井口健二のOn the Production
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2011年06月26日(日) ヒマラヤ、復讐捜査線、リメンバー・ミー、あぜみちジャンピンッ、幸せのパズル、赤い珊瑚礁、ワン・ヴォイス+Rendezvous With Rama

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ヒマラヤ』“Nanga Parbat”
1970年ヒマラヤ山脈のナンガ・パルバート登頂を目指すドイ
ツ隊に参加し、その南面に聳える世界最大の標高差4800mを
持つ難壁ルパール壁の初登攀に成功したラインホルト・メス
ナーの実話に基づくドイツ製作の山岳映画。
ラインホルトとギュンターは本当に仲の良い兄弟。頭の中で
常に登山を考えている2人は幼少から競い合って壁を登り、
登山の夢を語り合っていた。その2人が目標としていたのは
遠くヒマラヤ山脈に聳えるナンガ・パルバート。
孤峰であることから「裸の山」、あるいは「運命の山」、さ
らには「人食い山」とも呼ばれるその山は、すでに1953年に
カール・マリア・ヘルリヒコッファー率いる遠征隊が初登頂
に成功するものの、幾多の事情からヘルリヒコッファーはそ
の後も挑戦を続けていた。
そして1962年には西側からの第二登に成功。さらに1970年、
南側の最難壁ルパール壁からの初登攀と登頂が試みられるこ
とになり、そこに当時若手の登山家として名声の挙がってい
たメスナー兄弟が招かれたのだ。
こうして幼い頃からの夢だったナンガ・パルバート登頂を目
指すことになった兄弟は他の隊員の登山家たちと共にベース
キャンプを出発、1970年6月26日に第4キャンプまで進出す
るが、そこで天候の悪化により足止めされてしまう。
やがて食料も尽きかけ登攀か退却かの決断が迫られたとき、
ラインホルトは天候が回復するなら4人で登攀、悪天候が続
くなら自分1人で登攀することをベースキャンプの隊長に提
案、隊長は回復なら青の信号弾、悪化なら赤の信号弾を上げ
ると約束する。
そしてその夜、打ち上げられた信号弾は赤だったが…。結局
メスナーは初登攀と登頂には成功するが悲劇も起こり、信号
弾の是非やメスナーの行動を巡ってヘルリヒコッファーとメ
スナーは長く裁判を争うことになる。

今回の映画化は、メスナー本人から1993年『スターリングラ
ード』などのドイツの名匠ヨゼフ・フィルスマイヤー監督に
企画が提案されたもので、2004年の提案から約4年の歳月を
掛けて実現されている。
その原作は、メスナー著の『裸の山/ナンガ・パルバート』
となっているが、監督はメスナーが直後に執筆し裁判で出版
が差し止められた“Die Rote Rakete”(赤い信号弾)にも
目を通して脚本を書いているそうだ。
そして撮影には現地主義が貫かれ、メスナー兄弟が育った南
チロルから、パキスタンに所属するナンガ・パルバートには
3度の撮影隊が派遣され、標高5000mの場所からの撮影やヘ
リコプターによる空撮などで登山の全貌が描かれた。
出演は舞台俳優が中心のようだが、中でヘルリヒコッファー
役には2006年『ヒトラーの贋札』や4月紹介『アンノウン』
にも出演のカール・マルコヴィクスが扮している。
昨年1月紹介『アイガー北壁』は登攀シーンの撮影のほぼ全
編を冷凍倉庫の中で行うという、これも映画製作としては画
期的なものだったが、本作は現地主義、しかもプロの登山家
でも難渋すると言われる山での撮影が絶対的な効果を生んで
いる作品だ。

『復讐捜査線』“Edge of Darkness”
ユダヤ人に対する問題発言などで映画界を干されていたメル
・ギブスンが、2002年公開の『サイン』以来、9年ぶりの映
画主演復帰を果たした2010年の作品。
主人公は、ボストン市警の殺人課に勤務するベテラン刑事の
トーマス・クレイヴン。彼の妻はすでに亡く、その日は大学
を卒業してワシントンD.C.の企業で研修生として働いてい
た一人娘の帰省を駅に出迎えていた。
しかし激しい雨の中を帰宅した娘は体調が悪いようで嘔吐を
繰り返す。そして最初は妊娠ではないと笑っていた娘だった
が、突然病院に行きたいと言い出し、2人が玄関先に出たと
き、現れた男が「クレイヴン!」と叫んで銃を発射、銃弾は
娘に当ってしまう。
この事態に主人公は娘の救護のために犯人を追うことを諦め
るが、娘は彼の腕の中で息を引き取ってしまう。そして事件
は、最初は父親の刑事が恨みを買ったものと思われ、その線
での捜査が続けられていたが…
犯人を直接知る唯一の人間として捜査班に残った主人公は、
徐々に事件の裏側にある何かに気付いて行く。

作品は、1985年にイギリスのBBCで全5回に分けて放送さ
れた同名のミニシリーズをリメイクしたもので、オリジナル
ではおそらく回を追うごとに謎が深まって行く構成になって
いたものと思われる。
その作品から本作は、2008年10月紹介『ワールド・オブ・ラ
イズ』などのウィリアム・モナハンが1本の映画に脚色して
いるものだが、映画化ではギブスンの主演らしく、『リーサ
ル・ウェポン』を思わせるガンアクションやカーアクション
を中心に物語が構成されている。
そしてその映画化を、オリジナルのミニシリーズを手掛け、
その後に1989年『クリミナル・ロウ』でハリウッドに進出。
さらに2006年11月紹介『007カジノ・ロワイヤル』などの
マーティン・キャンベルがセルフリメイクしているものだ。
共演は、2009年9月紹介『スペル』に出演のボヤナ・ノヴァ
コヴィッチ、2007年3月紹介『こわれゆく世界の中で』など
のレイ・ウィンストン、2009年6月紹介『30デイズ・ナイ
ト』などのダニー・ヒューストン、2008年8月紹介『ダイア
リー・オブ・ザ・デッド』に出演のショーン・ロバーツらが
脇を固めている。
イギリス作品がオリジナルらしく、謎の深まり方や解決策な
どがハリウッド映画とは一味違う作品に仕上がっている。な
おギブスンにはこの後も主演作が続いているようだ。

『リメンバー・ミー』“Remember Me”
『トワイライト』シリーズのエドワード・カレン役でブレイ
クした若手俳優のロバート・パティンスンが、自らの製作総
指揮と主演により作り上げた青春ドラマ。
幼い時に目の前で母親を強盗犯に殺された女性と、憧れだっ
た兄に自殺されて自分の気持ちの整理が付けられない男性。
さらに女性には刑事なのに母を助けられなかった父親と、男
性には兄の悩みを真剣に聞けなかった父親がいた。
そんな、共に幼い頃のトラウマを抱える男性と女性が巡り会
う。それは偶然ではなくある事情から男性によって仕組まれ
たものだったが、2人の気持ちは純粋に育って行く。しかし
やがて嘘はばれる時がやってくる。
人生において許すことのできない出来事。それは他人との間
のことであれば忘れてしまえば良いのだが、肉親や恋人同士
の間では、いつかそれを許し合わなければいけなくなる。そ
してそれを許し合えたとき、互いの関係はさらに親密になる
のだが…
本作はそんな許しをテーマとした作品と言えるだろう。そし
て人間同士はいつか許し合わなければいけないものなのだ。
しかしこの映画を見終えたときに、彼らは本当に全てを許せ
るのか、それは必ずしも明瞭でないようにも感じられた。

脚本は2003年、当時ロウスクールを目指してデラウエア大学
で学んでいたウィル・フェターズが、授業の課題を勘違いし
て映画のアイデアを纏めて仕舞い、さらに大学卒業後にそれ
を脚本に仕上げたというもの。
その無名新人の脚本に、2005年5月16日付第87回で紹介した
“Zoom”などの製作者ニコラス・オズボーンが着目。2007年
3月紹介『ハリウッドランド』などのアレン・コールター監
督が参加し、さらに当時はまだ無名だったパティンスンが主
役を熱望して企画は立上がる。
しかし当初は製作資金を調達できない企画だった。ところが
2008年『トワイライト』が大ヒット。これで超多忙になった
俳優に、最初は出演もなくなったと考えた製作者だったが、
パティンスンが断固主演を希望、逆に製作総指揮を買って出
て実現させたとのことだ。
それほどの思いの入ったパティンスンの演技にもファンの目
が集まる作品だ。
共演は、TVドラマ『LOST』などのエミリー・デ・レイ
ヴィン、5月紹介『テンペスト』などのクリス・クーパー、
それとピアーズ・ブロスナン。
他に、2010年6月紹介『トラブル・イン・ハリウッド』など
のケイト・バートン、2006年3月紹介『カサノバ』などのレ
ナ・オリンらが脇を固めている。

『あぜみちジャンピンッ!』
水田の広がる田園地帯を背景に、聾唖者の少女がストリート
ダンスに才能を開花させて行く姿を描いた青春映画。
主人公は、どういう事情かは判らないが、母子家庭の一人娘
で聾唖者。そんな彼女が、町中のヴィジョンに映るダンスパ
フォーマンスを観て憧れ、そのDVDを買って自宅でも観る
ようになる。
そして彼女は、公共施設のガラスの前でダンスの練習をして
いる聴者のグループを見つけ、やがてそのメムバーの1人が
彼女に声を掛けらるが、何と声を掛けた少女は手話を使うこ
とができた。
こうして、そのグループの1員としてダンスの練習を始めた
彼女だったが…
物語としては、有り勝ちな何かに打ち込む若者の姿を描いた
青春ドラマだが、その主人公が聾唖者ということでその差別
や困難さなども描かれる。といっても全体的にはあまり深刻
にならずに、ある意味さらりと描いているのがこの作品の良
さとも言える。
実際、苛めだの差別だのをネチネチと描いて、苛めの手口を
日本中に教えることが目的なのか…と思えるような日本映画
やドラマが多い中では、さすがに海外の映画学校で学んだ監
督の作品とも言えそうだ。

監督は、2002年にロンドンの映画学校を卒業、すでに2006年
山川恵里佳主演作や、2007年に宝生舞主演作なども手掛け、
本作が3作目の西川文恵。原案と編集も担当して2009年に完
成された本作では、シカゴ国際児童映画祭の準グランプリな
ども受賞している。
出演は、何れも1993年生まれの大場はるか、普天間みさき、
梅本静香、さらに1996年生まれの上杉まゆみと1995年生まれ
の山中知恵。撮影時はローティーンの少女たちが溌溂とした
ダンスや演技を見せてくれる。
他に、2010年8月紹介『名前のない女たち』などの渡辺真起
子、元ミス日本の天川紗織らが脇を固めている。
なお本作は長く日本での公開が決まらなかったが、ようやく
映画の舞台となった新潟県で先行公開と、7月23日から東京
ポレポレ東中野での公開が決定した。そういう事情なので、
東京では団体鑑賞など支援の要望もあるようだ。
音楽が中心にある作品で、上映時間も88分では子供にも飽き
させないし、特に小中学生や青少年には安心して勧められる
作品といえる。子供会などでの団体鑑賞もお勧めしたいとこ
ろだ。
ただし、小学生料金は団体より安いのだそうで、ここは小学
生向けの団体料金も設定して置いて欲しかったところだ。
また、ポレポレ東中野では夏場の電力事情を考慮して13:00
〜16:00の上映を中止。替りに朝8:50からの超モーニングシ
ョウを7月9日から8月19日まで連日実施するとのことで、
本作もその上映なら大人900円で観られるそうだ。

