| 2011年03月27日(日) |
蜂蜜、処刑剣、愛の勝利を、プッチーニの愛人、マイ・バック・ページ、4月の涙、黄色い星の子供たち+ニュース |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『蜂蜜』“Bal” 昨年のベルリン国際映画祭でグランプリの金熊賞を獲得し、 アメリカ・アカデミー賞外国語映画部門の国代表にも選ばれ たトルコ映画。 アララト山なども近いトルコ北部の山岳地帯が舞台のお話。 深い森の中で蜂蜜採取の男が巣箱を仕掛けた樹に登り始める ところから物語は始まる。しかし登る途中でロープを掛けた 枝が折れかかり、男は高い樹上で宙吊りになってしまう。 主人公のユスフは、小学校に上がったばかり。吃音症の彼は 朗読が苦手で上手くできた生徒に与えられる赤いバッジをな かなか貰うことができない。そんなユスフは毎朝お父さんに その日の暦を読んであげるのが日課で、それは何とかできて いた。 そしてある日、お父さんは近くの森から蜜蜂が居なくなった ために、少し遠くの黒い崖の辺りに新しい巣箱を掛けるため に出発する。それは2、3日で帰ってくるはずの作業だった のだが…。 物語の途中には、高い樹上で作業する父親の姿を羨望の眼差 しで見上げるユスフの姿や、また父親とは小声でなら普通に 話せる姿なども挿入され、それがユスフの思い出なのか、父 親が行方不明になってからの幻想かは不明だが、静かなシー ンが続いて行く。 そこにはまた、樽のような丸い巣箱の中にぎっしりと創られ た蜜で一杯の蜂の巣など、観ているだけで大自然を感じさせ てくれる映像や、山村で開かれる素朴な祭りの様子なども見 事に描写されている。 そして物語は、夫の安否を心配しながらも子供にはそれを見 せまいとする母親の姿や、その母親の心配を感じながらも、 学校での発表などで懸命に成長して行くユスフの健気な姿な どが描かれる。 出演は、ボラ・アルタシュ、エルダル・ベクシチオール、ト ゥリン・オゼン。 少年役のアルタシュはロケ地の村に10日前に引っ越してきた ばかりの撮影時8歳の少年がスカウトされて出演。父親役の ベクシチオールは州立劇団の座長を務めたこともあるベテラ ン俳優。母親役のオゼンは本作セミフ・カプランオール監督 の全作品に出演して助手も務める女優だそうだ。 因に本作は、カプランオール監督による2007年『卵』、08年 『ミルク』に続く、ユスフ3部作と名付けられたシリーズの 最新作となるものだが、前の2作はそれぞれユスフの壮年時 代と青年時代を描いたもので、物語の順番では本作が最初に なる。 なお、前の2作も日本で特別公開されることになっており、 来月試写も行われる予定なので、それらも後日紹介したい。
『処刑剣』“錦衣衛 14 BLADES” 今月13日付紹介『孫文の義士団』にも主演していたドニー・ イェンの主演による歴史活劇。 原題になっている「錦衣衛」は、中国の明代に実在した秘密 警察。明朝の初代皇帝・朱元璋によって創設され、当初は宮 廷や儀式の際の警護の目的だったものが徐々に変貌し、やが て政敵を闇に葬る暗殺団になっていったという。 そんな錦衣衛の頂点を極める司令役・青龍を主人公にしたお 話。その青龍に、皇帝の側仕えをする宦官から命令が伝えら れる。それは皇帝が重臣に渡した品を奪い返せという矛盾し たものだったが、そこには皇帝の命令を示す割符も付けられ ていた。 そのため重臣の家に向かった青龍は、偶然その品が皇帝の玉 璽であることを知り、命令に疑問を感じ始める。しかしその 場で不意討ちに遭った青龍は、深手を負った上に玉璽も奪わ れ、さらに重臣殺しの濡れ衣も負うことになってしまう。 こうして司令でありながら錦衣衛の追跡を受けることになっ た青龍は、「正義護送屋」を名告る運送業者に身を委ね、彼 らと共に西国へ向かう。そしてとある砦の街に辿り着いた青 龍は、そこである陰謀の存在を知ることになる。 これに、運送業者の娘との仄かな愛や復権を狙う親王一族が 放った刺客との壮絶な闘い、さらには「砂漠の判事」と自称 する盗賊団のリーダーなどが絡み、「大明十四刀」という司 令のみが持つことを許されるギミック一杯の武器なども登場 して、クンフーアクションにワイアーワーク、CGIも駆使 した大活劇が展開される。 共演は、2002年6月紹介『少林サッカー』などのヴィッキー ・チャオ。ブルネイ出身の元バスケットボール・ナショナル チームのキャプテンで男性アイドルユニット「飛輪海」のメ ムバーとして日本デビューもしているウーズン。それに大ベ テランのサモ・ハン。 原案・脚本・監督・美術は、1996年にジェット・リーが主演 した『ブラック・マスク』などを手掛けたダニエル・リーが 担当した。 『孫文の義士団』の時は正直に言って歴史の齟齬などが多少 は気になった。しかし本作の場合は、物語自体はオリジナル のようだが武侠物にも通じる波乱万丈の展開で、まずは痛快 エンターテインメントという感じの作品だ。
『愛の勝利を』“Vincere” 第2次大戦で日独伊3国同盟の一翼を担ったイタリアの総帥 ムッソリーニの愛人を巡る物語。 ドイツのヒットラーは愛人エヴァと一緒に自殺したことが有 名だが、ヴァチカンの膝元でもあるイタリアの総帥が愛人を 持っていたというのも、イタリア人ならあるということか。 その愛人イーダとムッソリーニは、1907年に早くも出会って いるものだ。 その日のムッソリーニは、宗教的な集会で「神が居るなら5 分以内に私を抹殺しろ」と言い放ち、5分後「神は居ない」 と断じてみせる。その姿を羨望の眼差しで見詰める女性。そ して社会党に入党し官憲に追われるムッソリーニを、彼女は 身を持って匿う。 こうしてムッソリーニを愛するようになったイーダは、やが て彼の目指すものに向かって全財産を抛ってでも支援を続け て行くことになる。ところが彼の息子を出産し、彼が総帥の 座に向かって進み始めた頃。彼に別の家族の在ったことが判 明する。 それでもイーダは、自分がムッソリーニの妻であり、息子が 長男であることを認めさせようとするのだが、それは総帥に とってはスキャンダルとなる。こうして彼女と息子の存在は 抹殺されて行くことになるが…。 最初は共産主義であったムッソリーニの政治姿勢が全体主義 へと変貌して行く。そんな個人的な変遷と、そこには数多く のアーカイブ映像やチャールズ・チャップリン『キッド』の 映像なども織り込みながら、物語は1945年までのイタリアの 歴史を描いて行く。 このイーダという女性の存在がイタリアでどれほど知られた ものかは判らないが、物語の後半は彼女自身の存在を賭けた 闘いも描いて行く。それは全体主義国家の権力との絶望的な 闘いでもあるものだ。 出演は、2008年5月紹介『コレラの時代の愛』などのジョヴ ァンナ・メッゾジョルノと、日本で今月末から試写が開始さ れるジョージ・クルーニー主演『ラスト・ターゲット』に出 演しているフィリッポ・ティーミ。特にメッゾジョルノは、 本作で全米批評家協会から主演女優賞を贈られたそうだ。 共産主義から全体主義、反戦論者から積極的参戦論者まで、 あっと言う間に変貌してしまうムッソリーニの政治姿勢の変 遷も驚きだったが、それを陰で支え続けるイーダの姿にも何 とも言えないものを感じさせられた。
『プッチーニの愛人』“Puccini e la fanciulla” 数多くの女性遍歴でも知られるイタリアの作曲家ジャコモ・ プッチーニ。その生涯の中で唯一の汚点とも言われるドーリ ア・マンフレーディの自殺事件を検証した作品。 トスカーナの景勝地トッレ・デル・ラーゴに建つプッチーニ 邸。その日、旅先の夫妻から帰宅の報を受けたメイドのドー リアは、その準備を続ける中である出来事を目撃する。しか しそれを口外するような彼女ではなかったのだが。 やがて帰宅したプッチーニ夫妻から素敵なお土産なども貰う ドーリア。ところが、それから数日して夫人の態度が急変す る。そしてこと在るごとにドーリアを叱責し始めた夫人は、 ついに彼女に実家軟禁まで命じてしまう。 この事態にはプッチーニも心を痛めるが、歌劇『西部の娘』 の創作に追われる作曲家にはどうすることもできない。それ でも作曲家の指示でドーリアの軟禁は解かれるが、外出を目 撃した夫人はドーリアを人前で罵倒し、そのため彼女は服毒 に至る。 『ラ・ボエーム』『蝶々夫人』などでも知られるプッチーニ には、その作曲した歌劇ごとに愛した女性がいたとも言われ ているそうだ。しかし『西部の娘』にはそれに相当する女性 が見当たらず謎とされている。 それならドーリアがそれに当るかというと、彼女とオペラの ヒロインには明らかな相違点が在る。ではそのモデルは一体 誰だったのか。本作はそのような点にまで回答を与える作品 になっている。 脚本・監督のパオロ・ベンヴェヌーティは、イタリアでも孤 高の映画作家と呼ばれているそうで、本作は彼の長編6作目 の作品だが、映画祭などでの上映を除くと日本では初紹介に なるとのことだ。 そんな監督は、元はドキュメンタリーの出身で、常に徹底的 な調査に基づいて作品を作り上げているとのこと。本作も、 監督が主宰する映画学校の生徒たちの協力も得て、トッレ・ デル・ラーゴでの現地調査なども踏まえて創作されている。 それはもちろんフィクションではあるが、かなり説得力の在 る物語が描かれている。 なお映画は、手紙の朗読などを除いてほとんどの台詞が排さ れ、ほぼ演技だけで展開される構成。最近では今年1月紹介 『四つのいのち』などもあるが、劇映画ではその特異さも注 目される作品と言える。 出演は、指揮者・作曲家として著名なリッカルド・ジョシュ ア・モレッティがプッチーニ役を演じており、その他も映画 ではほとんど無名の俳優たちが演じているようだ。湖畔の居 酒屋など、トッレ・デル・ラーゴの風景も美しく描かれた作 品だ。
