井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2011年07月31日(日) 鉄拳、ホームランが聞こえた夏、A3D�供▲疋薀ぅ屐Ε▲鵐哀蝓治械帖▲▲供次Ε�イズ、アジョシ、ムーランルージュの青春+Comic-Con

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『鉄拳 ブラッド・ベンジェス』
1995年に第1作が発売されて以来、2007年に発売の第6作ま
でで販売累計が4000万本を記録しているという人気ヴィデオ
ゲームを基にした3Dアニメーション作品。
因にこのゲームからは、2010年1月紹介の実写作品も作られ
ているが、今回はゲームを製作するバンダイナムコゲームス
が、ゲームの登場キャラクターをそのまま使ったCGIアニ
メーションの長編作品を製作し、公開するものだ。
物語の舞台は、ゲームの設定と同じく、巨大企業が政府に代
って国を支配している世界。その中でも京都を中心とする極
東の国は、若き当主の風間仁に率いられた三島財閥と、元の
財閥総師の息子三島一八の率いるGコーポレーションが覇権
を争っていた。
そして本作の主人公は、財閥が経営する教育機関・三島高専
に通うリン・シャオユウ。若くして中国拳法の達人でもある
彼女は、ある日のこと校長室に呼ばれ、同じ市内にある国際
高校に転校してそこに通う神谷真という生徒の身辺を調べる
ことを依頼される。
その依頼に以前は級友だった風間仁に接近する可能性を感じ
た彼女は、それを引き受ける。しかし転校したその日に彼女
は校舎の屋上から転落した神谷真を救助。さらに同じく神谷
への接近を図るアリサ・ボスコノビッチの協力を得て神谷の
身辺を調べ始めるが…
そこには、人類を究極の存在に進化させるM細胞の秘密が隠
されていた…。という物語の展開に沿ってゲームでもお馴染
みのウィアムズ姉妹や、風間、三島、リン、アリサらの格闘
技戦が描かれて行く。
以前の実写版は、風間の出自を描くプロローグは別にして、
作品のほとんどは財閥の後継者を決めるトーナメントの格闘
技戦に特化されていた。それに対して本作では、リン、アリ
サの学園生活や神谷真を巡る謎解きなども展開される。
それは脚本にテレビアニメ『東のエデン』などの佐藤大を起
用して、ゲームから多少離れることも了承された結果のよう
だ。ただ本作においてそれが奏功したかどうかは、多少疑問
に感じるところだった。
実際に、物語の展開においてアリサの目的などは明確でない
し、その他にも因果関係に不明なものが多く、物語を把握す
るのがなかなか難しかった。因に上記した物語はプレス資料
を参考にしたが、それでもよく判らない部分もある。
それと、最後の決戦の凡庸な日本アニメの悪癖のような展開
も、これはどうしたものかと思ってしまったところで、これ
はもはや『鉄拳』とも言えない。この辺はもう少し製作者側
でコントロールして欲しかった。

でもまあ、本作の見所はやはり格闘技アクションであって、
それが本作では3Dで再現されている。しかも本作の場合は
元々がCGIのキャラクターだから、背景も含めてその3D
は巧みに描かれていた。お話がゲームの設定ならこれで充分
だろう。

『ホームランが聞こえた夏』“글러브”
ろう学校に創設された野球部が、不祥事で球界を追われ掛け
ている元花形選手と共に韓国高校野球の頂点と言われる鳳凰
大旗大会に挑戦する姿を描いた実話に基づくドラマ。
キム・サンナムは数々の投手記録を持つスター選手だった。
しかし酒癖が悪く、飲酒による度重なる不祥事で懲戒審査会
に掛けられることになる。そこで彼の高校時代からの親友で
もあるマネージャーが、イメージアップの方策を考える。
それは、鳳凰大旗大会に出場する高校野球部の臨時コーチを
すること。ところがその高校はミッション系のろう学校で、
選手は20人足らずの生徒の中から選ばれた10人のみ、しかも
そのレヴェルは中学生以下だった。
しかしその学校には、中学野球で名選手として注目されたが
突発性難聴で聴力を失った生徒も在学していた。ただし彼は
2度と野球はしないと誓っていたが…。と書いてくれば後は
大体想像の付く通りの物語が展開される。
でもまあ、この種のお話は何度繰り返されても感動は呼ぶも
のだ。

監督は、2003年の大ヒット作『シルミド』や、昨年10月紹介
『黒く濁る村』などのカン・ウソク。
出演は『黒く濁る村』で青龍映画賞主演賞に輝いたチョン・
ジェヨン、2010年11月紹介『戦火の中へ』などのキム・ヘソ
ン、2008年8月紹介『ファン・ジニ』に出演のイ・ヒョヌ、
それにオーディションで選ばれたチャン・ギボムが天才投手
役に挑んでいる。
他に、『黒く濁る村』などのユソン、2006年9月紹介『とか
げの可愛い嘘』などのカン・シニル、2004年『マルチュク青
春通り』などのチョ・ジンウンらが脇を固める。
2010年5月に紹介したドキュメンタリーの『アイ・コンタク
ト』では、聴力障害者のサッカー選手が描かれていたが、野
球はサッカーと違って聴力障害自体が競技に影響することは
なく、従って聴力障害者のプロ野球選手も実在するそうだ。
とは言え、その苦労や精神的な負担などが計り知れないもの
であることは、上記のドキュメンタリーなどでも感じさせら
れたところだ。そんな聴力障害を持つ人たちの姿が野球とい
う競技を通して描かれている。
日本の高校野球の地方予選には、全国で4000校が参加してい
るそうだが、韓国の高校野球・鳳凰大旗大会に参加するのは
50校余り、これが登録されている韓国高校野球部の全てで、
大会には地方予選もないのだそうだ。
その一方でこれら野球部にはプロ予備軍の性格も強く、その
レヴェルは相当に高いとされている。その中にこのろう学校
の野球部も参加しているものだ。ただし2002年の参加以来、
大会では1勝もしていないのだそうで、現在はその1勝を目
指しているとのことだ。


『A(ロゴ)3D�供�
3月に1度紹介した昨夏の「浜崎あゆみコンサート」を記録
したLiveSpire作品が完成されて再度試写が行われた。
前回観たときは90分の上映時間だったが、完成された作品の
上映時間は約100分。それはエンディングロールにそこそこ
の時間が使われていたが、その他にも多分アンコール曲など
が数曲追加されていたようだ。他にも曲の順番が入れ替えら
れていた感じもする。
それで完成された作品を観ての感想だが、特に前回に指摘し
た後半の3D感が薄れる問題に関しては、2D撮影のカット
と、3D感が特に強い観客席の映像や舞台袖からの奥行感の
ある3D映像とをうまく編集することで、3D感が持続され
ている感じがした。
なお撮影には約20台のカメラが使用されたそうだが、画面に
写り込むカメラを観ているとその全部が3Dではなく、2D
のカメラも多数併用されている。そこでそれらが編集で組み
合わされているものだが、今回はその編集も巧みに行われて
いる感じがした。
この編集が前回と同じだとしたら、この記述は恥ずかしい限
りだが、この他にも蛍光色を強調するような色補正も施され
ているような感じで、全体的に3D感がクリアで心地よく観
られた感じがしたものだ。
なお前回は後半にCGIが追加されるのではないかと書いた
が、それはなかったようだ。しかし最後のバルーンの落下は
3D感もたっぷりで、これは前回も書いた通りCGIに匹敵
する迫力が感じられた。
また、浜崎らのパフォーマンスの凄さは前回も書いた通りだ
が、今回は恐らくアンコール曲が追加されたことで、浜崎ら
の達成感みたいなものが画面を通じて伝わって来る感じがし
た。それは感動にも繋がるものだった。

浜崎のファンでコンサートを実際に観に行った人には、その
ときの想いを再現してさらに細部まで観られる映像を堪能で
きるはずだ。またエンディングロールには、ファンのための
特別なプレゼントも施されていて、これは必見と言える。
そして特別ファンでない僕にもこれだけの感動を与えられる
のだから、これは優れた映像作品と言えそうだ。

『ドライブ・アングリー3D』“Drive Angry 3D”
ニコラス・ケイジの主演を得て、撮影から3Dで行われたア
クション作品。
物語は、ケイジ扮する主人公がヘヴィなアメ車で脱獄を敢行
するところから始まる。彼の目的はカルト集団に連れ去られ
た娘とその子供を救出すること。そして脱獄した主人公は、
極めて暴力的な手段を駆使してそのカルト集団の後を追い始
める。
さらに主人公は、浮気者のボーイフレンドに愛想を尽かした
ウエイトレスを巻き込んで追跡を続けるが、そこにカルト集
団からの反撃も開始される。そしてその後をFBIの身分証
を翳す1人の男が追跡していた。
という物語だが、実はこれが一筋縄では行かないもの。その
辺で観客の興味を引っ張りながら、カーアクションやパンチ
の応酬、それに銃撃戦に爆破などが、撮影から3Dで行われ
たスクリーンに描かれて行く。

アメリカの広告には‘Shot in 3D’と記載されており、実際
に撮影は、RedOneのディジタルカメラ2台を並列に設置して
行われているようだ。従って本作では、ナチュラルな3Dが
存分に楽しめるものだ。
共演は、6月紹介『ザ・ウォード』などのアンバー・ハード
と、テレビの『プリズン・ブレイク』でもFBI捜査官役を
演じていたウィリアム・フィクトナー。他に4月紹介『赤ず
きん』などのビリー・バーク、6月紹介『シャンハイ』など
のデイヴィッド・モースらが脇を固めている。
監督は、『スクリーム』シリーズなどの編集出身で、2009年
に“My Bloody Valentine”のリメイクを3Dで手掛けたパ
トリック・ルシエ。本作では、3Dも経験済みの監督が見事
な映像を繰り広げている。
巻頭のシーンではCGIを使ったかなりファンタスティック
な映像が展開され、それから後もケイジの作品らしい、観客
の期待を裏切らない物語が繰り広げられる。アクションも強
烈で一級のエンターテインメントと呼べる作品だ。
また、主人公が乗り回す1969年型ダッジ・チャージャーや、
1957年型シェヴィー、1964年型リヴィエラなど、画面に登場
するヴィンテージカーもアメ車ファンの注目を浴びそうだ。

『アザー・ガイズ』“The Other Guys”
NYPDの刑事部屋を舞台に、ハリウッド映画に登場するよ
うなマッチョな警官たちとは一味違う真面目?な警官たちの
姿を追ったウィル・フェレル、マーク・ウォルバーグ共演に
よるコメディ作品。
物語の開幕は、ドウェイン・ジョンスンとサミュエル・L・
ジャクスン扮するマッチョな刑事の大活躍。パトカーを何台
廃車にしても、突入した建物をどれだけ打っ壊しても、犯人
さえ逮捕すれば彼らの活躍は勲章もの。
その一方で、奴らのいい加減な報告書を清書するのはフェレ
ル扮するアレン刑事の仕事。彼も刑事だが、刑事部屋に閉じ
込もったまま、今までに拳銃を撃ったことも、犯人の追跡を
したこともない。
そんなアレン刑事と組むウォルバーグ扮するテリー刑事も、
実は過去に飛んでもない失敗をやらかしたことがあり…。
という言ってみれは2人のお荷物刑事が、アレンが見つけて
きた銃撃戦など起きそうもない建築法違反事件を調べようと
して、大きな山にぶち当ってしまう。それは国際金融も関わ
る大事件だった。

フェレルには、2007年10月に紹介した『俺たちフィギュアス
ケーター』なんて作品もあるが、同年1月紹介の『主人公は
僕だった』ではゴールデングローブ賞にもノミネートされた
コメディ俳優のベテラン。
一方、ウォルバーグはアクション俳優としての認知度が高い
が、2006年『デパーテッド』で念願のオスカーノミネートを
果たし、今年のアカデミー賞では自ら製作・主演した『ザ・
ファイター』が高評価を得た。そんな2人が本作では、見事
なコンビネーションを発揮している。
共演は、2010年12月紹介『バッド・ルーテナント』などのエ
ヴァ・メンデス。他に、2009年2月紹介『パニッシャー』な
どのレイ・スティーヴンスン、2008年『トロピック・サンダ
ー』などのスティーヴ・クーガン、それに、1989年版『バッ
トマン』などのマイクル・キートンらが脇を固めている。
共同脚本と監督は、『サタデー・ナイト・ライヴ』の出身で
フェレルと長年コンビを組んでいるアダム・マッケイ。
もう1人の脚本と製作総指揮を務めたクリス・ヘンチーは、
フェレル、マッケイと共同でプロダクションを設立している
が、その一方でウォルバーグ製作総指揮のテレビ番組を手掛
けており、その関係で本作の共演が実現したようだ。
アメリカのコメディは、最近は日本でもヒットしている作品
もあるようだが、正直なところはなかなか難しい。本作は金
融不正など日本でも通じる題材が取り上げられて、観れば間
違いなく面白いものだが、問題は日本の観客にそれを気付い
てもらえるかどうかだ。