『幸せのパズル』“Rompecabezas”
1箱のジグソウパズルが専業主婦だった女性の人生を変えて
行く? そんなちょっとメルヘンチックな南米・アルゼンチ
ンの映画。
主人公はブエノスアイレスに暮らす専業主婦の女性。50歳の
誕生日を迎えて親族が集まってくれたが、自分のためのパー
ティだというのに料理を出したりケーキを作ったりで休んで
いる暇もない。
それでも漸くロウソクの火を吹き消し、皆が帰った後にほっ
として開けてみたプレゼントはジグソウパズルの箱だった。
今まではそんなものには興味のなかった主人公だったが、ふ
と開けたパズルの素晴らしさに彼女は魅了される。
長く続いている夫との生活には満足しているしその愛情も感
じている。でも成長した2人の息子は独立したがっていて、
老後のためを考えていた郊外の土地は息子の独立資金に消え
そうだ。そこには何か空しさもある。
そんな彼女が次のパズルを求めて立ち寄った店で目にしたの
は、パズル大会に出場するためのパートナーを募集する張紙
だった。そして試しにその住所を訪ねると…
40年も昔の学生時代には、ジグソウはよく作ったし、社会人
になって結婚しても暫くの頃はブームもあって、海外旅行で
珍しい形のジグソウを土産に買って、泊まり込みで仲間と作
りに行ったりしたこともあった。
だからジグソウパズルの魅力も知っているし、そこに競技会
や世界大会なんて言葉が出てくると、それだけでも憧れてし
まうような物語だ。
ただ自分が男性だと、なかなかヒロインの立場にはなり難い
もので、勢い夫の立場で観てしまったりもするのだが、する
とこの作品はあくまで女性のための物語だと思えてくる。お
そらく女性の観客なら僕より楽しめるのではないか、そんな
風にも感じられた。

脚本と監督は、1972年生まれのナタリア・スミルノフ。エン
ジニアの出身で長くテレビ局の裏方にいた後、映画を勉強し
数多くの監督の助監督を勤め、満を持しての本作でベルリン
映画祭に招かれた。
主演は、1966年生れで2008年東京で開催されたラテンビート
映画祭で主演女優賞を受賞しているベテランのマリア・オネ
ット。女性による女性のための作品と言えそうだ。

『赤い珊瑚礁−オープン・ウォーター』“The Reef”
2003年の『オープン・ウォーター』、2007年の『オープン・
ウォーター2』に続く人食い鮫の生息する海域に取り残され
た人々を描いた作品。
1はバハマが舞台のアメリカ映画、2はマルタで撮影された
ドイツ映画だが、一応原題でも“2”とされていたようだ。
そして本作はオーストラリア映画で、実はデータを見ても繋
がりは判然としないが、まあそんなところだ。
従って本作は物語上も繋がりはなく、前作を観ていなくても
本作だけで理解できる。しかも本作は、初めて鮫の本場グレ
イトバリアリーフで撮影された作品とのことで、その意味で
はこれこそ本物という感じかな。
さらに本作の製作・脚本・監督は、2009年7月紹介の人食い
ワニ映画『ブラック・ウォーター』のアンドリュー・トラウ
キが手掛けており、同作ではメルボルン・アンダーグラウン
ド映画際の監督賞も受賞した監督が、今回もたっぷり楽しま
せてくれている。
物語は、インドネシアに船を運ぶ仕事をしているという男性
が主人公。彼の親友で現在はロンドンに住む男性が恋人を連
れてバカンスにやってくる。そこには親友の妹も同行してい
るが、主人公とは過去に何かあったようだ。
そしてもう1人のクルーと共に出航した一行は、鮫がいるか
知れないという珊瑚礁でダイヴィングを楽しんだ後、外洋を
航行中に船に何かが衝突する。しかもその後に一気に転覆し
た船は、損傷が大きくて数時間後には沈没してしまうと予想
される。
そこで主人公は、18km先にあるはずの島を目指して泳ぎ渡る
ことを提案するが、その海域には人食い鮫がいる可能性もあ
った。
映画の最初には‘based on a true event’という表記もあ
って、それはまあそういうことなのだろうけど、外洋を海図
も無しに見えてもいない島に向かって泳ぐなんて無謀も甚だ
しい。でも現実にはそんなものなのかな。何れにしても実話
の映画化なのだ。

出演のダミアン・ウォルシー=ハウリング、ガイトン・グラ
ントリー、ゾー・ネイラー、エイドリアン・ピカリングは、
いずれオーストラリアのテレビ俳優が中心のようだが、もう
1人のクルーを演じていたキーラン・ダーシー・スミスは、
2006年8月紹介『地獄の変異』に出ていたそうだ。

『ワン・ヴォイス』“One Voice”
ハワイのカメハメハ・スクールで90年間続いているという全
校を挙げた‘ハワイアン・スクール・ソング・コンテスト’
の模様に取材したドキュメンタリー。
カメハメハ・スクールは、ハワイの統治者カメハメハ大王の
直系の子孫だった王女の遺産を基に、ハワイの文化継承を目
的として、ネイティブ・ハワイアンの血を引く生徒だけを対
象に1887年設立された。
ところがその翌年には、同校でのハワイ語教育が禁止され、
1896年にはその他の学校でも‘イングリッシュ・オンリー’
という法律でハワイ語教育は禁止されてしまう。そのハワイ
語は、1987年に州の公用語として認められることになるが、
その間の約90年間の歳月はハワイの人々から母国語を奪うこ
とになった。
そんな中でカメハメハ・スクールでは、ハワイ語の復活を目
指す試みとして高校生年代の9〜12学年の生徒たちによるハ
ワイ語の合唱コンテストが90年間続けられてきた。それはそ
の学年の生徒たち全員に参加の義務付けられた全校挙げての
行事で、その模様はテレビやインターネットで中継されて世
界中の人気になっているとのことだ。
そしてコンテストでは、各学年および男声、女声、混声の各
部門で指揮者であるリーダーが選ばれ、そのリーダーの許に
授業時間も短縮しての練習が続けられるが、それと共にリー
ダー自身の思いや、それぞれが背負っているものなども紹介
されて行く。
そこにはハワイ人なのにハワイ語がほとんど喋れない両親の
許に育った生徒や、ハワイ人=下層階級という中でぎりぎり
の生活を続けてきた生徒など、政治や社会の問題も見えてく
るものだ。そんな中で「自分たちの頃はハワイ語より日本語
だった」という両親の発言にはどきりとさせられるものもあ
った。
さらに美しいハワイ語を習得するための生徒たちの努力や、
本当はハワイ’イ(’は無声音)と発音するいうハワイ語の
本質なども紹介されているのも興味深い作品だった。ハワイ
アンと言えばウクレレとスチールギターの軽やかな音色が浮
かんでくるが、その背景や歴史にも深いものがあることが認
識できた。
という映画全体ではハワイ語のコーラスが満喫できる作品だ
が、最後に聞こえてくるのが何故かBEGINの「涙そうそう」
(ただし歌詞はハワイ語)。確かに本コンテストの決まりも
ハワイ語の歌詞というだけではあったが、ここはちょっと不
思議な感じがした。

        *         *
 最後に、アーサー・C・クラーク原作“Rendezvous With
Rama”の情報が久しぶりに登場した。
 この情報に関しては2002年12月15日付第29回や2003年3月
1日付第34回でも紹介しているものだが、映画化の権利はオ
スカー俳優のモーガン・フリーマンが所有していて、彼が主
宰するプロダクションRevelations Entertainmentの製作予
定リストにもデイヴィッド・フィンチャー監督の計画として
長年掲載されているものだ。
 その現状に関してだが、実は先日フリーマンがAFIが授
与する生涯賞を受賞したのを記念して、Variety紙が特集記
事を掲載し、その中の‘Freeman's scientific angle’とい
うレポートで言及がされていた。
 しかしその状況はまだ製作に踏み切れないとのこと。その
訳は‘We've been waiting for the technoloogy to catch
up with our ability to realize the world of Rama’とさ
れていた。つまり映像化するに当っての技術がまだ足りない
とされているもので、CGIで何でもできると思われる時代
となっても、まだフリーマンの判断では不満足のようだ。
 なお具体的な作品の計画として書かれていたのはこの作品
だけで、フリーマンの期待度の高さも判るレポートだった。
ファンとしてはもう少し待つことにしよう。



2011年06月19日(日) AVN、ザ・ウォード、モンスターズ、天国の日々、men's egg、スーパー8、スリー・デイズ+Thor記者会見

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
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『AVN』
Sushi-Typhoonと題されたアメリカでの公開を念頭に置いて
製作されたアクション映画シリーズの1本。2008年8月紹介
『東京残酷警察』のTokyo-Shockと同様のコンセプトで、今
回は4本の作品が製作された。
物語は題名の通り、Alien vs. Ninjaの闘いを描いたもの。
背景は戦国時代、伊賀忍者の一団が城攻めの任務を終えて里
への帰還を急いでいたその時、彼らの頭上を巨大な火の玉が
通過し、里の近くに落下するのを目撃する。
そこで帰還の前に下忍頭の命を受けた別動隊と合流した彼ら
は、ひとまずその落下地点を目指すことになるが。そんな彼
らを、高速で移動しながら手足や尻尾を自在に操って攻撃す
るエイリアンが襲い始める。
それでも団体戦では何とか数体を倒した忍者たちだったが、
仲間の1人が手負いのエイリアンに拉致され連れ去られてし
まう。そしてそのエイリアンの体液の跡を追った忍者たちが
観たものは…
オリジナルの『エイリアン』のコンセプトを適当にパクリな
がら、そこに忍者のギミックやチャンバラのアクションを盛
り込んで、とにかく80分の上映時間を徹底的に楽しませてく
れる作品になっている。
そのアクションもCGIなどふんだんに使用しているから、
本当に映画は監督の思いのままのものが描けるようになって
きたのだと、着ぐるみやミニチュアの時代を知っている者と
しては感慨にも浸ってしまった。

出演は、2010年『SP革命篇』などの三元雅芸、2008年3月
紹介『休暇』などの柏原収史、2010年5月紹介『おのぼり物
語』などの肘井美佳。因に肘井は、2009年にアメリカで製作
された“Ninja”という作品にも出演していたようだ。
監督は、2003年『巌流島』などの千葉誠治。本作主演の3人
は、それぞれ千葉監督が最近手掛けた忍者映画の出演者でも
ある。またアクション監督を今年公開『GANTZ』2作なども
手掛けた下村勇二が担当している。
さらに本作は、今年1月紹介『ブラック・スワン』などを手
掛けたハリウッドの大手製作会社フェニックス・ピクチャー
ズとリメイクの契約がなされたとのことで、本シリーズの目
標の一つが達成されたようだ。
なお、Sushi-Typhoonでは、この他に
『HELLDRIVER』(監督:西村喜廣、出演:原裕美子、しいな
えいひ、波岡一喜)
『極道兵器』(監督:山口雄大/坂口拓、出演:坂口拓、鶴
見辰吾、黒川芽以)
『DEADBALL』(監督:山口雄大、出演:坂口拓、星野真理、
田山涼成)
の作品が、同時公開されることになっている。

『ザ・ウォード』“The Ward”
1979年の『ハロウィン』や81年『ニューヨーク1997』、82年
『遊星からの物体X』、88年『ゼイリブ』などのジョン・カ
ーペンター監督による2001年『ゴースト・オブ・マーズ』以
来となる約10年ぶりの最新作。
舞台は1959年の精神病院。主人公は放火の現行犯で捕まった
若い女性。彼女は警察ではなくその病院に運ばれてくる。そ
の病院には隔離病棟があって、そこには先に4人の若い女性
が収容されていた。そして主人公は今まで別の女性がいたら
しい部屋に入れられる。
しかし主人公にはそこに収容されたことが納得できず、徐々
に仲間を作りながら反抗と脱走の計画を練り始める。一方、
その病院では先進的とされる精神病の治療が行われており、
その治療を受けた患者は全治したとして病棟には戻ってこな
かったが…。
病院が行う謎の治療法を巡って主人公の周囲にも異常な事件
が起こり始める。
2010年『シャッターアイランド』や今年4月紹介『エンジェ
ル・ウォーズ』でも1950年代に行われていた精神病治療の話
が出てきたが、本作でもその辺が背景になっている。ただし
本作ではその部分に相当の捻りが加えられたものだが…