『マイ・バック・ページ』 1971年に発生した朝霞自衛官殺害事件について当事者の1人 である元朝日ジャーナル記者・川本三郎が1988年に発表した 著作を映画化した作品。 1969年1月の東大安田講堂陥落の後、1人の若者が荒れ果て た安田講堂に侵入するところから映画は始まる。その後、若 者は別の大学のセミナーと思しき場所でアジテーションを行 うが孤立してしまう。それでも若者は少数の同志と共に活動 を続けて行く。 一方、安田講堂陥落を外から見詰めていた主人公は、進歩的 な週刊誌を発行する新聞社に入社。しかし彼はその週刊誌で はなく、より大衆的な雑誌の編集部への配属となり、東京の 風俗レポートなどを取材させられていた。そんな彼に左翼系 の記者が声を掛ける。 そして、その記者の手引きで逃亡中の全学連委員長の移動に 関与したりする内、主人公は真岡猟銃店襲撃事件の犯人と名 告る若者に接触、徐々にその若者との関係を深めて行くこと になるが… 映画の中では「朝日新聞」の社名は変更されており、従って 「アカイアカイ、アサヒアサヒ」が変えられていたのは興醒 めだったが、その他の1970年代当時の雰囲気はそれなりに良 く描写されていたように思える。 それはそれなりにノスタルジックなものであり、正にその時 代を過ごしてきた自分にとっては、えも言われぬ感覚の漂う ものだった。 ただし物語は、飽く迄も川本の言い分に基づいて描かれてい るもので、事件の顛末が正しく描かれているのかどうか…。 それにしてもこの顛末は、ジャーナリストとしてはかなり恥 ずかしいもののはずだが、よくぞこれで発表したとも思える ものだ。 なお映画では、「朝日」以外にも「朝霞」が「朝霧」など、 いろいろ変えられているが、中で「赤衛軍」が「赤報軍」に なっていたのには、一瞬「赤報隊」を思い出してぞっとして しまった。これは意図的なのだろうか。 出演は、妻夫木聡、松山ケンイチ。他には、2010年6月紹介 『ちょんまげぷりん』などの忽那汐里、今年1月紹介『婚前 特急』などの石橋杏奈、2008年10月紹介『悪夢探偵2』など の韓英恵、2010年9月紹介『大奥』などの中村蒼。さらに長 塚圭史、山内圭哉、古舘寛治、あがた森魚、三浦友和らが脇 を固めている。 監督は、2005年3月紹介『リンダ・リンダ・リンダ』などの 山下敦弘、脚本は『リンダ…』と、2009年2月紹介の『ニセ 札』なども手掛けた向井康介が担当している。 主演の2人のせいか試写会には若い女性の姿も多く見られた が、日本の若者が一番活力を持っていた頃を描いたこの作品 を、本来の観客であるべき僕と同世代の人がどのくらい観て くれるか。それが一般公開での勝負になりそうだ。 それにしても、あの時代をもっといろいろな形で映画にして 欲しいものだ。
『4月の涙』“Käsky” 1918年1月27日−5月15日に起きたフィンランド内戦を背景 とした作品。 この当時のフィンランドは、旧宗主国だったロシアに対する 独立運動がロシア革命の勃発で現実のものとなったが、元々 階級闘争の側面もあった運動は、ブルジョア勢力が白衛軍、 労働者階級が赤衛軍という自警組織を創設し、そのまま内戦 へと進んでしまう。 そして白衛軍はドイツ軍の支援を受け、赤衛軍はロシア赤軍 からの武器供与を受けてその戦闘は激しさを増していくが、 元々赤衛軍兵士の練度は低く、約5カ月後に白衛軍の勝利宣 言で内戦は終結したとのことだ。 そんな時代の物語。主人公の一方は赤衛軍に属する女部隊の 女性リーダー、他方は白衛軍の男性兵士。その女性リーダー が白衛軍の捕虜となり、男性兵士は彼女を判事のいる軍事裁 判所に護送しようとするのだが、その2人に数奇な運命が襲 いかかる。 そこには内戦であるが故の悲劇や女性であることによる過酷 な運命、また元の院長がトルストイ主義者だったという精神 病院に設けられた軍事裁判所のちょっと奇妙な雰囲気や未来 への希望など、様々な要素が描かれて行く。 原作は、フィンランドで最も知られた作家の1人と言われる レーナ・ランデルの小説によるもので、この原作は2003年の 出版当時に優れたノンフィクション文学に与えられるフィン ランディア賞の候補にも挙げられたとのことだ。 そして監督のアク・ロウヒミエスは、原作の出版以前からこ の物語に着目していたが、その後の監督作品で数多くの受賞 を果たすなどの名声を得て、正に満を持しての映画化に踏み 切ったという。 このため本作の製作には、本国のフィンランドだけでなく、 ギリシャやドイツからも資金提供が為されているそうだ。 出演は、本作で2009年ベルリン映画祭シューティングスター 賞を受賞したというサムリ・ヴァウラモと、翌年の同じ賞を 受賞するピヒラ・ビターラ、さらに本作でマラケシュ映画祭 の主演男優賞を受賞したエーロ・アホ。 因にヴァウラモは、日本では今月末から試写がスタートする ジョージ・クルーニー主演『ラスト・ターゲット』にも出演 しているとのことだ。
『黄色い星の子供たち』“La rafle” 1942年7月16日にフランスのパリで始まった悲劇を描いた作 品。 題名を観ただけで内容が判ってしまう人もいるかも知れない が、黄色い星とは1942年6月にナチスがその占領下のユダヤ 人に強制したワッペンのこと。それはユダヤ人であることを 識別して迫害を行うためのものだが、悲劇はそれだけでは済 まなかった。 ヴェル・ディヴ(冬期競輪場)。その日、その場所に連行さ れた1万3000人とも言われる老若男女のユダヤ人は、5日間 を食料も飲料水もトイレも無く閉じ込められた後、さらに強 制収容所へと運ばれて行ったのだ。そしてその先に待ってい たものは… このヴェル・ディヴの状況に関しては、昨年10月24日付の東 京国際映画祭<コンペティション部門>で紹介した『サラの 鍵』でも描かれていたが、1995年シラク大統領が公式に謝罪 するまでフランス政府もその事実を認めていなかったという 出来事。それがようやく映画でも描かれるようになってきた ものだ。 そして本作は、強制収容所に移送された後に、脱走に成功し て生き延びたという当時11歳だった少年の証言に基づいて描 かれたものだが、その死と紙一重の恐怖に満ちた物語は、そ れまでは天真爛漫だった子供たちの姿によって見事に際立た されている。 またそこには、彼の証言だけでなく数多くの調査や取材で得 られたエピソードも描かれている。それはヴェル・ディヴ内 の救護所に勤務した非ユダヤ人看護婦の話や、競輪場から脱 出に成功したユダヤ人女性の話などもあるが、それらも全て 実話だとのことだ。 出演は、昨年2月紹介『オーケストラ!』などのメラニー・ ロラン、ジャン・レノ、それに2007年7月紹介『エディット ・ピアフ』などのシルヴィー・テステュ。 また、主人公の少年を演じたユーゴ・ルヴェルデは、撮影時 は実際に11歳だったが、撮影現場を訪れた証言者の男性に、 「あなたが僕にがっかりしないようにしたいです」と語って 感激させたそうだ。 脚本と監督は、元ジャーナリストのローズ・ボッシュ。数年 前にこの事実を知り、本格的に準備を始めてからは3年間を 費やしたというボッシュの執念が、この見事な作品を作り上 げている。 そして描かれた本作は、フィクションを原作にした『サラの 鍵』ほどドラマティックではないものの、真実の重みが間違 いなく感じられる作品になっていた。
先週試写会が中止された作品の中で、『処刑剣』と『愛の勝 利を』は今週試写が再開され、内容的には問題なく公開も予 定通り行われるようだ。 しかし、ぎりぎりで試写を観られた『世界侵略:ロサンゼル ス決戦』は、内容に鑑みて公開が10月に延期されるとの通知 が映画会社から届いている。また、2月27日紹介の『サンク タム』も内容の一部が好ましくないとの判断で公開延期の連 絡が届いている。この他、来々週に紹介予定のリーアム・ニ ースン主演作品は邦題が変更になるようだ。 他にも、僕に連絡が来ていない作品もあるかも知れないが、 昨年12月紹介『唐山大地震』と11月紹介『ヒアアフター』の 中止は仕方ないにしても、くれぐれも過剰反応にならないこ とだけはお願いしたい。 * * なお製作ニュースでは、“The Hobbit”の撮影がニュージ ーランドで開始されている。彼の地も地震の影響で撮影開始 は静かに行われたようだが、3Dでの撮影はこれから14カ月 に渡って行われるそうだ。
| 2011年03月20日(日) |
