| 2011年11月27日(日) |
Dフェアリー、運命の子、チベット犬、Lアサシン、フライ・オブD、ツィゴイネル…/陽炎座、おかえりはやぶさ、Aキングダム+Star Trek |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ダーク・フェアリー』“Don't Be Afraid of the Dark” 2007年4月紹介『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デ ル=トロが製作と脚本を務めた子供が主人公のダークファン タシー。2008年9月紹介のデル=トロ製作『永遠のこどもた ち』にも通じる作品。 本作に登場するのは、離婚した母親の許から父親の許に送ら れてきた少女。その父親にはすでにガールフレンドがいて、 2人は歴史的な価値のある古い邸宅を復元して高値で売却す ることを仕事にしているようだ。 そんな父親の仕事場でもある古い邸宅で暮らすことになった 少女は、封印された地下室を発見し、そこにあったボルトで 締められた暖炉の蓋の奥から聞けてくる声に誘われる。そし てその蓋を開けてしまうのだが…。 出演は、2004年9月紹介『エイプリルの七面鳥』などに主演 しトム・クルーズ夫人としても知られるケイティ・ホームズ と、今年1月紹介『英国王のスピーチ』では兄王役だったガ イ・ピアース。 そして娘役を、1999年生まれで、2007年12月紹介『テラビシ アにかける橋』などに出演のベイリー・マディスンが見事に 演じている。 監督は、カナダ出身のコミックスの作画家で、2007年制作の 短編作品がトロント映画祭で高評価を得たというトロイ・ニ クシー。本作では事前に精巧な場面スケッチなどを用意して 撮影に臨んだとのとだ。 デル=トロ製作の前作と同じく、子供の視点を見事に活かし た映像で、それはお子様にはちょっと過激だが、大人の観客 にも子供の頃に抱いた恐怖を思い出させてくれる。その感覚 が堪らなくなる作品だ。 ただし本作では、物語の後半で視点が少しずれてしまうのが 残念なところで、それは物語の展開の上で仕方のない面もあ るが、その辺をもう1歩詰めて貰いたかった感じもした。 それにしても、tooth fairyというのは本来は子供の守り神 とされているものだが、そこからこんな作品を作り出してし まうとは、デル=トロは相当に捻くれ者なのかな。いずれに してもダークファンタシーとしては上手いところを突いてい る作品だ。
『運命の子』“趙氏孤児” 司馬遷が「史記」で描いた中国・春秋時代の晋国の物語を、 2008年12月紹介『花の生涯』などのチェン・カイコー監督が 描いた作品。 「史記」の物語によると、晋国の家老・趙氏の権勢は君主に とっても脅威となり、紀元前598年、時の君主が家臣・屠岸 賈に命じて趙氏は粛清される。しかしその折、趙氏の客分だ った2人の義士が趙氏の赤子を命を賭けて守り、その子が長 じて屠岸賈に復讐を果たし趙家を再興させた…というもの。 その中国人なら誰でも知っているという物語だが、現代人の 視点からするといろいろな疑問も生じるのだそうだ。そこで チェン監督は、その物語を映画化するに当り新たな解釈を加 えて、現代にも通じる物語に再構築している。 と言ってもそれはただの解釈ではなく、かなりドラマティッ クな展開とされたもので、それはまた新たな論議の対象とな るかも知れないものだ。ただし、本来の司馬遷が描いた犠牲 と復讐の物語は、本作にも周到に継承されている。 出演は、2007年3月紹介『女帝』などのグォ・ヨウとワン・ シャオミン、今年3月紹介『孫文の義士団』などのファン・ ビンビンとワン・シュエチー。さらに『レッドクリフ』など のチャン・フォンイー、今年5月紹介『酔拳』などのヴィン セント・チャオ。 そして15歳の孤児役には、本作が映画デビューとなる1996年 生まれのチャオ・ウェンハオ(趙文浩)が扮している。他に 今年5月紹介『サンザシの樹の下で』などに出演のワン・ジ ンシン、2007年6月紹介『クレージー・ストーン』などのポ ン・ボーらが脇を固める。 因にこの原作は、13世紀頃には中国の雑劇としても成立し、 18世紀にフランスのヴォルテールが翻案した演劇がコメディ ・フランセーズでも上演されているそうだ。そして原作から 2600年も経て映画化されているのだから、その歴史の重みも 感じさせられる。 なおチェン監督の作品では、デビュー作の『黄色い大地』、 1993年の『花の影』、1997年の『始皇帝暗殺』などで壮大な セットを建設し、それらはいずれも撮影後には保存されて人 気の映画村になっているそうだ。 そして本作でも、約6カ月と最大1200人の人員を掛けて4万 平方メートルのセットが建設されている。ただし今回の春秋 時代の建築物にはほとんど資料が残っていないため、その建 設には日本の建築が参考にされたとのことだ。
『チベット犬物語〜金色のドージェ〜』 2009年7月紹介『サマー・ウォーズ』など手掛けるアニメ制 作会社マッドハウスが、中国最大の映画会社・中国電影集団 と組み、中国政府公認による初の共同制作を行った作品。中 国でベストセラーになっているという原作からの映画化。 チベット犬は、正式にはチベッタン・マスティフ。成犬では 体高80cm、体重100kgにも及び、世界の大形犬の原種とも言 われるもので、希少種だが中国セレブの間ではステイタスシ ンボルにもなっているそうだ。 そんなチベット犬だが、本作ではその本来の姿が描かれる。 物語の主人公は、漢民族とチベット民族の血を引く少年。母 親と都会で暮らしていたが、その母親が病死してチベット高 原に暮らす父親の許にやってくる。その父親は高原で医療に 携わっており、少年には病気の母を助けに来なかった恨みが ある。 そして高原での暮らしにも慣れない少年は、近所の悪餓鬼の 餌食になり掛けたりするが、ある日、羊の見張り中に熊に襲 われたところを何処からともなく現れた大形犬に救われ、地 元の犬たちとの闘いで傷ついた犬との友情も生まれ始める。 ところがそんな高原に悪魔のような殺りくを繰り返す謎の存 在が出没するようになり… アニメーションのキャラクター原案を『20世紀少年』などの 浦沢直樹が手掛け、監督は、浦沢原作の『MONSTER』なども 制作した小島正幸が担当している。また脚本は『T,R.Y.』で 横溝正史賞受賞のミステリー作家・井上尚登が脚色を手掛け ている。 声優は、2010年12月紹介『ウルトラマンゼロ』などの濱田龍 臣、他に筧利夫、平幹二朗。さらに山像かおり、桑島法子ら の声優陣が脇を固めている。そして主題歌を、チベット民族 で『レッドクリフ』なども担当したalanが歌っている。 「羅刹」と呼ばれる殺りくを行う謎の存在が、自然界の物か 超常的なものなのか、その辺が明白でなく。そこまでのそれ なりにリアルな描き方からは、何となく違和感が生じてしま った。原作ものだから仕方がないが、それなりの説得力は欲 しかったところだ。 マッドハウスは、2009年10月紹介『よなよなペンギン』では フランスのスタッフと組んでいたが、日本アニメーションの 力がこのように世界に活かされるのも結構な話だ。 なお、作品の鑑賞はサンプルDVDで行ったもので、巻頭タイ トルとエンディングロールは未完で音声のみだった。
『ラスト・アサシン』“Requiem pour une tueuse” 2010年2月紹介『オーケストラ!』などのメラニー・ロラン 主演で、引退を決めた女性の暗殺者が最後に請け負った仕事 の顛末を描く作品。フランスでは今年2月公開の作品だが、 日本ではDVDでの紹介となり、サンプルを鑑賞した。 主人公は、キリスト教の司祭らの仲介で世界の要人の暗殺を 請け負う女性暗殺者。その手口は事故を装い、警察にはその 正体も掴まれていない。しかし8歳の娘を持つ彼女は、娘に 自分の職業も話せない生活に疲れ果てていた。 そしてついに引退を決意した彼女はボスにそれを告げるが、 ボスからはある秘密を教えて貰うことを条件に最後の大仕事 を引き受けさせられてしまう。それはイギリスの石油利権に 関わる男性歌手の暗殺だった。そして彼女はその歌手の出演 する音楽祭に向うが…。 こうしてオーストリアのシャトーで開催される音楽会までの 2週間を期限に暗殺計画が進められるのだが、そこには別の 暗殺者や彼女の正体を暴こうとする諜報員も潜入していた。 それらは彼女自身の運命も左右して行く。 ロランの役柄は、前作ではバイオリニストだったが今回はコ ントラルトと呼ばれる女声の歌手。作品中では「メサイア」 の歌唱シーンなどもある。因にロランは、フランスでは歌手 としても活躍しているそうで、本作でも歌声は彼女自身のよ うだ。 共演は何れも2005年1月紹介『ロング・エンゲージメント』 に出演のクロヴィス・コルニアック、チェッキー・カリョ、 ジャン=クロード・ドレフュス。他に1987年『さよなら子供 たち』などのフィリップ・モリエ=ジュヌーらが脇を固めて いる。 脚本と監督は、本作がデビュー作となるジェローメ・ル・グ リ。検索して1971年生まれということだけは判ったが、本作 以外のフィルモグラフィは全くなし。この歳まで一体何をし ていたのかという感じだが、演出はかなりしっかりした感じ のものだ。 ただし物語的には、最初の流れからすると後半が多少甘い感 じはする。しかし、この結末のためにはこれも仕方がないか な…。劇中にはロランのヌードシーンなどもあり、それなり のサーヴィスもされている。アルプスの山間の風景も美しく 描かれていた。
