井口健二のOn the Production
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2011年09月25日(日) WAYA、ライオン・キング3D、クイック、スマグラー、RAILWAYS2、ネムリユスリカ、三銃士、サラの鍵

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『WAYA!』
2009年『築城せよ!』の古波津陽監督による第2作。前作に
はかなりファンタスティックな要素もあったようだが、その
試写は観られなかった。その監督の新作ということで、それ
なりの期待は持って観に行ったのだが…。今回のお話はスト
レートなものだった。
舞台は、名古屋駅と名古屋城を結ぶ、立派なアーケードのあ
る円頓寺商店街。その街に暮らす前世紀の遺物とも言えそう
なお節介な商店会のメムバーたちが、商店会を長年守ってき
た1人の商店主の恩に報いようと、宇宙一お節介な大作戦を
展開する。
それは商店主が過去にちょっとした秘密を持っていることが
判明し、その秘密をネタにした作戦が立てられるのだが…。
それは徐々に周囲の人々の想いも巻き込んで、大掛かりなも
のへとなって行く。

出演は、愛知県出身のお笑いコンビ「スピードワゴン」の井
戸田潤と小沢一敬、三重県出身女優の水野美紀、名古屋で活
動する子役モデルの三輪泉月、さらに名古屋を基盤とする舞
台俳優の小島範子、服部公、それにSKE48の矢神久美と
松井珠理奈。
他に、矢崎滋、ルー大柴、藤田朋子、モロ師岡、舞台俳優の
成瀬功らが共演している。因に、藤田は監督の前作の『築城
せよ!』、成瀬はそのオリジナル版の短編にも出演していた
ようだ。
観光で地方のシャッター商店街など目の当りにすると、こん
な元気な商店街がどこにあるのかとも思ってしまうが、実際
にこの作品は名古屋円頓寺商店街から発信されたものだそう
で、その商店街の全面協力のもと映画は制作されたようだ。
そんな元気な商店街でも、映画に登場するように店仕舞いの
増えている現実はあるようだが、それでも何とか生き残って
全国にその元気を発信しようとしている、そんな元気を感じ
取ってあげたい作品だ。
なお映画の中では、前作『築城せよ!』と同様に建物を再建
するシーンがあり、そこでは廃材などを使った建設が実際に
行われている。それはちょっとファンタスティックであり、
監督の面目躍如でもあったようだ。


『ライオン・キング:ディズニーデジタル3D』
                   “The Lion King”
1994年公開、ディズニーアニメーションで最大ヒット(世界
興収7億8380万ドル)を誇る作品の3D化による再公開。
物語は、アフリカの草原地帯に暮らすライオン一家の1人息
子を主人公に、草原の王座を狙う叔父ライオンの策略で故郷
に居られなくなった仔ライオンが、放浪の旅先で成長し、や
がて自らの使命に目覚めて横暴を極める叔父ライオンと対決
するまでを描く。
1994年の公開時には『ジャングル大帝』との盗作問題なども
話題になった作品だが、それでも後に舞台ミュージカル化さ
れたり、上記のような大ヒットを記録しているのだから、そ
の実力は高く評価されるべきものだろう。
ただまあ本作を観ていて、サバンナに草食獣たちが集まって
くる様子を俯瞰で捉えたシーンなどには、やはりディズニー
と言うよりは手塚治虫のテイストだよなあ…とは、改めて感
じてしまったところだ。
という作品の3D化だが、今回の3D化は昨年9月に紹介し
た『美女と野獣』のときとは、また少し違った感触のものに
なっていた。
それは1991年製作の『美女と野獣』が、新たに導入されたC
GIアニメーションとの整合性の都合などで、かなりの立体
感が当初から付与されていたのに対し、本作『ライオン・キ
ング』は完全な2D作品。
したがって3D化されたシーンの多くは、正に書き割り的な
前後感で変換されており、その点では間違いなしの3D感を
味わえる作品になっていた。
ただしキャラクターに関しては、元々3Dのモデリングはさ
れていなかったようで、その辺では多少物足りなさは感じら
れる。とは言え全体的には3D感はたっぷりの作品に仕上げ
られているものだ。

なお日本公開は主に吹き替え版になりそうで、試写も吹き替
えで行われているものだが、エンドロールによるとオリジナ
ルの声優には、ジェームス・アール・ジョーンズ、マシュー
・ブロデリック、ジェレミー・アイアンズ、ネイサン・レイ
ン、ウーピー・ゴールドバーグといった錚々たる顔ぶれが並
んでおり、特にザズーの声優がローワン・アトキンスンだっ
たのには、あの奇妙な手つきの謎が解けたものだ。

『クイック!!』“퀵”
2009年『TSUNAMI』を大ヒットさせたユン・ジェギュン監督
が製作を担当し、本作を演出したチョ・ボムグ監督と共に、
4年の歳月と日本円で10億円の製作費を掛けて作り上げたと
いう高速アクション作品。
元暴走族でバイク便ライダーの主人公が、ヘルメットに仕込
まれた爆弾で脅されながら、爆弾テロの配達人をしなければ
ならなくなる。そこには当然警察の阻止線や、パトカーとの
カーチェイスなども満載に、縦横無尽のバイク走が描かれる
というものだ。
また爆弾テロでは、工事現場から高層ビル、さらに列車まで
もが標的にされ、その中で主人公と、偶然事件に巻き込まれ
た彼の元カノを中心に、大規模なクラッシュシーンやスタン
トマンが体を張った爆破シーンなどが次々に展開される。
という作品で、とりあえず観客はそのクラッシュや爆破の凄
さにただ驚嘆していれば良いのかな。でも一歩下がってみる
とかなりシナリオの粗さも目立つもので、その辺は製作者の
前の監督作品でも指摘されていたようだが…。本作も変って
はいない。
それは、例えば主人公の腕時計と元カノの被ったヘルメット
が10m以上離れると爆発するという仕掛けは、確かに見た目
は面白いが…。犯人が何のためにそんな仕掛けを用意したの
か意味不明だし、その他にも展開上で無理のある設定は散見
された。
でもまあ、この種の映画の観客にはそんなことはどうでも良
いようで、試写会場でも、上映中はかなりの笑い声が上がっ
ていた。爆弾テロはかなりシリアスな問題だし、僕には本作
がコメディなのかどうかも、よく解らなかったのだが。

出演は、『TSUNAMI』にも出ていたイ・ミンギ、カン・イェ
ウォン、クム・イングォンが揃って再登場している。なおカ
ンは昨年10月紹介の『ハーモニー』に出演しており、キムは
同年7月紹介の『シークレット』に出演していたようだ。
また、撮影にはディジタルのREDカメラが使用され、さらに
マイクル・ベイが『トランスフォーマー』で採用したという
Doggiecamシステムが、アジア地区で初めて導入されている
そうだ。こういうものにいち早く挑戦できるのも、韓国映画
界が元気な証拠だろう。

『スマグラー〜おまえの未来を運べ』
真鍋昌平原作、月刊「アフタヌーン」で2000年に連載された
コミックスの映画化。原作からは1999年『鮫肌男と桃尻女』
などの石井克人が脚色・監督した。
主人公は25歳フリーターの男。そんな男が中国人の裏ROM
組織に誘われるが、警察に面が割れて組織に損害を与えてし
まう。そこでその賠償金を闇金から借り、さらにその闇金の
斡旋で危険な運送業の手伝いをする羽目になる。
その運送する主な貨物は、闇の稼業で発生した死体。その死
体や汚物などを山中の焼却場に運び込んで跡形もなく始末す
るのが、彼ら運送業者(スマグラー)の仕事だ。しかしそん
な仕事にはトラブルも付き物だった。
これに背骨、内蔵と呼ばれる2人組の中国人殺し屋や、中国
マフィアと日本の組織暴力団との抗争などが絡んで、アクシ
ョンというよりヴァイオレンスに満ちた物語が展開されて行
く。

出演は、妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、安藤
政信。他に、小日向文世、高嶋政宏、島田洋八、テイ龍進、
我修院達也、阿部力。さらに津田寛治、寺島進、松田翔太、
大杉漣らが脇を固めている。
なお石井監督は、以前から北野武監督に憧れているようで、
本作はそのようなイメージにも溢れた作品。そして出演者に
も、安藤を始め北野作品所縁の俳優が多く名を連ねている。
一方、永瀬、我修院、島田は石井作品に複数出演のようだ。
キャスティングはなかなか面白い顔ぶれで、しかも各自が生
き生きと演じている。特に妻夫木は以前から石井作品への出
演を熱望していたとのことで、その思いが伝わってくる感じ
だ。また高嶋のサディスティックな怪演ぶりも、これは話題
になりそうだ。
その他、それぞれ中国映画で主演歴のある安藤、テイ、阿部
らの中国人役も様になっているし、松雪、満島の女優陣も役
に填った好演を見せている。
ただし…、ハイスピードカメラとVFXで描かれたヴァイオ
レンスシーンでは、特に液状物の飛び散り方はかなりグロテ
スクで、それに妻夫木ファンの女性たちがどう反応するか、
その辺が多少心配にはなるところだが。


『RAILWAYS〜愛を伝えられない大人たちへ』
昨年2月紹介した『RAILWAYS』と同じ製作者、脚本家による
地方鉄道の運転士を主人公にした作品。といっても続編では
なく、舞台も登場人物も異なる独立した作品だ。
主人公は、定年を1カ月後に控えた富山地方鉄道の運転士。
35年間無事故の実績は、会社からは定年を延長して勤務を続
ける事も請われているが、彼自身は仕事を辞めて、仕事のせ
いで長年苦労を掛けてきた妻と共に余生を送りたい考えだ。
ところが妻の考えはそうではなかった。退職を1カ月後にし
たその日、元看護士だった妻は突然、また以前のように働き
たいと言い出す。そして勝手に就職を決めて来た妻に、主人
公は思わず言葉を荒げてしまうのだったが…
熟年夫婦の破局というのは結構多いようだが、特に看護士の
ような職業は経験も求められるものだし、こういう事態は起
こりやすいかも知れない。しかし僕自身が夫の立場から考え
ると、そんな妻の想いになかなか気付かないのも男性の姿で
はありそうだ。

