井口健二のOn the Production
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2011年08月28日(日) 僕たちのバイシクル・ロード、ラブ&ドラッグ、ミッション:8ミニッツ、ゴモラ、VAMPIRE STORIES、メサイア+Blade Runner

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『僕たちのバイシクル・ロード』“Free Wheels East”
イギリス人の25歳と27歳の2人の若者(?)が、大学を卒業し
て実社会に出るまでの時間を使って、地球上の7つの大陸の
全てを自転車で走るという冒険に挑み、それを自ら記録した
ドキュメンタリー。
プレス資料に掲載された文章によると、これは大人になるこ
とを躊躇する若者の甘えに過ぎないのだそうだが、その甘え
の通り、2人は何ら特別な準備もなく、漫然とドーバー海峡
のフェリーに乗り込んでしまう。
そのせいもあるのかも知れないが、1人の自転車はやたらと
パンクをしまくるし、筋肉痛なども深刻になるが、それでも
まずは自転車でモスクワを目指し「赤の広場」に到着。これ
自体が史上初の快挙なのだそうだ。
さらに飛行機は使わないというだけのルールなので、そこか
らはシベリア鉄道でウランバートルに向い、モンゴルの首都
からは再び自転車で中国四川省へ、その間には洪水て道路が
寸断されている中を、細い脇道を自転車を担いで突破するな
どの難所もあった。
そしてラオスからタイ、シンガポールまで辿り着くが、そこ
で資金が尽きてしまう。しかし何とか貨物船にヒッチハイク
してオーストラリア。これでヨーロッパ、アジア、オースト
ラリアの3大陸制覇。ここで資金が完全に無くなるが、彼ら
は思いも掛けぬ方法で調達に成功。
その後は、南極、南米、北米、アフリカと辿ってドーバーに
帰り着く。もちろんその間にもいろいろな出来事は生じるの
だが、少なくとも南極の氷原を自転車で走る姿は達成感のあ
るものではあった。

それはまあ、男の子なら誰だって一度はこんな冒険を夢見た
ものと思うが、それにして彼らの運の良さにも感心してしま
うところで、本当なら2、3回は死んでいてもおかしくない
ような危険な事態も発生しているものだ。
それにしても今月は、前回紹介『LIFE IN A DAY』にも自転
車で世界一周をしている人が出ていたし、自転車旅行の話が
連続した。エコロジーの風潮のせいか、そんな人が増えてい
るのかな。
なお本作は、製作から撮影、編集まで、ほぼ登場する2人と
その兄弟が担当しているが、ナレーションだけはプロの俳優
ピーター・コヨーテが手掛けている。その経緯は不明だが、
『E.T.』の鍵男は、夢見る若者を忘れていないようだ。

『ラブ&ドラッグ』“Love and Other Drugs”
『ラスト・サムライ』などのエドワード・ズウィック監督、
『ゾディアック』のジェイク・ギレンホール、『アリス・イ
ン・ワンダーランド』のアン・ハサウェイ主演で、セックス
から始まる恋愛を描いた作品。
主人公は医者の家に生まれながらも落ちこぼれ、しかし口先
で女をものにすることだけは得意という男。そんな男が病院
相手の製薬会社の営業マンの職に就き、業界ではトップ10に
入る成績のセールスマンも君臨する激戦地に配属される。
そんな男が営業先の病院で見掛けたのは、パーキンソン病の
初期段階にある女性だった。そこで自社の製品を勧めるのを
口実に彼女に接近した主人公だったが、思いのほか簡単に彼
女からベッドに誘われてしまう。
そして2人は情熱的なセックスを繰り返し、彼は徐々に恋愛
感情を高めるのに対して、彼女は病気のことを理由に深入り
はしないと言い返す。それでも2人の仲は順調で、彼は充実
した日々を送って行く。
その頃、彼の勤める会社は革命的な新薬「バイアグラ」を発
表。それを取り扱う権利を得た主人公は販売記録を次々に塗
り替える好成績を上げ続け、ついにシカゴ本社で行われる優
秀セールスマンだけの研修会にも招かれるが…。そこで彼は
2人の将来を左右する重大な決断を迫られることになる。
物語の始まりでは、ギレンホール扮する男が見事にチャラ男
で、対するハサウェイ扮する女性も何処でもセックスをした
がるなど、正直に言って少し引き気味になるくらいのアレア
レという展開だった。
しかしズウィック監督の作品がそんな手緩いものであるはず
がない。パーキンソン病という難病を正面に見据えて、それ
は見事な人間ドラマを作り上げている。そしてギレンホール
が、その渦中に置かれた男を見事に演じているものだ。

共演は、2009年1月紹介『フロスト×ニクソン』などのオリ
ヴァー・プラット、前回紹介『スマーフ』などのハンク・ア
ザリア、2008年3月紹介『ラスベガスをぶっとばせ』などの
ジョッシュ・ガッド、2009年9月紹介『ホワイトアウト』な
どのガブリエル・マクト。
それに「バイアグラ」のファイザー社が実名で登場し、その
豪華絢爛な「研修会」の模様なども紹介されている。因に、
本作はファイザー社のセールスマンだった男性の回想録に基
づくそうだ。

『ミッション:8ミニッツ』“Surce Code”
2004年“Specise �掘匹覆匹離戰鵝Ε螢廛蝓爾砲茲襯�リジナ
ル脚本を、2010年1月紹介『月に囚われた男』のダンカン・
ジョーンズ監督で映画化した作品。
男は通勤列車の座席で突然目覚める。そして前の座席にいた
女性からは親しく話し掛けられるが、彼には見覚えもない。
しかしいくつかの遣り取りが続くと突然車内で爆発が起き、
それはすれ違いの貨物列車も巻き込んで乗客全員死亡の大惨
事となる。
と、そこで彼が再び目覚めたのは小さな密室の中。そこに置
かれたモニターに写る女性から彼が聞き出したのは、彼が居
たのはその惨事に巻き込まれ死亡した男性の脳から取り出さ
れた最後の8分間の記憶の世界という話だった。
しかも犯人からは次のテロの予告が発せられており、主人公
にはその記憶の世界を調査して犯人を割り出す任務が与えら
れる。そして再び最後の8分間の世界に送り込まれた主人公
は、その記憶をソースコードとして構築された世界の中で犯
人を追い求める。
それは何度でも繰り返すことが出来、徐々に調査は進展する
が、現実時間の中では犯人の次のテロ予告の刻限も迫ってい
た。さらに列車爆破のスペクタクル映像が繰り返される中、
主人公には別の思いも生じてくる。
タイムマシンを使って時間を遡り、大惨事の発生を未然に阻
止するというSFはいくつもあるが、本作は被害者の最後の
記憶の中から犯人を特定し、次の犯行の前に取り押さえよう
というもの。これはタイムマシンより現実的とも言えるし、
テロのような犯罪には有効なものかも知れない。
しかも本作では、その記憶をソースコードとして被害者が意
識していなかった部分も構築できるというアイデアで、これ
はなかなか魅力的だ。さらにこの先には、SFファンなら思
わずニヤリとするアイデアも盛り込まれている。
ただしその結末が良いのか悪いのかがかなり思い悩むところ
で、それはハリウッド映画としては見事な結末ではあるし、
恐らくSF映画ファンの多くには喝采されるとは思うが…。
本来のSFとしては何か違うようにも感じられた。
それはまあ、そんなこととやかく言うなよ、と言われそうな
ところでもあるのだが。

主演は、『ラブ&ドラッグ』のジェイク・ギレンホール。因
に本作の製作では、まず脚本がギレンホールに渡され、彼が
主演を希望すると共に、彼の要請でジョーンズ監督が招請さ
れたそうだ。
他に、昨年11月紹介『デュー・デート』などのミシェル・モ
ナハンと2009年9月紹介『エスター』などのヴェラ・ファー
ミガがそれぞれの世界で主人公と関る女性を演じている。
SFファンにはぜひ見てもらって意見を聞きたい作品だ。

『ゴモラ』“Gomorra”
2008年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、その年の
東京国際映画祭でも上映された作品。実はその時にも鑑賞し
ていたが、この年はいろいろな事情で日本公開の決まってい
ない作品の紹介はしなかった。
という作品の日本公開が決定し、試写が行われて再度鑑賞す
ることが出来たものだが、実は映画祭のときにはストーリー
が殆ど把握できず、恐らくその時には紹介するにもかなり苦
労すると思えたものだ。
その物語は、複数のエピソードが並行して語られるもので、
そこには伝統の組織と反対派の対立の渦中にいる少年トト。
組織のメムバーの家族や遺族に給料を届けるドン・チーロ。
組織が仕切る産業廃棄物処理の管理を任せられるロベルト。
さらに組織直営の衣料品店で有能な仕立て屋パスクワーレ。
組織の武器庫を見付けた2人のチンピラなどが描かれる。
それはアンサンブル劇と言うほどには相互の関連も少なく。
ましてや物語が最後に収斂することもない。ただそれぞれの
エピソードごとにストーリーが展開し、それぞれの主人公の
したことに対する結末が待っているものだ。
しかもその結末はかなり衝撃的なものが多く、それが組織犯
罪の恐ろしさを描き出している。これがネオリアリズモと言
われればその通りなのだろうが、ほとんど救いのない物語の
羅列はかなりの厳しさだった。

原作は,翻訳もされているイタリアの作家ロベルト・サヴィ
アーノの著作によるもので、イタリアに実在するCamorraと
いう犯罪帝国に潜入し、その実態を克明に描いた作品は、本
国では100万部を売り上げたベストセラーだそうだ。
因に、サヴィアーノは本作の脚本も手掛けているが、現在は
身辺の安全のため警察の保護下に置かれているとのこと。
監督は、共同脚本も手掛けたマッテオ・ガッローネ。本作で
は、ヨーロッパ映画祭で作品、監督、主演男優、脚本、撮影
の各部門の受賞にも輝いている。
本作の宣伝には、『ゴッドファーザー』と『シティ・オブ・
ゴッド』の題名が挙げられていたが、ここにはコッポラが描
いた詩情もなく、メイレレスが描いた希望も消え、ただ非情
さだけが恐ろしいまでに描かれていた。