『フライ・オブ・ザ・デッド』“Prowl” 先に紹介した『51』に続くAfter Dark Originalsで、日本 紹介の第2弾となるサンプルDVDを鑑賞した。 前回の作品は実録風だったが、今回の作品は普通のドラマ。 田舎町での暮らしに飽きた若い女性が都会生活を夢見て脱出 を決意。明日が期限のアパートの手付け金納入のためシカゴ に向うことになり、友人の車で出発する。 ところがその車が途中で故障してしまい、仲間と共にフルハ ーフのトラックにヒッチハイク。そして目隠し状態で連れて 行かれた場所は廃工場状態の食肉工場。しかもそこには何や ら怪しげな多数の人影があって… この怪しい人影が、ゾンビではなさそうだが明確には定義さ れていなくて、それはまあ下手に定義してとやかく言われる よりはこの方が問題は少ないかな。そんな割り切り方が、か えって判っているな、とも感じさせる作品だ。 脚本は、2006年製作の“Trespassers”というやはりB級の ホラー作品で撮影台本を手掛けているティム・トーリ。因に この人は、『51』のアソシエートプロデューサーでもあっ たようだ。 監督は、2008年にノルウェーで“Rovdyr”というホラー作品 を手掛けているパトリック・シヴェルセン。本作の後は再び ノルウェーで、“Exteriors”というかなりシュールとされ る作品を撮っている。 主演は、ジェレミー・アイアンズが主演した歴史テレビシリ ーズ“The Borgians”にセミレギュラー出演しているルタ・ ゲドミンタス。彼女は監督の次作“Exteriors”にも出演し ているようだ。 他には、1992年『パッセンジャー57』などのブルース・ペ イン、ちょい役だが今年10月紹介『ロンドン・ブルバード』 に出演のジェイミー・ブレイクリーら。なお撮影はブルガリ アで行われており、スタントなどには現地のスタッフが起用 されているようだ。 B級感で一杯の作品は、12月22日にDVDリリースされる。
『ツィゴイネルワイゼン』 『陽炎座』 鈴木清順監督による「浪漫三部作」の第1作と第2作、それ ぞれ1980年と81年の製作で、先に紹介した第3作の『夢二』 (1991年製作)までには約10年の歳月が開く。 テントの架設映画館で上映された最初の公開には行けなかっ たが、この2本は1980年代に2本立ての特集上映で観た記憶 がある。しかしその内容はほとんど理解できず、難しい映画 という印象だけが残っていたものだ。 その作品を約30年ぶりに再鑑賞した訳だが、今回も話の大筋 は判るが、細部はやはり理解し切れなかった。しかし一緒に 鑑賞した年上の評論家の人たちと話しても、「清順は理解で きない」という意見が多いから、結局そういう評価で良いも ののようだ。 その1作目の『ツィゴイネルワイゼン』は、内田百�里慮矯� を基に、士官学校教授の主人公とその元同僚で無頼の男が、 旅先で出会った芸者を巡っての怪しい物語が展開される。そ れはサラサーテ自身の演奏による「ツィゴイネルワイゼン」 のレコード盤に吹き込まれた怪しい音声にも関わる。 出演は、原田芳雄、大谷直子、藤田敏八、大楠道代。他に、 麿赤兒、樹木希林らが脇を固めている。 因に作品は第4回日本アカデミー賞では、作品賞、監督賞、 主演男優賞(藤田)、主演女優賞(大谷)、助演女優賞(大 楠)、脚本賞(田中陽造)、照明賞(大西美津男)、撮影賞 (永塚一栄)、美術賞(木村威夫)などを受賞した。 2作目の『陽炎座』は泉鏡花の原作を基にしたもので、新劇 の劇作家を主人公に、病院へ続く石段の下で出会った女と、 主人公のパトロンの富豪やその妻、さらにアナーキストの男 などを巡る物語が展開される。 出演は、松田優作、大楠道代、中村嘉葎雄、楠田枝里子、原 田芳雄、加賀まりこ、大友柳太朗、麿赤兒。因に、大楠、原 田、麿は「浪漫三部作」の全てに出演している。 また本作は第5回日本アカデミー賞で助演男優賞(中村)、 助演女優賞(加賀)、脚本賞(田中)、撮影賞(永塚)、照 明賞(大西)などを受賞した。 物語は何れも因果関係や結末などが明確に示されるものでは なく、観客はその流れの中での個々のシーンの美しさや奇抜 さに翻弄されることを楽しむもの。それは耽美主義とも違う 一種独特の「清順美学」だったようだ。30年を経て僕が得た 結論はそういうところだ。
『おかえり、はやぶさ』 2010年6月13日、彗星「イトカワ」からの帰還と採取カプセ ルの回収に成功した宇宙探査機「はやぶさ」の飛行を見守っ た人々の姿を描いた3D映画。 物語の中心は、親子2代で無人探査機の開発に携わっている 一家。その息子は「はやぶさ」の生命線とも言えるイオンエ ンジンの開発チームの若いエンジニア。そして父親は2003年 に周回軌道への投入断念に終った火星探査機「のぞみ」の計 画責任者だった。 そんな父親の失敗を目の当りにした主人公は、「これがラス トチャンスだ。成功するしかない」という使命のもと「はや ぶさ」の運行に関って行く。しかしそこには、エンジントラ ブルや通信途絶など、様々な難関が待ち構えていた。 「はやぶさ」の計画が成功したか否かという点についてはい ろいろ意見もあるだろうが、少なくとも彗星に軟着陸した後 に地球に帰還し、カプセルを回収したという飛行そのものは 完全に成し遂げたと言える。本作はその飛行の全容をかなり 克明に描いたものだ。 しかもその映像が3Dで再現される。実は先に「はやぶさ」 の飛行の模様をCGIで再現した作品を渋谷のプラネタリウ ムで鑑賞したが、その折にもこれが3Dだったらどんなに素 晴らしいかと想像した。それが今回は観られるものだ。 そしてそれを支えた人々のドラマも、それはフィクションの 部分が多いものではあるが、嫌みな感じでもなく巧みに作ら れていた。なおこの実写部分はちゃんと3Dカメラで撮影さ れているので、自然な3Dを楽しむことができる。 因にドラマ部分の出演は、藤原竜也、三浦友和、杏。そして その脇を、前田旺志郎、森口瑤子、ココリコ田中、カンニン グ竹山、豊原功補、宮崎美子、大杉蓮、中村梅雀らが固めて いる。 しかし本作では、その人間のドラマに勝るとも劣らないと言 えるドラマティックな映像がCGIで描かれている。 その中でも、クライマックスとなる帰還した「はやぶさ」が オーストラリア上空で放出したカプセルを追い掛けるように 飛行しながら徐々に崩壊して行く姿は、実写と3DCGIで 作り出された荘厳とも言える映像で、これは見事に感動的な ものになっていた。 監督は2009年2月紹介『鴨川ホルモー』などの本木克英、脚 本は2005年『電車男』などの金子ありさが担当。また音楽を 富田勲が手掛けている。 なお「はやぶさ」関連の作品は、すでに1本が公開され、こ の後にも1本が公開予定とされているものだが、僕は本作を 観てその全容を充分に知ることができたように思えた。
『アニマル・キングダム』“Animal Kingdom” 2010年のサンダンス映画祭で、「ワールドシネマ」部門グラ ンプリを獲得したオーストラリア映画。 物語の舞台は、オーストラリアの南部ヴィクトリア州の州都 メルボルン。1956年に南半球で初となるオリンピックも開催 されたこの町で、麻薬中毒の母親を突然亡くした少年の数奇 な運命が描かれる。 その少年は祖母の家に引き取られるが、そこは生前の母親が 少年を関らせないように注意していた場所だった。その家に 住む親族は皆、強盗や麻薬密売などの凶悪犯罪に手を染めて おり、祖母はそれを黙認し裏で糸を引いていたのだ。 そして少年は、今までは真面目だった生活から徐々に彼らの 世界に引き込まれて行く。その一方で警察は、少年を彼らか ら引き離し、その証言を得て彼らを一網打尽にする計画を立 てていたが…。 脚本と監督は、今年5月紹介『メタルヘッド』の脚本を執筆 し、本作が監督デビューとなるデヴィッド・ミショッド。ナ タリー・ポートマン製作主演の前作もかなり異常な話だった が、本作はそれを上回るとも言える作品だ。 出演は、主演に新人のジェームズ・フレッシュヴィル。共演 には、1975年『ピクニックatハンギングロック』などに出演 し、本作でアメリカアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞 にwノミネートされたジャッキー・ウィーヴァー。 さらに今回紹介『ダーク・フェアリー』などのガイ・ピアー ス、2009年『ノウイング』などに出演のベン・メンデルゾー ン、2006年6月紹介『キンキー・ブーツ』などに出演のジョ エル・エルガートンらが脇を固めている。 プレス資料に掲載されたシドニー出身の監督のインタヴュー によると、「(ゴールドラッシュのブームタウンを起源とす る)メルボルンは、世界有数の犯罪都市」なのだそうで、そ んな犯罪者がメディアでも持て囃される世界を背景にした物 語が描かれている。 最近の映画では、今年8月紹介『ウィンターズ・ボーン』や 『ゴモラ』など、犯罪世界に巻き込まれる少年少女を描いた 作品が多くなっている感じもするが、本作はそんな中にも一 石を投じる作品と言えそうだ。 * * 2009年に公開されたJ・J・エイブラムス監督『スター・ トレック』シリーズに関し、その続編の全米公開日が発表さ れた。その日付は、パラマウントの発表によると2013年5月 17日になるとのことだ。 脚本は前作と同じく、ロベルト・オーチー、アレックス・ カーツマンによるもので、正に前作の続きの物語が、恐らく はエイブラムス監督の手で映画化されることになっている。 また撮影は3Dで行われるとの情報もあるようだ。 出演者は、前作と同じくクリス・ペイン、ザカリー・クイ ント、ゾーイ・サルダナ、カール・アーバン、ジョン・チョ ー、サイモン・ペッグ、アントン・イェルチンらのクルーが 揃う予定だが、最近のペッグとイェルチンのブレイクぶりは ちょっと気になるところだ。 さらに敵役には、ベニチオ・デル=トロが契約したとの情 報もあり、撮影開始の続報が待たれる。
| 2011年11月20日(日) |