ロサンゼルス決戦、奇跡、それでも花は咲いていく、昼間から呑む、ポールダンシングボーイ★ず+ニュース |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『世界侵略:ロサンゼルス決戦』“Battle: Los Angels” 突如始まった地球外からの侵略に対して、果敢な戦いを挑む アメリカ海兵隊員の姿を描いた戦争映画。 主人公は20年間の任務で数々の勲章も受けたベテラン2等軍 曹。しかし浜辺のランニングで訓練中の新兵に遅れを取るよ うになり退役を決意する。そんな彼には以前の戦争で部下を 見殺しにして武勲を立てたという噂もあった。 ところが彼が退役の書類に上官のサインを貰った頃、たった 4時間前に発見された流星群が地球に落下し始めたという情 報が入る。しかもそれは世界の主要都市の沖合に集中し、着 水直前に制動が掛かる現象も見られた。 そしてその落下した物体から2足歩行の生物の大軍が現れ、 各都市へ攻撃を開始する。この事態にロサンゼルス近郊の訓 練基地にいた主人公にも集合の命令が下り、彼は士官学校を 出たばかりの少尉の隊に加わることになるが… そんな主人公の加わった小隊に下された命令は、今や敵陣と なった海岸線の警察署から発せられた民間人の救難信号に対 して、その救出に向かうこと。しかしその地域には2時間半 後に空軍が無差別爆撃を行う計画があった。 果たして主人公たちは、タイムリミットの中で敵陣深くに侵 入し、民間人を救出することが出来るのか。しかもその間に も事態はどんどん変化し続けていた。 脚本は、1999年公開された『将軍の娘/エリザベス・キャン ベル』などのクリス・バートリニー。映画脚本のクレジット はそれ以来のようだが、その間にもソニーやワーナー、パラ マウントなど各社のスタッフライターとして数多くの作品に 参加していたようだ。 監督は、南アフリカ出身で2006年公開“The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning”など手掛けたジョナサン・リー ベスマン。出身地からは2010年3月紹介『第9地区』のニー ル・ブロムカンプ監督の名前が思い浮かぶが、ちょっと似た テーマの作品なのは面白い。 出演は、2008年7月紹介『ダークナイト』などのアアロン・ エッカート、2009年7月紹介『ワイルド・スピード4』など のミシェル・ロドリゲス、同月紹介『サブウェイ123・激 突』などのラモン・ロドリゲス、2005年12月紹介『ロード・ オブ・ウォー』などのブリジット・モイナハン。他にミュー ジシャンのNe-Yoらが出演している。 試写会は3月14日に行われたが、予想される内容の作品をそ の日に観ることには躊躇いもあった。それは、敵の攻撃で瓦 礫の山と化した街区の様子や、夜景の中のあちこちで炎の上 がっている映像が、ここ数日観ていた災害の映像とも重なっ たものだ。 しかし、最初に戦争映画と書いて実際に戦闘シーンも数多く 登場する作品ではあるが、物語としては人智を超えた災害に 立ち向かうレスキューの話でもある。そしてその中を危険を 冒して進んで行く主人公たちの姿には、現実と重なったある 種の感銘も受けた。 お陰で途中の泣かせのシーンには見事に填められてしまった 部分もあった。本作はもちろんフィクションだが、そんな状 況の中での人間の姿も丁寧に描かれていたものだ。 因に、当日の試写会は2回予定されていたが2回目はキャン セルされた。その後に本作の日本公開は見送りになり、以後 の試写の予定もすべてキャンセルされたとのこと。1回目の 試写を観たのは僕自身を含めて30人足らずのようだ。 さらに翌週に予定されていた“Sucker Punch”(邦題:エン ジェル・ウォーズ)の完成披露試写会も中止になって、当分 この手の廃虚のシーンが出てくる映画は見送られるのかな。 地震・津波を直接描く作品はともかく、ちょっと過剰反応の ような気もするが…
『奇跡』 2004年のカンヌ国際映画祭で柳楽優弥に主演男優賞を齎した 是枝裕和監督が、再び子供を主人公に置いて描いたドキュメ ンタリーの要素もある作品。 「3月12日九州新幹線全線開業。一番列車がすれ違うとき、 奇跡が起きる」 物語の中心は小学生の兄弟。両親の離婚で兄は母親と共に実 家のある鹿児島に引っ越し、弟はミュージシャンである父親 の活動拠点になっている福岡で暮らしている。そんな兄弟が 1番列車の奇跡の噂を聞き、様々な想いを持った友達と共に その場所を目指す。 それは旅費だけでも子供には大金になるものだが、その工面 の仕方から始まって、1番列車がすれ違う現場に至るまでの 行程や宿泊の手段まで、そこには偶然に頼った御都合主義の 部分もあるが、それらがそれなりのドラマで描かれていた。 またそこには、両親の離婚を始めとする子供たちを囲む状況 への目配りなどもいろいろなされているし、一方で子供たち が語る「起したい奇跡」への想いなどは、是枝監督特有のド キュメンタリーなタッチで描かれているものだ。 出演は、小学生お笑いコンビ「まえだまえだ」の前田航基と 前田旺志郎。この2人は確か2008年7月紹介『パンダフルラ イフ』の完成披露試写にゲストで登場したのを観て、その芸 は知っていたが、元々は劇団子役とのこと。掛け合いの口調 などはナチュラルではないものの、彼らの演技としては納得 は出来た。 また彼らと共に行動する子供たちは、2009年10月紹介『AC ACIA』に出演の林凌雅の他、永吉星之介、内田伽羅、橋 本環奈、礒邊蓮登らが演じている。 さらに、彼らを囲む大人たちとして大塚寧々、オダギリジョ ー、樹木希林、橋爪功、夏川結衣、阿部寛、長澤まさみ、原 田芳雄、高橋長英、リリィ、田山涼成、入江雅人、中村ゆり らが脇を固める。 実は、個人的に3月26日熊本に行く計画を立ていた。それは 24日23時10分東京駅発ムーンライトながらに25日0時30分発 の小田原から乗り込み、青春18切符の1日目で博多。26日は 博多−熊本間の新幹線2枚切符で往復、博多で2泊して青春 18切符の2、3日目で東京に戻るものだった。しかし震災に よって実行できなくなってしまった。 だから九州新幹線や熊本の地名が出てくると、この映画を観 てから現地に行っていたら、さぞや気持ちも違うものになっ ていただろうと思えた。次は7月に行くチャンスがあるかも 知れないが、その時は無事に行ってきたいものだ。 その時には、映画に話題が登場するカルカンと馬刺しも食べ たいゾ。
『それでも花は咲いていく』 ものまね芸人の前田健が、自らの原作小説を基に初監督した オムニバス作品。 作品は、エーデルワイス、ヒヤシンス、パンジーと題された 3つの物語からなっており、それぞれは男性特有と言えるか も知れないある種病的な性癖について描いている。ただしそ の性癖は、男性の誰しもが何処かに持っているとも言えるも ので、本作は男性の多くが共感を持って観てしまう作品とも 言えそうだ。 その1本目で描かれるのはロリータ・コンプレックス。それ は高校受験生の家庭教師を頼まれた元進学塾の教師が、実は 教え子よりその妹の方に興味を持ち、それを知らない親は妹 の水泳大会の応援や遊園地などに教師を連れて行ってしまう が…というもの。 物語の間には、「それは犯罪だ」と脅される主人公の妄想な ども描かれていて、それなりの見識も持って作品は作られて いる。その点では常識的な作品であり、芸人の作品によく感 じられる思い上がりもなく、評価できる作品だった。 2本目は、これは何と呼ぶのか判らないが、留守中の女性の 部屋に上がり込み、その部屋の中で妄想に浸るというもの。 それは当然部屋の住人に判らないようにするのが鉄則だが、 その原則が崩れてしまったところから物語が始まる。 そして3本目は、エディプス・コンプレックス。30代前半と 思われる男性の最近亡くなった母親への思いが綴られて行く が、そこに母の生前には浮気もしていたらしい父親の存在が 関ってくる。 これらの物語が、それぞれ2010年2月紹介『獄に咲く花』な どの仁科貴、10月紹介『酔いがさめたら、うちに帰ろう』な どの滝藤賢一、2008年6月紹介『能登の花ヨメ』などの平山 浩行の主演で描かれる。 共演は、南野陽子、冨家規政、小木茂光、カンニング竹山、 麻生祐未、池永亜美、藤本七海、佐藤二朗、ダンカン、酒井 敏也ら。 原作・脚本・監督の前田は自らゲイをカミングアウトしてお り、本作では自らも体験しているセクシャル・マイノリティ について描きたかったそうだ。その点では判りやすく描かれ ているし、上にも書いたように男性には共感も得られるもの になっている。 ただ、この共感を女性の観客にまで広げられるかどうか、観 れば女性にも理解して貰える作品だとは思うが…。男性を理 解するために、ぜひ女性にも観て貰いたい作品だ。
『昼間から呑む』“낮술” 火曜日に行われる予定の試写会が震災の影響で中止となり、 替りにサンプルDVDを手渡された。従って後日スクリーン で観直す可能性もあるが、取り敢えず今回はDVD鑑賞での 感想を書かせて貰うことにします。 映画監督になりたくてシナリオ公募に何度も応募したが果た せず、1000万ウォン(19日の為替レートで約71万円)の製作 費で自主製作したという作品。監督自身の実体験に基づく酒 と女に纏わる話が展開される。 若者4人が居酒屋で酒を酌み交わしている。その内の1人が 最近女と別れ、それを慰めているようだ。やがて別の1人が 旅行に行こうと言い出し、善は急げとばかりに翌日の決行を 決めてしまう。そして傷心の若者は先に帰宅して翌日現地に 赴くのだが… 辿り着いた雪模様の駅に他の3人の姿はない。そこで1人に 連絡すると3人は前日の深酒が醒めておらず、さらに仕事で その日は来れないという。しかしそのまま帰ろうとした主人 公は、「先輩のペンションに連絡したからそこで待て」と説 得されてしまう。 こうして見知らぬ町での、しかも雪模様の中での主人公の彷 徨が始まることになる。そこには題名の通り昼間から呑む酒 と女が関ってくるのだが、これがかなりシュールな展開にな って行く。 何しろ主人公は運が良いのか悪いのか、取り敢えず酒と女が 次から次に登場する。しかも主人公は酒が強いらしく、出来 事には比較的冷静に対処して行くのだが、それでもトラブル の種は尽きないものだ。 宣伝コピーには「爆笑ロードムービー」とあるが、自分も酒 を嗜む人間としては、ここまでされるのは願い下げといった 感じの物語が進んで行く。それが傍目には可笑しい訳だが、 僕としては自戒の念も持って観ていた感じの作品だ。 監督のノ・ヨンソクは中学生時代にアニメに魅了され、大学 では陶芸を専攻するが卒業後は音楽にのめり込み、さらに映 画監督の夢を実現させたという。従って本作でも監督・脚本 だけでなく、撮影・編集・美術・音楽、そして声の出演まで 1人でこなしているものだ。 しかし監督は、「本作は皆の力で作った」と強調している。 実際に映画に出演している女優のイ・ラニはスクリプターや 助監督も務め、彼女の夫のシン・ワンソプも出演者だ。他に 主演はインターネットで発見したというソン・サムドン。共 演にキム・ガンヒ。 映画は製作費削減のためシーンを極力照明のいらない昼間に 設定するなどの工夫も凝らされている。映画の題名がその精 神も表わしているようだ。それと、物語の結末に希望がある のも良い感じだった。