『VAMPIRE STORIES: BROTHERS』
『VAMPIRE STORIES: CHASERS』
D-BOYS、ハロプロなどの若手芸能人を使って描かれた和製吸
血鬼物語。B編、C編と称されるそれぞれ75分前後の2作品
が連続上映されるとのことで、マスコミ向けには2本立ての
試写会が行われた。
物語は、大学のサークル活動でキャンプ場に来ていた学生グ
ループの周辺で展開される。
そしてB編では、バーベキューの途中で体調不良になり帰宅
した弟妹の家に、5年間行方不明だった長兄が戻ってくる。
しかしその長兄は吸血鬼になっており、実は純血の吸血鬼の
血を引く兄弟は、20歳になるとき人間の血を吸うと吸血鬼に
なると言うのだが…
一方、C編ではキャンプ場が襲われ、全員が失血死、しかし
周囲に血痕はないという猟奇殺人事件が起きる。それは吸血
鬼の仕業だが、血を吸われた人間は遺伝子の適合した者だけ
が吸血鬼になるという。その現場からは男女の学生が行方不
明になっていた。
その男子学生は見知らぬ山小屋で目を覚ます。そこには彼を
助けた剣士がおり、その剣士から、このようにして吸血鬼に
なった人間(混血と呼ばれる)は、7日以内に血を吸った吸
血鬼を倒さないと、永久にその奴隷になると教えられる。
という時系列の等しい2つの物語が展開され、B編では吸血
鬼になる、ならないの兄弟間の確執。C編では奴隷とならな
いために自分を襲った吸血鬼に立ち向かう男子学生の追跡劇
などが描かれて行く。
物語は概ねヨーロッパにおける吸血鬼伝説に則っており、太
陽光線との関係や、一部にはわざと変えたと思われる設定も
含めて、一応は納得できる展開になっていた。さらに吸血鬼
の姿を描くVFXなどは、うまく伝統を取り入れている感じ
もしたものだ。
また、1つの物語を2つの側面から描くという仕掛けもなか
なか巧みに描かれているし、しかも、D-BOYS主演のイケメン
映画の雰囲気もしっかりと踏襲されていて、これは若い女性
には安心して観ていられる作品にもなっている。
正直にはホラー映画の雰囲気はかなり薄まってはいるが、そ
れはヒットしたアメリカ映画でも同じことだ。

主演は、2007年12月紹介『そして春風にささやいて』などの
柳下大(D-BOYS)と、2008年2月紹介『カフェ代官山』など
の馬場徹。そして、2010年7月紹介『神様ヘルプ!』などの
加藤和樹が両作を通じての吸血鬼役でかなりのアクションも
演じている。特に加藤は、往年の和製ヴァンパイア俳優岸田
森にも似た雰囲気があり、なかなか良い感じだった。
他には、今年4月紹介『アベック・パンチ』などの牧田哲也
(D-BOYS)、田中れいな、鈴木愛理(共にハロプロ)らが脇
を固めている。
監督はテレビ出身で本作が長編映画デビューの後藤光、脚本
はTVアニメ『ONE PIECE』を手掛け、特に『EPUSODR: 0』
の脚本を担当したという田中仁。さらに音楽は、海外でも人
気があるというヴィジュアル系バンドのVersailiesが担当し
ている。
案内状の試写日程の欄にはB編、C編と書かれていて、これ
にはA編はどうした?という冗談も言ってみた。それは勿論
サブタイトルのせいなのだが、ここはやはり長兄(アイ兄と
呼ばれている)の空白の5年間を描いたA編と、主演2人の
対決を描くD=Duel編は作って貰いたいものだ。それが観た
くなるくらいの作品にはなっていた。


『メサイア』
昨年7月に発表されたドラマCDが話題になり、昨年12月に
小説版が登場、今年2月からは角川書店発行の月刊コミック
誌「ASUKA」で漫画連載中という作品の映画化。その映画化
を、平成『ガメラ』シリーズや『デスノート』、2008年11月
紹介『プライド』や今年3月紹介『ポールダンシングボーイ
★ず』などの金子修介監督が行った。
物語の時代背景は20XX年、世界は「北方連合」と「東連邦」
の2大勢力に分断され、両陣営は激しく覇権を争っていた。
そんな中、情報戦も熾烈を極め、日本では新たなスパイ組織
「警察省警備庁・特別公安局外事5係」通称“サクラ”が設
立されて、特別な訓練によって育成された若者のスパイたち
が活動を始めていた。
そして本作の物語は、富士山麓にある全寮制の学園で展開さ
れる。生徒の自主性が重んじられ、事実上生徒会が校内を支
配しているというその学園に、通常はほとんどない転入生が
やってくる。
ところがその生徒は、初日から遅刻をした上に制服や教科書
の用意もない。そこで1学年1学級のクラスの級長が彼の面
倒を見ることになるが…。遅刻の上に騒ぎを起こした転入生
は、早速生徒会にも目を付けられる。
こうして転入生の学園生活が始まり、彼の周囲には級長やそ
の仲間が集って、それなりの生活となって行く。その一方、
学園内の食堂などに置かれたテレビでは、外地で起きた凶悪
なテロ事件のニュースが報じられていた。
映画の始まりは至って普通の学園ドラマの展開で、その学園
のロケーションなどからは、今年6月紹介『あの、晴れた青
空』など「タクミくんシリーズ」を髣髴とさせた。しかしそ
の裏側では、巨大な陰謀が蠢いている…となるものだ。
という展開だが、実は今回の映画化の場合、上記の背景の部
分が発端では完全に隠されていて、予備知識なしで観ている
と最初は何を観せられているのか皆目解らない。その説明は
映画の後半に掛るところで明かされるが、果たしてその手法
が正しかったどうか。
それは原作が評判で、そんなことは観客が予め知っていろと
言いたいのかもしれないが、例えば出演俳優だけが目当ての
観客層にそれを押しつけていいものかどうか、その辺では多
少心配もしてしてまった。
因に予備知識なしで観た僕は、正直に言って映画の前半では
いじめや学内恋愛などの描写に辟易し、物語の全容が解って
からもその気分が残って、なかなか本筋の物語に入って行け
ない感じがしたものだ。
原作は壮大な世界観などで評価が高いようだが、この映画自
体ではそのイメージもあまり湧いてこないし、また題名にも
特別な意味があるらしいのだが、その辺も映画では明確には
説明されていない。
その辺が解っていれば多少観方も変ったのかも知れないが、
映画だけでは理解ができなかった。せめて巻頭にテロップで
説明…とも思うが、それはダサイと考えられたのかな。なお
脚本は、2010年『機動戦士ガンダム00』などの黒田洋介が
担当している。
ただ原作が連載されているのは女性向け漫画雑誌だそうで、
その趣味ならこれでも良いのかな。それに本作がシリーズの
第1作と考えれば、これも有りかなとも思えるところで、次
回は設定なども頭に入った上で、その壮大な世界観などを楽
しみたいものだ。

出演は、『ポールダンシング…』に続いて主演の荒井敦史、
2009年『仮面ライダーディケイド』の井上正大、2010年『仮
面ライダーW』の木ノ本嶺浩、2010年5月紹介『君が踊る、
夏』などの陳内将。
他に、2008年『炎神戦隊ゴーオンジャー』の逢沢りな、今年
2月紹介『魔法少女を忘れない』などの高橋龍輝、2010年7
月紹介『神様ヘルプ!』などの松田悟志、2008年『仮面ライ
ダーキバ』の加藤慶祐、2011年『海賊戦隊ゴーカイジャー』
の細貝圭、2005年5月紹介『人間椅子』などの小沢真珠らが
共演している。
映画の全体は多少弱い感じもするが、若い男女の共演は観て
いてフレッシュで初々しさも感じられ、次回作も期待したく
なった。
        *         *
 今回の製作ニュースは、往年の名作に絡む話題。
 ワーナー傘下のアルコン・エンターテインメントが、製作
者のバド・ヨーキンから獲得した1982年の映画『ブレード・
ランナー』に関連する権利について、その新作の製作にオリ
ジナルを監督したリドリー・スコットの参加が発表された。
 フィリップ・K・ディックの原作『アンドロイドは電気羊
の夢を見るか』を映画化したオリジナルは、その鮮烈な未来
都市の描写などで正しくSF映画のランドマークの一つと呼
ばれるものだ。そしてその世界観は、数多くのSF映画や小
説にも影響を与え、正にその亜流とも言える作品も多数生み
出された。実際に、これ以降の映画作品で未来的な風景に雨
が降っていると、それは全て『ブレード・ランナー』の真似
と見做されても仕方がないと言えた。
 それほどの影響力を持つ作品だったが、実はオリジナルの
製作中に原作者が他界しており、その影響もあったのか最近
のハリウッド映画ならすぐにでも製作された続編は、小説で
は出版されたものの映画では実現することがなかった。その
続編を含む権利が今回は契約され、さらにその製作にスコッ
ト監督が参加することになったものだ。
 因にアルコン社のトップは、この映画化ではスコット監督
の再任以外に意味はないと考え、そのため春先にはロンドン
で1979年『エイリアン』の前日譚とされる“Prometheus”を
制作中の監督を訪ね、参加を要請したとのこと。その結果が
ようやく公表されたものだ。
 なお、監督自身は18カ月以内に製作を開始したいと述べた
ということだが、現状は脚本のアイデアも検討されていない
段階とのことで、その期限までにスコット監督の望む脚本が
出来上がるかどうか、その辺が第1の関門になりそうだ。
 しかも今回の契約では、作品は1982年のオリジナルに基づ
くものとされるが、オリジナルのリメイクは権利の中に含ま
れていないとのこと。従って前作の前日譚または後日談が描
かれることになるが、小説では後日談はあるもののそれが採
用されるのか否か。さらに前作に出演したハリスン・フォー
ド、ルトガー・ハウアーの去就も含めて、これからの情報が
注目を集めることにもなりそうだ。