『アジョシ』“아저씨”
2009年8月紹介『母なる証明』のウォンビン主演で、昨年の
韓国でNo.1ヒットを記録したヒューマンアクション作品。
街の片隅に建つ古びたビルの一室で質屋を営む男と、その隣
の部屋で母親と2人暮らしの少女。家族も恋人もなく質屋の
客以外に部屋を訪れる人間もいない孤独な男には、少女の存
在だけが心の灯火だった。
その少女の母親はクラブのダンサーだったが、麻薬の中毒も
あってのかつかつの生活は1人娘を構う余裕もなく、少女に
は小遣いも友達もない。そんな母親が問題を起こし、少女に
危機が迫ったとき、男は予想外の行動を開始する。
一方、その界隈には警察の麻薬捜査の網も被せられていた。
さらに物語には臓器の密売組織なども絡んで、緊迫の度を加
えて行く。果たして、男と少女に平穏な日々が訪れることは
あるのか…。

『母なる証明』のウォンビンは、母親の過保護の中に生きる
無垢で繊細な若者を好演していたが、本作で演じるのは一転
して、少女を守り抜くために行動する寡黙だが腕力もある男
性。その変身ぶりは見事なものだ。
しかし監督のイ・ジョンボムは、『母なる証明』の彼の演技
を観て出演をオファーしたとのことで、その目も確かなもの
と言える。そしてオファーを受けたウォンビンは、自らアク
ションも演じることを志願し、撮影の数ヶ月前からトレーニ
ングを積んだそうだ。
共演は、2000年生まれ、2009年『冬の小鳥』という作品で韓
国の俳優史上最年少でカンヌ国際映画祭に招待されたキム・
セロン。彼女が主人公に向かって言う最後の台詞は、映画史
の中でも最も心に残る台詞の一つと言えるかも知れない。
他に、舞台出身のキム・ヒウォン、2004年11月6日付「東京
国際映画祭」で紹介の『風のファイター』などに出ていたと
いうキム・ソンオ、2005年10月紹介『女は男の未来だ』など
に出演のキム・テフン。いずれも映画界では無名に近かった
3人の若手が本作でブレイクしたそうだ。
さらに5月紹介『チョン・ウチ』などのソン・ヨンチャン、
2008年3月紹介『闇の子供たち』などのタイ人俳優タナヨン
・ウォンタラクンらが脇を固めている。
映画全体に漂う緊迫感や壮大な爆破シーンなど、エンターテ
インメントとしてもハイレヴェルの作品。韓国での大ヒット
も頷ける。

『ムーランルージュの青春』
1931年から51年までの20年間、新宿東口に存在していた軽演
劇とレビューを興行する劇場「ムーランルージュ新宿座」の
開館80周年を記念して製作されたドキュメンタリー。
劇場は、浅草で「玉木座」支配人を務めていた佐々木千里が
個人で開館したもので、喜劇中心の浅草軽演劇とは一味違う
風刺性を織り込んだ演劇や魅惑的なレビューのダンスなどで
一世を風靡したと言われている。
その劇場の歴史を、本作ではまずは裏方の舞台監督や美術監
督などへのインタヴューから始めて、徐々に当時の人気スタ
ーたちの青春時代の思い出へと繋げて行く。そこには劇団員
同士の恋愛は御法度という決まりの中で、結婚のため退団す
るといった話も出てくるが、それがまた新たな旅立ちであっ
たりもしているものだ。
また当時は、劇団で人気を得た俳優の引き抜きなどもあった
が、それに対して支配人(マスターと呼ばれていた)佐々木
は、すべて成長の証として快く送り出していたという。そし
て次々に新しい才能も発掘されて行ったということだ。
そんな中から巣立っていった俳優・歌手の顔ぶれは、望月優
子、武智豊子、左卜全、有島一郎、由利徹、三崎千恵子、春
日八郎、市村俊幸、水谷八重子、千石規子、若水ヤエ子、楠
トシエ、森繁久彌、谷幹一。昭和の映画や放送界を支えた人
たちの名前が並ぶ。
さらに、初舞台当時には15歳そこそこでダンサーや歌手とし
て活躍し、新聞広告や商品ポスターのモデルにも起用される
など、元祖アイドルとも呼べる存在だった明日待子、小柳ナ
ナ子らの消息なども紹介され、特に90歳で健在の明日待子の
姿は感動ものと言える。
一方、当時の観客席には、菊池寛や斎藤茂吉、金田一京助、
さらに若き日の黒澤明や川島雄三らも足繁く通い、当時早稲
田大学の学生だった野末陳平は自ら画面に登場して思い出を
語ってくれる。
また作品には、当時の名作の再演シーンなども織り込まれて
往時が忍ばれる構成にもなっている。さらに出征を控えて観
客席を訪れた学徒のエピソードなどはかなり衝撃的なものが
再現されていた。
この劇場の名前を僕は、森繁久彌が戦後復員してすぐに所属
していた劇団ということで目にしていたものだが、実物を知
らなかった僕には大衆演劇の劇場の一つというぐらいの認識
しかなかった。しかしこの作品で文化の拠点として再認識し
たものだ。
戦時の劇場を描いた作品では、2006年9月『ヘンダーソン夫
人の贈り物』や2009年7月『幸せはシャンソニア劇場から』
なども紹介しているが、ドキュメンタリーではどうしても好
事家の関心に限られる。ここはぜひともドラマ化した作品も
期待したいものだ。
        *         *
 アメリカでは先週末にサンディエゴのComic-Conが開催さ
れたところだが、各紙にその報告が上がっていたので紹介し
ておこう。
 まず今年のハイライトは、大会に初参加したスティーヴン
・スピルバーグが“Jurassic Park 4”の構想を述べたこと
のようだ。
 因にこの発言は、第1作は製作に回ったピーター・ジャク
スンと共に出席した“The Adventures of Tintin”のパネル
の中で行われたのだが、実は数週間前からネット上には噂が
飛び交っていたそうで、それを本人が正式に認めたものだ。
なお発言によると、状況はストーリーと脚本家が決まって製
作に向けて動き出したところで、2、3年の内に公開したい
とのことだ。
 ただし今回のパネルは“Tintin”のアメリカ配給を担当す
るパラマウントが設定したものだが、シリーズの前3作を配
給したのはユニヴァーサル、また製作のドリームワークスは
現在はディズニーと契約しており、第4作の配給を何処が行
うのか、気になるところだ。
 もう1人、注目の発言者は、ロベルト・ロドリゲス監督が
“Heavy Metal”の映画化権を獲得、新作アニメーションの
製作に向けて動き出したとのことだ。
 この企画に関しては、2008年9月15日付第167回などでも
紹介したが、結局その計画は実現しなかったようで、今回は
雑誌と新たな契約が結ばれたものだ。因に発表は、以前の計
画にも登場した現雑誌オーナーのケヴィン・イーストマンと
共に行われていた。
 後は、昨年5月30日付で紹介の“Pacific Rim”がギレル
モ・デル・トロ監督を得て大々的なプロモーションを行った
とのことで、まだ撮影開始前だが期待が高まったようだ。



2011年07月24日(日) カーズ2、さすらいの女神、ハートブレイカー、東京人間喜劇、レジェンド・オブ・フィスト、イースターラビット、ランゴ+Man of Steel

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『カーズ2』“Cars 2”
2006年6月紹介『カーズ』の続編。前作は1995年『トイ・ス
トーリー』から10周年の記念作品とされていたものだが、本
作は1986年の短編作品『ルクソーJr.』でピクサーが始動し
てから25周年の記念作品だそうだ。
因に、本作の他には『トイ・ストーリー』『同2』の監督で
もあるジョン・ラセターは、『同3』の監督はしておらず、
本作は2006年の前作以来の長編監督となる。またその間には
2008年『東京レース』など関連の短編9本を手掛けているも
ので、相当のご執心のようだ。
その長編第2作の物語の開幕は、北太平洋の荒波に揉まれる
海上掘削基地。その基地に潜入したイギリスの諜報員フィン
は何やら陰謀の進んでいることは目撃するが、その証拠を掴
む前に発見され退却を余儀なくされる。
一方、カップ戦で4連覇を果たしたマックイーンは、休暇で
今や心の故郷になったルート66沿いの田舎町に帰ってくる。
しかしそこで新たなワールドレースの開催を知ると、イタリ
アのレーサーの挑発にも乗って参加を決め、そこにメーター
たちも連れて行くと約束する。
こうしてレース第1戦の開催地東京にやってきたマックイー
ンたちだったが、何もかも眩しい都会に来たメーターは田舎
もの丸出して失敗ばかり。しかもそこにはスパイも暗躍し、
ある偶然からメーターがその暗闘に巻き込まれてしまう。
ところがメーターは、持前の部品の知識からフィンや助手の
ホリーの信頼も得ることに。しかし親友のマックイーンから
はレース中の失敗を追求され、傷心のメーターは帰国を決意
するが…。
前作は、僕の個人的なルート66への想いなどもあって、その
ノスタルジックな雰囲気が好きだった。しかし本作は、その
開幕からスパイアクションの様相で、それはかなり雰囲気の
違うものになっている。
ただしそこに繰り出されるギミックなどには、キャラクター
が自動車ならではのものもいろいろあって、その辺はメカ好
きにはニヤリとするところもあった。それに展開されるアク
ションも自動車らしく考えられたものだ。
個人的には、前作の味わいが多少削がれたのは残念なところ
もあるが、多分普通の日本人の観客にはこの方が判りやすい
だろう。それに何より本作は日本への愛を込めて作られてい
るそうで、その気持ちはよく伝わってきた。

声優は、前作に続いてのオーウェン・ウィルスン、ラリー・
ザ・ケーブルガイ、ボニー・ハント。さらに本作では、マイ
クル・ケインとエミリー・モーティマーがイギリス諜報員の
役で新たに登場している。
因に、日本語の吹き替えも前作と同じくメーター役の山口智
充らが担当するようだ。また本作では、日本の女性ユニット
=パフュームの楽曲が本編の挿入歌として使用されているの
も話題になっている。
なお本作の上映時間は1時間46分だが、公開時は『トイ・ス
トーリー3』の後日談になる短編作品『ハワイアン・バケー
ション』“Hawaiian Vacation”(上映時間6分)が併映さ
れる。これも機智に富んだ秀作だ。

『さすらいの女神たち』“Tournée”
昨年のカンヌ国際映画祭で脚本・主演も務めたマチュー・ア
マルリックが最優秀監督賞を受賞した作品。因にアマルリッ
クは、2007年11月紹介『潜水服は蝶の夢を見る』に主演して
セザール賞を獲得した俳優でもある。
そのアマルリックが描くのは、「ニュー・バーレスク」と称
されるストリップ・ダンサーたちの物語。そして彼が演じる
主人公は、以前はフランスのテレビ界に居たようだが、トラ
ブルで親友や家族も捨ててアメリカに渡った男。
その主人公は彼の地で「ニュー・バーレスク」のショウに魅
了され、彼女たちを引き連れてフランスに凱旋する。しかし
彼が興行を仕掛けられるのは海岸線の湊町ばかり。それでも
ショウは成功を納め続けるが、肝心のパリ進出には彼の過去
が邪魔をする。
そんな主人公の焦燥やダンサーたちとの交流の物語が、謎め
いた彼の過去を徐々に明かしながら展開されて行く。