出演は、2010年5月紹介『ゾンビランド』などのアンバー・
ハード、昨年10月紹介『ウッドストックがやってくる』に出
演のメイミー・ガマー、昨年10月紹介『キック★アス』に出
演のリンジー・フォンセカ。
さらに2008年3月紹介『Mr.ブルックス』に出演のダニエレ
・パナベイカー、それに新人のローラ・リー。また、2002年
4月紹介『アトランティスのこころ』などのミカ・ブーレム
が久しぶりに観られた。
内容的にはサイキック・ホラーで、『遊星からの物体X』の
ようなVFX満載の作品から考えると、カーペンターも円熟
したかなという感じもするが、ショッカー演出などの冴えは
衰えていない感じがした。
それに何とも若い女優たちを見事に揃えてくれたのも嬉しい
ところ。それは内容的に同列とは行かないが、1999年『17歳
のカルテ』を思い出させてくれたものだ。

『モンスターズ/地球外生命体』“Monsters”
総製作費1万5000ドル(約130万円)で作られたというモン
スター映画。本作の監督には2012年公開予定“Godzilla”の
リメイクに起用が噂されている。
発端は、NASAが打ち上げた地球外生命体調査のための探
査機。探査機はその採取に成功するが、帰還の際に機体が大
破。破片がメキシコの北部地帯に散蒔かれてしまう。
それから6年、探査機の破片に付着していた地球外生命体が
成長を始め、巨大生物が次々に誕生してメキシコ北部は危険
地帯になってしまう。それに対してアメリカは国境線に巨大
な防壁を建設してその侵入を防いでいたが…
主人公は、メキシコ側の危険地帯との境界線近くで取材中の
カメラマン。その漸く現地に辿り着いた主人公に思わぬ命令
が本社から届く。それは社長の令嬢がその地で足止めされて
おり、それを救出してアメリカに送り届けろというもの。
その命令に取材時間が奪われると最初は渋った主人公だった
が、本社には逆らえず令嬢をアメリカ行きのフェリーが出る
海岸線まで送る約束はする。しかしその旅は思わぬ障害続き
となり、主人公は令嬢を陸路でアメリカまで送らなければな
らなくなる。それは危険地帯を抜ける125kmの行程だった。
と言うことで、彼らは巨大モンスターに襲われた危険地帯を
進んで行くことになるが、発生から6年も経つと人々の暮ら
しも順応し、危険と隣り合わせながらもそこを離れることが
できずに留まっている人々も多くいる。
そんな人々の異様な生活ぶりなどが、廃虚と化した町の姿と
共に描かれて行く。
それにしても、廃虚の一部は実際の災害の跡で撮影されてい
るのかとも思えるが、そこに動き回る怪獣の姿や攻撃武器、
さらに巨大な防壁やフェンスなどがCGIで合成され、それ
らが見事な映像で描かれている。
実際にこれが130万円で作られたとは思えないほどのものだ
が、監督は自宅でパソコンに向かって1人でこつこつと作り
上げたのだそうで、その才能と努力には敬服するしかない。
他にも驚くような映像が次々に登場していた。
物語的には、主人公の危機感が薄過ぎるようにも感じられる
が、6年も経つとこんなものかな。まあ原発が大爆発しても
3カ月で危機感が薄れている日本人も変わりないから、実際
こんなものになってしまうのかも知れない。

出演は主にテレビで活躍しているスクート・マジュナリーと
ホイットニー・エイブル。実生活でもパートナーという2人
が、殆どアドリブという会話シーンなどに良い効果を出して
いる。その他は大半が現地で調達された素人だそうだ。
そして脚本、監督、撮影、視覚効果などを1人で行ったのは
ギャレス・エドワーズ。1975年生まれ、BBCやDiscovery
チャンネルなどでVFXのクリエーターを務めた後、Sci-Fi
チャンネルのコンテスト番組に応募。グランプリを獲得して
本作が実現した。
なお、物語がハッピーエンドだと思った人は注意力が無さ過
ぎなので映画を良く観てほしいものだ。


『天国の日々』“Days of Heaven”
前々回紹介『ツリー・オブ・ライフ』でカンヌ国際映画祭の
最高賞パルム・ドールを獲得したテレンス・マリック監督に
よる1978年カンヌ監督賞を受賞した作品。
物語の背景は第1次世界大戦が始まった頃のアメリカ・テキ
サス。ローンスター旗のたなびく農場に彼らはやってくる。
彼らは兄と妹2人という触れ込みだったが、兄と下の妹は実
の兄妹だが間の女性とは血の繋がりはない。
その兄はシカゴの鉄工場で働いていたが、労働待遇の悪さに
切れて事件を起こし、妹と一緒に流浪しながらその間に女性
も加わったようだ。しかし殆どその日暮らしの生活は辛苦に
満ちたものだった。
それでも仲睦まじい3人は、農場での小麦の収穫期だけの季
節労働者としてやってくるのだが、そこでその女性を若き農
場主が見初めることになる。そして「兄と妹も一緒に暮らせ
るのなら」と承諾した彼女は農場主と結婚し、3人には天国
の日々が始まるが…
その後の物語はほぼ想像の付くような展開になるが、そのド
ラマが大草原に建つ邸宅や、蒸気機関の農業トラクターなど
見事に再現された当時の風景の中で、息詰まるような演出で
繰り広げられて行く。

出演は、兄役に当時29歳のリチャード・ギア、農場主役には
2005年8月紹介『ステルス』などのサム・シェパード、農場
主が見初める女性役に2008年“The Accidental Husband”な
どのブルック・アダムズ、そしてナレーターでもある妹役に
本作で見出されたリンダ・マンズ。
マリック監督のデビュー作『地獄の逃避行』(Badlands)は
テレビ放映で鑑賞したが、すでにアメリカン・ニューシネマ
を見慣れていた目にはあまりピンとは来なかった。そして本
作以後の1998年『シン・レッド・ライン』、2006年2月紹介
『ニュー・ワールド』も、大作としては認めるものの今一つ
という感覚は否めなかった。
しかし本作は、前々回紹介した『ツリー・オブ・ライフ』と
明らかに対になるもので、これは絶対に併せて観る必要があ
る作品と感じる。この作品に描かれた自然の営みや人間の姿
の描写が新作の根底にあることは間違いない。新作を理解す
るために本作は欠かせないものだ。

『men's egg/Drummers』
シブヤ系男子(ギャル男)が活躍する男性向けファッション
雑誌men's eggから誕生した青春コメディ作品。
主人公は、町の伝統行事「観月祭」を取り仕切る神社の一人
息子。自分の人生は貧乏くじの引き通しと将来に夢も希望も
ない主人公に、突然神主の父親が倒れ、今年の祭りの仕切り
をお前に任せるとの話が舞い込む。
これに対して幼い頃から「観月祭」の目玉となる和太鼓によ
る神楽を特訓されていた主人公は、戸惑いながらもその仕事
を引き受けるのだが、そこには祭りの実施権を狙う近所の寺
の住職が何やら陰謀を企んでいるようだった。
そして、例年の和太鼓奏者のグループに出演を依頼した主人
公は何故か断られ、このため止むなく和太鼓奏者を募集して
新たに特訓することになるのだが…。そこに何故か主人公に
親しく話し掛けるギャル男が現れる。
こうしてギャル男とその仲間たちによる和太鼓訓練が開始さ
れる。つまり、物語はありがちな青春ドラマという感じで、
本作ではその素材が和太鼓ということになるものだが、実は
この和太鼓の演奏シーンが予想以上に良かった。
実際、映像で打楽器の演奏のタイミングを合わせるのはかな
り難しくて、特にバチを高く振り上げる和太鼓ではそれを合
わせるのは至難の業と言える。ところがこの作品では、後半
の演奏シーンのそれが見事に決まっていた。
これは作品の規模から考えても監督の演出と出演者の特訓の
賜物としか考えられないが、これは本当に一見の価値のある
ものに仕上がっていた。とかく日本の映画ではこの辺が蔑ろ
にされることが多いが、本作のこれは見事なものだ。

出演は、神主の息子役に今年2月紹介『高校デビュー』など
の古川雄輝、その妹役に2006年6月紹介『夜のピクニック』
などの高部あい、そしてギャル男のリーダー役に2008年6月
紹介『愛流通センター』などの前田公輝。
他に坂口拓、入来茉里、永島敏行、板尾創路らが脇を固め、
さらに雑誌モデルのギャル男、ギャルの面々が映画デビュー
を飾っている。
脚本は、2009年11月紹介『板尾創路の脱獄王』などの増本庄
一郎と2008年11月紹介『プライド』などの高橋美幸。時間経
過の説明などに多少の問題はあるが、この素材でこの展開は
上手く纏めていると言えそうだ。
そして監督は、2005年4月紹介『魁!!クロマティ高校』など
の山口雄大。今週は何と監督作品を3本も観てしまったが、
本作でちょっとほっとした。本人的にこの手の題材がどうな
のかは判らないが、特に演奏シーンの演出は見事と言えるも
のだ。

『スーパー8』“Super 8”
2009年『スター・トレック』のJ.J.エイブラムス監督と、
製作のスティーヴン・スピルバーグがタッグを組んだハート
ウォーミング・ファンタシー作品。
物語の背景は、スリーマイル島の原発事故が起きた1979年の
こと。主人公の少年たちはコンテストに応募するための8ミ
リ映画の製作をしていた。ところが無人駅でのロケ撮影の最
中、その駅を通りかかった貨物列車が脱線、転覆、爆発する
事故に遭遇する。
そして辛く難を逃れた少年たちは、事故の原因が自分たちの
通う学校の教師であったことを知り、しかもその教師からは
すぐにその場を離れないと、少年たち自身や彼らの家族の生
命も危険に晒されると忠告される。
そのため事故現場からは逃げ去った少年たちだったが、やが
て彼らの住む町に軍隊が到着し、何やら怪しげな調査を開始
する。しかも少年たちが撮影した8ミリフィルムには尋常で
はないものが写されていた。
「エリア51」絡みの話という情報は事前に伝わっていて、
一部には『E.T.』のリメイクという噂もあった作品だが、
完成された作品は『E.T.』と『未知との遭遇』の中間と言
えるような感じのものになっていた。
それは、例えば主人公の少年の家が父子家庭(『E.T.』の
主人公の家は母子家庭)であったり、少年たちが移動手段に
自転車を使っているなど、『E.T.』との共通点は容易に見
つけられるものだが、その一方で軍隊の登場などは『未知と
の遭遇』を思わせた。
いずれにしても、1977年『未知との遭遇』と82年『E.T.』
の間の1979年が物語の背景というのは、それらが意識されて
いることは間違いないだろう。しかも製作のスピルバーグは
エイブラムスが書いた脚本にも相当にアイデアを提供してい
るようだ。
そして物語は、スピルバーグが再び『E.T.』と『未知との
遭遇』に挑戦したら、きっとこんなものになっただろうと思
わせる作品になっていた。しかもそこにエイブラムス独自の
外連がたっぷりと注ぎ込まれているものだ。

少年たちの配役には、本作がデビューのジョエル・コートニ
ーとライリー・グリフィス、多数の短編映画に出演している
ライアン・リー、2007年3月紹介『ハリウッドランド』など
のザック・ミルズ、テレビで活躍のガブリエル・バッソ。
それに2007年1月紹介『バベル』などのエル・ファニング。
因にファニングは、今まではダコタの妹として観てきたが、
本作では見事にティーンエイジャーの少女という感じで、さ
らに劇中の8ミリ映画で演じる女性の役には驚かされる演技
力を見せてくれた。
6月24日の日本公開で宣伝期間は短いが、公開されればこの
夏の最大の話題作になること間違いなしと思われる作品。な
おプレス資料にはSF超大作と銘打たれていた。