2011年08月21日(日) ラルゴ・ウィンチ、海と自転車と…、スマーフ、MADE IN JAPAN、やがて来たる者へ、リミットレス、Capt.アメリカ、カウボーイ&エイリアン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
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『ラルゴ・ウィンチ』“Largo Winch (Tome 2)”
オリジナルは1970年代に出版された小説だが、1977年にコミ
ックスとして刊行が開始されて人気が爆発、本国では18巻目
が近日刊行予定で、英語への翻訳もすでに8冊(オリジナル
では12巻目まで)が出版されているベルギー=フランスの人
気コミックスの映画化。
主人公は、幼い頃にクロアチアの家族の許で平和に暮らして
いたある日、突然現れた父親と名告る男に拉致されて、強引
に帝王学を学ばされる。その男はWグループと称する多国籍
企業の総帥だった。
やがて青年になった主人公は、横暴な父親に反発し、その目
を逃れて世界放浪の旅に出る。ところがそんな父親が暗殺さ
れ、主人公は総資産530億ドルの大企業を率いることに…。
しかしそこには、彼の資産を狙う国際的な陰謀などが渦巻い
ていた。
という物語が背景にはあるらしいのだが、本作は映画化の第
2作で、しかも前作で描かれたはずの総帥の死後に主人公が
旅先から連れ戻される辺りが微妙に絡んでくるから、本作だ
け観ているとかなり物語の理解に努力が要る感じだった。
ただし、映画自体は007張りのアクションの連続で、しか
も大金持ちの主人公がやりたい放題をするお話だから、それ
はそれで、物語などはとやかく言わずに充分に楽しめるもの
になっている。
そして本作では、ビルマ(ミャンマー)問題に絡めて主人公
の人道的犯罪を追求する国連の機関や、主人公の失脚を利用
して企業の乗っ取りを企むロシアマフィアなどが登場して、
国際的な大陰謀が描かれている。因に、本作の国際題名は、
“The Burma Conspiracy”とされているものだ。

主演は、2008年の前作に続いて登場のトメル・シスレー。他
に、シャロン・ストーン、2010年1月紹介『アイガー北壁』
などのウルリッヒ・トゥクール、タイ人女優ナパックパパー
・ナークプラシットらが共演している。
また本作は、フランスの映画と演劇で活躍し、昨年他界した
ローラン・テルジェフの遺作になったようだ。
脚本と監督は、今年2月に紹介『ツーリスト』の基になった
“Anthony Zimmer”を2005年に発表し、2008年に本シリーズ
の前作も手掛けたジェローム・サル。
また脚本には、2009年7月紹介『幸せはシャンソニア劇場か
ら』などのジュリアン・ラプノーが協力し、音楽は『ツリー
・オブ・ライフ』などハリウッド映画でも活躍するアレクサ
ンドル・デスプラが担当している。

『海と自転車と天橋立』
映画評論家でもある田中千世子がメガホンを取ったドキュメ
ンタリー作品。
自らもサイクリストという田中監督が、自分の所属する自転
車クラブの会長による日本海側列島縦断のロングライドを取
材し、そこに朝鮮半島からの渡来文化への考察や、途中で訪
れる天橋立の現状などに思索を広げ、それらを3章に分けて
描いて行く。
その第1章は、日本海側の古代文化と渡来文化との関係。こ
こでは祇園祭でもお馴染みの京都八坂神社にも奉られていた
牛頭天王(「ごずてんのう」と読む)という渡来神を取り上
げ、両者の関係を考察している。
次の第2章では、本作のメインである自転車クラブの会長の
雄姿が描かれる。この旅では北海道から九州までの道程を毎
日100kmずつを走破して行く。そこにはそれぞれの場所での
地元会員との交流の様子なども描かれる。
そして第3章は、そのロングライドの途中で立ち寄る天橋立
の景観を題材に、それが守られている現状などを描く。ここ
では漁場を作るための突堤の造成によって潮流が変化し、一
時は痩せ細った橋立を復活させた技術なども紹介される。
因に第1章は、自転車クラブ会長のロングライドに先立って
交流があるという韓国の自転車レースを取材し、その中から
想起されたものとのことで、作品の全体が会長のロングライ
ドに関っているというものだ。
ただ、僕自身はそれぞれのテーマに興味も湧いたし、観てい
て面白くはあったものだが、それぞれのテーマに興味が湧か
ないと、全体としてはテーマがばらばらで多少独り善がりの
感じは生じてしまう。
それは逆に言えば、それぞれのテーマの追求に多少物足りな
さも感じてしまうところで、特に古代文化のテーマに関して
は、もう少し時間を掛けて突っ込んだ取材もして欲しかった
感じもした。実際このような失われた宗教に関しては大いに
興味を引かれた。

なお自転車クラブの会長は、2012年には太平洋側の列島縦断
ロングライドの計画も立てているそうで、そのとき監督には
どんな考察が生まれるか、それも楽しみなものだ。

『小さな青い妖精スマーフ』“The Smurfs”
1958年にベルギーの漫画家ピエール・クリフォール(通称ペ
ヨ)によって創造され、ヨーロッパではバンド・デシネ(コ
ミックス)の古典とされると共に、アメリカでは1980年代に
ハナ・バーベラが製作したテレビアニメーションでも知られ
る人気原作の映画化。
物語の発端は、何処とは知れぬ森の中で暮らしていたスマー
フたちが、仲間の1人クラムジーの失敗から旧敵の魔法使い
ガーガメルの襲撃を受け、止むなく滝にできたトンネルに飛
び込んでニューヨークに来てしまうというもの。
そのニューヨークでは、化粧品会社の広報担当のパトリック
が、気難し屋の女社長の許でキャンペーン企画の立案に四苦
八苦していた。そんなパトリックの家に偶然居候することに
なったスマーフたちは、帰りのトンネルを開く方法を探し始
めるが…
そのニューヨークには、スマーフたちの後を追ってガーガメ
ルもやって来ていた。そしてセントラルパーク内の古城に居
座った魔法使いは、猫のアズレールと共にスマーフ捕獲の作
戦を練り始める。
というお話で、リンゴ3個分の身長という小さな青い妖精ス
マーフたちの活躍が、CGIと実写の合成による3Dのスク
リーン一杯に展開される。

まあ、お話はお子様向けの他愛ないものだが、本作は2009年
12月紹介『スパイアニマル/Gフォース』なども手掛けたソ
ニー・イメージワークスがVFXの制作と3D化を行ってお
り、それは見事な3D映像が楽しめるものになっている。
出演は、パトリック役に1997年『スターシップ・トゥルーパ
ーズ』などに出演のニール・パトリック・ハリス、その妻役
に2006年『父親たちの星条旗』などのジェイマ・メイズ、そ
してガーガメル役には1998年『GODZILLA』に出演のハンク・
アザリアが扮している。
またスマーフたちの声優では、今年5月紹介『テンぺスト』
などのアラン・カミング、昨年8月紹介『キャッツ&ドッグ
ス3D』に出演のフレッド・アーミセン、昨年1月紹介『バ
レンタインデー』などのジョージ・ロペス、2009年5月紹介
『ターミネーター4』などのアントン・イェルチンらが登場
している。
なお、日本公開の吹き替えには、Hey!Say!JUMPの山田涼介と
知念侑李が参加して、彼らは日本版の主題歌も歌うようだ。
原作本の翻訳は現在絶版のようだが、テレビシリーズは今で
も時たま観かけるもので、日本での認知度はそこそこあると
思われる。日本では若い女性向けのキャラクターとしても人
気があるようだし、そこにジャニーズ系の吹き替えでヒット
を期待したいものだ。

『MADE IN JAPAN−こらッ!−』
2009年9月紹介『黄金花』に続く、京都造形芸術大学映画学
科を母体とする「北白川派」による製作作品の第2弾。今回
は学生の書いたシナリオを、その教官だった高橋伴明監督が
採用し、主演にも学生を抜擢して映画化している。
物語は、両親と父方の祖母と共に暮らしていた18歳の女性を
中心としたもの。その祖母が他界し、マザコンだった父親は
腑抜けのようになってしまう。一方、母親は近くに住む事故
で歩けなくなった若者の介護で忙しく、娘は牛乳配達の仕事
をしていた。
そんな一家の暮らしが描かれて行く中で、やがて父親は腑抜
けと異常な性癖の度を増して行き、ついに母親と娘は家に居
られなくなる。しかし、その頃には彼女たちもそれぞれの居
場所を見つけていて…

脚本の和間千尋は、大学の高橋監督が受け持つシナリオを書
かせる授業で、高橋監督の言によると「登場人物が全員病気
人間という変な脚本」で注目され、さらに「得意の病気人間
を出して、家族の崩壊劇を書け」という課題に応えて本作を
書き上げた。
ただしそこには、高橋監督からのしつこい要求で1年の時間
が掛けられたそうだが、その試練に耐え完成された脚本は、
「これなら映画にできるな!」と言えるほどのもので、それ
を高橋監督自らメガホンを取って映画化したとのことだ。
出演は、松田美由紀、1982年『TATTOOあり』以来の高橋作品
参加になる山路和弘、松原智恵子、2006年『海猿』などの浅
見れいな、2007年『どろろ』などの水上竜士。そして出演当
時は大学の1回生だった大西礼芳。他に学生から関屋和希と
伊藤菜月子が出演している。
なお大西は、学内のオーディションで選ばれたものだが、最
初は殆どが3回生以上の候補者の中で唯一の1回生、しかも
それまでに演技経験なしだった彼女が、めきめきと才能を発
揮し、高橋監督に「大西よりうまい子はいない」と言わしめ
たそうだ。
なお、撮影監督には2006年10月紹介『映画監督って何だ!』
の小川真司、美術には2005年9月紹介『探偵事務所5』の嵩
村裕司、録音には今年1月紹介『ランウェイ☆ビート』の浦
田和治などプロも協力して、撮影日数20日、製作費500万円
の作品が完成されている。

