井口健二のOn the Production
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2011年04月17日(日) アンノウン、ドリーム・ホーム、狂乱の大地、Peace、アベック・パンチ、レッド・バロン、ファースター、薔薇とサムライ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『アンノウン』“Unknown”
前々回『クロエ』を紹介したリーアム・ニースン主演による
サスペンスミステリー。アメリカでも今年2月に公開された
ばかりの最新作で、日本では当初『身元不明』という題名の
予定だったが、時節柄変更されたものだ。この程度の変更は
仕方ないだろう。
主人公は、アメリカ人のバイオテクノロジー学者。妻と共に
ベルリンで開催される学会に出席のため空港に降り立つ。そ
してタクシーで市内のホテルに向かい妻をフロントに行かせ
るが、そこでバッグの紛失に気づき空港へと引き返す。
ところがその道で事故が起き、彼は4日間意識不明となる。
しかも意識を回復してホテルに戻ると、そこにいた妻は別の
男と夫婦として滞在しており、彼に会っても知らないと言わ
れてしまう。その上、彼は自らの身元を証明するものを一切
持っていなかった。
自分が身元不明になったら最後の拠所は妻だろう。その妻に
知らないと言われたら、これは正に究極の身元不明人という
感じの展開だ。しかも謎はこの後にも次々に発生し、それは
主人公の助けになったり、さらに謎を深めたり…
そんな無数に発生する謎が、最後に一気に解決する。しかも
それを主人公のほぼ一人称で描き切る。それは全くお見事…
としか言いようのない展開の作品だった。

共演は、ダイアン・クルーガー、2009年8月紹介『パイレー
ツロック』などのジャニュアリー・ジョーンズ、昨年の東京
国際映画祭<コンペティション部門>『サラの鍵』に出演の
エイダン・クイン、2005年5月紹介『ヒトラー』などのブル
ーノ・ガンツ、2009年1月紹介『フロスト×ニクソン』など
のフランク・ランジェラ。
監督は、2009年9月紹介『エスター』などのジャウム・コレ
ット=セラ。
また、フランスの作家ディディエ・ヴァン・コーヴラールの
原作に基づく脚色は、1995年に“Dr.Jekyll and Ms.Hyde”
という作品に参加しているオリヴァ・ブッチャーと、1993年
にSF映画の続編“Philadelphia Experiment �供匹魎篤弔�
ているスティーヴン・コーンウェル。本作は、新たにコンビ
を組んだ2人の第1作だそうだ。
製作は、ヒットメーカーのジョール・シルヴァ。シルヴァが
ジャンル映画用に設立したダーク・キャッスル社の作品で、
正にエンターテインメント満載といった感じの作品だ。
なお、本作の製作にはドイツのバベルスバーグ・スタジオが
参加しており、映画の巻頭には配給元のワーナー、ダーク・
キャッスルに続けて、同スタジオのタイトルが登場する。そ
のシンボルマークがファンには嬉しくなるものだった。

『ドリーム・ホーム』“維多利亞壹號”
2004年11月6日付「東京国際映画祭」で紹介した『ビヨンド
・アワ・ケン』のパン・ホーチョン監督による最新作。昨年
のシッチェス・ファンタスティック映画祭では主演女優賞な
ど3冠に輝いたスプラッター作品。
原題は「ヴィクトリア1号」と読むようだが、香港に建つ高
層マンションで起きた猟奇殺人事件を題材にした作品。因に
映画の巻頭では、「実際の事件に基づく」とのタイトルが掲
げられていた。
ある夜の事、そのマンションに現れた人物が残虐な殺戮を繰
り広げる。その執拗な犯行の様子と、そこから10数年を遡る
香港の住宅事情が描かれて行く。そこに描かれるのは、不動
産バブルの中、強制地上げで住居を追われる人々や年収の上
昇を上回る地価の高騰など…
そんな中で暮らす1人の少女。彼女には元は海で生計を立て
ていたらしい祖父や、糸電話で会話を交わす幼馴染みなどが
いたが、幼馴染みは地上げで住いを追い出され、建設現場で
働いていた父親は肺疾患で仕事が続けられなくなる。
そんな少女が成長した現在、彼女の夢は高層マンションの住
人になること。そして彼女は日夜働いてその資金を貯めてい
たが、不動産の高騰はその貯金残高の増加を上回っていた。
それでも何とか頭金は揃った彼女だったが…

原案・製作も手掛ける監督は、「香港の抱える社会矛盾」を
描きたかったとのことだが、かなり過激な描写の中でその意
図は明確に描かれている。とは言え、本作の見所は残虐な殺
戮シーンで、ジャッキー・チェンのチームも加わったその描
写は見事なものだ。
それは、ヨーロッパの映画祭では上映に際して観客に汚物袋
が配布された程だったということだが、確かにスプラッター
を見慣れた目でもこれはなかなかと思わせるものになってい
た。日本では「R+18」の指定になるようで、期待しても
らいたいところだ。
出演は、2002年10月紹介『パープルストーム』などのジョシ
ー・ホー。実生活ではマカオのカジノ王の娘というセレブだ
が、カナダ陸軍士官学校を卒業後、香港映画界でアクション
もこなせる女優として実績のある彼女が、本作では初のプロ
デュースも手掛けている。
共演は、ミュージシャンでもあるイーソン・チャン、香港映
画の重鎮エリック・ツァンの息子で本作の脚本も担当したデ
レク・ツァン。他にもラッパーや映画のスタッフなど、俳優
に捉われない配役がされているようだ。
なおホーチョン監督の作品は、本作以外はほぼ全作が東京国
際映画祭で上映されているとのことだが、本作で初めて日本
での一般公開が実現するものだそうだ。

『狂乱の大地』“Terra em Transe”
1960年代のブラジル映画界から世界に発信され、シネマ・ノ
ーヴォと呼ばれた映画運動の先駆者の1人グラウベル・ロー
シャ監督による日本未公開だった1967年の作品。
南米にある架空の国家エルドラドを舞台に、詩人である主人
公が保守と革新の狭間で揺れ動き、様々な政争の中で翻弄さ
れて行く。そんな姿が詩の朗読のような台詞と寓意に満ちた
エピソードの中で綴られる。
元々は保守派の政治家の庇護の許にいた主人公は、地方に取
材に行った際に女性活動家と知り合い、彼女の影響で進歩的
な政治家を知事選に勝利させる。しかし知事に当選した政治
家はいろいろな柵によって改革を断行できない。
そんな姿に失望した主人公は、今度は国一の企業家に近付く
がそれも裏切りに遇ってしまう。しかし、女性活動家の熱意
で再び政治に向かった主人公は、武力闘争も持さない決意で
政争に飛び込むが…
という物語が時間軸を入れ替えて描かれるが、実はうっかり
観ていると話が混乱して、正直なところは、映画が終ってよ
うやく全体が理解できた感じがした。こんな作品が1960年代
に作られていたとは…という感じの先進的な作品だ。
それでいて描かれる政治の話は、今でも全く違和感なく通用
するもので、その戯画化された描き方も、現代の作品として
も全く問題なく理解できる。結局のところ政治家というもの
は今も昔も変わらないということが、図らずも本作で描かれ
ているようだ。
実際に本作が描く海外企業の意志が国家の政策を支配してい
る様子などは、全くアメリカGEの意向が全ての日本の今の
原子力政策を観ているようで、その先見的な内容にも感心さ
せられてしまうところがあった。