『スリー・デイズ』“The Next Three Days”
2009年12月に紹介のフランス映画『すべた彼女のために』の
ハリウッドリメイク。前の紹介の時にも書いたが、このリメ
イクを、2005年11月紹介『クラッシュ』などのポール・ハギ
スが脚色監督している。
主人公は2年制大学の教授。ある日突然妻が殺人容疑で逮捕
され、裁判の結果は状況証拠や目撃証言などで有罪で、懲役
30年の刑に処せられてしまう。それは2人の間の幼い息子が
大人になってしまう年月だ。
これに対する妻の主張は、彼女が現場付近でぶつかった物取
りによる犯行で、彼女はその直後に現場に行ったが死体には
気付かず車に乗ってしまった…というもの。その主張を信じ
る夫は手を尽くすが、控訴も棄却されてしまう。
そんな夫が考えた究極の方策は…妻を脱獄させ、家族3人で
海外に逃亡することだった。そしてあらゆる手段を駆使して
その目的に邁進して行くが…。
フランス映画のオリジナルは版98分の作品だが、リメイクの
アメリカ版は2時間2分、さらに日本上映版は2時間14分の
作品になっている。
その長くなった分は、まず主人公側の手立てや計画が克明に
なっているのと、警察側の動きが詳細になっているようだ。
そのためオリジナルでは多少判り難かった部分も本作では納
得できるように説明されていた。

主演はラッセル・クロウ。ハギスがまず彼の主演を想定して
脚本を執筆したとのことで、妻を想う夫の心情の演じ方など
正に填り役という感じだ。
そしてオリジナルではダイアン・クルガーが演じていた妻役
には、2009年4月紹介『ブッシュ』などのエリザベス・バン
クス。さらに2人の息子役には、前回紹介“Insidious”に
出演のタイ・シンプキンスが扮している。
他に、リーアム・ニースン、ブライアン・デネー、昨年12月
紹介『トロン:レガシー』に出演のオリヴィア・ワイルド、
2002年11月紹介『24アワー・パーティ・ピープル』などの
レニー・ジェームズらが脇を固めている。
オリジナルの行間をとことん埋めている感じの作品。しかし
演出がそれを冗漫にせず、特に後半の計画を実行して行く間
の緊迫感は、尋常でないテンションで描かれている。サスペ
ンスとしても見事な作品だ。
        *         *
 今回は、7月2日の『マイティ・ソー』“Thor”公開に合
わせて、同作に出演した日本人俳優・浅野忠信の記者会見が
行われ、質問もしたのでその報告をさせてもらう。因にこの
会見は、現在ロンドンで行われている映画(“47 Ronin”と
思われる)の撮影の合間を縫って帰国し行われたものだ。
 その会見では、最初にテスラ・コイルによる雷光が壇上で
実演され、それに合わせて浅野が登場する演出が施された。
実はこの装置は、僕は以前に横浜で行われた世界SF大会で
も観ているが、その時は自分の出番との関係で実演は見逃し
ており、今回は初めて実際にスパークの飛ぶ様を観ることが
できたものだ。
 その後に浅野の挨拶と、ケネス・ブラナー監督のヴィデオ
コメントが場内に流されたが、その中では浅野が現場で「タ
ッド」と呼ばれていたことが判明。ブラナー監督が親しげに
「タッド」と呼びかける様子は観ていて感動的だった。
 そして僕は、浅野が“Battleship”“47 Ronin”と続けて
ハリウッド資本の作品に出ていることを指摘して、その手応
えはあるかと聞いてみた。しかしその答えは、「それらが公
開され、評価を聞くまでは手応えと言える状態ではない」と
のことで、あくまで謙虚に結果を待っている風だった。
 また併せて、今後は軸足を海外に置くのかとも聞いたが、
「自分は日本映画で育てられたので、今後も日本映画にも出
続けたい」との回答で、これも謙虚な回答だった。
 ただし浅野は、実は祖父がアメリカ人で、子供の頃からア
メリカで何かをしたいという気持ちは持っていたとのこと。
今回は撮影の合間に初めて祖父の墓にも参ったとのことで、
アメリカ映画への思いはかなり強いものがありそうだった。
 以上、記者会見の報告でした。



2011年06月18日(土) 「フランス映画祭2011」アーサー3、Chantrapas、消えたシモン・ヴェルネール、マムート、匿名レンアイ相談所、短編集+解説

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※このページでは、6月23日〜26日に東京で開催される ※
※「フランス映画祭2011」において上映される作品の中か※
※ら、試写で見せて貰った作品を紹介しています。なお、※
※文中物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読ま※
※れる方は左クリックドラッグなどで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『アーサー3(仮)』
        “Arthur et la guerre des deux mondes”
「フランス映画祭2011」のオープニングを飾る作品。2007年
4月紹介『アーサーとミニモイの不思議な国』、2010年2月
紹介『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』に続くリュック
・ベッソン原作、脚本、監督による「アーサーとミニモイ」
シリーズの第3作。
実は、映画祭パンフレットに掲載された本作の紹介では日本
での権利者の欄が、通常の配給元ではなく販売元となってい
て、これはDVDストレートで販売されるものと判断。字幕
無しを承知で試写を観に行った。しかしその後に日本公開も
行われることになったようだ。
しかも試写されたのはフランス語吹き替え版。フランス語の
映画を字幕無しで観るのは、1978年パリのキノラマ館で“La
planète sauvage”を鑑賞したとき以来となったが、正直に
言ってストーリーの展開は判るが、細かい台詞のギャグなど
はまったく理解できなかった。因に本作のオリジナルは英語
で撮影されているものだ。
ということで、公開時にまた試写が観られたら再度紹介させ
て貰うことにして、今回はそんな程度の理解で映画の印象だ
け書かせてもらいます。
物語は前作の全くの続きで、ということは前作のネタばれに
なってしまうが、前作最後で人間界に進出したマルタザール
の後を追ってミニモイのアーサーたちも地上を目指す。しか
し人間サイズになったマルタザールに対してアーサーたちは
ミニモイのままで…
つまり今回の舞台は主に人間界となり、そこで人間サイズの
マルタザールは人間相手にも悪行を繰り広げ、小さいままの
アーサーたちは玩具の乗物などを駆使してそれに対抗して行
くことになる。
そしてマルタザールの仕業で巨大化した昆虫に乗った兵士た
ちが人々を襲う一方で、アーサーたちは鉄道模型上でのアク
ションなどを繰り広げる。この辺はまあ台詞が判らなくても
充分に楽しめた。
そして、結局はマルタザールが破れてミニモイの世界に戻さ
れるのだが…、その辺の経緯は多少不明だった。でもまあ、
アクションを観ているだけでもそこそこ楽しめたものだ。

出演は、フレディ・ハイモア、ミア・ファーロー、ペニー・
バルフォー、ロバート・スタントンら実写部分は前作と同じ
で、ミニモイたちの声優も同じのようだが、今回は全員の声
がフランス語に吹き替えられていた。
さらに本作は3D化が行われているようで、エンドクレジッ
トにはその関連と思われる記載が数多く観られたが、試写さ
れたのは2D版。日本で劇場公開されたらそれも楽しみたい
ものだ。

“Chantrapas”(原題:邦題は後で補足します)
2007年9月紹介『ここに幸あり』などのオタール・イオセリ
アーニ監督による昨年のカンヌ国際映画祭で特別招待上映さ
れた作品。
前作の紹介の時にも書いたが、この監督の以前の作品は何と
なく性に合わなかった。それが前作では、政治問題を扱って
ちょっと面白かったのだが、本作はさらに映画製作がテーマ
でこれは身近にも感じられたものだ。
その作品はかなり監督自身の自伝にも近いもので、共産圏の
祖国を離れて異国で映画製作に取り組む若い監督の姿が描か
れる。しかもこの監督は、アート作品が本来で西欧の商業作
品には肌が合わない。
そんな監督の姿が描かれるが、これがまた「ノンシャラン」
で、何というか取り留めもない作品になっている。それがこ
の監督の特性だし、それがファンを集めているものでもある
のだ。
何たって祖国との通信には伝書鳩を使ってしまうのだから、
この感覚は普通ではない。そんなところが間怠っこくもある
が面白くもある。そんな感覚が何本か観ている内にこちらも
馴らされたのかな、ある種の心地よさにも感じるようになっ
てきた。
物語は、主人公がグルジアの田舎町に住む少年だった頃から
始まる。少年は友達の男女と共に貨物列車に只乗りして壊れ
た教会に行き聖画を盗み出すなど悪戯を繰り返している。そ
んな少年が映画を撮り始め、その作品は海外から評価される
ようになる。
そして海外から監督として招請されるが、彼の母国からは、
一旦出国した文化人は帰ってこないのが通例だった。それで
も役人の計いで出国は許されるのだが、外国に来ても彼の行
動は常に監視されていた。
そんな状況の中で外国での映画製作は開始されるが、彼の製
作意図とプロダクション側の考えが合っていないことが判り
始める。それでも何度かの衝突の末に映画は完成披露を迎え
るが…

出演者は、監督の他の作品と同様ほぼノンスターのキャステ
ィングだが、今回は中に2007年9月紹介『夜顔』のビュル・
オジェや、1986年大島渚監督の『マックス・モナムール』に
出演のピエール・エテらが脇を固めていたようだ。
なお本作は、6月23日〜26日に開催される「フランス映画祭
2011」で上映された後、来年岩波ホールで一般公開の予定に
なっている。

『消えたシモン・ヴェルネール』
              “Simon Werner a disparu”
1992年の高校を背景にしたミステリアスな作品。なお本作の
日本での一般公開の予定はないようだ。
学園を舞台に、同じクラスの生徒が次々に行方不明になって
行くという異常事態を、それぞれの生徒の視点から描く。そ
れは映画の現時点から数日前を起点に、複数の生徒のその間
の行動などが描かれるもので、その中には行方不明になった
生徒も含まれている。
ということで物語の全体は謎解きにもなっているものだが、
その解かれる謎自体は何と言うかこちらの期待とはちょっと
ずれていて、その辺で多少呆気に取られる感じはした。でも
まあそこに至るまでの若者たちの生態というか、そんなもの
が面白い作品とは言える。
1人の視点が終わるごとに時間が巻き戻される手法自体は、
以前の作品にもあるし目新しくはないが、本作ではそれぞれ
の視点となるキャラクターの心情などが微妙な点も面白くは
あったものだ。
因に、映画祭の紹介記事では、本作は2003年ガス・ヴァン・
サント監督の『エレファント』に比較されていたが、極めて
衝撃的だった実際の事件を題材にしたアメリカ映画に比べる
のは、多少酷というものだろう。
第一に本作の物語は、アメリカの事件が起こる以前の1992年
が背景とされているものだ。それはまだ携帯電話もなくパソ
コンやインターネットも普及していない時代の話。そんな多
分今よりのんびりした時代が背景で、そこには多少のノスタ
ルジーも感じられた。
そんな背景の中での、出演した若い俳優たちの伸び伸びした
演技も楽しみたい作品だ。

出演は、ジェール・ベリシエ、アナ・ジラルド、オドレイ・
バスティアン、イヴァン・タッサン。なおジラルドは名優の
娘だそうだ。また脚本と監督は、短編映画やテレビを手掛け
るファブリス・ゴベールによる長編デビュー作。
出演者も監督も新人が中心で、将来のフランス映画を背負っ
て立つ人材が結集しているようだ。それらを確認するため、
できればプレス資料には監督や俳優たちの紹介がもう少し詳
細に欲しかった。
なお本作では、サウンドトラックを1981年に結成されたアメ
リカのパンクバンド=ソニック・ユースが担当したことでも
話題になっているようだ。

『マムート』“Mammuth”
フランス映画界の名優ジェラール・ドパルデューの主演で、
定年退職した男の年金問題を扱った作品。なお本作の日本で
の一般公開の予定はないようだ。
主人公は16歳の時から地道に働き続け、遂に定年の日を迎え
た男性。同僚たちにはささやかな送別会をしてもらい、ささ
やかな贈り物も貰って家に帰ってくるが、まだ働いている妻
には多少疎まれている感じだ。
しかも今までが仕事一筋だった男性には、家事もままならず
日曜大工も、てきぱきこなしていた勤務先での仕事のように
は行かない。しかもいろいろな職場を転々としてきた男性に
は年金の不備が発覚し、このままでは満額を受給できないと
通告される。
このため男性は、過去に働いていた職場を訪ねて支払いの証
明書や働いていたことを証明する供述書を集めることが必要
になる。そこで男性は物置きで埃を被っていたバイク=マム
ートを引っ張り出し、その旅を始めるのだが…
年金を巡るトラブルは、日本でも大騒ぎになったばかりでい
ずこも同じという感じだが、日本の場合は役人の怠慢と恐ら
くは不正が原因だから映画とは異なる。しかし映画に描かれ
た異邦人の不法就労の問題など、その国にはその国なりの問
題があるようだ。
ただし映画は年金問題だけを扱っているのではなく、そこか
ら始まる自分自身のアイデンティティを探す旅が主題となっ
て行く。そしてそれは敢えて失ったのか、止むなく失ったの
か、その点が問題となって行くものだ。