『やがて来たる者へ』“L'uomo che verrà”
1944年9月にイタリア北部の山村マルザボットで起きた実際
の事件を題材にし、2010年のイタリアアカデミー賞で16部門
にノミネート、作品賞など3部門を受賞した作品。
1943年7月に連合軍による南イタリアへの上陸が開始された
年の12月、北部の都市ボローニアの近郊に位置する山村はま
だ比較的平穏な日々が続いていた。そんな中で暮らす8歳の
マルティーナは、以前に弟の死を体験したことから無口な少
女だった。
しかし母親が新たな妊娠をし、少女もその誕生を心待ちにし
ていたが、その一方で村人の中にはパルティザンとなってナ
チスドイツ軍に抵抗する者も少なくなく、その食料や物資の
調達にナチスやファシストたちが目を光らせ始める。
それでもこっそりとパーティを開いたり、また都会からの疎
開者を匿ったり…、さらに爆撃が激しくなって教会に身を潜
めることもあったが、少女にはまだ戦争と言うものが何なの
かはっきりとは判らない。
そしてついに弟が誕生し、一家は喜びに包まれるが、それも
束の間、ナチスドイツ軍による村に対するパルティザン掃討
作戦が開始される。
この事件での犠牲者は771人と確定され、その内訳は、18歳
以下が216人、18−60歳の男性が161人、女性が315人、60歳
以上が76人で、この内パルティザンと見られるのは50人ほど
だったと言われている。
つまり、殆どはパルティザンではない村人の虐殺だった訳だ
が、映画ではその虐殺の模様もかなり克明に描いている。さ
らに映画ではそこに至るまでのナチスドイツ軍人の横暴さも
描いており、敗色が見え始めた軍隊の恐ろしさも描き出して
いる。

製作、原案、脚本、監督、編集は2005年に『風は自分の道を
めぐる』という作品で高い評価を受けているジョルジョ・デ
ィリッティ。先には実話を記録したドキュメントがあったよ
うだが、本作はそれを基にしたフィクション、ただし虐殺は
真実のものだ。
出演は、主演の少女役グレタ・ツッチェリ・モンタナリは新
人のようだが、他に2010年3月紹介『ボローニャの夕暮れ』
のアルバ・ロヴァケル、2005年6月紹介『輝ける青春』のマ
ヤ・サンサらが共演している。

『リミットレス』“Limitless”
2001年に出版されたアイルランド人作家アラン・グリンの原
作“The Dark Fields”(邦訳題「ブレイン・ドラッグ」)
からの映画化。
この原作者については良く判らないが、amazon.comのAuthor
pagesによると、他に2冊著作があり、内の“Winterland”
という作品は2011年6月に出版され、“Bloodland”という
作品が2012年1月に出版予定のようだ。
ただしその2作とも、ジャンルはクライムノヴェルとなって
おり、2001年に出版された本作の原作とは傾向が異なってい
る。これには、本作の原作がSFを目指したものであったか
どうかにも疑問を感じるところで、実際映画もSF風味では
あるがSF映画としてはちょっと…という感じもした。
物語の主人公は小説家。ただし出版社との契約は結んでいる
が、肝心の作品はまた1行も書けていない。そんな彼が街で
ばったり会った元妻の弟から、脳の働きを究極に高めるとい
う新薬のサムプルを貰う。
とは言え元々がドラッグの売人だった義弟の話など信用でき
ない主人公だったが、執筆に行き詰まりついにその錠剤を口
にしてみると…。小説は瞬く間に書けてしまい、さらに語学
の習得もホイホイ出来、その上経済の先行きなども見え始め
る。
こうして、一躍経済市場の寵児となってしまう主人公だった
が、その薬には重大な副作用があった。
こう物語を書くと、見るからB級SFの感じだが、実は原作
が発表されたのはネットを使ったデイトレードなどが話題に
なり始めた頃で、この作品はその方面で注目されたようだ。
それで日本でも2005年に翻訳が出ている。

そんな原作の映画化だが、映画の主演は、昨年4月及び今年
5月に紹介『ハングオーバー』などのブラッドリー・クーパ
ー、共演に今年4月紹介『エンジェル・ウォーズ』などのア
ビー・コーニッシュ、それにロバート・デニーロなども出演
していて、アメリカ公開ではNo.1ヒットにもなっている。
正直に言って、SF映画としては観るべきものは少ないが、
まあ願望充足型の夢物語ということではそれなりに観ていら
れるかな。それに主人公がどんどん成功を納めて行く姿は、
今の時代には一服の清涼剤という感じもする作品だった。


『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
        “Captain America: The First Avenger”
2006年5月15日付の第111回で製作ニュースを紹介している
1941年に誕生したスーパーヒーローコミックスの映画化。
原作の概要は以前の記事でも書いているが、第2次世界大戦
の戦時下という時代を背景に、入隊を希望したものの体格審
査で拒絶された少年が、軍の秘密研究で開発された血清を投
与されて、ナチスと戦うsuper soldierに変身する。
ところがその研究に従事していた科学者がナチスのスパイに
暗殺され、彼は唯一のsuper soldierになってしまう。しか
しその能力は、通常人間の10倍の反射神経を持ち、力は1/4
トンの重量を持ち上げ、時速30マイルで走ることが出来る…
というキャプテン・アメリカの活躍が、今回は物語の時代背
景もそのままに描かれる。ただしその内容では、キャプテン
が戦時国債のPRに駆り出されるなど、かなり現代調のもの
にもなっていた。
その一方で、軍の秘密研究に関っているのがハワード・スタ
ークで、これはトニー“アイアンマン”スタークの父親であ
るなど、後続する“The Avengers”との繋がりもしっかりと
描いているものだ。

主演は、今年4月紹介『スコット・ピルグリム』などのクリ
ス・エヴァンス。因に映画の前半に登場する貧相なエヴァン
スの体格は、全てCGIによるVFXだそうだ。その相手役
には、2009年11月紹介『ウディ・アレンの夢と犯罪』などの
ヘイリー・アトウェル。
他に、トミー・リー・ジョーンズ、ヒューゴ・ウィーヴィン
グ、2010年1月紹介『17歳の肖像』などのドミニク・クー
パー(ハワード役)、今年1月紹介『ブラック・スワン』な
どのセバスチャン・スタン。
さらに、2009年10月紹介『ジュリー&ジュリア』などのスタ
ンリー・トゥッチ、『ハリー・ポッター』の屋敷妖精ドビー
の声優でも知られるトビー・ジョーンズ、、2009年2月紹介
『ストリート・ファイター』などのニール・マクドノーらが
脇を固めている。
なお、“The Avengers”との繋がりの部分では各シリーズの
主演俳優たちの多くも登場している。
描かれる時代背景の点では、日本がナチスドイツと一緒にな
ってアメリカと戦争をしていたことも知らない最近の若者の
反応が気になるが、『ジュラシック・パーク�掘戮覆匹蘯螻�
けたジョー・ジョンストン監督のアクション演出はそれだけ
でも充分に楽しめるのになっている。

『カウボーイ&エイリアン』“Cowboys & Aliens”
現007のダニエル・クレイグと、インディ・ジョーンズ=
ハリスン・フォード共演で、1873年のアリゾナを舞台にした
VFXアクション作品。
クレイグが演じるのは、銃も持たずに荒野の真中で目覚めた
記憶喪失の男。ところがこの男、襲ってきた3人組のガンマ
ンをあっと言う間に倒すなど、滅法腕が立つ上に容赦も知ら
ないようだ。しかも腕には何やら怪しげな金属の腕輪が填め
られている。
そんな男が現れたのは、フォード扮する元は南北戦争の勇者
だった横暴な牧場主に牛耳られた町。そこで男は懸賞付きの
お尋ね者だったことが判り、逮捕されて連邦保安官の許に送
られることになるが…
そこに突然何者かが空から襲い掛かり、保安官と牧場主の息
子を含む町の住人たちが連れ去られてしまう。しかし男の腕
輪が反応して襲ってきた奴らの1機を撃墜、これを見た牧場
主は息子奪還のため男に協力を求める。
こうして男と牧場主は、男につきまとう謎めいた女、牧場主
の忠実な部下のインディアン、保安官の孫の少年らと共に、
インディアンが辿る撃墜機から脱出した奴の足跡を追って荒
野へと向かって行く。

映画の雰囲気は完全に西部劇。イギリス人のクレイグも事前
にかなりの本数の西部劇を見て役作りをしたとのことで、そ
れは完璧なものだ。そこに何故かエイリアンが現れる。しか
し西部劇の部分がしっかりしているから、何か判らないまま
危機に立ち向かう主人公たちの戸惑いも、そこには見事に表
わされている感じがした。
通常この種の作品では、パロディにしてしまうのがお手軽と
言える。しかしこの映画の制作者たちは、西部劇的ユーモア
は随所に見せるものの、全体は完全に西部劇として物語を描
き切っている。しかも西部の荒くれ者からインディアンまで
が見事に物語を彩る。
監督は、『アイアンマン』のジョン・ファブロー。極めて高
いバランス感覚の求められる作品を見事に演出している。ま
た、2006年プラティナム・スタジオ出版の原作グラフィック
・ノヴェルからの脚色には、2005年7月紹介『アイランド』
のロベルト・オーチー、アレックス・カーツマンら5人が関
るなど、こちらも周到に準備されたようだ。
共演は、『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルド。他
に、サム・ロックウェル、アダム・ビーチ、ポール・ダノ、
ノア・リンガー、キース・キャラダイン、そしてデュークの
孫甥のブレンダン・ウェインなど、こちらも味わいのある顔
触れが揃っている。
なお撮影に、1969年『明日に向かって撃て』などが撮影され
たBonanza Creek Ranchと、2009年6月紹介『3時10分、
決断のとき』などが撮影されたGhost Ranchが使われている
のも話題になりそうだ。
また映画の製作には、パラマウントの他に、ドリームワーク
ス、ユニヴァーサル、イマジンなどが名を連ねており、それ
らのロゴが順番に登場する巻頭は壮観だった。