アマルリック以外の出演は、実際に「ニュー・バーレスク」
のショウダンサーとして活躍している女性たちだそうで、今
までにはショウを題材にしたドキュメンタリーなどへの登場
はあるものの、劇映画には初出演という人たちだそうだ。
しかしアマルリック自身が、自分が初めて映画を出演したと
きの経験に踏まえて「映画は演劇と違い、経験が無くても、
監督に愛があれば映画俳優にすることができる」という考え
で、彼女たちから素晴らしい演技を引き出している。
そして映画に登場するショウのシーンは、すべて彼女たちが
自らの演出で普段から演じているものだそうで、その中には
大型の風船を使ったものや、ちょっと怪奇なものなどヴァラ
エティに富んだショウが描かれていた。
他に映画には、2007年2月紹介『恋愛睡眠のすすめ』などの
オレリア・プティ、映画監督のダミアン・オドゥール、映画
批評家のアンドレ・S・ラバルト、2002年12月紹介『銀幕の
メモワール』などの監督のピエール・グランブラ。
さらに3月紹介『黄色い星の子供たち』に出演のアンヌ・ブ
ノア、次に紹介する『ハートブレイカー』ではトップ共演者
のジュリー・フェリエらが出演している。
また本作は、ルアーブル、ナント、サン=ナゼール、ラ・ロ
ッシェル、そしてオレロン島などのフランスの海岸線を巡る
ロード・ムーヴィにもなっている。

『ハートブレイカー』“L'arnacoeur”
リュック・ベッソン監督の許で1999年『ジャンヌ・ダルク』
の第2班監督なども務めたパスカル・ショメイユ監督による
長編デビュー作。6月18日付紹介「フランス映画祭2011」で
も上映されたが、今秋からの一般公開に向けた試写が行われ
た。
物語は、題名の通りに女性のハートを打ち砕くもの。それは
結婚が女性に不幸をもたらすと考えられた時に家族や親友の
依頼によって実行される。そして主人公は対象の女性に接近
し、彼女に真実の愛を教えることで誤った結婚を阻止すると
いうのだが…
それはまあ、恋は盲目とも言うから、世間には見た目だけで
誤った結婚をしてしまう女性はいるのだろう。そこで主人公
が、取り敢えずその目の曇りを取り除いて、彼女を真の愛に
目覚めさせることは、それなりに意味があることかも知れな
い。
しかも、その主人公が対象女性に接近する手段ときたら…。
この辺は、映画史的にも優れた恋愛映画を数多く生み出して
きたフランス映画ならではの作品、とも言えそうだ。さらに
そこにはハリウッド的な要素も少し加えられていた。
そして今回の依頼は、父親からの妻の死後に疎遠になった娘
の結婚を阻止して欲しいというもの。それは大金持ちの男性
の玉の輿に乗るもので、それ自体には問題が無いように見え
る。しかも対象の女性は、母親の死後は独力で生活して独立
心も強かった。
その上、結婚式までの期限は1週間、それまでに主人公は彼
女の心を射止めることができるのか。この難題に立ち向かう
主人公だったが、彼には他にもその仕事を成功させなければ
ならない理由があった。

出演は、2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』などのロマ
ン・デュリス、シリアスな作品の多い俳優のロマンティック
・コメディ初挑戦だそうだ。相手役は、歌手/女優でジョニ
ー・デップの実生活のパートナーとしても知られるヴァネッ
サ・パラディ。
他には、2007年12月紹介『Mr.ビーン/カンヌで大迷惑?!』
や『さすらいの女神たち』にも出演のジュリー・フェリエ、
2008年11月紹介『その男ヴァン・ダム』などのフランソワ・
ダミアンらが共演している。
さらに映画には、2005年5月紹介『ダンシング・ハバナ』の
基になった1987年“Dirty Dancing”がフィーチャーされ、
デュリス、パラディのダンスシーンも観られる。


『東京人間喜劇』
昨年の東京国際映画祭で『歓待』という作品により「日本映
画・ある視点部門」の作品賞を受賞した深田晃司監督が、そ
の前の2009年に発表した作品。『歓待』と同様の劇団・青年
団のユニット出演によって制作されている。
物語は、それぞれ「白猫」「写真」「右腕」と題された主人
公の異なる3つのパートからなっているが、それぞれの登場
人物が相互に物語に絡んで、アンサンブル劇でもないし、オ
ムニバスでもない一種独特の世界が構築されている。
「白猫」では、パフォーマーの公演を切っ掛けに面識を持っ
た同棲中と別居中の2人の女性、それに別居中の女性の新た
な恋人がそれぞれの恋愛感などを語り合うストーリーに、そ
れぞれの会話とは裏腹な真実が描かれて行く。
「写真」では、ギャラリーで初めての個展を開いた女性写真
家の姿が描かれるが、まあ何と言うか痛い話が展開される。
そしてそのギャラリーのオーナーが別居中の女性の夫で、そ
の展開はさらに次の章にも繋がって行く。
「右腕」は、交通事故で右腕を失った男性が、無いはずの右
手の感覚や特にそれが引き起こす痛みによって悩まされると
いうお話。3話の中では多少ファンタスティックな部分もあ
るお話で、個人的には一番興味を引かれた。
実は、『歓待』を観たときにも登場人物の中に悪魔的な感触
を持つキャラクターがいて、その辺の感覚はこの監督に期待
したい部分だった。しかし『歓待』でも本作でも、敢えてそ
の部分に深入りしないようにしている感じがあって、それが
不満にも感じられる。
それが特に『歓待』では、折角ここまで描いたのに勿体無い
感じがして、映画祭での受賞も納得できなかった。恐らく監
督は、真面目且つ科学的に物語を展開したいのだろうが、も
っとオープンな物語にしてしまってもいいのではないかな。
僕個人としてはその方が楽しめる感じがした。

何れにしても、次の作品ができたらまた観てみたい監督であ
ることは確かだ。
なお本作は、製作当時に劇団の自主企画として限定公開され
たものが、北米での公開の決定した『歓待』の凱旋興行に併
せて一般公開されるものだ。

『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』
                  “精武風雲・陳真”
ブルース・リーが1971年『ドラゴン怒りの鉄拳』(精武門)で
創造した架空の武術家・陳真のその後を描いた作品。その役
に昨年11月紹介『イップ・マン』でリーの師匠・葉門を演じ
て香港電影金像奨に輝いたドニー・イェンが挑戦した。
リーのオリジナルでは、陳真は最後の戦いの後に死んだとさ
れているが、本作ではそこは生き延び、さらに第1次世界大
戦の欧州戦線に赴き雑役兵として中国人の仲間と共に戦い、
帰国したという設定になっている。
因に第1次大戦の当時、イギリス・フランスなどの列強が第
3世界の労働者を徴兵して前線に送り込み、そこに多くの中
国人が居たというのは、歴史から抹殺された事実だそうだ。
そして物語は、陳真が戦場で銃弾に倒れた仲間の名を名乗る
ところから始まる。
その陳真が帰国した中国は、連合国の一員としての戦勝国で
あったにも関わらず、青島を日本に奪われるなど恩恵を受け
ることもなく、さらに上海には連合国の共同祖界やフランス
祖界など治外法権の地区が設けられ、中国人の生活は圧迫さ
れ続けていた。
そんな中で地下抵抗組織に身を投じた陳真は、キャバレーを
経営する中国人の顔役に接近し、その顔役を抵抗組織に組み
入れる画策を進めるが…。日本軍人や西欧の官僚も来店する
その店には、美貌の歌姫や中国東北軍の将軍の愛人なども出
入りしていた。
一方、地下組織の抵抗に手を焼いた日本軍部は、抵抗組織に
関わる人物の処刑リストを公開し、その抹殺を開始する。そ
こには仮面の武術家が救世主のごとく登場するが、それはか
つて陳真が倒した日本人道場主の疑惑を呼ぶことになる。

共演は、2006年9月紹介『百年恋歌』などのスー・チー、他
に2005年6月紹介『頭文字D』などのアンソニー・ウォン、
同じく『頭文字D』などのショーン・ユー、2007年6月紹介
『クレージーストーン』などのホアン・ボー。
これに対する日本人の役では、20092月紹介『GOEMON』など
の木幡竜、大ベテランの倉田保昭、それにEXILEのAKIRAらが
出演している。
監督は、『インファナル・アフェア』などのアンドリュー・
ラウ。またアクション監督はイェンが担当しているが、撮影
監督出身のラウはそのアクションシーンの撮影を担当して、
2人でそれらのシーン作り上げたそうだ。
なお劇中に登場する仮面の武術家がリーの演じた『グリーン
・ホーネット』のキャラクターにそっくりなど、さまざまな
オマージュも捧げられている。


『イースターラビットのキャンディ工場』“Hop”
アメリカでは今年4月1日に公開されて2週連続の第1位、
最終の興行収入が1億ドルを突破したという、実写とCGI
アニメーション合成のお子様向けファンタシー。
その若者は幼い頃のイースターの夜に、イースターラビット
がキャンディを配りにくるのを目撃していた。それから20年
後、そんな若者=フレッドは大きくなっても夢見がちに自分
が本当にやりたいことを探していた。
一方、モアイ像の並ぶ絶海の孤島の地下では、イースターラ
ビットのキャンディ工場がフル稼動でイースターの夜に配る
キャンディを製造中。その工場を代々受け継いできたイース
ターラビットは、そろそろ仕事を息子に継がせようと考えて
いた。
ところが、実はミュージシャンを夢見る息子=イービーには
父親の期待が重荷だった。そしてイースターを2週間後に控
えたその日、イービーはついに夢を叶える町=ハリウッドに
向かって島を飛び出す。
しかし彼の目論見はあっという間に外れ、街をふらふらして
いたイービーはフレッドの運転する車に跳ねられてしまう。
こうして共に夢に生きようとしているイービーとフレッドの
人生が交錯することになるが…。
これにキャンディ工場の奪取を目論む労働者=ヒヨコのリー
ダーの謀略や、イースターラビットが息子捜索のために派遣
したピンクべレーと称する特殊部隊の活躍などを絡めて、物
語は展開される。

出演は、フレッド役に2008年1月紹介『魔法にかけられて』
で王子役を演じていたジェームズ・マースデン、また日本で
は吹き替えになるがオリジナルのヴォイスキャストでは、イ
ービー役を5月紹介『テンペスト』に出演のラッセル・ブラ
ンドが担当している。
さらに2005年5月15日付で紹介した“Baywatch”などのデイ
ヴィッド・ハッセルホフが、物語のキーとなる本人の役で出
演。因にハッセルホフは、電脳カーが活躍する人気シリーズ
“Knight Rider”でも有名なテレビ俳優だ。
製作は、昨年大ヒットした『怪盗グルーの月泥棒』などのク
リス・メレダンドリ、脚本も同じく『怪盗グルー…』のシン
コ・ポールとケン・ダウリオ、そして監督は、2007年『アル
ビン/歌うシマリス3兄弟』などのティム・ヒルが担当して
いる。
なおイースター島にイースターラビットのキャンディ工場と
いうのは、順番が逆だと突っ込まれそうだが、この島が最初
に写るシーンにはわざわざ‘Rapa Nui,Chile’という英語の
表記が付けられており、確信犯のようだ。


『ランゴ』“Rango”
『パイレーツ・オブ・カリビアン(POTC)』の最初の3部作
を手掛けたゴア・ヴァービンスキー監督と、主演のジョニー
・デップが再び組んだ作品。なお本作はアニメーションで、
カメレオン俳優とも呼ばれるデップが、カメレオンの役を演
じている。
主人公はペットだったカメレオン。狭い水槽の中で広い世界
を夢見ていたカメレオンが、ふとした偶然から外界に投げ出
される。そこは灼熱の砂漠を横断するハイウェイの道端だっ
た。そして1日歩けば町に着くと教えられ、砂漠をとぼとぼ
歩き始めるが…
天敵に襲われながらも雌カメレオンの助けもあって漸く辿り
着いた町。しかしそこは寂れかけ、どこか殺伐としていた。
その町では以前は豊富だった水が枯れ、町民の多くは牧場の
土地を町長に売って町を去り始めていたのだ。
そんな町の酒場に立ち寄った主人公は、水槽の中で夢想して
いたヒーローになり切り、口から出任せの英雄譚を語り始め
る。ところが嘘から出た真が起きて主人公は保安官に祭り上
げられてしまう。その最初の仕事は町の銀行から盗まれた水
の捜索だった。
そんな口先だけの主人公の前には思わぬ冒険が待ち構えてい
た。果たして主人公は口先だけでない本当の自分を見つける
ことができるのか?