共演は、主人公の妻役に1月紹介『ゲンスブールと女たち』
などのヨランド・モロー。他に、イサベル・アジャーニ、ブ
ノア・ポールブールドらが脇を固めている。
監督はテレビ出身のブノワ・ドゥレピーヌ&ギュスタヴ・ケ
ルヴェンのコンビ。
なお、マムートは上記のようにバイクの名称だが、ネットで
(munch “mammut" bike)と検索したら、映画のと同じ2連の
ヘッドライトの付いたオートバイの画像が見付かった。映画
の登場するのはそのヴィンテージモデルのようだが、排気音
もかなりの迫力の名車のようだ。
ただし映画は画像がかなり荒く、それは巻頭の画面などから
意図的のようにも思えるが、その意図が何なのかよく判らな
かった。昔の映画ではこのようなタッチのものもあったよう
な気がするが、今の時代に敢えてそれを再現した理由が知り
たいものだ。

『匿名レンアイ相談所』“Les Emotifs anonymes”
共に対人恐怖症の男性と女性が、その困難を乗り越えて行こ
うとする姿を描いたコメディ作品。なお本作の日本での一般
公開の予定はないようだ。
主人公は、天才的なチョコレートの女性パティシエ。しかし
極端なアガリ症で他人とはまともに話すことができない。そ
れでもチョコレートから離れられない彼女は、とあるチョコ
レート工場に就職するが、それは製造部門ではなく営業部門
だった。
それでも苦手な会話も何とか頑張り、菓子店に製品を置かせ
てもらっていたが、遂に新製品がなけれはもういらないと言
われてしまう。そこで知恵を絞った彼女はネットを経由して
工場の職人たちを指導し、見事に新製品を造り出すが…
一方、工場の経営者も彼女を上回るアガリ症で、相談してい
る精神科医にはいろいろ課題を与えられて、その課題を達成
すべく彼女に接近を図るのだが、これも行き違いの連続で、
ついに2人の関係は決定的な局面を迎えてしまう。
まあ、ラヴコメにはよくあるパターンという感じの作品では
あるが、その中心にあるのがチョコレートで、正に甘い香り
が一杯という感じの作品だ。しかもそこには隠遁した伝説の
パティシエの話なども介在させて、それなりに変化のある作
品に仕上げられている。

脚本と監督は、2008年6月紹介『ベティの小さな秘密』など
のジャン=ピエール・アメリス。前作も若い女性の心理を描
いた柔らかいタッチの作品だったが、本作では女性だけでな
く男性の側からもその心理が描かれている。
今の時代にこんな初な男女がいるのだろうかというようなお
話だが、映画を観ているとそんな人たちがいて欲しいという
思いにもなる、そんな優しさに溢れた作品に仕上げられてい
る。

出演は、女性パティシエ役に本作でセザール賞主演女優賞に
ノミネートされたイザベル・カレ。そして経営者役に『マム
ート』にも出ていたブノワ・ポールブールド。劇中でカレが
歌う“I Have Confidence”と、ポールブールドが歌う「黒
い瞳」も心地良かった。
なお本作は、フランスでは昨年のクリスマスシーズンに公開
されてスマッシュヒットを記録したそうだ。

『フランス映画祭・短編集』
毎年「フランス映画祭」では最新の短編作品が上映されてお
り、今回は以下の6作品が選ばれている。
「ロープ」“La Femme à cordes”(監督:ヴラディミール
・マヴニア=コウカ/アニメーション作品)
カーニバルを訪れた男が、特別な出し物に招待される。それ
はロープに支えられた1人の女性が出演しているものだった
が…。今回上映の中で唯一ファンタスティックな内容の作品
だが、結末がちょっと曖昧すぎる感じがした。

「世界中がジュ・テーム」“Tout le monde dit je t'me”
(監督:セシル・デュクロック、出演:ロマンヌ・バロン、
ロラ・イテアヌ)
少女2人が「ジュ・テーム」という言葉の意味について議論
をしている。2人の会話だけで成立している作品で、多分に
実験的な作品。まあこういうものが1本ぐらいはあってもい
いが、それ以上の意味合いは感じられなかった。

「直立不動の男」“Un homme debout”(監督:フエッド・
マンスール、出演:サミュエル・ジェイ)
1人の男が町に戻ってくる。男には町の人々の大半が冷たい
態度を示す。男は2人の女性が気に掛かってるようだ。男は
何故に町の人たちから嫌われるのか、男と2人の女性との関
係は…謎が徐々に解き明かされて行く。

「ピアノ調律師」“L'accordeur”(監督:オリヴィエ・ト
レイナー、出演:グレゴワール・ルプランス=ランゲ)
ピアニストを目指していた男が登竜門のコンテストで失敗、
やむなく調律師の道を選ぶ。しかし男はそこで盲目を装い、
そのため彼の目の前ではいろいろな人間の本性が演じられる
ようになる。

「娼婦になっていたかも」“J'aurais pu être une pute”
(監督:バヤ・カスミ、出演:ヴィマラ・ポンス、ブリュノ
・ボタリデス)
ホームセンターで剪定鋏を買おうとしている若い女性。しか
し彼女はその場で気を失ってしまい、中年の男性が彼女を助
けるが…。話をする内に徐々に彼女の緊張の理由などが明ら
かにされて行く。

「エリーズ」“La Noyée”(監督:マチュー・イボー、出演:
マリー・リヴィエール)
1人暮らしの母親と帰省した息子の物語。久しぶりに会った
2人はなかなか意志疎通ができないが、最近母親の身近に起
きた出来事の経緯を追う内に、徐々に2人の心が解きほぐさ
れて行く。

短編映画というのはなかなか観る機会が少ないが、映画祭な
どで最新の作品が観られるのは嬉しいものだ。そして今回選
ばれた作品もそれぞれドラマティックであり、個々には面白
い作品が揃っている。
ただ僕としては、全体的にはちょっと物足りなさを感じた。
それは今回選ばれた中に風刺性を持った作品が無かったこと
にもよる。僕はそういうものの中から革新的な作品も生れる
と考えるので、そういった作品も観たかったところだ。
        *         *
 今回の「フランス映画際2011」では、長編12本と短編集が
上映される。その中からここでは、長編5本と短編集を紹介
したが、上記以外で上映される内の『この愛のために撃て』
『ハートブレイカー』『セヴァンの地球のなおし方』は日本
での一般公開が決まっているものだ。
 しかし今回は、日本公開が未決定の『美しき棘』『6階の
マリアたち』『トムボーイ』『パリ猫の生き方』の4本を観
ることができなかった。しかも僕自身が会期中は所用で会場
に行くことができず、このまま見逃す可能性の高いのが残念
な事態となっている。
 ところで今回の映画祭に出席するフランス代表団は7人。
例年20人前後が来日するのに比べるとかなり少人数だが、そ
の原因は、フランス政府が日本、特に関東地方の東京で行わ
れる映画祭への参加を自粛するように指示を出したとの噂も
流れている。
 そんな中で、日本贔屓のリュック・ベッソン監督が団長を
引き受けてくれているものだが、中には“Chantrapas”のイ
オセリアーニ監督のように、自分はグルジア出身でフランス
人ではないから…と言っている人もいるようで、ますますフ
ランス政府の指示という説が濃厚になっているものだ。
 その理由はもちろん原発事故の影響を恐れてのものだが、
原発大国とされるフランス政府がそう言っているのだから、
この事態は相当に深刻と判断されているのだろう。
 一方、ドキュメンタリーの『セヴァンの地球のなおし方』
で来日するジャン=ポール・ジョー監督は、この機会に福島
原子力発電所の現地取材も敢行するそうで、来日メムバーも
正に多士済々という感じだ。
 なお上記の他には、『美しき棘』のレベッカ・ズロトヴス
キ監督、『消えたシモン・ヴェルネール』に出演のジェール
・ベリシエ、『匿名レンアイ相談所』のジャン=ピエール・
アメリス監督、短編作品『ピアノ調律師』のオリヴィエ・ト
レイナー監督の来日が予定されている。



2011年06月12日(日) 女殺油地獄、晴れた青空、大鹿村騒動記、TFDSM(特)、インシディアス、明りを灯す人、田中さん/ラジオ体操、極道めし+Lone Ranger

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『シネマ歌舞伎/女殺油地獄』
近松門左衛門作の世話浄瑠璃を歌舞伎で演じた作品。主役の
与兵衛を演じさせたら当代一と言われる片岡仁左衛門の主演
で平成21年6月に「歌舞伎座さよなら公演」の一つとして演
じられた舞台がHD撮影でスクリーンに再現される。
大阪天満の油屋河内屋の息子与兵衛。その母は実の親だが、
父は実父が亡くなった際に家督を保つため元の番頭が母親と
結婚したもの。このため継父は元の主人の息子である与兵衛
には意見ができない。
そんな複雑な家庭のせいか、与兵衛は放蕩者となり、家の金
を持ち出しては遊び呆けている。そして侍になった親戚にも
迷惑を掛ける羽目となり、遂に父親は勘当を申し渡してしま
う。
息子が放蕩者と判っていても子供のことが気に掛かる親心。
そんな親の心を知り、一旦は改心しようとする与兵衛だった
が…。
東京の六本木には試写会場が幾つかあって、夜間の試写の帰
り道などで繰り出してくる男女の姿を観ていると、それが自
分の稼いだ金で呑んでいるなら良いが、とうてい勤務先から
来たのではないと思える衣装の連中などには、金の出所が心
配になる。
そんな今も変わらない若者の風俗、それが江戸時代にすでに
描かれていたという作品だ。しかも刹那的に犯罪にも手を染
めてしまう。まさに現代でも同じことが起きている…そんな
ことも考えてしまう作品だった。

出演は、仁左衛門=与兵衛の他は、継父役に中村歌六、実母
役に片岡秀太郎、そして物語の鍵となる豊嶋屋お吉役に仁左
衛門の息子の片岡孝太郎。特に題名にもなっている与兵衛、
お吉の油まみれの立ち回りは見応えがあった。
また、お吉の娘お光役は仁左衛門の孫の片岡千之助で、親子
三代の共演にもなっている。
シネマ歌舞伎は本作が第13弾、中には昨年8月紹介『大江戸
りびんぐでっど』のような珍品もあるが、歴史ある作品の重
みは確かなもの。その保存だけでも価値のあるシリーズと言
える。さらに新歌舞伎座が完成したら3Dでの撮影も検討し
て貰いたいものだ。

『あの、晴れた青空』
昨年11月『Pure』という作品紹介しているごとうしのぶ
原作「たくみくんシリーズ」の映画化第5作。
最初に書いて置くと、このシリーズは女性向けに作られてい
るもの。若いイケ面と言われる男優が大挙して登場して、そ
のイケ面を女性たちがうっとりしながら観るという趣向の作
品だ。
実は、以前に同様の趣向の作品でトークイヴェントも付いた
「完成披露試写会」を観させてもらったこともあるが、一般
興行より高い入場料で観客の集まるそれは、満員の女性の熱
気が溢れんばかりのものだった。
そんな女性たちが本作でも歓声を挙げたり、溜め息を吐きな
がら観るのだろう。従って僕などは本来の観客の範疇にない
もので、それで評価するのはかなり難しいが、その難しさが
本作ではさらに進んでいるような気もした。
物語は、前作の時は全寮制の学園全体の中での複数のカップ
ルの姿が描かれたが、本作では本来の主人公であるタクミと
ギイに特化されて、特にタクミ自身の問題と、その助けにな
ろうとするギイの姿が描かれている。
それは友情の物語でもあり、それとして理解もできるものだ
が…。元々若い男子同士の恋愛を描くシリーズではあるが、
正直にはここまで描いていいのかと思うレヴェルに来ている
感じもした。これに女性たちはついて行くのかな。