2011年08月14日(日) 沈黙の春…、夜明け…、LIFE IN A DAY、ウィンターズ・ボーン、地球にやさしい…、ラビット・ホラー、ホワイト、チェルノブイリ+Ranger

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『沈黙の春を生きて』
2007年に『花はどこへいった』を発表し、ベトナム戦争中に
使用された枯れ葉剤の被害/後遺症の問題を追求した坂田雅
子監督が、再び同じ問題を取り上げ、その後の3年間を追っ
た作品。
レイチェル・カーソンが1962年に発表した『沈黙の春』は、
ケネディ大統領の関心を呼び、アメリカでの農薬DDTの使
用禁止を実現した。しかしその一方でケネディ政権は1962年
1月にベトナム戦争での枯れ葉剤の使用を許可、その散布は
1971年まで続けられ、被害は今に及んでいる。
僕は、1983年に刊行された中村梧郎カメラマン撮影『母は枯
れ葉剤を浴びた』を手にしたときの衝撃が忘れられないが、
その当時はベトナムでの被害情報が中心で、シャム双生児と
いう名も残る土地柄から、遺伝的な疾患との反論も多かった
ものだ。
しかしその後にアメリカでも、ベトナム帰還兵のガン罹病率
の増加やその子供に奇形が発生し、枯れ葉剤の被害は動かし
がたいものになった。それでも現在に至るもアメリカ政府は
その責任を認めておらず、製造元の化学会社の責任追求もさ
れていないという。
その一方で民間団体による帰還兵やその子供に対する支援は
行われているようだが、実は映画の中でもその孫に対する調
査の状況などは明らかにはされていなかった。それはもしか
したらアメリカでは孫の代には影響が残らなかったのかも知
れない。
ところがベトナムには、ダイオキシン残留のホットスポット
が各地に残り、それが被害を継続させているようだ。実際映
画の中には、1971年枯れ葉剤の散布が停止された以後に生ま
れた被害者と思われる子供たちの姿が紹介されている。
現在、東京近郊でも放射能のホットスポットの所在が報告さ
れているが、化学物質と放射能の影響は同じと考えることも
できるもの。10年先の東京の現実が本作の中にもあるのかも
知れない。
さらに映画では、片下肢と左手の指が欠損していながらも、
それを克服してマーチングバンドのトランペット奏者になっ
たというアメリカ人被害者の女性が、視力を奪われながらも
一弦琴の奏者になったベトナム人被害者の男性と交流する感
動的なシーンも描かれていたが、これも数10年後の東京の姿
かも知れないものだ。


『夜明けの街で』
2006年10月紹介『手紙』などの原作者で、人気ミステリー作
家の東野圭吾による初のラヴストーリーと言われる小説の映
画化。
主人公は、建設会社で課長職、妻と1人娘の家庭を持つ平凡
な男性。そんな主人公がある夜、学生時代からの親友とバッ
テングセンターを訪れた際に、彼の職場に最近入って来た派
遣の女子社員の姿を見付ける。
そして親友と共に女性をカラオケなどに誘った主人公は、泥
酔した彼女を家まで送ることになってしまうが…。映画は最
初に「不倫をする奴なんて馬鹿だと思っていた」という主人
公のモノローグで始まり、その地獄に引き摺り込まれて行く
様が描かれる。
しかも東野の描く不倫は一筋縄では行かないもの。そこには
胸をナイフで一突きにされた死体なども絡んでくる。そして
主人公が行き着く果ては…。
男性の不倫願望? そんな男性の目から観ているとかなり痛
いところを突かれる感じの作品だ。でもまあここまで仕組ま
れているとね。しかも女性の方に目的があって、それが男性
に対しては悪意がないとすると、これはかなり納得もできて
しまう物語だった。
でも怖い怖い。確かにこの男が馬鹿だと言われればその通り
だが、こんな風にされたら男性の大半は引っ掛かってしまう
だろうし、ここから逃れる術なんてそう簡単には見付からな
いだろう。本当に怖いお話だ。

出演は、岸谷五朗、深田恭子、木村多江。他に石黒賢、萬田
久子、中村雅俊、黄川田将也、田中健。監督は2000年『ホワ
イトアウト』などの若松節朗。因に、石黒と黄川田は『ホワ
イトアウト』にも出演していた。
なお深田は、本作の中でアニソンを熱唱するシーンが登場す
るが、元々CDなどもリリースしているようだし、そう言え
ば、2009年2月紹介『ヤッターマン』でドロンジョを演じて
いたことも思い出した。今年は、劇場用アニメの主人公の声
優や7月紹介『こち亀 THE MOVIE』のゲストなど、硬軟取り
混ぜた出演で正に満開のようだ。
また、今だからこそ意味のあるエンディングロール後の一枚
のテロップが、本作の締め括りには最適だった。

『LIFE IN A DAY』“Life in a Day”
リドリー&トニー・スコット兄弟主宰の製作会社スコットフ
リーが、インターネットの動画サイトYouTubeとの共同で、
2010年7月24日の地球各地の映像を募集、応募された192カ国
4500時間に及ぶ動画の中から選ばれ編集された1時間35分の
作品。
作品は、今年のサンダンス映画祭プレミア部門に出品され、
ポーランドのドキュメンタリー映画祭で観客賞を受賞、ベル
リン国際映画祭のパノラマ部門にも出品された。
内容は時系列というか、実際には時差があるけれど、それぞ
れの場所の現地時間で夜明け前から日中を通して夜更けまで
の各地の様子が描かれて行く。その中には、前日の名残りの
酔っ払いに始まって、早朝から働き始める人々の姿なども取
り上げられている。
さらに日中になると、人間の誕生から死までの様々な出来事
が綴られている。そこでは闘病を続ける家族への想いや、家
族を亡くしたことの苦しみ。それに続く敬虔な祭礼や賑やか
な祭り、その中で起きた歴史に残るような惨事まで。
また、この日が土曜日だったということでレジャーに興じる
人々や、曜日に関係なく日々の労働を続ける子供から大人の
姿。その一方で、自転車で世界一周の旅をしている若者や、
ゲイのカミングアウト、ガールフレンドへの愛の告白。
正しくその日1日の地球の姿が描かれている。それは観てい
ると地球は広いというようにも感じるし、人間は何処に居て
もあまり変らないとも感じる。そんな様々な気持ちが心の中
に湧き上がってくる。
それは多分、今日の今現在も世界の何処かで行われているこ
となのだろうし、こんな風にして1日1日が積み重なって行
くのだろうと思うことも出来る。この作品はそんなことを考
えさせる切っ掛けにもなってくれる。

作品全体の監督は、2004年10月紹介『運命を分けたザイル』
などのケヴィン・マクドナルド。たたし個々の作品にはそれ
ぞれ監督がいて、それは日本人6人を含む332組342人の共同
監督によるそうだ。
この作品を観て、地球のことを考えるのも、人類にとって必
要なことではないかなあとも思える作品だった。

『ウィンターズ・ボーン』“Winter's Bone”
昨年の東京国際映画祭で鑑賞した作品の中で、僕の一番気に
入った作品が日本で一般公開されることになり試写会が行わ
れた。この作品は、アメリカでも映画祭以外では限定公開が
されただけだが、今年のアカデミー賞では主演女優賞部門な
どの候補になったものだ。
主人公は17歳の少女。幼い弟と妹、それに病弱な母親と共に
暮らしているが、保釈中だった父親が行方不明になり、保釈
金の立て替え業者から「裁判に父親が現れない場合は担保に
なっている家と土地から立ち退く」ことを通告される。
そのため父親の行方を探し始めた主人公だったが、まず父親
の兄弟からは探すなと忠告され、さらに彼女の前には幾多の
障害が待ち構えていた。それは麻薬の密造に関るもので、父
親はそのファミリーの掟に背いたようなのだ。
しかし彼女には、家族の生活を守るために父親の所在を知る
必要があった。たとえそれが死体であったとしても…。

出演は、1990年生まれで、本作でアカデミー賞にノミネート
されたジェニファー・ローレンス、2003年9月紹介『‘アイ
デンティティー’』などのジョン・ホークス、今年6月紹介
『スーパー8』にも出演のデイル・ディッキー。
他に、2008年11月紹介『サラ・コナークロニクルズ』でター
ミネーター役のギャレット・ディラハント、『ツイン・ピー
クス』でローラ・パーマーを演じたシェリル・リー、本作で
映画デビューのローレンス・スウィートサーらが脇を固めて
いる。
少女が健気というのには程遠い壮絶さなのだけれど、でも何
とも儚げで、その辺りが見事に演じられている感じがした。
なお、さらに儚げな感じの幼い弟妹役も気になったが、共に
本作がデビューの新人だったようだ。
脚本と監督は、2004年“Down to the Bone”でサンダンス映
画祭の最優秀監督賞に輝き、第2作の本作では審査員大賞と
脚本賞を受賞したデブラ・グラニック。本作ではさらに、ア
カデミー賞の作品、脚色、主演女優、助演男優賞のノミネー
トも獲得した。
なお主演のローレンスの次回作は、“The Hunger Games”と
いう近未来アクションものだそうだ。