『ポールダンシングボーイ★ず』 2008年11月紹介『プライド』などの金子修介監督による最新 作。 『フルモンティ』の男性ストリップや、『ウォーター・ボー イズ』の男子シンクロナイズド・スイミングなど、まあこの 手の作品はいろいろあるが、今度は男子のポールダンスと来 たものだ。 しかも背景は昨今のお笑いブーム。漫才スクールの生徒募集 に応募して大金を振り込み、いざその教室に来てみると、そ こはポールダンスの教室だった…という詐欺に引っ掛かった 若者たちが、インストラクターの演技に魅せられてポールダ ンスを始めてしまう。 この展開も、2006年12月紹介『ウォーターズ』を思い出して しまうが、この辺も言ってみれば有り勝ちな展開なのかも知 れない。脚本は、お笑いコントユニット・フラミンゴの吉田 ウーロン太が担当している。 ただし試写前に行われた監督の挨拶によると、「昨年秋に出 演者たちと会って彼らで何か撮りたいと思い、それから余り 時間も掛けずに作った作品」とのことで、その点では脚本の 練り込みなどもあまりされてはいなかったのだろう。 その出演者は、ワタナベエンターテインメント所属のD2。 最近では1月紹介『ランウェイ☆ビート』などいろいろな映 画に出演者を送り込んでいる演劇集団D-BOYSの弟分というグ ループのメムバーが集団で主演している作品だ。 因にそのメムバーは、荒井敦史、阿久津眞太郎、上鶴徹、山 口賢貴、近江陽一郎、三津谷亮、酒井幸人、池岡亮介、根岸 拓哉、陳内将。これから伸びてくる連中と思われるので、名 前を列記しておく。 共演は、2008年8月紹介『東京残酷警察』などの泉カイ、同 年5月紹介『今日という日が最後なら』の柳裕美、グラビア アイドルで2008年『お姉チャンバラ』などの橋本愛実、さら に蛍雪次朗らが脇を固めている。 男子のポールダンスは、さすがに力強くて倒立なども簡単に 決めてしまうが、最後に演じられる群舞のパフォーマンスは やはり即席な感じが否めなかった。でも、それまで未経験の 彼らをここまで仕上げられれば…。観客もそれは判って観に 来るはずのものだ。 それに本作では、インストラクター役の泉はそこそこのダン スを魅せてくれるし、さらにメムバーたちが実際のショーを 見学に行くシーンでのプロダンサーたちのパフォーマンスは 見応えがあった。 上映時間1時間25分の作品だが、D2のファンなら間違いな く楽しめそうだ。 ただ一言添えておくと、劇中に挿入されてエンディングでも 流れる監督作詞の主題歌は、今の時期に歌詞がちょっと問題 にされそうだ。公開までに修正できると良いのだが。
以上が今週観られた作品だが、実はこの他に鑑賞予定だった 『処刑剣』『愛の勝利を』『スコット・ピルグリム vs.邪悪 な元カレ軍団』『カルメン−3D』『パラダイス・キス』の 試写会が中止になり、『ソウルのバングラディシュ人』とい う作品では、上映の途中で大規模停電の警告が出て中断され るという事態にもなっている。 いずれも震災やその後の電力事情によるものだが、すでに何 本かの作品は、状況に鑑みて公開が見送られる可能性も出て きており、来週は9本観る予定も全うできるかどうか怪しい ものだ。もちろん被災地の状況は判っているし、興行の影響 力も理解はするが、公開の見送りなどには過剰反応の感じも あり、もう少し柔軟に事に当って欲しいとも感じる。 ゴールデンウィークに向かって、例年なら試写も増える時期 だが、どうなってしまうのか心配なところだ。 * * 今回の製作ニュース。 まずは続報で、前回報告“Silent Hill: Revelation 3D” に関して、すでにトロントで開始されている撮影に、2004年 11月紹介『ネバーランド』などのラダ・ミッチェル、2006年 8月紹介『サイレント・ノイズ』などのデボラ・カーラ・ア ンガー、それに『LOTR』シリーズのボロミア役ショーン ・ビーンの出演が発表された。 で、この3人は、実は2006年5月紹介の前作『サイレント ヒル』にも登場していた俳優陣(シャロンの両親とアレッサ の母親)で、前回はrebootとして紹介したが、前作との関係 もかなり明確に描かれた作品になりそうだ。ただし今回の主 人公はヘザー・メイスンとその父親のハリーとなっており、 それとの関係はまだ明らかにはされていない。 トロントでの撮影は、2009年“Solomon Kane”などのマイ クル・J・バセットの監督で3Dで行われており、全米公開 は2012年に予定されている。 * * 続いては2月13日付で紹介した“Superman”のrebootで、 スーパーマンの地球での育て親となるケント夫妻役として、 ケヴィン・コスナーとダイアン・レインの配役が発表されて いる。この役柄は、1978年の映画化ではグレン・フォードと フィリス・タクスターが演じたものだが、今回もかなりの俳 優が選ばれたようだ。 そして今回の物語では、敵役として前のシリーズでは主に 第2作から登場するゾッド将軍が中心になるようで、その配 役に『LOTR』のアラゴン役ヴィゴ・モーテンセンの出演 が発表されている。この役柄も以前の映画化ではテレンス・ スタンプが演じていたものだが、スタンプの無気味さに対し てモーテンセンのキャラクターが今一つ一致しないのが気に なるところだ。 なお、前回紹介した女優陣の配役はまだ決定されていない ようで、その他のデイリー・プラネット社のスタッフなどの 配役もまだ発表されていないが、題名は“Superman: Man of Steel”と決定され、撮影開始は今年の夏、全米では2012年 12月の公開が予定されている。 * * ワーナーからもう1本。1月30日付でも紹介した『バット マン』シリーズの第3作“The Dark Knight Rises”の配役 で、新たに、クリストファー・ノーラン監督の前作『インセ プション』に出演していたトム・ハーディとジョセフ・ゴー ドン=リヴィットの出演が発表されている。 この内、ハーディが演じるのはベインという悪役、ゴード ン=リヴィットの配役は、『バットマン・ビギンズ』でトム ・ウィルキンスンが演じていたマフィアのボス:カルミーネ ・ファルコーネの息子アルベルトになるようだ。 因にこのアルベルトは、The Holiday Killerという名前で も知られる悪党だそうで、前回紹介したアン・ハサウェーの キャットウーマンと共に、ブルース・ウェイン/バットマン と対決することになるようだ。 それにしても『ビギンズ』には渡辺謙が出演していたもの だし、ノーラン監督は結構俳優を大事にする人のようだ。 * * 最後に、その『バットマン』の以前のシリーズで、全作を 通して執事アルフレッド役を演じていたマイクル・ゴーフの 訃報が伝えられた。 ゴーフは、1989年にティム・バートン監督による第1作で 執事役に起用され、その後は監督や主演者は代っても1997年 ジョージ・クルーニー主演の『バッマン&ロビン』まで一貫 してその役を演じていたものだが、最近ではバートン監督の 『コープス・ブライド』『アリス・イン・ワンダーランド』 の声優にも起用されていた。そこで『コープス』での監督の 来日記者会見でそのことを質問した時には、バートン監督が 凄く嬉しそうに、「彼は僕にとってのヒーローだ」とも話し てくれたものだ。 アルフレッドの役はマイクル・ケインに引き継がれたが、 ゴーフは享年94歳だったとのこと、長寿をお祝いして冥福を 祈りたい。
| 2011年03月13日(日) |
八日目の蝉、バビロンの陽光、光のほうへ、星を追う子ども、大木家のたのしい旅行、孫文の義士団+製作ニュース |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 筆者は東京都在住者ですが、東北地方の大地震及び大津波は 衝撃でした。被害に会われた方へのお見舞いと、早急な復旧 をお祈り申し上げます。
