主人公の誠実さなど
もあって、それが悪くない感じには描かれていた。
脚本は、2010年7月紹介『おにいちゃんのハナビ』などの西
田征史が担当している。

『ペントハウス』“Tower Heist”
ブレット・ラトナー監督、エディ・マーフィとベン・スティ
ラーの共演で、ニューヨークの高層マンションを舞台にした
アクション・コメディ。
因にスティラーとマーフィは初顔合せだが、意外なことにラ
トナー監督とも組んだことがなかったそうで、本作では現代
ハリウッドのアクション・コメディ最強トリオが初めて組ま
れたことになる。
物語の舞台は、不動産王ドナルド・トランプの協力も得て設
定されたというニューヨーク5番街に面して建つ高層マンシ
ョン。主人公はその管理マネージャー。いつも居住者の顔色
を伺いながら、最高のサーヴィスを心掛ける。
ところが居住者の1人の経済アナリストがFBIに逮捕され
たことから事態が急変する。その男は詐欺師で、実は主人公
は自分を含む従業員たちの積み立て年金の運用をその男に頼
んでいたのだ。このままでは皆の年金が0になる。
そこに、詐欺師は多額の現金を部屋のどこかに隠しているは
ずだが、FBIにもその所在が掴めない…という情報が舞い
込む。しかも詐欺師が釈放されたら、その金はあっという間
に消されてしまうことが確実だった。奪うなら今しかない。
そこで、詐欺師が特注の金庫を部屋に設置したことを調べ出
した主人公は、街で出会ったこそ泥男の指導の許、自分と従
業員のためその金を奪取しよう考えるが…

共演は、『オーシャンズ』シリーズなどのケイシー・アフレ
ック、1998年『GODZILLA』などのマシュー・ブロデリック、
今年3月紹介『世界侵略:ロサンゼルス決戦』などのマイク
ル・ペーニャ、2009年『プレシャス』でオスカー候補になっ
たガボレイ・シディペ。
他に、ティア・レオーニ、アラン・アルダらが脇を固めてい
る。
マーフィとスティラーが幼馴染みという設定には多少仰け反
ったが、映画には300万人の見物客が集まるという5番街の
感謝祭パレードなども登場して、主人公たちの強奪作戦が展
開される。

主人公が騙されて、その騙しとられた金を知恵を絞って取り
返すというお話は、1983年にマーフィとダン・エイクロイド
が共演したジョン・ランディス監督作品『大逆転』を思い出
す。本作のプロデューサーも務めるマーフィにもそんな思い
はあるようだ。
弱者が協力して強者を倒す、そんな痛快さも一杯な作品だ。

『一万年愛してる』“愛你一萬年”
台湾の人気アイドルユニットF4のヴィック・チョウ主演に
よる恋愛映画。共演は、2009年『フィッシュストーリー』な
どの加藤侑紀、監督は滋賀県出身で台湾芸術大学卒業という
北村豊晴がメガホンを取った2010年の台湾映画。
チョウが演じるのは恋愛がいつも3カ月しか保たないという
男性歌手。そんな男が3カ月の語学研修で台湾を訪れた日本
人女性と出会い、女性も恋より仕事が優先で、2人は都合が
良いとばかりに期間限定の付き合いを始めるが…
去年の8月にドリュー・バリモアとジャスティン・ティバー
レイクの共演で良く似た設定の作品(『遠距離恋愛/彼女の
決断』)を紹介しているが、両作は共に2010年の作品で、類
似は偶然なのかな。
ただ、ハリウッド映画がセックスだけという割り切った設定
で始まるのに対して、本作はその辺が少し曖昧。でも久しぶ
りの典型的なアイドル映画と呼べる作品で、そのアイドルに
セックス目的の関係というのは…本作はぎりぎりの線という
感じかも知れない。

共演は、日本側は2009年2月紹介『鴨川ホルモー』に出演の
三村恭代、2008年9月紹介『秋深き』に出演の鍋島浩、そし
て2010年9月紹介『大奥』に出演の紅萬子。
台湾側は、2001年『流星花園』に出演のワン・ユエ、2010年
11月2日付「東京国際映画祭」で紹介『4枚目の似顔絵』に
出演の納豆、2010年11月紹介『モンガに散る』に出演のファ
ン・デンフイ。
お話は他愛ないし、どうこうと言うほどのものでもないが、
主題歌を主演者が歌っていて映画にはその演奏シーンも挿入
されているから、その人気でそれなりのものは期待できるの
だろう。

公開は東京のオーディトリウム渋谷で来年1月5日から9日
までの限定だが、1月3日には渋谷公会堂で有料のファン・
ミーティングや、4日にシネマート新宿で特別上映会なども
予定されている。
因にDVDは今年12月19日に先行発売されるようだ。