出演は、三浦友和、余貴美子、小池栄子、中尾明慶、吉行和
子。三浦は、昨年2月紹介の作品で息子が映画デビューを飾
っており、今度は父親が登場ということになる。他に、塚本
高史、中川家礼二、立川志の輔、岩松了、仁科亜季子、米倉
斉加年、徳井優、清水ミチコ、西村雅彦らが脇を固める。
製作総指揮は前作と同じく阿部秀司、脚本も同じく小林弘利
とブラジリィー・アン・山田が担当し、監督は前作の助監督
を務めた蔵方政俊が監督デビューを飾っている。
なお、主人公が指導する若者が埼玉県所沢の出身となってい
て、その理由付けがなかなかのものだった。それから映画に
は三浦が電車を運転しているシーンが何度か登場するが、そ
の姿はVFXによるすげ替え、『ALWAYS』の製作者が面目躍
如という作品だ。

富山には先週行ったばかりで、富山地方鉄道には乗らなかっ
たが、同社が運行するバスには乗車した。また映画に登場す
る岩瀬浜の近辺も観光したので、その風情などはちょっと懐
かしくも感じられた。
これで山陰、北陸と来て次はどこの地方鉄道になるのかな、
それも楽しみなシリーズになってきた。

『ネムリユスリカ』
レイプ事件がもたらす人間の生き様を描いた作品。すでに、
オランダのロッテルダム国際映画祭やイギリスのレインダン
ス映画祭に正式出品されて海外でも評価を受けている。
バレエ教室の帰り道でレイプされ、妊娠してしまった少女。
その17年後、少女の一家には何があったのだろうか。今の一
家は、元レイプ被害者の母親と、犯罪によって誕生した娘、
そしてその祖父が川原に留めたバンの中でひっそりと暮らし
ている。
その一家の目的はただ一つ、レイプ犯を探し出すこと。その
探偵に支払う費用の捻出のため、母親はラヴホテルに出入り
してマッサージで金を稼ぎ、娘とその祖父はホテルの好意で
開けてもらった客が帰った後の部屋で入浴する。
それは絶望的に困窮した生活ではあるが、3人の絆は強い。
特に娘が母親と祖父に向ける愛情は人並みのものではない。
しかし、一家に犯人発見の報告がもたらされたとき、それは
レイプによって誕生した娘に新たな葛藤を生じさせることに
なる。

初主演で過去の母親と現在の娘の2役を演じるのは平野茉莉
子。テレビ番組のアシスタントや雑誌モデル、舞台を経て本
作が映画デビューとのことだが、圧倒的な存在感で作品を引
っ張っている感じだ。
共演は、2006年3月紹介『間宮兄弟』に出ていたという駒形
美如、テレビドラマ『琉球の風』などの岩尾拓志。
他に、今年3月紹介『ポールダンシングボーイ★ず』に出て
いたという中村太一、それに世界各地のピアノコンクールで
受賞の最年少記録を塗り替えているという小林愛実が特別出
演して演奏も聞かせてくれる。
という作品だが、この映画でさらに注目したいのは撮影の素
晴らしさ。この撮影は、脚本、監督も務めた坂口香津美が自
ら手掛けているが、特に一家が暮らす川原の夜間シーンで、
暗い中の近景から対岸の遠景まで見事にパンフォーカスされ
た映像には驚嘆した。
この撮影には、ソニーの最新型ヴィデオカメラが使用されて
いるとのことだが、元々がテレビドキュメンタリーを数多く
手掛け、ヴィデオカメラの特質を知り尽くした監督が、その
特質を極限まで使いこなした映像といえるようだ。
思えば、1999年に亡くなったスタンリー・クーブリックは、
1968年の『2001年宇宙の旅』で宇宙空間でのパンフォーカス
を得るためにモーションコントロールの基礎を作り、同じく
1975年の『バリー・リンドン』ではロウソクの明かりで撮影
するためNASA開発の高感度レンズを使用したものだが、
本作の監督はそれらを見事に実現してしまった。
そこには勿論ヴィデカメラの性能の向上もありはするが、そ
の性能を完璧に使いこなしてみせた監督には賞賛を贈りたい
ところだ。この映像には世界が驚嘆するに違いない。映画の
カメラマンは、もっとこの技術に学ぶべきだ。

『三銃士〜王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』
               “The Three Musketeers”
すでに何度も映画化されているアレクサンドル・デュマ原作
の冒険小説に、今回は『バイオハザード』などのポール・W
・S・アンサースン監督が3Dで挑戦した作品。
邦題ではサブタイトルに「王妃の首飾り」とあり、映画にも
首飾りは出てくるが、デュマの同名の作品の物語ではなく、
ダルタニアンの出自から三銃士との出会い、リシュリュー卿
とミレディの暗躍、さらにルイ13世とアンヌ王妃、コンスタ
ンス、バッキンガム公などが登場する正に『三銃士』の映画
化になっている。
そしてそこに、邦題の後半「ダ・ヴィンチの飛行船」が出現
して、こちらはVFXも満載のアドヴェンチャーが展開され
る。さらには原作と同様の剣戟戦も次から次に登場し、これ
もVFXによって旧作以上の迫力になっている。
剣戟戦というと、最近では2003年8月紹介『パイレーツ・オ
ブ・カリビアン』がその魅力を復活させたものだが、同作の
続編がVFXの大スペクタクルを指向したのに対して、本作
はその原点に戻った感じだ。しかもアンダースン監督はそこ
にVFXとの融合も見事に果たし、さらに3Dの魅力も存分
に発揮しているものだ。

出演は、ダルタニアン役に昨年『パーシー・ジャクソン』で
も主演を務めたローガン・ラーマン。対する三銃士役には、
昨年12月紹介『ブローン・アパート』などのマシュー・マク
ファデン、今年9月紹介『ブリッツ』などのルーク・エヴァ
ンス、昨年2月紹介『パニッシャー』などのレイ・スティー
ヴンスンが扮している。
さらにミレディ役にミラ・ヴォヴィッチ、リシュリュー卿役
にはクリストフ・ヴァルツ、バッキンガム公役にはオーラン
ド・ブルーム。特に、アンダースン監督夫人でもあるジョヴ
ォヴィッチは、夫の演出による謎の美女役を実に楽しそうに
演じている。
また、コンスタンス役にイギリス出身のガブリエラ・ワイル
ド、アンヌ王妃役には2007年12月紹介『つぐない』などのジ
ュノー・テンプル、ルイ13世役に名優エドワード・フォック
スの息子で演劇学校を卒業したばかりのフレディ・フォック
スら、期待の新星も出演している。
何しろ剣戟戦もアクションもVFXも満載の作品で、キャメ
ロン開発フュージョン3Dカメラで撮影された3D感もたっ
ぷり楽しめる。正にエンターテインメント大作と呼べる作品
だ。
なおアンダースン監督は、以前に「自分の作品は常に3部作
を考えて作っている」と語っていたが、本作も続編は作られ
そうだ。


『サラの鍵』“Elle s'appelait Sarah”
世界的なベストセラーになっているタチアナ・ド・ロネ原作
の映画化で、昨年の東京国際映画祭で監督賞と観客賞をW受
賞した作品が日本公開されることになり、改めて試写を観に
行った。
物語については昨年10月24日付でも紹介したが、1942年7月
16−17日にパリに住んでいたユダヤ人を襲った悲劇を描いた
もの。さらにそこに隠された謎を、アメリカ出身だがフラン
ス人の夫と共に現代のパリに在住する女性ジャーナリストが
追求して行く形式を取る。
それは、1995年になって漸くフランス政府が公式に謝罪した
ユダヤ人迫害の歴史。その日、パリのユダヤ人はフランス警
察によって老若男女を問わずに一斉検挙され、ヴェルディヴ
の冬期競輪場にすし詰め状態で留置される。
そこではトイレも閉鎖され、医師も8000人といわれる収容者
に対して3人しか配置されていなかった。さらに収容者には
食事はおろか、水もほとんど配給されない状態で5、6日が
経過され、その後は各地の収容所へと送られて行った。
一方、そのユダヤ人が去った後のアパルトマンに、主人公の
夫の祖父一家は引っ越してくる。そこに隠された悲劇も知ら
ずに。そして主人公の追跡は、ヴェルディヴに連れ去られた
1人のユダヤ人少女の数奇な運命を炙り出して行く。
その時のヴェルディヴの記録は、唯1枚の俯瞰写真以外ほと
んど残されていないとされる。それは何事も記録したナチス
のやり方にそぐわないが、実はそれがフランス警察によって
独自に行われた事の証左になっているとのことだ。
そして映画では、現代と過去と巧みに交錯させて、その悲劇
の有り様を見事に再構築して行く。ホロコーストはアウシュ
ヴィッツだけではなく、収容所の被害者名簿に残っていない
人々も襲っていたのだ。

脚本と監督は、自身の祖父が収容所で亡くなっているという
ジル・パケ=ブレネール。その監督は、原作を読み始めて直
ぐに映画化を決意し、本作の共同脚本も手掛けたセルジュ・
ジャンクールが原作者の知人であったこともあって映画化を
申し入れた。
その後、原作がベストセラーになって作家には世界中からの
オファーが殺到したが、原作者は最初の約束を守ったとのこ
とだ。
出演は、2002年9月紹介『ゴスフォード・パーク』などのク
リスティン・スコット・トーマス。またサラ役には、2010年
9月紹介『Ricky』でも幼い姉を演じていたメリュジー
ヌ・マヤンス。紹介作でも着目した新星が、本作でも見事な
演技を観せている。
他に、2003年4月紹介『夏休みのレモネード』などのエイダ
ン・クインらが共演。
今年3月紹介『黄色い星の子供たち』とも対になる作品だ。