『八日目の蝉』 角田光代原作ベストセラー小説の映画化。 21年前に発生した乳幼児誘拐事件。その事件は4年後に解決 し、子供は両親の許に戻るが、子供にとって4年間を母親と 思っていた女の存在は何だったのか。そして両親、特に実の 母親に懐けない子供の存在とは… 「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」という衝 撃的な宣伝コピーが目引く作品だが、その内容はさらに衝撃 的だったと言えそうだ。 誘拐犯は父親の不倫相手、しかも妊娠中絶の後遺症で子供の 出来ない身体になっている。そしてその直後に妊娠した本妻 の子供が誘拐された。それもちょっとした偶然の重なりから 起きてしまう事件。その子供を犯人は実の子の様に可愛がっ て育てる。それは同時に警察の目を逃れながらの厳しい子育 てだった。 不倫、妊娠中絶、それに物語の一部を彩るカルト教団。人類 が自然界の一員だったとしても、ここに描かれるのは自然界 の生物では有り得ない事象ばかりだろう。人間が人間だから こそ起こしてしまう恐ろしい事件が描かれる。 そしてその事件は、被害者である少女に大きな心の傷を残し てしまうのだが…。育ての母も実の母親も否定して成長しな ければならなかった少女が、ある切っ掛けから過去を振り返 り始めたとき、事件は別の様相を見せ始める。 出演は、2007年5月紹介『怪談』などの井上真央と、2010年 10月紹介『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』などの永作博 美。他に小池栄子、市川実和子、森口瑶子、平田満、田中哲 司、劇団ひとり、余貴美子、田中泯、風吹ジュン。 監督は、2010年3月紹介『孤高のメス』などの成島出。脚本 は、前々回紹介『軽蔑』などの奥寺佐渡子。 物語は、永作が演じる誘拐犯の女性の逃亡生活の様子と、井 上が演じる被害者だった少女の今日の姿が交互に描かれ、そ の結論は最初から判っているようなものではあるが、そこに 至る少女の内なる葛藤が見事に描かれているとも言える。 上映時間は2時間27分と長尺の作品だが、物語のテンポは決 して遅い訳でもなく、むしろ着実に物語が描かれて行く感じ がした。それだけの深い内容の作品が描かれていると言えそ うだ。
『バビロンの陽光』“ابن باب” 昨年のベルリン国際映画祭で、アムネスティ映画賞と平和映 画賞をW受賞した作品。この他にもカルロヴィヴァリ、シア トル、エジンバラなど各地の映画祭で数多くの受賞に輝いて いるようだ。 2003年春、フセイン政権の崩壊から2週間後の物語。イラク 北部に暮らすクルド人の少年とその祖母が少年の父親を探す 旅を始めている。その父親は南部ナシリアの刑務所にいると の知らせがあったのだ。 そこで2人は道端でトラックを止め、最初はバグダッドへと 向かう。少年は父親から貰ったという縦笛を持っているがあ まり上手には吹けないようだ。そしてバグダッドではナシリ ア行きのバスを探すことになるが… 少年は町で知り合った子供の手伝いをして、その子が少年と 祖母の危機を救ったりもしてくれる。それは神の加護も信じ たくなる出来事だった。しかし、ようやく辿り着いたナシリ アの刑務所はすでに廃虚で収監されていた人々の姿はない。 さらに偶然に知り合った元兵士と共に父親の行方を探す旅は 続けられて行くが…。 バグダッド、ナシリア、そして題名にもあるバビロンと、戦 闘によって廃虚となった砂漠の町が描かれる。それは砂漠化 の影響の下にもあるのだろうが、特に町中では戦争によって 破壊された傷跡も生々しいものだ。 そんな風景を背景に、その中で生きる、生きなければならな い人々の姿が描かれる。 監督のモハメド・アルダラジーは、バグダッドの出身だがオ ランダやイギリスで撮影・演出を学び、フセイン政権崩壊後 にイラクに戻って第1作を発表。その作品がサンダンス映画 祭などで評価されてこの作品に繋がったとのことだ。 因にイラクでは、過去40年間に150万人以上が行方不明にな り、イラク戦争後には300以上の集団墓地から数10万の遺体 が発見され、その数は現在も増え続けているが、その多くは 身元不明の儘とのこと。 そして監督は、このイラクの現状(大量虐殺による身元不明 者の問題)を世界に訴える「イラク・ミッシング・キャンペ ーン」も映画製作と並行して実施しているそうだ。 なお映画の中に「サダムに電話してくる」という台詞が出て きて、実は以前からこの言い回しのことは知ってはいたが、 実際に使われるのを観るのは初めてだった。サダムがフセイ ンのことかどうかは知らないが、世界にはいろいろな言い回 しがあるものだ。
『光のほうへ』“Submarino” 2005年10月に『ディア・ウェンディ』という作品を紹介して いるトマス・ヴィンターベア監督の最新作。本国デンマーク のアカデミー賞では、本年度アメリカ・アカデミー賞外国語 映画部門を受賞した“In a Better World”を抑え最多14部 門のノミネートと5部門の受賞を果たしたという作品。 幼い時期をアルコール依存症で育児放棄の母親の許で成長し た兄弟。その兄の現在は、簡易宿泊所に寝泊まりし、ビール と身体を鍛えることで日々を過ごしているが、その心には大 きな空洞があるようだ。 その兄は何度も弟に電話をし、その家を訪ねたりもするが、 空洞を埋めることにはならない。そしてある日、町で昔の友 人に呼び止められたことから、少し何かが動き始めるが、そ れはやがて大きな事件を引き起こすことにもなってしまう。 一方の弟は、幼稚園に通う息子と2人暮らし、少し前に妻を 交通事故で亡くし、ソーシャルワーカーからは子供の行く末 を案じる意見も出されているが、息子には人一倍の思い入れ があるようだ。そして兄弟は母親の葬儀で再会をするが… デンマーク特有の手厚い生活保護や麻薬の問題、そんな背景 の中で幼い頃の出来事によってトラウマを持つ兄弟が、それ でも必死に生きて行こうとしている。少しでも光のあるほう に向かって。 物語は、ヨナス・T・ベングトソンという作家の長編小説か ら監督自身が脚色も手掛けている。因に原題からは潜水艦を 思い浮かべるが、この言葉には顔面を水に漬ける水責めの拷 問の意味もあるそうだ。 出演は、本作でデンマーク・アカデミー賞の主演男優賞にノ ミネートされたヤコブ・セーダー・グレンと、本作で助演男 優賞を受賞したペーター・プラウボー。なおプラウボーは、 2009年11月紹介『誰がため』にも出演していたようだ。 主人公たちに非が全く無いとは言えないが、社会の歪みが生 み出す悲劇。しかしその中にほんの少しだけ希望の光も見え ている。そんな微かな幸せが描かれている感じの作品だ。
『星を追う子ども』 2004年『雲のむこう、約束の場所』という作品で評価を受け ているアニメーション作家・新海誠監督による最新作。 父親の形見の神秘的なクリスタルを使う鉱石ラジオ。そこか ら流れてくる不思議な音楽。そしてその音楽に誘われるよう 主人公の前に現れる青年。それらに誘われて主人公の少女は 謎の地へと旅立つ。 そこにはその謎の地の秘密を明かそうとする軍隊まで装備し た秘密組織や、その謎の地の入り口を守る巨大な生物も登場 し、やがて少女が訪れる謎の地の美しく驚異的な景観や、そ こでの冒険が描かれる。 映画の中では、伊邪那岐命が伊邪那美を追って黄泉国に行く 話が解説されたり、書棚には「オルフェウスとエウリュディ ケ」と記された本の題名が見えるなど、物語のテーマはかな り明確に示されている。 しかしここに描かれる黄泉国は、例えばフランスの詩人ジャ ン・コクトーが1949年に監督した『オルフェ』のように棘々 しいものではなく、むしろ牧歌的な風景の中に危険や脅威が 潜み、そして廃虚などが描かれているものだ。 このような風景は、監督の出自であるヴィデオゲームには有 り勝ちだし、日本のアニメーションでも良く観る感じなのは 少し残念だが、こんな風景が日本や海外のアニメファンに受 けることもまた事実なのだろう。 物語的には、主人公自身の目的が不明確で、それは一種の巻 き込まれ形ということではあるのだが、それが主人公への感 情移入をし辛くしている点は否めない。でもまあこれも最近 の日本のアニメーションではよくある展開かも知れない。 さらにプレス資料に用語辞典を付けなければならないほどの 情報過多も最近の日本アニメには有り勝ちなもので、結局そ の延長線上にある作品ということなのだろう。ただその中で は、人類史も背景にした物語の壮大さなどは認めたいところ だが。 とは言うものの、先にも書いた感情移入の点では、結局主人 公の心情が最後まで掴み切れないのがもどかしいところで、 この辺でもう少し工夫が欲しい感じはした作品だった。
『大木家のたのしい旅行』 2008年2月紹介『あの空をおぼえている』などの俳優・竹野 内豊が、映画では初めてコメディに挑戦したという作品。 主人公は、長い同棲生活の末に成り行きで結婚してしまった ために、新婚2日目だというのにすでに倦怠期というカップ ル。その新居への引っ越し荷物の中から夫の拘わりだった炊 飯ジャーが見当たらなくなる。 ところが近所の大型スーパーに買い物に出掛けた妻は、その 炊飯ジャーを抱えたずぶ濡れの男を目撃し、その跡を付けて スーパーの屋上に行くが姿を見失ってしまう。しかしその下 り階段で怪しげな女占い師に声を掛けられる。 そしてその占い師から手渡された「地獄ツアー」のチラシは 夫の興味を引き、2人は占い師の手引きで炊飯ジャーが見付 かるかもしれない地獄ツアーに行くことになるが… 実は、事前には倦怠期夫婦の地獄旅行という設定を見ただけ で、これは夫婦間の修羅場のお話かな…何て気分で試写を観 に行った。それで最初は確かにそのような雰囲気も漂ってい たが、本編が始まるとこれが思いの外にしっかりとした地獄 巡りものだった。 しかも地獄に繋がる1本道では何があっても振り返ってはい けないなど定番の地獄巡りの設定も取り入れられているし、 地獄の住人が赤い人と青い人(鬼)などの細かい点も気が利 いている。それにちょっとだけ明らかにされる地獄の住人の 設定も悪い感じではなかった。 原作と脚本は、京都芸術センター舞台芸術賞や岸田國士戯曲 賞など受賞している劇作家の前田司郎。さらに前田は野間文 芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞の候補にもなっている。そ んな前田作品の今回は初映画化だそうだ。 そして監督は、昨年8月紹介『裁判長!ここは懲役4年でど うすか』などの本田隆一が担当。脚本もしっかりしているの だろうが、一見チープな地獄の景観なども程良い感じで巧み に描かれていて、悪くない感じがしたものだ。 出演は、夫役の竹野内に対する妻役に2010年『のだめカンタ ービレ』などの水川あさみ。他に、樹木希林、片桐はいり、 荒川良々、でんでん、山里亮太、柄本明、今年公開の『アバ ター』という作品に主演の橋本愛らが脇を固めている。 物語的にはもう少し捻りがあっても良いかなあとは思うが、 結末も悪くないし、これはこれで気に入る作品だった。