なお本作は、「グラウベル・ローシャ・ベスト・セレクショ
ン」と称して6月18日から東京渋谷のユースペースで特集上
映される代表作5本の内の1本で、他には1962年『バラベン
ト』、1964年『黒い神と白い悪魔』、1969年『アントニオ・
ダス・モルテス』、1980年『大地の時代』の上映が予定され
ている。
この内、『バラベント』と『大地の時代』も日本初公開とな
るものだ。

『Peace』                    
2007年5月に『選挙』と2009年4月に『精神』という作品を
紹介している想田和弘監督による観察映画の最新作。だたし
本作は製作の事情から「番外編」と称されているようだ。
監督のコメントによると、最初に韓国のドキュメンタリー映
画祭から、「平和と共存」をテーマとするオープニング用の
短編作品を依頼されたが、監督はテーマが先にあることを好
まないスタイルなので断ろうとしたそうだ。
ところが岡山県にある夫人の実家に帰省した際、義父が餌を
与える野良猫の様子を撮影している内に依頼されたテーマと
の共通性を見出し、やがてそれは義父母が従事している福祉
事業の実態に迫り、さらに戦争の記憶にも繋がって行ったと
のことだ。
そんな止処のない感覚で作られた作品ということだが、描か
れた作品はある一面で現代の日本人の生きる姿が見事に写し
出されたものになっていた。
正直には、最初の野良猫に餌をやる男性(義父)の姿に、近
所の公園に餌を散蒔いている連中を腹立たしく思っている自
分としては退いてしまうところもあったが、彼の場合は自宅
の庭に限っているし、そこに写し出される猫の様子には興味
を引かれた。
そしてその男性が行っている福祉事業については、自分の娘
が丁度そのような職場に就職していることもあって極めて興
味深く観させて貰えたものだ。
それにしても、我国の福祉行政の貧しさは娘から聞かされて
いる以上の惨状としか言いようのないもので、それがこのよ
うな人々の無償の努力に支えられているのかと思うと、それ
は全く頭が下がるとしか言いようのないものだった。
そこに描かれるのは、障害者を施設や日常の買い物などに送
り迎えする、一応は有償とされている搬送業の実態や、在宅
者へのヘルパー事業。しかしそれらは事業と言っても報酬は
微々たるもので、軽自動車のガソリン代や経費を引くと何も
残らない。
そんな状況が監督の観察によって描き出されるが、それでも
この人たちは「ボランティアだねえ」と言いながらそれを続
けている。そんな素晴らしい人たちがいることも、この作品
はしっかりと描いている。

なお本作は、昨年の東京フィルメックスで<観客賞>を受賞
した他、香港国際映画祭で<最優秀ドキュメンタリー賞>、
またスイスで開催されたVision du Reel映画祭でも、現地の
映画作家に因んだBuyens-Chagoll賞という賞を受賞したそう
だ。

『アベック・パンチ』
2004年6月紹介『恋の門』の原作などが連載された「月刊コ
ミックビーム」の15周年記念作品と銘打たれた作品で、同誌
を発行するエンターブレインが映画製作も行っている。
発想は「スキージャンプ・ペア」辺りにあるのかな…、本来
は個人戦である格闘技をペアで行うというのが見所と言える
新規な格闘技を題材にした物語。しかもそのペアは男女で同
時にリングに上がり、手を繋いだまま闘う。
物語は「アベック」と呼ばれるその競技が成立している状況
を背景に、喧嘩では負け知らずだった硬派の男子高校生が、
因縁を付けた男女に手を繋いだままの一撃で倒されたことか
ら始まる。そしてその男女が「アベック」のチャンピオンだ
ったことを知り…
これにペアの相手女性を探す経緯や、プロになるための筆記
試験の顛末、さらに主人公の仄かな恋の思い出、また外国人
の不法滞在の問題などが絡んで、まあ一面では青春物語のよ
うなお話が展開される。

出演は、D-BOYSのメムバーでテレビ「和風総本家」などにも
出ている牧田哲也、昨年7月紹介『七瀬ふたたび』に出てい
たという鈴之助、3月紹介『マイ・バック・ページ』に出て
いたという水崎綾女、それに昨年12月紹介『KG』の武田梨
奈。
脚色と監督は、昨年8月紹介『making of LOVE』などの古澤
健。
『KG』を観ている者としては武田のアクションにもう少し
期待したが、相手が俳優だと中々思い切りという訳には行か
なかったようだ。でもそれならそれなりの観せ方もあったの
では…?その辺が多少物足りない感じはした。
特に「アベック」の連携技にはもっとアイデアが欲しかった
もの。確かに上下同時の回し蹴りや、女性を振り回しての蹴
りなどもあったが、武田の身体能力を持ってすれば、もっと
過激で華麗な技も実現できたのではないかな。
プロレスでもタッグ・マッチで乱闘になると2人技が出てく
るし、映画では2007年10月紹介『俺たちフィギュアスケータ
ー』辺りが参考になると思うが、それ自体を見所に出来るよ
うな決め技とそれが完成するシーンが観たかったものだ。


『レッド・バロン』“Der rote Baron”
第1次世界大戦時の帝政ドイツ軍の戦闘機パイロットで、そ
の機体の塗装から連合軍には「赤い悪魔」と恐れられ、戦場
における最後の騎士とも称されたマンフレート・フォン・リ
ヒトホーフェン男爵の生涯を描いた作品。
映画は巻頭で、イギリス人パイロットの埋葬が行われている
墓地に飛来するドイツ軍戦闘機を描写する。その戦闘機を操
縦していたのはリヒトホーフェン。彼は自ら撃墜した好敵手
の葬儀に空から参列したのだ。
その帰路、襲ってきたイギリス軍戦闘機との空中戦でも1機
を撃墜したリヒトホーフェンは、着陸後にはその墜落現場に
赴き、機内にいたカナダ人パイロットを救出。駆けつけた救
急隊に彼の身柄を預ける。
そんな騎士道精神に溢れたリヒトホーフェンの戦績や、その
間に訪れる従軍看護婦との恋、また自らの負傷や戦闘機航空
団の司令になってからの苦悩などが描かれる。
同じ題材からは何度か映画化があるが、以前の特撮での空中
戦の出来は、自ずと知れたものだったと言える。それが本作
では、空中戦シーンのほぼ全編がCGIでの描写となってお
り、その迫力は以前の作品では到底得られなかったものだ。
そんな最新の技術を使って第1次世界大戦の出来事が描かれ
ている。

主演は、数々の受賞に輝くドイツ期待の若手俳優マティアス
・シュヴァイクホーファー。実物も端正な顔立ちだったと言
われるリヒトホーフェンを見事に演じ切っている。
共演は、看護婦役に2008年11月紹介『サラ・コナー・クロニ
クルズ』でサラ・コナーを演じていたレナ・ヘディ、またカ
ナダ人パイロット役には同年2月紹介『マンデラの名もなき
看守』で看守役のジョセフ・ファインズが扮している。
他に、1997年『ノッキング・オン・ヘブンス・ドア』を監督
主演したティル・シュヴァイガー、2008年『愛を読むひと』
などのフォルカー・ブルッヒらが出演。
脚本・監督・製作は、アメリカとドイツで多数のテレビドラ
マを手掛けているというニコライ・ミューラーショーン。本
作は彼が4年を掛けて執筆したという脚本を、自ら設立した
ドイツの製作会社で映画化したものだ。
ということで本作は、ドイツ人の監督によるドイツで製作さ
れた映画だが、台詞は全て英語で、実は上映されたタイトル
も“The Red Baron”となっていた。これにはかなりの違和
感があったが、映画を世界中で観て貰うためにこれは仕方が
ないのだそうだ。
従って本作では、リヒトホーフェンも英語で会話するが、そ
れは我慢して観て貰いたい。因に製作会社のサイトにはドイ
ツ語の予告編もあったが、吹き替えになっているようだ。