2011年09月18日(日) マネーボール、グリー/コンサート、恋谷橋、ステイ・フレンズ、天使突抜六丁目、新少林寺、ファイナル・デッドブリッジ、クロサワ映画

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※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
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『マネーボール』“Moneyball”
低予算のチームながら最後まで地区優勝を争うものの、結局
は金満チームに負けてワールドシリーズ進出を逃す。そんな
米メジャーリーグの弱小球団オークランドアスレチックスを
統括するジェネラルマネージャー(GM)の姿を描いた実話
に基づく作品。
主人公は、元はスター選手を属望され、奨学金付きの大学進
学も蹴ってプロ野球に身を投じた男。しかしプロ選手として
は大成せず、その後はスカウトなどをした後、アスレチック
スのGMを務めている。そして今年も後一歩のところで金満
チームに破れ、ワールドシリーズ出場を逃してしまう。
そんなGMが気になったのは、選手の移籍交渉で訪れた他球
団のオフィスにいた1人の男だった。その男はイエール大学
で経済学を学び、スポーツとしての野球は全く知らなかった
が、統計学を駆使した選手の効率的な活用法を考えていた。
それは、例えば年間出塁数400回のスター選手より、250回の
選手2人の方が効果的だというもの。
その考えに賛同したGMは、早速彼を自らのブレインとして
採用し、スター選手の大半を放出するチームの改革の乗り出
すが…。彼のやり方は監督や選手たち自身の反発も招き、チ
ームは崩壊寸前になってしまう。そんなGMの支えは、離婚
した妻の許にいる12歳の娘だけだった。
僕自身が予算が無くて選手をまともに揃えることもできない
サッカーチームの応援をしている身としては、この物語には
少なからず興味を引かれた。しかし上記の出塁数の話などで
は、野球とサッカーの違いも明白にされたものだ。もちろん
サッカーでも他の尺度を用いて利用できる理論かも知れない
が…
とは言うものの、スポーツビジネスの裏側ということでは共
通する面白さもあるし、まあ野球のことも知らない訳ではな
いから、そこは気持ち良く楽しめる作品だった。特に最後の
大一番のシーンには涙腺も大いに刺激された。

出演は、ブラッド・ピット、フィリップ・シーモア・ホフマ
ン、それに、2008年11月紹介『無ケーカクの的中男』などの
ジョナ・ヒル。他にロビン・ライト、新星ケリス・ドーシー
らが脇を固めている。
監督は、2006年6月紹介『カポーティ』などのべネット・ミ
ラー、脚本は『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソ
ーキンと、『シンドラーのリスト』のスティーヴン・ザイリ
アンが担当している。
野球やプロスポーツビジネスに興味のある人なら、誰でもが
楽しめる作品だ。

『グリー/ザ・コンサート/3Dムービー』
            “Glee: The 3D Concert Movie”
『glee/グリー』は、アメリカFOXテレビが放送し、ゴー
ルデン・グローブ賞の作品賞を2年連続で受賞しているとい
う人気番組。本作はその出演者たちによるコンサートの模様
を3Dで撮影した作品。
オリジナルの番組は、田舎町の高校を舞台に、落ちこぼれの
巣窟となっていたコーラス部が全国大会を目指して研鑽を重
ねて行くというもの。従って番組では毎回のドラマの中に音
楽が挿入され、そこでは80年代の懐メロなども登場する仕組
みなっているらしい。
これだけ書くと、何か2008年11月紹介『ハイスクール・ミュ
ージカル』の亜流のような感じにも取れるが、本作ではさら
にゲイや障害者や人種などマイノリティの問題も真正面から
取り上げて、社会性の面からも高く評価されたようだ。
そんな社会性の評価などのお陰もあるのかも知れないが、本
国では大統領もファンを公言しているとかで、出演者一同は
ホワイトハウスに招かれて、大統領府の中でコンサートを行
ったこともあるとのことだ。
という作品だが、本作はあくまでもそのコンサートのライヴ
映像という設定らしく、そのバックステージなども登場する
のだが…。そこに登場する出演者のキャラクターが番組の設
定に基づいているようで、番組を観ていないものには多少判
り難かった。
でもまあこれは、正に番組のファンのための作品であって、
ファン以外の観客は余り考慮されていないのだろうし、それ
はそれで仕方の無いところでもある。しかもそれが3Dで観
られるのは、ファンには最高のプレゼントと言えるものだ。
それにコンサートの内容もあくまで高校生の発表会という感
じで、恐らく番組中で評価の高かったのであろう楽曲を、出
演者たちが1曲ずつただ並べて披露しているだけ。そこには
特別ショウアップなどの工夫もされていない。
でもこれも、番組のコンセプトから考えれば仕方がないもの
であって、本作はあくまでも番組のファンのための作品なの
だ。ただ番組によって救われたというファンの姿などは、多
少自己満足的な感じもしたが…。

日本公開は9月23日から2週間の限定で、ファンならその間
に映画館に駆け付けるべし、という作品だ。

『恋谷橋』
毎日新聞社が後援している「スーパーシナリオグランプリ」
の第1回受賞作を原作とした映画化。
山陰の温泉地を舞台に、都会に出たものの挫折し舞い戻った
女性と、地元で父親の仕事を継ぐべく研鑽を続けているが、
そろそろ外に出て修業を積むべき時期に来ている男性。そん
な幼馴染みの男女が、寂れて行く故郷の中で自らを見つめ直
す姿を描いている。
女性は老舗旅館の女将の次女。男性はその旅館の調理場を任
されている料理長の息子。女性はデザイナーを目指し、一流
の美大を出て東京で就職したが、不況の煽りでリストラに遭
い、故郷に舞い戻ってくる。
一方の男性は、父親の下で料理の腕前も1人前になり、また
自らの創作料理への意欲もあるが、寂れ掛けた故郷を離れて
修業に出るには、そこを飛び出して行くだけの踏ん切りを付
けるものがない。そんな彼の前に彼女が帰ってくる。
バブル景気の時代を経た現在の構造不況の中で、これは正に
全国で繰り広げられているであろう若い男女の息詰まるよう
な物語が展開されて行く。その状況を如何にして打開して行
くのか…、そんな気持ちも込められた作品のようにも感じら
れた。

主演は元speedの上原多香子。共演は、昨年4月紹介『BE
CK』に出ていたという水上剣星。他に、松田美由紀、小倉
一郎、吉行和子、松方弘樹、中澤裕子、土屋アンナ、石橋蓮
司らが脇を固めている。
監督は、1978年のATG作品『正午なり』などの後藤幸一。
映画化の脚本は、元「女学生の友」の編集者という井上正子
が担当。
なお、映画化では、全国から「すっかりさびれた温泉街」が
募集され、そこに応募のあった中から鳥取県三朝温泉が選ば
れて撮影が行われている。
そこは世界屈指の泉質を誇る「ラジウム温泉」で知られてい
る温泉だそうだが、老舗旅館の立ち並ぶ温泉街の風景には、
正に郷愁を誘うものが描かれていた。それに先日観光に行っ
たばかりの鳥取砂丘も少しだけ登場したのは、個人的に嬉し
かった。
ただ物語は、かなりオーソドックスというか…。それと土屋
アンナのエピソードがそのままになってしまったのはちょっ
と物足りない感じで、その辺や他の登場人物のことももう少
し描いて、アンサンブル劇のようにしても良かったかな。そ
んな風にも感じられた。


『ステイ・フレンズ』“Friends with Benefits”
共に主演ではないが、『ソーシャル・ネットワーク』でショ
ーン・パーカー役を好演したジャスティン・ティンバーレイ
クと、『ブラック・スワン』でライバルを演じたミラ・クニ
スの共演で、恋愛に臆病になった男女の恋を描いた作品。
男性はウェブで注目を浴びたアートディレクター、女性はヘ
ッドハンター。彼女はロサンゼルス在住の男性をニューヨー
クの大手出版社にヘッドハンティングし、ニューヨークの空
港で初対面した2人はビジネス上の関係を開始する。
そんな2人は、実はそれぞれ前の恋人と別れたばかりで、新
たな恋に踏み出すにはまだ時間が浅かった。それでも何かを
感じ合う2人は、「セックスはしても友達同士。互いに恋愛
感情は持たない」約束で、関係を築こうとするのだが…。
まあ、お話自体は以前から何度も作られているような感じの
ものだが、それをアートディレクターとヘッドハンターとい
う、言ってみれば最先端の仕事する男女を主人公にして、現
代的に描き出した作品と言えそうだ。
しかも映画の中では、ロサンゼルスとニューヨークのカルチ
ャーの違いや、ニューヨーク特有の最新の風俗なども描いて
いて、それはアメリカ文化に興味のある人間には興味津々な
作品にもなっている。

監督は、2010年“Easy A.”という作品で主演のエマ・スト
ーンをゴールデン・グローブ賞の候補に導いたというウィル
・グラック。ニューヨークで生まれ育ったという監督が、ニ
ューヨークの魅力を存分に描いている。
また共演には、パトリシア・クラークソン、ジェナ・エルフ
マン、リチャード・ジェンキンス、ウッディ・ハレルソンら
を迎えて、こちらも万全という感じの作品だ。さらに、冬季
オリンピックのスノーボード・ハーフパイプで2大会連続の
金メダリスト=ショーン・ホワイトが彼自身の役で登場し、
達者な演技を観せていた。
なお脚本の原案は、ハーリー・ペイトンという名義になって
いたが、この人は以前に『ツイン・ピークス』の脚本も手掛
けていたようだ。