『孫文の義士団』“十月圍城” 1906年10月、腐敗した中国清王朝を打倒するために立ち上が った孫文が、中国各地13省の代表との協議に必要とした1時 間。その時間を清王朝から派遣された暗殺団と対決し、革命 の指導者を守り抜いた人々の物語。 10月1日、孫文は滞在していた日本を出発し、香港を訪れる ことを決める。それは中国各地の代表たちと革命を起こすた めの協議を行うことが目的だった。その動向を察知した清王 朝は孫文を亡きものにするため、総勢500人の暗殺団を香港 に送り込む。 それに対する香港の民主勢力は、当初は領事館に立て籠る孫 文らに迫る暗殺団を真向から守る計画だったが、それには勢 力が足りないと判断し、孫文の替玉を仕立てて彼の母親の許 に向かわせ、待ち伏せる暗殺団と戦いながら時間を稼ぐ作戦 に出る。 しかしそれは、町中の何処から襲われるかも知れない状況の 中で、1時間に亙って決死の戦いを繰り広げるという壮絶な 作戦だった。そして10月15日、日本から2週間の船旅の末に 孫文が香港に到着する。 2009年7月に紹介した映画『孫文』では、このときの孫文は 香港政庁から上陸を拒否され、結局英領マラヤのペナン島に 向かってそこで会議を開くことになるものだが、本作では、 「もしその時に香港上陸が許されていたら」というifの物語 が描かれる。 従って設定自体がフィクションだから、そこから描かれる物 語はかなり自由奔放で、見事なカンフーアクションドラマが 展開される。ただし、映画の冒頭に描かれる「輔仁文社」は 香港に実在した革命の拠点だそうで、その辺に香港側の思い 入れもあるようだ。 出演は、2005年9月紹介『セブンソード』のドニー・イェン とレオン・ライ、同年12月紹介『PRMISE』などのニコラス・ ツェー、2006年12月紹介『墨攻』などのファン・ビンビン、 2008年12月紹介『花の生涯』のワン・シュエチー、1992年の 『ラマン/愛人』などのレオン・カーフェイ。 また、2005年にオーディション番組を勝ち抜き中国全土で人 気ポップシンガーとなったクリス・リー、アメリカNBAで も活躍したメンケ・バータル。さらにエリック・ツァン、サ イモン・ヤム、フー・ジェンらが脇固めている。 ダニー・ボイル監督やスティーヴン・ダルドリー監督らも訪 れたという当時の香港を忠実に再現した大規模なセットの中 で、ドニー・イェンらによる壮絶なカンフーアクションが展 開される作品だ。 * * 後半の製作ニュース、今回はワーナーの『バットマン』、 ソニーの『スパイダーマン』に続き各社から、往年のヒット シリーズの再開(reboot)の計画が発表されている。 その1本目は、『ザ・タウン』『ツーリスト』を製作した GKフィルムスから、2001年と2003年にアンジェリーナ・ジ ョリーの主演で映画化された“Lala Croft: Tomb Raider” の映画化権を獲得し、2013年の公開を目指して製作するとの 発表が行われた。 作品は、1996年第1作が発表された人気ヴィデオ・ゲーム に基づくもので、ゲームは累計で3500万本を売り切っている とも言われている。さらに先の2本の映画化も全世界の合計 で4億3200万ドルを稼ぎ出しているとのことだ。そしてその 権利は、当初イギリスのEidos社が持っていたが、2009年に Eidos社は日本のスクエア・エニックスに買収され、同社は 今年12月にも新規のシリーズ再開作を発表する計画になって いるとのことだ。 従って今回の契約も、GKフィルムスとスクエア・エニッ クスとの間で結ばれたもので、ハリウッドでは『バイオハザ ード』のカプコンが一歩リードしている感じの映画化路線に 新たな流れが生まれることになりそうだ。 ただし今回の発表では、GKフィルムスと『ツーリスト』 で組んだばかりのアンジェリーナ・ジョリーに出演の情報は ないようで、rebootは基本的に出演者も入れ替えになるのが 相場のようだが、2003年の第2作の時にはかなりも思い入れ も感じられたジョリーが、製作会社との繋がりでどのように 関りを持つかも気になるところだ。 なお、前2作の映画の配給はパラマウントが担当したが、 今回の配給についてはまだ発表されていない。ただし、実は 旧Eidos社にはワーナーが出資していて、数年前にワーナー でもrebootの計画があったとのこと。しかし上記の買収で消 滅した経緯があるようで、それがどのよう作用するか。何れ にしても配給はワーナーかソニーにはなりそうだが。 * * 次もヴィデオゲームからの話題で、2006年6月に紹介した コナミの『サイレントヒル』を再び映画化する計画が発表さ れている。 この映画化に関しては、コナミが直接主導権を握っている ことも注目されているものだが、前作の監督を担当したクリ ストフ・ガンツは続編にも意欲を燃やしていたものの、結局 彼の要求は入れられなかったようで、今回の監督には、先に “Solomon Kane”などを手掛けたマイクル・J・バセットが 起用されている。因にこの監督の名前では、2002年2月15日 付で“Deathwatch”という作品の情報もお伝えしていたよう だ。 そして今回の映画化は、“Silent Hill: Revelation 3D” という題名で、昨年9月紹介『バイオハザード�検戮鮗螻櫃� たデイヴィス・フィルムスの製作により、すでに“Mad Max: Fury Road”にも出演が予定されているアデレイド・クレメ ンスと、“Game of Thrones”というテレビシリーズに出演 のキット・ハリントンを主演に迎えて、カナダのトロントで 3Dによる撮影が開始されている。 なお映画化される物語は、10代の少女とその父親による邪 悪なものからの逃亡劇とされているが、少女が18歳の誕生日 を迎えたとき、少女自身も知らない新たな展開が始まるとい うものだそうだ。配給は『ソウ』シリーズなどのライオンズ ゲイトが契約している。 * * 続いては1980年代映画からのrebootで、1987年と1990年、 1993年にも第3作が製作された“RoboCop”の再開が発表さ れている。 発表したのは倒産の危機を一応免れたMGMで、同社が昨 年末に調達した5億ドルの映画製作資金の中で製作が行われ るようだ。そして監督にブラジル出身のホセ・パデルハと、 脚本には、パラマウントが再製作を計画している“Dune”も 手掛けるジョシュア・ツェトマーの起用が報告されている。 因にこの再開に関しては、数年前にもダーレン・アロノフ スキー監督による計画が立上げられたこともあったが、その 時は頓挫していたようだ。なお元のシリーズの配給はオライ オンが担当したものだったが、最近のDVDの発売はMGM が行っていたようだ。 * * 最後はすでに何度か紹介している“Men in Black �掘匹� 関して、先に撮影が開始されている脚本の改訂に、『スパイ ダーマン』などのデイヴィッド・コープが招請された。 この脚本は、元は『トロピック・サンダー』などのイーサ ン・コーエンが執筆したものだが、撮影が進む過程で改訂が 必要になったということのようだ。因に先に行われていた撮 影では、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズが登場 する現代の部分を完了し、スミス扮するエージェントJが過 去に戻るというところで中断、従って過去に戻ってからの展 開が改訂の対象になっているようだ。 ただしコープには、撮影が再開される3月28日までしか猶 予が与えられていないとのことだが、今までにもいろいろ困 難な仕事を担当してきたコープなら任せられるということな のだろう。映画の公開は来年5月25日の予定になっている。 なお、撮影開始後の脚本の改訂に関しては、報道記事にも 『地獄の黙示録』などの例が挙げられており、ハリウッドで は珍しくはないとのことだ。
| 2011年03月06日(日) |