はさみ、瞳は静かに、エリート・スクワッド、夢二、ピザボーイ、マシンガン・プリーチャー、アーサー・クリスマス、しあわせのパン |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『はさみ』 2008年11月紹介『大阪ハムレット』などの光石富士朗監督に よる東京中野区の理容美容専門学校を舞台にした作品。 主人公は専門学校美容科の若手女性教師。主にハサミ(シザ ース)によるカットの実技を教えているが、彼女の教室には 様々の問題を抱えた生徒たちがいる。その中から3人の生徒 が主に取り上げられる。 その1人目は母親の死後に引き篭もりになっていたという男 子生徒。2人目は自らの技術に行き詰まってしまっている女 子生徒。そして3人目は理容科で抜群の成績を収めている女 子生徒だったが… そんな生徒たちに対して主人公は、共に悩みながら問題解決 の糸口を探って行こうとする。しかし生徒たちにはさらなる 試練が待ち構える。物語の舞台は理容美容専門学校だが、生 徒たちの抱える悩みは普遍的なもので、その解決法も特別で はない。 ただし、その間に理容美容専門学校ならではの至言のような ものが挿入され、それが結構上手く填っているのが本作の良 さでもあり、脚本の巧みさのようにも感じられた。 出演は、教師役に先月紹介『指輪をはめたい』などの池脇千 鶴、生徒役に2008年1月紹介『うた魂♪』などの徳永えり、 2010年『十三人の刺客』などの窪田正孝、それにお笑いコン ビ「大好物」のなんしぃ(映画初出演)。他に、竹下景子、 烏丸せつこ、石丸謙二郎らが脇を固めている。因に、池脇は 前作に続いて指がばん創膏だらけの役だ。 手に技術を付けたいと頑張る若者たちと、それを正しく導こ うとする教師たちの物語で、常識的に考えても悪くなりよう のないお話。それをさらに光石監督が見事に感動的に盛り上 げている。 因に本作には、日本PTA全国評議会特選、映倫諮問機関の 年少者映画審議会推薦、厚生労働省社会保障審議会推薦など が付いているようだ。特に厚生労働省の推薦は物語の背景か らも判りやすい。
『瞳は静かに』“Andrés no quiere dormir la siesta” 1976年から1982年まで続いたアルゼンチンの軍事政権。その 下での子供たちの姿を描いた作品。 1977年夏から1978年夏までの1年間に亙る物語。主人公はそ の間に8歳から9歳になる少年。少年は兄と母親と共に暮ら していたが、進歩的な母親は近所の若者の荷物を秘密に預か るなど、政治的な活動もしていたようだ。 ところがその母親が突然死去し、少年は別居していた父親と 共に祖母の家に暮らすことになる。その父親は牛乳は温めて から飲むとか、子供たちにはシエスタを命じるなどかなり保 守的な感じだ。 一方、祖母は少年の願いを聞き入れるなどしてくれるが、そ の祖母は近所の情報に何時も目を光らせ、何事も家族に類が 及ばないように気を使っていた。そして子供たちには何も起 きてはいないかのように振るまい続けていた。 子供たちには「何が起きているか」教えないようにしている 大人たち。しかし子供たちの目はそんな大人たちの真意を見 抜き、そしていろいろな影響を受けて行く。それは必ずしも 良いとばかりは言い切れない。 2004年7月紹介『ジャスティス』や同年9月紹介『ブエノス アイレスの夜』、さらに昨年10月24日付「東京国際映画祭」 で紹介した『隠れた瞳』など、軍事政権下のアルゼンチンを 描いた作品は後を断たないが、何故そこまで描かれるのか。 軍事政権の崩壊から四半世紀が過ぎても、いまだに消え去ら ない恐怖。それは子供の頃に刷り込まれた恐怖。そんな恐怖 の姿を子供の目を通して描いたことで、正にリアルな恐怖と なって甦る作品となっている。 脚本と監督は、1966年サンタ・フェ生まれのダニエル・ブス タマンテ。軍事政権時代には秘密警察の基地も置かれていた という町で、主人公と同じ子供時代を過ごした監督が、自ら の体験もベースにその恐怖を描いた作品でもあるようだ。 出演は、主人公の少年役には新人ながら見事な恐怖を表現し てみせたコンラッド・バレンスエラ、そして祖母役に1936年 ブエノスアイレス生まれのノルマ・アレアンドロ。 因に、軍事政権時代には亡命を余儀なくされ、1986年アカデ ミー賞外国語映画部門を受賞した『オフィシャル・ストーリ ー』にも主演した女優は、以後軍事政権を題材にした作品へ の出演を断っていたが、本作には脚本を読んだだけで出演を 即決したそうだ。「これは語られるべき物語だから」それが 出演の理由とされている。 部外者である我々には多少判り難い物語かも知れない。しか し徐々に襲って来る恐怖が、正にじわじわと締め付けてくる ような感じの作品だった。
『エリート・スクワッド』“Tropa de Elito” 『エリート・スクワッド/ブラジル特殊部隊BOPE』 “Tropa de Elite 2 - O Inimigo Agora É Outro” 2008年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したブラジル映 画が日本ではDVDで紹介されることになり、その2年後に 製作された続編と共にサンプルを鑑賞した。 物語の舞台はリオ・デ・ジャネイロ。700にも及ぶスラム街 (ファヴェーラ)があるとされるその町を舞台に、その町に 巣くうギャング団とブラジル軍警察内に創設された特殊部隊 BOPEとの壮絶な戦いが描かれる。 その第1作の背景は1997年。その町をローマ法王が訪れるこ とになり、宿泊先の司祭館の周囲の安全確保が問題となる。 そこは巨大なスラム街に隣接していたのだ。そして、来訪を 3カ月後に控えてスラム街の掃討作戦が開始される。 その任に当るのはBOPE。そして主人公であり物語の語り 手は、BOPEの指揮官を務める警官。彼には臨月間近の妻 がおり、彼はその作戦が終ったら引退するつもりだった。そ して彼の許には2人の新人隊員が選抜されてくる。 物語は、その新人隊員たちの選抜と訓練、彼らが引き起こす 様々な問題なども織り込みつつ、スラム街に巣くうギャング 団や麻薬ディーラーとの戦いを、壮絶な銃撃戦などと共に真 正面から描いて行く。 そこにはブラジルという国家が抱える問題や、ギャング団と 腐敗した警察との関係。また富裕層の若者たちの問題などが 鮮やかな筆致で描かれている。 因に、この第1作の巻頭にはアメリカの心理学者スタンレイ ・ミルグラムの引用が掲げられている。その本文はポルトガ ル語表記で字幕も付けられてないので不明だが、1974年の著 書『服従の心理−アイヒマン実験』からの引用は想像できる ものだ。 脚本は、2002年11月4日付の「東京国際映画祭」で紹介した 『シティ・オブ・ゴッド』などのブラウリオ・マントヴァー ニ。前作で描き出したファヴェーラに巣くうギャング団の物 語を、今回はその対極である警察側から描くものだ。 そして第2作では、前作から10年後の現代を背景に、ギャン グ団の掃討されたファヴェーラに生じたさらなる巨悪との対 決を描く。それは第1作のアクションから一転、ポリティカ ルフィクションのような様相も呈するが、それも興味を牽か れる物語になっていた。 特にそのメッセージは、もしかしたら脚本家はこの第2作を 描くために第1作を作ったのかとも思えるほどで、多少青臭 いかも知れないその想いが切実に伝わってくる感じの作品に なっていた。 因に、第1作は既成の原作からのアダプテーションだが、第 2作はマントヴァーニと両作の監督を務めたジョゼ・パジー リャのオリジナルによるもの。ストーリーからは第3作も期 待できそうなものだが… なお、出演者では第1作、第2作で共通の人も多いが、その 老けぶりも見事に描かれていた。また中には『シティ・オブ ・ゴッド』の出演者もいたようだ。 DVDは12月2日に発売される。
『夢二』 鈴木清順監督による「浪漫三部作」とも呼ばれる『ツィゴイ ネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』の3作品が、全てニュー プリントでリヴァイヴァル公開されることになり、まず本作 の試写が行われた。 大正浪漫の代表とも呼べる画家で作詞家の竹久夢二を主人公 に、清順美学とも言える華麗な映像が展開される。 物語の背景は大正の中頃。すでに人気画家だった竹久夢二の 金沢訪問を題材に、夢二が生涯で最も愛したと言われる女性 の彦乃、モデルのお葉、そして金沢の豪商の妻・巴代らとの 交流が描かれる。 物語の開幕は、シルクハットの男との決闘の悪夢に取り憑か れた夢二の姿。そして夢二は、その悪夢を振り払うかのよう に彦乃との金沢への逃避行を企んでいる。しかし病弱の彦乃 はなかなか思うように事を運べない。 それでも夢二は金沢での再会を願い旅に出るが…。その旅路 で夢二は、湖に浮かべたボートに乗った女性や、宿の女将な どに巡り会う。しかもそこには山狩りの銃声が鳴り響き、そ れは妻の不倫を知った男が、妻と相手を切り殺して逃亡中と 聞かされる。 そんな状況の中で、さらに彦乃の使いと言うモデルのお葉や 天才画家の稲村御船らが金沢にやってくる。そして決闘相手 のシルクハットの男や彦乃本人も登場して物語は華麗に展開 されて行く。 出演は、夢二役に沢田研二。他に、元宝塚歌劇団で映画初出 演の毬谷友子、映画監督の長谷川和彦。さらに坂東玉三郎、 宮崎萬純、広田玲央名、大楠道代、原田芳雄、麿赤兒らが脇 を固めている。 脚本は、「浪漫三部作」の全てを手掛ける田中陽造、音楽は 同じく河内紀と、本作には昨年12月紹介『ブローン・アパー ト』などの梅林茂が参加している。またエンドロールには特 殊造形の原口智生の名前も出ていた。 なお本作のリヴァイヴァル公開は、来年1月中旬の東京を皮 切りに全国順次の予定だが、その前にBlu-ray+DVDのボック スセットが12月21日先行発売されるようだ。