『天使突抜六丁目』
2004年製作『つぶろの殻』という作品でPFFに入選、観客
賞を受賞して、同作はバンクーバー、プサン、サラエボなど
の映画祭で上映されたという山田雅史監督の新作。
「天使突抜町」は京都の烏丸五条の西に一丁目〜四丁目が実
在する地名だが、六丁目は存在しない。そんな架空の町を舞
台に、行き場を失った人々の何かを求めようしても得られな
い、そんな苦しみに満ちた物語が展開される。
主人公は勤めていた工場が倒産し、工場内で飼っていた金魚
に餌やろうとして潜入したところを債権者に見つかり山野を
追い回される。そしてふと通り抜けたトンネルの先にある天
使突抜六丁目にやってくる。
そこには幼馴染みで不動産屋を営む男性がいて、その男性の
好意で古びたアパートに住まわせて貰った主人公は、もうす
ぐ羽根が生えてくると称している女性や、いつもキュウリを
食べている老女などと知り合う。
また、警備員の仕事を得て工事現場で働くようになった主人
公は、先輩で化石マニアの老人の住まいに招かれ、そこでは
「中に天使の羽根が入っている」というノジュール(化石の
母石)を見せてもらったりもする。そんなある種の平凡な生
活が、ある日突然狂い始める。
物語は、シュールと呼べばシュールなもので、架空の町や天
使の存在などがそれを彩っている。ただ僕には、作品を1回
観ただけでは物語の全体が把握し切れず、かと言って2回観
る時間的余裕はなさそうだ。
結局、僕の中ではこのまま曖昧模糊として記憶される作品に
なってしまうかな。まあそれはそれで本作には良いのかも知
れないが。

出演は、関西在住で本作のオーディションで見いだされたと
いう真鍋拓、2008年7月紹介『アキレスの亀』などに出演の
瀬戸夏実、今年3月紹介『マイ・バック・ページ』に出てい
たという服部竜三郎。
その若手俳優たちの脇を、柄本明、若松武史、桂雀々、麿赤
兒、長江英和、横山あきお、蘭妖子、栗塚旭、デカルコ・マ
リイらが固めている。
なお本作は、京都を舞台にする「京都連続」と称するシリー
ズの第2弾で、すでに第3弾も完成間近だそうだ。

『新少林寺』“新少林寺”
ジェット・リー主演の1982年作品でも知られる中国武道の代
表格、少林寺を舞台にしたアクション作品。そこに今回は、
アンディー・ラウとジャッキー・チェンの共演で、新たな物
語が構築された。
時代背景は1912年。前年の辛亥革命により清朝が倒れた中国
では、海外列強の侵略が恐れられる一方、各地の有力者もま
た覇権を競っていた。そんな中、負傷して少林寺に逃げ込ん
だ登封城の将軍霍龍を追って、無慈悲な将軍侯杰が馬上のま
ま本堂に乗り込んでくる。
斯くして登封城を手に入れた侯杰だったが、その凱旋の場に
義兄弟の契りを結ぶ将軍宋虎が現れる。その目的が戦利品の
分け前の要求であることは明らかだ。しかし宋虎はそれには
触れず、侯杰が溺愛する1人娘の勝男と自らの息子との婚約
話を切り出す。
これに対してその婚約式の場を、宋虎を倒す絶好の機会と考
えた侯杰は…。この侯杰将軍をラウが演じ、チェンが演じる
のは少林寺の厨房に働く料理人。この本来なら出会うはずの
ない2人が巡り会ったとき、少林寺に新たな歴史の1ページ
が刻まれる。

共演はニコラス・ツェー、ファン・ビンビン。他に、2008年
8月紹介『ハムナプトラ3』などのウー・ジン、1982年『少
林寺』にも出演のユエ・ハイ、2008年12月紹介『花の生涯』
で梅蘭芳の幼少時代を演じたユイ・シャオチュン。
さらに今年3月紹介『孫文の義士団』などのシー・イェンレ
ン、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリ
ーズなどのション・シンシンらが脇を固めている。
隋朝末期を背景とする前作とは時代背景も全く異なる作品だ
が、時の政治の横暴などに立ち向かう少林寺の思想は受け継
がれた作品になっている。因に本作は、映画の制作に少林寺
文化伝播(登封)有限公司が直接関っているものだ。
そして撮影では、すでに観光地化された少林寺は寺側の許可
は下りたものの撮影は実行できず、替りに少林寺そっくりの
(ただし実物より3分の1ほど大きい)全方位のセットが、
2000万元(約2億4000万円)を掛けて建設され、大スペクタ
クルが展開されている。
監督は2005年1月紹介『香港国際警察』などのベニー・チャ
ン。1990年『アンディ・ラウの逃避行』で監督デビューし、
ジャッキー・チェンとのコラボレーションも多い監督が、こ
の豪華共演を実現したようだ。
そしてその作品では、主演2人のそれぞれの特質を活かした
カンフー・アクションも存分に楽しめた。

『ファイナル・デッドブリッジ』“Final Destination 5”
2009年9月に前作を紹介したスプラッターホラー・シリーズ
の第5弾。前作に引き続き、最新の3Dでその惨劇の模様が
描かれている。
今回の物語の発端は、河川に架かる巨大道路橋の崩落。その
橋を勤務先の研修旅行のため同僚と共にバスで渡っていた主
人公は、事故の直前の予知夢によって同僚らと共に辛くも生
き延びる。その人数は8名。しかしその後を死が追い掛け始
める。

出演は、テレビ『HEROES』第2シーズンに出ていたというニ
ラス・ダゴスト、2010年7月紹介『フローズン』などのエマ
・ベル、ジャズ・ミュージシャンで、クリント・イーストウ
ッド監督の次回作“J.Edger”にも出演しているというマイ
ルズ・フィッシャー。
他に、2010年4月紹介『小さな命が呼ぶとき』などのコート
ニー・B・バンス、2009年版『13日の金曜日』のアーレン・
エスカーペタ、2006年9月紹介『スネーク・フライト』のデ
イヴィッド・ケックナー。そしてシリーズ最初の2作に出演
し、第3作でも声の出演をしていたトニー・トッドが復活し
ている。
監督は、ジェームズ・キャメロンの2大作『タイタニック』
と『アバター』で第2班監督を務めたスティーヴン・クォー
レ。1989年『アビス』でミニチュア撮影などを担当し、その
後ILMで研鑽して、再びキャメロンの許に戻ったというベ
テランが長編監督デビューを果たしている。
脚本は、2010年5月紹介『エルム街の悪夢』などのエリック
・ハイセラー。
前作の時から、死を逃れられるか知れないというルールが付
け加えられて、展開が面白くなった。また前作に引き続いて
ドミノ倒し的な死に至る過程もいろいろ描かれ、そのからく
りを3Dで描くのが本作の面白さになっている。
さらに本作ではトニー・トッドが復活し、しかも主人公の役
柄が見習いシェフで、パリに修業に行くという辺りで…オヤ
オヤ?と思っていたら、その思い通りの展開になったのには
長年のファンとして満足した。
ただ、雰囲気的には、これで完結…?のようにも取れるが、
ファンとしては本作で示唆された死に対する対抗勢力のよう
な存在を描く、新たな展開も期待したいものだ。


『クロサワ映画2011』
女性お笑い芸人「森三中」の黒沢かずこが単独主演している
ラヴコメディ?
題名に「2011」と振られているのは、すでに2010年にも同様
の作品があったのだそうで、その評判によって作られた作品
とのこと。第2回沖縄国際映画祭でグランプリを獲得したと
いう前作の脚本=石原健次と演出=渡辺琢が再び本作を手掛
けている。
物語は、2010年クリスマスのイヴ々々の日、黒沢と椿鬼奴、
光浦靖子、大久保佳代子の独身女芸人4人組は、誰かとクリ
スマスを過ごす当てもないままゲイバーで騒いでいた。そし
て2次会に向かった黒沢と大久保は、そこで運命の出会いに
遭遇する。
それは、別の客とのトラブルになり掛かった2人の窮地を、
2人の韓国人の若者が救ったのだ。その2人に対して大久保
が積極果敢にアタックし、大久保は日本語は話せないが東京
に住む若者を獲得、黒沢は日本語を話せるが韓国在住の若者
と親しくなる。
しかしそのまま若者を自宅に連れて行った大久保に対して、
黒沢はメルアドも交換できないまま出会いは終ってしまう。
ところがその翌日、韓国ロケに参加した黒沢に運命の女神が
微笑み始める。
こうして大久保と黒沢に恋の日々が始まるのだが…。これに
椿の初恋の人との再会の話を加えて物語は進行して行く。そ
こに、ロケ取材という設定の黒沢による韓国レポートなども
垣間見られるという展開の作品だ。
とは言っても、主演しているのはお笑い芸人。現実とは異な
るこの話をどうやって落とすのかが気になり始めるところだ
が、これがなかなか落としに掛からない。そして漸く落ちた
ところは、まあこんなものかなあと言う結末だった。
因に本作も、先の第3回沖縄国際映画祭で特別に作られた賞
を受賞したそうだが、元々本作の製作は吉本興行とフジテレ
ビ。沖縄国際映画祭は吉本の影響力も強そうだから、そんな
ものかなあというところだ。

共演は、HNKが2010年から放送しているドラマ『祝女』で
誕生した韓流スーパーグループ「無限男子」のコン・テユと
イ・テガン。若い女性にはこの2人の出演も鑑賞の動機付け
になるのかな。
出演者も脚本も監督も、全てテレビ界の人材で、作品の出来
もそのレヴェル。でもまあ話題性はありそうだから、それで
映画館が賑わえば宜しいかな…そんな感じの作品だ。



2011年09月11日(日) 50/50、家族の庭、牙狼、スパイキッズ4D、フェア・ゲーム、スクリーム4、第7鉱区、私だけのハッピー・エンディング+Lone Renger