『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
       “Mission: Impossible - Ghost Protocol”
1996年、2000年、2006年に製作された大ヒットシリーズの第
4作。前3作までは通し番号が振られていたが、本作では初
めて副題が付けられた。
物語の始まりで、主人公のイーサン・ハントはロシアの刑務
所に入っており、そこからの脱獄劇がプロローグとなる。と
ころが脱獄後に従事した最初のミッションは失敗に終り、さ
らにそれによってハントはクレムリン爆破の濡れ衣を着せら
れることになる。
この事態にアメリカ政府は「ゴースト・プロトコル」を発動
し、ハントが所属する極秘諜報機関IMFに解散の危機が迫
る。それを免れるには、ハントは独力で真犯人を割り出し、
彼らが計画する世界規模の核兵器テロを未然に防がなくては
ならない。
しかもすでに機能の停止したIMFには何らの後ろ楯や支援
を期待することも出来ず、ハントは残された仲間と手持ちの
機材だけで、その不可能なミッションに挑んで行くことにな
るが…
今回のミッションの主な舞台となるのは、中東ドバイに聳え
るブルジュ・ハリファ。全高828m、160階建ての世界一の超
高層ビルを舞台に、奇想天外な作戦が展開される。

出演は、ハント役にトム・クルーズ。共演はシリーズ前作に
も登場した今年10月紹介『宇宙人ポール』などのサイモン・
ペッグ、2009年『プレシャス』などのポーラ・パットン、そ
して2010年2月紹介『ハート・ロッカー』でオスカー候補の
ジェレミー・レナー。
また2009年10月と2010年7月紹介『ミレニアム』シリーズに
出演のミカエル・ニクヴィスト、テレビドラマ『LOST』
などのジョッシュ・ホロウェイ。さらにトム・ウィルキンス
ン、ヴィング・レイムズらが脇を固めている。
このシリーズは、1966年から1973年まで製作されて日本でも
人気を呼んだテレビシリーズの映画版リメイクだが、前3作
の映画版では主人公が殆ど単独で活動し、テレビシリーズで
展開されていたチームプレーの面白さが減少していた。
しかし今回は、主人公はハントで変わらないが、その脇をチ
ームのメムバーがしっかりとサポートしており、元々のテレ
ビシリーズの面白さが復活されている。これには往年のファ
ンとして満足できた。このメムバーで次回作も期待したいも
のだ。
脚本は、今回は製作に回ったJ・J・エイブラムスの許でテ
レビドラマ『エイリアス』を手掛けてきたアンドレ・ネメッ
クとジョッシュ・アッペルバウム。その脚本には、ペッグの
コメディ・リリーフぶりなども見事に活かされていた。
そして監督は、2004年11月紹介の『Mr.インクレディブル』
と、2007年6月紹介『レミーのおいしいレストラン』で2度
のオスカー長編アニメーション賞受賞のブラッド・バード。
実写作品の監督は初めてだが、大掛かりなアクションも見事
に描き切っていた。

『ピアノマニア』“Pianomania”
1853年から続くピアノメーカー=スタンウェイ&サンズの技
術主任で、ウィーン在住のピアノ調律師シュテファン・クニ
ュップファーの2006年から2007年に掛けての1年間を追った
ドキュメンタリー。
映画は、日本でも人気の中国人ピアニスト、ラン=ランのリ
ハーサル風景に始まり、J・S・バッハの「フーガの技法」
の録音を1年後に控えるピアニスト、ピエール=ロラン・エ
マールとの準備作業の様子などが描かれて行く。
そこには、パワフルな演奏に耐える椅子の調達から、チェン
バロ、オルガン、室内楽、アンサンブルの4つのシチュエー
ションを1台のピアノに求める演奏家の要望など、様々な要
求が調律師の許に寄せられる。
それらの要求を的確に実現し、さらに細かなテクニックや新
規な発想などで、演奏家の求める音を追求する様々な試みが
展開されて行く。その一方で多くの演奏家に愛された名器の
売却が決まり、後継器に新たな期待が込められたり…。
元々ピアノは、ヴァイオリンなどのように演奏家が自前で携
行できる楽器と異なり、その会場にある楽器を演奏家の希望
に合わせて調律しなければならない。そんな調律を行うのが
調律師の仕事となる。
僕が幼い頃に住んでいた家にアップライトだがピアノがあっ
て、それには何度か調律師が来て調律を行うのを間近に観て
いた経験もある。しかし単に音程を合わせるだけと思ってい
た調律にこんな深い世界があったとは…、当時は考えもしな
かった。
そんな今まで知らなかった世界が興味深く展開される。しか
もその間には、上記の2人を始め、2008年に現役引退したア
ルフレート・ブレンデルの演奏なども挿入され、それは聴き
応えのある作品にもなっている。
さらには、YouTubeで話題のミュージカルコント“A Little
Nightmare Music”のアレクセイ・イグデスマンとリチャー
ド・ヒョンギ・ジョーが登場し、その前で調律師がピアノと
ヴァイオリンによるネタを披露するなど、ピアノ調律の魅力
の全てが描かれている。

音楽に興味のある人は勿論、そんなに興味のない人にも充分
に楽しめるドキュメンタリー作品だ。


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井口健二