『ピザボーイ』“30 Minutes or Less” 2010年5月紹介『ゾンビランド』のルーベン・フライシャー 監督と、同作に主演した後に『ソーシャル・ネットワーク』 でオスカーにノミネートされたジェシー・アイゼンバーグが 再び組んだ作品。 主人公は田舎街の宅配ピザ屋で配達係の男性。30分の配達時 間には諸般の事情で遅れがちだが、ドライヴィングのテクニ ックはかなりありそうだ。そんな主人公は 暇があれば幼馴 染みで小学校の臨時教員のインド人の親友と蔓んでいた。 一方、同じ街にはもう1組の2人組がいて、その1人の父親 は宝くじで1000万ドル当てたのに、息子には何の恩恵も与え ず金を使い果たそうとしていた。そのため殺し屋を雇って父 親を殺す算段を始めた息子は、その手付けが10万ドルと聞か される。 ところがそこでも手を汚したくない息子は、「呼べばすぐ来 る見知らぬ他人」に銀行強盗をさせることにし、ピザの宅配 で呼んだ主人公を拉致、爆弾ヴェストを装着させて銀行強盗 を強要することに。 このためにっちもさっちも行かない事態となった主人公は、 親友のインド人と共に銀行強盗を敢行するが… かなり特殊なシチュエーションの作品だが、そのシチュエー ションを見事に活かし切って、屈託なく笑える作品に仕上げ られていた。それは『ゾンビランド』の時と同じで、かなり やばい展開でも気持ち良く笑うことができたものだ。 共演は、昨年11月紹介『デュー・デート』などのダニー・マ クブライド、「ローリング・ストーン」誌で<まさに今のコ メディアン>と賞賛され、MTV賞の司会なども務めるアジ ズ・アンサリ。 さらに2007年10月紹介『俺たちフィギュアスケーター』など のニック・スウォードスン、今年3月紹介『世界侵略:ロサ ンゼルス決戦』などのマイクル・ペーニャ、2003年3月紹介 『メラニーは行く』などのフレッド・ウォードらが脇を固め ている。 脚本は、元スコット・ルーディンのアシスタントで、その後 にパラマウント社のエグゼクティブなども務めたマイクル・ ディリバーティ。因にこの脚本は、2010年版「ブラック・リ スト」(映画化されていない注目脚本のリスト)にエントリ ーされたものだそうだ。
『マシンガン・プリーチャー』“Machine Gun Preacher” 南部スーダンと北部ウガンダの紛争地帯で、武力集団から子 供たちを守る活動を続けている元麻薬ディーラーの男を描い た実話に基づく作品。その物語を、2002年6月紹介『チョコ レート』でハル・べリーにオスカー主演賞をもたらしたマー ク・フォースター監督が、ジェラルド・バトラーを主演に迎 えて映画化した。 物語の開幕は、男が刑務所から出所してくるシーン。その男 サム・チルダースは出迎えた妻の車で仮設住宅のような自宅 に戻って来るが、元はストリッパーだった妻の態度は何処か おかしい。 それでも最初は放蕩に明け暮れる主人公だったが、ある切っ 掛けから妻の信じる教会に通うようになる。そして人道に目 覚めた彼は、始めた事業も上手く行くようになり、やがて教 会で難民支援活動家の話を聞くと、自ら南部スーダンを訪れ ることを決意する。 こうしてアフリカの紛争地帯に足を踏み入れた主人公は、武 装集団が村を襲って子供たち拉致し、少年兵に仕立て上げて いるという実態を目の当りにする。それに対し主人公は、紛 争地帯のど真中で子供たちを守る活動を開始するが…。 何たって元はギャングのような男の話だから、戦闘シーンに なればマシンガンは打ちまくるし、正にタイトル通りの話が 展開される。しかもそれが一方的に善とばかりは言い切れな いのものに描かれているのは、見事な作品だった。 因に映画化の切っ掛けは、アメリカのテレビ局が取材した番 組。その番組では、スーダンで活動する男性が片手にショッ トガン、反対の手には聖書を持って登場し、現地の子供たち の窮状を訴えていたそうだ。 その番組に衝撃を受けた2人の女性プロデューサーがそれぞ れ男性にアプローチし、その後に2人は協力して映画化に漕 ぎ着ける。しかもその内の1人が、大学の映画科でフォース ター監督の同級生だったことから、監督の起用が決まったと のことだ。 つまりかなり偶然が支配しているようにも感じるが、この手 の映画はそういうことも多いようだ。そして映画の中でもい ろいろ偶然が作用するが、これらも全て実話に基づいている ものなのだ。 共演は、今年8月紹介『ミッション:8ミニッツ』などのミ シェル・モナハン、5月紹介『ロシアン・ルーレット』など のマイクル・シャンノン。また主人公の娘役を、2007年4月 紹介『ストレンジャー・コール』がデビュー作というマデリ ーン・キャロルが演じている。 なお、2008年1月紹介『君のためなら千回でも』などの作品 もあるフォースター監督は、子供を上手く扱えるということ でも選ばれているそうだ。
『アーサー・クリスマスの大冒険』“Arthur Christmas” クリスマスイヴの1晩で、今では世界中で20億人と言われる 子供たちに、サンタは如何にしてプレゼントを届けるのか、 その秘密を描いた3Dアニメーション作品。 本作の設定ではサンタは不老不死ではなく、代々北極に住む 一家に受け継がれて当主は20代目のようだ。そしてそろそろ 引退も考えているが、2人いる息子の長男は野心家で、プレ ゼント配達のシステム化に成功している。 ところがそのシステムが完成したはずの今年のクリスマスイ ヴ。ちょっとしたトラブルからプレゼントが1個だけ不逹に なってしまう。それは20億分の1の誤差範囲と無視を決める 長男だったが、心優しい次男にはそれは許されないことだっ た。 こうしてその1個のプレゼントを夜明けまでに届ける次男ア ーサー・クリスマスの大冒険が始まる。果たしてアーサーは そのプレゼントを首尾よく届けることができるのか、そして 引退する父親の跡を継ぐのは… 何たって長男の作り上げたシステムというのが強烈で、映画 の前半では妖精たちを使った大作戦が展開される。これに対 してアーサーのプレゼント配達は…。これはある種の現代社 会に対するアンチテーゼのようでもあるが、そのそれぞれの 良さを描いているのは見事だ。 サンタクロースの話は何本も作られているし、その配達方法 もいろいろ描かれてきたが、アニメーションとは言え本作ほ ど大規模なものは初めてかな。今年は7月に『イースターラ ビットのキャンディ工場』も紹介したが、これが今の子供た ちの納得の限界なのだろう。 脚本は、2007年4月紹介の大ヒットコメディ『ボラット:栄 光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』などの ピーター・ベイナム。本作は完全にお子様向けだが、大人も 納得できる作品に仕上げられている。 監督は、そのベイナムとは長年のコラボレイターというサラ ・スミス。因にスミスは、英国BBCでコメディ番組などを 手掛けた後にアードマン社の長編開発のチーフとなり、そこ で立上げた2本の内の本作で監督デビューとなったものだ。 なおエンディングに流れる「サンタが街にやってくる」は、 今年4月紹介したジャスティン・ビーバーが歌っている。
『しあわせのパン』 原田知世、大泉洋の主演で、都会の生活に疲れ北海道洞爺湖 畔に引っ越してきた夫婦を巡る物語。 夫婦は、トーヤ行きの路線バスが止まる月浦バス停のそばで パンカフェを開いている。夫が石窯でパンを焼き、妻がその パンにあったコーヒーや料理を作って客に提供する。そのカ フェには四季を通じていろいろな客がやってくる。 夏に来たのは、彼氏との沖縄旅行をすっぽかされて北海道に 来てしまった東京のデパート店員の女性と、地元の北海道を 出て行くことのできない青年。2人はそのカフェで巡り合い 関係を近付けて行くが、彼女の帰京の日が迫ってくる。 秋に訪れたのは、カフェの前のバス停から学校に通う少女と その父親。母親が出ていった後の2人暮らしの中で行き違っ てしまった心は、カフェの温かい料理で再び通い合わせるこ とができるのか…? 冬にやって来たのは老境の夫妻。関西で大地震にあい、生業 だった風呂屋は廃業に追い込まれ、娘も亡くしてしまった夫 妻には、もはや人生に見出す希望も夢もなかった。そして夫 妻は、2人が共通の人生を歩み始めた場所に戻ってきた。 という3つのエピソードが、「月とマーニ」という絵本をモ ティーフにして北海道の大自然を背景に綴られて行く。 脚本と監督は、2009年5月紹介『刺青・匂ひ月のごとく』の 三島由紀子。前作のタイトルに月が登場し、本作のモティー フにも月があるが、本作は主題歌にもなっている矢野顕子と 忌野清志郎のデュエット曲「ひとつだけ」にインスパイアさ れたものだそうだ。 なお元々の経緯は、主演の大泉が所属する北海道のプロダク ションが、「北海道の知られていない魅力を伝えたい」と企 画。三島に依頼をして、2006年2月紹介『シムソンズ』など の製作会社と共に作り上げた作品だ。 共演は、夏の客に平岡祐太、森カンナ、秋の客に八木優希、 光石研、冬の客に渡辺美佐子、中村嘉葎雄。他に余貴美子、 あがた森魚、大橋のぞみ(ナレーション)、霧島れいからが 脇を固めている。 美味しそうなパンや料理もたくさん登場して、四季折々の北 海道の大自然も丁寧に写し出された作品になっている。
| 2011年11月13日(日) |