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『50/50 フィフティー・フィフティー』“50/50”
27歳で5年後生存率50%のガン告知を受けた男性を主人公に
した人間喜劇。
脚本のウィル・レイサーは、今年1月紹介『グリーン・ホー
ネット』に主演のセス・ローゲンらと共に、サシャ・バロン
・コーエン主演のコメディ番組“Da Ali G Show”を手掛け
ていた頃にガンを患い、その実体験に基づいて本作を書き上
げた。
その映画化に僕は、同病の患者やその家族のことを思うと、
試写会で初端から大笑いしていた人たちのようには、そう簡
単に笑えるとは思えなかった。しかし映画を観ている内に、
脚本家が作品に込めた想いのようなものが伝わってきて、途
中からは時に涙したり、普通に笑うこともできた。
主人公は、地元のラジオ局で番組制作に携わっている男性。
真面目な彼はテーマに真剣に取り組むため、手掛けている番
組の制作はなかなか進まない。しかし私生活では新進芸術家
のガールフレンドもいてそれなりに充実していた。
ところが、腰の痛みが気になってした受診で思いも掛けない
ガンが発見され、そのガンは、このままでは5年後生存率が
50%であることが判明する。こうして闘病のためのセラピー
や苦しい抗ガン剤治療などが始まるが…
さらに彼を待ち受けていたのは、献身的であろうとするガー
ルフレンドとの諍いや、認知症の夫を抱えながらも息子のた
めに何かをしようとする過保護な母親、それに彼の世話を焼
こうとしては失敗するお調子者の親友の存在だった。

主演は、今年5月紹介『メタルヘッド』などのジョセフ・ゴ
ードン=レヴィット。他に、製作も務めるセス・ローゲン、
今年4月紹介『スコット・ピルグリム』などのアナ・ケンド
リック。さらにブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ
・ヒューストンらが脇を固めている。
監督は、2008年のサンダンス映画祭で“The Wackness”とい
う作品が観客賞を受賞しているジョナサン・レヴィン。本作
が長編3作目の監督だが、曲者の俳優たちを向こうに回して
的確な演出をしている感じだ。
確かに厳しい内容の作品だが、本作ではそんな状況の中でも
強く生きようとする主人公=脚本家本人の気持ちが伝わって
くる。笑いがガンに効くという話もあるし、ここは脚本家の
気持ちに同調して笑うべき作品のようだ。


『家族の庭』“Anther Year”
1996年『秘密と嘘』でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを
受賞しているマイク・リー監督による2010年の作品。本作も
カンヌに出品された。
主人公は、地質学者の夫と、病院で医学カウンセラーをして
いる妻の初老の夫婦。1人息子は30歳でまだ独身だが弁護士
を営みすでに独立している。そんな夫妻は、毎休日には市民
農園で畑仕事を楽しみ、その収穫で友人を招いたパーティも
楽しんでいる。
そのパーティには、妻の同僚の中年女性も招かれているが、
多分40代でバツ1の彼女は毎回現れては自分の男運の無さな
どの愚痴をこぼし、いろいろとトラブルメーカーだ。そんな
夫妻の四季が季節ごとに描かれて行く。
主人公の夫は僕と同年代と思われるが、夫妻の生活ぶりを観
ていると本当に憧れを感じてしまうほど円満で穏やかな日々
が流れて行く。そこにはトラブルメーカーの女性の存在や独
身の息子の心配などもあるが、それはそれなりだろう。
そんな物語が、2時間9分の上映時間の中でじっくりと描か
れる。それは正にごく普通の初老夫妻の日常とも言えるもの
だ。その中にはいろいろな波風もあるが、それでも日々は流
れて行く、そんな感じの作品だった。
それは異国の話ではあっても、日本人の自分たちにも共通の
問題として捉えられる部分も多いし、10人近い登場するキャ
ラクターの中には、自分の周囲に思い当たる人物もいたりも
する。そんな親しみやすさ感じられる作品でもあった。

出演は、2005年5月紹介『ホット・ファズ』などのジム・ブ
ロードベント、ルース・シーン、レスリー・マンヴィル、ピ
ーター・ワイト、オリヴァー・ルマン、カレーナ・フェルナ
ンデスらのマイク・リー監督作品の常連に加え、『ハリー・
ポッター』シリーズのミスター・フィルチ役デイヴィッド・
ブラッドリーが初参加している。
マイク・リー作品は、僕は上記の受賞作以降は観ていなかっ
たが、一見普遍的な日常を描いているようで、その裏に潜む
非日常的な事象を鮮やかに描き出す。それは淡々とした描き
方ながら一瞬もスクリーンから目が離せなくなる。そんな見
事な演出の作品だった。


『牙狼<GARO>〜MAKAISENKI〜』
2005−06年に放送され、昨年7月に劇場版『GARO THE MOVIE
3D : RED REQIEM』を紹介している雨宮慶太原案・総監督に
よるダークヒーロー・シリーズが、再びテレビシリーズとし
て製作され、その第1話、第2話の試写が行われた。
物語は、ホラーと呼ばれる人間の邪心に取り付く魔獣が跋扈
する世界を背景に、その魔獣を退治する魔界騎士と呼ばれる
ダークヒーローの活躍を描く。そして本作では、以前の劇場
版で活躍を認められ昇進した主人公にも危機が訪れ、その謎
を巡って物語が進むようだ。

主演はシリーズ通じての小西遼生。他にヒロイン役の肘井美
佳、影山ヒロノブ(声優)、蛍雪次朗らが前シリーズに続け
て登場。さらに『ウルトラセブン』のひし美ゆり子がセミレ
ギュラーで新登場している。
また、今回試写された中にはいなかったが、映画版に登場し
ていた松山メアリ、倉貫匡弘らもレギュラー出演しているよ
うだ。他に、中村織央、藤田玲、さとうやすえ、山本匠馬ら
の名前がプレス資料のレギュラー欄に記載されていた。
そして第1話「火花」では、ゲストに竹中直人が登場。怨念
のこもったシガレットライターを手にした男の行う残虐行為
の有り様が描かれる。ここではCGIによる闘いの模様や、
吹き替えを巧みに編集した竹中のアクションも面白かった。
次の第2話「街灯」は、広田レオナのゲスト出演で、若い男
性ばかりを襲う女の姿と、その意外な目的などが描かれる。
さらにそこには、主人公を慕うヒロインの行動なども絡んで
くるものだ。
ただまあ、物語は『仮面ライダー』や『戦隊シリーズ』とさ
ほど変りはないものだが、竹中や広田のような曲のあるゲス
トの演技も楽しめるもので、特に竹中の小心者が魔界の力を
得て変貌する演技などはそれなりのものになっていた。

なお本シリーズは、10月からテレビ東京系の深夜枠で放送さ
れる予定のものだが、その前の9月24日から東京、大阪、愛
知、北海道、福岡の5都市限定で、全12話が3話(72分)分
ずつ4回に分けて先行上映されることになっており、ファン
は一足先に楽しめるようだ。

『スパイキッズ4D/ワールドタイム・ミッション』
     “Spy Kids: All the Time in the World in 4D”
2001年から3年連続で、3作品が製作・公開されたロベルト
・ロドリゲス監督によるファミリー・スパイアクションシリ
ーズ(紹介は2002年9月と2003年9月)の再開第4作。
今回の物語の中心になるのはウィルソン一家の双子の姉弟。
テレビ俳優のパパは「スパイハンター」という番組で頑張っ
ているけど、お陰で子供たちとは遊ぶ暇もない。そんなパパ
が再婚したママは専業主婦のはずだけど、何か隠しているよ
うだ。
そのママは、実はスパイ組織OSSの敏腕エージェントだっ
たが、パパと結婚して臨月のお腹で悪人チックタックを逮捕
した日にスパイを引退した。でもそのことはパパにも内緒の
こと。それは、国家機密と家族の安全を考えてのことだった
が…
ところが赤ん坊も無事産まれて1年が経った頃、突然世界の
時間の流れがおかしくなり、タイムキーパーと名乗る男から
犯行声明が出された。それは世界の時間を加速して破滅に導
くと言うもの。そしてその犯行には、ママが双子の姉に贈っ
たペンダントが関っていた。
こうして謀らずもママの正体を知ってしまった姉弟は、匿わ
れたOSSの本部で、スパイキッズの歴史を知ることにもな
るが…
まあお話はお子様向けの御都合主義も満載のものだが、そん
なことは承知の上でその物語を、目一杯のアイデアとVFX
と3Dで彩り、さらに今回は4つ目の次元として匂いも加え
た仕掛け満載で描き出している。

出演は、ジェシカ・アルバ、2005年11月紹介『ロード・オブ
・ドッグタウン』に出ていたというジョエル・マクヘイル、
そして姉弟役には新進のローワン・ブランチャードとメイソ
ン・クックが抜擢されている。
また、前作までのスパイキッズのアレクサ・ヴェガとダリル
・サバラが成長した姿で登場して活躍してくれる他、2010年
『マチューテ』などのダニー・トレホが前作と同じ役柄で顔
を見せていた。
ただ、カードを用いた匂い付き映画は、プレス資料の監督の
発言では史上初とされていたが、これはアメリカでは1981年
“Polyester”という作品で実施されたことのあるもの。こ
の作品は日本でも1986年に公開されたはずだが…