A3D�供⊂�年マイロの火星冒険記、ナチス偽りの楽園、はい!もしもし大塚薬局ですが、エクレール・お菓子放浪記+ニュース |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『A3D�供� 昨年11月紹介『シモン・ボッカネグラ』などのLiveSpireに よる作品で、昨年10月代々木体育館で行われた浜崎あゆみの 全国コンサート・ファイナル「ayumi hamasaki Rock'n'Roll Circus Tour FINAL ~7days Special~」の模様がHD−3D で上映される。因にタイトルのAは、正式にはシルクハット のような独自のロゴになるものだ。 収録されているのはその最終日の模様と思われるが、天井の 近くにはSkyCamが設置され、さらに小型クレーンやステージ とそこから延びるアリーナ席を3分するT字形の花道脇には 複数の移動撮影スタッフが配置されるという多角的な撮影が 敢行されている。 またコンサートは、それ自体が大掛かりな映像設備を場内に 建て込んだもので、ステージ背景のマルチ画面や、観客席中 央のT字の接点に降りてくる円環状のスクリーンなどがシン クロし、さらにLiveSpire向けに3DのCGI映像なども付 加される。 しかも、実際には場面転換や衣装替えなどでもう少し掛かる のではないかとも思われる暗転が短く編集されているから、 正しく怒濤の勢いでコンサートが繰り広げられる。それはア ンコールまでがたっぷりと95分間で観せて貰えるものになっ ている。 それにしても、実際はもう少しは休憩などがあるかも知れな いが、95分間を歌い踊り、ステージ中を走り回るアーチスト の姿は、それを観るだけでも感動的なものだし、さらに大型 クレーンに乗った浜崎をその上から捉えた映像などは本当に 鳥肌ものだった。 ただし3Dの効果は、以前『センター・オブ・ジ・アース』 の特別上映の際に来日した監督が、「3D効果は観ていると 馴れてしまうので、後半に特に工夫を凝らした」と言ってい たものだが、本作の後半では一部のシーンで2Dと区別が付 かなくなっていた。 これはまあ観客の馴れの問題だから仕方のない面はあるが、 ここにもう一つ何か工夫が欲しかった。もっとも僕が観た試 写はまだエンドロールもない仮のものだったから、前半にか なり付加されていたCGIが、後半にももっと追加されるの かも知れない。 とは言え、エンディングの紙吹雪きなどはそれなりに3Dの 迫力だったし、これはこれでも良いのかな…。 ただ3Dなら、例えば浜崎が目前の1m位のところで歌って いる…そんな映像も期待したいところで、全編がそれだと目 が疲れてしまうが、中で1曲ぐらいはそんなものがあっても 良いかなとは感じられた。 なお、LiveSpireでは、今後にはLUNA SEA-L.A.公演の模様の 3D上映なども予定しているそうだ。
『少年マイロの火星冒険記』“Mars Needs Moms” ロバート・ゼメキス製作の許、2009年11月紹介『Disney's クリスマス・キャロル』などでも採用されたパフォーマンス ・キャプチャーを使用して映像化された作品。 反抗期の少年が母親への口答で,「ママなんか居なくなっち ゃえばいい」と言ったその晩、ママが何者かに拉致される。 そしてその後を追った少年は、何とママの乗せられた宇宙船 に閉じ込められて…。到着したのはNASAの探査では明かされ なかった真の火星だった。 なぜ火星人はママを拉致したのか、そこには火星を支配する 恐ろしい陰謀があった。果たして少年はママを救出して地球 に戻ることが出来るのか。重力が地球の1/3しかない火星を 舞台に、少年の大冒険が始まる。 脚本は、2004年4月紹介『ウォルター少年と夏の休日』に登 場する漫画本の制作を担当したというバークレー・ブリーズ の原作から、2002年7月紹介『タイムマシン』のサイモン・ ウェルズとウェンディ・ウェルズが脚色したもので、サイモ ンが監督している。 そしてパフォーマンス・キャプチャーによる出演は、少年の 役に2002年8月紹介『オースティン・パワーズ』シリーズの レギュラー出演や2003年6月紹介『ミニミニ大作戦』などの セス・グリーン。 他に2008年2月紹介『燃えよ!ピンポン』などのダン・フォ ーグラー、2009年3月紹介『お買いもの中毒な私!』などの ジョーン・キューザック、2010年7月紹介『シングルマン』 に出演のエリザベス・ハーノイスらが共演。 パフォーマンス・キャプチャーだから直接容姿は観られない が、グリーンは2004年『ポーラー・エクスプレス』のトム・ ハンクスと同様に少年らしい演技を観せてくれている。また ハーノイスは、ディズニーが1990年代に製作した『不思議の 国のアリス』TVシリーズに主演していたそうだ。 ディズニーでは、来年3月9日の全米公開予定でエドガー・ ライス・バローズの原作による“John Carter of Mars”を 製作中で、実は事前に邦題の付いたポスターを試写室の壁で 観たときには、まさかそれかとびっくりしたが、本作は昨年 4月11日付のサイトでも報告していた別の作品だった。 でもやはりその前哨戦という感じはあるのかな、本作は純粋 にお子様向けのお話ではあるが、これでますます来年への期 待が盛り上がる感じの作品だ。
『ナチス、偽りの楽園』“Prisoner of Paradise” ナチス政権下で、最後までドイツに留まったユダヤ人映画監 督の生涯を追ったドキュメンタリー。2003年度のアカデミー 賞長編ドキュメンタリー部門候補作品。 戦前ドイツで俳優・映画監督として活躍したクルト・ゲロン は、元はキャバレー芸人の出身、映画では1930年マレーネ・ ディートリッヒ主演『嘆きの天使』の共演や、舞台は1928年 ベルリン初演『三文オペラ』の署長役などで知られ、特に、 『三文…』の中の『七首マッキー』の歌唱が有名だそうだ。 そんなゲロンは、『メトロポリス』のフリッツ・ラング監督 らとも親交があり、俳優のピーター・ローレをハリウッドに 送り出すことにも尽力したとされるが、本人は一時フランス やオランダに逃れたものの、結局はナチスの手で収容所送り となる。 ただし彼が送られたのはテレージエンシュタット。そこには ドイツに対して功績のあったユダヤ人の代表や文化人などが 集められ、1944年にデンマーク赤十字社と国際赤十字社によ る収容所の査察が行われた際の「偽りの収容所」にも仕立て 上げられた場所だった。 そしてその収容所でゲロンは、査察団に見せるためのキャバ レーの演出や最後にはナチスがプロパガンダ用に製作を目論 んだ記録映画の監督にも起用される。 勿論それは、ガロンには自身や家族を守るための選択だった が、同時にそれは他のユダヤ人からは糾弾されるのも仕方の ない行為。一方それはナチスの迫害で映画を撮ることの出来 なかった監督にとっては、最後の才能の発露だったのかも知 れない。 そんなゲロンの生涯が、アーカイブ映像やホームムーヴィの 映像、それに現存する関係者の証言などによって綴られて行 く。それはただの好々爺であったかも知れない男が、歴史に 翻弄され落ちて行く姿を描いたものだ。 以前に、フリッツ・ラングや作家のエーリッヒ・ケストナー がナチスを逃れて生き延びた状況を調べたことがあり、それ はある種のドラマティックでもあったものだが、その一方で ゲロンのようにそれを果たせなかった人物もいた。 それはゲロン自身の読みが甘かったところもあるが、そんな ことで人間の生き様が変ってしまう。歴史の恐ろしさを今更 ながらに感じさせてくれる作品だった。
『はい!もしもし、大塚薬局ですが』 2007年に『青空夜空に星空』という作品でビデオフェスティ バルのグランプリを獲得するなどしている勝又悠監督による 2010年の作品。因に本作は、昨年のゆうばり国際ファンタス ティック映画祭ほか、世界各地の映画祭で招待上映されてい るそうだ。 主人公は、田舎町の薬局を1人で切り盛りしている中年の女 性。その薬局に1人の女子高生がマニュキュアを買いに来る ところから物語は始まる。最初に店主が値段を間違えたこと からタイガーバームをおまけに貰った女子高生は、翌日もマ ニュキュアを買いに来る。 こうしてその女子高生との交流が始まった女性店主は、女子 高生の恋愛指南を買って出ることになるが、それは彼女自身 の青春時代の思い出を甦らせることになる。そして女子高生 の恋の行方は意外な展開を生むことになるが… 主演は、2008年7月紹介『アキレスと亀』などに出演の円城 寺あやとAKB48のメムバーで映画初主演の小林香菜。他に、 モデルで『仮面ライダーオーズ』にレギュラー出演中の有末 麻佑子、2009年12月紹介『半分の月がのぼる空』や昨年10月 紹介『白夜行』に出演の川村亮介らが共演している。 試写前の監督の挨拶によると、普段は女子高生の映画ばかり 撮っているが、今回は自分の母親にも観て貰える作品を目指 したとのこと。その母親の世代というのはもしかすると僕の 世代なのかな。 ただまあそこにそれほどの時代性が感じられないのは、監督 の意図なのかな。それは青春の普遍性みたいなものが描きた かったのかも知れないが、それが憧れの男子像の違いだけで はちょっと物足りない感じがした。何かもっと女性の側の変 化みたいなものも観せて貰いたかったところだ。 でもまあ話としては悪くはないし、僕の世代から観るとそれ なりに甘酸っぱい気分にはさせてくれたかな。それだけでも 良いとは感じられる作品だ。 上映時間は48分の作品で、東京での一般公開はレイトショウ のみで行われるが、その際には、2009年に発表された監督の 短編2本が併映されるようだ。