花子の日記、51、歴史は女で作られる、タンタンの冒険、パーフェクト・センス、セカイの向こうに、ドライブ、フラメンコ/フラメンコ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『花子の日記』 「ゆうばりファンタスティック映画祭2011」のコンペティシ ョンに選出され、撮影の行われた香川県では6月に先行上映 された作品が、11月26日の東京渋谷を皮切りに全国順次公開 されることになり、試写替りのサンプルDVDを鑑賞した。 お話の舞台は香川県小豆郡小豊島(おでしまと読む)。島民 人口は20人弱だが、飼育されている牛の数は500頭という、 瀬戸内では珍しい畜産で生計が立てられている島。その島の 畜産家の育てた牛が、5年に1度の品評会で日本一に輝いた ことから物語は始まる。 しかしその畜産家は、最高の肉牛を作り出すために全身全霊 を捧げて家族のことはほったらかし。そんな父親に反発した 娘は早々に島を出て、今は東京の美大に進学し帰省もせず、 卒業後も島に帰る気持ちはないようだ。 一方、韓国では、マフィアの組長が日本から盗み出した遺伝 子を使って美味しいイチゴの生産に成功していた。そして組 長が次に狙いを付けたのは美味しい和牛。そこで何も知らな い韓国人親子を日本に送り込み、和牛の精子を盗み出すこと を命じるが… お互いに反発し合う日本人の親子と、何事にも協力する韓国 人の親子。そんな2組の親子が香川県東部の瀬戸内海や高松 市を舞台に、ブランド牛の遺伝子を巡るちょっとコミカルで 優しい物語を繰り広げる。 出演は、日本人親子役に、2007年12月紹介『ぼくたちと駐在 さんの700日戦争』などに出演の倉科カナと永島敏行。韓国 人親子役に、劇団・新宿梁山泊を旗揚げして2002年10月紹介 『夜を賭けて』の監督も務めた金守珍と歌手のSORAが扮 している。 脚本と監督は、2010年『グラキン★クイーン』という作品が 公開されている松本卓也。因に前作も香川県が舞台の作品の ようだが、監督は東京都出身とのことだ。そして本作では、 2010年「さぬき映画祭」の準グランプリを受賞している。 お話は他愛もないもので、その割りには韓国マフィアがかな り一方的に悪人に描かれているのはちょっと気になったが、 出演者の金はそれなりに主張もある人のようだから、その人 が認めているならそれで良いのだろう。 それに対して、日韓それぞれの親子関係が、もしかしたらこ んなイメージなのかなと思わせるもので、それは日本人には ちょっと悔しいけれど、納得はさせられた。
『51』“51” After Dark Originalsの名称で全米公開のされているホラー シリーズの1篇。本国ではシリーズの5本が今年1月に纏め て限定公開され、その後の2月に単独で公開された本作が、 日本ではシリーズの第1弾として12月2日にDVDリリース される。そのサンプルを鑑賞した。 題名は『24』のパクリではなくて、アメリカ・ネバダ州に あるグレーム・レイク米空軍基地、通称エリア51のこと。 以前から墜落したUFOの搭乗員が収容されているなどの噂 の絶えない基地が、初めてマスコミに公開されるところから 物語は始まる。 そこに招かれたのは、全米ネットのニュースショウの司会者 と、ウェブで告発サイトを運営している女性。2人はそれぞ れ撮影スタッフ1人ずつを連れて基地に乗り込む。そこでは 厳格な基地司令が案内を務め、見学が始まるが… 実はエリア51の地下には異星人を収容する秘密基地が実在 し、そこに収容された異星人は比較的従順でアメリカ政府の 活動にも協力していた。ところがその日、今まで従順だった 異星人たちが脱走。しかもその1体は接触した誰にでも変身 できる能力を備えていた。 と言うことで、変身能力があるならこっそり脱走すればいい ものを、何か恨みでもあるのかやたらと凶暴になった異星人 が次々に殺戮を繰り返し、他にも凶暴な異星人がいて、その 中での脱出劇が繰り広げられる。そして基地には「自爆シー クェンス」が発動される。 監督は、2009年“The Devil's Tomb”(邦題:デビル・ハザ ード)という作品が公開されているジェイスン・コネリー。 前作はキューバ・グディングJr.主演で、当時に鑑賞はして いたが、試写ではなかったので紹介はしなかったもの。しか しそれなりの作品だった記憶がある。 そして本作の出演は、昨年12月紹介『トロン:レガシー』と 実は1982年の『トロン』にも出演していたトロン役のブルー ス・ボックスレイトナー。他に、『デビル・ハザード』にも 出ていたジェイスン・ロンドン。 さらにテレビ“Supernatural”にレギュラー出演のレイチェ ル・マイナー、2009年12月紹介『フィリップ、きみを愛して る』に出演のアンドリュー・センニング、『POTC』の最 初の3部作に出ていたヴァネッサ・ブランチらが登場する。 まあ典型的なB級作品という感じだが、壺は外してはいない し、それなりの作品にはなっていた。 なおシリーズには他に“Husk”“Prowl”“Seconds Apart” “Fretile Ground”“The Tusk”(以上1月に限定公開)、 “Scream of the Banshee”(3月公開)“Re-Kill”(未公 開)という作品がラインアップされている。
『歴史は女で作られる』“Lola Montes” 1955年に製作され、日本でも1956年に公開されたマックス・ オフュルス監督、フランス=西ドイツ合作映画の修復版によ るリヴァイバル公開。 因に本作は、1955年パリでの初公開に失敗し、その後は監督 の休暇を狙って製作者がズタズタにカットしたヴァージョン が公開されていたという曰く付きのもの。その作品が2008年 にシネマテーク・フランセーズの手で修復され、今回はその 修復版が日本「初」公開されるものだ。 物語の背景は19世紀、その1821年から61年までを生涯とする ダンサーにして高級娼婦でもあった芸名ローラ・モンテス、 本名エリザベス・ロザンナ・ギルバートの人生が、映画の製 作当時ではちょっと奇抜な構成で描かれる。 それは、サーカステントのような舞台で、口上と共に彼女の 男性遍歴が紹介されるというもの。そしてそれぞれの口上に 続いてそのドラマが描かれる。そこには音楽家のフランツ・ リストを始め、ドイツ国王ルートヴィッヒ1世など様々な男 性が関わる。 特にドイツ国王に対しては、彼女のために内閣を解散させた り大学を閉鎖させるなど、国体を揺るがす程の悪女ぶりを発 揮。結局は彼女自身が国外追放され、国王も退位するという 歴史も作り出す。 そんな彼女が、今やサーカスの見世物に身を落とし、その口 上が述べ立てるままにサーカス芸を披露して自らの身の上を 演じ続けるという構成だ。 因に実話では、ドイツを追放された後の1851年に渡米し、そ こではダンサーとして国内を巡業しているそうで、本作はそ の頃を描いているようだ。さらにその後はオーストラリアで 舞台に立つが次第に落ちぶれ、最後はニューヨークで教会の 世話になって39年の生涯を閉じたとなっている。 という作品だが、映画の表現方法が多彩になった現代では上 記のようなフェイクの構成も受け入れられ易い。しかしこれ が1955年の製作当時ではかなり奇抜だったことは確かかも知 れない。そんなことで当時の不評も判らないではないが、そ の作品が今や堂々と公開されるものだ。 主演は、1956年『80日間世界一周』などにも出ているマルテ ィーヌ・キャロル。他に、ピーター・ユスチノフ、今年5月 紹介『赤い靴』に出演のアントン・ウォルブルック、1966年 『華氏451』のオスカー・ウェルナーらが脇を固めている。
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』 “The Adventures of Tintin” 1929年に連載が開始され、1983年原作者のエルジェが亡くな るまでに23冊、その後に刊行された未完の遺作を含めて24冊 が発表された人気コミックスの映画化。この映画化に、共に オスカー受賞者のスティヴン・スピルバーグ監督とピーター ・ジャクスン監督が挑んだ。 なお計画では3作が製作される予定で、本作はその第1作。 その監督はスピルバーグが担当している。 物語は、原作の第11巻「なぞのユニコーン号」(1943年刊行) と第12巻「レッド・ラッカムの宝」(1944年刊行)に基づくも ので、そこに第9巻「金のはさみのカニ」(1941年刊行)のエ ピソードが加味されている。 ここで主人公のタンタンは、蚤の市でユニコーン号という帆 船の模型を手に入れるが、その直後から怪しい男たちに付き 纏われるようになる。そして自宅が襲われ、帆船の模型は盗 まれるが…。それはタンタンを新たな冒険へと誘うことにな る。 物語の舞台はベルギー、カリブ海、そしてサハラ砂漠。まさ に世界を股に掛けた大冒険が繰り広げられる。 しかもその映画化は、『LOTR』などのVFXを手掛けた ニュージーランドのWetaディジタルが新開発したモーション キャプチャーを使って、原作の背景、キャラクターをそのま まに映像化したもので、正にエルジェの世界がそのまま再現 されている。 これこそが、「初めて読んだときから、新たな発見の旅路を 共にする運命だとずっと信じてきた」というスピルバーグが 示した究極の映画化の実現のようだ。 モーションキャプチャーの演技と声の出演はジェイミー・ベ ル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ。それに今年 10月紹介『宇宙人ポール』のニック・フロストとサイモン・ ペッグ。さらにトビー・ジョーンズ。そして愛犬スノーウィ も活躍する。 なお、映画化は3Dでコミックスの舞台がリアルに映像化さ れている。ただし、主人公の名前は日本ではフランス読みの 「タンタン」で知られているが、今回は英語の台詞なので原 語は「ティンティン」。字幕は「タンタン」だがその辺が気 になる人は、吹き替え版で楽しんだ方が良いかも知れない。 なお映画化の第2作は、“Prisoners of the Sun”の副題で ジャクスン監督による計画が進行しており、監督が撮影中の “The Hobbit”を完了し次第に着手することになっている。 題名から察するにペルーが舞台の作品になりそうだ。