『ファースター/怒りの銃弾』“Faster”
ドウェイン“ザ・ロック”ジョンスン主演によるアクション
ドラマ。
その男は強盗の罪で10年の刑に服していた。それは彼が犯し
た悪事への報いだから仕方のないこと。しかし彼が許せない
のは、その悪事を密告し金を奪い、さらに兄を目の前で殺し
た奴ら。その思いだけを胸に、彼は過酷な刑務所の中で耐え
てきた。
そして10年が過ぎた今、出所した彼が挑むのは、奴らへの復
讐のみ。そして刑務所長の訓辞もそこそこに出所した男は、
直ちに用意された車で最初のターゲットの許に向かい射殺。
その後も次々に犯行を重ねて行く。
この凶悪犯罪に対して警察は、規律に厳格な女性刑事と、後
2週間で退職のベテラン刑事を担当させる。そのベテラン刑
事は2週間を大過なく送りたい風情だったが、やがて的確な
判断で犯人を追い詰め始める。
一方、ターゲットの1人がストイックな殺し屋を雇い犯人の
殺害を依頼。こうして犯人と刑事、それに殺し屋の三つ巴の
闘いが開始される。

共演は、刑事役に2002年6月紹介『チョコレート』などのビ
リー・ボブ・ソーントン、殺し屋役は昨年8月紹介『遠距離
恋愛』に出ていたというオリヴァ・ジャクスン=コーエン。
他に、トム・ベレンジャー、カーラ・グギノ、2009年6月紹
介『96時間』で主人公の娘を演じていたマギー・グレース
らが脇を固めている。
脚本は、2002年『完全犯罪クラブ』などのトニー・ゲイトン
と、1996年『ダーティ・ボーイズ』などのジョー・ゲイトン
の兄弟。兄弟の共同脚本は初めてのようだが、2人は製作と
製作総指揮も担当している。
監督は、2000年『ザ・ダイバー』の監督の他、2002年のヒッ
ト作『バーバーショップ』などの製作も務めたジョージ・テ
ィルマンJr.
上映時間が98分と短いせいもあるかも知れないが、とにかく
展開が早い。何しろ映画が始まって数分もしない内に最初の
殺人という感じだ。その後は回想シーンなども挟まるが、警
察側の動きなども含めてテンポ良く話が進んで行く。
ただ難を言えば、緩急のアクセントにもなる殺し屋側の話が
ちょっと弱かったかな。多分、脚本ではもっと書き込んであ
るのだろうが、上映時間の関係でこうなってしまったのか。
できればその辺を、もう少ししっかり描いて欲しかった感じ
がした。


『薔薇とサムライ』
2009年12月紹介『蜉蝣峠』、昨年8月紹介『蛮幽記』に続く
ゲキ×シネで、劇団☆新感線による舞台を撮影した作品。
物語の舞台は、17世紀のヨーロッパ。イベリア半島の小国を
根城にする女海賊とその用心棒のサムライが、小国の運命を
左右する政争に巻き込まれる。
そのサムライの名前は石川五右衛門。ゲキ×シネでは2009年
『五右衛門ロック』という作品があるが、その続編という位
置付けなのかな。いずれにしても人気キャラクターの再登場
という作品のようだ。因に劇中では、「侍ではなく盗人だ」
と繰り返し訴えていた。
そしてその五右衛門の仕えていた女海賊が、実は小国の王女
だったことが判り、王座に就いた女海賊は、列強との歩調を
合わせるため海賊討伐をしなければならなくなる。それは五
右衛門との戦いも意味していた…という展開になって行く。
これに、五右衛門の首を取って日本に帰りたいと願っている
浪人や隣国の王子、さらに女海賊の宿敵、小国を牛耳る宰相
一家、王家復活を画策する取り巻きなども絡んで、剣戟シー
ンもたっぷりの波乱万丈冒険物語が繰り広げられる。

主な出演者は、古田新太、天海祐希、浦井健治、山本太郎、
神田沙也加、森奈みはる、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこ
と、藤木孝。
古田は当り役の五右衛門を生き生きと演じているし、劇団に
は2度目の参加という天海は宝塚さながらの凛々しい女海賊
を実に楽しげに演じている。その他客演の浦井、山本、神田
らも実に伸び伸びと演じている感じなのが、観ていても楽し
くなる作品だ。
また舞台装置では、背景に大型のLED装置が設置され、そ
こにアニメーションや背景画像が表示されるが、特に海賊船
が航行するシーンでは、前景の船首のセットの回転に合わせ
て動く背景の表示が見事で、これは舞台でも観たくなるもの
だった。
脚本は中島かずき、演出は「いのうえひでのり」。仕込がた
っぷりの物語と外連で一杯の演出は、普段見慣れている映画
とはまた違った舞台の面白さという感じで、ゲキ×シネとい
う上映形態にピッタリの作品と言えそうだ。



2011年04月10日(日) 昼間から呑む、ジャスティン・ビーバー、ラスト・ターゲット、卵、カルメン、赤ずきん、テザ+製作ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『昼間から呑む』“낮술”
3月20日付にDVD鑑賞で紹介した作品を改めてスクリーン
で鑑賞した。その感想は、雪模様の風景などには大きなスク
リーンでこそ味わえる感覚があった。それに2度目で先の展
開を知りながら観ていると新たな別の面白さも観えてくるも
ので、これは2度観る価値のある作品と言えそうだ。
僕自身、試写会で気になった作品は再度観に行くようにして
いるが、本作はそれに該当する作品と言える。これは試して
貰いたいものだ。

『ジャスティン・ビーバー/ネヴァー・セイ・ネヴァー』
           “Jusin Bieber: Never Say Never”
カナダ・オンタリオ州出身、17歳でマディスン・スクエア・
ガーデンのコンサートをSoldoutさせた歌手の誕生を描いた
3Dドキュメンタリー。
正にインターネット時代の申し子。母親が離れて住む親族に
観せるためYouTubeにアップした12歳の少年の歌う姿がアト
ランタに住むプロモーターの目に留まり、そこで紹介された
人気歌手のアッシャーが注目。
さらにマライヤ・キャリーやアヴリル・ラヴィーンを世に出
したL.A.リード率いるアイランドレコードと契約して2009年
11月プロデビュー、そして2010年に行ったワールドツアーの
締め括りとして8月ガーデンでのコンサートを敢行する。
映画はそのツアーの後半に密着して、各地でのコンサートの
模様や舞台裏、また幼馴染みの友人たちと遊ぶ普段の姿や、
喉が枯れて一部コンサートの延期を決断する様子などが3D
カメラに収められている。
さらにその間には、幼い頃からのスナップ写真やYouTubeに
投稿された画像の数々、また家族や関係者へのインタヴュー
なども挿入され、17歳の少年の伝記映画のような構成にもな
っている。
という、世界中に700万人以上いると言われる彼のファンに
は堪らない作品だが。さらにコンサートのゲストには、ボー
イズ・�供Ε瓮鵑筌泪ぅ蝓次Ε汽ぅ薀后▲献Дぅ妊鵝Ε好潺�
(ビーバーは『ベスト・キッド』の主題歌を担当)、それに
アッシャーなども登場してそのインタヴューも聞けるなど、
これも楽しめる作品だった。
そして3D映像では、過去のスナップ写真も3D化されてい
たり、またコンサートシーンなどではちょっと視差を大きく
して遠近感を強調しているなど、いろいろな工夫が施されて
おり、これらの工夫は今後のこの種の作品の参考になるとも
言えるものになっていた。