『エクレール・お菓子放浪記』 1975年の日本ノンフィクション賞を受賞した作家西村滋が、 その翌年に発表した自伝的小説の映画化。元はテレビドラマ の脚本家だった西村が作家活動に専念する切っ掛けになった 作品だが、発表までには15年が費やされているそうだ。 題名からは菓子職人の修業の話を連想させるが、物語は西條 八十作詞の「お菓子と娘」の歌に支えられて戦中・戦後を生 き抜いた戦災孤児の少年を描いたもので、その少年が人々に 希望をもたらすお菓子のような存在だったということのよう だ。 その少年は戦災孤児で、孤児院には何度も収容されるが脱走 を繰り返し、ついに感化院に入れられてしまう。そこには、 ホワイトサタンと呼ばれる鬼のような教官や、少年に歌を教 えた女性教師などもいた。 やがてその女性教師が実家に戻るために退職した頃、少年は 年配の女性の家に引き取られることになるが…。その女性に よって映画館に働きに出されたり、さらに女性の家を飛び出 して旅回りの一座に加わったり…。そんな少年の背後には戦 争の影も忍び寄っていた。 主演は、2009年のミュージカル『レ・ミゼラブル』の舞台な どで注目される吉井一肇。特に「お菓子と娘」を歌うシーン は見事だが、戦災孤児にしては顔立ちがふっくらしているの はご愛嬌だ。 共演は、歌を教える女性教師役に2007年1月紹介『ケータイ 刑事2』に銭形雷役で主演していた小出早織(現在の芸名は 早織だけになっているようだ)と、少年を引き取る女性役で いしだあゆみ。 他に、遠藤憲一、高橋恵子、林隆三、竹内都子、それに舞台 俳優で映画初出演の村松良太らが脇固めている。 僕の父親は兵隊にも行っているから主人公の少年よりもう少 し上の世代だが、戦中・戦後の混乱期の苦労はいろいろあっ たようだ。そんな中で成功を納めた経緯は様々だろうが、こ の少年のような物語も多分ごまんとあったことだろう。 そしてそんな話は、少し前まではテレビや映画でも良く語ら れていたものだが、何時の間にかそんな時代も過ぎてしまっ たようだ。だから今日この作品を観ると、僕にはある種の懐 かしさも感じられたし、またそれが新鮮であったりもしてし まった物だ。 * * ニュースの最初はアカデミー賞の結果だが、正直に言って あまり報告したくもないような結果になってしまった。確か に、作品賞に関しては『英国王のスピーチ』と『ソーシャル ・ネットワーク』のどちらかで迷いはしたが、監督賞に関し てはデイヴィッド・フィンチャーが鉄板だと思っていた。 勿論『英国王…』は感動的で、脚本賞、主演男優賞は仕方 のないところだが、演出の面で言えばそれは脚本の良さと、 コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム =カーターの演技に支えられたもので、監督が何かしたよう な作品ではない。 それに比べると『ソーシャル…』のフィンチャーは、脚色 賞を受賞したアーロン・ソーキンのシナリオを、脚本だけで は描き切れなかった部分まで見事に映像化したもので、これ こそが演出と呼べるものだった。でもまあ、あの早口の台詞 廻しは俳優には負担かも知れないし、会員の多くを占める俳 優がこれは認めたくないという気分になったかも知れない。 そんな勘繰りもしたくなる結果だった。 なお『ソーシャル…』は編集賞と作曲賞にも輝いている。 それで『英国王…』は作品、監督、脚本、主演男優の4部 門受賞となったが、それと並んで『インセプション』も4部 門の最多受賞に並んだのは嬉しいところだ。受賞したのは撮 影、録音、音響編集と視覚効果だが、今年度の最多受賞作で あることに代りはない。 この他は、『アリス・イン・ワンダーランド』が美術賞と 衣裳賞、昨年10月紹介『ウルフマン』がメイクアップ賞を受 賞した。それと、ナタリー・ポートマンの『ブラック・スワ ン』での主演女優賞受賞は嬉しいところだ。 それから受賞は逸したが、長編ドキュメンタリー部門の候 補作の中に、昨年11月2日付「東京国際映画祭」で紹介した 『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』“Waste Land” が入っていたことに受賞式の中継を観ていて気が付いた。迂 闊だったとしか言いようがないが、映画祭では感動した作品 の1本だったので受賞を逃したことは残念だった。 * * 久し振りに製作ニュースもじっくりお伝えしよう。 まずは、すでに何度か紹介している『スター・ウォーズ』 サーガの3D化について、その第1作の全米公開日を2012年 2月10日とすることがフォックスから正式に発表された。た だし、この3Dヴァージョンの公開はサーガの番号順に行う とのことで、つまり来年の公開は“Episode I: The Phantom Menace”からになる。そしてその後はどのくらいの間隔で後 続されるか不明だが、いずれにしても“Episode VI: A New Hope”まではもう少し待たされるようだ。 因に“The Phantom Menace”に関しては、映画公開直後に Topps社から3Diのカードが発売されたもので、これは映画の 撮影時に3Dが準備されていたことが想像される。従って映 画の3D化も当初から考慮されていたと思われ、まずは順調 に3D化も進められることになりそうだ。これはそれに続く “Attack of the Clones”“Revenge of the Sith”につい ても同様と思われる。 これに対し“A New Hope”“The Empire Strikes Back” “Return of the Jedi”の3作は、映画の撮影時にそのよう な考慮はされていたと思えないが、“A New Hope”と“The Empire Strikes Back”に関しては、すでにTopps社の3Diカ ードが発売されており、その3Dイメージもなかなかのもの なので、静止画と動画は違うものとは言え、そのクオリティ での3D化を期待したいものだ。 なお3D化はILMが直接行っているとのことで、この情 報も2転3転したが、最終的には自らの手で行うことにした ようだ。2Dから3Dへのコンヴァージョンにはいろいろ微 妙なところもあるが、まずは来年第1作の公開を待ちたい。 * * 次はちょっと意外な情報で、アメリカで“Star Blazers” の題名で知られる日本製テレビアニメの映画化権をスカイダ ンス・プロダクションという製作会社が獲得し、同社のオー ナーで、今年1月紹介したコーエン兄弟監督の『トゥルー・ グリット』にも携わった製作者のデイヴィッド・エリスンが その映画化を進めると発表した。 この作品は、日本では『宇宙戦艦ヤマト』として知られて いるものだが、アメリカでも1970年代に放送されていたよう だ。そして今回の発表を行ったエリスンは1983年生まれとの ことで、彼にどのような思い入れがあるのかは知らないが、 すでに先月紹介『ツーリスト』を手掛けた脚本家のクリスト ファー・マクアリーに脚色を依頼しているとのことで、準備 は着実に進められているようだ。 因にエリスンは、ソフトウェアの大手オラクル社の創始者 でビリオネアのラリー・エリスンの息子で、ラリーが製作し た2007年9月紹介『FLYBOYS』には俳優として出演していた という人物。その後は俳優として演技も続ける一方で、製作 者というか、映画への出資者=製作総指揮の肩書きで『トゥ ルー…』や、現在撮影中の“Mission: Impossible - Ghost Protocol”にも関っているようだ。 言ってみれば大金持ちの道楽というところだが、それでも 『トゥルー…』のような作品が生まれるならそれは文句の言 いようもない。たっぷりの製作費を投入した大作の映像化を 観せて貰いたいものだ。 それから、このテレビアニメが日本でも実写映画化されて 今年の正月映画として公開されたことはアメリカでも報道さ れているが、今回のアメリカでの映画化はそれとは別物のよ うで、物語などの影響は受けないようだ。何れにしてもアメ リカでの映画化なら、今時の国際化を無視した日本人だけの キャスティングや、オリジナルの設定を台無しにしたヤマト 登場のシーン、それに何より臨戦体制の中で一体何をやって いたんだという展開などは願い下げにして、もう少しは原作 に敬意を払った脚本を期待したい。 * * 最後に記者会見の報告を一つ。 先週末に日本公開の始まった『ツーリスト』のジャパンプ レミアのため来日した主演ジョニー・デップと監督フロリア ン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクの記者会見が行われ た。 この会見では、監督のあまりの背の高さに驚いたり、題名 のtouristという言葉の意味について、travelerとの違いが 説明されるなど、いつもの記者会見とはちょっと違った雰囲 気があったものだが、その中でデップに対して「日本女性の 好みは?」という質問が出された。 それに対するデップの答えは、「タイムトラヴェルができ るならば17世紀の日本人女性」というものだったが、ここで 何故「17世紀」なのかが気になった。そこで調べてみると、 実は以前からマーティン・スコセッシ監督がデップの主演で 映画化を希望している遠藤周作原作『沈黙』の舞台が17世紀 の日本で、恐らくその関係で原作を読んだデップの心に何か 感じるものがあったということのようだ。 『沈黙』の映画化に関しては、ここ何年も期待はされなが ら、最近では映画データベースの予定欄からも落ちてしまっ ているようで、なかなか難しいようだが、実現すればデップ が望む日本での長期滞在も叶うことになるし、何とか主演者 の力で道を切り開いて欲しいとも思ったところだ。
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