『パーフェクト・センス』“Perfect Sence” 2003年『猟人日記』などで評価されるイギリスの監督デヴィ ッド・マッケンジーが、一風変わった終末世界を背景にして 描いたラヴ・ストーリー。 始まりは、人々がいきなり悲嘆の感情を示した後で嗅覚を失 うというもの。その「疫病」は瞬く間に世界に蔓延する。そ して主人公の1人は感染症が専門の女性病理学者で、彼女は 疫病の研究に従事するが病原菌などは検出されない。 もう1人の主人公はプレイボーイのシェフ。前の彼女を一方 的に振った直後の彼は、休憩に出てきた厨房の裏庭で、同じ 裏庭に面した部屋に住む女性病理学者に声を掛ける。そして ベッドを共にした2人に悲嘆の感情の波が押し寄せる。 人間は嗅覚が無くなると食べ物の美味しさが半減する。この ため主人公の務めるレストランも開店休業に追い込まれる。 これに対し主人公らは、味を強くした料理を提供して客足を 取り戻すのだが。「疫病」は次に人々の味覚を奪い去る。 こうして次々に窮地に追い込まれながらも、何とかそれを克 服しようとするシェフらの努力と、そんな窮地だからこそ育 まれる2人の愛情が描かれて行く。しかし「疫病」は人々の 五感を次々に奪って行く。 脚本は、デンマーク出身のキム・フォップス・オーカソン。 地元の国際映画祭やワルシャワ国際映画祭でも受賞している ベテラン脚本家の作品にマッケンジー監督が反応し、デンマ ークとイギリスの共同製作で映画化が実現した。 出演は、ユアン・マクレガーとエヴァ・グリーン。マクレガ ーは『猟人日記』でも監督と組んでおり、待望の再会となっ ている。そこに2006年『007/カジノ・ロワイヤル』など のグリーンが参加したものだ。 他には、2006年6月紹介『マッチ・ポイント』などのユエン ・ブレムナー、2003年7月紹介『閉ざされた森』などのコニ ー・ニールセン、2003年12月紹介『ギャザリング』などのス ティーヴン・ディレイン、そして、『SW』のトリビア=ウ ェッジ・アンテリーズ役でマクレガーに役者の道を勧めたと 言われるデニス・ローソンらが脇を固めている。 本作はデンマーク人の脚本ではあるが、『草の死』や『トリ フィド』などイギリスSFが得意とする終末ものの作品で、 過去の映画化と同様、本作でも製作費を掛けずに巧みに仕上 げられている。特に、発症の前に感情の爆発があるという設 定が物語を見事に盛り上げていた。 その一方で、ケニヤやメキシコ、インドにはちゃんと撮影班 を派遣するなど、丁寧に作られた映像が素晴らしい効果を挙 げている作品でもある。災害の中でも力強く立ち上がる人々 の姿は、特に今の日本人には共感を持って観られそうだ。
『ドット ハック/セカイの向こうに』 2002年にプロジェクトがスタートしたというゲーム、アニメ などのメディア・ミックス=『.huck』シリーズの最新作。 プロジェクト初のオリジナル劇場版という作品が3Dで公開 される。 物語の背景は、「ワールド」というオンライン・ゲームが人 気を呼んでいる近未来。主人公は、そんな中でもあまりゲー ムには興味を示していなかった少女。そんな少女が周囲の勢 いに押されてふとゲーム世界に入ってみると… そこで少女は、いきなり世界を破壊し掛ける異様な敵キャラ に出会ってしまう。しかもそこには謎の少女と敵キャラに対 抗するグループもいるが、それはユーザーによって操作され ているものではなさそうだ。 そしてその敵キャラが、ネットワークを通じて現実世界をも 脅かし始める。 主人公らはフェイスマウントディスプレイを装着し、五感を 使ってバーチャル世界を現実のように動き回る。そんな理想 的なゲーム世界が描かれている。それを映画の観客も3Dで 体感できる仕組みの作品だ。 それに映画では、物語の中の現実世界が何処となくコミック スの絵柄のような大まかさで表現され、それに対するゲーム 世界の表現が精緻で、ゲーム世界の方がリアルに感じられる のは上手い仕掛けのようにも思えた。 さらに主人公がゲーム初心者で、主人公の行動の中で徐々に ゲームの全容が知れて行くという構成もなかなか上手く考え られている感じがした。それは特に主人公に知らされていな い情報の部分に関しても、違和感なく受け取れるのも巧みな 構成だった。 ただ、主人公の仲間がより多数の仲間に協力を呼び掛ける辺 りの展開が、もう少しその理由付けなどを明確に欲しかった もので、それがあればより感動的なクライマックスになった ような気がしたのはちょっと残念に感じられたところだ。 監督は、ゲームソフト「NARUTO」がシリーズで860万本を突 破しているというゲーム制作者の松山洋。脚本は『機動警察 パトレイバー』や『平成ガメラ』シリーズなどの伊藤和典。 2人は共に『.huck』プロジェクト創設メムバーだそうだ。 声優は、2009年7月紹介『サマー・ウォーズ』などの桜庭な なみ、2009年7月紹介『TAJOMARU』などの田中圭、『侍戦隊 シンケンジャー』などの松阪桃季。 実は、桜庭のアテレコには最初は少し戸惑ったものだが、本 人が透けて観えるのも、それはそれで了解という感じかな…
『ドライブ』“Drive” 先月紹介『ラブ・アゲイン』などのライアン・ゴズリング、 昨年12月紹介『わたしを離さないで』などのキャリー・マリ ガン共演で、デンマークの鬼才と言われるニコラス・ウィン ディング・レフン監督に今年のカンヌ映画祭で監督賞をもた らした作品。 主人公は、ロサンゼルスで強盗の逃走車を運転して小銭を稼 いでいる男。普段は自動車修理工場で働いているが、数年前 にふらりと現れたというだけで素性も明らかではない。しか し、映画のカースタントも請け負うほどのドライヴィングテ クニックの持ち主だ。 そんな男がアパートの同じ階に住む子連れの女性と付き合い 始める。その女性の夫は刑務所に入っていたが、すぐに出所 の時を迎える。そして夫は男の存在も気にするが、夫の事情 で2人はある仕事で手を組むことになる。ところが… 共演は、昨年5月紹介テレビシリーズ『ブレイキング・バッ ド』で3年連続エミー賞受賞のブライアン・クランストン、 1987年『ブロードキャスト・ニュース』などのアルバート・ ブルックス。 他に、今年4月紹介『エンジェル・ウォーズ』などのオスカ ー・アイザック、昨年12月紹介『かぞくはじめました』など のクリスティーナ・ヘンドリック、さらに、2008年9月紹介 『ヘル・ボーイ』などのロン・パールマンらが脇を固めてい る。 なお、本作は2006年に翻訳の出ているジェイムズ・サリスと いうミステリー作家の原作に基づくものだが、原作の女性は ヒスパニック系だったそうだ。しかし脚本を読んだマリガン が出演を熱望し、彼女に合わせて脚本が書き直されたとのこ とだ。 そんな女性の姿をマリガンが繊細に演じ、微妙な三角関係を 見事に描き出して行く。 なお原作者のサリスは、ウェブで調べたらサミュエル・R・ ディレイニーの関連書籍や、トマス・M・ディッシュの追悼 文なども発表しているようで、もしかしたらSFにも理解の ある作家かも知れない。 ただ、映画は暴力的な描写で日本公開はR-15のレイティング とされるもので、その辺の描き方には衝撃も覚える作品だっ た。これが原作のせいなのかそれとも監督の嗜好かは判らな いが、その辺は少し覚悟して観る必要はありそうだ。
『フラメンコ、フラメンコ』“Flamenco, Flamenco” 2010年2月紹介『ドン・ジョヴァンニ』などのスペインの名 匠カルロス・サウラ監督が、スペイン・アンダルシア地方の 伝統芸術「フラメンコ」の真髄に迫った2010年の作品。 サウラ監督は、1994年にも『フラメンコ』と題する同様の作 品を発表しており、その際も組んだ1980年『地獄の黙示録』 など3度のオスカーに輝くカメラマン=ヴィットリオ・スト ラーロと共に、再びその世界に挑んでいるものだ。 そしてそこには、フラメンコの神と称されるマエストロたち と、新世代のアーチストたちが豪華に共演し、前作から16年 を経たフラメンコの今が描き出されている。 という作品だが、正直なところはフラメンコにかなり精通し ていないと本作を完全に理解することは難しいようだ。 実際に作品はナレーションなどを一切廃して、ただフラメン コの演奏を描写して行くだけで、そこには演奏者の名前など はテロップで表示されるが、その名前も知らなければ作品の 本質も理解できない。 因に作品では、ルンバ、アレグリアスなどのフラメンコの種 類に分けた演奏なども行われているようで、それらが21章、 21の楽曲に渡って描かれている。それもテロップには表示さ れるものだが、これらも事前の知識なしでは判断ができなか った。 さらに映像には、多分ロートレックらによるフラメンコを題 材にした様々な絵画も登場するが、それも解説抜きではなか なか判断も難しい。僕にはロートレック、ルノワール辺りが かろうじて判る程度だった。 とは言え監督の1994年作以来、日本にもフラメンコのファン は激増しているのだそうで、そういう人たちにはこれで充分 なのかな。それは豪華な演奏が、見事な舞台装置の中で繰り 広げられる作品だ。 なお作品では巻頭と最後に「緑よ、私が愛する緑」“Verde que te quiero verde”という楽曲が2回も登場し、「ヴェ ルディ、ヴェルディ」と歌われるもので、これは東京ヴェル ディのサポーターには是非観て貰いたいと思ったものだ。
| 2011年11月06日(日) |