共演は、2009年3月紹介『お買いもの中毒な私!』などのア
イラ・フィッシャー。
他に、昨年5月紹介『ゾンビランド』などのアビゲイル・ブ
レスリン、『スパイダーマン2』などのアルフレッド・モリ
ナ、『ニューヨーク1997』などのハリー・ディーン・ス
タントン、『POTC』などのビル・ナイ。
さらに、『こわれゆく世界の中で』などのレイ・ウィンスト
ン、『ピッチ・ブラック』などのクローディア・ブラック、
『アイ・アム・ナンバー4』などのティモシー・オリファン
ト、『ノー・カントリー』などのスティーヴン・ルートらが
登場している。
因に、本作はアニメーションなので本来出演者はヴォイスキ
ャストとなるものだが、本作ではヴァービンスキー監督が出
演者に演技をしながらの録音を求め、その様子を撮影してア
ニメーションの基にしたとのこと。
これはいわゆるモーション・キャプチャーとは異なるものだ
が、アニメーションには出演者の演技も取り入れられている
ということで、監督はエモーション・キャプチャーと称して
いるようだ。
作品の全体は、アニメーション作品らしく子供も楽しめるも
のになっているが、映画の出だしはかなりシュールで、その
後の主人公の行動にはかなり大人向けの捻りもあり、子供だ
けでなく大人にも充分楽しめる作品になっている。
また本作の題名は、1966年『続・荒野の用心棒』の主人公ジ
ャンゴの捩りだが、さらに劇中では、マカロニウェスタンを
思わせるハンス・ジマーの音楽と、1995年『デスペラード』
などでもお馴染みのマリアッチ楽団=ロス・ロボスによる挿
入歌も心地良く楽しめた。
        *         *
 ワーナーで進められている『スーパーマン』のreboot作品
“Man of Steel”の全米公開日が、2013年6月13日と正式に
発表された。因にこの計画では、当初の公開は2012年12月と
されていたが、その際に日付までは発表されていなかったも
ので、諸般の状況を判断して2013年夏の公開と決まったもの
だ。
 監督は、『300』などのザック・スナイダー。出演は、
スーパーマン役にイギリス人俳優のヘンリー・ケイヴィル。
他にエイミー・アダムス、ラッセル・クロウ、ジュリア・オ
ーモンド、ケヴィン・コスナー、ダイアン・レイン、そして
敵役にマイクル・シャノンらの共演が発表されている。
 脚本は、クリストファー・ノーランとデイヴィッド・ゴイ
ヤーのアイデアからゴイヤーが執筆したもので、撮影は今年
の夏にシカゴで行われることになっているが、物語の詳しい
内容は厳秘にされているとのことだ。
 なお、発表された公開日の翌週21日には、ディズニーから
『モンスターズ・インク』の2人が再び活躍する“Monsters
University”、さらに翌々週の28日には、ユニヴァーサルか
らコミックス原作の“R.I.P.D.”という作品がそれぞれ全米
公開の予定になっているそうだ。



2011年07月17日(日) ジョン・レノンNY、天国からのエール、トランスフォーマーズ/DSM、こち亀、ピラニア、一命、この愛のために撃て+Akira/Godzilla

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ジョン・レノン、ニューヨーク』“LennonNYC”
ビートルズを解散したレノンが、1971年9月から1980年12月
までの間をオノ・ヨーコと共にニューヨークで暮らした日々
を綴ったドキュメンタリー。
同時期のレノンを描いたドキュメンタリーでは、2007年10月
に『PEACE BED』“The U.S. vs. John Lennon”を紹介して
いるが、政治的に尖った感じの先の作品に比べると、本作の
レノンはもっと柔らかく繊細で、人間ジョン・レノンが描か
れている感じだ。なおどちらの作品も、オノ・ヨーコの全面
協力によって制作されている。
それはレノンがニューヨークに移り住むに至った理由から、
先の作品にも描かれたニクソン政権との対立、さらに「ロス
ト・ウィークエンド」と呼ばれるヨーコとの別居生活の様子
や音楽活動への復帰など、様々な要素が描かれている。
そしてそこには、スタジオでの収録の合間に記録されたout
takeとされる音声で、いろいろなレノンの生の発言が重ねら
れ、正にレノンの真の姿が描き出されている。因に巻頭の音
声は、日本の観客向けのサーヴィスかとも思ってしまうよう
なものだ。
1980年12月の出来事は僕の世代の人間には真に衝撃的なもの
だった。しかし僕自身にとってのレノンは、ビートルズ解散
以後は正直には過去の人の感じだった。そのレノンがその時
代に如何に苦しみ、そして復活のツアーが如何に期待されて
いたか、そんなレノンの想いがひしひしと伝わってくる。そ
れが僕には衝撃でもあった。
アーカイブのレノン以外の出演者は、オノ・ヨーコ、エルト
ン・ジョン、他にスタジオ・エンジニアのロイ・シカラ、写
真家のボブ・グルーエン、映像作家のジョナス・メカス、詩
人のジョン・シンクレアらが登場する。その顔ぶれが前作と
微妙に異なるのも面白いところだ。
またグルーエンの写真の中には、リンゴ・スターやポール・
マッカートニーがビートルズの解散後もレノンの許を訪ねて
親交している様子も写され、それは嬉しいものだった。

製作、脚本、監督は、1996年に“The Battle Over Citizen
Kane”という作品でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門
にノミネートされたドキュメンタリストのマイクル・エプス
タインが手掛けている。

『天国からのエール』
沖縄県本部町に私費で音楽スタジオを建設、2001年コザ音楽
祭で市長賞受賞の「あじさい」から2008年メジャーデビュー
の「ステレオポニー」まで数々のバンドを輩出して、2009年
11月に42歳で他界した仲宗根陽氏の半生を描いたドラマ。
高校を中退後、東京に出て始めた仕事は成功させたものの、
家族の都合で故郷の本部町に戻ってきた仲宗根氏(映画では
大城陽)は本部高校の裏門の近くで弁当屋を開き、そこには
高校の生徒たちも昼食の購入に訪れていた。
そんな生徒たちの中で「バンドの練習をしたいが防音された
場所がない」という声を耳にした大城は、突然裏庭の草を刈
り始め、借金もしながら手作りのスタジオを建ててしまう。
それにはミュージシャンを目指し夭折した親友への想いも込
められていた。
そして無料で開放されたスタジオには若者たちが集まり、バ
ンドの練習が始まる。そんな若者たちを大城は、挨拶の仕方
から熱血指導し、さらに彼らの音楽を放送局にも売り込んで
行く。しかしその陰で病魔は彼の身体を蝕んでいた。
実際のお話では、スタジオの開設から最初のグループがデビ
ューするまで3年ほどあるようだが、映画ではその辺を集約
して一気呵成の物語に仕上げている。それはまあちょっと駆
け足な感じはするが、実際3年で実績を挙げたのだから、こ
れもよしと言う範囲かな。
それよりも、最初のバンド結成までの経緯や主人公の親友へ
の想いなども要領よく纏めた脚本を誉めるべきだろう。その
脚本は、2003年『g@me』などの尾崎将也と、テレビアニ
メ『クレヨンしんちゃん』などを手掛けるうえのきみこが担
当している。

監督は、金子修介、市川崑、犬童一心作品などの助監督出身
で、本作が劇場映画デビューの熊澤誓人。
出演は、阿部寛、ミムラ、桜庭ななみ、矢野聖人、森崎ウィ
ン、野村周平。他には、主に沖縄の俳優が脇を固めている。
また主題歌を「ステレオポニー」が担当している。
なお、映画の企画は仲宗根氏が存命中にスタートしたそうだ
が、氏はそのクランクインを見ずに他界。そして撮影は昨年
の10月、実在の人物が亡くなってから1年も経たない内に、
その人が実際に活動した場所で行われたそうだ。

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』
          “Transformers: Dark of the Moon”
先月、特別映像の報告をしたCGIアクション作品の全編の
試写が行われた。
それでまあ書きたいことはいろいろあるけれど、取り敢えず
1960年代末のその時のことを記憶している者としてはニヤニ
ヤというか、微妙なところもいろいろあって、それは面白く
も観られたところだ。
そこには前回も書いた日本国民とアメリカ国民の違いによる
ところも出てきそうだが、例えば邦題と原題の微妙な違いも
面白く思える。実際に「ダークサイド」という言葉は英語の
台詞にも出ていたが、その現実との違いも面白かった。
さらに当時の映像が途切れる展開では、実際に登場するアー
カイブ映像との意味の違いも、判る人には面白いものだ。そ
こには怒る人も居るかも知れないが、その辺は本作はフィク
ションなのだということで了解したい。
そんなこんなで、特にプロローグの展開には、僕はニヤニヤ
し通しだった。何れにしてもいろいろ登場するアーカイブの
映像は、僕には懐かしさもあって楽しめた。そしてその「事
実」のすべてが隠されていたというのが、本作の背景の物語
となる。
こうして物語は現代となるのだが、そこからはまあCGI=
VFXを満載したアクションの連続で、ここは文句なく楽し
みたいものだ。特に本作ではそれが3Dで展開され、そのリ
アルさというか迫力もなまじではなかった。
物語の中心は、過去2度の戦いで大活躍して人類を救った主
人公とオートボットたちだが、その後のオートボットたちは
アメリカ政府の秘密部隊として全世界で活躍するのに対し、
人間の主人公はオバマ大統領から勲章を貰っただけ。
そして社会人となった主人公は、新しい恋人もでき、まずは
就活に専念していたのだが、そこに再びディセプティコンの
脅威が訪れる。ところがそれを政府に知らせようとした主人
公は門前払いされてしまう。そこには政府が40年間ひた隠し
にして来た事実があった。
こうして地球人類は、絶対的な強さを獲得した新たなディセ
プティコンの脅威に晒されることになるが…

出演者と監督、脚本については前回紹介した通りだが、他に
トランスフォーマーのヴォイスキャストとして、前作からの
ヒューゴ・ウィーヴィングと、新たにレナード・ニモイが登
場するのもファンには嬉しいところだ。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所THE MOVIE
               /勝どき橋を封鎖せよ!』
1976年から35年に亙って連載(継続中)され、ギネスにも登
録されている秋元治原作コミックスの映画化。因に本作は、
2009年にTBS系列で放送されたドラマの映画化でもあり、
主演の香取慎吾以下のキャストがテレビと同様に出演してい
る。
僕は原作は数回目にした程度だし、テレビドラマも観ていな
い。でも内容は大体想像できたし、一般的に日本映画はこの
手のギャグコメディをバランス良く撮るのが下手だから、余
り期待はしていなかった。
ところが映画を観ていて、これが実に上手く填められてしま
ったものだ。
物語は、亀有公園前派出所に勤務する両津勘吉巡査の非日常
的な日常を描いたもの。そこに両津の幼い頃の思い出が重ね
られ、その初恋の女性との思わぬ再会やそこから募る想いな
どが描かれて行く。
そして副題の通りの勝どき橋を舞台にした大事件が勃発する
ことになるのだが…。その事件の顛末や警察側の対応、それ
に犯人の動きや動機などが巧みに描かれていて、有り得ない
話ではあっても有ってもいいような、そんな納得のできる物
語になっていた。
しかもその最後を締め括るのが、VFXではない特撮による
大スペクタクル。それはアホみたいに大袈裟なものではない
が、この作品にピッタリのリアルさで、刮目に値するものだ
った。それに加えたもう一押しも、それは完璧に決まったも
のだ。
実は、僕は本作の試写を築地の松竹本社で観て、その後に月
島に在る試写室まで徒歩で向かったのだが、その間の勝どき
橋を渡るときには、子供の頃に橋を観に来た時の思い出や映
画の結末に想いを馳せた。僕のようなメカ好き男子には夢の
ような作品とも言える。

共演は、伊武雅刀、香里奈、速水もこみち、ラサール石井、
柴田理恵らテレビの出演陣に加えて、深田恭子、谷原章介、
沢村一樹、夏八木勲、平田満らがゲスト出演している。
脚本は、プレス資料には『JIN-仁-』などの森下圭子が代表
で記載されていたが、映画のエンドロールでは3人の連名に
なっており、他に脚本協力という項目でも数名が挙がってい
た。それがどういう経緯かは判らないが、脚本は相当に練ら
れたようだ。
監督の川村泰祐は、テレビ出身で劇場映画は本作が2作目だ
そうだが、プロローグのドタバタや途中に挿入される大衆演
劇の舞台面など、ギャグとシリアスのバランス感覚も良く、
全体的に丁寧に演出されている感じがした。
また、クライマックスシーンの撮影は東宝スタジオで行われ
たそうだが、砧の大プールは無くなっても、その技術はしっ
かりと継承されているようだ。
因に本作の副題は、フジテレビ製作大ヒット作品のパクリで
あることは明らかだが、実はそのフジ作品でも、撮影のため
に橋を封鎖することは認められなかった。そのことが本作で
さりげなく描かれている辺りは、ニヤリとしたものだ。