出演は浜尾京介、渡辺大輔、浜口幸広、馬場良馬、内藤大希
ら第2作からのレギュラー陣を中心に、こちらも『テニ王』
出身の高崎翔太が新登場。また中年の教師役で昨年12月紹介
『ウルトラマンゼロ』などに出演の石橋保が出演している。
脚本の金杉弘子と監督の横井健司も前作から引き続きだ。
なお、本作はタクミとギイの登場最終章になるそうだが、シ
リーズは今後も続くようでその展開はどうなるのか。大体、
タクミが居なくては「たくみくんシリーズ」ではないと思う
のだが、その辺はどうなるのだろう。

『大鹿村騒動記』
長野県に実在する大鹿村という山間の村落を舞台にした人間
喜劇。2008年3月紹介『闇の子供たち』などの阪本順治監督
による作品。
物語は、村内の停留所に路線バスが到着するところから始ま
る。バスに乗って来たのは若い男と初老の男女。バスの運転
手は初老の男女に見覚えがあるようで声を掛けるが、男女は
サングラスで顔を隠すようにしてその場を立ち去る。
その男女が向かったのは「ディア・イーター」という看板を
掲げた店。そして男は、店の主人に向かって女を返すと切り
出す。その申し出に店主は唖然とするが…。さらに店には、
バスを降りた若い男も働きたいとやってくる。
南アルプスの山麓に位置するその村には、300年の伝統を誇
る「大鹿歌舞伎」と呼ばれる村芝居があり、今年もその公演
に向けて村民たちは稽古に励んでいた。ところが村の世論は
リニア新幹線の誘致を巡って揺れ動いており、それは稽古に
も影を落とす。
そこにさらに店主と初老の男女との関係や、若い男が抱える
問題などが絡んでお話は展開されて行く。

企画自体は「大鹿歌舞伎」の紹介が目的なのかな。しかし阪
本監督はそのまま描くのではなく、そこに様々な人間模様を
織り込んで見せた。その物語は最近ではありがちかも知れな
いが、それを南アルプスの大自然を背景に大らかに謳い上げ
ているものだ。
そしてその中に「大鹿歌舞伎」の歴史や実際の芝居の模様、
さらに回り舞台の様子など、芝居自体についての多角的な紹
介も行われている。
出演は、店主役に原田芳雄、初老の男女に大楠道代と岸部一
徳、若い男に冨浦智嗣。さらに佐藤浩市、松たか子、石橋蓮
司、小倉一郎、でんでん、三国連太郎、瑛太、加藤虎ノ介、
小野武彦らが脇を固めている。
上映時間は1時間33分の作品で、内容的にも重いものでもな
いし、画面では南アルプスの大自然も満喫できて、気楽に楽
しむ作品というところだろう。因に本作は、入場料1000円で
映画館で鑑賞できるようだ。

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』
    “Transformers: Dark of the Moon”(特別映像)
2007年、2009年に公開された日本製の玩具が基のVFXシリ
ーズ第3作。因に本作では3部作が完結編となるようだが、
シリーズ初の3Dで製作されている。ただしその全編は未公
開で、今回は巻頭8分45秒とダイジェスト6分55秒の映像が
紹介された。
実はシリーズの前2作は試写状が来なかったので、ここでも
紹介しなかったものだが、その物語では地球を舞台にして、
金属生命体からなる人類の味方のオートボットと、それに敵
対するディセプティコンの闘いが描かれた。
そして本作ではその第3戦が繰り広げられるものだが、ここ
で本作では、1969年のアポロ11号による月面探査にまで遡っ
て、人類と金属生命体(トランスフォーマー)との関りの歴
史も明らかにされるようだ。
ということで今回の特別映像では、その巻頭の主にアポロ計
画との関連を観ることができた。そこではケネディの演説に
始まってニクソンとの2元中継などが描かれ、さらにそこに
隠されたアポロ計画の真の目的が暴露されて行くものだ。
それは、当時を知るものにとっては懐かしいニュース映像と
再現映像で展開されており、特に金属生命体との関りに係る
映像には思わずニヤリとしてしまうものもあった。それは当
時を知る僕らには楽しめたが、さて当時を知らない人にはど
う映るのだろう。
アメリカ人には自国の歴史だから理解は高いだろうが、最近
の音楽とファッションにしか興味のない日本の若者には、人
類が月に行ったことなど知らない連中も多いようで…。でも
全部がフィクションとして楽しんでくれちゃうのかな。
いずれにしても、本作の物語はそれだけではないし、その後
に上映されたダイジェストの迫力あるアクションシーンは、
それだけで充分に満足できるものが満載されていそうな感じ
だった。

主演は、全3作通じてのシャイア・ラブーフ、ヒロイン役に
は本作が映画デビューとなるモデル出身のロージー・ハンテ
ィントン=ホワイトリーが扮している。
さらにジョシュ・デュアメル、タイリース・ギブスン、ジョ
ン・タトゥーロのレギュラー陣に加えて、ジョン・マルコヴ
ィッチ、パトリック・デンプシー、フランシス・マクドーマ
ンドらが新たに登場するようだ。
製作と監督は、前2作と2005年7月紹介『アイランド』など
のマイクル・ベイ、脚本は、シリーズ前作と2005年4月紹介
『ザ・リング2』などのアーレン・クルーガー。全編の試写
を観たらまた紹介する予定だ。

『インシディアス』“Insidious”
後に人気シリーズになる2004年9月紹介『ソウ』の第1作を
手掛けた監督ジェームズ・ワン、脚本リー・ワネルのコンビ
による新たなホラー作品。
『ソウ』シリーズを2006年10月紹介の第3作で引退したワン
とワネルのコンビは、その後に2008年1月紹介『デッド・サ
イレンス』を発表しているが、本作もそれに続く本格的なホ
ラー作品だ。
物語に登場するのは3人の子供のいる一家。夫は学校の教師
で、妻はソングライターのようだ。そんな一家が、古い一戸
建ての家に引っ越してくる。そこは夫婦と3人の子供には充
分な部屋のある満足できる物件だった。
ところが引っ越し荷物の片付けを始めると、荷物の一部が紛
失したり、それが思いも寄らないところで発見されたり…。
やがて屋根裏から変な物音が聞こえ始め、赤ん坊の部屋に付
けたモニターからも異常な音声が聞こえるようになる。
さらに黙って屋根裏部屋に上がった長男が梯子から落ち昏睡
状態になるが、それは現代の医学では説明の付かない異常な
昏睡だった。そして夫妻が藁をも掴む気持ちで霊能者に助け
を求めると…。

出演は、夫役に2008年12月紹介『パッセンジャーズ』などの
パトリック・ウィルスン、妻役に2006年12月紹介『マリー・
アントワネット』などのローズ・バーン、長男役には2008年
『リボルーショナリー・ロード』のタイ・シンプキンス。
他に、2006年9月紹介『スネーク・フライト』などのリン・
シェイ、そして今年1月紹介『ブラック・スワン』にも出て
いたバーバラ・ハーシー、さらに脚本家のリー・ワネルらが
脇を固めている。
ホラー作品としてショックシーンなども楽しむことのできる
作品だが、実は、長男の昏睡の因果関係などがそれなりに面
白く丁寧に設定されていたもので、ただ脅かせばいいという
最近のスプラッターホラーとは一線を画する満足できる作品
だった。

なお、本作はエンドクレジットの後にちょこっとあるので席
を立たないように。

『明りを灯す人』“Svet-Ake”
昨年のカンヌ国際映画祭<監督週間>で正式上映され、国際
環境映画祭では劇映画部門のグランプリを受賞したキルギス
の作品。
主人公は、村の人から「明り屋さん」と呼ばれている男性。
彼には電気工事士の資格があるらしく、人の家に呼ばれては
電気配線の修理などを行っている。さらに彼は貧乏な家では
配線をいじって電力メーターを少し逆回転させてしまったり
もしている。
しかし彼の仕事はそれだけではない。それは行った先の家で
村から出ていった家族のことを心配したり、いろいろな心配
事の相談に乗るのも彼の日課だ。
そんな彼には大きな夢があった。それは風の強い村の入り口
の谷間に、風力発電施設を設けること。それは頻繁に停電す
る村の電力事情を解決するもので、そのため自宅に風力発電
機を設置して実験したり、すでに設計図なども描いていると
いう。
そして彼の夢を聞きつけた政治家たちが、彼の許に現れるよ
うになる。さらに中国人の投資家を接待する席に呼ばれたり
もするが…。彼が設置したテレビには首都で行われている反
政府デモのニュースなども報じられている。
舞台のキルギス共和国は、1991年に旧ソ連から独立したもの
の、旧ソ連の衛星国の悲しさで殆ど産業が育っておらず、独
立宣言後も経済状態は最貧国のレヴェル。そのため政変が繰
り返されており、映画に出てくるのは2005年のデモの様子だ
そうだ。
しかしそんな国家状態の中でも希望を持って、未来に明りを
灯そうとしている人がいる。そんな苦しい中での希望を描い
た作品だ。
因に、本作の英語題名は“The Light Thief”だそうで、映
画の内容はある意味それがずばりという感じではある。しか
しそれを直訳して日本語の題名に相応しいものかどうか。今
回の邦題は映画の他の部分も含めて良く考えられたというと
ころだ。

脚本・監督は、1998年『あの娘と自転車に乗って』などのア
クタン・アリム・クバト。因に監督の姓は、以前はロシア名
で<アブディカリフ>と呼ばれていたが、本作からはキルギ
ス名で<アリム・クバト>になったそうだ。
また監督は、本作では映画初出演で主人公の「明り屋さん」
も演じており、その演技では2010年キノショク映画祭の主演
賞も受賞している。

『田中さんはラジオ体操をしない』
        “Tanaka-san Will Not Do Calisthenics”
不当解雇の撤回を求めて25年間、沖電気八王子工場(現在は
分社化されて沖セミコンダクタになっている)の正門前で単
独で闘争を続けている田中哲夫氏の姿を、オーストラリア人
の監督マリー・デフロスキーが追ったドキュメンタリー。
田中氏は25年前、社長の交替で開始された毎朝のラジオ体操
の強制実施に反対し、職場で座り続ける行動を始める。それ
に対して会社側は、その間は退室することを求めるがそれに
も応じず。その結果の遠隔地への転任命令を拒否したために
解雇されたという。
しかしそれは工場内に蔓延する差別やいじめの結果であり、
以来、正門前でギターを持って歌ったり、ビラを配ったり、
さらに株主総会で追求するなどの闘争を繰り広げてきた。そ
んな田中氏の姿が、闘争以外での生活ぶりや家族・支援者の
声も交えて描かれる。
これは間違いなく題名にある通りのラジオ体操の強制に従わ
なかったための解雇であり、それは現在、教育現場で進行中
の国旗・国家への強制と同根のものだ。オーストラリア人の
監督はちゃんとそこまで目配りして作品を作っている。
その一方で、25年も掛かれば当然家族も年を取って行く訳だ
が、そんな田中氏の2人の息子の気持ちにも足を踏み入れ、
恐らくは子供の目には変人と写った父親の姿に対して、今は
ちゃんとそれを理解している彼らの姿も描いている。
以前は従順勤勉で鳴らした日本人労働者。しかしそれは高度
成長期の景気の良かった時代の話。今の状況はさらに厳しく
差別やいじめが横行しているはずだ。それが外国人の目には
どのように写ったか。
ただし本作は、労働争議を扱うものではなく、田中氏個人の
生き様を描いているものだ。
それにしても、映画の中では新聞報道の記事なども出てくる
が、何故これが日本人の手で映画にならなかったかには疑問
も生じた。公害問題や福祉問題など、最近観たドキュメンタ
リーも何本か紹介しているが、日本人は何処か労働争議には
冷たい感じもしてきた。