ルルドの泉、人生はビギナーズ、インモータルズ、デビルズ・ダブル、UGLY、スイッチ、ウクレレ、ジョージ・ハリスン+Oscar/Animation |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ルルドの泉で』“Lourdes” フランス南部スペイン国境ピレネー山脈の麓にあるキリスト 教の聖地ルルドを舞台に、奇跡について描いた作品。脚本・ 監督を手掛けたジェシカ・ハウスナーは、本作により2009年 ヴェネチア映画祭で4部門の受賞に輝いている。 年間500−800万人が訪れるという聖地ルルド。そこは1858年 に聖母マリアが出現した場所と言われ、またその聖母マリア が教えたという泉には、不治の病をも直す奇跡の力があると されている。 そんな聖地を訪れた巡礼団。その中に首から下が麻痺して、 食事や車椅子の乗り降りから就寝まで、全てに介助が必要な 主人公の姿があった。そして巡礼団はてきぱきとしたリーダ ーが率いるボランティアの女性たちと、マルタ騎士団に迎え られるが… この主人公を中心に、周囲の巡礼団やボランティア、騎士団 の人々のドラマが展開されて行く。そしてルルドの泉の奇跡 が起きた時、周囲の人々に微妙な波紋が広がる。 物語の舞台はキリスト教の聖地で、それは宗教的な意味合い のものもいろいろと描かれるが、映画自体は宗教臭いもので はなく、奇跡が起きたときの人々の反応などが純粋に描かれ ている。むしろ最近の若者の宗教離れみたいなものも描いて いる感じだ。 しかし作品は、実に20年ぶりにルルドの泉での現地撮影が実 現しているもので、そのために監督らは1年を掛けて周到な リサーチやインタヴューを行い、関係者に納得の行く準備を 行ったとのことだ。 従って作品では、ルルドの街や泉の周辺の壮麗な建物、また 奇跡を認定する医療機関の仕事ぶりなども丁寧に描かれ、一 面ではドキュメンタリーの様な作りにもなっている。僕自身 はルルドに関してそれなりの知識を持ってはいたが、その実 像が観られたのは面白かった。 主演は、本作でヨーロッパ映画祭主演女優賞を獲得したシル ヴィー・テステュー。彼女は2007年7月紹介『エディット・ ピアフ愛の賛歌』でセザール賞助演女優賞も受賞している。 他に、2007年3月紹介『不完全なふたり』などのブリュノ・ トデスキーニ、2010年9月紹介『ロビン・フッド』などのレ ア・セドゥらが共演。 宗教的な話は別にして、ルルドの町並や聖地の風景など、観 光映画としても楽しめる作品だった。
『人生はビギナーズ』“Beginners” ユアン・マクレガーとクリストファー・プラマー。現在の映 画界を代表しているともいえる2人の俳優が、新たな人生を 始める勇気と、そのやり方を教えてくれる人間ドラマ。 主人公は38歳独身のアート・ディレクター。人見知りな性格 で人付き合いはあまりせず、友達は仕事だけという男性だ。 そんな男性の父親が突然ゲイをカミングアウトする。それは 44年連れ添った妻に先立たれた後のことだった。 実は、主人公が人見知りなのは彼の両親にも理由があった。 一見仲は良さそうだが実態の無い夫婦関係。それは子供の目 からも明かな、空虚な夫婦生活だったのだ。そんな両親を観 て育った主人公には他人を愛することができなかった。 しかしカミングアウトをしてからの父親の変身ぶりが彼を少 しずつ変えて行く。そして最後の時を迎えた父親が彼に語っ た真実は…。それは彼に勇気を与え、ついに女性との関係も 築くことができるようになるが。 脚本と監督は、2006年6月紹介『サムサッカー』などのマイ ク・ミルズ。実は監督の父親が、本作と同様に75歳でゲイを カミングアウトしたのだそうで、本作は監督自身の物語でも あるようだ。 共演は、2010年2月紹介『オーケストラ!』などのメラニー ・ロラン、1998年『ウェルカム・トゥ・サラエボ』などのゴ ラン・ヴィシュニック、それに愛犬役のコスモは、本作が出 演3作目のタレント犬だそうだ。 人生はいつでもやり直しができる。それは年齢には関わりが 無く思い立ったときにそれをすれば良い。そんなメッセージ が前面に押し出されてはいるが、本作ではさらにそれに触発 されて行く息子の姿も重要で、それこが真のメッセージのよ うにも感じられた。そんな男たちの姿を、2人の名優が見事 に演じている。 ただ、映画を観ていて少し気になるところがあって、それは 今回物語を書き出して再確認できたが、やはり物語の展開に はちょっと問題があるようだ。まあそれは映画の中では枝葉 末節と言えるところではあるが。
『インモータルズ−神々の闘い−』“Immortals” 2008年5月紹介『落下の王国』などのターセム・シン監督に よるギリシャ神話を基にした3Dアクション作品。 太古の時代。神々はゼウスを中心としたオリンポスと、他の タイタン族とに分かれ争っていた。その争いにはオリンポス が勝利し、タイタン族はギリシャ・タルロス山の奥深くに幽 閉される。そしてオリンポスの神々は天空へと去った。 やがて時が経ち、地上には人間が溢れ、その中でもギリシャ の民は神を崇めて暮らしていた。ところが隣国イラクリオン の国王ハイペリオンは神々に恨みを抱き、神々を凌駕すべく 世界征服を企みギリシャに攻め寄せてくる。 その目的はタイタン族の解放。それにより神々をも倒そうと 考えたのだ。そして圧倒的なハイペリオン軍の前にギリシャ の征服も目前となったとき…。1人の奴隷の息子に人類の未 来が託される。 物語にはゼウス、ポセイドン、アレス、アテナらが登場し、 ギリシャ神話を背景にしたオリジナルの物語が展開されてい る。しかもそこにはCGI−VFXを駆使した神々の闘いが 繰り広げられるものだ。 出演はミッキー・ローク、フリーダ・ピント、スティーヴン ・ドーフ、ジョン・ハート、それに2013年公開予定の新作で スーパーマンに抜擢されたヘンリー・カヴィル。また、今年 9月紹介『三銃士』などのルーク・エヴァンス、『トワイラ イト・サーガ』に出演のケラン・ラッツ、7月紹介『トラン スフォーマー』に出演のイザベル・ルーカスらが脇を固めて いる。 ターセム・シン監督は2000年公開のデビュー作『ザ・セル』 で鮮烈な映像を見せてくれたが、今回はどちらかと言うと、 製作者のジャンニ・ヌナリマーク・キャントンが先に手掛け た『300』の趣が強い感じだ。 しかし衣裳の石岡瑛子、プロダクション・デザインのトム・ フォデンら、『ザ・セル』からのスタッフも健在で、特に衣 裳はゴールドを基調にした豪華さで観客の目を楽しませてく れていた。 また3D効果も随所に映像作家らしい仕掛けを施しており、 それらは心地よく楽しむことが出来た。
『デビルズ・ダブル』“The Devil's Double” イラクの独裁者サダム・フセインの息子で、フセイン政権の 許、放蕩の限りを尽くしたと言われるウダイ。その影武者に なった男の実話に基づく作品。この物語を、2008年1月紹介 『NEXT』などのリー・タマホリ監督が映画化した。 主人公はイラク陸軍の中尉。元々ウダイとは同級生で、その 頃から似ていると言われていたようだ。そしてフセイン一族 が王政を倒したときには、彼やその家族も大いに歓声を挙げ たのだが…。 政権に着くや暴政を繰り返し始めたフセイン一族には、国内 からも暗殺者の攻撃が開始され、やがてその攻撃は息子ウダ イの身辺にも及んでくる。そこで主人公のことを思い出した ウダイは彼に影武者になることを命令する。 それは主人公にとっては、テヘランに住む家族を事実上の人 質に取られての逃れることの出来ないものだった。こうして ウダイの側で暮らし始めた主人公の目の前で、ウダイの悪魔 のような所業が繰り広げられる。またそこにはウダイの愛人 の姿もあった。 このウダイと影武者の1人2役を、今年8月紹介『キャプテ ン・アメリカ』などに出演のドミニク・クーパーが演じ、ウ ダイの愛人役には、2002年9月紹介『8人の女たち』などの リュディヴィーヌ・サニエが扮している。 他に、昨年2月紹介『グリーン・ゾーン』に出演のラード・ ラウィ、今年1月紹介『光のほうへ』に出演のダール・サリ ム、2008年1月紹介『君のためなら千回でも』に出演のナセ ル・メマジアらが脇を固める。 そしてクーパーは、もちろん風貌などは実物とは多少異なる のだが、エキセントリックなウダイと陸軍兵士で沈着冷静な 影武者とを見事な対比で演じており、これにはオスカーの呼 び声も理解できるところだ。 なお映画の中にはサダム・フセインと影武者も登場するが、 こちらはそっくりさん。実は、先日観戦したサッカー試合の エキビジションで、マラドーナのそっくりさんが出場し、そ のチームの監督もマラドーナのそっくりさんという仕掛けに 大笑いしたもので、今回はそれを思い出しても笑えてしまっ た。 ウダイの悪行がもっと酷かったのではないかという感じもあ るが、クーパーの怪演ぶりも面白く観られる作品だ。