なお、本作はシリーズ化も計画されているようだが、思えば
松竹の大長寿シリーズ『男はつらいよ』も元はテレビドラマ
があったもの。そして本作は、新シリーズの開幕に相応しい
作品とも言えそうだ。

『ピラニア3D』“Piranha”
1978年公開ジョー・ダンテ監督の第1作、及び1981年公開の
ジェームズ・キャメロン監督による第2作に続く肉食魚ピラ
ニアの群れが巻き起こす恐怖・パニックを描いた作品。
前作から30年も経っているからシリーズと言うよりはreboot
と呼ばれるものだが、今回はその作品に、2006年6月に紹介
した『ハイテンション』などのフランスの新鋭アレクサンド
ル・アジャ監督が3Dで挑んだ。
物語の舞台は、湖畔にリゾート地の広がる湖。その湖で地震
が起き、湖の中央では渦が発生して近くに居た小型ボートが
引き込まれそうになる。その後そのボートは湖畔で発見され
るが、乗っていた人の姿はなかった。
一方、夏のリゾート地では若者たちによる乱痴気騒ぎが繰り
広げられ、そこにはセクシーヴィデオの撮影隊も乗り込んで
くる。そして本作の主人公である女性保安官の息子が、その
撮影隊の案内人に雇われることになるが…
さらに地震の調査にやってきた研究者たちをボートで案内し
ていた女性保安官は、そこで驚愕の事実を知ることになる。
それは200万年前に地底湖に閉じ込められた凶悪なピラニア
の群れが、地震で生じた割れ目を通って湖に出現したという
ことだった。
そしてそのピラニアの群れが、湖にいた行楽客や撮影隊、さ
らに湖畔で乱痴気騒ぎを繰り広げる若者たちに襲いかかる。
30年前の作品でピラニアは軍が開発した秘密兵器という設定
だったが、今回は地震で太古のピラニアが復活したというも
の。そのピラニアが200万年間も生き延びた理由付けは多少
いい加減だったが、この変更は軍事よりエコロジーの時代の
反映かな。
ただしその凶悪ぶりは昔の作品と変わりないところで、しか
も今回はそれが3Dで描かれているものだ。

出演は、女性保安官役に2006年3月紹介『夢駆ける馬ドリー
マー』などのエリザベス・シュー、その息子にスティーヴ・
マックイーンの孫のスティーヴン・R・マックイーン、他に
2004年8月紹介『トルク』などのアダム・スコット、2009年
11月紹介『サロゲート』などのヴィング・レイム。
さらに、前回紹介『ラスト・エクソシズム』では製作を手掛
けていたイーライ・ロス、『BTTF』のクリストファー・
ロイド、『ジョーズ』のリチャード・ドレイファス、『スク
リーム』のジェリー・オコンネルらが脇を固めている。
因に本作では、2008年2月紹介『フィースト』などのジョン
・ギャラガー監督による続編がすでに撮影中となっており、
それにはヴィング・レイムとクリストファー・ロイドも出演
しているようだ。

なお、本作はかなりセクシャルな描写も多い作品だが、日本
のレーティングではぎりぎりR15+がクリアできたそうで、
高校生でも観られることになっている。

『一命』
1962年カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した小林正樹
監督作品『切腹』としても映画化された滝口康彦原作「異聞
浪人記」の再映画化。今回はそれを三池崇史監督が3Dで演
出し、本作もカンヌ映画祭のコンペティション部門に出品さ
れた。
物語の背景は17世紀の江戸。戦国の世が終り、平和が訪れた
かに見える徳川の治世。しかしその裏では、徳川幕府による
諸国大名の御家取り潰しが相次ぎ、巷には禄を持たない浪人
が溢れていた。
そんな浪人らしき1人の初老の男が井伊家の門口に現れる。
男はその用件として、当家の門前を借りて名誉の切腹をした
いと申し述べるが、それはその時代に禄の無い浪人たちが、
名家に金銭をたかる目的で行う狂言切腹と見られた。
そこで井伊家の家老は、以前にも同様の申し出をした若者の
顛末を語り、男に無駄なことはするなと諭すが、男は前言を
翻さない。そのため家老は狂言切腹は通用せぬとの見せしめ
に、敢えて切腹を了承するのだが…。その切腹の場で、男は
意外な事実を語り始める。
戦乱が終って平和の日々が訪れた江戸時代の初期。庶民の暮
らしは安定してきていても、それまでが君主の下でただ戦う
だけだった侍たちには、何をして良いかも判らなかったよう
だ。しかも君主が御家取り潰しにでもなろうことなら…
物語は原作のものだから、通常その評価は控えるが、封建制
度の下での意外な落とし穴が見事に描かれた物語と言える。
そして今回の映画化では、3Dによってその当時の下級武士
の暮らしぶりが見事に描き出された。
正直に言って、三池監督の作品は今まで当り外れが多いと感
じていたし、実際に毎年複数の作品を発表し続ける監督など
余り信用はしていなかった。しかし本作に限って言えば当り
の作品だと言えるし、3Dに関してもこれは見事に活用され
ていた。
特に3Dに関しては、日本庭園の奥行や全面に雪の降り頻る
光景などが、見事に3Dの画面に描かれていた。

出演は、市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司。それに
竹中直人、中村梅雀、笹野高史らが脇を固めている。音楽は
坂本龍一が担当。なお本作は、ニューヨーク・タイムズ紙で
「3D史上、最も静かな映画!」と評されたそうだ。

『この愛のために撃て』“À bout portant”
6月紹介『スリー・デイズ』のオリジナルで、2009年12月紹
介『すべて彼女のために』のフレッド・カヴァイエ監督によ
る2010年の作品。6月18日付紹介「フランス映画祭2011」で
も上映されたが、8月6日からの一般公開に向けた試写が行
われた。
今回も、妻を思う夫の行動を描いた作品。本作の主人公は、
近々国家試験も合格するだろうという看護助手。彼には身重
の妻がいて、日々愛情に溢れた生活が続いていた。ところが
そんなある日、彼のいる病棟に担ぎ込まれた交通事故の負傷
者が何者かに襲われる。
しかしその場は彼の施した応急処置で負傷者の命は救われる
のだが、今度は帰宅した彼が襲われ、気が付いた時には妻の
姿はなく、置かれていた携帯電話に「警察には知らせるな。
妻を救いたければ、病棟の負傷者を外に連れ出せ」との指示
が届く。
こうして警察に助けを求めることもできない主人公は、警備
の目を潜って負傷者を病院から連れ出すが、負傷者の仲間と
彼らを襲う謎の男たち、さらに警察の内部にも殺人課とそれ
に対抗する捜査班などがいて、三つ巴、四つ巴の戦いが繰り
広げられる。
そして彼の目の前では次々に人殺しも実行され…。そんな中
で、負傷者を連れ出したために彼自身も容疑者とされた主人
公は、果たして身重の妻を救出し、自分の嫌疑も晴らすこと
ができるのか…?
監督の前作では何年にも亙る周到な計画を描いたが、本作の
時間経過は数時間。しかも主人公は完全な巻き込まれ型で、
右往左往しながらもその時々の判断で難局を乗り越える。そ
こはまあ偶然による所もありはするが、全体は一気呵成に物
語が展開する作品だ。
それにしても演出と編集の切れ味は抜群で、1時間25分の上
映時間の中に、見事に凝縮された物語が展開される。さらに
パリの地下鉄駅の雑踏や、街中での逃走劇などライヴ感も抜
群の作品だった。

出演は、2007年7月紹介『ナルコ』では脚本監督も手掛けた
ジル・ルルーシュ、昨年6月紹介『ゴー・ファースト』など
のロシュディ・ゼム、2009年10月に紹介『ジャック・メスリ
ーヌPart 2』などのジェラール・ランヴァン、同『Part 1』
などのエレナ・アナヤ。
また音楽は、『すべて彼女のために』も担当し、2005年2月
紹介『コンスタンティン』などハリウッド映画や、6月紹介
『シャンハイ』なども担当しているドイツ出身のクラウス・
バデルトが手掛けている。
        *         *
 今回の製作ニュースは日本映画からのハリウッドリメイク
の話題を2つ紹介する。
 まずは、2002年11月1日付第26回と、2008年3月1日付の
第154回でも紹介した、ワーナーが進めている大友克洋原作
“Akira”の実写リメイクに、今年4月紹介『アンノウン』
を手掛けたジャウム・コレット=セラ監督の起用が発表され
た。そして脚本には“Harry Potter”シリーズ8作品中7本
を担当したスティーヴ・クローヴスによる素案が採用され、
待望の作品がいよいよ実現となりそうだ。
 因にこの計画の監督には、一時は昨年4月紹介『ザ・ウォ
ーカー』のヒューズ兄弟の名前なども挙がっていたが、製作
費3000万ドルで1億3000万ドル稼ぎ出した『アンノウン』の
監督が信頼されたようだ。なお、レオナルド・ディカプリオ
が製作を務める本作の製作費には9000万ドルが計上されてい
るそうだ。
 一方、同じくワーナーが進めている“Godzilla”のreboot
には、6月紹介『モンスターズ』のギャレス・エドワーズ監
督の起用が発表されているが、その脚本に、クリス・ノーラ
ンと共に『バットマン』『スーパーマン』のrebootを手掛け
たデイヴィッド・S・ゴイヤーの参加が噂されている。
 因に、本計画の脚本は2009年7月紹介『ホースメン』など
のデイヴィッド・キャラハンが第1稿を執筆しているが、ゴ
イヤーの参加によってどの様な物語が構築されるか、これも
楽しみになってきた。
 なお今回報告した2作品の公開時期は、何れも公式には未
発表だが、“Akira”は2013年、“Godzilla”は2014年夏の
旗艦作品として期待されているようだ。



2011年07月10日(日) ミケランジェロ…、ゴーストライター、マーガレットと…、エクソシズム、レイン…アサシン、プリースト、デビルクエスト、死の秘宝Pt2

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ミケランジェロの暗号』“Mein bester Feind”
400年前にバチカンから盗まれたとされるミケランジェロの
絵画を巡って、ナチスの軍部とユダヤ人の画商が虚々実々の
駆け引きをする歴史フィクション。
映画は、ポーランドのパルチザンがドイツの軍用機を猟銃の
一斉射撃で撃墜するところから始まる。その機にはチス親衛
隊(SS)の将校と1人のユダヤ人が乗っていた。そしてユ
ダヤ人とSSの1人が命を取り留めるが…
時間は遡ってナチスが台頭し始めた頃のウィーン。その街に
画廊を開くユダヤ人の一家には、ミケランジェロの絵画を秘
匿しているとの噂があった。その一家の許に、元使用人の子
で家族同然だったがしばらく行方の知れなかったアーリア人
の男が現れる。
その再会を喜んだ画商の息子と男は酒を酌み交わし、酔った
勢いで息子はミケランジェロの絵画を所有していることと、
その隠し場所まで教えてしまう。そしてその数日後、恐れて
いたナチスドイツのオーストリア侵攻が始まる。
この事態に、ユダヤ人一家は資産のスイスへの移送と自分た
ちの脱出を計画するが。時すでに遅く、ナチスの将校が一家
の許に現れ、ミケランジェロの絵画の引き渡しを要求する。
しかし息子が開けた隠し場所に絵画はすでになかった。
ところがナチス・ヒトラーには、イタリア・ムッソリーニと
の連携を強化するために、どうしてもミケランジェロの絵画
を手に入れる必要があった。こうしてナチスとユダヤ人一家
の、一家にとっては命を懸けた駆け引きが始まる。
物語の前半は、かなりサスペンスフルに描かれる。ところが
後半は、ある状況の変化から時にユーモアも交えた筆致とな
り、それはエンターテインメントとして見事な出来映えの作
品だった。
最近、ユダヤ人とナチスの関係を描いた作品をいろいろ目に
している感じだが、その中でもエンターテインメントの色合
いの強い作品で、言ってみれば昔テレビで観ていた『0012捕
虜収容所』“Hogan's Heroes”のような感じかな。とやかく
言わずに理屈抜きで楽しみたい作品だ。