監督は、2010年公開のダンス映画“Step Up 3D”などのジョ
ン・チュウ。音楽も3Dの経験済みの監督がその経験を充分
に活かした作品と言えそうだ。まあ3D感にはちょっとやり
過ぎかな…と思われる部分があったりもしたが、それも一興
という感じの作品だ。

『ラスト・ターゲット』“The American”
現代の最もハリウッドスターらしい俳優とも言えるジョージ
・クルーニー主演によるヨーロッパを舞台にしたサスペンス
ミステリー。
プロローグは北欧。雪原で狙撃された主人公が反撃し相手を
倒す。タイトル前のシーンで早くも主人公は動き始める。そ
して舞台はイタリアへ。その山岳地帯の小さな町に潜んだ主
人公に組織から狙撃用の銃の製作依頼が届く。
男の元の仕事は殺し屋だったようだ。そんな男は過去に犯し
た犯罪の陰に怯えながらも、何とか平穏な余生を送りたいと
考える。それは虫の良過ぎる考えなのだが、そんなことは男
自身が一番良く知っているのかも知れない。
そんな男の哀しみに彩られた作品だ。

共演は、イタリア女優のヴィオランテ・プラシド、オランダ
出身でアメリカのTVシリーズにも出演しているテクラ・ル
ーテン、それに2007年12月紹介『フランチェスコ』などに出
演のパオロ・ボナチェッリ。
他に、2010年10月第1回に紹介した『ジェヴォーダンの獣』
に出演のヨハン・レイセン。また前々回紹介したフィリッポ
・ティーミは主人公に銃の材料を渡す修理工、サムリ・ヴァ
ウラモはスウェーデン人の若者の役で出ていたようだ。
監督は、2007年の長編デビュー作『コントロール』が、カン
ヌ国際映画祭での受賞の他、イギリスアカデミー賞でのノミ
ネートなどもされているアントン・コービン。本作はその第
2作となる。
ただし、1955年オランダ生まれのコービンは、それ以前にも
カメラマンとして多大な実績があるようで、その実績通りの
見事な映像が、北欧の雪原やイタリアン山岳地帯の風景を写
し出している。それだけでも堪能できる作品だ。また銃製造
の過程を丁寧に捉えたシーンやアクションシーンなども、さ
すがカメラマンの目という感じで描かれていた。

脚本は、昨年10月24日付「東京国際映画祭<コンペティショ
ン部門>」で紹介した『ブライトン・ロック』などのローワ
ン・ジョフィ。
主人公が出自を訪ねられ、「アメリカ人」と答えたときに冠
詞の誤りを直される。そんなところにも孤独を感じさせた。
普段は饒舌とも言えるクルーニーが、最初から最後まで登場
する唯一のアメリカ人で、寡黙な一匹狼というのも面白い設
定の作品だった。


『卵』“Yumurta”
3月27日付紹介『蜂蜜』と同じくセミフ・カプランオール監
督によるユスフ3部作の1本で、2007年の最初に発表された
作品。
本作のユスフは大人になり、イスタンブールで古書店を開い
ている。そして夜間に電話が架かり、そこからはタイトルバ
ックの音響だけで彼が慌てて出掛けて行く様子が表現されて
行く。
その彼が向かったのは青年の頃を母親と過ごした町。賑やか
な市場もあるその町で、彼の母親の葬儀が行われる。そして
母親の家に戻ると、そこには若い女性の姿があった。彼女は
親戚の娘で老境の母親の世話をしてくれていたようだ。
さらに相続の手続きや母親がやり残した事を成就させる間、
町に留まった主人公と彼女との共同生活が続く。そこにいろ
いろな出来事が交錯して行く。その出来事は互いにつながり
があるようでもあり、ただの行き掛かりの出来事もある。
『蜂蜜』のような大自然の中ではないが、これもトルコ北部
なのか、高低差のある町並や郊外の牧場、山や湖などを背景
として物語が描かれる。その中で主人公は自らの過去を見つ
め直して行くことになる。
物語では母親の死を切っ掛けにした主人公の行動が描かれる
が、文化の違いによる部分はあるにしても、さほど我々とも
違わない行動が描かれている。それはそれで理解できるもの
だし、そんな中でのちょっとドラマティックな要素もある作
品だ。
なお映画の中では、主人公は以前に詩集を発表して評価され
たことになっており、その詩集のタイトルが“Bal”。本作
は『蜂蜜』より先に製作されたものだが、すでにその題名が
紹介されていたようだ。また映画にはミルク売りの少年が登
場したりもしていた。

出演は、ネジャット・イシュレル、サーデッド・イシル・ア
クソイ、ウフク・バイラクタル、そして『蜂蜜』にも出演の
トゥリン・ウゼン。他に映画の後半に登場する白い大型犬が
なかなかの名演技で気に入った。エンドロールによるとEfe
という名前だそうだ。
なお、2008年作の『ミルク』も後日紹介できる予定だ。

『カルメン3Dオペラ』“Carmen in 3D”
プロスペル・メリメの原作、ジョルジュ・ビゼー作曲による
1875年に初演されたオペラを、イギリスのロイヤル・オペラ
・ハウスが上演。その舞台を3Dで撮影した作品。
作品は巻頭で楽屋の様子や劇場の外、入場してくる観客など
が写され、さらに開幕前の役者のセッティングの様子なども
写されて開幕となる。ただし、撮影しているカメラはその舞
台上に複数配されており、果たしてこれが公演中の撮影なの
かには疑問を感じた。
物語はいまさら書くまでもないが、カルメンとドン・ホセの
悲劇的な愛を描くもの。実は昔、別作品で観たときには、単
純に「ドン・ホセって馬鹿だなあ」と思っていたが、今観る
とカルメンには運命に踊らされている面が強いし、また物語
が作られた当時の人々のジプシーに対するイメージのような
ものが背景にあることも理解できた。
でもまあ話が単純であることに変りはないが、それをビゼー
作曲「ハバネラ」「闘牛士の歌」などの名曲が彩るものだ。
また本作はイギリスでの公演だが、台詞はフランス語になっ
ており、それに日本語の字幕付きで上映される。

出演は、クリスティン・ライス、ブライアン・ヒメル、アリ
ス・エルギリス、マイヤ・コヴァレフスカ。何れもオペラ歌
手で映画ファンには馴染みがないが、カルメン役のライスは
BBCのテレビ用オペラなどにも出ている。
監督は、舞台演出がフランチェスカ・ザンベッロ、本作の監
督はジュリアン・ネイピア。
映画版を監督したネイピアは、1991年の『フック』に参加が
記録されており、また2003年には“Starlight Express 3D”
という作品を発表しているが、これは日本でも公演されたミ
ュージカルを3Dで撮影したもののようだ。
ただ本作ではプレス資料にプロダクションノートがなく、製
作状況が不明だが、映画版の監督にどれほどの権限があった
のか。実際、映画には演出の荒い部分も観られ、その一方で
明らかに異なるテイクが繋がれている部分もあって、いろい
ろ疑問は生じたところだ。