『フェア・ゲーム』“Fair Game”
2003年3月に開戦されたアメリカ−イラク戦争を検証し、そ
れによって振り回された夫妻の実話を映画化した作品。
2001年9月11日の同時多発テロによって、アメリカ政府は一
気にイラク・フセイン政権への疑いを強め、イラクの核兵器
開発疑惑などの調査を開始する。その任に当たったのは、元
ニジェール駐在アメリカ大使だったジョー・ウィルソン。
彼は、妻のヴァレリーが勤務するCIAからの依頼を受けて
アフリカに飛び、大使だった頃の人脈を使ってイラクが大量
のウランを買い付けたとの疑惑を調査する。しかしいくら調
べてもその事実は全く現れず、疑惑は虚偽との報告書を提出
する。
ところがブッシュ大統領は会見でラクがウランを買い付けた
事実があると明言し、それによってイラクへの宣戦を布告。
これにより多数の一般市民を犠牲にする侵攻作戦が実施され
てイラクは占領される。しかし核兵器は一向に発見されなか
った。
これに対してウィルソンはマスコミに自らの調査結果を暴露
し、ブッシュ政権の欺瞞を告発するのだが、それは彼自身へ
の報復を招くことになる。そしてその結果は夫婦の関係など
に多大な犠牲を産むことになって行く。
物語は、最終的にブッシュ政権の上層部の人物が有罪となっ
た事実までを描いて行くが、その過程ではヴァレリーが従事
していた中東での核技術者救出作戦の破綻など、多大な犠牲
や裏切りがあったことも告発している。
これは日本でも、国策に関る政府の発表は全て虚偽に塗り込
められていることは、原発問題や、恐らくはそんな程度で済
んでいるはずの無い放射能被害の報告などでも疑うところだ
が、アメリカの場合はそれを告発する人間がいるだけましと
も言えるかもしれない。

出演は、ナオミ・ワッツとショーン・ペン。中でもペンは、
2006年12月紹介の『オール・ザ・キングスメン』でも果敢な
ブッシュ共和党政権批判を行っていたが、本作でもその矛先
は全く鈍っていないものだ。
また映画の中では、主人公が講演でフランクリンの言葉を引
用したRepublic(共和主義)という言葉の後で、Democratic
(民主主義)と2回も言う辺りに、彼の意志が伝わってくる
感じもした。
共演は、2003年7月紹介『T3』などのデヴィッド・アンド
リュース、07年10月紹介『その名にちなんで』などのブルッ
ク・スミス、03年11月紹介『すべては愛のために』などのノ
ア・エメリッヒ、そして04年11月紹介『きみに読む物語』な
どのサム・シェパード。
監督は、2002年11月紹介『ボーン・アイデンティティー』な
どのダグ・リーマンが担当した。

『スクリーム4/ネクスト・ジェネレーション』“SCRE4M”
11年前の2000年まで3作品が製作・公開されたウェス・クレ
イヴン監督によるスプラッターホラーの快作『スクリーム』
シリーズの復活第4作。
西海岸の小さな町を襲った恐怖。それは11年前に終った過去
の出来事のはずだった。しかしその時の被害者で、数少ない
生き残りの1人だった女性が故郷に戻った時、再び恐怖の陰
が町を覆い始める。
11年前の惨劇を生き抜いたシドニーは、その後はトラウマも
あって町を離れていた。しかし自らの体験を自身で本に纏め
たことでようやくトラウマからも開放され、ベストセラーに
なったその本のプロモーションも兼ねて故郷の町に帰ってき
た。
そこには以前の惨劇を共に闘った保安官のデューイや、その
後に彼と結婚したレポーターのゲイルらも暮らしていたが、
シドニーの体験を出版して映画化にも導いたゲイルは、シド
ニーに対抗して新作を書こうとしたもののスランプに陥って
いるようだ。
そしてシドニーが宿泊する叔母の家では、若い従兄弟のジル
とその親友らが暖かく彼女を迎えてくれたが…、彼女たちに
恐怖の電話が架かり始める。さらにそこにはジルの元彼や、
ウェブで周囲の画像を配信し続けている高校放送部のロビー
らも絡んでくる。
巻頭にはお決まりのプロローグがあって、以前にはドリュー
・バリモアやサラ・ミッシェル・ゲラーらが登場したそのシ
ーンを今回は、『X-MEN』のアンナ・パキン、『ヴェロニカ
・マーズ』のクリスティン・ベル、『新ビバリーヒルズ青春
白書』のシェネイ・グライムスらが務めている。
まあお話は以前のシリーズと全く同じ、目的の判らない連続
殺人の恐怖を描くもので、そこにホラー映画のトリヴィアな
どがちりばめられているものだが、今回は定石外しもテーマ
になっているようで、そんな意外性も多少はあるものだ。

出演はネーヴ・キャンベル、デイヴィッド・アークェット、
コートニー・コックスの生き残り組が揃って再登場するのに
加えて、2010年1月紹介『誰かが僕にキスをした』などのエ
マ・ロバーツ、テレビドラマ『HEROS』のヘイデン・パネッ
ティーア、マコーレー・カルキンの弟のロニー・カルキンら
が共演している。
脚本は、シリーズの最初の2作を手掛けたケヴィン・ウィリ
アムスン。シリーズの原点に戻った脚本に、キャンベルらが
再結集しているものだ。

『第7鉱区』“7광구”
全CGIが韓国々内で制作されたというVFX−3Dアクシ
ョン作品。本国では公開4日間で150万人を動員し、2011年
度のオープニング記録を樹立したそうだ。
朝鮮半島の南、九州の西に位置する第7鉱区には1970年代に
油田が確認され、その埋蔵量はアラビア半島の10倍とも言わ
れた。しかし当初は日韓の紛争にも成り掛けた採掘は、その
後に共同開発が調印されるものの、1985年に日本側が撤退、
開発は中断されてしまう。
本作の物語はそんな1986年、細々と続けられていた韓国側の
採掘場で1人の作業員が事故死するところから始まる。そし
て現代、今も続けられている第7鉱区の海上採掘場では、何
度目かのボーリングが今回も不調に終ろうとしていた。
そこには事故死をした作業員の娘も中心となって働いていた
が、採掘の現場主任とは反りが合わないようだ。そしてそこ
に、深海から小さな生物がボーリングパイプと共に出現し、
その生物は水槽で飼われ始める。
さらに会社の判断で開発終了が決定され、撤収部隊がやって
くる。そのリーダーは彼女の父親と共にその鉱区で働いてい
たベテランだった。その彼の計いで、終了が納得できない娘
のための最後のボーリングが開始された頃、採掘場で謎の事
件が起き始める。

監督は、2008年3月紹介『光州5・18』などのキム・ジフ
ン。韓国のCGI映画では、2004年1月紹介『殺人の追憶』
のボン・ジュノ監督が、『グエムル』(2006年7月紹介)を
撮っているが、社会派とも呼べる監督の挑戦は興味も募ると
ころだ。
出演は、2003年3月紹介『ボイス』などのハ・ジウォン、モ
デル出身でテレビドラマの出演で日本でも人気の高いオ・ジ
ホ、さらに『光州5・18』に出演のベテラン俳優アン・ソ
ンギ。
物語の全体の流れは、『エイリアン』あるいはその元になっ
た『遊星よりの物体X』とほとんど同じで、舞台が海上の油
田採掘基地になっているだけという程度のもの。でもまあこ
れは定番中の定番になってしまったから、その流れの作品と
いう感じのものだ。
ただし本作の場合は、怪物側の目的が明確でなく、ただ食料
のためなのか、その辺で物語に広がりが欠ける感じがした。
特に父親の事故死には伏線としての意味も欲しかったところ
で、人間側のドラマがもっと描かれるべき作品のようにも感
じられた。


『私だけのハッピー・エンディング』
              “A Little Bit of Heaven”
2003年6月紹介『10日間で男を上手にフル方法』などのケイ
ト・ハドスンと、2002年6月紹介『天国の口、終りの楽園』
などのガエル・ガルシア・ベルナルの共演で、人生の最後の
時を過ごす人の姿を描いた作品。
主人公は、広告業界でバリバリの実績を誇る30歳のキャリア
ウーマン。今日も新たなクライアントを獲得するなど仕事も
順風満帆で、恋に遊びに人生を謳歌している。そのためには
セックスは大好きだが、結婚はまだ考えられない。
そんな彼女がふと身体の変調を覚え医師の診断を受けた結果
は、末期の大腸ガンだった。それは大腸中に広がってもはや
手術もできない。後は抗ガン剤治療で余命を少しでも伸ばす
しか、手の施しようもない状態だった。
そんな彼女の告白に、周囲の友人たちは嘆き悲しみ、別居中
の両親もそれぞれ彼女のためにできることを考えてくれるの
だが、そんな周囲の存在はうれしくもあるが、同時に煩わし
くも感じてしまう。
そんな中で彼女は、町のバーで自分の主治医の姿を見付け、
彼と飲み歩いて楽しいときを過ごすのだったが、病院では医
師と患者の交際は御法度だった。それでも彼のことが忘れら
れない主人公は…
先に『50/50』を紹介したばかりだが、アメリカでこのよう
な作品はブームになり掛けているのかな。まあ日本でもよく
似た作品はあったようだが、人間はいつか死ぬわけで、その
日に向かって如何に今を生きて行くか、それが本作の最大の
テーマになっている。
そんな前向きな主人公の姿が、それは涙でスクリーンが観え
なくなるようなシーンはあっても、全体としては爽やかな作
品に仕上げられている感じがした。そう言えばベルナルは、
『天国の口…』でも結果として同じような役柄だったことを
思い出した。
ただ、映画の中で主人公には宗教などは知らないと言わせて
おきながら、結局神様を出す辺りはハリウッド映画を感じさ
せもしたが。

共演は、ウーピー・ゴールドバーグ、キャシー・ベイツ。両
オスカー受賞女優が見事な存在感を見せてくれる。他に、ア
メリカでは今年6月公開“Bad Teacher”などのルーシー・
パンチ、今年8月紹介『カンパニー・メン』などのローズマ
リー・ドウィットらが脇を固めている。
        *         *
 最後に8月14日付で報告した“The Lone Renger”の映画
化に関し、再度ディズニーから製作続行の発表が行われた。
 これはヴァビンスキー監督側から、当初2億5000万ドルと
された製作費について、2億ドルから2億1500万ドルの範囲
に納めるという削減案が出されたためで、これにディズニー
側もOKしたようだ。撮影は11月に開始され、来年12月21日
の全米公開が予定されている。