出演は、2010年11月紹介『ソウル・キッチン』などのモーリ
ッツ・ブライプトロイ、10月紹介『アイガー北壁』などのゲ
オルク・フリードリッヒ、舞台女優のウルズラ・シュトラウ
ス。それに11月紹介『ヒアアフター』にも出ていたマルト・
ケラーが共演している。
監督は、1991年の東京国際映画祭でヤングシネマ賞を受賞し
ているウォルフガング・ムルンベルガー。脚本は、1990年の
アメリカアカデミー賞脚本部門に『僕の愛したふたつの国/
ヨーロッパヨーロッパ』でノミネートされたポール・ヘンゲ
が担当した。

『ゴーストライター』“The Ghost Writer”
昨年のベルリン国際映画祭で最優秀監督賞に輝いたロマン・
ポランスキー監督の最新作。本作は東京国際映画祭で上映さ
れ、その際にも数行のコメントを書いたが、今回は日本公開
が決定して試写を再見したので、改めて紹介する。
主人公は著名人の「自叙伝」を代筆するゴーストライターを
生業とする男性作家。普段は無難な題材を扱っていた彼に、
前英国首相の自叙伝の仕事が舞い込む。それは前任者が不慮
の事故死を遂げたことから急遽起用されたものだった。
そして前首相が滞在するアメリカの孤島にやってきた主人公
は、前任者の執筆した原稿を渡され、その原稿を4週間で書
き直すことになるが。同時に前首相には、テロリストに対す
る非人道的行為から戦犯として訴追の動きも表面化する。
それに対して声明文の代筆も行った主人公は、徐々に前首相
の陣営に組み込まれて行く。その一方で前首相の経歴の中で
いくつかの謎に突き当たった主人公は、その謎を解明する内
に前首相の知られざる側面を暴いて行くことになる。
果たして前任者の死は、本当に事故死だったのか…? そし
て前首相に隠された真実の姿とは…

作品は、2001年に映画化された『暗号機エニグマへの挑戦』
などのロバート・ハリスの原作を映画化したものだが、その
脚色はポランスキーとハリス自身が手掛けており、いくつか
の改変と見事な映像化が行われている。
特に原作とは異なるエンディングの鮮烈さは映画ならではの
ものだ。

出演は、ユアン・マクレガー、ピアーズ・ブロスナン、キム
・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムス。他に、ティモシ
ー・ハットン、ジェームズ・ベルーシ、ロバート・パフ、ト
ム・ウィルキンスン、イーライ・ウォラックらが共演してい
る。
物語はフィクションだが、内容的にはトニー・ブレア元イギ
リス首相を思わせる描写も多く、その辺はいろいろ興味の湧
く作品になっている。因に、元政治ジャーナリストの原作者
ハリスは、首相になる以前からの政治家ブレアを傍で観てい
たそうだ。
なおスタジオ撮影は、ドイツのバベルスバーグで行われたよ
うで、エンディングロールにロゴマークが在ったが、去年映
画祭で観たときには気づかなかったものだ。

『マーガレットと素敵な何か』“L'âge de raison”
フランスの元アイドル女優ソフィー・マルソー主演で2009年
に製作された現代ドラマ。
マルソーは1966年生まれだから、彼女も40歳を超えちゃった
んだ…というのは、デビュー当時を憶えている映画ファンの
単純な感慨だけれど、そのマルソーが良い感じの大人の女性
になっている作品。
主人公は40歳の誕生日を迎えた女性。原発プラントを海外に
売り込む会社のキャリアウーマンとしてバリバリ仕事をして
いる彼女の許を突然1人の老人が訪ねてくる。そして元公証
人だと名告った老人は「約束の品だ」と言って1つの小包を
彼女に手渡す。
その小包には彼女自身が7歳の時、未来の自分に宛てて綴っ
た手紙の束が入っていた。それは、父親が事業に失敗してど
ん底の生活となっていた当時の記憶でもあった。そんな境遇
から彼女は、たった1人で今の地位まで上り詰めたのだ。
だから彼女には、過去を思い出すことそれ自体が苦痛で忌ま
わしいことだったのだが…。7歳の彼女自身の、苦しい中で
も屈託なく振舞っている文面が徐々に彼女の心の中の何かを
変えて行く。
悪い人間が過去の自分を思い返すことによって改心する。そ
んなストーリーは、『クリスマス・キャロル』などいろいろ
あるが、本作の主人公は悪い人間ではない。それは原発プラ
ントということでは多少引っ掛かりはするが、主人公は独力
で成功を収めた成功者であり、本人的には後ろめたいことは
何もないだろう。
しかも手紙を書いたのはどん底の当時の自分。だからそんな
自分は顧みたくもないのだが、それでもがむしゃらに走って
きた自分の失ったもの、そんなものが彼女の心の内を変えて
行く。それは本当に素敵な何かのために。

共演は、2006年2月紹介『イーオン・フラックス』などのマ
ートン・ソーカス、2010年7月紹介『プチ・ニコラ』などの
ミシェル・デュショーソワ、2005年7月紹介『真夜中のピア
ニスト』などのジョナサン・ザッカイ。それに幼い頃の主人
公役を本作で映画デビューのジュリエット・シャペイが見事
に演じている。
脚本と監督は、韓国映画の『猟奇的な彼女』が2008年にハリ
ウッドでリメイクされたときに、それを手掛けたというヤン
・サミュエル。因に次回作は、“The Great Ghost Rescue”
という題名だそうだ。

『ラスト・エクソシズム』“The Last Exorcism”
プレス資料では、2009年12月紹介『パラノーマル・アクティ
ビティ』が引き合いに出されていたが、どちらかというと、
2008年3月紹介『●REC』の方が近いかな、悪魔祓いの実
態を取材していた番組のクルーが本物に出会ってしまうとい
うお話。
その取材の対象はルイジアナ州バトンルージュに在る教会の
神父。幼い頃から霊感が在るとされて父親の跡を継ぎ説教も
する彼は悪魔祓いの儀式も執り行うが、それは精神的に不安
を感じている人に安心を与えるためのもので、実効はないと
本人も認めている。
そして彼は、アメリカで悪魔祓いの最中に事故死する例が増
えていることを憂慮し、悪魔祓いの実態を暴く番組の製作に
同意。彼本人や家族へのインタヴューなどでそのインチキ性
を明かして行く。
そんな中で隣の教区に住む農夫の一家から娘の悪魔祓いの依
頼を受けた神父は、取材班と共にその家に向かい儀式を始め
る。そこでは十字架に施された白煙を出す仕掛けなど、いろ
いろなフェイクのテクニックが披露されて行く。
ところが神父が悪魔祓いを行っても異常現象は収まらず、や
がて娘の身体にも異常を察知した神父らは、その教区の司祭
にも協力を求めて、娘を医療の専門家に見せるように農夫一
家を説得するのだが…

出演は、2005年9月紹介『理想の恋人.com』に出ていたとい
うパトリック・ファビアン、舞台女優のアシュリー・ベル、
ゲームの声優などを務めるアイリス・バー、2009年12月紹介
『フィリップ、君を愛してる』などのルイス・ハーサム、そ
れに2011年『X-MEN』に出演のケイレブ・ジョーンズ。
監督は、ドイツ出身で2008年の長編デビュー作がAFIフェ
スティバル観客賞を受賞したというダニエル・スタム。脚本
は、監督歴もあるハック・ポトコとアンドリュー・ガーラン
ド。製作は、2002年『キャビン・フィーバー』などのイーラ
イ・ロスが担当している。
でもまあ何と言うか、最初にフェイクですとしておいて、後
で本物だとされるのも変な感じだし、映画は俳優が演じてい
るのだから…。作り方はこれで良かったのかな。エクソシズ
ムのインチキばらしなどは面白いと思ったが、何か本末転倒
のような感じがした。


『レイン・オブ・アサシン』“剣雨”
2008年8月紹介『レッド・クリフ』などのジョン・ウーの製
作、共同監督による武侠作品。
物語の背景は中国・明朝。約800年前にインドから渡来し、
武術の奥義を極めたとされる達磨大師の遺体(ミイラ)が、
暗殺組織<黒石>の襲撃によって奪われる。その遺体には、そ
れを所有する者が武術界の覇権を握るという言い伝えがあっ
た。
ところが襲撃の混乱の中、遺体を手にした組織の女剣士が姿
を消してしまう。その後、女剣士は施術によって姿を変え市
井に身を潜めて平穏な暮らしをしていたが…。<黒石>は組織
を挙げての探索の手を緩めなかった。そしてもう1人その後
を追うものがいた。
武侠作品とはいっても、物語の中心は国家の存亡と言うよう
なものではなく、達磨大師の遺体一つ。ただしその使い道に
はちょっと…。でもまあそんなストーリーよりも、本作の見
所は華麗に繰り広げられるチャンバラの面白さだろう。
何しろ女剣士の操る見事にしなう剣の捌き方は、なかなか面
白いものがあった。

出演は、今年5月紹介した『酔拳』などのミシェル・ヨー、
2003年9月紹介『MUSA』などのチョン・ウソン、今年の
3月紹介『孫文の義士団』などのワン・シュエチー、2010年
11月2日付「東京国際映画祭」で紹介『ホット・サマー・デ
イズ』などのバービー・スー。
また2008年1月紹介『軍鶏』などのショーン・ユー、2010年
11月紹介『MAD探偵』などのケリー・リン。さらにウー監
督の実娘のアンジェルス・ウーが本作で映画デビューを飾っ
ている。
脚本と監督は、2008年8月紹介の台湾映画『シルク』で台湾
映画の年間興収第1位を記録したことのあるスー・チャオピ
ン。『シルク』ではホラーの中にSF要素を持ち込んでいた
が、本作でも武侠の中にちょっと怪しげな話を持ち込んでお
り、その感覚は微妙だ。
なお衣装を、1985年『乱』でオスカー受賞のワダ・エミが担
当している。
それにしても、達磨大師は石の上での座禅修業によって脚を
失ったという説話を聞いたことがあったが、本作によると脚
を失ったのには別の理由があったようで、その辺はニヤリと
させられた。


『プリースト』“Preist”
2010年4月に『レギオン』という作品を紹介しているポール
・ベタニー主演、スコット・スチュアート監督のコンビによ
る宗教を背景にしたファンタスティックな作品の第2弾。
原作は、ロサンゼルスを本拠に日本を中心とするアジアのコ
ミックスなどを翻訳出版していたTokyoPopでも発刊された韓
国コミックス。なお韓国の漫画家Hyung Min Wooにる原作は
全16巻もあるそうで、今回の映画化はその一部からのインス
ピレーションとされている。
物語の舞台は現代とは様変わりした未来。何世紀にも渡るヴ
ァンパイアとの戦いの末に、人類は究極の人間兵器<プリー
スト>によってヴァンパイアの封じ込めに成功したが、その
後も人類は荒野に点在する要塞都市に閉じ込もって暮らして
いた。
その要塞都市を支配しているのは修道会。彼らはヴァンパイ
アは駆逐したと公言しながらも人々には都市を出ることを禁
じていた。そして戦いに貢献した<プリースト>たちには用済
みとばかりに、何の恩恵も与えていなかった。
そんなある日、1人の<プリースト>の許に荒野に住む兄一家
がヴァンパイアに襲われ、姪が拉致されたとの連絡が届く。
そこで<プリースト>は、その報告を修道会に持って行き、救
援を求めるが、ヴァンパイアは居ないとされた上に都市を出
ることを禁じられてしまう。
しかし<プリースト>はその禁を破り、報告をもたらした若者
と共にヴァンパイアの跡を追い始めるが…。修道会は都市を
出た<プリースト>に追手を差し向け、一方、現れたのは日光
も恐れない人間ヴァンパイアの一群。彼らの次の計画は要塞
都市の襲撃だった。

共演は、昨年公開された『パンドラム』などのカム・ジガン
デー、2008年2月紹介『燃えよ!ピンポン』などのマギー・
Q、2009年の『スター・トレック』でマッコイ役を演じたカ
ール・アーバン、2010年1月紹介『しあわせの隠れ場所』な
どのリリー・コリンズ、それにクリストファー・プラマー。
バイクのシーンなどには『AKIRA』の影響も顕著だったが、
CGIのVFXが可能にした異様な背景の中でのアクション
は見事。2007年3月紹介『300』以降、こういう映画が監
督の思い通りに描かれるようになってきたものだ。
なお本作はコンヴァージョン3Dの作品だが、3D感は期待
以上に良くできていた。