『地球にやさしい生活』
           “No Impact Man: The Documetary”
ニューヨークという世界有数の繁華な都市に住みながら、環
境にイムパクトを与えない生活を実践した作家の1年間を記
録したドキュメンタリー。
コリン・ビーヴァン。それ以前には第2次世界大戦のDデイ
秘話などの著作があるという作家が、ある日突然環境問題に
目覚め、妻と2歳の一人娘に向かって環境を汚さない(イム
パクトを与えない)生活を1年間実践すると宣言する。
ところがBusiness Week誌のライターの妻はカフェイン中毒
で、1日何杯もコーヒーを飲まないと仕事が出来ない。しか
し遠い国から運ばれてくるコーヒーは、その輸送などで環境
を汚しているものだ。
こうした妻との対立や、世間からは「無意味な行為」などと
批判も受けながら、車なし、テレビなし、ゴミなし、1年間
は新しいものは買わない、さらに6カ月後からは電気のブレ
イカーも落とすという、究極の環境にインパクトを与えない
生活が実践される。
それはかなり過激な試みだし、その一方で、たった1家族が
こんなことをしても実際の環境への貢献はほとんど無いだろ
う。そんなことは判っているが、誰かが始めることで世界が
変って行くかも知れない。そんな夢のようでもある実験が記
録されている。

現在の東京は、原発災害の影響で電力が逼迫しているとか言
われ、昼間の電車の間引きでは試写の会場間の移動もままな
らない事態になっているが、自ら率先してそれをやろうとい
う考えには敬服するところがあるのは確かだ。
そしてそんな夫の考えに、最初は反発しながらも徐々にその
趣旨を理解し協力して行く妻の姿も丁寧に捉えられていた。
それにしても、家の中でミミズを育てるというのは…、その
辺では夫にもちょっとやり過ぎ感もあった。
しかし現住所から2000km以上運ばれてくる物は環境に優しく
ないとする考え方や、何よりテレビなしというのは最も需要
なポイントで、先日の東北への緊急送電が野球中継のテレビ
を観るためという報道にも納得できたものだ。
日本の節電報道が原発保護のためのアジテーションでしかな
いのは明らかだが、本作でも電力を止めるまでには6カ月も
掛かっており、この依存を脱却するのが一番重要なことでは
あるようだ。

『ラビット・ホラー3D』
2009年9月紹介『戦慄迷宮』の清水崇監督が再度3Dに挑ん
だ作品。その主演に7月紹介『一命』などの満島ひかり、撮
影監督には、2000年『花様年華』などのクリストファー・ド
イルが日本映画に初、そして3Dにも初挑戦している。
因に本作は、前作の紹介時に少し報告されていた続編という
括りにはなっておらず、本筋のストーリーは独立したもの。
ただし前作との繋がりもそれなりに設けられていて、その辺
は前作の観客へのプレゼントという感じがいた。
主人公は失語症の若い女性。小学校で図書室の司書をしてい
るが、男子生徒などからは気持ち悪がられたりもしている。
そんな彼女が口を利けなくなったのは、幼い頃のトラウマに
よるようだ。
そんな彼女には小学生の弟がいて姉弟の仲は良かったが、あ
る出来事からその弟が登校拒否になってしまう。しかも2人
で3Dのホラー映画を観に行った日から弟の様子がさらにお
かしくなり、それに誘われるようにして彼女の異世界への旅
が開始される。
この2人の観に行くホラー映画が『戦慄迷宮』で、ここでの
2重の3D感はなかなか面白かった。さらにそのキャラクタ
ーの一部が本作にも関るが、物語的な繋がりはそこまで、本
作ではここから、彼女が口を利けなくなった原因の究明など
が展開されて行く。

共演は、香川照之、緒川たまき、大森南朋。現在の日本映画
ではかなりの配役と言えるだろう。さらに子役で、4月紹介
『パラダイス・キス』にも出ていた渋谷武尊、雑誌リボンの
キャラクターも務める田辺桃子らが出演している。
まあ、お話自体は有り勝ちのものかも知れないが、それを俳
優陣がしっかりした演技で観せてくれる。しかもそれを撮影
したのがアジア映画の名匠とも呼べるC・ドイルで、それは
見事な映像の中で物語が展開されているものだ。
なおエンドロールによると、3D撮影にはパナソニックシス
テムソリューションズが協力したと記載されており、前作の
時はいろいろ手作りしたとのことだったが、今回は技術的な
サポートもしっかりされていたようだ。

『ホワイト』“화이트: 저주의 멜로디”
8月11日に日本デビューしたガールズK-PopグループT-ARA。
その中で一時はリーダーも務めていた子役出身の歌手ハム・
ウンジョンの主演によるサスペンス作品。
主人公は、売れないガールズグループ《ピンクドールズ》の
リーダー。メムバーの中では最年長の彼女は纏め役として頑
張ってはいるが、売れない期間が続くとグループの纏まりも
無くなってくる。
そんな時、スポンサーの好意で引っ越したダンスの練習場を
掃除中、主人公は隠し戸棚に置かれていた古いVHSテープ
を見付け、収録されていた「ホワイト」という曲に魅了され
る。その曲は歌っていたメムバーの事故死などでお倉入りに
なっていたものだった。
こうしてその曲を新曲として披露した《ピンクドールズ》は
瞬く間に人気者になって行くが…。人気が上がるに従ってグ
ループ内の争いも激化し、さらに不審な事故が相次ぐように
なってくる。
そんな中で曲に問題があると感じた主人公とその親友は、そ
の映像に秘められた謎に迫って行くのだが…
呪いのヴィデオテープというのは、『リング』以降のホラー
映画の定番の一つになった感じがするが、元の被害者とは縁
も所縁もない人に呪いが掛かるというのは理不尽というか、
逆恨みも甚だしいという感じのものだ。
でもまあ本作の場合は、それが一方では成功にも繋がってい
るとすると、これはなかなか深いものにもなってくる。とは
言え基本は最近の若者向けのホラーということで、本作の場
合も理不尽な呪いがメインとなっている。

共演は、テレビ出身のジン・セヨン、実力派アーチストとい
うメイダニ、元はアイスクリームCMの人気者というチェ・
アラが、《ピンクドールズ》のメムバーに扮し、他に、若手
演技派のファン・ウスレ、モデル出身のビョン・ジョンスら
が脇を固めている。
監督は、キム・ゴック&キム・ソンという双子の兄弟。韓国
映画のインディペンデント・シーンで活躍してきた監督の商
業作品デビューとのことだ。

『チェルノブイリ・ハート』
            “Chernobyl Heart/White Horse”
1986年4月26日にソビエト連邦ウクライナのチェルノブイリ
原子力発電所4号炉で発生した原子力事故。その15年後を取
材し、2003年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門を受
賞した表題作と、さらにその5年後を取材したドキュメンタ
リー作品。
題名の意味は、表題作の後半で明らかにされるが、チェルノ
ブイリの汚染地区の周辺で生まれ育った子供たちに多発して
いる心臓疾患。それは心室間の隔壁に穴が開くなどの症状が
現れ、現地の医師の技術では手術不能とされて2〜5年の余
命しかないとされる。
その他に水頭症(これは現地の医師でも処置ができるが、費
用の問題などで放置されている)や、諸々の放射能の影響と
見られる障害の多発して様子がアメリカ人の女性ドキュメン
タリストの取材で明らかにされて行く。
今回最初に紹介した『沈黙の春を生きて』では、枯れ葉剤と
いうワンクッションが置かれていたが、本作はもろに10数年
後の東京の現実だろう。
実際に映画の中でも、住いが非汚染地区とされて補償も打ち
切られたという地区の住民の子供が障害に苦しんでいる様子
が出てくるが、福島でも避難区域の指定が次々解除されてい
る状況が見事に重なるものだ。
また映画の中では、情報がまったく公開されないという住民
の不満も聞かれたが、これも東京電力のやり方に酷似してい
る。チェルノブイリは共産国家の管理下だったが、東京電力
も保安院の指示で公開を怠っているのだから、これも同じよ
うに感じられる。
それにしても放射能障害を負った子供たちのかなり強烈な症
状の様子は、正視するのが辛くなるほどのものだが、それを
放置した政府の無策ぶりも恐ろしく、今後は日本で同じこと
が起こらないよう祈るしかない。
実際に、日本でなら医療処置の可能な症状もあるようだった
が、早く政府がその責任を明らかにして、的確な処置が行わ
れることを望みたいものだ。
なお後半は、原発の目と鼻の先に住んでいたという男性が、
20年ぶりに住いを訪れるというものだったが、「2度とここ
には戻ってこないだろう。ずっと住んでいたかった」という
独白が避難住民の心情を考えて辛いものだった。

(本作は昨日公開が始まっているが、試写替わりのDVDを
ようやく今日を観ることができたもので、内容に鑑みて敢え
て緊急で紹介することにした)
        *         *
 製作ニュースは少し気になる情報で、6月12日付で紹介し
たばかりのゴア・ヴァビンスキー監督、ジョニー・デップ主
演による“The Lone Ranger”の計画からディズニーが手を
引くとの発表が行われた。
 この計画では、前回の報告で2012年12月21日の全米公開日
も発表されていたものだが、最終的に2億5000万ドルに及ぶ
という製作費にディズニー側が躊躇してしまったものだ。そ
れはもちろん、『POTC』を作り上げた監督/主演のコン
ビに信用は置けるものではあったが、今回は主題に不安があ
るし、増してやデップがタイトルロールでないことも、懸念
材料ではあったようだ。
 一方、ディズニーの2012年公開計画では、今年1月30日付
で紹介した“John Carter”(正式題名はこれだけになった)
や、5月29日付紹介“Oz, The Great and Powerful”などの
超大作がすでに製作中となっており、これらに加えての製作
は状況も厳しかったかもしれない。
 ただ、今年になってから、スティーヴン・キングの原作を
映画化する“Dark Tower”が、ロン・ハワード監督の就任が
発表された直後に延期されたり、ギレルモ・デル=トロ監督
の“At the Mountains of Madness”も動き出したと報道さ
れた直後にキャンセルされるなど、大作映画を取り巻く状況
全体が厳しくなっているようだ。