なお本作は、映画館用3Dシステムの一翼を担うリアルD社
が、ロイヤル・オペラ・ハウスとの共同で独自に製作したも
ので、リアルDの付加価値を高める目的で配給されるとのこ
と。従って上映は、リアルD設置の映画館限定で行われる。

『赤ずきん』“Red Riding Hood”
2009年1月紹介『トワイライト』などのキャサリン・ハード
ウィック監督、前回紹介『クロエ』などのアマンダ・サイフ
リッドの主演で、プレス資料には<大人版>と記された童話
の映画化。
ヨーロッパの中世の物語。舞台は森の奥深くに所在する村。
その村の近くには人食い狼が住んでいて、満月の夜には1人
で出歩かないのが村の習わしだった。ただし、狼とは協定が
結ばれ村人は襲わない約束だったのだが…
主人公のヴァレリーはそんな村に住む樵の娘。2人姉妹の妹
である彼女は同じく樵のピーターと愛し合っていたが、樵の
一家の生活は裕福とは言えない。そんな彼女に裕福な鍛冶屋
の息子ヘンリーが結婚を申し込み、それは一家にとって有り
難い話だった。
そんなある満月の日、それでも防備は怠らない村人に悲報が
伝えられる。ヴァレリーの姉が何者かに惨殺されたのだ。そ
れを狼の仕業と判断した村人たちはいきり立ち、狼退治の神
父の到着も待たずに、狼討伐に向かってしまう。
その結果は…、村人たちは狼の首を討ち取るものの、ヘンリ
ーの父親が殺されてしまう。しかもそこに到着した神父は、
「それは人食い狼ではない。奴は村人の中にいる」と断言、
祝宴を挙げる村人を後目に準備を開始する。そして…
物語は有名な童話に人狼伝説を組み合わせたもので、それ自
体は新規ではないようだが、本作ではそこに狼人間は誰かな
どの推理や、主人公の恋愛話なども絡まっていろいろ面白い
話が展開されて行く。そしてもちろん「赤ずきん」の名台詞
も登場するものだ。

脚本は、2009年9月紹介『エスター』のデイヴィッド・レス
リー・ジョンスン。前作も脚本の巧みさに注目したものだっ
たが、本作もそれは変わらない。これで次回作が『タイタン
の戦い』の続編というのも楽しみなことだ。
共演は2010年4月紹介『ザ・ウォーカー』などのゲイリー・
オールドマン、2009年6月紹介『キャデラック・レコード』
に出演のシャイロー・フェルナンデス、オスカー受賞者ジェ
レミー・アイアンズの息子のマックス・アイアンズ。
他に『トワイライト』などのビリー・バーク、2009年12月紹
介『エクトプラズム』などのヴァージニア・マドセン、昨年
7月紹介『インセプション』などのルーカス・ハース、そし
て重要なおばあちゃん役にはオスカー女優のジュリー・クリ
スティが扮している。
なお本作は、レオナルド・ディカプリオ主宰のプロダクショ
ン=アピアン・ウェイが製作したものだ。

『テザ・慟哭の大地』“Teza”
エチオピア出身だが、現在はアメリカ・ワシントンDCにあ
る映画大学で教鞭もとっているというハイレ・ゲリマンの脚
本・監督作品で、2008年のヴェネチア国際映画祭で脚本賞、
審査員特別賞などを受賞の他、各地の映画祭で人権賞などを
受賞している作品。
プロローグは、病院の廊下をストレッチャーで運ばれる瀕死
の重傷の男の姿。続いてエチオピアの村で、片足を引き摺り
ながら母親の元に帰ってきた男の様子が描かれる。しかし男
には記憶がない。その男の記憶を辿りながら、激動のエチオ
ピア史が再現される。
1970年代、当時エチオピアを統治していた皇帝ハイレ・セラ
シエは、国力増強のため若者の留学を奨励し、それによって
主人公もドイツで学んでいた。しかし世界的な学生運動は祖
国の政変をも後押しし、皇帝は退位して革命勢力が政権を握
ることになる。
1980年代、主人公は新国家の建設を支援する目的でエチオピ
アに帰国。しかし彼を待ち受けていたのは、ソ連の支援で社
会主義国家の成立を目指す勢力と、アルバニア的社会主義を
目指す勢力との新たな内戦の始まりだった。
そんな物語が、1990年代の母親の許に帰ってきた主人公の姿
を軸に語られて行く。しかし物語はそれだけでは終っていな
かった。
映画はフラッシュバックを多用して、時間軸も複雑に描かれ
ているが、相互の繋がりは分かり易く、観ていてあまり混乱
はしないものになっていた。その辺はさすが映画大学の先生
の作品という感じだ。
そして作品では、1970年代以降のエチオピアの現代史がかな
り把握できるものになっていた。1980年代の中ソ対立以降、
毛沢東主義を標榜した国の多くが悲惨な末路を辿ったが、エ
チオピアもその1国だったようだ。
ただし映画はそのような政治の話だけでなく、主人公が何故
脚を引き摺っているかなどの謎解きや、主人公の個人的な出
来事なども織り込まれて、2時間20分の上映時間が巧みに構
成されている。
その一方で、土着的な呪術のシーンやちょっとファンタステ
ィックな洞窟や島の様子なども描かれ、それらに今も続く圧
政の実態や、そこにあるかすかな希望などが見事に描かれて
いるものだ。