因にこの作品は2008年の製作。2009年の「山形国際ドキュメ
ンタリー映画祭」で正式上映された他、同年開催の「カナダ
国際労働者映画祭」でグランプリを獲得しているそうだ。

『極道めし』
刑務所の雑居房を舞台に、受刑者たちがおせち料理の一品を
賭けて自らの生涯最高の食事を語り合うという土山しげる原
作漫画の実写映画化。
主人公は、新入りの受刑者。彼が入った雑居房には4人の先
住者がいて和気藹々としているが、主人公はそういう中には
入っていけない性格のようだ。そこで先住者たちは主人公は
放置したままあるイヴェントを開始する。
それは味気ない刑務所の食事の中で、唯一楽しみな正月のお
せち料理に関るもの。4人は順番に今までの生涯で一番旨か
った食事の話をし、その話に喉を鳴らした者の人数で決まる
勝者が各人のおせち料理から一品ずつを貰えるというものだ
った。
そして、それぞれの生涯で一番旨かった料理の話が始まるの
だが…。この話が舞台風の再現ドラマになっており、さらに
そのちょっと戯画化されたシーンに登場する食事が、これが
フードスタイリストが付いた実に旨そうなものばかり。
実は、夕方の試写会を夕食を食べずに観に行ったものだが、
空腹にはかなり堪える作品だった。と言ってもそれほど豪華
な食事ではなく、むしろシンプルなものばかりなのだが、こ
れが実に填っているものばかりなのだ。
そしてそんな食事から見えてくるそれぞれの受刑者の歩んで
きた人生が、実に見事に描かれていた。
また映画には、ガラス戸への写り込みを使ったシーンなど、
映像的にも気に入るところのある作品だった。

主演は、今年1月紹介『津軽百年食堂』などの永岡佑、同房
の受刑者役に麿赤兒、勝村政信、2010年3月紹介『ヒーロー
ショー』などの落合モトキ、パフォーマンス集団「コンドル
ズ」のメムバーで映画初出演のぎたろー。
他に、木村文乃、田畑智子、木野花、内田慈、木下ほうか、
田中要治、でんでんらが脇を固めている。監督は2008年7月
紹介『ブタがいた教室』などの前田哲。
因に、食事話のシーンの演出はロケ撮影ではスケジュール的
に無理となっての苦肉の策だそうだが、作品の内容にはピッ
タリだった。また、話に登場する食事も全て監督のアイデア
だそうで、それをフードスタイリストのせんるいのりこが実
現しているが、これも見事なものになっていた。

        *         *
 2008年10月1日付第168回で紹介したディズニーで進めら
れている“The Lone Ranger”の映画化に、2012年12月21日
の全米公開日が発表された。
 この作品の来歴については、2002年4月10日付第12回でも
紹介しているが、元々はラジオラマが始まりで、その後に連
続活劇やテレビシリーズにもなっている。そして当初コロム
ビアで始められた映画化の計画がその後ディズニーに移り、
第168回で紹介したように、『POTC』を成功に導いたジ
ェリー・ブラッカイマー製作、ゴア・ヴァビンスキー監督、
ジョニー・デップの出演で進められているものだ。
 ただし、デップの配役は主人公のレンジャーではなく従者
のトント。レンジャー役には、昨年10月紹介『ソーシャル・
ネットワーク』で主人公を訴える双子の兄弟を1人で演じた
アーミー・ハマーの起用が発表されている。
 映画の撮影は2008年『レボルーショナリー・ロード』など
を手掛けたジャスティン・ヘイスの脚本により今秋に行われ
る予定だが、発表された全米公開日は前回に報告した“The
Hobbit: An Unexpected Journey”の公開第2週と重なるも
ので、今からその対決が楽しみになるところだ。因に同じ週
には、アン・リー、ジャド・アプトゥ、フィリップ・ノイス
監督らの作品の封切りも予定されているようだ。
 12月後半の公開はまさに賞レースの真っ只中にもなるもの
で、製作者たちの意気込みも感じられる。



2011年06月05日(日) 男子高校演劇、ムカデ人間、シャンハイ、アイ・アム �癸粥▲張蝓次Ε�ブ・ライフ、ペーパー・バード、親愛なる…、ふゆの獣+The Hobbit

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『行け!男子高校演劇部』
前々回紹介『犬飼さんちの犬』などに出演の俳優・池田鉄洋
の脚本による青春コメディ。元々池田は2004年に立上げたコ
ントユニットで作・演出を務めているそうだが、映画の脚本
は初めてとのことだ。
物語の舞台はとある男子高校。新入生の主人公は学園生活を
謳歌するためにはどの部活に入ればいいか思案しているが、
一緒にいる親友は、大学進学を目指すため親から部活は禁じ
られたとつれない。
しかし、そんなことにお構いなしの主人公は、演劇部の公演
する「ロミオとジュリエット」を観た途端、ジュリエットの
姿に恋をして入部を決意する。でもそこは男子高校、ジュリ
エットを演じているのも当然…な訳で。
しかも現演劇部員は全員3年生でその部員募集を最後に退部
し、2年生のいない演劇部は主人公とあと2人に任されてし
まう。その上、部員が5人以上いないと廃部になるというこ
とで、早速部員募集に奔走する羽目になるが…。
題名を観て出だしの状況は予想されるし、最近はそういう映
画も多く観ている感じがするところ。さらに最初の内はベタ
なギャグが満載で、これは演劇系の作家によくある、僕が一
番駄目なタイプの作品かと心配した。
ところがそこからの展開が予想外というか、まあ予想できる
部分もあるがそれが良い感じに決まっていて、映画の後半は
見事に填められてしまった。
特に、彼らが演じるオー・ヘンリー作『最後の一葉』の舞台
は、これは正に舞台を知る脚本家ならではという感じで、見
事に最初の予想をひっくり返してくれた。いやあ映画で涙を
流して笑ったのは久しぶりだった。

出演は、昨年11月紹介の『パラノーマル・アクティビティ/
第2章』などの中村蒼、昨年9月紹介『信さん』などの池松
壮亮、2009年8月紹介『引き出しの中のラブレター』などの
冨田佳輔、2007年『キャプテン』などの金子直史。
他に佐藤永典、新川優愛、足立梨花、西原亜希、千葉雅子、
八木小緒里、大和田伸也、そして池田鉄洋。監督は2月紹介
『高校デビュー』などの英勉が担当した。

『ムカデ人間』“The Human Centipede (First Sequence)”
2009年にロサンゼルスで開催されたスクリームフェスタにて
グランプリを獲得、同年オースティン・ファンタスティック
映画祭ではホラー映画賞と主演男優賞をW受賞したオランダ
・イギリス合作の作品。
舞台はドイツの郊外。旅行中の2人のアメリカ人女性が迷い
込んだ森の中で車のタイヤがパンクし、助けを求めて訪れた
家にいたのは何か異様な雰囲気を持つ初老の男だった。そこ
で危険を察知した女性たちは逃げようとするが、男は薬品で
彼女らを眠らせる。
そして目覚めた彼女らはベルトでベッドに拘束されており、
やがて日本人男性1人もそこに加えられ、初老の男は悪魔的
な計画を話し始める。それはシャム双生児の分離では世界的
な権威だったという男が、引退後は結合に興味を持ち始めた
というのだが…
作品のポスターなどにイラストが載っていると思うが、まあ
そういう形の結合を行うもので、言ってみれば究極のスカト
ロジー? 従って正常な神経の持ち主にはかなり眉を顰るも
ので、作る方だって正常な神経ならなかなか実現には踏み切
らないだろう。
でもまあそれを作っちゃった訳で、それがある種のタブーへ
の挑戦ということででも評価されているのかな…。いずれに
しても常識では全く有り得ない話だが、恐いもの観たさとい
うよりは、何となくニヤニヤという感じで観られる作品にな
っている。

出演は、1975年のドイツ映画賞で最優秀男優賞に輝いている
ディーター・ラーザー、本作でも受賞に輝いた。さらにニュ
ーヨークのAcademy of Dramatic Arts出身で、同校の最優秀
女優賞を受賞したというアシュリー・C・ウィリアムス。
他にテレビドラマやCMなどに出演しているアシュリン・イ
ェニー。そして監督としてL.A.Indies Awardの新人賞を史上
最年少で受賞したという北村昭博。
脚本と監督は、オランダのテレビでリアリティ番組などを手
掛けていたトム・シックス。すでに長編映画も発表している
が、本作は初めてのホラー映画への挑戦で、数多くの人の物
議を醸す作品を目指したものだそうだ。
また本作は、3部作の第1部とされるもので、すでに第2部
(Full Sequence)は今年中のプレミア公開を目指して製作
が進んでいるそうだ。

『シャンハイ』“Shanghai”
1941年、真珠湾攻撃前夜の中国上海を舞台にした虚実の交錯
する歴史ドラマ。
主人公はアメリカの諜報員。彼はヨーロッパでの仕事を終え
新たな任地に新聞記者の身分でやってくる。ところが、彼を
諜報部に誘った親友は落ち合うはずだったカジノに現れず、
彼は中国人女性とのポーカーで完敗してしまう。
その後、彼が海軍諜報部を訪れると、そこには何者かに殺さ
れた親友の遺体が置かれていた。そして主人公は、その遺体
が上海の日本租界で発見され、彼が日本軍の裏の仕事も引き
受ける暗黒街のボスを追っていたことを教えられる。
こうして親友殺しの真相を追い始めた主人公の前に、日本軍
の大佐や暗黒街のボス、さらに上海の占領を企む日本軍と抗
日組織などが暗躍し始める。そこは、イギリス、フランス、
アメリカ、それに日本が租界を置く、妖しくも危険な魔都だ
った。

出演は、ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユン
ファ、渡辺謙、そして事件の鍵を握る女性役で菊地凛子。さ
らにデイヴィッド・モース、フランカ・ポテンテ、ジェフリ
ー・ディーン・モーガンらが脇を固めている。
監督は、今年2月に紹介した『ザ・ライト[エクソシストの
真実]』などのミカエル・ハフスローム。脚本は2002年『サ
ハラに舞う羽根』などのホセイン・アミニ。さらに製作は、
1941年上海生まれのマイク・メダヴォイが手掛けた。
一つの都市が複数の国の支配に分割されている。そんな都市
を訪れた主人公が親友の死に遭遇する。まるで『第三の男』
を思わせる物語の開幕だが、本作の背景は戦後ではなく日米
開戦の前夜。そこには世界各国の関係や日本軍の動きなど、
様々の要素が絡んでくる。
しかもそれらの歴史的な事実と、虚構の世界が交錯するから
物語はかなり複雑だ。しかしアミニの脚本とハフストローム
の演出はそれらを手際よく整理して、判り易く纏め上げてい
た。因に渡辺が演じた日本軍大佐には相当する実在の人物も
いたようだ。

なお撮影は、室内シーンは主にイギリスと、屋外シーンはタ
イで行われており、ロンドンに残る歴史的な建物と、バンコ
クに立てられた巨大なオープンセットが見事に融合している
ものだ。