2011年08月07日(日) アクシデント、孔子の教え、くまのプーさん、ラビット・ホール、カンパニー・メン、サンクタム(再)、タナトス+追悼

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『アクシデント』“意外”
2010年3月紹介『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』などのジ
ョニー・トー監督が製作を務め、元トー組の助監督で2006年
11月5日付「東京国際映画祭」で紹介した『ドッグ・バイト
・ドッグ』などのソイ・チェンが監督したサスペンスアクシ
ョン。
最初に交通事故で運転していた女性の死亡した現場が写し出
され、続いてかなり込み入った手口で標的を殺害する暗殺団
が描かれる。彼らの手口は極めて周到で、それは事故死にし
か観られない。
そして豪雨の中で次の標的の殺害が実行されたとき、いくつ
かの手違いから主要メムバーの1人が事故に巻き込まれ死亡
してしまう。しかしそれは本当に事故だったのか、自分たち
の手口ゆえに疑心暗鬼が生じる。
さらに怪しい人物を追跡した暗殺団のリーダーは、保険会社
の幹部の介在を確認し、その幹部の住むマンションの下の部
屋に入居してその背後関係を調べ始めるが…。それは次々に
疑惑を呼んで行くものだった。
何しろ暗殺の手口がトリッキーで、それはそんなにうまく行
くはずはないとも思えるものだが、その風が吹けば桶屋が儲
かる的な手口が観ていて存分に楽しめる作品だ。
ストーリー的には、途中でリーダーの過去に関する台詞があ
って、多分それが全てなのだろうと思うが、実は映画の中で
は余り明確には描かれない。でもそんなことは元々監督らの
眼中には無いのではないかな…何しろ描かれる手口にはニヤ
ニヤしてしまった。

出演は、2006年9月紹介『エレクション“黒社會”』などの
ルイス・クー、2009年2月紹介『新宿インシデント』などの
ラム・シュー、今年4月紹介『ドリーム・ホーム』などのミ
ッシェル・イエ、2005年9月紹介『シルバーホーク』などの
リッチー・レン、『冷たい…』などのフォン・ツイファン。
因に、本作の英語題名は‘accident’。中国語の原題は、映
画の中では「イーガイ」というような発音に聞こえたが、そ
れは「事故」というような意味で使われていた。一方、この
原題は日本語では‘accidental’の意味で使われるが、その
ニュアンスの微妙な違いも面白い感じがした。
それにしてもこんな連中が何組も暗躍しているなんて…。こ
れはトー監督らの独自の見解なのかな。

『孔子の教え』“孔子”
中国の国際スター=チョウ・ユンファが、中国の国教ともさ
れる儒教の始祖で哲学者の孔子に扮して、その生涯を描いた
作品。
孔子は紀元前552年、中国の魯国に誕生。周王朝が凋落し、
群雄割拠の春秋戦国の時代。魯も三恒と呼ばれる3士族が軍
を3分して私兵化するなど乱世であった。そんな中で孔子は
庶民の出でありながら、やがては魯の国相代理にまで登り詰
める。
その間には、隣国斉との会談に際して魯公に随行し、以前に
奪われた領地を取り戻すなど功績を挙げるが、三恒の居城の
城壁を取り壊させることに関してはその内の孟氏の居城は破
壊できずに失敗。国政に失望して魯を去る。
その後は弟子と共に諸国を歴訪するが受け入れてくれる国は
少なく、一時は7日間も食料もなく山野を彷徨う羽目にも陥
る。ところが斉が魯に攻め入った際に派遣した弟子が魯軍を
率いて斉軍を打ち破り、その功績もあって孔子も魯に帰国。
その帰国後は国政に関わることは固辞したが、庶民の教育の
必要性などを解き、国家・国民の育成には努めたという。し
かし弟子たちが次々に死去するなどし、やがて隠遁して紀元
前479年73歳で生涯を閉じた。

共演は、2009年1月紹介『四川のうた』などのチェン・ジエ
ピン、5月紹介『酔拳』などのジョウ・シュン、昨年12月紹
介『唐山大地震』などのルー・イー、テレビ出身のヤオ・ル
ー、レン・チュアン。
製作は、『レッド・クリフ』を手掛けた韓三平、脚本も『レ
ッド・クリフ』のメイン脚本家の1人の陳汗。監督は、中国
第5世代の1人とされる胡政が担当した。
孔子と言われると、学生時代に漢文の授業で読まされた「論
語」くらいしか頭に浮かんでこないが、その興した儒教は中
国や、特に最近では韓国の国の体系をなすとも言われている
ようだ。その中心は仁にあるとされる。
しかし中国では、毛沢東「文化大革命」時代には儒教が封建
的な反動思想として弾圧されており、そのためもあってか、
孔子の生涯が映画化されるのは中国映画界では初めてのこと
だそうだ。
それにしても、この映画に描かれる孔子はかなりの策士で、
それが史実にどれだけ忠実かは不明だが、『三国志』の諸葛
孔明も顔負けという感じ。また映画にはCGIによる戦闘シ
ーンや居城の景観などもあって、いまだからこそ出来る作品
という感じだった。

『くまのプーさん』“Winnie the Pooh”
A・A・ミルン原作、E・H・シェパード挿絵により1926年
に発表された童話に基づくディズニースタジオ・アニメーシ
ョン作品。因に物語は、ミルンの原作の中の5つのエピソー
ドを再構成したものになっている。
その物語では、イーヨーがしっぽを無くして森のみんなでそ
の代りを見付けるコンテストを行うエピソードや、プーが見
付けたロビンの書き置きをオウルが読み間違えたことから始
まる騒動などが描かれる。

まあお話は到って他愛のないものだが、現在プー関連のキャ
ラクター商品は、ミッキー・マウスを上回ってディズニーで
は稼ぎ頭になっているそうで、映画もそのキャラクターを全
く裏切らないものにされている。
その本作は、『くまのプーさん』の35年ぶりの新作とされて
いるものだが、これは1966年から74年発表された短編3本を
1977年に再編集して公開した同名の作品から数えてのことの
ようだ。
監督は、2007年10月紹介『ルイスと未来泥棒』などのスティ
ーヴン・アンダースンと、同作でストーリーボードのヘッド
を務めたドン・ホール。また、ストーリー・アーティストに
は1956年『わんわん物語』から在籍しているバーニー・マテ
ィスンが参加している。
ヴォイスキャストは、日本公開は基本的に吹き替えになるよ
うだが、オリジナルも声優の専門家の担当でいわゆるスター
キャストによるものではない。ただナレーションだけは、元
モンティ・パイソンのジョン・クリーズが担当しているよう
だ。
さらにエンディングに流れる主題歌は、2007年12月紹介『テ
ラビシアにかける橋』などの女優のズーイー・デシャネルが
歌っていて、これは日本でも聞くことができるらしい。
なお本作の上映では『ネッシーのなみだ』“The Ballad of
Nessie”という短編が併映される。
ネッシーが乱開発に追われてネス湖に辿り着くというストー
リーには、伝説との関係が多少気になったが、背景に描かれ
た湖畔の古城の姿には、40年ほど前に現地を訪れた者として
は、懐かしさもあり嬉しかった。


『ラビット・ホール』“Rabbit Hole”
オスカー女優のニコール・キッドマンが初の製作も手掛け、
2003年3月紹介『めぐりあう時間たち』で受賞以来のアカデ
ミー賞候補にもなった作品。
ニューヨーク郊外の高級住宅街。庭の手入れする女性に隣家
から食事会への招待が告げられるが、女性は予定があると断
ってしまう。しかし、やがて帰ってきた夫に食事の準備をす
る彼女に予定があった様子はない。彼女には他に何か事情が
あるようだ。
その事情が徐々に明らかにされて行き、さらにそこからの立
ち直りのドラマが繰り広げられて行く。そこには心無い人の
発言や、親身になっているつもりでも相手には傷口に塩を擦
り込むような…そんな人間模様が描かれて行く。
それに傷つき、反発する主人公の姿。それは、自分でも判っ
てはいるがどうにもならない感情の爆発。そしてそれは最愛
の、最も信頼しているはずの夫にまで向けられてしまう。そ
んな中で彼女が安らぎを得たのは…、意外な人物だった。
自分がすでに子育てを完了した身としてはもはやこのような
心配はほとんどないが、以前は常に不安に駆られていたこと
を思い出す。それが実際に起きてしまったときの悲劇。それ
に自分が耐えられるか、そんなことも考えさせられた。

題名からは、主演女優の関係でオーストラリアが舞台かと想
い、生態系破壊で問題になっているウサギの話かと考えてい
たら、題名は『不思議の国のアリス』から採られたものだっ
た。しかもこの題名にはSFファンの興味を引く内容も含ま
れている。
そのSFファンの目から敢えて誤解を生むことを承知で書い
て置くと、本作は映画化もされたスティーヴン・キング原作
『ペット・セメタリー』のSF版と言えるもの。ただし、本
作はSFではないが…、という感じの作品だ。

さらに映画化用の脚色も手掛けた原作戯曲の作者も、監督も
SFに対する理解度が相当に高い人たちと感じられ、その辺
のSFに関わる部分の描き方がファンとしても納得できるも
のになっていた。その描き方に僕は充分に満足したものだ。
その脚本は、本作の原作戯曲でトニー賞とピュリツァー賞を
受賞したデヴィッド・リンゼイ=アベアー。監督は、2001年
12月紹介『ヘドウィック・アンド・アングリーインチ』や、
2007年5月紹介『ショートバス』などのジョン・キャメロン
・ミッチェルが担当した。
共演は、2008年7月紹介『ダークナイト』などのアーロン・
エッカート、1994年『ブロードウェイと銃弾』などで2度の
オスカーに輝くダイアン・ウィースト、2008年8月紹介『ブ
ラインドネス』などのサンドラ・オー、2008年12月紹介『ラ
ーメンガール』に出ていたタミー・ブランチャード、それに
本作で映画デビューのマイルズ・テラー。
監督の前の2作にはかなりトリッキーな面白さも感じたが、
本作では主題を真正面に据えてじっくりと描き切っている。
彼にこんな素晴らしい才能があったとは…。彼を監督に選ん
だ製作者キッドマンの英断にも拍手を贈りたい作品だ。