2011年09月04日(日) 女の河童、ちづる、ブリッツ、ハラがコレなんで、風にそよぐ草、モンスター上司、カリーナの林檎、アンダー・コントロール+Thin Man

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『UNDERWATER LOVE−女の河童−』
日独合作による史上初(?)のピンクミュージカル。
映画巻頭のクレジットに登場した企画:朝倉大介の名前には
オオーと思ってしまった。この人は、言わずと知れたピンク
映画の大御所プロデューサー。この名前がある限りは本当に
ピンク映画のようだ。
試写会で配られたプレス資料によると、最近の日本人はピン
ク映画も観なくなってしまったそうだ。しかしヨーロッパを
中心とする海外では今も需要があり、そんなところから本作
が誕生したようだ。だから日独合作でもあるらしい。
物語の主人公は、水辺に建つ缶詰工場で働く女性。ある日、
ふとしたことから河童を目撃するが、その河童は彼女の幼馴
染みで、高校時代に沼で水死したものの河童に転生したのだ
という。
その高校時代の彼女は河童になった少年に仄かな愛情を抱い
ていたが、それから何年も経ち、現在の彼女は工場の主任と
の結婚も控えている。そこに河童になった少年の出現は彼女
の心を乱すが、実は河童になった少年の出現には別の理由も
隠されていた。
というお話が展開し、それはそれなりにファンタスティック
で有ったりもするものだが、本質的にそれはさて置いて、映
画の後半は屋内や野外でのピンク映画らしいシーンの連続と
なって行く。

監督は、昨年8月紹介『ゴーストキス』などのいまおかしん
じ。出演は、2006年12月紹介『長州ファイブ』に出ていたと
いう正木佐和、2007年『童貞。をプロデュース』などの梅澤
嘉朗。
他に、今年1月紹介『婚前特急』などの吉岡睦雄、元レース
クイーンの成田愛、それに監督と共に本作の共同脚本も担当
した守屋文雄らが共演。また主題歌をドイツ人ポップデュオ
のステレオ・トータルが歌っており、その日本語の歌詞も守
屋が担当したようだ。
そして撮影は、前々回紹介『ラビット・ホラー3D』などの
クリストファー・ドイル。アジアの名匠が再び奇抜な映像を
展開している。

『ちづる』
立教大学現代心理学部映像身体学科を2011年に卒業した赤��
正和監督が、その卒業制作として自閉症で知的障害も持つ自
らの妹を被写体にしたドキュメンタリー作品。
監督が卒業した学科は、「映像社会論」や「映像表現史」と
いった講義と共に撮影や編集の実際も習得するとのことで、
特任教授として2005年『蟻の兵隊』の池谷薫監督が指導して
いるなど、映画監督を育てる目的も有るようだ。
その学生だった赤��監督の妹は、1歳11カ月で自閉症と診断
され、3歳で知的障害が有ることも判明、そして現在は20歳
になっている。そんな妹のことを健常者である兄は負担にも
感じていたようだが、本作の制作によって初めて直接向き合
うことも決心したものだ。
そこに描かれる妹千鶴さんの姿には、当然知的障害による周
囲の状況を理解できないことのもどかしさや、我儘やそれを
諫める母親への反抗なども描かれるが、その一方で奔放な振
舞や細かい仕種などには愛らしさも感じられる。
実は、監督はこの作品の制作を開始する以前は一緒に住んで
いなかった時期があったとのことで、それは妹を負担に感じ
る現れでもあったようだが、それが直接向き合うことによる
本人の変化や成長も本作は描き出している。
また家族に障害者を抱えることによる現状の問題や将来への
不安なども直接的に描かれ、それはそのような状況に置かれ
た人々への理解を深めることに関して、有効な作品になって
いるとも思えるものだ。
僕は普段の生活で時おり知的障害の人に会う機会もあるし、
実際に自分の母親が認知症だと同様の症状を示すこともあっ
て、そんなシーンには切なくもなった。しかし観ている内に
千鶴さんの姿が微笑ましくもなってくる。そんな暖かさのあ
る作品だった。

なお本作は、10月にポレポレ東中野で一般公開の予定だが、
映画の配給・宣伝も全て立教大学の学生の手で行われるとの
こと。またその収益金は、東日本大震災で被災した地区に住
む自閉症児の支援に使われることになっているそうだ。
また試写会で配られた冊子は、劇場で販売されるものと思わ
れるが、そこに書かれた映画製作までの経緯には映画とは別
の感動が綴られており、それも素晴らしいものだった。

『ブリッツ』“Blitz”
ジェイスン・ステイサムの主演によるイギリスが舞台の刑事
アクションドラマ。
主人公は、サウスロンドン警察に勤務する現役の刑事。しか
し犯罪者に容赦のない主人公はマスコミの標的になることも
多く、査問に呼び出されることも度々だが、刑事部屋の仲間
の信頼は厚いようだ。
そんな彼の許には、リハビリを終えたばかりの元麻薬おとり
捜査官や、妻を亡くした同僚刑事、さらに転属してきたゲイ
の噂のある刑事などが足繁く顔を出している。彼らと別け隔
てなく接するのが彼の性分だ。
そんな折、地元の警官を狙った連続殺人事件が発生。一方、
連日主人公を槍玉に挙げているジャーナリストの許には、事
件の情報提供者と名乗る男から犯人しか知りえない内容の電
話が架かってくる。
これに対して主人公たちは、ある情報から真犯人を特定する
のだが、奴を検挙しても犯罪を立証するのには余りにも証拠
が少なかった。それでも逮捕には踏み切る主人公だったが、
言い逃れも巧みな犯人は証拠を掴ませない。
そして釈放された犯人は犯行を重ねて行くが…
ステイサムらしい身体を張ったアクションも鮮烈だし、特に
主人公が犯罪者をぶちのめして行くシーンは、幾らなんでも
やりすぎだろうとは思いつつも、卑劣な犯罪者への制裁には
容認する気持ちも生じてしまう。
そんな硬派な刑事をステイサムが好演している。

共演は、2005年6月紹介『シンデレラマン』などのパディ・
コンシダイン、2003年10月紹介『シャンハイ・ナイツ』など
のアイダン・ギレン、2006年10月紹介『氷の微笑2』などの
デイヴィッド・モリッシー、それにテレビ出身のザウエ・ア
シュトン。
監督は、CMディレクター出身のエリオット・レスター。脚
本は、アメリカ私立探偵作家クラブ賞(シェイマス賞)受賞
者のケン・ブルーウンの原作から、2010年1月紹介『月に囚
われた男』などのネイサン・パーカーが脚色している。

『ハラがコレなんで』
昨年2月に『川の底からこんにちは』という作品を紹介して
いる石井裕也監督の新作。因に監督は今年もう1本発表して
いるようだが、その作品は試写を観ていない。
その新作はアメリカに行ったが、妊娠しただけで帰ってきた
女性が主人公。妊娠9カ月で正に臨月の彼女が、昔暮らした
長屋に舞い戻ってくる。そこは彼女の両親にとってはどん底
の時を過ごした場所だったが、彼女には人生を学ばせてくれ
た場所でもあった。
しかしその長屋は、今は住む人もなく、高齢で足腰の立たな
い大家だけが暮らしている。そんな長屋に入り込んだ主人公
は、とりあえず大家の世話を始めるが、そこには彼女が住ん
でいた頃から近所で食堂を営む男性とその養子の若者なども
出入りしていた。
そしてさらに彼女が持前の元気を振り蒔き始めると…。
何か良く解らないが「粋だねえ!」が人生訓で、とにかく人
のために尽くすことが自分の使命と考えている女性が、身重
の自分も顧みずに他人のために邁進して行く。そこには賛同
者も現れて、ある種のユートピアが形作られて行く。

主演は、2007年12月紹介『ちーちゃんは悠久の向こう』など
の仲里依紗。共演は今年3月紹介『マイ・バック・ページ』
などの中村蒼、昨年3月紹介『BOX』などの石橋凌。
他に、稲川実代子、並樹史朗、竹内都子、大野百花、近藤芳
正、蛍雪次朗、斉藤慶子らが脇を固めている。
今の時代に、こんな物語は夢でしかないのかも知れないけれ
ど、そんな夢物語を一時でも良いから自分の心の中に置いて
おきたい、そんな感じもしてくる作品だ。それに舞台となる
長屋には被災地の仮説住宅も想起され、その場所でこんな人
情が生まれることも祈りたくなった。
因に、映画の撮影に使われた長屋は、高崎市内に実在するも
のだそうだが、2棟の長屋の間に溝が配置された構造は理想
的な長屋の風景そのもので、ここはぜひとも保存して欲しい
と思えたもの。またその風景には、黒澤明監督の『どですか
でん』も思い出した。
映画の企画はパルコ。同じ企画の作品は以前にも1本観てい
るが、その時は監督の暴走が鼻に付いて評価できなかった。
しかし監督を尊重する製作方針は今も貫かれているようで、
本作はそれが良い方向に作用している感じのするものだ。

『風にそよぐ草』“Les herbes folles”
2004年9月紹介『巴里の恋愛協奏曲』などのアラン・レネ監
督による2009年の作品。
ドキュメンタリーの出身で、1955年『夜と霧』や1967年『ベ
トナムを遠く離れて』の一編など社会性の強い作品で印象に
残る監督も89歳。本作は以前に紹介した作品に続いて男女の
ラヴ・アフェアを描いたものだが、さすが名匠の腕は一筋縄
では行かない。
物語は、女性がひったくりに遭うところから始まり、奪われ
た財布を初老の男性が拾うエピソードへと進展する。その財
布を拾った男性は、財布の中身を検分し持ち主の名前や住所
を確認して行くが、そこで彼の頭の中にはいろいろな妄想が
湧き上がってくる。
しかし調べた住所に電話を架けるもうまく繋がらず、結局彼
は警察に財布を届けることにするが、そこからも彼の妄想は
尽きることはない。そして財布は持ち主の女性の許に戻り、
彼女からお礼の電話がが架かってくるのだが…
この妄想を語るシーンが画面の合成で描かれたり、それに何
よりこの妄想が実に有りそうで、その辺が見事に描かれてい
る。しかもその映像は、原作の独特のリズムなどを完璧に再
現しているのだそうだ。