『アイ・アム・ナンバー4』“I Am Number Four”
2007年9月紹介『ディスタービア』や08年10月紹介『イーグ
ル・アイ』などのJ・D・カルーソ監督によるSF作品。
主人公はある特殊な能力を秘めた若者。彼には9人の仲間が
いて、それぞれ地球の各所に隠れて暮らしていた。しかしそ
の隠れ家が次々に襲われ、仲間の内のナンバー1、2、3が
順番に抹殺される。主人公はナンバー4だった。
そんな主人公は一緒にいる父親代りの男から、極力目立たな
いように行動することを命じられていたが、彼の周囲で時折
起こる異常な現象はYouTubeの時代には隠しようがない。そ
してある現象がネットにupされてしまい、2人は他所の町に
引っ越すことになる。
やってきたのはオハイオ州の田舎町。そこで主人公はジョン
・スミスと名乗り高校に通い始める。そこには校内を仕切っ
ている連中のリーダーや、リーダーの元カノ、さらにUFO
オタクの同級生などがいて、主人公はそんな中で学園生活を
送ることになるが…
主人公の周囲で起きる異状現象は頻度を増し、ナンバー1〜
3を抹殺した男たちが町に現れる。
映画は、ピタカス・ロア原作の“The Lorien Legacies”と
題されたシリーズの第1巻に基づくもので、原作のシリーズ
ではすでに“The Power of Six”という第2巻が、今年8月
23日に発行予定と発表されている。
物語は、超能力者ものということになるが、展開は学園が舞
台になるなど典型的なヤングアダルト向け。しかも主人公の
超能力もまだ開発途中ということでは、これからいろいろな
展開ができそうだ。
因に原作者名は、ジェームズ・フライとジョビー・ヒューズ
という2人の作家の共同ペンネームとなっているが、同時に
Lorien世界の支配者の名前でもあるようだ。

出演は、2007年『アレックス・ライダー』などのアレックス
・ペティファー、2009年12月紹介『パーフェクト・ゲッタウ
ェイ』などのティモシー・オリファント、それに2010年7月
紹介『魔法使いの弟子』などのテリーサ・パーマー。
他に、2010年11月紹介『バーレスク』などのダイアナ・アグ
ロン、1995年オーストラリア生まれのカラン・マコーリフ、
2010年『ラブリー・ボーン』などのジェイク・アベルらが脇
を固めている。

『ツリー・オブ・ライフ』“The Tree of Life”
今年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールに輝いた
作品。1998年『シン・レッド・ライン』でベルリン・金熊賞
を受賞しているテレンス・マリック監督が、三大映画祭での
2つ目の最高賞を制した。
因にマリック監督は、1978年『天国の日々』でカンヌ監督賞
を受賞しているが、1973年のデビュー作『地獄の逃避行』と
2006年2月紹介『ニュー・ワールド』と併せて長編の監督作
品は5本目。寡作で知られるが、すでに次回作の準備は進ん
でいるようだ。
その今年の受賞作は、1950年代のテキサスを舞台にした厳格
な父親の下で育てられた少年の物語。その父親は口答えは勿
論のこと、庭の手入れやドアの閉め方まで一々息子を指導す
る。そんな少年の避難所は母親の腕の中だったが…
父親は大きな製油工場で働いているらしいが、地位はそれほ
ど高くないようだ。その旁で発明などもして一攫千金を狙っ
ているらしいが、必ずしも上手くは行っていないらしい。そ
んな欝憤も息子に辛く当ってしまう原因かも知れない。
そして少年には2人の弟がいて、3人兄弟の遊ぶ姿なども描
かれ、大人なら誰しもが感じる甘酸っぱい思い出のような世
界が展開されて行く。特に、今の時代の父親ならちょっと複
雑な気分もさせられるかも知れない。

出演は、厳格な父親役にブラッド・ピットと、少年の成長し
た姿を演じるのはショーン・ペン、2大スターの共演に、母
親役は新星ジェシカ・チャスティン。さらに子供たちにはハ
ンター・マクラケン、ララミー・エップラー、タイ・シェリ
ダン。また祖母の役で『ハリー・ポッター』シリーズで叔母
さん役のフィオナ・ショウが出演している。
という上映時間2時間18分の堂々としたアメリカの家族を描
いた作品だが、物語の全体はペン扮する現代の男性がその記
憶を辿るような形式を取っており、さらにそこに、宇宙の誕
生から生物の進化までの壮大な物語が描かれている。しかも
そのVFXコンサルタントとして、ダグラス・トランブルが
招かれているという作品だ。
届いた試写状を観たときに、僕には何か見覚えがあるような
親しみが感じられた。それが、エンドクレジットでトランブ
ルの名前を観たときにすべて納得できた感じがした。つまり
この作品は、マリック監督の『2001年宇宙の旅』なのだ。
そしてマリック監督は本作で、スタンリー・クーブリックが
『2001年…』で描かなかった人の営みを描いている。それは
マリックからクーブリックへの回答のようにも感じられた。
因に試写状の写真からは「宇宙の胎児」を想起したものだ。
『2001年…』と同様に難解な作品というレッテルが張られる
ことは必至の作品。しかもそこに添えられたヴィジュアルの
インパクトが、リピーターの観客を生じさせることも『2001
年…』と同様になりそうな、そんな感じのする作品だ。

実は、今年のカンヌでは、ラース・フォン=トリアー監督の
“Melanchlia”という作品が少しSF的な内容で期待してい
たのだが、いろいろあってしまった。しかしパルム・ドール
に輝いた本作は、それに上回る作品だったと言えそうだ。

『ペーパー・バード/幸せは翼にのって』
                 “Pajaros de papel”
1930年代のスペイン内戦とその後のフランコ政権時代を背景
にした人間ドラマ。
主人公はマドリッドの劇場に立つボードビリアンの男性。妻
と子もいて内戦中の不自由な中でも幸せな暮らしだったが、
戦火によって妻子が失われる。それから1年後、内戦は集結
したものの独裁政権による弾圧で表現の自由もままならない
劇場に、男が戻ってくる。
その劇場のリハーサルには、芸人だった両親を戦火で亡くし
た幼い男の子などもいて男の心を和ませてくれるが、男がそ
の1年間何処で何をしていたのかは不明。そして男には反政
府組織の人間らしい人物も近寄ってくる。
一方、軍部が支配する独裁政権の中で文化関係を担当する武
官が劇場の取り締まりに現れる。そして主人公を目撃した武
官は密かに部下の1人を劇場に潜入させる。さらに劇団は地
方巡業に出発することになるが…

脚本と監督のエミリオ・アラゴンは、スペインでは知らない
人はいない、と言われるほどの代々続く芸人一家の出身。実
は彼の両親は第2次大戦後のスペイン内乱期にキューバに逃
れ、監督自身もキューバで産まれている。
しかしその後に両親と共に帰国し、父親と一緒に始めたテレ
ビ番組で人気を博した。そして本作のアイデアは、その番組
に出演した年配の芸人たちの語る内戦時代の思い出話から産
まれたとのこと。従ってエピソードの多くは実話に基づくそ
うだ。
出演は、1984年アカデミー賞外国語映画部門にノミネートさ
れた『カミーラ』などのイマノル・アリアス、2011年11月紹
介『抱擁のかけら』などのルイス・オマールとカルメン・マ
チ、そして2008年9月紹介『永遠のこどもたち』などのロジ
ェール・プリンセプ。
さらに『永遠のこどもたち』などのフェルナンド・カーヨ、
撮影中の“[REC]3”に出演のディエゴ・マルティンらが脇を
固めている。
劇中で繰り広げられるボードビルの舞台も楽しめる作品。そ
の中で歌われる歌曲「フランコとは暮らせない」は、スペイ
ンのアカデミー賞「ゴヤ賞」の主題歌賞にノミネートされた
そうだ。

『親愛なるきみへ』“Dear John”
2004年11月紹介『きみに読む物語』などの原作者ニコラス・
スパークスが2006年に発表した小説(邦訳題:きみを想う夜
空に)を、4月紹介『ザ・ホークス』などのラッセ・ハルス
トレムの監督で映画化した2010年の作品。
2001年の夏から始まる物語。主人公のジョンは兵役の合間に
訪れた故郷で1人の女性と巡り会う。そして学生の身であり
ながらハリケーンで崩壊した家を再建したり、自閉症の子供
の世話をするなど熱心に行動する彼女サヴァナとジョンは、
瞬く内に恋に落ちる。
しかしジョンは2週間後には任地に戻らなければならず、サ
ヴァナも大学に戻らなければならない。それでも2人は強く
将来を誓い合い、ジョンは残り1年の任務を終えたら除隊し
て、サヴァナの卒業式に参列すると約束する。
ところが、その年の9月11日の出来事が2人の運命を大きく
変えてしまう。ジョンは戦友と共に任務の延長を申請せざる
を得なくなり、たった18時間の休暇でサヴァナの許を訪れた
ジョンは、さらに1年待ってくれと頼みサヴァナも理解する
のだったが…
任地が秘密であるため手紙で近況の報告をし合っていたジョ
ンとサヴァナ。ある日そのサヴァナから衝撃の報告がジョン
に届く。彼女が別の男性と結婚するというのだ。その手紙に
返事を書けないジョン。そしてそのまま手紙は跡絶えてしま
う。
スパークスの作品は大体が謎解きを伴うが、本作もそんな感
じの作品だ。その謎の解ける瞬間が物語の中の最大の感動の
瞬間となる。その謎は勿論ここでは紹介できないのだが。

出演は、ジョンに今年1月紹介『僕が結婚を決めたワケ』な
どのチャニング・テイタム、サヴァナに同じく4月紹介『赤
ずきん』などのアマンダ・サイフリッド。因に女優の姓の発
音はいろいろ表記があるが、映画データベースのIMDbによる
とこれが正しいようだ。
他に、今年5月紹介『モールス』などのリチャード・ジェン
キンス、2008年5月紹介『スピード・レーサー』などのスコ
ット・ポーター、それに1982年『E.T.』などのヘンリー・
トーマスらが脇を固めている。
9・11が背景の物語だが、監督の撮り方のせいもあるのだろ
うがテロ事件が歴史の1頁として描かれている感じがした。
今までの同様の作品では現在進行形に感じることが多かった
が、ハリウッドもようやくそう捉えられるようになったのか
な。そんな感じがした。

『ふゆの獣』
2007年『かざあな』という作品が「ひろしま映像展」グラン
プリなどを受賞している内田伸輝監督による第2作で、昨年
の東京フィルメックスで最優秀作品賞に選ばれた作品。
登場するのは同じ職場で働く2組4人の男女。少し年長のユ
カコとシゲヒサは互いの部屋の鍵を持ち合い半同棲のような
関係。しかし2人の距離は少し離れ始め、ユカコはシゲヒサ
の態度に不審なものを感じている。
一方、ノボルは同僚のサエコに片思いしていたが遂に告白。
しかしサエコは「シゲさんに憧れている」と、ノボルの思い
は拒絶されてしまう。そしてサエコは、ユカコのいない週末
ごとにシゲヒサの部屋に通っていた。
そんな男女2組の関係が、口論の末にシゲヒサの部屋を飛び
出したユカコと、サエコに拒絶されたノボルが偶然町中で出
会うことによって新たな局面に進行して行く。

スタッフリストの内田監督の欄には、他に編集・構成&プロ
ット・撮影・音響効果とあって脚本の項目がない。つまり構
成プロットだけを提示して、台詞などは撮影現場で作り上げ
るスタイルなのかな。同様の撮影スタイルの監督は、韓国や
中国にもいたと思うが、それなりにリアル感のある映像作品
にはなっている。
ただし、このシゲヒサの人物設定は男性の目から観ると度し
難い奴で、観ている間はそれに苛々させられた。でもまあそ
れもリアルということで、それは監督の意図でもあるのだろ
う。ただそれに女がついて行くのは、男の甘えのようにも感
じるが。

出演は、2000年に旗揚げした劇団・零式の看板女優で同劇団
が製作し各地で受賞している短編映画などにも主演している
加藤めぐみ、80本以上の自主映画作品に出演しているという
佐藤博行、日芸映画科演技コース卒業の高木公介、小劇場の
舞台出身という前川桃子。
それぞれ演技に関して実績や理論のある俳優たちが、台本な
しの撮影自体が闘いとなるような撮影に挑んだ作品というこ
とになりそうだ。でもまあ、先に書いたように男性としては
苛々の募る作品だった。
        *         *
 ピーター・ジャクスン監督“The Hobbit”の正式題名と公
開日が発表された。それによると、2部作の1本目は“The
Hobbit: An Unexpected Journey”で2012年12月14日公開、
そして2本目は“The Hobbit: There and Back Again”で、
2013年12月13日公開となっている。
 副題は、どちらも原作に関連してよく使われるものだが、
2本目の方が原作の正式題名に近いのは気になるところだ。


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井口健二