『カンパニー・メン』“The Company Men”
『ER』などのジョン・ウェルズの製作・脚本・監督で、突
然リストラされた「会社人間」たちの姿を描いた作品。
主人公の1人目は、37歳で大企業の営業部長を務める男性。
年収12万ドルで朝ゴルフも楽しめた優雅な生活が、ある日突
然激変する。彼の在籍する事業部門が業績不振で、大幅なリ
ストラが実施されることになったのだ。
彼が在籍している造船事業は複合企業の礎となった部門で、
現CEOはその設立者の1人だった。しかし現在CEOの頭
にあるのは株価を維持して企業買収を防ぐことだけ。そのた
めには不振事業のリストラが一番手っ取り早い手段だった。
そしてもう1人の主人公は、そのCEOと共に複合企業を育
て上げてきた造船部門のトップ。彼は、6000人の従業員を抱
える部門を守ろう必死に画策するが、もはや会社の(CEO
の)決定を覆すことは出来ない。
こうして1人目の主人公は馘を言い渡され、再就職の道を探
り始めるが、希望年収を半減させても再就職の口はなかなか
見つからない。しかも彼には食べさせなければならない家族
や、住宅のローンも残っていた。
自分自身が数年前に同じような目に合った身としては、主人
公たちの焦りなどは手に取るように判ったし、最初の内は高
を括っているような主人公の姿には、自分もそうだったかな
あとさえ思わされた。
そこには日本とアメリカの違いはあるが、僕も主人公と同じ
ような再就職のセミナーみたいなものに通って、職歴の書き
方や自己アピールの仕方なども練習したから、その辺は同じ
様なものだったなあと納得したりも出来た。
実は試写会では、主人公の焦る姿に対して馬鹿にしたように
けたたましく笑う女声の笑い声も聞こえてきた。その人は多
分こういう目に合ったことなど無いのだろうけど、いざとな
ったときの現実の厳しさは、その内に思い知って貰いたいも
のだ。

出演は、ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ。他
に、ケヴィン・コスナー、クリス・クーパー、ローズマリー
・デウィット、マリア・ベロらが脇を固めている。
結末はかなり甘い感じもするが、夢を売るハリウッド映画と
してはこれで良いのだろう。

『サンクタム』“Sanctum”
2月にも1度紹介したが、震災の影響で公開の延期されてい
た作品の公開日が9月16日に決定し、試写が再開された。そ
こで今回は吹き替え版で見直したので、再度紹介をさせても
らう。
実は前回の紹介では多少否定的だったものだが、今回見直し
ていていろいろ訂正させて貰いたくなった。それは前回は字
幕版で観ていて、3Dの字幕はその存在自体が煩わしく、作
品への集中を阻害されていたかもしれないという認識にも到
ったものだ。
物語の舞台は、パプア・ニューギニアの密林の中にぽっかり
開いた陥没孔。そしてその底から広がる鍾乳洞。その大半は
地下水の中に没し、そこをケイヴ・ダイヴィングで探索し、
海に抜ける水路を発見するのが冒険家たちのテーマだ。
しかし探索開始からすでに1カ月以上が過ぎ、スポンサーの
声も厳しくなり始めた頃に、そのスポンサーが恋人の女性登
山家を現地に連れてくるところから映画は開幕する。そして
その現地にはサイクロンも接近していた。
と来れば物語の展開は大体想像がつくが、降雨によってどん
どん水嵩の増す洞窟内に閉じ込められた主人公たちの決死の
サヴァイバル劇が展開されるものだ。
そこで前回の紹介では、この後に続く登場人物たちのいろい
ろな行動に疑問を呈したものだが、吹き替えで観ていると、
登場人物の台詞のニュアンスや、細かい仕種なども気がつく
もので、その辺が前回は鑑賞に集中できていなかったと感じ
たところだ。
そこでは特にリーダーの決断や親子の確執、さらに現状を正
確に把握できないもどかしさなどが交錯して、登場人物たち
の行動にも一定の理解は生じてきた。でもまあかなり考えが
浅はかで甘い印象は変らないが、取り敢えず本作は実話に基
づくものだ。
それに加えて、前回も指摘したソリッド・シチュエーション
・スリラー的なサスペンスはなかなかのもので、特に洞窟内
の閉塞感などは、閉所恐怖症の人には耐え切れないのではな
いかと思わせる。
その一方で、3Dカメラに納められたパプア・ニューギニア
の密林や鍾乳洞の内部の景観などはまさに一見の価値はある
もので、これは出来たらドキュメンタリーでも観たい感じの
するものだった。

製作総指揮は、ジェームズ・キャメロン、監督は、2006年に
“Kokoda”という第2次世界大戦中の日本とオーストラリア
の戦闘を描いた作品で絶賛されたというアリスター・グリア
スン。
出演は、2005年8月紹介『ステルス』などのリチャード・ロ
クスバーグ、オーストラリアのテレビ出身のリース・ウェク
フィールド。他に、2009年4月紹介『ブッシュ』などのヨア
ン・グリフィス、2009年11月紹介『かいじゅうたちのいると
ころ』などのアリス・パーキンスンらが共演している。

『タナトス』
元WBA世界ミドル級で日本人初の王者となった竹原慎二が
原案を提供し、2007〜08年に小学館「ヤング・サンデー」誌
に連載された落合祐介原作コミックスの実写映画化。
主人公は、幼い頃のトラウマから他人との付き合いが上手く
出来ず、一匹狼で暴走族の抗争に助っ人をして金を稼いでい
るような男。ところがある日、族のメムバーが因縁を付けた
ジャージ姿の男の繰り出した1発のパンチが彼を昏倒させて
しまう。
その後、主人公はジャージの背に書かれていたボクシングジ
ムを訪ねるが、件の男はおらず、代りに出た男には1発のパ
ンチも入れることが出来なかった。一方、主人公は目の前で
倒されたことで暴走族からも信用されなくなり…。
こうして再びボクシングジムを訪れた主人公は、彼を倒した
男の素性を知り、さらに強靱なボディを持ちながらも勝利す
ることの出来ないプロボクサーなど、様々なボクサーの生き
様と関りながら自らのプロボクサーへの道を歩み出す。
物語は竹原の自伝と言うものではないようだが、彼が選手生
活の中で見聞きしたり妄想したようなことが描かれているの
だろう。それはそれなりに真実味のあるものでもあるし、観
ていて違和感もなく鑑賞することが出来た。
以前にも書いていると思うが、僕は珍秘らが殴り合っている
だけのお話は大嫌いで、本作も最初の内はそのような色合い
も観えるのだが、そこから後の展開が真っ正直で、そこには
好感が持てたものだ。
しかも本作では、演じている役者たちにボクシングの経験者
が集められているようで、特に後半の試合のシーンの迫力は
なかなかのものだった。それは逆に前半の喧嘩シーンではフ
ァイトポーズが取れないためにぎこちなさが出たりもしてい
るが、それが主人公の成長を描くのにも役立ったようで、妙
な納得もしてしまった。

主演は2008年『炎神戦隊ゴーオンジャー』などの徳山秀典。
共演は、2005年6月紹介『せかいのおわり』で店長役の渋川
清彦、2008年『20世紀少年』などの平愛梨、2008年8月紹介
『キズモモ』などの古川雄大、そして2006年『仮面ライダー
カブト』などの佐藤祐基。
他に元日本ライト級新人王で俳優の大嶋宏成、2003年『仮面
ライダー555』などの大口兼悟。さらに秋本奈緒美、升毅、
梅沢富美男らが脇を固めている。また、竹原やガッツ石松、
輪島功一、薬師寺保栄らの元世界チャンピオンが特別出演し
ている。
脚本、監督、編集はピンク映画、Vシネマ出身の城定秀夫。
低予算でも期日通りに予算以上の作品を作ることで定評のあ
る監督だそうだが、本作でも、恐らく脚本段階から撮影順な
ども考えられた効率的な作品が見事な完成度を観せている。
        *         *
追悼
 日本SF界の巨星とも言うべき作家の小松左京氏が亡くな
られた。
 僕と小松氏のお付き合いは1970年の大阪万博の年に、氏が
中心になって開催された「国際SFシンポジウム」の事務局
に学生アルバイトとして入らせて戴いてからのことだ。それ
から41年間にも亙ることになったが、その間には、氏が葬儀
委員長を務められた故大伴昌司氏の葬儀や、映画『さよなら
ジュピター』の準備会議への参加、「小松左京研究会」の発
足の橋渡しなどいろいろなことがあった。
 そこには様々な思い出も去来するものだが、僕の中では、
「国際SFシンポジウム」の事務局で精力的に活動されてい
たお姿が目に焼き付いて離れない。それは正に、1973年版の
映画『日本沈没』で主人公の肩をポンと叩いて「ヨッ!」と
声を掛けるあの雰囲気そのままだった。そして20歳近くも年
の違う若造の僕らの発言に対しても、いつも真剣に耳を傾け
て的確な答えを出してくださる、そんな面倒見の良い伯父貴
のような方だった。
 そんな小松氏に、僕は最後まで甘え切ったままで終ってし
まった様な気がする。晩年の車椅子生活になられてからは、
ご本人も相当に辛かったであろうと想像されるが、聞けば最
後はご家族に囲まれて機嫌良く旅立たれたとのこと。あちら
の世界には、星さんや矢野さんや、半村さん、光瀬さん、野
田さん、手塚さんなど昔の仲間も大勢待っているはず、今は
そんなSFの同志たちと楽しく再会されているのかな。その
様子を想像しながらご冥福を祈らせてもらう。
 小松さん、長い間本当にありがとうございました。


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井口健二