原作は、現代フランス文学の雄とも呼ばれるクリスチャン・
ガイイの作品。過去にはマグリット・デュラス、アラン・ロ
ブ=グリエらとも組んだレネ監督が、今回は最新のベストセ
ラーに挑んでいるものだ。
主演は、監督の実生活のパートナーでもあるサビーヌ・アゼ
マと、2006年10月紹介『あるいは裏切りという名の犬』など
に出演のアンドレ・デュソリエ。2人はレネ作品で多く共演
している。
他に2007年11月紹介『潜水服は蝶の夢を見る』などのアンヌ
・コンシニ、2009年7月紹介『ココ・アヴァン・シャネル』
などのエマニュエル・ドゥヴォス、今年7月紹介『さすらい
の女神たち』の監督も務めたマチュー・アマルリックらが脇
を固めている。
2010年7月紹介『ブロンド少女は過激に美しく』は、マノエ
ル・デ・オリヴェイラ監督の100歳のときの作品だったが、
来年90歳を迎えるレネ監督もまだまだ現役で、来年公開予定
の新作の撮影もすでに完了しているそうだ。

『モンスター上司』“Horrible Bosses”
今年5月紹介『ヤバい経済学』の製作総指揮と一部の監督を
務めたセス・ゴードン監督による、上司の横暴に苦しむサラ
リーマンの姿を描いたコメディ作品。
1人目は昇進を餌に扱き使って置きながら、それはコンセン
トレーションと嘯いて望みを叶えない本部長。2人目は先代
の跡は継いだが会社経営などそっち退けで薬と女に走ってい
る馬鹿息子社長。3人目は歯科助手の男性にどこでも迫って
くる色情狂の女歯科医。
そんな横暴な上司たちに仕え、もはや忍耐もぎりぎりだが、
生活のため家族のためにはそれに耐えなければならない男た
ちが、ついに上司どもを排除するために立ち上がる…が。
何処も不況と外圧に苛まれるサラリーマンの哀感が綴られて
いる。
それにしても、これがアメリカなんだろう…と思わせる、日
本のサラリーマンで描いたら全く成立しないようなお話が展
開される。それは勿論ギャグも半分なのだが、かなり強烈な
ものが次々に繰り広げられるものだ。
映画の製作はブレット・ラトナー。『ラッシュアワー』シリ
ーズなども手掛ける人気監督の製作した作品は、正にアメリ
カン病巣とも言える現実が、面白おかしく描かれているもの
だ。

出演は、2008年7月紹介『ハンコック』などのジェイスン・
ベイトマン、2010年5月紹介『バウンティー・ハンター』な
どのジェイスン・サダイキス、同年8月紹介『遠距離恋愛』
などのチャーリー・デイ。因にデイは、“Low & Order”に
1回出演しているそうだ。
対する横暴な上司役には、ケヴィン・スペイシ−、コリン・
ファレル、ジェニファー・アニストン。実生活ではいろいろ
トラブルを抱える俳優たちが、それも狙いだと思わせるよう
な演技を観せてくれる。
他に、ドナルド・サザーランド、ジェイミー・フォックスら
が脇を固めている。
日本映画だと、まずこのような描き方は不可能だと思われる
が、映画の中ではトヨタのプリウスが活躍するなど、日本も
関っている作品でもあった。いやはやそれにしてもかなり強
烈な作品だった。

『カリーナの林檎〜チェルノブイリの森〜』
1983年『アイコ十六歳』で監督デビューし、1988年には新井
素子原作『グリーン・レクイエム』なども監督している今関
あきよし監督が、2003年に現地で取材撮影監督するも公開は
されなかったドラマを、2010年新たな取材を加えて完成させ
た作品。
物語の舞台はチェルノブイリに近い寒村。居住禁止地区から
は境界を挟んだ隣ということだが、危険がないということで
はなさそうだ。その村で主人公は祖母と両親と共に暮らして
いたが、母親が病気になり、父親はモスクワに出稼ぎに行っ
てしまう。
そしてその村に住む祖母の家で夏休みを過ごした主人公は、
ベラルーシの首都ミンスクに住む叔父一家の住いにやってく
るが…。その家族には打ち解けられず、また友達のいない学
校も面白くはない。
そんな時、病床の母親からチェルノブイリの城に住む悪魔が
毒を撒き散らしていると教えられた主人公は、病気になった
祖母を1人で見舞いに行ってそのことを話すが、祖母はそん
な悪魔は神様がやっつけてくれると答えるだけだった。
そこで必死に神様にお願いをする主人公だったが、母親の病
状は一向に好転せず、さらに主人公自身も病に倒れることと
なる。そして入院した病院は、主人公の他にも原因不明の病
に苦しむ子供たちで一杯だった。

監督は、2003年にチェルノブイリの現状を伝えるラジオ番組
を聞いて作品を構想し、自費で現地に飛んで取材を開始、多
くの人の協力を得て一旦作品を完成させるが、当時すでにチ
ェルノブイリ問題は風化していて、作品の公開には至らなか
った。
しかし、どうしてもこの作品を一般に届けたかった監督は、
2010年に再度現地取材を敢行、25年経っても変らないチェル
ノブイリの現状を追加して公開を目指すことにした。ところ
が今度は福島原発の問題が発生。一時は公開を見送る意見も
あったが、今こそ見せるべきとの判断で公開に踏み切ること
にしたとのことだ。
役柄は主にベラルーシの俳優で演じられているが、主人公の
カリーナ役だけはロシア人のナスチャ・セリョギナによって
演じられている。撮影当時8歳だった子役の瑞々しい演技が
素晴らしい。また劇中の日本語のナレーションは大林宣彦が
担当している。
因に、題名のカリーナは主人公の愛称だが、映画にも出てく
る赤く熟した果実のことのようで、ネットをkalinaで検索す
るといくつか画像が見付かった。べリー類は環境が悪くなる
と豊作になると聞いたことがあるが、現地では今も豊作なの
だろうか。
前々回紹介した『チェルノブイリ・ハート』は、現状を生々
しく伝えるドキュメンタリーだったが、本作はそれをドラマ
にして心情に訴えている。その両作が共に2003年に製作され
ていたことも注目されるところだ。
それから試写会場ではクリアファイルでも配られたポスター
写真は、冒頭に原子力発電所の巨大なサイロが写し出される
1979年アンドレ・タルコフスキー監督の『ストーカー』を思
い出させたが、これは偶然なのだろうか。

『アンダー・コントロール』“Unter Kontrolle”
2022年、原子力発電所の全面廃止を政策として決定している
ドイツの原発事情を取材したドキュメンタリー。
ナレーションは一切廃して、原子力発電所の内部の案内や、
意見交換、シミュレーション訓練などの安全対策の実態、さ
らにすでに廃炉された原子炉の解体や高レベル放射性廃棄物
の処理の問題など、いろいろな側面からの取材映像が提示さ
れる。
それは、すでに脱原発が国是となるくらいに関心の高いドイ
ツ人にとっては、いろいろな映像を観るだけでもそれなりの
理解も生じるのかも知れないものだが…。
マスコミは今だに御用学者の発言の垂れ流しで国民が惑わさ
れている日本では、果たしてこの映像だけで何が判るか。特
に取材された原子力発電所の名称と地名だけが紹介されるテ
ロップでは、逆に混乱だけが生まれてしまうようにも感じら
れた。
確かに扇情的に捲し立てるマイクル・モーア的なドキュメン
タリーに問題が多いことは事実だが、問題点を明白にして知
識のない人にも理解させるという目的ではその手法も有効な
もので、それに対する反対意見も述べやすい。
それに対して本作の場合は、確かに冷静な目で事実のみが提
示されてはいるが、それが何を意味しているのかが僕のよう
な無知な人間にはさっぱり理解できず、これでは反論も何も
できない感じがした。
プレス資料によると、製作者はこれを観て議論をして欲しい
ようなのだが…。我々一般の日本人の場合は、その議論の前
に写し出された映像の一つ一つを検証して、その意味を把握
するところから始めなくてはいけない感じもしたものだ。
ただ、日本では全く目隠しされている放射性廃棄物の問題が
取り上げられているのは理解できたものだが、日本での原発
の経済性の議論がこの点を全く無視して成立している現状か
らは、その期間の問題だけでなく経費などにももう少し言及
して欲しかった。
それにしても、営業されなかった原発がそのまま遊園地に転
用されているという風景は不思議なもので、特に巨大なサイ
ロの中に作られたアトラクションには感心した。
そう言えば、ジェームズ・キャメロンの1989年『アビス』の
製作では、1979年のスリーマイル島事故で建設中止になった
原発のサイロが撮影用のプールに転用されたものだが、あれ
はどうなったのだろう。

原発絡みの作品が続いたが、これを時流に乗っているだけで
終りにはしたくないもので、ここから日本人にはいろいろな
ことを真剣に考えて欲しいものだ。それこそがこれらの映画
の制作者たちの意図であるはずなのだから。
        *         *
 最後に、ワーナーが進める“The Thin Man”のリメイクの
脚本にデイヴィッド・コープの起用が発表された。このリメ
イクの主演にはジョニー・デップが取り沙汰されていたが、
デップは『POTC/OST』の撮影中ロブ・マーシャルに
監督の打診をしたとのことで、このトリオで映画化がスター
トするようだ。


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井口健二