2時間20分は確かに長尺だが、そこに描かれた物語は充分に
堪能できる作品だった。
        *         *
今週は『父の初七日』という作品の試写会が中止になってい
た。理由はこの時期に題名が相応しくないというのだが…。
人間は毎日死んでいるのだし、初七日も災害地だけで起きて
いる話でもなく日常茶飯事のこと。こういうことを僕は過剰
反応と言って置きたいものだ。
この試写に関しては他にもいろいろあったので、敢えて書き
記しておく。
        *         *
 今回は少しページがあるので、いろいろ新規な情報もお伝
えしよう。
 まずは、『ジャスティン…』にも出ていたジェイデンと、
ウィル・スミスの父子が、M・ナイト・シャマラン監督が計
画している新作SF映画に出演することが発表された。
 この作品の題名は未発表だが、内容は1000年の未来が舞台
のお話。幼い息子と、普段はあまり仲の良くない父親の2人
の乗った宇宙船が、その頃には人も住まなくなっている地球
に不時着し、そこでの冒険が始まる…というもののようだ。
脚本は、シャマランと2010年4月紹介『ザ・ウォーカー』の
ゲイリー・ウィッタが執筆している。
 紹介文には人間が住まなくなった理由などは書かれていな
かったが、印象としては『ウォーリー』のイメージが湧いて
くる感じだ。そこに『ザ・ウォーカー』の脚本家なら、雰囲
気も繋がってくる感じもする。いずれにしても、荒涼とした
世界の中での冒険となるのかな。逆に人類亡き後の地球が他
の生物で溢れ返っていても面白くなるが。
 因にシャマランは、昨年発表した作品の評判はあまり芳し
くなかったようだが、元々SF/ファンタシー系が趣味であ
ることは間違い人だし、それに『シックス・センス』でハー
レー・ジョエル・オスメントをブレイクさせた監督とジェイ
デンとのコラボレーションも楽しみなところだ。
 そしてジェイデンは、2007年11月紹介『幸せのちから』以
来の父親との共演になるが、昨年の『ベスト・キッド』では
全世界で3億5000万ドルの大ヒットを記録しており、こちら
のコラボレーションも注目されるものだ。
 なお製作はスミス主宰のOverbrookで行い、配給はソニー
が担当する。
        *         *
 お次は、情報としてはちょっと前のものになるが、ウォル
フガング・ペーターゼン監督に、2006年6月紹介『ポセイド
ン』以来となる監督の計画が発表されている。
 発表されたのは、ジョン・スコルジー原作の“Old Man's
War”。日本では『老人と宇宙(そら)』という翻訳題名でも
知られる作品の映画化権をパラマウントが獲得し、ペーター
ゼンの監督で進めるというものだ。
 物語は、妻に先立たれた老人が75歳以上限定の軍隊に参加
し、宇宙の果ての植民星をエイリアンの襲撃から防御する任
務に着くというもの。この紹介文からだと、2008年4月紹介
『スターシップ・トゥルーパーズ』を思い出してしまうが、
実際に原作者もそれは心得ているようで、原作本には『スタ
ーシップ…』の原作者ロバート・A・ハインラインへの謝辞
も掲げられている。
 しかも本作は、アメリカの年次SFファン大会で授与され
るヒューゴー賞の候補に挙げられており、SFファンの間で
もその価値が認められた作品ということになる。さらに本作
は、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストにも掲載
されたそうだ。
 その原作をペーターゼンの監督で映画化するものだが、脚
色には2010年2月紹介『ウルフマン』などのデイヴィッド・
セルフの起用も発表されており、期待される作品になりそう
だ。なお映画化に当って題名は変更されるようだ。
 因に、ペーターゼン監督の本格SF作品では、1985年公開
“Enemy Mine”(邦題:第5惑星)があるが、バリー・ロン
グイヤーがヒューゴー、ネビュラ両賞を受賞した原作を映画
化したこの作品では、肝心の結末が変えられるなど、正直に
言って僕にはあまり評価できない作品だった。しかしそこに
はいろいろな事情もあったのだろうし、今回はそのようなこ
とのないようにしっかり映画化してほしいものだ。
        *         *
 最後に、3月20日付で紹介の“Superman: Man of Steel”
のrebootに、ロイス・レーン役として2008年1月紹介『魔法
にかけられて』などのエイミー・アダムスの出演が発表され
た。さらにヴィゴ・モーテンセンにも競合していた作品への
出演を断ったとの報道がされており、夏の撮影開始に向けた
準備が整って来たようだ。



2011年04月03日(日) クロエ、Paradise Kiss、スコット・ピルグリム、ビューティフル、ザ・ホークス、小さな池、ソウルのバングラ…、エンジェル・ウォーズ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『クロエ』“Chloe”
2005年10月紹介『秘密のかけら』などのアトム・エゴヤン監
督による2009年の作品。
主人公は大学教授を夫に持ち、自らは女性クリニックの経営
も順調な産婦人科医。ところがサプライズで準備した夫の誕
生パーティは、夫が出張先からの帰りの飛行機に乗り遅れて
無駄になってしまう。
そんな夫妻には音楽大学を卒業間近な1人息子がいたが、以
前は母親思いだった息子も、最近は何かと干渉する母親を疎
ましく思っているようだ。そして彼女は深夜に帰宅した夫の
携帯に若い女性との2ショットの写真を見つけてしまう。
それでも上辺は平静を保っていた彼女だったが、ある日、夫
婦で友人と会食した彼女は、そのレストランに出入りする娼
婦と話を交わし、試しに夫を誘惑することを依頼する。そし
て娼婦からはその報告が届き始めるが…
徐々に深入りして行く報告に驚いた彼女は、依頼を取り消し
て娼婦にそれ以上は夫に近付かないよう要求。しかし娼婦か
らは、「彼の方から会いに来るから断れない」と、要求を拒
絶されてしまう。
ちょっとした切っ掛けから長く連れ添った夫婦の信頼関係が
崩れ始める。それは疑えば疑う程に深くもなってしまうもの
だが…。果たして夫婦はそんな中から元の信頼関係を取り戻
すことができるのか。

出演は、ジュリアン・モーアとリーアム・ニースン。それに
2008年『マンマ・ミーア』で娘役を演じていたアマンダ・セ
イフライドがタイトルロールの娼婦を演じている。また夫妻
の息子役で2008年『ジャンパー』などのマックス・シエリオ
ットが出演。
元には2003年に製作されたフランス映画があるが、そのオリ
ジナルから2007年4月紹介『毛皮のエロス』などのエリン・
クレシダ・ウィルスンが本作の脚本を執筆。普段は自分の脚
本で撮るエゴヤン監督が、彼女の脚本ならと引き受けた作品
だそうだ。
正直に言ってかなりトリッキーな作品だが、夫婦間の感情の
縺れなどが丁寧に描かれ、その一方で娼婦クロエの心情にも
何かを感じさせる。そんな哀しさも見事に描かれている作品
だった。


『Paradise Kiss』
2005年のヒット映画『NANA』の原作者・矢沢あいによる別の
少女コミックスの映画化。
『NANA』はテレビ放映をチラ観した程度だが、女子の主人公
がいろいろな幸運に恵まれながら、憧れの業界で成功して行
くという展開は、本作も同様のようだ。それが『NANA』では
音楽業界、本作ではファッション業界となっているものだ。
そのため『NANA』ではいろいろな楽曲で物語が彩られていた
ものだが、本作ではそこに数々のファッション(衣裳)が登
場する。そして主人公はそれらの衣裳を次々に身に纏って行
くことになる。
本作の主人公は都内の進学校に通う女子高生。幼い頃に有名
大学付属小学校への受験に失敗し、以来有名大学への進学だ
けを目指して勉強に励んできた。しかし大学受験が近付くに
連れ成績が下がり始め、その目標も遠ざかりつつある。
そんなある日、彼女は下校の道で手首にスパイクだらけのブ
レスレットを付けた男性にしつこく話し掛けられ、逃げよう
と駆け出したところで転倒。しかも失神して気が付くと、そ
こは服飾専門学校に通う生徒たちのアトリエだった。
そして彼らの卒業発表のファッションショーでモデルをして
欲しいと頼まれた彼女は…。こんな展開に進学校で彼女が憧
れる同級生男子や、幼い頃から天才と呼ばれたデザイナーの
男性などが絡んで、少女の夢とも言えるファッションモデル
への道が描かれる。
まあ何たって話は上手く行き過ぎるもので、それは全5巻の
原作を圧縮しているから仕方ない面もあるかも知れないが、
単純明快なものだ。しかしそれがこの物語の狙いである訳だ
し、それをとにかくファンの期待を裏切らないように映像化
した作品と言える。
それに、ここに登場する若者たちの活力みたいなものは、ど
ちらかと言うと今の若者から失われているものかも知れず、
そんなものを描いた作品は、ある意味今の時代に必要なもの
なのかも知れない。
大人の目で観るといろいろ言いたくもなるが、若い頃にこれ
を観れば、多分こんな世界に憧れも持つだろうし、それが実
現しなくても夢を持つことが、それからの人生にとっての糧
にはなるだろうとも思えるものだ。

出演は、2010年3月紹介『瞬』などの北川景子、同年4月紹
介『BECK』などの向井理。さらに3月紹介『きな子』などの
山本裕典、5月紹介『君が踊る、夏』などの五十嵐隼士。他
に大政絢、賀来賢人、加藤夏希らが脇を固めている。
監督は新城穀彦。テレビ演出のベテランで劇場用作品は4作
目とのことだが、東京上空の空撮なども見事に描かれて、な
かなか気持ちの良い作品に仕上がっていた。

『スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団』
            “Scott Pilgrim vs. the World”
2008年5月紹介『ホット・ファズ』などのイギリスの注目若
手監督エドガー・ライトによるハリウッド進出第1作。
カナダ出身のコミックス作家ブライアン・リー・オマリーが
2004年に第1巻を発表したグラフィックノヴェルの映画化。
因にこの原作は2010年に出た第6巻で完結したが、2009年に
発表の第5巻ではComic-conで発表されるアイスナー賞も受
賞したそうだ。
アマチュアバンドでベース担当するスコットは、年齢22歳の
ちょっと冴えない男。そんなスコットも17歳の中国系ガール
フレンドが出来、バンドの練習に連れてきてもいたが、突然
別の理想の彼女を見付けてしまう。
そしてその理想の彼女にいろいろアタック、ついにはデート
にまで漕ぎ着けるのだが、そこに彼女の元カレたちの軍団が
襲いかかる。そこに現れるのはスタントチームを引き連れた
映画スターだったり、音楽業界の大物だったり…
そんな元カレ軍団を、演奏バトルや対戦モードになると突然
発揮される格闘の技で次々倒して行くスコットだったが…。
そんな展開がヴィデオゲームを思わせる映像や、いろいろな
楽曲を彩りに描かれる。

出演は、2007年『JUNO』などのマイクル・セラ、2007年
7月紹介『デス・プルーフ』などのメアリー・エリザベス・
ウィンステッド。他に、キーラン・カルキン、クリス・エヴ
ァンス、アナ・ケンドリック、アリスン・ピル、ブランドン
・ラウス。
さらに日本から、2009年2月紹介『鴨川ホルモー』や8月紹
介『風が強く吹いている』などに出演の斎藤慶太・祥太の双
子兄弟も登場している。
脚本はライト監督と、俳優として『デス・プルーフ』などに
も出演しているマイクル・バコールが担当。
正直なところは、脚本にサイモン・ペグが加わった前2作に
比べると映画センスが今一な感じで、VFXとジャッキー・
チェンのチームも参加したというアクションの派手さに比べ
て物語があまりにも弱い。
しかし帰りのエレベーターでは「こんな凄いの初めて」とい
う興奮した声も聞こえてきたから、最近の若者はこの程度で
も満足できるようだ。『ホット・ファズ』に続いてファンの
要望で公開されるという作品だが、そういうファンも大勢い
るのかな。そう言う僕も、『ホット・ファズ』には満足した
のだったが。


『ビューティフル』“Biutiful”
2007年1月紹介『バベル』などのアレハンドロ・ゴンザレス
・イニャリトウ監督による最新作。アメリカ・アカデミー賞
で外国語映画部門及び主演男優部門の候補にもなった。
舞台はスペインのバルセロナ。主人公は死者の魂とコンタク
トが出来るらしく、死体安置所でその言葉を聞き、遺族にそ
れを伝えて何がしかのお金を貰っている。その一方で彼は違
法滞在の中国人やアフリカ人に仕事の斡旋などもしているよ
うだ。
そんな彼には2人の子供がいて、学校の放課後は中国人女性
にその世話を頼んでいるが、その子供たちの実の母親は精神
疾患の躁病で、その症状が出ているときには何をし出かすか
判らない。このためその母親とは別居状態にある。
そして中国人が仕切る海賊版製造の仕事に行き詰まりが生じ
たり、麻薬密売人のセネガル人が検挙されたり、いろいろな
事件が進行して行くが、そんな中で彼自身の余命が2カ月と
医者に告知されてしまう。
子供たちの母親の住むアパートの部屋からはサグダラ・ファ
ミリアが遠望されるなど、観光地としても華やかなバルセロ
ナの裏側で、ぎりぎりの生活を送っている人々の姿が主人公
の目を通して描かれて行く。
それは主人公にとっての生活の糧でもあるが、そんな中国人
やアフリカ人のために少しでも良かれと行動を起す主人公。
それは、自分の死期が迫っているからだけでもないようだ。
そんな主人公の苦しみや悲しみが描かれる。

出演は、2008年3月紹介『ノー・カントリー』でアメリカ・
アカデミー賞助演男優賞を受賞し、本作でも主演男優賞候補
に挙げられたハビエル・バルデム。
他には、アルゼンチンの舞台女優で舞踏家のマリセル・アル
バレス、2008年9月紹介『アラトリステ』に出演のエドゥア
ルド・フェルナンデス、2005年6月紹介『世界』に出演のチ
ェン・ツァイシェン、テレビ版『三国志』に出演のルオ・チ
ン。
また主人公の2人の子供役のハナ・ボウチャイブとギレルモ
・エストレラ、セネガル人の妻を演じるディアリァトゥ・ダ
フは、実際にそれに近い境遇にいる人々が選ばれて出演して
いるそうだ。
監督の前作『バベル』はかなりトリッキーで、その中で日米
のスターたちが踊っている感じもしたが、本作ではストレー
トに物語が展開され、それは最初は少し戸惑いを覚える感じ
もした。しかしこの真摯な物語には、この手法が最適なもの
だろう。そんな感じの作品だ。

『ザ・ホークス』“The Hoax”
1971年、大手出版社マグロウ=ヒルを相手に繰り広げられた
「ハワード・ヒューズ自伝」の贋作事件。その顛末を当事者
である贋作者のクリフォード・アーヴィング自身が著わした
著作に基づいて映画化した作品。
2002年2月紹介『シッピング・ニュース』などのラッセ・ハ
ルスレム監督が、2009年4月紹介『HACHI』の前に同じ主演
のリチャード・ギアと組んで発表した2006年の作品で、この
後の監督は2009年まで作品を発表していない。
アーヴィングは、それ以前には贋作画家エルミア・デ・ホー
リーの自伝(後にオースン・ウェルズが映画化した『フェイ
ク』の基になった)などを出版したこともあったが、1970年
の当時はあまりぱっとしない作家だった。
そんな彼が企画を思い付く。「ハワード・ヒューズ自伝」。
当時すでに隠遁生活に入り、腹心の部下の前からも姿を消し
ていたヒューズは、巨額の賠償請求の裁判なども起こされて
本人が人前に出てくる可能性が全く無かった。
それならでっち上げの「自伝」を出しても本人が文句を言っ
てくる事はないのではないか。こう考えたアーヴィングは、
ヒューズと個人的にコンタクトが取れたと自称し、その「自
伝」をマグロウ=ヒルに売り込んでしまう。
ところが、「自伝」を本物らしく見せようと調査をするアー
ヴィングの前にいろいろな情報提供者が現れ始める。そして
最後に届いた資料には、当時のニクソン政権を揺るがす政治
スキャンダルが記載され、ヒューズがその公表を望んでいる
ことが伺われた。そして出版社に圧力が掛かり始める。
作品は飽く迄もアーヴィングの言い分に従ったものだが、映
画化に当って製作者らが調査した結果でもこの政治スキャン
ダルを伺わせる事実が浮かび上がったそうだ。もちろんアー
ヴィングが行ったことは犯罪だが、それによって政治が動い
たことも事実かも知れない。そんなことも思わせる作品に仕
上げられている。
さらに物語の中には当時テキサス州知事を狙っていたジョー
ジ・ブッシュへの言及などもあり、監督がその後3年間も作
品がないのはそのせいかとも考えさせられた。

出演は、リチャード・ギア、アルフレッド・モリナ、マーシ
ャ・ゲイ・ハーデン。他に、ホープ・デイヴィス、ジュリー
・デルピー、スタンリー・トゥッチらが脇固めている。