『デビルクエスト』“Season of the Witch”
サイトでは2005年9月15日付第95回で製作情報を紹介してい
る作品。14世紀のヨーロッパを舞台にした魔女狩りに纏わる
物語が、2000年『60セカンズ』のドミニク・セナ監督、ニコ
ラス・ケイジ主演のコンビで映画化された。
物語の主人公は十字軍に参加して幾多の戦闘で目覚ましい働
きを示してきた2人の騎士。ところが終りの見えない戦闘に
明け暮れる中でその意義に疑問を感じ始めた2人は、ついに
十字軍の騎士団を脱走する。
そして放浪の旅を続ける中でとある町に辿り着いた2人は、
その町にぺストが蔓延して住人の4分の1がすでに死亡した
ことを知る。そんな中で馬を調達しようとしていた2人は、
脱走者であることが露見し、領主の前に引き出される。
その領主もまたぺストに侵されており、領主は、捕えた女が
ぺストを広めたとして、2人にその女が魔女かどうか調べる
ため修道院へ護送することを依頼する。その依頼に最初は躊
躇した2人だったが、魔女とされる女の境遇を見た2人は承
諾する。
こうして2人ともう1人の領主に忠実な騎士、若い神父、道
案内の商人と称する詐欺師、さらに旅の途中で加わった侍者
によって、一見健気だが時に怪力を発揮する謎の女を護送す
る旅が始められるが…。そこには苦悩の森などの難所が待ち
構えていた。
ケイジの主演でこの内容なので、最初はコミックスヒーロー
ものかと思ったが、映画はまともに中世ヨーロッパを再現す
る作品だった。その背景には、CGIによるVFXなども使
用されているが、多くは実在の修道院などで撮影されている
ようだ。その映像を観るのも楽しめる作品になっている。

共演は、2008年9月紹介『ヘルボーイ』などのロン・パール
マン、今年1月紹介『アメイジング・グレイス』に出ていた
スティーヴン・キャンベル・ムーア、主にテレビで活躍の新
進女優クレア・フォイ、そしてクリストファー・リーらが脇
を固めている。
なお本作は、2005年に“Threshold”というSFシリーズを
手掛けているブラギ・F・シャットのオリジナル脚本による
ものだが、脚本家は現在はブラム・ストーカーの原作を映画
化する“The Last Voyage of Demeter”の脚色に取り組んで
いるそうだ。

『ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2』
   “Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 2”
2001年11月紹介『ハリー・ポッターと賢者の石』でスタート
し、10年間で8本の作品を生んだ映画シリーズがついに完結
した。で、それを観終えた現在の感想は、まあ作る方も観る
方も良く頑張った…という感じかな。
原作本も映画化も全作がベストセラー、大ヒット作だから、
シリーズは続いて当然ではあったが、特に映画化は、そのク
オリティを最後まで保ったのは立派なことだ。それに出演者
のほとんどが、止む終えない事情は別として最後まで一貫さ
れたのも立派と言える。
その最後の1本は、原作本の最終巻の後半。実は昨年末に公
開されたPart 1で物語のほとんどは終りにされていて、後半
は正にシリーズのクライマックスとなるホグワーツ魔法学校
を巡る攻防戦と、ハリーとヴォルデモートの一騎討ちが描か
れる。
それはもはや物語の展開と言うよりは単に雌雄を決するため
の戦い。このため、映画ではその他のものはほとんど描かれ
ていないが、そこにいくつかの重要な謎解きが配されている
のは、これも見事な構成と言えるものだ。
実は僕が原作本を読んだのは4年前になるから、細かい点は
良く憶えていなかったし、原作を読んでいた人の中にも挫折
した人は多いと聞くが、本作の映画化はそういう人にも判り
易く、全体の流れさえ判っていれば充分に楽しめるように作
られている。謎解きも、多分本作だけで充分に理解できるだ
ろう。
そして映画では、魔法戦争の様子を実に見事に映像化してい
ているもので、その映像を観るだけでも堪能できるし、その
結末にはカタルシスも感じられた。

脚本は、第5作の『不死鳥の騎士団』以外の全てを担当した
スティーヴ・クローヴス、監督は、その第5作以降の全てを
担当したデイヴィッド・イェーツ。
出演者は、ほとんどが前作と同じだが、唯一新登場のダンブ
ルドアの弟アバーフォース役には、2月紹介『ザ・ライト』
に出ていたキアラン・ハインズが扮している。彼は、ディズ
ニーが来年公開する“John Carter”と、ニコラス・ケイジ
主演で来年公開予定の“Ghost Rider”の続編にも出演して
いるそうだ。
なお上映時間は2時間10分で、シリーズ最短だった『不死鳥
の騎士団』の2時間18分よりさらに短いが、本来の物語は、
Part 1で語り終えているから、戦いに特化したということで
はこの辺が適当なのだろう。
また本作では、2Dからの3D化が行われているものだが、
上映時間は3Dで観るのには適当な長さとも言える。さらに
3D化に違和感は余り感じなかったから、半年待った甲斐は
あったとも言えそうだ。
(本作は公開期日が迫っているため、順番を入れ替えて掲載
しました)



2011年07月03日(日) エンディングノート、デビル、カンフー・パンダ2、朱花の月、ナッシュビル、グリーン・ランタン、ワイルド・スピード5+訃報

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『エンディングノート』
是枝裕和監督の下で2009年3月紹介『空気人形』の監督助手
などを務めた砂田麻美が、第1回監督作品として自らの父親
の最後を記録したドキュメンタリー。
その父親は、かつて丸の内に本社のある大手化学会社の営業
畑で取締役にまで上り詰めた。そんな父親は営業マンの常と
して、何事にも段取りを付けなければ気が済まない。その父
親が最後に行ったのは、自らの死への段取りだった。
その切っ掛けはガンの告知。40年勤め上げた会社を定年退職
し、子供たちも独立してこれからが夫婦の時間と思っていた
矢先にガンが発見され、ステージ4に進行していたガンはも
はや手術不可能、余命半年と宣告されてしまう。
しかしその事実を泰然自若と受けとめた父親は、身辺整理や
葬儀の際の連絡先などを自らのエンディングノートとして纏
め始める。そしてそんな父親の姿を娘である本作の監督が冷
静且つ愛情を込めて記録して行く。
僕自身が2年前に父親を送ったばかりで、本作の内容を知っ
たときには冷静に観ていられるかどうか心配になった。しか
し作品はユーモアにも富み、出来れば自分もこんな風に逝き
たいものだとも思わせてくれた。
それはまあ父親の最後を記録するなんて非情な…と思う人も
いるかも知れない。しかしこれは故人の性格があってのこと
もあるが、「こんな風に最後を迎えることもできるのだよ」
という営業マンの最後のプレゼンテーションだったようにも
思える。
そしてこういう父親のいたことがこの作品の全てを支えてい
るものでもあるが、それを娘である監督が丁寧に撮り上げて
いる。さらにそこにエンディングノートに書かれなかった過
去や現在の様々な映像を挿入した構成も、嫌みにならず巧み
に描かれていた。
また、その父親(故人)の心の声を代弁する形の監督による
女声のナレーションも映画全体の雰囲気を柔らかく、心地よ
く包み込んで、これも見事な演出だった。

監督・撮影・編集は砂田麻美、製作・プロデューサーは是枝
裕和。また音楽・主題歌を人気ミュージシャンのハナレグミ
が担当している。

『デビル』“Devil”
2006年9月紹介『レディ・イン・ザ・ウォーター』などのM
・ナイト・シャマラン監督が原案と製作を務めたサスペンス
・ホラー作品。
プロローグはかなり不安感を誘う映像に始まって、続くシー
ンでは高層ビルの前に停車中のトラックの上に何かが落下、
その衝撃でトラックが動き出す。さらにシーンは警察による
事件の捜査へと繋がって行く。
そして捜査官である主人公の閃きが彼を高層ビルへと導いて
行くが、そこでは1台のエレベーターが理由もなく停止し、
その中には5人の男女が閉じ込められていた。それは最初は
何の関わりもない事件のように思えたが…
という発端の展開だが、実はその後も主な事件が起きるのは
エレベーターの中。その事件と主人公との関わりも不明のま
まで、彼がある種の傍観者として物語が進んで行くのは面白
い構成の作品だった。そしてモニター映像などを通じて事件
の真相が明らかになって行く。
その真相とは、そして事件と主人公の関わりは…

映画では、最初に‘The Night Chronicles’というタイトル
が出て続いて‘1’と表示される。つまり本作は、M・ナイ
ト・シャマランが原案・製作を務めるシリーズの第1作とな
っているものだが、ネットのWikipediaによるとtrilogyが計
画されているようだ。
そのシリーズはシャマランが長年書き溜めたアイデアノート
に基づくとされているもので、彼は自分で映画化する目的で
書いていたのだが、その数が多くなり過ぎて1人で全部は無
理と判断。一部を脚本家や監督を選考して映画化を任せるこ
とにしたものだ。
そしてその第1弾に抜擢されたのが、脚本家は2009年6月紹
介『30デイズ・ナイト』などのブライアン・ネルスンと、
監督は2003年3月紹介『●REC』のアメリカ版リメイクを
手掛けたジョン・エリック・ドゥードル。期待の新鋭が起用
された感じだ。
出演は、2011年1月紹介『お家をさがそう』などのクリス・
メッシーナ、2008年5月紹介『アクロス・ザ・ユニバース』
に出演のローガン・マーシャル=グリーン、前回紹介『復讐
捜査線』などのボヤナ・ノヴァコヴィッチ。
さらに、2003年『ミスティック・リバー』などのジェニー・
オハラ、2005年『(500)日のサマー』などのジェフリー・エ
アンド、1996年『ザ・ロック』などのボキーム・ウッドバイ
ン、2008年『デス・レース』などのジェイコブ・バルガスら
が共演している。
上映時間は80分の作品だが、見せ場はたっぷりと設けられて
いる。この調子で第2弾、第3弾も早く観たいものだ。

『カンフー・パンダ2』“Kang Fu Panda 2”
2008年5月紹介『カンフー・パンダ』の続編。
前作で龍の戦士に選ばれ、村を守って活躍したパンダのポー
はその後も‘マスター・ファイブ’の仲間と共に鍛練に励ん
でいたが、シーフー老師の求める「内なる平和」がなかなか
会得できない。
そんな時、孔雀城の異変が伝えられる。それはかつてその城
の主だった両親に反抗して追放されていたシェン大老が舞い
戻り、カンフーを打ち破る新たな兵器で世界征服を企んでい
るというものだった。
そこでシーフー老師はポーと‘マスター・ファイブ’に出動
を命じるが、新たな兵器への対抗手段は見出せない。しかし
老師は「内なる平和」があれば大丈夫だというのだが…。一
方、ポーは敵の持つ印から何かを思い出そうとしていた。
カンフーの前に銃器が登場してその行く末に暗雲が漂い始め
る。それは現実の世界でも同じことだから、お話としては理
解しやすい展開だ。そこに今回は、ポーの出生の秘密などが
絡まってくる。
ただし、今回は出生の秘密が完全に明かされるまでは描いて
おらず、その辺は多分次回“Kang Fu Panda 3”でのお話に
なりそうだ。

声優は、アメリカ版では前作と同じくジャック・ブラック、
アンジェリーナ・ジョリー、ダスティン・ホフマン、ジャッ
キー・チェン、セス・ローゲン、ルーシー・リュー。それに
今回はゲイリー・オールドマン、ミシェル・ヨー、ジャン=
クロード・ヴァン・ダムら、錚々たる顔(声)ぶれが並んで
いる。
とは言うものの日本公開は主に吹き替えで行われ、そちらは
山口達也、笹野高史、木村佳乃、MEGUMIらの顔(声)ぶれに
なっていた。
監督は前作のストーリー部門のヘッドを務めたジェニファー
・ユー・ネルスンが担当し、脚本は前作に引き続いてジョナ
サン・エイベルとグン・バーガーが担当している。
かなり思わせぶりにポーの故郷の話が登場する割りには、本
作は真のその場所に至るまでの話にはなっておらず、その辺
は繋ぎの展開という感じもした。早く“Kang Fu Panda 3”
を観せて貰いたいものだ。