『UGLY』 1998年に侯考賢監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』など を担当した音楽家半野喜弘のアイデアから、2005年『スリー ピングフラワー』などの柿本ケンサクが監督、2002年6月紹 介『ピンポン』などの窪塚洋介主演によるパリを舞台にした 男女の物語。 窪塚扮する主人公は腹違いの兄を訪ねてパリのアパルトマン にやってくる。しかし訪ねた部屋に義兄の姿はなく、ルーム メイトの住人たちに義兄のことを尋ねても、なかなかその話 題に触れようとしない。 しかし成り行きでそのルームメイトたちと共に暮らすように なった主人公は、ある日、街角で1人の日本人女性と巡り会 う。そして、彼女の存在に共通するものを感じた主人公は彼 女と愛し合うようになるが… 物語の始まりは何となく『第三の男』のような感じがして、 どんなミステリーが待ち受けているのか期待したが、物語は 何ということもない男女の話だった。しかも結末が唐突では ないのだけれど、僕にはちょっと違和感が生じてしまった。 実は、物語の背景にはそれなりにミステリーになりそうな要 素もあったのだが、本作の作者たちにはそのような嗜好はな かったようだ。 テーマ的には、2009年9月紹介『白夜』に似たところがあっ て、そのときにも書いた海外滞在者の孤独のようなものが描 かれた作品なのだろう。それは原案の半野が長い海外生活の 中で感じてきたもののはずだ。 それが本作の表現では、後半でかなり過激なものになってし まうのが、物語全体の弱さになってしまった感じもした。特 に、義兄が感じていたものが映画の中で追求されない点には 多少の物足りなさも感じたところだ。 共演は、2010年3月紹介『鉄男』などの桃生亜希子。因に彼 女は柿本監督の以前の作品にも出演していたようだ。他には フランス人らしい俳優たちが出演しているが、プレス資料に 個別の紹介はなかった。 なお本作は、8月中旬にスタートした「THEATRE TOKYO」と いうウェブサイトで公開された作品の完全版という触れ込み で、12月10日〜22日の期間限定で東京渋谷シネクイントにて 劇場公開される。
『スイッチ』“Switch” カナダ人の女性が、フランスでバカンスを楽しもうと考えた ことから始まる恐怖を描いた作品。 主人公は、カナダのモントリオールに暮らす女性のイラスト レーター。25歳で容姿も悪くはないが、仕事運にも男運にも 見放され、今日も作品を持ち込んだ出版社で担当者が不在の 上、バカンスでしばらく出社しないと言われてしまう。 そんな彼女は応対に出た女性に食事に誘われ、その女性から switch.comというサイトを教えられる。それはバカンスの間 だけ住まいを交換するというサイトで、保険も完備し、安心 して異国のバカンスを楽しめるというものだ。 そして数年前に利用し男もゲットしたという女性の勧めで、 主人公はパリの住居を契約し、幼い頃に住んだこともある憧 れの地にやってくるが…。そこで彼女は飛んでもない事件に 巻き込まれてしまう。 猟奇的殺人に、写真を挿げ替えられたパスポートなどが周到 に準備された犯人の身替り。そのパリの住居の住人に仕掛け られた罠から主人公は如何にして脱出できるのか。大使館も 当てにできない苦境が彼女を待ち構える。 物語では、主人公が犯人として尋問される内に判明してくる 真犯人像がかなりやばくて、その周到な準備の状況など納得 できるように作られている。そして物語はフランスとカナダ を股に掛けた大スケールの展開となって行くが… 犯人の執拗さがかなり異常で、展開は謎が謎を呼んで行くも のになる。その辺から多少の違和感も生じてくるのだが、そ の犯人の動機が明らかにされると、それは辻褄の合うものに はなっていた。 ただまあ、東京国際映画祭で紹介された作品にもこんな風な 結末のものがあって、それは意外性もあって面白いのだが、 最近このような展開が多い感じがするのはちょっと気になる ところだ。 脚本は、2004年3月紹介『クリムゾン・リバー2』のオリジ ナルの原作者で脚本も手掛けたジャン=クリストフ・グラン ジェ。監督は、2004年『スパイ・バウンド』などのフレデリ ック・シェンデルフェール。 出演は、ウディ・アレンの2011年作“Midnight in Paris” に出演しているというカナダ出身のカリーヌ・ヴァナッス。 それに2010年11月紹介『エリックを探して』には本人役で出 演していた元サッカー選手のエリック・カントナ。因にカン トナは、1997年現役を引退してからは俳優に転身したのだそ うで、本作でもなかなかの演技を見せていた。
『マイティ・ウクレレ』“Mighty Uke” ハワイアン演奏には欠かせない楽器ウクレレの起原と歴史、 それに現状を描いたドキュメンタリー。 作品は最初に、先月紹介『がんばっぺ フラガール』の音楽 も担当しているハワイ出身のウクレレ奏者ジェイク・シマブ クロによる超絶とも言えるウクレレ演奏から始まり、19世紀 後半にポルトガル移民によって楽器が到来したという歴史な どが紹介される。 そこでは、西欧文化との融合を計ろうとしたハワイ王家の働 きや様々な動きが、ウクレレをハワイ音楽の中心にまでして いった経緯や、その楽器が一時は世界の音楽をリードしなが らも、そこから凋落していった歴史なども描かれる。 さらにその楽器が、21世紀に入って数多くの愛好者によって 復活を遂げて行く様子や、世界各国での現状、特にカナダの 高校では音楽の授業に取り入れられて、その選抜メムバーが ハワイで演奏する感動的な姿なども紹介されている。 ハワイの音楽に関しては、今年6月紹介『ワン・ヴォイス』 でその特別な意味合いなどが報告されたが、本作はちょうど それと対になる作品とも言え、ハワイの外側から観たハワイ 音楽の姿が描かれている感じのものだ。 それはある種の拡散と浸透とも言えるものだが、その一方で その原点への回帰が見事に描かれてもいる。それらが見事に 構成された作品でもあった。 作品の中でも言われているように、ある時期のウクレレは子 供の玩具のように扱われ、スタダップコメディアンの小道具 としても使われる。その歴史は日本でもカーボンコピーの様 に同じだったもので、その符合も面白く感じられた。 それにしても、4弦しかない小さな楽器がここまで多彩な演 奏を繰り広げる、その様子も見事に描かれた作品。その一方 で楽器の持つ親しみやすさも見事に紹介され、これは本当に この楽器が好きな人たちによって描かれている、そんなこと も納得の出来る作品だった。 なお、この後で観たジョージ・ハリスンのドキュメンタリー でもウクレレが登場するシーンがあり、そこでの扱いも本作 の通りで、それも面白く感じられたものだ。
『ジョージ・ハリスン』 “Gerge Harrisn: Living in the Material World” ビートルズの一員として20世紀後半の音楽界を席巻し、ビー トルズの解散後はインド文化の伝導者としても多大な功績を 残したギタリストの生涯を描いたドキュメンタリー。 元々は1980年にジョン・レノンが亡くなった後の1990年代に “The Beatles Anthology”と題された映像ドキュメントが 企画されていた頃、ジョージは自らのドキュメンタリーを作 ることを考えていたのだそうだ。 ところが2001年にジョージが死去。これで計画は一度は潰え たが、彼の妻のオリヴィアが夫の遺志を継いで2005年に企画 を再開。1978年の『ラスト・ワルツ』など音楽ドキュメンタ リーの実績もあるマーティン・スコセッシを監督に招請して 本作が制作された。 その内容は、ビートルズの誕生から1968年にジョージの名曲 While My Guitar Gently Weepsが完成されるまでを描くパー ト1(1時間35分)と、ビートルズの解散以後を検証するパ ート2(1時間55分)とで構成され、数々の名曲と共に彼の 生涯が描かれている。 そこには、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターは元よ り、オノ・ヨーコ、映画監督のテリー・ギリアムからF1レ ーサーのジャッキー・スチュアートまで、生前のジョージと 親交のあったあらゆる分野の人たちがインタヴューに答えて いる。 因にギリアム監督は、1981年の『バンデッドQ』をジョージ の資金援助で完成させているものだが、ジョージがそのため に映画会社を設立するなど、その間の経緯には映画ファンと しても興味深いものがあった。 また、ギタリストのエリック・クラプトンのインタヴューで は、ジョージとの間でのかなりプライベートな部分にまで触 れており、それはさすが監督にスコセッシを招いた効果かと も思わせたところだ。 そして作品では数々の名曲が誕生するまでの秘話や、その間 のビートルズのメムバーたちの確執なども、かなり赤裸々に 語られている。そこでは特にジョージの孤立感が手に取るよ うに理解することができた。 しかし、そんな確執も乗り越えて音楽を追求したジョージの 人間としての素晴らしさを描くのが本作の主眼。それはもち ろん未亡人が制作した作品だから当然ではあるが、それを考 慮してもジョージの素晴らしさが見事に表現されていた。 2部の合計で3時間30分はかなりの長尺だが、観ている間は 時間の経過も気にならなくなるほどの濃密な作品で、見終っ て本当に堪能できたと言えるものだった。 * * アカデミー賞の長編アニメーション部門の予備候補が発表 されたので報告しておく。リストはアルファベット順で、 “The Adventures of Tin Tin”“Alois Nebel” “Alvin and the Chipmunks: Chipwrecked” “Arthur Christmas”“Cars 2”“A Cat in Paris” “Chico & Rita”“Gnomeo & Juliet”“Happy Feet Two” “Hoodwinked Too! Hood vs. Evil”“Kung Fu Panda 2” “Mars Needs Moms”“Puss in Boots”“Rango”“Rio” “The Smurfs”“Winnie the Pooh”“Wrinkles”の18本。 多分この中から5本が最終候補となるものだが、下馬評は “Tin Tin”“Rango”“Happy Feet”辺りが強そうだ。 その一方で、今年は日本作品が見当たらないのが気になっ た。去年から今年に掛けて日本アニメは何本か観ている気が するが、アメリカ公開が決まっていないと言うことか。チェ コ作品などが並んでいるところでは多少寂しい感じがした。
|