『小さな池』“작은 연못”
1950年7月、朝鮮戦争の最中に起きた現実の事件を再現した
作品。
当時、北朝鮮の猛攻に後退を余儀なくされた米軍は、大田か
ら釜山に通じる唯一の道である老斥里一帯に阻止線を設ける
ことを決定。その地域の住民に待避命令を発令し、500余名
を南に避難させることにする。
ところがその避難民の中に北朝鮮の工作員が紛れ込んでいる
との情報がもたらされ、米軍上層部は避難民の作戦地域通過
の阻止を現地に指令。指令を受けた現地の部隊は南下を急ぐ
避難民たちに無差別の空爆と銃撃を加える。
さらにその難を逃れて双窟橋の橋下に逃れた避難民300名に
対しては、2大隊による銃撃が加えられて、結局生き延びた
住民は25名。彼らは死体を盾とし血の水を飲みながら命を長
らえたという。
そんな米軍による住民の虐殺事件は、韓国中では60件以上起
きたと言われるが、その内その事実が認定されたのは本件の
み。それも1999年にAP通信の記者によってその事実が調査
・報道され、朝鮮戦争後50年を経てようやく米韓両国政府が
認めたとのことだ。
という事件の描かれた作品だが、実は上映時間が86分。しか
も映画の前半は平和な時の村の様子が延々と写され、それは
悲劇を際立たせるためには必要だったかも知れないが、その
一方で事件が起きた真の原因などはほとんど語られない。
実際に上記の北朝鮮の工作員云々の話も、プレス資料に書か
れているだけで映画の中では殆ど説明もされていなかった。
それは確かに住民たちも何も判らず殺されたのだから、それ
と同じ感覚を味わう点では作品の意図も判るのだが。
それでいて映画には、米軍に協力する日本人の姿などは執拗
に描かれていて、そこには意図的なものも感じられた。それ
にしても住民への避難勧告が英語と日本語だけで行われてい
たというのも凄い話だ。
第2次大戦以降の米軍の犯罪がほとんど報道されていないの
は確かだろうし、それを明るみに出すという意味では貴重な
作品であることは確かなものだ。しかしやるなら米軍内の動
きなどもちゃんと描いて、真の犯人が誰だったのかも明らか
にするべきだろう。
それらも含めて描いてこそ意義のある作品になる。本作では
それが出来ない理由が他にあるようにも思えてしまう。前回
紹介した『黄色い星の子供たち』がパリ警察の様子なども描
いていたのと対照的だ。

なお本作は、5月末から東京新宿のK's cinemaで開催される
「真!韓国映画祭2011」にて上映される。

『ソウルのバングラデシュ人』“반두비”
3月17日に行われた試写が政府の帰宅命令で中断され、その
続きの約30分が『小さな池』の試写後に上映された。従って
かなり変則的な鑑賞になったが、今回報告させてもらう。 
物語は題名の通り、ソウルに暮らすバングラデシュからの労
働者の姿を描いた作品。
主人公は、バングラデシュに家族を置いて韓国に出稼ぎに来
ている浅黒い肌の青年。ある日バスの中で財布を落とし慌て
て車内に戻るが、隣席にいた女子高生は見ていないと言い張
る。しかし疑いを持って後をつけると、案の定、彼女は財布
を隠し持っていた。
そこで警察に行こうと言う主人公に、彼女はいろいろ言い訳
をした挙げ句、何でも願い聞いてあげると言い出す。そこで
出稼ぎ来てから1年分の給料を支払わない社長の家に交渉に
行ってくれと頼む主人公だったが…
その女子高生は、カラオケを経営する母親と2人暮し。しか
し最近の母親は愛人の世話に忙しく彼女をかまってもくれな
い。そして学校の夏休み、英会話塾に通おうとする彼女はお
金が必要だった。でも、何となく彼の願いに付き合うことに
なって…
特に異文化の交流というような話ではない(多少はそういう
面もある)が、何となく等身大の女子高生と外国からの出稼
ぎ労働者の置かれた環境など、日本でも通じるようなお話が
展開されて行く。そこには韓国人にはちょっと手厳しさも描
かれている。
実際、一方の主人公である女子高生は落とし物の財布を隠し
てしまうような神経の持ち主だし、金持ちなのに外国人労働
者の弱みにつけ込んで賃金を支払わない社長など…、でもこ
れは日本人も同じかな。
そして映画では、徐々に心を通わせて行く2人の関係が甘酸
っぱく描かれ、最後にはちょっと希望も描かれていた。

脚本・監督のシン・ドンイルは、2006年デビュー作の『訪問
者』がベルリン国際映画祭のフォーラム部門に出品されたと
いう俊英で、本作はその第3作。常に人の関係を描き続けて
いる映画作家だそうだ。
出演は、バングラデシュ人の青年に監督の前作『私の友人、
彼の妻』にも出演していたマーブブ・アラム・ポロブ。また
相手役の女子高生を演じたペク・ジニは、昨年日本公開され
た『キッチン』に出演していたようだ。
なお本作は、5月末から東京新宿のK's cinemaで開催される
「真!韓国映画祭2011」にて上映される。

『エンジェル・ウォーズ』“Sucker Punch”
『300』などのザック・スナイダーの原案・脚本・監督・
製作による作品。
主人公は、精神病院に収容された少女。少女は社会性の欠如
や粗暴性などからロボトミーの処置を施されることになり、
その施術は5日後と告げられる。その精神病院には、演劇や
ダンスで治療を行う設備があり…。
そこで場面は転換して少女のいるのは娼婦館。新人の少女は
ダンスもろくにできないが、5日後には大金持ちが来て彼女
を買うのだという。そして彼女がようやく踊り出した時、そ
れは全ての観客を魅了するものだった。
その彼女がダンスを始めると、場面は再び転換してちょっと
ファンタスティックな戦場となる。そしてそこにいた賢者か
ら、「地図、炎、ナイフ、キー、それに秘密のアイテムを揃
えたとき、自由になれる」と告げられる。
こうして彼女は娼婦館に暮らす少女たちと、それらのアイテ
ムを集める作戦を開始する。それは彼女のダンスに男たちが
魅了されている間にアイテムを奪い取る計画で、そのダンス
の度に場面は娼婦館から戦場へと転換し、そこでの闘いが繰
り広げられる。
恐らくはスナイダー監督の妄想なのだろうけど、何とも摩訶
不思議で強烈な世界が描かれる。それらは全てCGIで描写
され、空を飛んだり爆発したり、巨大な建物が崩れ去ったり
の正しく妄想の限り何でもありの世界だ。
そんな中でちょっとトリッキーな物語が描かれて行く。

出演は、2005年2月紹介『レモニー・スニケットの世にも不
幸せな物語』のエミリー・ブラウニングと、2010年4月紹介
『ブライト・スター』のアビー・コーニッシュ、2008年5月
紹介『イントゥ・ザ・ワイルド』のジェナ・マローン。
他に、『ハイスクール・ミュージカル』に出演のバネッサ・
ハジェンズ、夏公開『ハングオーバー2』に出演ジェイミー
・チャン。さらにカーラ・グギノ、オスカー・アイザック、
ジョン・ハム、スコット・グレンらが脇を固めている。
主人公の妄想が映像化されるということでは、『スコット・
ピルグリム』も同様だが、さすがスナイダー監督はスケール
も違うし、物語もただ馬鹿々々しいだけでない、僕らの納得
できるものになっていた。


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井口健二