『朱花の月』
2010年8月紹介『玄牝』などの河瀬直美監督による新作。本
作は今年のカンヌ国際映画祭で、パルム・ドール受賞のテレ
ンス・マリック、2008年11月紹介『ロルナの祈り』などのダ
ルデンヌ兄弟らが集ったコンペティション部門に選出上映さ
れた。
主人公は、飛鳥地方の集落に最近引っ越してきた工芸作家の
男性。そこは人付き合いの上手くない彼がようやく見つけた
自分の居場所だった。そして彼は、かつて同級生だった女性
と再会する。その女性は染色家で、地元PR誌の編集者の男
性と同棲していたが…
題名の「朱花」は、映画では「はねづ」とルビが振ってあっ
たが一般的には「はねず」、漢字も「朱華」または「唐棣・
棠棣」などとされているものが多いようだ。そしてその意味
も、万葉集に出てくる言葉だが「庭梅か」とされている程度
で確定されていない。
ただし染色に於ける「朱華色」は、「くちなしの黄の下染め
をして、紅花で染めた黄みのある淡紅色」とのことで、また
この色に染められた布は灰汁で洗うと色落ちすることから、
「うつろう」「はかない」という意味にも使われるそうだ。
そんな血の色にも似た染色を目指す女性が、2人の男性の間
で恋の炎を燃やす。一方それは藤原宮の発掘現場を背景に、
「香具山は…」で始まる大和三山を歌った万葉集の古歌にも
準えた男女の物語を描いて行く。

出演は、元は撮影現場のケイタリングをしていたという「こ
いずみとうた」、元はモデルで河瀬監督の2004年『影』にも
主演している大島葉子、それに以前は助川ドリアンの名前で
パフォーマンスをしていた明川哲也。他に、麿赤兒、樹木希
林、西川のりおらが脇を固めている。
悠久の時と男女の恋の儚さ、そんなものの対比が映画祭の審
査員にはアピールし易いのかな。そこに戦争の影が落ちてい
れば、ある意味言うことのない作品かもしれない。しかし僕
には描かれる「死」の扱いが安易に感じられて納得が出来な
かった。
これは『玄牝』や、2009年9月紹介小林政広監督『白夜』の
時にも同じ感じを受けたものだが、さらに本作は2006年「仔
猫殺し」で話題になった坂東眞砂子の原作に基づくとのこと
で、その死生感は僕とは容れられないもののようだ。


『ナッシュビル』“Nashville”
2007年1月紹介『今宵、フィッツジェラルド劇場で』などを
残し2006年11月20日に亡くなったロバート・アルトマン監督
による1975年の作品。前々回紹介した『天国の日々』と共に
‘Ziggy Films 70's-Vol.2’として再公開される。
オリジナルの日本公開は1976年とのことで、その頃は僕も映
画の仕事を始めていたから、多分西銀座のリッカーミシンビ
ルにあったパラマウントの試写室で観たのかな。でも2時間
40分の上映時間と登場人物の多さに圧倒されて、物語はほと
んど覚えていなかった。
それにこの当時は、まだアンサンブル映画に慣れていなかっ
た面もあったもので、映画全体を観ることが出来ず、正直に
は途中で混乱して多少飽きてしまった記憶も残っている。そ
の印象は1980年『ポパイ』にも続いたものだ。
でも、元々アルトマンは1970年の『BIRD★SHT』や1971年の
『ギャンブラー』などが好きな監督の1人だったし、その監
督の作品に退屈したのが、ショックだったことも頭の片隅に
残っていた。
そんな作品との再会となったものだが、さすがに僕の方も観
る目が成長したようで、今回は充分に楽しめた。と言っても
これはしっかり覚えていた結末については、そこに至る経緯
はやはり釈然としないものがあって、それは当時も見誤った
訳ではなかったようだ。
そのお話は、大統領予備選が行われている年のナッシュビル
の数日間を描いたもの。街には大統領候補の選挙カーが公約
を流しながら巡回し、その中で候補者を支援するコンサート
の準備が進められている。
そしてコンサートに出演する大物歌手や、そのために帰って
くる人気歌手、さらにカントリー&ウェスタンのメッカ=ナ
ッシュビルで一旗挙げたい歌手などが寄り集まってくる。ま
たそこにはコンサートを取材するBBCの記者なども訪れて
いる。
そんな連中が個人的や政治的なそれぞれの思惑を胸に右往左
往して行く。そしてようやくコンサートの開催に漕ぎ着ける
のだが…

それを演じるのが、ネッド・ビーティ、カレン・ブラック、
キース・キャラダイン、ジェラルディン・チャップリン、シ
ェリー・デュバル、スコット・グレン、ジェフ・ゴールブラ
ム、リリー・トムリン、キーナン・ウィン。
他に歌手や舞台俳優も大挙出演し、さらにエリオット・グー
ルド、ジュリー・クリスティが本人役で出ているなど、若手
からベテランまで、正に当時のアメリカ映画界が代表されて
いる感じのものだ。
ノスタルジーで観ることもできるが、政治的な話などは今で
も通じるところも多く、現代でも面白く観ることの出来る作
品だった。

『グリーン・ランタン』“Green Lantern”
本ページでは2009年2月15日付第177回などで紹介したDC
コミックスの映画化。その製作までの経緯については2007年
11月1日付第146回でも紹介しているが、期待の映画化がよ
うやく完成したものだ。
物語は、軍需産業で働くテストパイロットが主人公。彼には
科学技術面をバックアップしてくれる親友や、パイロット仲
間で会社トップの令嬢でもある恋人もいて、まずは順風満帆
の人生だが、彼には最後の決断が出来ない弱さもあった。
そんな主人公が、テスト飛行中のやり過ぎでトラブルを起こ
した晩、彼は突然緑色に光る球体に拉致され、とある浜辺に
連れて行かれる。そこには瀕死の異星人がおり、その異星人
は彼が指輪に選ばれたとして、緑色の石の付いたその指輪と
緑のランタンを彼に託す。
そして主人公が指輪を填め、緑のランタンに翳してみると…
彼の身体は宇宙を飛び、とある星に導かれる。そこは宇宙の
平和を守るガーディアン=グリーン・ランタンたちの訓練の
場所だった。こうして主人公には、宇宙と地球の平和を守る
任務を与えられるが。
まあ『スーパーマン』『バットマン』と同様のDCスーパー
ヒーローの誕生で、ただ緑色のマスクとコスチュームは多少
ダサイ感じだが、そこは映画の中でも指摘されているから、
原作のあるものでは仕方がないだろう。
それに本作では、主人公の授かる超能力が映像的にもちょっ
と面白くて、これは映画的なスーパーヒーローとも言えそう
だ。

出演は、スーパーヒーロー役には2009年8月紹介『あなたは
私の婿になる』などのライアン・レイノルズ、その恋人役に
2005年9月紹介『旅するジーンズと16歳の夏』などのブレイ
ク・ライブリー、さらに2004年8月紹介『ニュースの天才』
などのピーター・サースガード。
他に2010年『ロビン・フッド』などのマーク・ストロング、
1999年『ミュージック・オブ・ハート』などのアンジェラ・
バセット、1994年『CODE46』などのティム・ロビンス。また
ジェフリー・ラッシュ、マイクル・クラーク・ダンカンらが
声優を務めている。
監督は、前回紹介『復讐捜査線』などのマーティン・キャン
ベルが担当した。

『ワイルド・スピード/メガ・マックス』“Fast Five”
2009年7月に前作を紹介したヴィン・ディーゼル、ポール・
ウォーカー主演によるカーアクション・シリーズ第5弾。
前作ではいろいろなことがあって、遂に××となってしまっ
た主人公ドミニクだったが、本作の巻頭でその状況はあっさ
りと解消される。しかしアメリカには居られなくなった彼ら
は海外に逃亡。正しく逃亡者となってブラジルのリオ・デ・
ジャネイロに現れる。
そしてスラム街ファヴェーラに身を隠したドミニクの妹ミオ
と元捜査官ブライアンは、生活費稼ぎに列車から高級乗用車
を強奪する計画に参加、そこにドミニクも現れる。ところが
計画は最後に裏切りに遭い、それでも1台を確保したドミニ
クらはその車に隠された秘密を発見する。
そしてその秘密を手に、リオの裏社会を牛耳る黒幕への挑戦
を開始するドミニクたちだったが、その黒幕はリオの警察も
ほとんど手中に収めていた。しかもリオには、FBIが派遣
した超剛腕の捜査官も到着、ドミニクらを追い始める。
こうしてドミニクたちと、リオの黒幕+警察、それにFBI
捜査官チームの三つ巴の闘争が始まる。果たしてドミニクら
は黒幕への挑戦に勝利することが出来るか…それは奇想天外
な作戦の始まりだった。
前作では第1作の主役4人が見事に勢揃いしたが、本作では
さらに第2作の登場メムバーや第1作の脇役、第3作以降の
メムバーも加わって、正しくシリーズのドリームチームが形
成される。
その顔ぶれは、第1作と第4作のジョーダナ・ブリュースタ
ー、第2作に登場のタイリース・ギブスン、クリス・ブリッ
ジス、第3作から参加のサン・カン、第4作からのガル・ギ
ャドット、ドン・オマール、テゴ・カルデロン、さらに第1
作以来のマット・シュルツ。
そして本作からは、新たにドウェイン・ジョンスンと、スペ
イン語圏では20本以上の出演作があるという女優のエルサ・
パタキーが新登場している。ここにミシェル・ロドリゲスの
名前がないのは残念だが、それは仕方のないところだ。

脚本と監督は、共に第3作以降を支えるクリス・モーガンと
ジャスティン・リン。因に監督のリンには、アーノルド・シ
ュワルツェネッガーの出演が期待される“Terminator 5”へ
の起用も発表されている。
なお本作は、先に公開された全米で大ヒットを記録してさら
に続編への期待が高まっているが、実は本作のエンディング
ロールの中では、その展開も少しだけ紹介されているので、
くれぐれも席を立たないように。
その次回作“Fast & Furious 6”の全米公開は、2013年5月
24日からとの発表が先日行われた。
        *         *
 訃報
 怪獣映画研究の第1人者であり、個人的には長く友人とし
て付き合わせて貰った竹内博君が亡くなった。2年ほど前か
ら入院して病気はその後も進行したのだろうが、一昨年12月
に会ったのが顔を見た最後だった。
 互いに故大伴昌司氏の弟子という立場だった彼と僕だった
が、実は大伴氏の生前は顔を会わせたことはなく、初対面は
氏の告別式の時だったと思う。突然少年が僕の前に現れて挨
拶をされたが、思えば彼はまだ10代半ばの頃で、その割りに
は礼儀正しく丁寧な挨拶だった記憶がある。
 ただし大伴氏からは生前に一度だけ、「井口君は怪獣に余
り興味が無いようだから、そちらの方面をやってくれる若い
人に手伝って貰うことにした」という話を聞かされたことが
あり、多分それが彼のことだったのだろう。
 そんな彼は大伴氏の伝もあって円谷プロに入り怪獣作品の
プランナーとしても活躍して行くことになるが、現実的には
大伴氏という後ろ楯もなしにそれを行った彼の努力も計り知
れないものだ。
 その頃には僕も何度か円谷プロの片隅に在った彼の住まい
を訪ねたりもし、さらに映写室での鑑賞会などの案内も受け
て、親交も深まっていった。そして彼が怪獣倶楽部を立上げ
たときには、先輩として参加させても貰った。その怪獣倶楽
部では、彼は若い人たちの纏め役としても良い仕事をしてく
れた。
 その後の彼は、『ゴジラ』→香山滋、『海底軍艦』→押川
春浪、そして海野十三など日本の古典SF研究の一角も担っ
て行くことになるが、それは目先の動きに左右されず、過去
しっかり見つめた素晴らしい仕事であった。そしてその間も
常に僕に対しては先輩として付き合ってくれたことも、彼な
らではの心遣いであったと思う。
 僕自身にとっては、彼を含めてこれで自分より若い仲間を
4人先に失ったことになる。彼らは何れも大きな業績を残し
逝った人たちだが、年上の僕からすれば皆、この世を去るの
が早すぎた人たちだ。今生きていればより大きな業績を残せ
たはずだし、さらに未来にも多くを成しえた人たちだ。
 そんな彼らが早く去ったことが悔しいし寂しい。それに何
より彼らともっと話していたかった。竹内君と、そして彼ら
の冥福を祈る。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二